(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20241216BHJP
B66B 1/34 20060101ALI20241216BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
H02J9/06 160
B66B1/34 A
H02J7/34 G
(21)【出願番号】P 2023530988
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2022042534
(87)【国際公開番号】W WO2024105806
(87)【国際公開日】2024-05-23
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 淳
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-054729(JP,A)
【文献】特開2001-253653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H02J 7/34
B66B 1/34
B66B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源および負荷の間に接続される無停電電源装置であって、
前記交流電源からの交流電力を直流電力に変換して直流母線に出力するコンバータと、
前記直流母線から受ける直流電力を蓄電装置に蓄える充電動作と、前記蓄電装置の直流電力を前記直流母線に出力する放電動作とを選択的に実行する双方向チョッパと、
前記直流母線から受ける直流電力を交流電力に変換して前記負荷に供給し、前記負荷が発生する回生電力を直流電力に変換して前記直流母線に出力するインバータと、
前記蓄電装置のSOCに基づいて前記双方向チョッパを制御する制御装置とを備え、
前記蓄電装置には、SOCの使用可能範囲の上限値よりも小さく、かつ、前記使用可能範囲の下限値よりも大きいSOC基準値が設定されており、
前記交流電源の健全時には、前記制御装置は、前記蓄電装置のSOCが前記SOC基準値になるように前記双方向チョッパを制御し、
前記交流電源の停電時には、前記制御装置は、前記使用可能範囲に基づいて、前記負荷の力行運転に対応して前記放電動作を制御し、前記負荷の回生運転に対応して前記充電動作を制御
し、
前記交流電源の健全時に、前記コンバータは、前記負荷の回生運転に対応して前記直流母線から受ける直流電力を交流電力に変換して前記交流電源に供給し、
前記蓄電装置のSOCが前記SOC基準値よりも大きい場合には、前記制御装置は、前記負荷の回生運転に対応して、前記蓄電装置のSOCが前記SOC基準値になるように、前記放電動作を制御する、無停電電源装置。
【請求項2】
前記SOC基準値は、前記交流電源の停電が発生してから予め定められた補償時間が経過するまでに前記蓄電装置から前記負荷に電力を供給するために必要なSOC以上となるように設定される、請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項3】
前記SOC基準値は、前記SOC基準値に、前記負荷が発生する回生電力量の最大値を加算した値が前記上限値以下となるように設定される、請求項2に記載の無停電電源装置。
【請求項4】
前記交流電源の健全時には、前記制御装置は、前記蓄電装置のSOCが前記SOC基準値を超えた場合に前記充電動作を停止し、
前記交流電源の停電時には、前記制御装置は、前記蓄電装置のSOCが前記上限値を超えた場合に前記充電動作を停止する、請求項1から3のいずれか1項に記載の無停電電源装置。
【請求項5】
前記交流電源の健全時には、前記制御装置は、前記蓄電装置のSOCが前記SOC基準値未満となった場合に前記放電動作を停止し、
前記交流電源の停電時には、前記制御装置は、前記蓄電装置のSOCが前記下限値未満となった場合に前記放電動作を停止する、請求項1から3のいずれか1項に記載の無停電電源装置。
【請求項6】
前記蓄電装置は、リチウムイオン電池である、請求項1に記載の無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2017/179162号明細書(特許文献1)には、交流電源からの交流電力を直流電力に変換して直流母線に出力するコンバータと、直流母線から受けた直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータと、直流母線と蓄電池との間で直流電力を授受する第1の双方向チョッパと、直流母線とリチウムイオン電池との間で直流電力を授受する第2の双方向チョッパとを備えた無停電電源装置が開示されている。
【0003】
この無停電電源装置では、蓄電池を、交流電源の停電時に使用する直流電力を貯蔵する電池として使用する。リチウムイオン電池を、負荷の力行運転と回生運転とが切り替わる度に充放電が行われる電池として使用する。交流電源の健全時には、蓄電池を充電させ、交流電源の停電時には蓄電池を放電させるように第1の双方向チョッパを制御する。負荷が回生運転している場合にはリチウムイオン電池を充電させ、負荷が力行運転している場合にはリチウムイオン電池を放電させるように第2の双方向チョッパを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、負荷で発生した回生電力をリチウムイオン電池に蓄えることができるため、交流電源の停電時において、回生電力を交流電源に戻すことなく、直流母線の電圧の上昇を抑制することができる。また、負荷が力行運転している場合には、リチウムイオン電池を放電させることで、回生電力を有効に利用することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1では、停電を補償するための電池(蓄電池)と、回生電力を回収するための電池(リチウムイオン電池)とを用意する必要がある。また、これら2つの電池にそれぞれ対応して2つの双方向チョッパを備える必要がある。そのため、無停電電源装置の大型化、高重量化およびコストアップを招くことが懸念される。また、交流電源の状態および負荷の運転状態に応じた無停電電源装置の制御が複雑化することが懸念される。
【0007】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであって、本開示の目的は、簡素な構成で負荷で発生した回生電力を交流電源に戻すことなく直流母線の電圧の上昇を抑制することが可能な無停電電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る無停電電源装置は、交流電源および負荷の間に接続される。無停電電源装置は、コンバータと、双方向チョッパと、インバータと、制御装置とを備える。コンバータは、交流電源からの交流電力を直流電力に変換して直流母線に出力する。双方向チョッパは、直流母線から受ける直流電力を蓄電装置に蓄える充電動作と、蓄電装置の直流電力を直流母線に出力する放電動作とを選択的に実行する。インバータは、直流母線から受ける直流電力を交流電力に変換して負荷に供給し、負荷が発生する回生電力を直流電力に変換して直流母線に出力する。制御装置は、蓄電装置のSOCに基づいて双方向チョッパを制御する。蓄電装置には、SOCの使用可能範囲の上限値よりも小さく、かつ、使用可能範囲の下限値よりも大きいSOC基準値が設定されている。交流電源の健全時には、制御装置は、蓄電装置のSOCがSOC基準値になるように双方向チョッパを制御する。交流電源の停電時には、制御装置は、使用可能範囲に基づいて、負荷の力行運転に対応して放電動作を制御し、負荷の回生運転に対応して充電動作を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、簡素な構成で負荷で発生した回生電力を交流電源に戻すことなく直流母線の電圧の上昇を抑制することが可能な無停電電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態に係る無停電電源装置の構成例を示す回路ブロック図である。
【
図2】制御装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】制御装置のうちの双方向チョッパの制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。
【
図4】バッテリのSOCと参照電圧VBRとの関係を示す図である。
【
図5】商用交流電源の健全時であって、負荷が力行運転している場合の無停電電源装置の動作を説明する図である。
【
図6】商用交流電源の健全時であって、負荷が回生運転している場合の無停電電源装置の動作を説明する図である。
【
図7】商用交流電源の停電時であって、負荷が力行運転している場合の無停電電源装置の動作を説明する図である。
【
図8】商用交流電源の停電時であって、負荷が回生運転している場合の無停電電源装置の動作を説明する図である。
【
図9】商用交流電源の復電した場合であって、負荷が回生運転している場合の無停電電源装置の動作を説明する図である。
【
図10】制御装置による双方向チョッパの制御を説明するためのフローチャートである。
【
図11】制御装置による双方向チョッパの制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰り返さないものとする。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る無停電電源装置の構成例を示す回路ブロック図である。
図1に示すように、無停電電源装置100は、商用交流電源6および負荷8の間に接続される。
【0013】
負荷8は、無停電電源装置100から供給される交流電力によって駆動する力行運転と、回生電力(交流電力)を発生する回生運転とを実行するように構成されている。負荷8は、例えばモータを含んで構成される。モータを加速させる場合のようにモータに電力を供給する場合には、負荷8は力行運転する。一方、モータを減速させる場合のようにモータが回転駆動されて発電機として動作する場合には、負荷8は回生運転する。負荷8が発生した回生電力は無停電電源装置100に供給される。
【0014】
図1に示すように、無停電電源装置100は、入力端子T1、直流端子T2、出力端子T3、コンバータ1、電流検出器CD1~CD3、直流ラインL1,L2、コンデンサC1、双方向チョッパ2、インバータ3、操作部4、および制御装置5を備える。
【0015】
入力端子T1は、商用交流電源6から交流電圧VIを受ける。交流電圧VIの瞬時値は、制御装置5によって検出される。交流電圧VIの瞬時値に基づいて、停電の発生の有無などが判別される。
【0016】
直流端子T2は、バッテリ7(蓄電装置)に接続される。バッテリ7は、直流電力を蓄える。バッテリ7には、例えばリチウムイオン電池が用いられる。直流端子T2の直流電圧VB(すなわち、バッテリ7の端子間電圧VB)の瞬時値は、制御装置5によって検出される。
【0017】
出力端子T3は、負荷8に接続される。負荷8は、無停電電源装置100から供給される交流電力によって駆動される。出力端子T3に現れる交流電圧VOの瞬時値は、制御装置5によって検出される。
【0018】
なお、無停電電源装置100は、商用交流電源6から三相交流電圧を受け、負荷8に三相交流電圧を供給するものであるが、図面および説明の簡単化のため、
図1では一相分の回路のみが示されている。
【0019】
コンバータ1は、交流端子1a、正電圧端子1b、および負電圧端子1cを有する。双方向チョッパ2は、直流端子2a、正電圧端子2b、および負電圧端子2cを有する。インバータ3は、交流端子3a、正電圧端子3b、および負電圧端子3cを有する。
【0020】
コンバータ1の交流端子1aは、入力端子T1に接続される。電流検出器CD1は、入力端子T1と交流端子1aの間に流れる電流Iiの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号Iifを制御装置5に与える。
【0021】
双方向チョッパ2の直流端子2aは、直流端子T2に接続される。電流検出器CD2は、直流端子T2と直流端子2aの間に流れる直流電流IBの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号IBfを制御装置5に与える。
【0022】
インバータ3の交流端子3aは、出力端子T3に接続される。電流検出器CD3は、交流端子3aと出力端子T3の間に流れる電流Ioの瞬時値を検出し、その検出値を示す信号Iofを制御装置5に与える。
【0023】
直流ラインL1,L2の一方端子は、それぞれコンバータ1の正電圧端子1b、および負電圧端子1cに接続される。直流ラインL1,L2の他方端子は、それぞれインバータ3の正電圧端子3b、および負電圧端子3cに接続される。また、直流ラインL1,L2は、それぞれ双方向チョッパ2の正電圧端子2aおよび負電圧端子2cにそれぞれ接続される。直流ラインL1,l2は「直流母線」の一実施例に対応する。
【0024】
コンデンサC1は、直流ラインL1,L2間に接続され、直流ラインL1,L2間の直流電圧VDを安定化および平滑化させる。直流電圧VDの瞬時値は、制御装置5によって検出される。
【0025】
コンバータ1は、制御装置5によって制御され、商用交流電源6から交流電圧VIが健全に供給されている場合(すなわち、商用交流電源6の健全時)であって、負荷8が力行運転している場合には、商用交流電源6から入力端子T1を介して供給される交流電圧VIを直流電圧VDに変換して、直流ラインL1,L2間に出力する。商用交流電源6から交流電圧VIが健全に供給されていない場合(すなわち、商用交流電源6の停電時)には、コンバータ1の運転は停止される。
【0026】
制御装置5は、商用交流電源6の健全時には、直流ラインL1,L2間の直流電圧VDが参照電圧VDRになるようにコンバータ1を制御する。商用交流電源6の停電時には、制御装置5は、コンバータ1の運転を停止させる。
【0027】
双方向チョッパ2は、制御装置5によって制御される。商用交流電源6の健全時には、双方向チョッパ2は、コンバータ1から直流ラインL1,L2を介して供給される直流電力をバッテリ7に蓄える。商用交流電源6の停電時であって、負荷8が力行運転している場合には、双方向チョッパ2は、バッテリ7の直流電圧VBを直流電圧VDに変換して、正電圧端子2bおよび負電圧端子2c間に出力する。商用交流電源6の停電時であって、負荷8が回生運転している場合には、双方向チョッパ2は、インバータ3から直流ラインL1,L2を介して回生される直流電力をバッテリ7に蓄える。双方向チョッパ2は、バッテリ7に直流電力を蓄える充電動作と、バッテリ7の直流電力を直流ラインL1,L2間に出力する放電動作とを選択的に実行可能に構成されている。
【0028】
制御装置5は、商用交流電源6の健全時には、直流電圧VBが参照電圧VBRになるように双方向チョッパ2を制御する。商用交流電源6の停電時であって、負荷8が力行運転している場合には、制御装置5は、直流電圧VDが参照電圧VDRになるように双方向チョッパ2を制御する。商用交流電源6の停電時であって、負荷8が回生運転している場合には、制御装置5は、直流電圧VBが参照電圧VBRになるように双方向チョッパ2を制御する。
【0029】
インバータ3は、制御装置5によって制御される。商用交流電源6の健全時であって、負荷8が力行運転している場合には、インバータ3は、コンバータ1から直流ラインL1,L2を介して供給される直流電圧VDを交流電圧VOに変換して負荷8に供給する。商用交流電源6の健全時であって、負荷8が回生運転している場合には、インバータ3は、負荷8から出力端子T3を介して供給される交流電圧VOを直流電圧VDに変換して直流ラインL1,L2間に出力する。
【0030】
商用交流電源6の停電時であって、負荷8が力行運転している場合には、インバータ3は、バッテリ7から双方向チョッパ2および直流ラインL1,L2を介して供給される直流電圧VDを交流電圧VOに変換して負荷8に供給する。インバータ3の出力電圧VOは所望の値に制御可能になっている。制御装置5は、交流出力電圧VOが正弦波状の参照電圧VORになるようにインバータ3を制御する。商用交流電源6の停電時であって、負荷8が回生運転している場合には、インバータ3は、負荷8から出力端子T3を介して供給される交流電圧VOを直流電圧VDに変換して直流ラインL1,L2間に出力する。
【0031】
操作部4は、無停電電源装置の使用者によって操作される複数のボタン、種々の情報を表示する画像表示部などを含む。使用者が操作部4を操作することにより、無停電電源装置の電源をオンおよびオフしたり、種々の情報を設定することが可能となっている。
【0032】
制御装置5は、交流電圧VI、交流電流Ii、直流電圧VD,VB、直流電流IB、交流電圧VO、交流電流Io、操作部4からの信号などに基づいて無停電電源装置全体を制御する。
【0033】
図2は、制御装置5のハードウェア構成例を示すブロック図である。代表的には、制御装置5は、所定のプログラムが予め記憶されたマイクロコンピュータによって構成することができる。
【0034】
図2の例では、制御装置5は、CPU(Central Processing Unit)10と、メモリ12と、入出力(I/O)回路14とを含む。CPU10、メモリ12およびI/O回路14は、バス16を経由して、相互にデータの授受が可能である。メモリ12の一部領域にはプログラムが格納されており、CPU10が当該プログラムを実行することで、後述する各種機能を実現することができる。I/O回路14は、制御装置5の外部との間で信号およびデータを入出力する。
【0035】
あるいは、
図2の例とは異なり、制御装置5の少なくとも一部については、FPGA(Field Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの回路を用いて構成することができる。また、制御装置5の少なくとも一部について、アナログ回路によって構成することもできる。
【0036】
図3は、制御装置5のうちの双方向チョッパ2の制御に関連する部分の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、制御装置5は、SOC(State Of Charge)算出部20と、停電検出器22と、充電制御部24と、放電制御部26と、負荷判定部28と、制御部30とを含む。
図3に示された各ブロックの機能は、制御装置5によるソフトウェア処理およびハードウェア処理の少なくとも一方によって実現することができる。
【0037】
SOC算出部20は、直流電圧VB(バッテリ7の端子間電圧VB)の検出値および/または直流電流IBの検出値を用いて、バッテリ7のSOCを算出する。バッテリ7のSOCは、バッテリ7の蓄電量を示す値であり、例えば、バッテリ7の満充電容量に対する現在の蓄電量を百分率で表したものである。SOCの算出方法については、直流電流IBTの積算値を用いる手法、バッテリ7の開回路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)とSOCとの関係を示すOCV-SOCカーブを用いる手法など、公知の手法を用いることができる。SOCの算出値を示す信号SOCfは制御部30に与えられる。
【0038】
停電検出器22は、交流電圧VIの検出値に基づいて、商用交流電源6の停電が発生したか否かを検出し、検出結果を示す信号DFを出力する。具体的には、交流電圧VIが予め設定された正常範囲内である場合には、停電検出器22は、商用交流電源6が健全であると判定し、Lレベルの信号DFを出力する。交流電圧VIが正常範囲よりも低い場合には、停電検出器22は、商用交流電源6の停電が発生していると判定し、Hレベルの信号DFを出力する。停電検出器22の出力信号DFは充電制御部24および制御部30に与えられる。
【0039】
充電制御部24は、直流電圧VB(バッテリ7の端子間電圧VB)の目標電圧である参照電圧VBRを生成する。具体的には、充電制御部24は、停電検出器22の出力信号DFと、バッテリ7のOCV-SOCカーブとを用いて、参照電圧VBRを生成する。
図4は、バッテリ7のSOCと参照電圧VBRとの関係を示す図である。
【0040】
図4に示すように、バッテリ7のSOCには、バッテリ7の充電および放電を制御するための目安となる判定値SOCmin,SOCnormal,SOCmaxが設定されている。SOC=0%はバッテリ7の空状態に対応し、SOC=100%はバッテリ7の満充電状態に対応する。
【0041】
SOCには、過充電を防止するためにバッテリ7の充電を禁止する禁止領域と、過放電を防止するためのバッテリ7の放電を禁止する禁止領域とが設定されている。SOCの使用可能範囲は、これらの禁止領域に基づいて設定された上限値SOCmaxおよび下限値SOCminを有している。SOC>SOCmaxになるとバッテリ7の充電が禁止され、SOC<SOCminになるとバッテリ7の放電が禁止される。
【0042】
SOCnormalは、商用交流電源6の健全時にバッテリ7の充電および放電の制御に用いられる判定値である。SOCnormalは、SOCminより大きく、SOCmaxよりも小さくなるように設定される。商用交流電源6の健全時には、SOC>SOCnormalになるとバッテリ7の充電が停止され、SOC<SOCnormalになるとバッテリ7の放電が停止される。すなわち、商用交流電源6の健全時には、SOCがSOCnormalを保つように、バッテリ7の充電および放電が制御される。SOCnormalは「SOC基準値」の一実施例に対応する。
【0043】
SOCnormalは、SOCbackup以上となるように設定される。SOCbackupとは、無停電電源装置100が有する、商用交流電源6の停電時のバックアップ電源としての機能(停電補償機能)を担保するためのSOCである。SOCbackupは、停電補償用蓄電量に対応している。停電補償用蓄電量とは、商用交流電源6の停電が発生したときに、予め定められた補償時間に亘ってバッテリ7から負荷8に対して電力を供給し続けるために必要な蓄電量である。したがって、停電補償機能を担保するためには、商用交流電源6の健全時においてSOCをSOCbackup以上に保つ必要がある。
【0044】
図4に示すように、SOCnormal≧SOCbackupとすることにより、無停電電源装置100の停電補償機能を担保することができる。その一方で、SOCnormalをSOCmaxに近い値に設定すると、商用交流電源6の停電時であって、負荷8が回生運転した場合に、負荷8が発生した回生電力を無停電電源装置100が回収できないという問題が生じるおそれがある。
【0045】
詳細には、商用交流電源6の停電時には、インバータ3から直流ラインL1,L2間に出力される回生電力をコンバータ1を介して商用交流電源6に供給することができない。そのため、回生電力が直流ラインL1,L2間に接続されるコンデンサC1に蓄えられて、直流電圧VDが上昇する。コンデンサC1が過電圧となって故障に至ることを防ぐために、従来の無停電電源装置では、回生電流を熱に変換する抵抗器を設ける方法が採られている。しかしながら、この方法では、回生電力が無駄に廃棄されてしまうことが懸念される。
【0046】
本実施の形態に係る無停電電源装置100では、商用交流電源6の停電時であって、負荷8が回生運転している場合には、双方向チョッパ2は、インバータ3から直流ラインL1,L2間に回生される直流電力をバッテリ7に蓄える。したがって、直流電圧VDの上昇を抑制することができる。また、回生電力を有効に利用することが可能となる。
【0047】
ただし、負荷8の回生運転時にバッテリ7のSOCがSOCmaxに近い状態である場合には、負荷8から回生される直流電力をバッテリ7が回収することができず、結果的に直流電圧VDの上昇を招いてしまう可能性がある。
【0048】
この対策として、SOCnormalは、負荷8で発生する回生電力量の最大値Wmaxに基づいて設定される。回生電力量の最大値Wmaxとは、負荷8が回生運転したときに回生できると推定される電力量の最大値である。回生電力量の最大値Wmaxは、予め実験またはシミュレーションによってデータを取得しておき、制御装置5のメモリ12に記憶させておくことができる。
【0049】
SOCnormalは、SOCnormal,WmaxおよびSOCmaxが、SOCnormal+Wmax≦SOCmaxの関係を満たすように設定される。この関係は、商用交流電源6の停電中に負荷8が回生運転のみを行った場合であっても、負荷8から回生される直流電力によってバッテリ7のSOCがSOCmaxを超えない、すなわち、バッテリ7の充電が禁止されないことを意図したものである。
図4の例では、SOCmaxとSOCnormalとの差分に相当する蓄電量が、回生電力量の最大値Wmaxに対応している。
【0050】
以上に述べたように、SOCnormalは、SOCmin,SOCbackup,SOCmax,Wmaxとの間に、SOCmin<SOCbackup≦SOCnormal+Wmax≦SOCmaxの関係を満たすように設定される。言い換えると、バッテリ7には、当該関係を満たすことができる電池容量を有するバッテリが適用される。商用交流電源6の健全時には、バッテリ7をSOCの使用可能範囲の上限値SOCmaxまで充電しないため、バッテリ7の劣化の進行を抑制することができる。よって、バッテリ7の寿命を延ばすことができる。
【0051】
充電制御部24は、参照電圧VBRとして、2つの電圧VB1,VB2を有している。電圧VB1は、バッテリ7のOCV-SOCカーブにおいてSOCがSOCnormalとなるときのOCVに基づいて設定されている。電圧VB2は、バッテリ7のOCV-SOCカーブにおいてSOCがSOCmaxとなるときのOCVに基づいて設定されている。充電制御部24は、停電検出器22の出力信号DFがLレベルのとき、すなわち、商用交流電源6の健全時には、参照電圧VBRをVB1に設定する。停電検出器22の出力信号DFがHレベルのとき、すなわち、商用交流電源6の停電時には、充電制御部24は、参照電圧VBRをVB2に設定する。
【0052】
図3に戻って、放電制御部26は、直流ラインL1,L2間の直流電圧VDCの目標電圧である参照電圧VDRを生成する。例えば、放電制御部26は、操作部4からの信号などに基づいて、参照電圧VDRを生成する。
【0053】
負荷判定部28は、電流検出器CD3による交流電流Ioの検出値に基づいて、負荷8が力行運転しているか回生運転しているかを判定する。負荷判定部28は、例えば、電流検出器CD3の出力信号Iofから得られる三相交流電流Ioを三相-二相変換(例えばdq変換)して有効電流および無効電流を求める。負荷判定部28は、有効電流が正の値である場合(すなわち、有効電流がインバータ3から負荷8に流れている場合)は負荷8が力行運転していると判定する。有効電流が負の値である場合(すなわち、有効電流が負荷8からインバータ3に流れている場合)は、負荷判定部28は、負荷8が回生運転していると判定する。負荷判定部28は、判定結果を示す信号DLを出力する。負荷8が力行運転している場合には信号DLはHレベルにされる。負荷8が回生運転している場合には信号DLはLレベルにされる。
【0054】
制御部30は、SOC算出部20からの信号SOCf、停電検出器22からの信号DF、充電制御部24からの参照電圧VBR、放電制御部26からの参照電圧VDR、負荷判定部28からの信号DL、および直流電圧VB,VDなどに基づいて、双方向チョッパ2を制御する。
【0055】
信号DFがLレベルであり、信号DLがHレベルである場合(商用交流電源6の健全時であって、負荷8が力行運転している場合)には、制御部30は、直流電圧VB(バッテリ7の端子間電圧VB)が参照電圧VBRになるように双方向チョッパ2を制御する。参照電圧VBR=VB1である。
【0056】
信号DFがLレベルであり、信号DLがLレベルである場合(商用交流電源6の健全時であって、負荷8が回生運転をしている場合)には、制御部30は、直流電圧VBが参照電圧VBRになるように双方向チョッパ2を制御する。参照電圧VBR=VB1である。
【0057】
信号DFがHレベルであり、信号DLがHレベルである場合(商用交流電源6の停電時であって、負荷8が力行運転している場合)には、制御部30は、直流電圧VDが参照電圧VDRになるように双方向チョッパ2を制御する。
【0058】
信号DFがHレベルである、信号DLがLレベルである場合(商用交流電源6の停電時であって、負荷8が回生運転している場合)には、制御部30は、直流電圧VBが参照電圧VBRになるように双方向チョッパ2を制御する。参照電圧VBR=VB2である。
【0059】
次に、無停電電源装置100の動作について説明する。
図5は、商用交流電源6の健全時であって、負荷8が力行運転している場合の無停電電源装置100の動作を説明する図である。図中の矢印は、商用交流電源6、負荷8およびバッテリ7の間で遣り取りされる電力の流れを示している。
【0060】
図5に示すように、コンバータ1は、商用交流電源6から供給される交流電力を直流電力に変換して直流ラインL1,L2間に出力する。インバータ3は、コンバータ1から直流ラインL1,L2を介して供給される直流電力を交流電力に変換して負荷8に供給する。
【0061】
双方向チョッパ2は、コンバータ1から直流ラインL1,L2を介して供給される直流電力をバッテリ7に蓄える。制御装置5は、バッテリ7の直流電圧VBが参照電圧VBR(=VB1)になるように双方向チョッパ2を制御する。これにより、バッテリ7のSOCがSOCnormalになるように、バッテリ7が充電される。SOC>SOCnormalになると、制御装置5は、双方向チョッパ2を停止させることにより、バッテリ7の充電を停止する。
【0062】
図6は、商用交流電源6の健全時であって、負荷8が回生運転している場合の無停電電源装置100の動作を説明する図である。
【0063】
図6に示すように、インバータ3は、負荷8で発生した回生電力(交流電力)を直流電力に変換して直流ラインL1,L2間に出力する。コンバータ1は、負荷8から直流ラインL1,L2に回生される直流電力を交流電力に変換して商用交流電源6に供給する。
図6の例では、SOC=SOCnormalであるため、双方向チョッパ2は停止している。ただし、SOC<SOCnormalである場合には、双方向チョッパ2は、負荷8から回生される直流電力をバッテリ7に蓄えることができる。この場合、制御装置5は、バッテリ7の直流電圧VBが参照電圧VBR(=VB1)になるように双方向チョッパ2を制御する。SOC>SOCnormalになると、制御装置5は、双方向チョッパ2を停止させることにより、バッテリ7の充電を停止する。
【0064】
図7は、商用交流電源6の停電時であって、負荷8が力行運転している場合の無停電電源装置100の動作を説明する図である。商用交流電源6の停電が発生すると、入力端子T1およびコンバータ1の交流端子1aの間に設けられた電磁接触器(図示せず)がオフされることにより、商用交流電源6と無停電電源装置100とが切り離される。コンバータ1の運転は停止される。
【0065】
図7に示すように、負荷8が力行運転している場合には、双方向チョッパ2は、バッテリ7の直流電力を直流ラインL1,L2を介してインバータ3に供給する。インバータ3は、バッテリ7から直流ラインL1,L2を介して供給される直流電力を交流電力に変換して負荷8に供給する。
【0066】
制御装置5は、直流電圧VDが参照電圧VDRになるように双方向チョッパ2を制御する。バッテリ7のSOCが低下してSOC<SOCminになると、制御装置5は、双方向チョッパ2を停止させることにより、バッテリ7の放電を停止する。
【0067】
図8は、商用交流電源6の停電時であって、負荷8が回生運転している場合の無停電電源装置100の動作を説明する図である。
図7と同様に、無停電電源装置100と商用交流電源6とは切り離され、コンバータ1の運転は停止される。
【0068】
図8に示すように、インバータ3は、負荷8で発生した回生電力(交流電力)を直流電力に変換して直流ラインL1,L2間に出力する。双方向チョッパ2は、負荷8から直流ラインL1,L2に回生される直流電力をバッテリ7に蓄える。制御装置5は、バッテリ7の直流電圧VBが参照電圧VBR(=VB2)になるように双方向チョッパ2を制御する。これにより、バッテリ7のSOCがSOCmaxになるまでバッテリ7が充電される。SOC>SOCmaxになると、制御装置5は、双方向チョッパ2を停止させることにより、バッテリ7の充電を停止する。
【0069】
図9は、商用交流電源6が復電した場合であって、負荷8が回生運転している場合の無停電電源装置100の動作を説明する図である。
図8に示したように商用交流電源6の停電時に負荷8が発生した回生電力をバッテリ7に蓄えることによって、商用交流電源6の復電時にSOC>SOCnormalとなっている場合がある。このような場合には、
図9に示すように、双方向チョッパ2は、負荷8の回生運転時に、バッテリ7の直流電力を直流ラインL1,L2間に出力することにより、SOCをSOCnormalまで下げることができる。コンバータ1は、インバータ3およびバッテリ7から直流ラインL1,L2に供給される直流電力を交流電力に変換して商用交流電源6に供給する。これにより、回生電力を有効に利用することができる。
【0070】
制御装置5は、直流電圧VDが参照電圧VDRになるように双方向チョッパ2を制御する。バッテリ7のSOCが低下してSOC≦SOCminになると、制御装置5は、双方向チョッパ2を停止させることにより、バッテリ7の放電を停止する。
【0071】
図10および
図11は、制御装置5による双方向チョッパ2の制御を説明するためのフローチャートである。
図10および
図11のフローチャートは、無停電電源装置100の作動時に、制御装置5によって繰り返し実行される。
【0072】
図10に示されるように、制御装置5は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)01により、交流電圧VIの検出値に基づいて、商用交流電源6の停電が発生しているか否かを判定する。交流電圧VIが正常範囲内である場合にはS01はNO判定とされ、交流入力電圧VIが正常範囲よりも低い場合にはS01はYES判定とされる。
【0073】
商用交流電源6が健全である場合(S01のNO判定時)、制御装置5は、S02に進み、電流検出器CD3による交流電流Ioの検出値に基づいて、負荷8が力行運転しているか回生運転しているかを判定する。交流電流Ioから求められる有効電流が正の値である場合にはS02はYES判定とされ、有効電流が負の値である場合にはS02はNO判定とされる。
【0074】
負荷8が力行運転している場合(S02のYES判定時)には、制御装置5は、S03により、商用交流電源6から供給される交流電力が負荷8に供給されるように、コンバータ1およびインバータ3を制御する(
図5参照)。
【0075】
負荷8の力行運転中、制御装置5は、S04により、バッテリ7のSOCとSOCnormalとを比較する。SOC≦SOCnormalであれば(S04のYES判定時)、制御装置5は、S05に進み、コンバータ1から直流ラインL1,L2を介して供給される直流電力をバッテリ7に蓄えるように、双方向チョッパ2を制御する。S05では、制御装置5は、参照電圧VBRをVB1に設定し、直流電圧VBが参照電圧VBRになるように双方向チョッパ2を制御する。SOC>SOCnormalである場合(S04のNO判定時)には、S06により、双方向チョッパ2を停止することにより、バッテリ7の充電を停止する。
【0076】
S02に戻って、負荷8が回生運転している場合(S02のNO判定時)には、制御装置5は、S07により、負荷8が発生した回生電力が商用交流電源6に供給されるように、コンバータ1およびインバータ3を制御する(
図6参照)。
【0077】
負荷8の回生運転中、制御装置5は、S08により、バッテリ7のSOCとSOCnormalとを比較する。SOC>SOCnormalであれば(S08のYES判定時)、制御装置5は、S09に進み、バッテリ7の直流電力を直流ラインL1,L2に出力するように、双方向チョッパ2を制御する(
図9参照)。S09では、制御装置5は、直流電圧VDが参照電圧VDRになるように双方向チョッパ2を制御する。SOC≦SOCnormalである場合(S08のNO判定時)には、S10により、双方向チョッパ2を停止することにより、バッテリ7の放電を停止する。
【0078】
S01に戻って、商用交流電源6の停電が発生している場合(S01のYES判定時)には、制御装置5は、S11に進み、入力端子T1とコンバータ1の交流端子1aとの間に設けられた電磁接触器をオフすることにより、無停電電源装置100を商用交流電源6から切り離す。
【0079】
続いて、制御装置5は、S12に進み、電流検出器CD3による交流電流Ioの検出値に基づいて、負荷8が力行運転しているか回生運転しているかを判定する。
【0080】
負荷8が力行運転している場合(S12のYES判定時)には、制御装置5は、S13により、バッテリ7の直流電力が負荷8に供給されるように、双方向チョッパ2およびインバータ3を制御する(
図7参照)。
【0081】
負荷8の力行運転中、制御装置5は、S14により、バッテリ7のSOCとSOCminとを比較する。SOC>SOCminであれば(S14のYES判定時)、制御装置5は、S15に進み、バッテリ7の直流電力を直流ラインL1,L2に出力するように、双方向チョッパ2を制御する。S15では、制御装置5は、直流電圧VDが参照電圧VDRになるように双方向チョッパ2を制御する。SOC≦SOCminである場合(S16のNO判定時)には、S16により、双方向チョッパ2を停止することにより、バッテリ7の放電を停止する。
【0082】
S12に戻って、負荷8が回生運転している場合(S12のNO判定時)には、制御装置5は、S17により、バッテリ7のSOCとSOCmaxとを比較する。SOC<SOCmaxであれば(S17のYES判定時)、制御装置5は、S18に進み、インバータ3から直流ラインL1,L2を介して回生される直流電力をバッテリ7に蓄えるように、双方向チョッパ2を制御する(
図8参照)。S17では、制御装置5は、参照電圧VBRをVB2に設定し、直流電圧VBが参照電圧VBRになるように双方向チョッパ2を制御する。SOC≧SOCmaxである場合(S17のNO判定時)には、S19により、双方向チョッパ2を停止することにより、バッテリ7の充電を停止する。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態に係る無停電電源装置100では、商用交流電源6の健全時には、バッテリ7のSOCがSOCの使用可能範囲の上限値SOCmaxよりも小さく、かつ、下限値SOCminよりも大きいSOCnormal(SOC基準値)になるように、双方向チョッパ2が制御される。これによると、商用交流電源6の停電時に負荷8が回生運転した場合に、負荷8が発生した回生電力を、双方向チョッパ2を介してバッテリ7が回収することができる。
【0084】
これによると、回生電力を商用交流電源6に戻すことなく直流電圧VDの上昇を抑制することができる。また、負荷8が回生運転から力行運転に切り替わったときにはバッテリ7に蓄えられた回生電力を負荷8に供給することができるため、負荷8の回生電力を有効に利用することができる。さらに、商用交流電源6の健全時にはバッテリ7をSOCの使用可能範囲の上限値SOCmaxまで充電しないため、バッテリ7の劣化の進行を抑制することができる。よって、バッテリ7の長寿命化を実現することができる。
【0085】
また上記構成において、SOCnormalを、停電補償用蓄電量に基づいたSOCbackup以上に設定することにより、商用交流電源6の停電時に負荷8が力行運転した場合には、バッテリ7に蓄えられた直流電力を用いて、負荷8を予め定められた補償時間に亘って駆動することができる。
【0086】
さらに、SOCnormalを、SOCnormal+Wmax(回生電力量の最大値)≦SOCmaxの関係を満たすように設定することにより、商用交流電源6の停電中に負荷8が回生運転のみを行った場合に、回生電力によってバッテリ7のSOCがSOCmaxを超えてバッテリ7の充電が禁止されることを回避できる。よって、回生電力を回収しきれずに直流電圧VDの上昇を抑制することができる。
【0087】
特許文献1では、停電補償用の蓄電池とは別に、回生電力を回収するためのリチウムイオン電池を用いるため、2つの電池および2つの双方向チョッパが必要となり、無停電電源装置の大型化、高重量化およびコストアップを招いてしまう。また、無停電電源装置の制御が複雑化することが懸念される。本実施の形態では、1つのバッテリ7が停電補償と回生電力の回収とを担うことができるため、このような懸念点を解消することができる。
【0088】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の技術的範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1 コンバータ、2 双方向チョッパ、3 インバータ、4 操作部、5 制御装置、6 商用交流電源、7 バッテリ、8 負荷、10 CPU、12 メモリ、14 I/O装置、16 バス、20 SOC算出部、22 停電検出器、24 充電制御部、26 放電制御部、28 負荷判定部、30 制御部、100 無停電電源装置、C1 コンデンサ、CD1~CD3 電流検出器、L1,L2 直流ライン。