(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】尿素製造プロセス及び並列MPユニットを備えたプラント
(51)【国際特許分類】
C07C 273/04 20060101AFI20241216BHJP
C07C 275/00 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
C07C273/04
C07C275/00
(21)【出願番号】P 2023550289
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 NL2022050095
(87)【国際公開番号】W WO2022177438
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-08-31
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512061836
【氏名又は名称】スタミカーボン・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルムス・ヒューベルテュス・ヘールツ
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/165246(WO,A1)
【文献】特開2018-076379(JP,A)
【文献】国際公開第2020/130817(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 273/04
C07C 275/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素含有生成物を製造するためのプラントであって、前記プラントは、HPストリッパ(HPS)と、NH
3及びCO
2から尿素を形成するための反応器(HPR)と、HPカルバメート凝縮器(HPCC)と、を備えた高圧(HP)合成部(HPSS)を備えた尿素製造部(UPS)を備え、前記反応器及び前記HPカルバメート凝縮器は、任意に組み合わされ、前記尿素製造部は、中圧(MP)処理ユニット(MPTU)と、MP解離器(MPD)と、MP凝縮部(MPCC)と、を更に備え、
前記反応器は、前記HPストリッパに接続された第1の液体流路(1a)に接続された尿素合成溶液(1)の出口を有し、前記出口はまた、前記MP解離器(MPD)に接続された第2の液体流路(1b)に接続され、前記第2の液体流路(1b)は、前記HPストリッパを迂回し、
前記HPストリッパは、ストリップガスとしてのCO
2供給物のための入口を有し、
前記プラントは、前記HPストリッパ(HPS)から前記MP処理ユニット(MPTU)へのストリッピングされた尿素溶液(2)のための液体流路
を備え、
前記MP処理ユニット(MPTU)は、MPフラッシュ容器(MPF)を備え、
前記MPフラッシュ容器は、前記ストリッピングされた尿素(2)溶液を受け入れ、第1のMPガス流(4)のガス出口と、MP尿素溶液(7)の液体出口と、を有し、
前記MP解離器(MPD)は、第2のMPガス流(5)の出口と、MP尿素溶液の出口(8)と、を有するシェルアンドチューブ式熱交換器であり、
前記プラントは、前記MP処理ユニット(MPTU)から前記MP凝縮部(MPCC)への
前記第1のMPガス流(4)のためのガス流路と、前記MP解離器(MPD)から前記MP凝縮部(MPCC)への
前記第2のMPガス流(5)のためのガス流
路を備える、プラント。
【請求項2】
前記MP処理ユニット(MPTU)及び前記MP解離器(MPD)は、並列に配置されている、請求項1に記載のプラント。
【請求項3】
前記MP解離器(MPD)は、加熱流体として蒸気を使用する熱交換器である、請求項1又は2に記載のプラント。
【請求項4】
前記プラントは、硝酸をアンモニアで中和して硝酸アンモニウムを形成するように構成され、硝酸の入口と、前記MP処理ユニットの尿素溶液の出口の下流にある前記尿素製造部に含まれるユニットからのアンモニア含有ガスの入口と、を有する中和部を備える硝酸アンモニウム部(AN)を更に備え、前記プラントは、低圧(LP)解離器(LPD)、及び前記MP処理ユニット(MPTU)から前記LP解離器へのMP尿素溶液(7)のための液体流路(7)と、前記LP解離器から前記中和部へのアンモニア含有LPガス(12)のためのガス流路(12)と、を更に備え
、前記LP解離器は、LP尿素溶液(11)の出口とLPガス(12)の出口とを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項5】
前記プラントは、前記MP解離
器(MPD)から前記LP解離器又は追加のLP解離
器への液体流路(8)を更に備え、前記追加のLP解離器は、LP尿素溶液の出口と、前記中和部に接続された第2のアンモニア含有LPガス流の出口と、を有する、請求項4に記載のプラント。
【請求項6】
前記MP
凝縮部(MPCC)のカルバメート溶液(9)の液体出口が、前記HP合成部への再循環流路に接続されている、請求項1~
5のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項7】
前記プラントは、尿素溶液(11a)から水を除去するための前蒸発器(PEV)を備え、前記MP凝縮部(MPCC)は、前記前蒸発器(PEV)と熱を交換するための熱交換壁を備え
る、請求項1~
6のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項8】
前記プラントは、チューブ側及びシェル側を有するシェルアンドチューブ式熱交換器を備え、前記チューブ側は、前記前蒸発器(PEV)を提供し、前記シェル側は、前記MP凝縮部(MPCC)の少なくとも一部を提供する、請求項7に記載のプラント。
【請求項9】
前記プラントは、HP尿素合成溶液のための流路の前記第1の液体流路及び前記第2の液体流路へのスプリットを備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項10】
前記スプリットは、バルブを含む、請求項9に記載のプラント。
【請求項11】
前記MP解離器(MPD)由来の前記尿素溶液(8)を、前記MP処理ユニット(MPTU)由来の前記第1のMPガス流(4)との向流直接接触に供するためのMPストリッパ(MPS)をさらに備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のプラント。
【請求項12】
前記MPストリッパ(MPS)は、断熱的にストリッピングするように構成される、請求項11に記載のプラント。
【請求項13】
前記プラントは、前記MPストリッパから追加のLP解離器への液体流路(8)を備え、前記追加のLP解離器は、LP尿素溶液の液体出口と、低圧カルバメート凝縮器に接続された第2のアンモニア含有LPガス流のガス出口と、を備える、請求項11又は12に記載のプラント。
【請求項14】
前記プラントは、前記MPフラッシュ容器(MPF)からMP尿素溶液(7)を受け取るように接続されたLP解離器(LPD)を備え、前記LP解離器は、アンモニア消費ユニットのガス入口に接続されたガス出口を有し、前記MPフラッシュ容器のMP尿素溶液(7)の前記液体出口は、LP尿素溶液の第1の出口と、アンモニア含有LPガスの第2の出口と、を有するLP解離器に接続され、アンモニア含有LPガスの前記第2の出口は、アンモニア消費ユニットに接続される、請求項13に記載のプラント。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか一項に記載のプラントで行われる尿素含有生成物を製造するためのプロセスであって、前記プロセスは、
-NH
3供給物とCO
2供給物とを前記反応器内で反応させて、尿素合成溶液を生じさせるステップと、
-前記尿素合成溶液を、少なくとも第1の部分と第2の部分とに分流するステップと、
-前記第1の部分を前記HPストリッパに供給し、それによってストリッピングされた尿素溶液を得るステップと、
-前記ストリッピングされた尿素溶液を、
前記MPフラッシュ容器を備える前記MP処理ユニット(MPTU)内で中圧での処理に供して、前記第1のMPガス流(4)を生じさせるステップと、
-
シェルアンドチューブ式熱交換器である前記MP解離器(MPD)中で前記第2の部分を中圧解離に供して、前記第2のMPガス流(5)及びMP尿素溶液を生じさせるステップと、
-前記第1のMPガス流及び第2のMPガス流を少なくとも部分的に前記MP凝縮部(MPCC)に供給するステップと、を含む、プロセス。
【請求項16】
NH
3及びCO
2は、NH
3対CO
2のモル比が2.0未満で、前記MP処理ユニット内の前記ストリッピングされた尿素溶液から除去される、請求項
15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記MP処理ユニット(MPTU)における前記処理は、前記ストリッピングされた尿素溶液(2)の実質的な断熱フラッシングを伴い、前記第1のMPガス流(4)を生じさせる、請求項
15又は
16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記MP処理ユニット(MPTU)由来の第1の尿素溶液(8)が、LP解離器(LPD)内で処理され、LP尿素溶液(11)及びアンモニア含有LPガス(12)を生じさせ、前記アンモニア含有LPガス(12)は、アンモニア消費ユニットに供給される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記MP処理ユニット(MPTU)から直接的又は間接的に受け取った尿素溶液(7)を低圧解離に供してLP尿素溶液(11)及びアンモニア含有LPガス(12)を生じさせるステップと、前記アンモニア含有LPガス(12)を使用して硝酸を中和して硝酸アンモニウムを形成するステップと、を更に含む、請求項
15~
17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
尿素含有生成物を製造するための既存のプラントを改変する方法であって、前記既存のプラントは、HPストリッパ(HPS)と、NH
3及びCO
2から尿素を形成するための反応器(HPR)と、HPカルバメート凝縮器(HPCC)と、を備えた高圧(HP)合成部(HPSS)を備えた尿素製造部(UPS)を備え、前記反応器及び前記HPカルバメート凝縮器は、任意に組み合わされ、前記HPストリッパは、ストリップガスとしてのCO
2供給物のための入口を有し、
前記方法は、
-前記既存のプラントにまだ存在していない場合、MP解離器(MPD)と、MP凝縮部(MPCC)と、尿素合成溶液(1)の出口から前記HPストリッパを迂回する前記MP解離器(MPD)への接続と、
-
MPフラッシュ容器(MPF)を備える中圧(MP)処理ユニット(MPTU)、及び前記HPストリッパ(HPS)から前記
MPフラッシュ容器(MPF)へのストリッピングされた尿素溶液(2)のための液体流路と、前記
MPフラッシュ容器(MPF)から前記MP凝縮部(MPCC)への第1のMPガス流(4)のためのガス流路と、
-前記プラントにまだ存在していない場合、
シェルアンドチューブ式熱交換器である前記MP解離器(MPD)から前記MP凝縮部(MPCC)までの第2のMPガス流(5)のためのガス流路と、を追加することを含み、それによって、請求項1に記載のプラントを得る、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NH3及びCO2からの尿素の製造に関する。
【0002】
導入
尿素プラントは、多くの場合、高圧(HP)ストリッパ、例えば、CO
2供給物の少なくとも一部をストリップガスとして使用する高圧(HP)ストリッパを備えたタイプである(例えば、Stamicarbon CO
2ストリッピングプロセス)。CO
2ストリッピングタイプの尿素プロセスの例示的なプロセススキームは、Ullmann’s Encyclopaedia、尿素章、2010、
図16に示されている。HPストリッパは、例えば80%のストリッピング効率で動作され、加熱流体としての蒸気に対する対応する需要を有する。
【0003】
特許文献1は、高価な高圧装置を改変又は交換することなく、既存の施設の容量を拡張することが限られた範囲内でのみ可能であるという事実の主な原因が、HPストリッピング工程及びHP凝縮工程にあると述べている。特許文献1は、尿素合成溶液の一部が合成ゾーンから1MPa~4MPaの圧力で動作する中圧処理ゾーンに移送され、他の部分がHPストリッパに送られるようにプラントを改変することによってプラントの容量を増加させることを提案している。特許文献1は、中圧処理ゾーンが、中圧解離器からのガス流及び中圧ストリッパからのガス流を受け入れる中圧カルバメート凝縮器MCCを備えたプラントを示している。中圧ストリッパは、中圧解離器からの液体及びCO2供給物の一部を受け取る。中圧解離器は、尿素反応器から直接液体を受け取る。高圧ストリッパからのストリッピングされた尿素溶液は、低圧回収部に直接供給される。
【0004】
特許文献2は、尿素及び尿素硝酸アンモニウムの製造のための統合システムを記載しており、当該システムは、(i)尿素の製造のためのユニットであって、当該ユニットは、尿素合成ループを形成するように互いに流体連通している反応器、ストリッパ、及び凝縮器を備える尿素合成部と、合成部の下流に、それと流体連通している、CO2及びNH3を、当該CO2及びNH3を含む尿素水溶液から分離するのに適した尿素精製部と、を備えるユニットと、(ii)アンモニア及び硝酸から硝酸アンモニウムを製造するためのユニットと、を備え、尿素プラントの精製部からのNH3の出口は、硝酸アンモニウムの製造のためのユニットのNH3の入口に接続され、精製部からの尿素溶液の出口及び硝酸アンモニウムの製造のためのユニットからの硝酸アンモニウム水溶液の出口は、当該尿素溶液と当該硝酸アンモニウム水溶液とを混合するためのユニットに接続されている。
【0005】
特許文献3は、尿素及び硝酸尿素アンモニウムを製造するための統合プロセスを記載している。
【0006】
特許文献4には、HPCO2ストリッパを用いた尿素製造プロセスが記載されており、このプロセスでは、ストリッパから出る尿素溶液は、断熱膨張に供され、蒸気と液体とが生成され分離されて、液体は第1の回収部に入り、蒸気は凝縮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2004/0116743号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3274297号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3541780号明細書
【文献】米国特許出願公開第2012/0302789号明細書
【文献】米国特許第5767313号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
産業プラントからのCO2排出量は、多くの場合、環境上の理由から制限されているか、又は排出許可が必要であるが、たとえ排出許容量が取引可能であっても、CO2排出量はコストを増加させる可能性がある。
【0009】
特に大規模プラントでは、エネルギー効率の良い尿素製造プロセスが依然として求められている。また、CO2排出量が少なく、エネルギー消費量が少ない尿素と硝酸アンモニウムとの統合生産プロセスも求められている。対応するプラント及び既存のプラントを改変する方法に対する要望も存在する。本発明は、尿素及び硝酸アンモニウムの一体生産のためのプロセスに限定されず、尿素のみが製造される実施形態も含む。好ましい実施形態では、所望のエネルギー節約が達成され得る。改善されたエネルギー効率、及び尿素及び硝酸アンモニウムの一体生産は、本発明の一部の実施形態の好ましい目的であるが、必ずしも全ての実施形態の目的ではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の態様において、尿素含有生成物を製造するためのプラントに関し、このプラントは、HPストリッパと、NH3及びCO2から尿素を形成するための反応器と、HPカルバメート凝縮器と、を備えた高圧(HP)合成部を備えた尿素製造部を備え、反応器及びHPカルバメート凝縮器は、任意に組み合わされ、尿素製造部は、中圧(MP)処理ユニットと、MP解離器と、MP凝縮部と、を更に備え、反応器は、HPストリッパに接続された第1の液体流路に接続された尿素合成溶液の出口を有し、当該出口はまた、MP解離器に接続された第2の液体流路に接続され、HPストリッパは、ストリップガスとしてのCO2供給物のための入口を有し、プラントは、当該HPストリッパから当該MP処理ユニットへのストリッピングされた尿素溶液のための液体流路と、MP処理ユニットからMP凝縮部への第1のMPガス流のためのガス流路と、MP解離器からMP凝縮部への第2のMPガス流のためのガス流路と、を備える。
【0011】
好ましくは、プラントは、低圧(LP)解離器と、MP処理ユニットから当該LP解離までのMP尿素溶液のための液体流路と、を更に備える。
【0012】
好ましくは、プラントは、アンモニアで硝酸を中和して硝酸アンモニウムを形成するように構成され、硝酸の入口と、アンモニア含有ガスの入口と、を有する中和部を備える硝酸アンモニウム(AN)部を備える。好ましくは、プラントは、当該好ましいLP解離器から当該中和部までのアンモニア含有LPガスのためのガス流路を備える。
【0013】
本発明は更に、当該第1の態様に従ってプラントで行われる尿素含有生成物を製造するためのプロセスに関し、プロセスは、当該反応器内でNH3供給物とCO2供給物とを反応させて、尿素合成溶液を生じさせるステップと、当該尿素合成溶液を少なくとも第1の部分及び第2の部分に分流するステップと、当該第1の部分を当該HPストリッパに供給し、それによってストリッピングされた尿素溶液を得るステップと、当該ストリッピングされた尿素溶液を当該MP処理ユニット内で中圧での処理に供して当該第1のMPガス流を生じさせるステップと、当該第2の部分を当該MP解離器内で中圧解離に供して、当該第2のMPガス流及びMP尿素溶液を生じさせるステップと、当該第1のMPガス流及び第2のMPガス流を当該MP凝縮部に少なくとも部分的に供給するステップと、を含む。
【0014】
本発明はまた、尿素含有生成物を製造するための既存のプラントを改変する方法に関する。好ましくは、既存のプラントは、HPストリッパと、NH3及びCO2から尿素を形成するための反応器と、HPカルバメート凝縮器と、を備えた含む高圧(HP)合成部を備えた尿素製造部を備え、反応器及びHPカルバメート凝縮器は、任意に組み合わされ、HPストリッパは、ストリップガスとしてのCO2供給物のための入口を有する。この方法は、MP解離器とMP凝縮部、及び尿素合成溶液の出口からMP解離器への接続とを、既存のプラントにまだ存在していない場合に追加することを含む。この方法はまた、中圧(MP)処理ユニットと、当該HPストリッパから当該MP処理ユニットへのストリッピングされた尿素溶液のための液体流路と、MP処理ユニットからMP凝縮部への第1のMPガス流のためのガス流路と、第2のMPガス流のためのガス流路がプラント内にまだ存在していない場合、MP解離器からMP凝縮部への第2のMPガス流のためのガス流路と、を追加することを含む。改変されたプラントは、好ましくは、本発明の第1の態様によるプラントである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による例示的なプラント及びプロセスを概略的に示す。
【
図2】本発明による例示的なプラント及びプロセスの詳細を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図に例示される任意の実施形態は、単なる例であり、本発明を限定するものではない。
【0017】
本開示の尿素製造プラント及びプロセスは、概して、反応器から尿素合成溶液を受け取るMP解離器、及びHPストリッパからストリッピングされた尿素溶液を受け取るMP処理ユニットを使用することの賢明な洞察に基づいており、少なくともMP解離器からのガス流及びMP処理ユニットからのガス流は、MP凝縮部に直接的又は間接的に供給される。当該MP凝縮部では、ガス流は、少なくとも部分的に凝縮されて、カルバメート溶液を生成する。特に、MP解離器からのガス流は、MP凝縮部において少なくとも部分的に凝縮され、MP処理ユニットからのガス流は、当該MP凝縮部において少なくとも部分的に凝縮され、好ましくは、当該ガス流は両方とも、同じ凝縮器において少なくとも部分的に凝縮され、凝縮器は、例えば、熱交換器である。
【0018】
MP処理ユニットからMP凝縮部にガス流を供給することは、有利にも、MP処理ユニットの液体(すなわち、尿素溶液)のための出口の下流の1つ以上のユニットからのCO2排出量をより少なくすることに寄与し得る。MP処理ユニットからMP凝縮部にガス流を供給することは、有利なN/C比でMP凝縮部内のカルバメートを凝縮することに寄与し得る。
【0019】
MP処理部からMP凝縮部にガス流を供給することによって、有利にも、MPカルバメート溶液の一部として、比較的より多くのCO2がHP合成部に再循環され得る。これにより、CO2回収率が改善され、好ましい硝酸アンモニウム(AN)部からの排出が低減される。
【0020】
有利なことに、HPストリッパの蒸気消費は、MP処理ユニットがそのMP処理ユニットに供給される尿素溶液を処理することによって低減され得る。
【0021】
MP凝縮部がMP解離器及びMPCO2供給物からガスのみを受け取るプロセスと比較して、有利にも、より多くのCO2をHPストリッパに送ることができる。これは、HPストリッパの蒸気消費量の低減に更に寄与し得る。HPストリッパの蒸気消費量はより低いことが一般に望ましく、プラントのより高いエネルギー効率に寄与する。
【0022】
HPストリッパのサイズは、本発明のプラントにおける尿素の総生産能力と比較して、相対的に小さいことが有利であり得る。
【0023】
MP解離器とMP処理ユニットとは、プラント内に並列に配置されている。
【0024】
HP合成部は、HPストリッパと、HP反応器と、HPカルバメート凝縮器と、を備える。ストリッパは、CO2ストリッパである。プラントは、反応器からHPストリッパへの第1の液体流路と、反応器からMP解離器への第2の液体流路と、を備える。HP合成部は、例えば、HPカルバメート凝縮器に、NH3供給物のため入口を備える。
【0025】
反応器は、NH3及びCO2から尿素を形成するように構成され、尿素合成溶液のための出口を有する。尿素合成溶液は、例えば、2.85~3.3のN/C比を有する。反応器は、尿素合成圧力、すなわちHP、及び尿素合成温度、例えば、100バール超、例えば、120バール~300バール、例えば、120バール~200バールで、及び/又は例えば、160℃~240℃の温度、好ましくは170℃~220℃の温度で動作される。
【0026】
反応器は、例えば、トレイを備えた垂直反応器であり、供給物入口は底部にあり、尿素合成溶液は、例えば、下降管を使用して、垂直反応器の上部から引き出される。
【0027】
例えば、反応器は、ガス(いわゆる不活性物)のための別個の出口を有する。不活性物は、例えば、好ましいAN部に直接的又は間接的にガス流として供給される。不活性物は、例えば、供給物流に由来し、例えば、N2を含む。反応器のガス出口からのガス流は、例えば、NH3も含む。
【0028】
尿素製造プラントは、直列の1つ以上の反応器、例えば、第1の反応器及び後反応器を備えてもよい。後反応器は、例えば、反応器流出物を受け入れ、第1の流路と第2の流路、すなわち、第1の液体流路と第2の液体流路との間のスプリットに接続された液体出口を有する。尿素製造プラントはまた、並列の1つ以上の反応器を備えてもよい。
【0029】
反応器及びHPカルバメート凝縮器は、任意に、単一の容器内で組み合わされる。一例は、特許文献5に記載されているような一体型反応器/凝縮器である。例示的な一体型凝縮器/反応器は、単一の容器に組合わされた反応ゾーン及び凝縮ゾーンを備える。凝縮ゾーンは、例えば、チューブ束などの熱交換面を含む。反応ゾーンは、例えば、バッフルを含む。反応ゾーンは、典型的には、容器内の凝縮ゾーンの下流に配置される。例示的な一体型凝縮器/反応器は、水平容器と、チューブ内に冷却流体及びシェル空間内にプロセス媒体を受け入れるように構成されたチューブ束と、を備える。
【0030】
反応器は、HPストリッパへの第1の液体流路、及びMP解離器への第2の液体流路に直接的又は間接的に接続された尿素合成溶液の出口を有する。第2の液体流路は、HPストリッパを迂回している。プラントは、例えば、バルブを使用した、HP尿素合成溶液の流路の第1の流路及び第2の流路へのスプリットを備える。典型的には、プラントは、当該第1の液体流路及び当該第2の液体流路へのHP尿素合成溶液のための流路のスプリット、すなわち分流器を備える。HP尿素合成液の流路は、反応器の尿素合成液の出口に接続されている。尿素合成溶液のスプリット又は分流は、高圧で行われる。第1の液体流路及び第2の液体流路は、両方とも、HPでの液体流に使用される。MP解離器に接続された第2の液体流路は、典型的には、尿素溶液をHPからMPに膨張させるための膨張バルブを含む。
【0031】
HP尿素合成溶液のスプリット比は、好ましくは、例えば、起動中に、又は柔軟な方法で尿素製造を増加又は減少させるために調整され得る。例えば、尿素製造を減少させるために、MP解離器を停止させることができる。
【0032】
尿素合成溶液は、尿素、水、カルバミン酸アンモニウム、及びアンモニアを含む。
【0033】
HPストリッパは、ストリップガスとしてのCO2供給物のための入口を有し、ストリッピングされた尿素溶液のための出口、及びガス流のための出口を有する。プラントは、好ましくはCO2ストリッピングタイプである。尿素、水、カルバメート及びアンモニアを含むストリッピングされた尿素溶液は、MP処理ユニットに供給される。
【0034】
HPカルバメート凝縮器(HPCC)は、典型的には、原料NH3供給物の少なくとも一部、好ましくは全てを受け取る。HPCCは、HPストリッパからガス流の少なくとも一部、例えば全てを受け取る。HPカルバメート凝縮器は、反応器の入口に接続された凝縮カルバメートを含む流れのための出口を有し、複合型凝縮器/反応器では、凝縮ゾーンは、反応ゾーンと流体接続されている。
【0035】
尿素生成部は、CO2供給物流を尿素合成圧力に圧縮するCO2圧縮機を備えてもよい。圧縮機は、例えば、多段圧縮機である。CO2は、例えば、合成ガスプラントから、例えば、バッテリリミットで比較的低い圧力(例えば、20バール未満)で入手可能である。合成ガスプラントは、例えば、蒸気改質器と、水性ガスシフト反応器と、CO2除去ユニットと、を備える。合成ガスプラントはまた、アンモニアプラントで使用されるH2を製造し得る。尿素プラントのNH3供給物は、当該アンモニアプラントに由来してもよい。CO2供給物流及びNH3供給物流の他の供給源も可能である。
【0036】
一般に、本発明の様々な実施形態では、HPストリッパは、例えば、チューブにストリップされる尿素溶液を供給するためにストリッパの上部に設けられた入口と、底部にストリッピングされた尿素溶液のための出口と、ストリッパの上部に混合ガス流のための出口と、を備えた垂直シェルアンドチューブ式熱交換器を備える。HPストリッパは、CO2ストリッパタイプであり、底部にストリップガスとして使用されるCO2供給物用の入口を有する。混合ガス流は、HPカルバメート凝縮器内で凝縮され、反応器に供給されるカルバメートを含有する高圧再循環流となる。単一の容器内の複合型反応器/凝縮器の場合、これは、凝縮部から容器内の反応器部への凝縮物の輸送、特に、容器内のカルバメート含有液体の凝縮ゾーンから反応ゾーンへの流れを伴ってもよい。
【0037】
HPストリッパは、典型的には、尿素溶液とストリップガス流とを向流接触させるように構成された装置である。通常、HPストリッパは、チューブ内の尿素溶液及びストリップガス流で構成され、熱はシェル側の蒸気によって供給される。本発明では、HPストリッパは、原料CO2供給物の全部又は一部をストリップガスとして使用する。CO2をストリップガスとして使用してストリッピングすることにより、尿素溶液のN/C比が低下する。ストリッピングされた尿素溶液は、尿素合成溶液よりも低いN/C比、例えば、1.5~2.5の範囲、又は2.0~2.5の範囲などの、3.0未満、2.7未満、又は2.5未満のN/C比を有する。
【0038】
MP凝縮部のMPカルバメート溶液のための液体出口がHP合成部への液体流路に接続され、それによってHP合成部へのカルバメート溶液の再循環を提供する好ましい実施形態では、HPストリッパは、例えば、60%~80%、例えば、65%~75%の範囲のストリッピング効率α、例えば、約70%のストリッピング効率αで動作される。MP凝縮部からのカルバメート溶液が、例えば、溶液を追加の尿素合成部に供給することによって、他の方法で取り除かれる実施形態では、ストリッピング効率は、例えば、最大92%の範囲であり得る。
【0039】
有利なことに、HPストリッパは、MP処理ユニットがストリッピングされた尿素溶液を受け入れ、その尿素溶液の精製に使用されるので、比較的低いストリッピング効率で動作することができ、それによってHPストリッパ内の蒸気消費量が比較的少なくできる。
【0040】
本発明のプラント及びプロセスにおいて、HPカルバメート凝縮器(HPCC)は、例えば、シェルアンドチューブ式熱交換器である。HPCCは、例えば、垂直凝縮器又は水平凝縮器である。HPCCとしてのシェルアンドチューブ式熱交換器は、シェル側空間内にプロセス媒体(特に、凝縮されるガス)及びチューブ内に冷却流体、又はチューブ内にプロセス媒体及びシェル側空間内に冷却流体を有して動作される。
【0041】
いくつかの実施形態では、HPCCは、例えば、シェル内に冷却流体を有する降下薄膜カルバメート凝縮器である。更なる実施形態では、HPCCは、例えば、浸漬凝縮器である。HPCCは、例えば、水平U字型チューブ束、シェル側にプロセス媒体を有し、かつ浸漬チューブ束を備えたシェルアンドチューブ式凝縮器であり、例えば、プール凝縮器である。HPCCは、例えば、U字型チューブ束又は直線チューブ束を備える。HPCCは、任意に、プール凝縮器ゾーン及び反応器ゾーンを備える、プール反応器である。プール反応器は、例えば、シェル空間内にバッフルを備える。
【0042】
HPCCはまた、例えば、シェル空間へのNH3供給物のための入口を備える。
【0043】
MP処理ユニットは、ストリッピングされた尿素溶液を、MPへの膨張及び気体/液体分離を含む処理に供して、第1のMPガス流及び第1のMP尿素溶液を生じさせるように構成され、処理は、任意に、加熱も含む。いくつかの実施形態では、MP処置は、実質的に断熱的であるか、又は断熱的である。いくつかの実施形態では、MP処理ユニットは、CO2供給物流などのガス流の入口を有し、MP処理ユニットにおける処理は、任意に、加熱が有る、又は無しで、尿素溶液をガス流と接触させることを含む。
【0044】
MP処理ユニットにおける処理は、溶液から少なくとも一部のNH3及びCO2を除去すること及び/又はカルバメートをNH3及びCO2に分解すること、並びに溶液からNH3及びCO2を除去することを行って、ストリッピングされた尿素溶液を精製することによって、第1のMPガス流を生じさせる。第1のMPガス流は、NH3及びCO2を含む。
【0045】
いくつかの任意の実施形態では、MP処理ユニット内のストリッピングされた尿素溶液を、CO2供給物流の一部と向流接触させることが使用される。この接触は、任意に、MP処理ユニット内の尿素溶液を加熱することと組み合わされる。
【0046】
例えば、加熱流体、例えば蒸気との間接熱交換を使用して、MPで動作されるMP処理ユニット内でストリッピングされた尿素溶液を加熱することは、ストリッピングされた尿素溶液からのNH3及びカルバミン酸アンモニウムのより完全な除去に寄与し得る。
【0047】
MP処理ユニットのストリッピングされた尿素溶液からカルバミン酸アンモニウムを除去することは、尿素製造部に結合されたAN中和部からのCO2排出量の削減に寄与し得る。それによって、CO2回収率が、MP処理ユニット及びMP凝縮部への第1のMPガス流の供給によって改善される。
【0048】
好ましくは、MP処理ユニットは、尿素溶液をフラッシングする、より好ましくは(実質的に)断熱フラッシングするために構成される。いくつかの実施形態では、MP処理ユニットは、MPフラッシュ容器である。
【0049】
有利にも、好ましい(実質的に)断熱的にMPフラッシュ容器(MPF)内でHPからMPにフラッシングすることによって、第1のMPガス流は、2.0未満、例えば、0.8~1.2の範囲、及び/又はHPストリッピングされた尿素溶液のN/C比よりも低いなどの低いNH3:CO2モル比を有する。第1のMPガス流は、有利にも、MP凝縮部がより有利なN/C比で動作し得るように、比較的高いCO2濃度を有してもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、NH3及びCO2は、MPフラッシュ容器内の尿素溶液から、0.8~1.2の範囲のモル比などの2.0未満のNH3対CO2のモル比で除去される。CO2がガス流に添加される場合、第1のMPガス流は、NH3対CO2のモル比が更に低くてもよい。
【0051】
MP処理ユニットは、例えば、好ましいフラッシュ容器内、例えば、ガスのための上部出口及び液体のための底部出口を有するゾーン又はフラッシュ容器によって、気体/液体分離ゾーンを備え、ここで液体は尿素溶液である。
【0052】
MP処理ユニットは、例えば、尿素溶液を高圧から中圧、例えば10バール~50バール、例えば15バール~40バールの圧力まで膨張させるために使用される。MP処理ユニットは、例えば、MP凝縮部の圧力よりも少なくとも1.0バール高い圧力、例えば、2バール~10バール高い圧力で動作される。
【0053】
好ましいMPフラッシュ容器内のフラッシュの好ましい断熱的性質は、形成されたガス流の低いN/C比(NH3対CO2のモル比)に有利に寄与する。特に、断熱圧力低下すると、CO2は、CO2 HPストリッパから尿素溶液を出て行く程度がNH3よりも多い。
【0054】
第1のMPガス流は、好ましくは2.0未満、例えば、0.9~1.2、例えば、約1.0などの0.5~1.5のN/Cモル比(NH3対CO2モル比)を有する。第1のMPガス流は、好ましくは2.0未満、例えば、0.9~1.2、例えば約1.0などの0.5~1.5のモル比でNH3及びCO2を含有する。第1のガス流は、例えば、約40重量%~50重量%のNH3、約40重量%~50重量%のCO2、例えば、10重量%~20重量%のH2Oを含み、これらの範囲は、CO2が第1のMPガス流に添加される場合に、尿素溶液の液相から除去された成分にも適用され得る。MPカルバメート凝縮器によって、すなわち凝縮器の入口で受け取られる第1のガス流は、好ましくは、そのようなN/Cモル比(NH3対CO2のモル比)を有し、好ましくは、例えば、約40重量%~50重量%のNH3、約40重量%~50重量%のCO2、及び例えば10重量%~20重量%のH2Oを含む。
【0055】
MP解離器(MPD)は、尿素合成溶液の一部を受け取るための第2の液体流路に接続された入口と、第2のMPガス流のための出口と、MP尿素溶液のための出口と、を有する。MPは、典型的には、尿素合成溶液に含まれるカルバメートを解離するための間接的な熱交換のために、加熱流体、例えば蒸気を使用する熱交換器である。MP解離器中の加熱流体として蒸気を使用することは、特にMP解離器の入口でのN/C比とは無関係に尿素溶液から十分なカルバメートを確実に除去する大きな柔軟性の利点を提供する。MP解離器は、例えば、シェル内に蒸気を有し、チューブ内に尿素溶液を有するシェルアンドチューブ式熱交換器である。MP解離器は、例えば、尿素溶液のために、シェルアンドチューブ式熱交換器部分の上流に配置された整流部を含み、整流部は、HPからMPに膨張させた尿素溶液の気体/液体分離、及び尿素溶液と熱交換部分からのガス流との間の向流接触のために構成される。これは、尿素溶液からのカルバメートの良好な除去に寄与する。
【0056】
MP解離器の出口におけるMP尿素溶液は、例えば、少なくとも4のN/C比を有する。MP解離器からの第2のMPガス流は、例えば、少なくとも2.5のN/C比を有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、MP解離器は、HPストリッパから間接的に得られた尿素溶液などの他の尿素溶液流も受け取る。
【0058】
MP解離器は、例えば、シェルアンドチューブ式熱交換器であり、例えば、加熱流体として蒸気を使用する。例えば、MP解離器は、チューブ内に尿素溶液を有し、上部に整流ユニットを有する垂直シェルアンドチューブ式熱交換器である。
【0059】
第2のMPガス流は、MP解離器からMP凝縮部(MPCC)に供給される。MP凝縮部は、カルバメート溶液用の液体出口を有する。
【0060】
プラントは、MP処理ユニットから直接的又は間接的に、好ましくは直接的にMP凝縮部までの第1のMPガス流のためのガス流路を備え、その結果、当該ガスの少なくとも一部、好ましくは全てが、ガスとしてMP凝縮部に輸送される。このようにして、有利にも、ストリッピングされた尿素溶液に含まれるCO2は、MP凝縮部を使用して回収されてもよい。
【0061】
好ましい(実質的に)断熱フラッシュを有する実施形態では、フラッシュからの蒸気の少なくとも一部を使用して、MP凝縮部のN/C比を補正する(減少させる)ことができる。MP凝縮部における第1のMPガス流及び第2のMPガス流の複合カルバメート凝縮は、形成された凝縮物、すなわちカルバメート溶液の2に近い最適なN/C比を提供する。それによって、カルバメート溶液の形態のCO2の回収が可能になる。カルバメート凝縮はまた、MP凝縮部において、有利な比較的低いN/C比で、比較的高い温度(より高い凝縮点)で有利に達成される。
【0062】
MP処理ユニットによって、HPストリッパに由来するCO2がMP処理ユニットからの第1のMPガス流に含まれるCO2を使用し、MP凝縮部で回収することができ、その結果、HPストリッパの蒸気消費量は一定のストリッピング効率αで低くなり得る。それによって、比較的多くのCO2を有利にHPストリッパに供給することができる。アンモニア消費ユニット、例えば、硝酸アンモニウム部を有する好ましい実施形態では、HPストリッパは、ストリッピングされた尿素溶液(カルバメートとしても)に含まれ、好ましいLP解離器によって受け取られるNH3が好ましいアンモニア消費ユニットで使用され、例えば、好ましい硝酸アンモニウム部で反応され得るように、尿素溶融物のみを生成する尿素製造部と比較して、比較的低いストリッピング効率αで有利に動作し得る。当業者であれば、尿素プラントの文脈において、当技術分野で使用される用語であるより低いストリッピング効率αが、利点を提供し得ることを理解する。
【0063】
MP凝縮部は、1つ以上のMPカルバメート凝縮器を備え、例えば、HP合成部への再循環流路に接続されたMPカルバメート溶液のための液体出口を有する。MP凝縮部はまた、非凝縮ガスのための出口も備える。ガスは、例えば、吸収器又はスクラバに、又は例えば、任意のAN部の中和部に供給される。典型的には、プラントは、カルバメート溶液のためのMPユニットからHP合成部までの再循環流路のみを備える。通常、プラントは、アンモニア凝縮器を備えておらず、HP合成部へのアンモニアの専用再循環流路も備えていない。
【0064】
MP凝縮部は、任意に、第1のMPカルバメート凝縮器の下流に配置された第2のMPカルバメート凝縮器として、冷却流体、例えば、冷却水などの冷却液で動作されるMPカルバメート凝縮器を備えてもよく、第1の凝縮器は、例えば、以下で説明するように、前蒸発器と熱統合されている。第2の凝縮器は、例えば、シェルアンドチューブ式熱交換器である。第2の凝縮器は、例えば、第1のMPカルバメート凝縮器から蒸気及び液体の両方を受け取る。MP凝縮部は、特に、カルバメート溶液を非凝縮ガスから分離するための気体/液体分離器を更に備える。
【0065】
MP凝縮部は、好ましくは、水性流、例えば、アンモニア水、例えば、廃水処理部からの水性流、又は例えば、蒸気凝縮物を受け取る。それによって、カルバメートの結晶化が有利に回避される。任意に、MP凝縮部は、使用される場合、例えば、任意のLPカルバメート凝縮器からLPカルバメート溶液を受け取る。
【0066】
任意に、MP凝縮部(MPCC)内の少なくとも1つの凝縮器は、熱交換壁を介して、任意の前蒸発器(pre-evaporator、PEV)と熱交換接触しており、前蒸発器は、尿素溶液、例えば、本明細書で前述するように、かつ以下で説明するように、LP解離器から直接的又は間接的に受け取った尿素溶液を、加熱による水蒸発によって濃縮して濃縮尿素溶液及び蒸気流を生じさせるために使用される。カルバメート凝縮は発熱性である。これは、熱統合に有利となる。
【0067】
前蒸発器は、例えば、熱交換部及び気体/液体分離部を備える。前蒸発器内の尿素溶液は、例えば、0.4バール~0.6バールの絶対値である。
【0068】
本明細書で使用される「前蒸発器」という用語は、更なる蒸発器を使用する必要があることを意味するものではない。例えば、濃縮尿素溶液は、例えば、UAN(硝酸尿素アンモニウム液体肥料)を製造するためにそのように使用されてもよい。濃縮尿素溶液を更に濃縮して、例えば、尿素溶融物を提供してもよく、プラントは、前蒸発器からの尿素溶液を更に濃縮するための蒸発部を備えてもよい。
【0069】
MP凝縮部、特に第1のMP凝縮器は、例えば、熱交換壁と、当該壁を通して互いに熱交換接触している第1のゾーン及び第2のゾーンと、第1のゾーン内のMPプロセス流体、特に凝縮される第1のMPガス流及び第2のMPガス流と、第2のゾーン内の尿素溶液と、を有する熱交換器によって少なくとも部分的に提供される。MP凝縮部は、例えば、シェル内にMPプロセス媒体及びチューブ内に尿素溶液を有するシェルアンドチューブ式熱交換器、特に当該第1のMP凝縮器によって提供される。第2のゾーンは、例えば、第1のゾーンよりも低い圧力で動作される。熱交換器は、有利にも、熱統合を提供する。
【0070】
MPCC内の有利に比較的低いN/C比は、比較的高い温度でのカルバメート凝縮を可能にし、熱統合による前蒸発器内の効率的な水蒸発に寄与する。
【0071】
好ましくは、MP解離器からのMP尿素溶液は、LPに膨張され、好ましくはLPで加熱され、LP処理ユニット(LP解離器など)で気体/液体分離して、アンモニア及び/又はカルバメートを除去することによって尿素溶液を更に精製し、LP尿素流及びLPガス流を生じさせる。LPへの膨張及びLPでの加熱は、例えば、専用のLP処理ユニットで、又はMP処理ユニットの液体出口の下流の尿素溶液を処理するために使用されるのと同じLP処理ユニットで行われる。
【0072】
したがって、プラントは、好ましくは、低圧(LP)解離器と、LPカルバメート凝縮器と、流路、例えば、当該MP解離器から当該LP解離器への任意でMPストリッパを介した尿素溶液のための液体流れ接続と、当該LP解離器から当該LPカルバメート凝縮器へのガス流路と、を備える。
【0073】
LPガス流は、例えば、LPカルバメート凝縮器中でLPカルバメート流に凝縮されるか、又は例えば、アンモニア含有ガス流として、アンモニア消費ユニット、例えば、中和ユニット、例えば、好ましく使用されるAN部の中和ユニットに供給される。
【0074】
好ましくは、プラントは、低圧(LP)解離器と、LPカルバメート凝縮器と、MP解離器からLP解離器への尿素溶液の流路と、LP解離器からLPカルバメート凝縮器へのガス流路と、を備える。好ましくは、プラントは、好ましくは断熱MPストリッピング用の、当該MP解離器からの尿素溶液のための入口と、MPフラッシュ容器からのCO2含有ガス流、例えば、MPCO2供給物及び/又はガスのための入口と、ストリッピングされたMP尿素溶液のための出口と、MP凝縮部に接続されたガス流のための出口と、を有するMPストリッパを備え、好ましくは、プラントは、MPストリッパからLP解離器へのストリッピングされたMP尿素溶液のための液体流路を備える。MPストリッパの詳細は以下に説明する。
【0075】
反応器からの尿素合成溶液は、少なくとも2つの部分に分流され、例えば、50体積%~90体積%の第1の部分がHPストリッパに供給され、例えば、10体積%~50体積%の第2の部分が中圧解離器に供給される(尿素合成溶液の総体積に基づくパーセンテージ)。有利にも、この比率を調整することができ、それによって、例えば、尿素合成溶液のための流路に設けられたバルブを使用して、プラントの柔軟性を高めることができる。例えば、需要が低い期間には、MP処理部への尿素合成溶液の供給を少なくして、総尿素生産量を低下させてもよい。比率は、MP及びLP部から合成への再循環流が最小化されるような方法で最適化される。これにより、合成部の水分が少なくなり、尿素合成がより効率的になる。
【0076】
いくつかの実施形態では、尿素生成プロセスは、少なくとも30体積%又は少なくとも40体積%の尿素合成溶液をMP解離器に供給して、少なくともいくつかの期間にわたって動作される。
【0077】
尿素合成溶液の分流は、例えば、HP合成部に含まれる分流器及びHPで行われる。
【0078】
いくつかの実施形態では、尿素製造部のCO2供給物の一部は、MP供給物CO2流としてMP凝縮部に直接的又は間接的に供給される。
【0079】
好ましい実施形態では、MP凝縮部へのMP供給物CO2流の量は、第1のMPガス流に含まれるCO2の量の70%未満、又は60%未満、及び例えば10%超である。それによって、MP凝縮部に供給されるCO2のかなりの部分は、HPストリッパから尿素溶液を処理するMP処理ユニットに由来し、好ましくは、この処理は、断熱MPフラッシングである。
【0080】
MP供給物CO2流は、例えば、尿素プラントのCO2圧縮機から、又はバッテリリミットから得られる。いくつかの実施形態では、CO2圧縮機は、多段圧縮機であり、追加のCO2流は、任意に、圧縮機の中間段階から抽出される。いくつかの実施形態では、MP供給物CO2流は、専用MPCO2圧縮機から取得される。
【0081】
関心のある任意の実施形態では、MP解離器由来の尿素溶液は、MPストリッパ内で、好ましくは加熱有り、又は無しで、ガス流、例えば、CO2ガス流及び/又はMP処理ユニット由来の第1のMPガス流との向流直接接触に供される。この任意の接触は、ストリッピング効果、特に尿素溶液からのNH3のストリッピング効果を提供し得る。MPで加熱しないストリッピングは、断熱MPストリッピングと称され得る。MP溶液は、向流直接接触に、すなわち、MPで供される。
【0082】
任意のMP断熱ストリッピングに使用されるガス流は、例えば、第1のMPガス流及び/又はMP供給物CO2流である。いくつかの実施形態では、任意のMP断熱ストリッピングには、MP供給物CO2流のみが使用される。いくつかの実施形態では、MPフラッシュ蒸気とMP供給物CO2流との可変的組み合わせが、任意のMP断熱ストリッピングに使用される。任意のMP断熱ストリッパでは、ストリッピングに使用されるガスは、例えば、尿素溶液と向流直接接触されている。
【0083】
使用される場合、MPストリッパは、例えば、当該尿素溶液をガス流、例えば、第1のMPガス流と直接接触させることによって、MP解離器から尿素溶液を断熱的にストリッピングし、気体/液体分離して、MPCCに供給されるガス流、及び低圧部、例えば、LP解離器に供給されるストリッピングされたMP尿素溶液を生じさせるように構成される。
【0084】
例えば、任意のMPストリッパは、当該気体/液体接触のための充填床を備える。
【0085】
任意のMPストリッパでは、尿素溶液のN/C比は、例えば、約6から約3に減少する(例示的な値のみ)。したがって、MPストリッパは、HP合成部の高圧CO2ストリッパと同様に、N/C比の低下を提供する。
【0086】
「ストリッピング」という用語は、任意のMPストリッパが、その中で接触するガス/液体がN/C比の低下に寄与することを広く示すために使用される。MPストリッピングは、例えば、いくつかのCO2を液体に吸収させ、一部のNH3を液相から気相に移すことを伴い得る。出口の液体は、例えば、入口の液体の90重量%~110重量%である。任意のMP断熱ストリッピングは、必ずしも液相の大幅な質量減少を伴わない。
【0087】
例えば、そのような任意のMPストリッパを有する実施形態では、プラントは、例えば、低圧(LP)解離器と、LPカルバメート凝縮器と、MPストリッパから当該LP解離器への尿素溶液のための液体流路と、当該LP解離器から当該LPカルバメート凝縮器へのガス流路と、を更に備える。これらのLPユニットは、オプションのMPストリッパなしでも使用することができ、その場合、プラントは、MP解離器からLP解離器へ直接的又は間接的に尿素溶液のための液体流路を備える。MP解離器から直接尿素溶液を受け取るLP解離器は、MP処理ユニットから直接的又は間接的に、かつHPストリッパから間接的に尿素溶液を受け取る好ましいLP解離器、又は追加のLP解離器であり得る。
【0088】
MP解離器の下流のLP解離器は、任意のMPストリッパの有無にかかわらず、例えば、硝酸プラントの記載された中和ユニットなどのアンモニア消費ユニットのガス入口に接続されたガス出口を有する。
【0089】
尿素合成溶液は、アンモニアが豊富(例えば、少なくとも3.0のN/C)であるため、MP解離器からの第2のMPガス流もアンモニアが豊富である。MP凝縮部においてMPでこのガスのカルバメートへ凝縮させるために、N/C比は、有利に調整(減少)されて、例えば、過剰なNH3を回避し、かつ/又は、例えば、MP解離器中の比較的大きな割合の尿素合成溶液を処理するためにより大きな柔軟性を提供する。本発明では、非常に有利にも、例えば、好ましいMPフラッシュからの第1のMPガス流を、N/C比のこの調整に使用してもよい。これにより、原料CO2供給物の大部分、又は全てが尿素プラントに導入され、特にHPストリッパで高圧で処理され、それによって、MP凝縮部で原料供給物CO2のみが当該N/C調整に使用される基準プロセスと比較して、HPストリッパ効率及び尿素収率が改善され、かつ/又はエネルギー消費が削減され得る。好ましいAN部を有する実施形態では、AN部からのCO2排出量はまた、MP処理ユニット及びMP凝縮部を通るCO2回収によって有利に低減される。
【0090】
HPストリッパの周りの尿素合成溶液の一部をMP処理部に迂回させることで、ストリッパが製作及び輸送のために重くなり過ぎるかつ/又は大きくなり過ぎることなく、大きな尿素容量を持つ単一ライン(単一トレイン)尿素プラントが可能になる。
【0091】
尿素製造部は、LP尿素溶液などの尿素溶液を生成する。尿素溶液は、例えば、UANなどの液体肥料を製造するため、かつ他の目的のために部分的又は全体的に使用され得る。尿素溶液は、例えば、蒸発部で尿素溶融物を生成するために部分的又は全体的に使用されてもよい。尿素溶融物は、例えば、顆粒又はプリルとして、例えば、部分的に又は完全に、仕上げ部で固体尿素を製造するために使用されてもよい。尿素溶融物は、例えば、メラミンを製造するために部分的に又は全体的に使用され得る。また、これらの使用の組み合わせも可能である。
【0092】
本発明の態様は、尿素含有生成物を製造するためのプラントに関する。
【0093】
好ましくは、プラントは、MP処理ユニットの尿素溶液の出口の下流にある当該尿素生成部に含まれるユニットからのアンモニア含有ガスの入口を備えたアンモニア消費ユニットを更に備える。例えば、アンモニア消費ユニットは、ガスを排出するための出口を有し、動作中、ユニットによって受け取られた1つ以上のガス流に含まれるCO2は、少なくとも部分的に、又は完全に、当該出口を介して排出される。
【0094】
好ましくは、プラントは、硝酸をアンモニアで中和して硝酸アンモニウムを形成するために構成され、硝酸の入口と、MP処理ユニットの尿素溶液の出口の下流の当該尿素生成部に含まれるユニットからのアンモニア含有ガスの入口と、を有する中和部を備える硝酸アンモニウム部を更に備える。例えば、中和部又は硝酸アンモニウム部は、ガスを排出するための出口を有し、動作中に、中和部によって受け取られた1つ以上のガス流に含まれるCO2は、少なくとも部分的に、又は完全に、当該出口を通して排出される。
【0095】
いくつかの実施形態では、尿素含有生成物のうちの少なくとも1つは、尿素及びアンモニウム塩、例えば硝酸アンモニウムを含む。本発明はまた、尿素及び硝酸アンモニウムを生産するためのプラント、例えば、少なくともUAN(尿素硝酸アンモニウム)液体肥料を製造するためのプラントに関する。いくつかの実施形態において、プラントは、唯一の生成物として、UANを有する。いくつかの実施形態において、プラントは、複数の尿素含有生成物を製造する。
【0096】
特定の実施形態では、MP処理ユニットからの尿素溶液は、LP解離器で処理され、LP尿素溶液及びアンモニア含有LPガスを生じさせ、このガスは、例えば、アンモニア消費ユニット、例えば、硝酸アンモニウム(AN)プラントに供給され、特に、酸を中和するために、例えば、当該AN部で硝酸を硝酸アンモニウムに中和するために使用されるアンモニアの一部又は全部が供給される。LP解離器及び/又は追加のLP解離器は、例えば、中和部のガス入口とガス流接続されたガス出口を有する。
【0097】
これらの実施形態では、プラントは、尿素と硝酸アンモニウムとの一体製造のためのプラントであり、プロセスは、尿素と硝酸アンモニウムとの一体製造のためのプロセスである。任意に、尿素生成物の一部又は全部、例えば、少なくとも1つのLP解離器からのLP尿素溶液の全部又は一部を硝酸アンモニウムと組み合わせて、例えば肥料として使用することができる尿素硝酸アンモニウム(UAN)溶液を形成する。また、これらの実施形態では、尿素生成物の任意の第2の部分は、例えば、メラミンプラントのための供給物として使用されてもよく、又は例えば、固体尿素生成物を製造するための仕上げ部に供給されてもよい。
【0098】
AN部を有する実施形態では、LP部は、例えば、約1.5バールの絶対値など、1.10バール~3.0バールの絶対値で動作される。比較的低い圧力は、LP解離器におけるより良いNH3除去に寄与する。AN部の中和部は、例えば、大気圧で動作する。
【0099】
有利には、MP処理ユニットは、AN部からの比較的低いCO2排出量に寄与する。このようにして、HPCO2圧縮機の(HPストリッパへのCO2供給物)の負荷が追加で低減される。
【0100】
本発明はまた、本明細書で前述及び以下に説明されるように、本発明のプラントで実施される尿素含有生成物を製造するためのプロセスに関する。このプロセスは、例えば、NH3供給物とCO2供給物とを当該反応器内で反応させ、尿素合成溶液を生じさせることを含む。尿素合成溶液は、好ましくは、前述のスプリット比を使用して、少なくとも第1の部分及び第2の部分に分流される。第1の部分は、HPストリッパに供給され、それによってストリッピングされた尿素溶液を得る。ストリッピングされた尿素溶液は、MP処理ユニット内で中圧での処理に供され、尿素以外の1つ以上の成分を溶液から除去し、当該第1のMPガス流と、より高い濃度の尿素を有するMP尿素溶液と、を生じさせる。第2の部分は、当該MP解離において中圧解離に供され、当該第2のMPガス流及びMP尿素溶液を生じさせる。プロセスは、当該第1のMPガス流及び当該第2のMPガス流を、それぞれ少なくとも部分的に当該MP凝縮部に供給することを更に含む。
【0101】
尿素製造プラントは、例えば、グラスルーツプラントであってもよいが、例えば、既存のプラントを改変することによって得られてもよい。
【0102】
本発明は、MP処理ユニットと、MP解離器と、MPカルバメート凝縮器と、を追加することによって、CO2ストリッピングタイプの既存の尿素プラントを改変する方法に関する。
【0103】
本発明はまた、HPストリッパの下流にMP処理ユニットを追加することによって、CO2ストリッピングタイプであり、既にMP解離器及びMPカルバメート凝縮器を備える既存の尿素プラントを改変する方法に関する。
【0104】
本発明はまた、尿素含有生成物を製造するための既存のプラントを改変する方法に関する。既存のプラントは、例えば、HPストリッパと、NH3及びCO2から尿素を形成するための反応器と、HPカルバメート凝縮器と、を備えた高圧(HP)合成部を備えた尿素製造部を備え、反応器及びHPカルバメート凝縮器は、任意に組み合わされ、HPストリッパは、ストリップガスとしてのCO2供給物のための入口を有する。既存のプラントはまた、典型的には、HPCO2圧縮機を備える。この方法は、例えば、既存のプラントにまだ存在していない場合、MP解離器と、MP凝縮部と、尿素合成溶液のための出口からMP解離器への接続と、MP解離器からMP凝縮部への第2のMPガス流のためのガス流路と、を追加することを含む。方法は更に、プラントに、中圧(MP)処理ユニット、好ましくはMP断熱フラッシュ容器と、当該HPストリッパから当該MP処理ユニットへのストリッピングされた尿素溶液のための液体流路と、MP処理ユニットからMP凝縮部への第1のMPガス流のためのガス流路と、を追加することを含む。
【0105】
任意に、この方法は、プラントの任意のMPストリッパを追加することを更に伴う。有利な実施形態では、この方法は、CO2をMPに圧縮するために既存のプラントに専用のCO2圧縮機を追加し、MPカルバメート凝縮器に直接的又は間接的に接続されたガス流路に接続されたCO2のための出口を有することを伴う。この実施形態では、有利にも、HPCO2圧縮機を増加又は改変することなく、プラント容量を増加させることができる。
【0106】
説明された改変方法(既存のプラントを改変する方法)は、好ましくは、説明されたような本発明のプラントを与える。本発明のプラントの優先事項は、既存のプラントを改変する方法にも適用される。プラントに関連して説明されたユニットの詳細は、既存のプラントを改変する方法で使用又は追加されたユニットにも適用される。MPカルバメート凝縮器からHP合成部への液体出口の接続は、HPカルバメートポンプを追加することを伴ってもよい。方法はまた、反応器容量を効果的に拡大するために後反応器を設置することを伴ってもよい。
【0107】
図1は、本発明によるプロセス及びプラントの例示的な実施形態を概略的に示す。
【0108】
このプラントは、高圧(HP)合成部(HPSS)を備えた尿素製造部(UPS)を備え、HP部は、HPストリッパ(HPS)と、NH3及びCO2から尿素を形成するための反応器(HPR)、特にHP尿素反応器と、HPカルバメート凝縮器(HPCC)と、を備える。HPストリッパは、ストリップガスとしてのCO2供給物用の入口を有する。反応器及びHPカルバメート凝縮器は、任意に、単一の容器内で組み合わされる。HPカルバメート凝縮器(HPCC)は、水平浸漬凝縮器として概略的に図示された一例に過ぎない。任意に、HPカルバメート凝縮器(HPCC)内で既に一部の尿素形成が起こる。HP合成部、例えば、HPカルバメート凝縮器は、NH3供給物用の入口を備える。
【0109】
尿素生成部は、中圧(MP)処理ユニット(MPTU)と、MP解離器(MPD)と、MP凝縮部(MPCC)と、を更に備える。HP尿素反応器は、HPストリッパへの第1の液体流路(1a)に接続された尿素合成溶液(1)のための出口と、MP解離器(MPD)への第2の液体流路(1b)と、を有する。
【0110】
尿素製造部は、HPストリッパ(HPS)からMP処理ユニット(MPTU)へのストリッピングされた尿素溶液(2)のための液体流路と、HPストリッパからのガス流(3)のためのガス流路と、MP処理ユニット(MPTU)からMP凝縮部(MPCC)への第1のMPガス流(4)のためのガス流路と、MP解離器(MPD)からMP凝縮部(MPCC)への第2のMPガス流(5)のためのガス流路と、を備える。
【0111】
HPストリッパからのガス(3)は、HPカルバメート凝縮器(HPCC)に送られ、そこで凝縮される。カルバメート含有流(6)は、反応器に供給される。MP処理ユニット(MPTU)は、第1のMP尿素溶液のための出口(7)を有する。MP解離器(MPD)は、第2のMP尿素溶液のための出口(8)を有する。MP凝縮部(MPCC)は、MPカルバメート溶液用の出口(9)と、ガス用の出口(10)と、を有する。MP凝縮部(MPCC)は、例えば、尿素溶液(11a)を加熱してその溶液から水を除去するために使用される任意の前蒸発器(PEV)と熱交換接触している熱交換壁を有する。濃縮尿素溶液(11b)は、例えば、固体尿素を生成するための任意の仕上げ部に供給される。
【0112】
典型的には、図示されるように、MP処理ユニット(MPTU)からの尿素溶液(7)は、LP熱処理ユニットとしても記載され得、溶液を加熱するために使用されるLP解離器(LPD)に直接的又は間接的に供給される。LP解離器(LPD)は、LP尿素溶液用出口(11)と、LPガス用出口(12)と、を有する。LPガスは、例えば、アンモニア消費ユニット、例えば、硝酸アンモニウム部(AN)の中和部に直接的又は間接的に供給される。反応器は、例えば、ガスのための出口(13)を有し、このガスは、例えば、中和部にも供給される。
【0113】
既存のプラントを改変する例示的な方法では、MP処理ユニット、MP解離器、及びMP凝縮部が、既存のプラントに追加され、前蒸発器も追加される。それぞれの流れ接続も追加される。
【0114】
図2は、任意のMPストリッパ(MPS)を用いた、本発明によるプロセス及びプラントの例示的な実施形態を概略的に示す。MP任意ストリッパは、MP解離器(MPD)から尿素溶液(8)を受け取り、CO
2ストリップガス、典型的にはMPCO
2ガス流、例えば、第1のMPガス流(4)及び/又は気体MPCO
2供給物のための入口を有する。気体MPCO
2供給物は、HPストリッパへのHPCO
2供給物に加えて、任意に使用される。任意のMPストリッパ(MPS)は、MP凝縮部(MPCC)に接続されたガス流(15)用の出口と、LP解離ユニット(LPD-2)に接続された尿素溶液用の出口(14)と、を有する。任意のMPストリッパ(MPS)はまた、第1のMPガス流(4)を受け取ってもよい。LP解離ユニットは、典型的には、LPカルバメート凝縮器へのガス流路に接続された出口(16)と、LP尿素溶液のための出口(17)と、を有する。代替の実施形態では、ガス出口(16)は、硝酸アンモニウム部(AN)の中和部と接続されている。
【0115】
本出願では、プロセス流(すなわち、蒸気ラインではない)について、高圧(HP)は、100バール超、例えば、120バール~300バール、典型的には150バール~200バールである。中圧(MP)は、例えば10バール~70バール(30バール~70バールの中圧を含む)、特に10バール~40バールであり、低圧(LP)は、例えば1.0バール~10バール、特に1.0バール~8バール、例えば1.5バール~5バールである。全ての圧力は、バール絶対値である。
【0116】
本明細書で反応器に使用されるN/C比、すなわち、NH3対CO2モル比は、尿素プラントの技術分野で使用されるNH3、CO2及びH2Oのみからなる、尿素製造前のいわゆる初期混合物の組成を反映している。具体的には、反応ゾーンのN/C比は、当技術分野で従来使用されている用語として、反応器出口で測定されたNH3、CO2及びH2Oのみからなる、尿素製造前のいわゆる初期混合物の組成を反映している。カルバメート凝縮器のN/C比は、カルバメート溶液の出口で測定されたCO2に対するNH3のモル比である。ガス流のN/C比は、NH3対CO2のモル比である。HP合成部の下流の尿素溶液のN/C比は、対応する量のNH3及びCO3に変換されたカルバメートに基づいて、すなわち尿素成分を考慮しない、実際の混合物のNH3対CO2のモル比である。
【0117】
本明細書で使用される場合、「カルバメート」という用語は、尿素プラントの技術分野で従来使用されるカルバメートアンモニウムを指す。
【0118】
「典型的な」及び「特に」という用語は、いくつかの実施形態で使用することができるが、必須ではない特徴を示すために使用される。また、好ましい特徴は、必須ではない。
【0119】
「液体連通」という用語及び「液体流路」という用語は、任意にいくつかの中間ユニットを通って、2つのユニット間の液体の通過を可能にする流路(例えば、管又はダクト)を指す。液体連通(及び液体流路)は、気相輸送を伴わず、したがって、蒸発器、蒸気のための流路、及び凝縮器によって接続される2つのユニットは、液体連通していない(液体流路によって接続されていない)が、(気相輸送及び液体輸送の両方を包含する)流体連通している。第1のユニットは、例えば、第1のユニットの液体の出口が凝縮器の入口に接続され、凝縮器の液体の出口が第2のユニットの入口に接続されている場合、第2のユニットと液体連通している。
【0120】
ストリッパ効率(α)は、典型的にはストリッパの液体出口で測定される、尿素(及びビウレット)に変換されたアンモニアの量をアンモニアの総量で割ったものとして定義される。この定義は、ストリッパの出口に基づくNH3変換の定義と同等である。したがって、ストリッパの液体出口で測定される、α=(2*重量%尿素/60)/((2*重量%尿素/60)+(重量%NH3/17))であり、ここで、重量%NH3は、カルバミン酸アンモニウムを含む全てのアンモニア種を含む。当業者であれば、「ストリッピング効率」がストリッパ液体出口における尿素純度を指し、ストリッパのエネルギー効率を指すのではないことを理解する。
【0121】
カルバメート凝縮器での凝縮は、いわゆるカルバメート凝縮を指し、これは、NH3とCO2が液体であるカルバメートアンモニウムに反応することを伴い、その結果、要するに気体のNH3及びCO2が液相のカルバメートになる。カルバメート分解は、NH3及びCO2へのカルバメートの解離反応を指す。
【0122】
本明細書で使用される場合、「シェル空間」という用語は、シェルアンドチューブ式熱交換器のシェル側空間を指す。
【0123】
本発明のプラントについて示される優先事項は、本発明の改良方法及びプロセスにも適用される。本発明の尿素製造プロセスは、本発明のプラントにおいて実施されることが好ましい。統合されたプロセスは、統合されたプラント内で実施されることが好ましい。本発明の改良方法は、好ましくは、本発明のプラントを改変プラントとして与える。
【0124】
本開示のいくつかの実施形態は、尿素含有生成物を製造するためのプラント及びプロセスに関する。プラントは、それぞれが尿素合成溶液の一部を受け取る中圧解離ユニット及び高圧CO2ストリッパを備える。ストリッピングされた尿素溶液は、中圧処理ユニットで更に処理される。
【0125】
実施例1
本発明による尿素プラントでは、特に
図2に記載されているが、硝酸アンモニウム部(AN)の中和部に接続されたガス出口(16)を用いて、34,000kg/時のCO
2がHPストリッパに供給され、4,000kg/時の気体MPCO
2流がMPストリッパ(MPS)に供給され、流れ(15)を介して大部分がMP凝縮部(MPCC)に供給され、7,000kg/時のCO
2がMP断熱フラッシュ容器であるMP処理ユニット(MPTU)でストリッピングされた尿素溶液(2)から除去され、MP処理ユニット(MPTU)からMPストリッパ(MPS)に第1のMPガス流(4)として供給された。これにより、CO
2はMP凝縮部(MPCC)で完全に凝縮された。硝酸アンモニウム部(AN)からのCO
2排出量が、7,000kg/時のCO
2で削減され、前蒸発器(PEV)で有利な尿素濃度が達成された。
【符号の説明】
【0126】
1 尿素合成溶液、1a 第1の液体流路、1b 第2の液体流路、2 尿素溶液、4 第1のMPガス流、5 第2のMPガス流、7 MP尿素溶液、8 液体流路、9 カルバメート溶液、11 LP尿素溶液、11a 尿素溶液、12 アンモニア含有LPガス、AN 硝酸アンモニウム部、HP 高圧、HPCC HPカルバメート凝縮器、HPR 反応器、HPS HPストリッパ、HPSS 高圧合成部、LP 低圧、LPD 低圧解離器、MP 中圧、MPCC MP凝縮部、MPD MP解離器、MPF MPフラッシュ容器、MPTU 中圧処理ユニット、PEV 前蒸発器、UPS 尿素製造部