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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/089 20060101AFI20241216BHJP
   F16D 41/08 20060101ALI20241216BHJP
   F16D 41/067 20060101ALI20241216BHJP
   A61F 2/62 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
F16H3/089
F16D41/08 Z
F16D41/067
A61F2/62
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023567834
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 JP2022046290
(87)【国際公開番号】W WO2023113001
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2024-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2021203499
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 圭
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-146978(JP,A)
【文献】特開昭54-108169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/089
F16D 41/08
F16D 41/067
A61F 2/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と被駆動部との動力伝達経路上に配置される動力伝達装置であって、
第1回転体と、
第2回転体と、
断続装置と、
前記第1回転体、前記第2回転体、及び前記断続装置を収容する筐体と、を備え、
前記断続装置は、
前記第1回転体と前記第2回転体との間に配置される係合子と、
前記係合子を、前記第1回転体と前記第2回転体とが一体回転可能な係合状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する操作部と、を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体は、
互いの回転軸線が一致するように、且つ、
前記回転軸線と直交する直交方向視で、互いの少なくとも一部が重なり合うよう配置され、
前記筐体は、互いに別体に形成されて固定される第1筐体及び第2筐体を有し、
前記第1筐体は、
前記第2筐体よりも前記回転軸線方向の一方側に配置され、
前記動力伝達装置を搭載する搭載体に対して支持されるよう設けられ、
前記筐体は、前記第1筐体及び前記第2筐体とは別体に形成され、前記第1筐体に固定される第3筐体をさらに有し、
前記第2回転体は、前記被駆動部と機械的に接続され、
前記第3筐体は、前記被駆動部を収容する、
動力伝達装置。
【請求項2】
請求項に記載の動力伝達装置であって、
前記筐体は、
前記回転軸線の延びる方向が鉛直方向と一致するよう設けられ、
前記一方側が鉛直方向上方側となるよう配置される、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項に記載の動力伝達装置であって、
第3回転体と、第4回転体と、をさらに備え、
前記断続装置は、
前記回転軸線と回転軸線が一致するよう配置される前記第3回転体と前記第4回転体との間に配置される他の係合子をさらに備え、
前記筐体は、前記第3回転体、前記第4回転体、及び前記他の係合子をさらに収容する、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項に記載の動力伝達装置であって、
前記第1回転体と回転伝達可能に接続され、前記回転軸線とは異なる他の回転軸線周りに回転する第5回転体をさらに備え、
前記筐体は、前記第5回転体をさらに収容する、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項に記載の動力伝達装置であって、
前記第5回転体は、前記駆動部と機械的に接続され、
前記筐体には、前記駆動部を収容する他の筐体が固定される、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項1に記載の動力伝達装置であって、
前記搭載体は、前記筐体を挟んで互いに対向する位置に配置される一対の対向部を有する骨格を備える、動力伝達装置。
【請求項7】
駆動部と被駆動部との動力伝達経路上に配置される動力伝達装置であって、
第1回転体と、
第2回転体と、
断続装置と、
前記第1回転体、前記第2回転体、及び前記断続装置を収容する筐体と、を備え、
前記断続装置は、
前記第1回転体と前記第2回転体との間に配置される係合子と、
前記係合子を、前記第1回転体と前記第2回転体とが一体回転可能な係合状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する操作部と、を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体は、
互いの回転軸線が一致するように、且つ、
前記回転軸線と直交する直交方向視で、互いの少なくとも一部が重なり合うよう配置され、
前記筐体は、互いに別体に形成されて固定される第1筐体及び第2筐体を有し、
前記第1筐体は、
前記第2筐体よりも前記回転軸線方向の一方側に配置され、
前記動力伝達装置を搭載する搭載体に対して支持されるよう設けられ、
前記搭載体は、前記筐体を挟んで互いに対向する位置に配置される一対の対向部を有する骨格を備える、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の動力伝達装置であって、
前記筐体は、前記筐体を挟んで該筐体の両側に配置される一対の固定部材を介して一対の前記対向部に固定される、動力伝達装置。
【請求項9】
請求項に記載の動力伝達装置であって、
前記筐体は、該筐体の外面から延出するよう設けられて前記固定部材が固定される延出部を有する、動力伝達装置。
【請求項10】
請求項6又は7に記載の動力伝達装置であって、
前記骨格は、一対の前記対向部を連結するよう設けられる連結部を有する、動力伝達装置。
【請求項11】
請求項6又は7に記載の動力伝達装置であって、
前記骨格は、一対の前記対向部の対向方向と直交する方向に開口を有し、
前記搭載体は、前記開口の少なくとも一部を閉塞する閉塞部を備える、動力伝達装置。
【請求項12】
請求項6又は7に記載の動力伝達装置であって、
前記搭載体は、前記骨格の前記筐体とは反対側の外面に対して着脱可能に設けられる外装部材を備える、動力伝達装置。
【請求項13】
請求項1~のいずれか一項に記載の動力伝達装置であって、
前記動力伝達装置は、装着主体に対して装着される義肢装置に介装される、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、義足等の継手装置には、回転体同士が一体回転可能な状態と相対回転可能な状態とを切り替える断続装置を備える動力伝達装置が搭載されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2021/040039号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、動力伝達部分を異物の侵入等からどのように保護するかについては開示されておらず、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、動力伝達部分への異物等の侵入を抑制可能な動力伝達装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
駆動部と被駆動部との動力伝達経路上に配置される動力伝達装置であって、
第1回転体と、
第2回転体と、
断続装置と、
前記第1回転体、前記第2回転体、及び前記断続装置を収容する筐体と、を備え、
前記断続装置は、
前記第1回転体と前記第2回転体との間に配置される係合子と、
前記係合子を、前記第1回転体と前記第2回転体とが一体回転可能な係合状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する操作部と、を備え
前記第1回転体及び前記第2回転体は、
互いの回転軸線が一致するように、且つ、
前記回転軸線と直交する直交方向視で、互いの少なくとも一部が重なり合うよう配置され、
前記筐体は、互いに別体に形成されて固定される第1筐体及び第2筐体を有し、
前記第1筐体は、
前記第2筐体よりも前記回転軸線方向の一方側に配置され、
前記動力伝達装置を搭載する搭載体に対して支持されるよう設けられ、
前記筐体は、前記第1筐体及び前記第2筐体とは別体に形成され、前記第1筐体に固定される第3筐体をさらに有し、
前記第2回転体は、前記被駆動部と機械的に接続され、
前記第3筐体は、前記被駆動部を収容する
また、本発明は、
駆動部と被駆動部との動力伝達経路上に配置される動力伝達装置であって、
第1回転体と、
第2回転体と、
断続装置と、
前記第1回転体、前記第2回転体、及び前記断続装置を収容する筐体と、を備え、
前記断続装置は、
前記第1回転体と前記第2回転体との間に配置される係合子と、
前記係合子を、前記第1回転体と前記第2回転体とが一体回転可能な係合状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する操作部と、を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体は、
互いの回転軸線が一致するように、且つ、
前記回転軸線と直交する直交方向視で、互いの少なくとも一部が重なり合うよう配置され、
前記筐体は、互いに別体に形成されて固定される第1筐体及び第2筐体を有し、
前記第1筐体は、
前記第2筐体よりも前記回転軸線方向の一方側に配置され、
前記動力伝達装置を搭載する搭載体に対して支持されるよう設けられ、
前記搭載体は、前記筐体を挟んで互いに対向する位置に配置される一対の対向部を有する骨格を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、動力伝達部分への異物等の侵入を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の断続装置を搭載した電動義足を斜め前方から見た斜視図である。
図2図1の電動義足1の分解斜視図である。
図3】伸縮装置140の斜視図である。
図4図1の電動義足1の断面図である。
図5】伸縮装置140の断面図である。
図6図1の電動義足1の屈曲状態を示す要部断面図である。
図7図1の電動義足1の最大屈曲状態を示す要部断面図である。
図8】二方向クラッチ280の断面図である。
図9図8に示すリテーナ282の一例(ローラ281、ガイド284及びゴム球282cを含む)示す斜視図である。
図10図8に示すリテーナの他例(ローラ281及びゴム球282cを含む)示す斜視図である。
図11】操作機構240の動作を示す図であり、(A)は第1断続部212及び第2断続部222がオフの状態を示す図、(B)は第1断続部212がオフ、第2断続部222がオンの状態を示す図、(C)は第1断続部212がオン、第2断続部222がオフの状態を示す図である。
図12】(A)は、第2断続部222がオフの状態を示す断面図であり、(B)はそのときの操作ロッドの位置を示す図である。
図13】(A)は、第2断続部222がオフからオンに操作された状態を示す断面図であり、(B)はそのときの操作ロッド241の位置を示す図である。
図14】(A)は、第2断続部222の正転オン状態を示す断面図であり、(B)はそのときの操作ロッド241の位置を示す図である。
図15】(A)は、第2断続部222の逆転オン状態を示す断面図であり、(B)はそのときの操作ロッド241の位置を示す図である。
図16】(A)は、第2断続部222がオンからオフに操作された状態を示す断面図であり、(B)はそのときの操作ロッド241の位置を示す図である。
図17】昇段時の使用者及び電動義足1の動作(昇段動作)を示す図である。
図18】平地歩行時の使用者及び電動義足1の動作(平地歩行動作)を示す図である。
図19】本発明の一実施形態の断続装置を搭載した車両用駆動装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態の断続装置を搭載した電動義足について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、電動義足の使用者を基準に前後方向、左右方向、上下方向を定義する。図面には、電動義足の前方をFr、後方をRr、左側をL、右側をR、上方をU、下方をDとして示す。
【0010】
本実施形態の電動義足1は、図1図5に示すように、ひざのない人の脚部に装着される義足であり、ひざの下側に位置する膝下側部材110と、大腿部123(図17及び図18参照)に装着され、ひざの上側に位置する膝上側部材120と、膝下側部材110と膝上側部材120との成す角を変更可能に連接する膝関節機構130と、伸縮することにより膝下側部材110と膝上側部材120との成す角を拡大及び縮小可能な拡縮装置200と、膝下側部材110と膝上側部材120との成す角の変更範囲を機械的に制限するメカストップ機構150と、メカストップ機構150による衝撃を緩衝する緩衝機構160と、拡縮装置200などに電力を供給するバッテリBと、を備える。
【0011】
膝上側部材120は、不図示のソケットに連結されるアダプター121を備える。ソケットは、大腿部123に設けられるジョイント部材であり、ソケットにアダプター121を連結することで、大腿部123に膝上側部材120が一体化される。
【0012】
膝下側部材110は、上部及び後部が開口する箱形状のメインフレーム111と、メインフレーム111の左右両側面を覆う着脱自在なサイドカバー112と、メインフレーム111の後部開口111mを開閉可能に覆う着脱自在なリヤカバー113と、を備える。
【0013】
メインフレーム111は、内部に収容される後述のユニットケース250を挟んで左右に配置される一対のサイドフレーム111L、111Rと、サイドフレーム111L、111R同士を前方で連結するよう設けられるフロントフレーム111Fと、を備える。
【0014】
メインフレーム111の上部には、膝関節機構130を構成する回動部135を介して膝上側部材120が設けられ、メインフレーム111の下部には、下方に延在する脚部114が設けられる。
【0015】
膝上側部材120及び膝下側部材110により形成された空間には、膝下側部材110と膝上側部材120との成す角を拡大及び縮小可能な拡縮装置200が設けられる。本実施形態の拡縮装置200は、伸縮することにより膝下側部材110と膝上側部材120との成す角を拡大及び縮小可能な伸縮装置140である。伸縮装置140は、上下方向に延在し、詳しくは後述するが、延在方向の一方側が膝上側部材120に機械的に接続され、延在方向の他方側が膝下側部材110に機械的に接続される。なお、「機械的に接続」とは、直接接続される構成、及び他部材を介して接続される構成を含む概念である。
【0016】
図3図5に示すように、伸縮装置140は、回転動力を出力するモータMと、モータMの動力を伝達する変速機Tと、変速機Tに動力伝達可能に接続され、変速機Tから出力される回転動力を並進運動(伸縮運動)に変換するスピンドルユニットSPと、変速機Tに設けられる第1断続機構210及び第2断続機構220と、伸縮装置140をユニット化するユニットケース250と、を備える。
【0017】
モータMは、変速機Tの後方且つ上方に配置され、スピンドルユニットSPは、変速機Tの前方且つ上方に配置される。モータMは、モータ本体部171と、モータ本体部171の出力回転を減速するギヤ機構部172と、を備えるギヤ機構内蔵モータである。スピンドルユニットSPは、雄ねじが形成されたスピンドル173と、雌ねじが形成されたスリーブ174と、を有し、スピンドル173の回転によりスリーブ174がスピンドル173の軸心に沿って並進運動する。
【0018】
具体的に説明すると、スピンドル173は、変速機Tによって伝達されたモータMの回転動力を受けて回転運動を行う。一方、スリーブ174は、ユニットケース250に回転不能且つ上下移動可能に支持されている。したがって、変速機Tによって伝達されたモータMの回転動力を受けてスピンドル173が一方側に回転すると、スリーブ174が変速機Tから離れるように並進移動し、スピンドル173が他方側に回転すると、スリーブ174が変速機Tに近づくように並進移動する。なお、スリーブ174が変速機Tから離れるように並進移動することをスピンドルユニットSPの伸長動作と呼ぶことがあり、反対にスリーブ174が変速機Tに近づくように並進移動することをスピンドルユニットSPの縮小動作と呼ぶことがある。
【0019】
即ち、スピンドル173の回転方向に応じてスリーブ174と変速機Tとの距離が伸縮する。スリーブ174の上端部は、リンク部材175を介して膝上側部材120に連結されている。スピンドル173の回転方向に応じてスリーブ174と変速機Tとの距離が伸縮することで、膝下側部材110と膝上側部材120とが回動部135を中心に回転する。これにより、膝上側部材120と膝下側部材110との成す角が変わる。膝上側部材120と膝下側部材110との成す角を鋭角側と鈍角側の角度のうち鋭角側の角度とすると、成す角が大きくなるときに膝関節機構130が伸展し、成す角が小さくなるときに膝関節機構130が屈曲する。
【0020】
なお、本実施形態の拡縮装置200は、伸縮装置140のスピンドルユニットSPによる回動運動から並進運動への変換によって伸縮装置140を伸縮させ、それに伴って膝下側部材110と膝上側部材120との成す角を拡大及び縮小させるものであったが、伸縮装置140(スピンドルユニットSP)のような伸縮(運動)する部分を有さず、膝下側部材110と膝上側部材120との間にギヤ噛み合い機構(平歯車同士の噛み合い機構、ハイポイドギヤ機構(登録商標)、ウォームギヤ機構、など)を設けて、回転運動を伝達することによって膝下側部材110と膝上側部材120との成す角を拡大及び縮小させるものであってもよい。
【0021】
変速機Tは、モータMの動力を第1変速比でスピンドルユニットSPに伝達する第1変速機構T1と、モータMの動力を第1変速比とは異なる第2変速比でスピンドルユニットSPに伝達する第2変速機構T2と、を備える。第1変速機構T1及び第2変速機構T2は、断続機構210、220によって動力の遮断状態と接続状態とが切り替えられる。
【0022】
このような変速機Tによれば、変速比の異なる2つの動力伝達路を備えることで、膝関節機構130における伸展と屈曲の動作スピード及び発生動力を切り替えることができる。第1変速比及び第2変速比は異なっていればよく、第1変速機構T1と第2変速機構T2とは、いずれか一方が減速機構で他方が増速機構であってもよく、いずれか一方が等速機構で他方が減速機構又は増速機構であってもよく、両方が減速機構であってもよく、両方が増速機構であってもよい。
【0023】
第1変速比は、第1変速機構T1におけるモータM側の回転数である変速前回転数に対する、第1変速機構T1における反モータM側(スピンドルユニットSP側)の回転数である変速後回転数の比率である。第2変速比は、第2変速機構T2におけるモータM側の回転数である変速前回転数に対する、第2変速機構T2における反モータM側(スピンドルユニットSP側)の回転数である変速後回転数の比率である。
【0024】
例えば、第1変速機構T1の第1変速比が1より小さい場合、反モータM側(スピンドルユニットSP側)の回転数はモータM側の回転数よりも減少し、トルクが増加する。第2変速機構T2の第2変速比が1より大きい場合、反モータM側(スピンドルユニットSP側)の回転数はモータM側の回転数よりも増加し、トルクが減少する。本実施形態では、第1変速比が1より小さく、第2変速比が1よりも大きく設定されており、第1変速機構T1が第2変速機構T2よりも下方に配置されている。
【0025】
第1変速機構T1及び第2変速機構T2には、ギヤ機構部172の出力軸172aの下方延長線上に回転可能に配置される第1シャフト181と、スピンドルユニットSPのスピンドル173の下方延長線上に回転可能に配置される第2シャフト182と、が含まれる。第1シャフト181は、軸心誤差を許容するカップリング187を介して、モータMのギヤ機構部172の出力軸172aに一体回転可能に連結される。第2シャフト182は、スピンドルユニットSPのスピンドル173に一体回転可能に接続されている。なお、本実施形態の第2シャフト182は、スピンドルユニットSPのスピンドル173と一体化されているが、第2シャフト182は、スピンドルユニットSPのスピンドル173とし、スプライン嵌合やカップリングを用いて連結してもよい。
【0026】
第1変速機構T1は、互いに噛み合う第1駆動ギヤ183及び第1従動ギヤ184を備える。第1駆動ギヤ183は、第1シャフト181に一体回転可能に支持され、第1従動ギヤ184は、第2シャフト182に相対回転可能に支持されている。第1従動ギヤ184及び第2シャフト182は、互いの回転軸線が一致する。また、回転軸線と直交する直交方向視で、互いの少なくとも一部が重なり合うよう配置される。言い換えると、それぞれの少なくとも一部が回転軸線と直交する同一の平面上に位置するように配置される。本実施形態の第1変速機構T1は、第1駆動ギヤ183を第1従動ギヤ184よりも小径とした減速伝達機構であり、スピンドルユニットSPを低速且つ高トルクで伸縮動作させることができる。
【0027】
第2変速機構T2は、互いに噛み合う第2駆動ギヤ185及び第2従動ギヤ186を備える。第2駆動ギヤ185は、第1シャフト181に一体回転可能に支持され、第2従動ギヤ186は、第2シャフト182に相対回転可能に支持されている。第2従動ギヤ186及び第2シャフト182は、互いの回転軸線が一致する。また、回転軸線と直交する直交方向視で、互いの少なくとも一部が重なり合うよう配置される。言い換えると、それぞれの少なくとも一部が回転軸線と直交する同一の平面上に位置するように配置される。本実施形態の第2変速機構T2は、第2駆動ギヤ185を第2従動ギヤ186よりも大径とした増速伝達機構であり、スピンドルユニットSPを高速且つ低トルクで伸縮動作させることができる。なお、本実施形態では、第1変速機構T1の上側に第2変速機構T2を配置しているが、第1変速機構T1の下側に第2変速機構T2を配置してもよい。つまり、第1従動ギヤ184と第2従動ギヤ186とは、回転軸線方向において異なる位置に位置していればよい。また、本実施形態の第1シャフト181及び第2シャフト182は、それぞれ、最初から一体形成されるが、上下のギヤ支持部を別体として形成した後、一体的に連結(結合)してもよい。
【0028】
第1断続機構210は、第1従動ギヤ184と第2シャフト182との間に設けられる第1断続部212を備える。第2断続機構220は、第2従動ギヤ186と第2シャフト182との間に設けられる第2断続部222を備える。これらの断続部212、222は、共通の構成を有しており、動力伝達を遮断する遮断状態と、一方向及び他方向の両方向の回転動力を伝達可能な動力伝達可能状態と、に切り替え可能に構成される。なお、断続部212、222の詳細は後述する。
【0029】
図3図5に示すように、ユニットケース250は、アッパーケース251、ミドルケース252及びロワケース253を備える。これらアッパーケース251、ミドルケース252及びロワケース253は、互いに別体に形成されている。
【0030】
アッパーケース251は、スピンドルユニットSPを収容する。より具体的に説明すると、アッパーケース251は、スピンドルユニットSPの外周側を覆う筒形状を有し、その上端部の内周側に設けられるブッシュ254を介してスピンドルユニットSPのスリーブ174を回転不能且つ上下移動可能に支持する。また、アッパーケース251の下端部には、外側方に延在するフランジ部251aが設けられる。アッパーケース251は、フランジ部251aを上方から貫通する複数のネジN1によってミドルケース252の前方且つ上方に締結される。
【0031】
ミドルケース252は、軸受B1を介して第1シャフト181の上端側を回転可能に支持し、且つ軸受B2を介して第2シャフト182の上端側を回転可能に支持する。ミドルケース252の前方且つ上方にはアッパーケース251が締結され、ミドルケース252の後方且つ上方にはモータMが締結される。より具体的に説明すると、モータMは、前述したモータ本体部171及びギヤ機構部172がモータケースに収容され、ミドルケース252の後方且つ上方にモータケースが締結される。モータMのモータケースは、下側(内側)からミドルケース252を貫通する複数のネジN2によってミドルケース252に締結される。また、ミドルケース252の外周部には、ロワケース253を締結するための下フランジ252aと、メインフレーム111に固定するための一対の上フランジ252bと、が設けられる。
【0032】
ロワケース253は、ミドルケース252の下フランジ252aを上方から貫通する複数のネジN3によってミドルケース252の下方に締結される。ロワケース253は、変速機Tの下方及び側方を覆うだけでなく、軸受B3を介して第1シャフト181の下端側を回転可能に支持する。ミドルケース252とロワケース253とにより形成される空間には、第2駆動ギヤ185及び第2従動ギヤ186、第1駆動ギヤ183及び第1従動ギヤ184、第1断続部212、第2断続部222、及び操作機構240の一部が収容される。
【0033】
このようなユニットケース250によれば、アッパーケース251、ミドルケース252及びロワケース253の3段構造によって、変速機T及びスピンドルユニットSPをケーシングできるだけでなく、モータMも含めた伸縮装置140をユニット化することが可能になるので、部品点数の削減や軽量化が図れる。
【0034】
また、ユニットケース250は、図3に示すように、1つのアッパーブラケット256及び一対のミドルブラケット257を介してメインフレーム111に取付けられる。アッパーブラケット256は、アッパーケース251の上端部をメインフレーム111のフロントフレーム111Fに支持させ、一対のミドルブラケット257は、ミドルケース252の左右両側部に形成される一対の上フランジ252bをメインフレーム111のサイドフレーム111L、111Rに支持させる。言い換えると、ロワケース253は、ミドルケース252を介してメインフレーム111に支持されており、ロワケース253自体はメインフレーム111に支持されていない。
【0035】
例えば、メインフレーム111側にアッパーブラケット256及びミドルブラケット257を取付けた後、伸縮装置140を組み付けるようにした場合、一対のミドルブラケット257上にミドルケース252の一対の上フランジ252bを載せることで、伸縮装置140をメインフレーム111に仮保持できるので、ミドルケース252のミドルブラケット257に対する締結作業や、アッパーケース251のアッパーブラケット256に対する締結作業が容易になる。また、逆の手順による伸縮装置140の取り外し作業も容易になる。
【0036】
また、アッパーケース251及びミドルケース252は、ロワケース253に比べて高い荷重を受けるため、アッパーブラケット256及びミドルブラケット257を介してメインフレーム111に締結することで、変速機T及びスピンドルユニットSPの支持強度が高められるだけでなく、ロワケース253の剛性を下げて軽量化が図れる。
【0037】
図4は電動義足1の伸展状態を示し、図6は電動義足1の屈曲状態を示し、図7は電動義足1の最大屈曲状態を示す。なお、電動義足1による歩行中に、図7に示す最大屈曲状態となることはない。
【0038】
メカストップ機構150は、図4図6及び図7に示すように、膝下側部材110に設けられるストッパ部材151と、膝上側部材120に設けられる第1当接部152及び第2当接部153と、を備える。図4に示す状態では、第1当接部152がストッパ部材151に当接することで、膝関節機構130が逆方向に屈曲することが規制される。また、図7に示す状態では、第2当接部153がストッパ部材151に当接することで、膝関節機構130が最大屈曲状態から更に屈曲することが規制される。
【0039】
緩衝機構160は、膝上側部材120側に設けられ、ばね161(例えば、圧縮コイルばね)の付勢力でリンク部材175の上端部を押圧可能な押圧部162を備える。リンク部材175の下端部は、スピンドルユニットSPのスリーブ174に第1回動部176を介して回動可能に連結され、リンク部材175の上端部は、膝上側部材120に第2回動部177を介して回動可能に連結される。リンク部材175の上端部には、カム部178が形成されている。カム部178は、第2回動部177を中心とする小径な小径外周部178aと、第2回動部177からの距離が長い大径外周部178bと、小径外周部178aと大径外周部178bを段差なく連結させる連結外周部178cと、を連続的に有する。
【0040】
図6及び図7に示すように、膝関節機構130が屈曲した状態では、押圧部162がカム部178の小径外周部178aと対向しているため、押圧部162とカム部178とは離間している。図4に示すように、スピンドルユニットSPの縮小動作に応じて膝関節機構130が伸展し、伸展側のメカストップ位置に近づくと、押圧部162とカム部178との対向位置が連結外周部178cから大径外周部178bに移動するのに伴い、カム部178は、押圧部162に当接するとともに、大径外周部178bが押圧部162をばね161の付勢力に抗して押し込む。言い換えると、カム部178は、ばね161の付勢力で戻し方向に押圧される。これにより、ばね161の付勢力が抵抗となり、第1当接部152がストッパ部材151に当接する際の衝撃が緩衝される。
【0041】
つぎに、断続部212、222及び操作機構240の詳細について、図8以降を参照して説明する。
【0042】
各断続部212、222は、共通の構成を有しており、動力伝達を遮断する遮断状態と、一方向及び他方向の両方向の回転動力を伝達可能な動力伝達可能状態と、に切り替え可能に構成される。本実施形態の各断続部212、222は、図8に示すように、強制フリー機能を備える二方向クラッチ280を用いて構成されている。二方向クラッチ280は、第2シャフト182の外周面部とギヤ184、186の内周面部との間に配置される複数(本実施形態では3つ)のローラ281と、複数のローラ281を所定の間隔に保持するリテーナ282と、操作機構240と、第2シャフト182を径方向に貫通し、操作機構240によって強制フリー位置と強制フリー解除位置とに操作される複数(本実施形態では3つ)のピン283と、リテーナ282に設けられ、ピン283が強制フリー位置のとき第2シャフト182に対するリテーナ282の相対回転位置を規定する複数(本実施形態では3つ)のガイド284と、を備える。ローラ281は、ボールでもよく、スプラグでもよい。
【0043】
第2シャフト182の外周面部とギヤ184、186の内周面部との径方向の間隔Aは、ローラ281の直径Bよりも小さい。また、第2シャフト182の外周部には、周方向に所定の間隔で平坦部182aが形成されており、平坦部182aの周方向中央側では、間隔Aが直径Bよりも大きい。
【0044】
つまり、ローラ281が平坦部182aの周方向中央部に保持される状態では、ローラ281が第2シャフト182の外周面部及びギヤ184、186の内周面部に噛み合わず(非係合状態)、第2シャフト182とギヤ184、186との相対回転が許容される(強制フリー状態)。
【0045】
一方、ローラ281が第2シャフト182に対する周方向の移動が許容される状態では、ローラ281が第2シャフト182の外周面部及びギヤ184、186の内周面部に噛み合い(係合状態)、第2シャフト182とギヤ184、186とが二方向において一体回転可能に接続される(強制フリー解除状態)。
【0046】
図9に示すように、リテーナ282は、第2シャフト182及びギヤ184、186に対して相対回転可能なリング形状であり、ローラ281を保持する複数のローラ保持部282aと、ガイド284を保持する複数のガイド保持部282bと、を有する。言い換えると、リテーナ282は、回転軸線に対する円周方向においてローラ281と隣接して設けられる。
【0047】
また、リテーナ282の外周面には、複数のゴム球282cが周方向に所定の間隔で埋設されている。これらのゴム球282cは、ギヤ184、186とリテーナ282との間に適度な摩擦を生じさせることで、強制フリー解除状態における意図しない空転を防止する。なお、ギヤ184、186とリテーナ282との間に摩擦を生じさせる部材は、ゴム球282cに限らず、Oリングであってもよい。
【0048】
図8に戻って、ピン283は、径方向外側の端部に円錐状の凸部283aを有し、ガイド284は、径方向内側の端面に凸部283aと嵌合(係合)する円錐状の凹部284aを有する。ピン283の凸部283aがガイド284の凹部284aに嵌合すると、ピン283及びガイド284によるガイド作用によって、第2シャフト182に対するリテーナ282の相対回転位置が強制フリー状態となる所定の位置に位置決めされる。また、図10に示すように、ガイド284の凹部284aの代わりに、リテーナ282の内周部に軸方向に沿うV溝282dを形成してもよい。このようにすると、ガイド284を不要にして部品点数及び組立工程を削減できるだけでなく、ピン283の軸方向の誤差を許容できる。
【0049】
操作機構240は、断続部212、222を断続操作可能に設けられる操作ロッド241と、操作ロッド241を直線移動させるサーボモータ242と、を備える。
【0050】
第2シャフト182は、回転軸線方向(上下方向とも称する)に延びる内部空間S2を有する中空軸であり、この内部空間S2に操作ロッド241が配置される。操作ロッド241は、内部空間S2から露出する下端部にラック241aが設けられる。操作ロッド241は、内部空間S2に配置された軸受B4、B5によりラック241aと相対回転不能且つ回転軸線方向に一体で進退移動可能に支持される。第2シャフト182の下端部は、操作ロッド241が挿通する挿通孔を有する蓋部材188が螺合する。蓋部材188は、内部空間S2への異物の侵入を防止するとともに、操作ロッド241の取り換えを容易にする。ラック241aには、サーボモータ242の出力軸242aに設けられるピニオン243が噛み合っており、サーボモータ242の駆動に応じて、操作ロッド241の上下方向のポジションが切り替えられる。本実施形態のサーボモータ242及びピニオン243が本発明の駆動部を構成する。操作ロッド241は、ラック241aを介して駆動部と機械的に接続される。
【0051】
図11に示すように、操作ロッド241には、上方から順に、第1大径部241c1、第1小径部241b1、第2大径部241c2、第2小径部241b2、第3大径部241c3が所定の長さ及び間隔で形成されている。操作ロッド241は、2つの断続部212、222を同時に制御可能に設けられているが、断続部212、222ごとに別々に設けられていてもよい。また、本実施形態の操作ロッド241は、最初から一体形成されるが、断続部212、222ごとに別体として形成した後、一体的に連結(結合)してもよい。また、本実施形態の操作ロッド241は、ピン283、ガイド284及びリテーナ282を介してローラ281の位置を変更するが、ガイド284及びリテーナ282を介さずにピン283で直接ローラ281の位置を変更する変形例にも適用できる。
【0052】
以下の説明では、断続部212、222を同時に制御する操作機構240の動作について図11を参照しながら説明する。
【0053】
図11に示すように、断続部212、222は、操作機構240によって強制フリー状態(以下、適宜オフ状態と称する)と強制フリー解除状態(以下、適宜オン状態と称する)とに切り替えられる。
【0054】
操作機構240の操作ロッド241は、図11の(A)に示す上位置にあるとき、第2大径部241c2が第2断続部222のピン283を外径方向に押し出しつつ、第3大径部241c3が第1断続部212のピン283を外径方向に押し出すことで、第1断続部212及び第2断続部222をオフ状態とする。
【0055】
また、操作機構240の操作ロッド241は、図11の(B)に示す中位置にあるとき、第1小径部241b1が第2断続部222のピン283が内径方向に戻ることを許容しつつ、第3大径部241c3が第1断続部212のピン283を外径方向に押し出すことで、第2断続部222をオン状態、第1断続部212をオフ状態とする。
【0056】
また、操作機構240の操作ロッド241は、図11の(C)に示す下位置にあるとき、第1大径部241c1が第2断続部222のピン283を外径方向に押し出しつつ、第2小径部241b2が第1断続部212のピン283が内径方向に戻ることを許容することで、第2断続部222をオフ状態、第1断続部212をオン状態とする。
【0057】
つぎに、二方向クラッチ280の動作について、第2断続部222を例に、図12図16を参照しつつ説明する。以下の例では、第2断続部222における図11の(A)から(B)を経て(C)へ移行する場合を例に説明する。
【0058】
図12の(A)及び(B)に示すように、操作ロッド241の第2大径部241c2が第2断続部222のピン283を外径方向に押し出す状態では、ピン283の凸部283aがガイド284の凹部284aに嵌合し、第2シャフト182に対するリテーナ282の相対回転位置が所定の位置で固定される。この状態では、ローラ281が平坦部182aの周方向中央部に保持されるため、ローラ281が第2シャフト182の外周面部及び第2従動ギヤ186の内周面部に噛み合わず、第2シャフト182と第2従動ギヤ186との相対回転が許容されるオフ状態となる。
【0059】
図13の(A)及び(B)は、操作ロッド241が、第2大径部241c2が第2断続部222のピン283を外径方向に押し出す位置から第1小径部241b1がピン283の内径方向への戻りを許容する位置に移動した状態を示している。図13では、既にピン283が内径方向に移動しているが、実際は、第2シャフト182と第2従動ギヤ186との相対回転が生じたタイミングで、第2従動ギヤ186と連れ回りするリテーナ282のガイド284が凹部284aの傾斜面でピン283を内径方向に押し戻す。
【0060】
図14の(A)及び(B)に示すように、ピン283の内径方向への戻りが許容される状態で、第2シャフト182と第2従動ギヤ186との間に図中の矢印で示す正転方向の相対回転が生じると、第2従動ギヤ186と連れ回りするリテーナ282がローラ281を第2シャフト182に対して正転方向に移動させる。これにより、ローラ281は、第2シャフト182の外周面部及び第2従動ギヤ186の内周面部に噛み合い、正転方向において第2シャフト182と第2従動ギヤ186とを一体的に回転させる正転オン状態を出現させる。
【0061】
図15の(A)及び(B)に示すように、ピン283の内径方向への戻りが許容される状態で、第2シャフト182と第2従動ギヤ186との間に図中の矢印で示す逆転方向の相対回転が生じると、第2従動ギヤ186と連れ回りするリテーナ282がローラ281を第2シャフト182に対して逆転方向に移動させる。これにより、ローラ281は、第2シャフト182の外周面部及び第2従動ギヤ186の内周面部に噛み合い、逆転方向において第2シャフト182と第2従動ギヤ186とを一体的に回転させる逆転オン状態を出現させる。リテーナ282は、ローラ281を動かす操作部の作動子の一要素と見ることができる。
【0062】
図16の(A)及び(B)に示すように、操作ロッド241が、第1小径部241b1が第2断続部222のピン283の内径方向の戻りを許容する位置から第1大径部241c1がピン283を外径方向に押し出す位置に移動すると、ピン283の凸部283aがガイド284の凹部284aに嵌合し、ピン283及びガイド284によるガイド作用によって、第2シャフト182に対するリテーナ282の相対回転位置が所定の位置に位置決め状態で固定される。この状態では、ローラ281が平坦部182aの周方向中央部に保持されるため、ローラ281が第2シャフト182の外周面部及び第2従動ギヤ186の内周面部に噛み合わず、第2シャフト182と第2従動ギヤ186との相対回転が許容されるオフ状態となる。
【0063】
このように構成された電動義足1では、これまでの受動ダンパーを備える受動義足では、非義足側の足で一段ずつ上がらざるをえなかった階段の昇段動作をスムーズに行うことが可能となる。
【0064】
具体的に説明すると、図17の(A)→(D)に示すように、電動義足1を前に出して階段を昇る(昇段)際に電動義足1に荷重がかかった状態で、膝関節機構130を屈曲した状態から伸展するとき大きな動力が必要となる。
【0065】
このとき、変速機Tは、操作ロッド241を図11の(C)に示すポジションに位置させる変速状態とする。この変速状態では、モータMとスピンドルユニットSPが第1変速機構T1を介して動力伝達状態となる。この状態で、モータMを第1方向に回転させると、モータMの動力が、第1シャフト181、第1駆動ギヤ183、第1従動ギヤ184、第1断続機構210の断続部212、第2シャフト182、スピンドルユニットSPへと伝達される。これにより、スリーブ174が変速機Tから離れるように並進移動(伸長動作)し、変速機Tが取り付けられた膝下側部材110に対し、スリーブ174が連結された膝上側部材120が回動部135を中心に回転して、膝関節機構130が伸展する。そして、この伸展させる動力は、第1変速機構T1で減速される際に高トルク化された動力なので、電動義足1を前に出して階段を昇る際に電動義足1に大きな荷重がかかった状態であっても、膝関節機構130を屈曲した状態から確実に伸展させることが可能になる。
【0066】
一方、階段の昇段動作をスムーズに行うためには、図17の(E)→(H)に示すように、健常足に荷重がかかった状態で、膝関節機構130が伸展した状態から屈曲させる(持ち上げる)必要がある。膝関節機構130が伸展した状態から屈曲させる際には、大きな動力は必要ないが素早い動作が必要となる。
【0067】
このとき、変速機Tは、操作ロッド241を図11の(B)に示すポジションに位置させる変速状態とする。この変速状態では、モータMとスピンドルユニットSPが第2変速機構T2を介して動力伝達状態となる。この状態で、モータMを第1方向とは反対の第2方向に回転させると、モータMの動力が、第1シャフト181、第2駆動ギヤ185、第2従動ギヤ186、第2断続機構220の断続部222、第2シャフト182、スピンドルユニットSPへと伝達される。これにより、スリーブ174が変速機Tに近づくように並進移動(縮小動作)し、スリーブ174が連結された膝上側部材120に対し、変速機Tが取り付けられた膝下側部材110が回動部135を中心に回転して、膝関節機構130が屈曲する。そして、この屈曲させる動力は、第2変速機構T2で増速される際に低トルク化された動力なので、膝関節機構130を素早く屈曲させることが可能になる。
【0068】
また、図18に示す階段を降りる(降段)際及び平地歩行の際、電動義足1に荷重がかからない遊脚時には、操作ロッド241を図11の(A)に示すポジションに位置させる変速状態とする。この変速状態では、第1断続部212及び第2断続部222がオフ状態となるため、モータMとスピンドルユニットSPが接続されないフリーの状態となる。この状態では、歩行状況に応じて膝関節機構130の任意の伸展及び屈曲が許容されるので、円滑な義足遊脚歩行が可能になる。
【0069】
一方、図18に示す平地歩行の際、及び階段を降りる(降段)際には、電動義足1に荷重がかかる立脚時には、操作ロッド241を図11の(B)に示すポジションに位置させる変速状態とする。この変速状態では、第2断続部222がオン状態となるので、モータMとスピンドルユニットSPが第2変速機構T2を介して動力伝達状態となる。この状態では、電動義足1に作用する屈曲方向の外力がスピンドルユニットSPから第2変速機構T2を介してモータMに伝達されるので、モータMのフリクションを利用して屈曲方向の外力を減衰させることにより、円滑な義足立脚歩行が可能になる。
【0070】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0071】
例えば、上記実施形態では、本発明の断続装置が用いられる継手装置の一実施形態としての膝継手に適用した義足装置(電動義足)を例示したが、これに限らず、肘関節に適用した義肢装置(電動義肢)であってもよく、装着主体としては人間以外の他の動物であってもよく、ロボットであってもよい。肘関節に適用する場合、上記実施形態の膝下側部材110が、膝上側部材120に対して装着主体の末端側、即ち前腕となる。
【0072】
また、本発明の断続装置は、継手装置に限らず車両の駆動装置に用いられてもよい。図19は、前述の実施形態の断続装置を搭載した車両用駆動装置の模式図である。
【0073】
図19の車両用駆動装置900は、駆動源としてモータMと、モータMの動力を伝達する変速機T´と、変速機T´に設けられる第1断続機構210及び第2断続機構220と、変速機T´、第1断続機構210及び第2断続機構220を収容する不図示の変速機ケースと、変速機T´からの出力を左右の駆動輪WHに分配するディファレンシャル装置DIFと、を備える。
【0074】
変速機T´は、モータMの動力を第1変速比で左右の駆動輪WHに伝達する第1変速機構T1と、モータMの動力を第1変速比とは異なる第2変速比で左右の駆動輪WHに伝達する第2変速機構T2と、を備える。第1変速比と第2変速比の関係については前述の実施形態と同様である。
【0075】
第1変速機構T1は、互いに噛み合う第1駆動ギヤ901及び第1従動ギヤ902を備える。第1駆動ギヤ901は、第1シャフト911に相対回転可能に支持され、第1従動ギヤ902は、第2シャフト912に一体回転可能に支持されている。第2変速機構T2は、互いに噛み合う第2駆動ギヤ905及び第2従動ギヤ906を備える。第2駆動ギヤ905は、第1シャフト911に相対回転可能に支持され、第2従動ギヤ906は、第2シャフト912に一体回転可能に支持されている。第1シャフト911には、第1駆動ギヤ901及び第2駆動ギヤ905に加えて、モータMの動力が入力される入力ギヤ907が一体回転可能に取り付けられている。また、第2シャフト912には、第1従動ギヤ902及び第2従動ギヤ906に加えて、モータMの動力をディファレンシャル装置DIFに出力可能な出力ギヤ908が一体回転可能に取り付けられている。
【0076】
第1断続機構210は、第1駆動ギヤ901と第1シャフト911との間に設けられる第1断続部212を備える。第2断続機構220は、第2駆動ギヤ905と第1シャフト911との間に設けられる第2断続部222を備える。これらの断続部212、222は、共通の構成を有しており、動力伝達を遮断する遮断状態と、一方向及び他方向の両方向の回転動力を伝達可能な動力伝達可能状態と、に切り替え可能に構成される。なお、断続部212、222を構成する、ローラ281、操作ロッド241、ピン283、リテーナ282、ガイド284は前述の実施形態と同様であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0077】
このように構成された車両用駆動装置900では、第1断続部212がオフ、且つ、第2断続部222がオンの状態で、モータMの動力が、第2変速機構T2を介して左右の駆動輪WHに伝達される。また、第1断続部212がオン、且つ、第2断続部222がオフの状態で、モータMの動力が、第1変速機構T1を介して左右の駆動輪WHに伝達される。さらに、第1断続部212がオフ、且つ、第2断続部222がオフの状態で、モータMの動力が左右の駆動輪WHに伝達されない、いわゆるニュートラル状態となる。
【0078】
変速機T´は不図示の変速機ケースに収容され、車体に固定される。
【0079】
車両用駆動装置900に本発明の断続装置を適用することで、変速時の回転合わせが不要になり、変速時の応答性が向上する。また、一般的なドグクラッチ等に比べて、断続装置を構成する部品点数を削減することができる。なお、第1断続機構210及び/又は第2断続機構220は、第1シャフト911の代わりに、第2シャフト912に設けられてもよい。また、駆動輪WHは本実施形態のような円形の車輪の他に、無限軌道を動かす起動輪などでもよい。また、本実施形態は車両を推進する推進部としての駆動輪WHを駆動する駆動装置に断続装置を適用したものであったが、船舶や飛行体などの他の移動体を推進するプロペラなどの推進部を駆動する駆動装置に断続装置を適用してもよい。さらに、移動体の推進部の他に、除雪機や草刈機などの作業機の、除雪部や草刈部などの作業部を駆動する駆動装置に断続装置を適用してもよい。
【0080】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0081】
(1) 駆動部(モータM)と被駆動部(スピンドルユニットSP、駆動輪WH)との動力伝達経路上に配置される動力伝達装置(変速機T)であって、
第1回転体(第1従動ギヤ184、第1駆動ギヤ901)と、
第2回転体(第2シャフト182、第1シャフト911)と、
断続装置(第1断続機構210、第2断続機構220)と、
前記第1回転体、前記第2回転体、及び前記断続装置を収容する筐体(ユニットケース250)と、を備え、
前記断続装置は、
前記第1回転体と前記第2回転体との間に配置される係合子(ローラ281)と、
前記係合子を、前記第1回転体と前記第2回転体とが一体回転可能な係合状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する操作部(操作ロッド241、ピン283、リテーナ282、ガイド284)と、を備える、動力伝達装置。
【0082】
(1)によれば、筐体が、第1回転体、第2回転体、及び断続装置を収容するので、動力伝達部分への異物等の侵入を抑制できる。
【0083】
(2) (1)に記載の動力伝達装置であって、
前記第1回転体及び前記第2回転体は、
互いの回転軸線が一致するように、且つ、
前記回転軸線と直交する直交方向視で、互いの少なくとも一部が重なり合うよう配置される、動力伝達装置。
【0084】
(2)によれば、動力伝達装置を小型化できる。
【0085】
(3) (2)に記載の動力伝達装置であって、
前記筐体は、互いに別体に形成されて固定される第1筐体(ミドルケース252)及び第2筐体(ロワケース253)を有し、
前記第1筐体は、
前記第2筐体よりも前記回転軸線方向の一方(上方)側に配置され、
前記動力伝達装置を搭載する搭載体(膝下側部材110)に対して支持されるよう設けられる、動力伝達装置。
【0086】
(3)によれば、第2筐体は、第1筐体を介して搭載体に支持される。
【0087】
(4) (3)に記載の動力伝達装置であって、
前記筐体は、
前記回転軸線の延びる方向が鉛直方向と一致するよう設けられ、
前記一方側が鉛直方向上方側となるよう配置される、動力伝達装置。
【0088】
(4)によれば、鉛直方向で上方側に位置する第1筐体を搭載体に固定する。なお、「鉛直方向と一致する」とは、完全に鉛直方向と一致するもの以外に第1筐体が第2筐体よりも上方側に位置する形態であればよい。
【0089】
(5) (2)~(4)のいずれかに記載の動力伝達装置であって、
第3回転体(第2従動ギヤ186、第2駆動ギヤ905)と、第4回転体(第2シャフト182、第1シャフト911)と、をさらに備え、
前記断続装置は、
前記回転軸線と回転軸線が一致するよう配置される前記第3回転体と前記第4回転体との間に配置される他の係合子をさらに備え、
前記筐体は、前記第3回転体、前記第4回転体、及び前記他の係合子をさらに収容する、動力伝達装置。
【0090】
(5)によれば、筐体により他の係合子の周辺への異物の侵入を抑制できる。
【0091】
(6) (3)~(5)のいずれかに記載の動力伝達装置であって、
前記筐体は、前記第1筐体及び前記第2筐体とは別体に形成され、前記第1筐体に固定される第3筐体(アッパーケース251)をさらに有し、
前記第2回転体は、前記被駆動部と機械的に接続され、
前記第3筐体は、前記被駆動部を収容する、動力伝達装置。
【0092】
(6)によれば、被駆動部を収容する他の筐体を筐体とは別体にして筐体に固定することで、非駆動部の組み込み性が向上する。
【0093】
(7) (2)~(6)のいずれかに記載の動力伝達装置であって、
前記第1回転体と回転伝達可能に接続され、前記回転軸線とは異なる他の回転軸線周りに回転する第5回転体(第1駆動ギヤ183)をさらに備え、
前記筐体は、前記第5回転体をさらに収容する、動力伝達装置。
【0094】
(7)によれば、筐体が第5回転体も収容するので、部品点数を削減できる。
【0095】
(8) (7)に記載の動力伝達装置であって、
前記第5回転体は、前記駆動部と機械的に接続され、
前記筐体には、前記駆動部を収容する他の筐体(モータケース)が固定される、動力伝達装置。
【0096】
(8)によれば、駆動部を収容する他の筐体をとは別体にして筐体に固定することで、駆動部の取り扱い性が向上する。
【0097】
(9) (3)又は(4)に記載の動力伝達装置であって、
前記搭載体は、前記筐体を挟んで互いに対向する位置に配置される一対の対向部(サイドフレーム111L、111R)を有する骨格(メインフレーム111)を備える、動力伝達装置。
【0098】
(9)によれば、筐体を保護することができる。
【0099】
(10) (9)に記載の動力伝達装置であって、
前記筐体は、前記筐体を挟んで該筐体の両側に配置される一対の固定部材(ミドルブラケット257)を介して一対の前記対向部に固定される、動力伝達装置。
【0100】
(10)によれば、筐体が安定して保持される。
【0101】
(11) (10)に記載の動力伝達装置であって、
前記筐体は、該筐体の外面から延出するよう設けられて前記固定部材が固定される延出部(上フランジ252b)を有する、動力伝達装置。
【0102】
(11)によれば、筐体と固定部材との固定が容易になる。
【0103】
(12) (9)から(11)のいずれかに記載の動力伝達装置であって、
前記骨格は、一対の前記対向部を連結するよう設けられる連結部(フロントフレーム111F)を有する、動力伝達装置。
【0104】
(12)によれば、骨格の強度が向上する。
【0105】
(13) (9)から(12)のいずれかに記載の動力伝達装置であって、
前記骨格は、一対の前記対向部の対向方向と直交する方向に開口(後部開口111m)を有し、
前記搭載体は、前記開口の少なくとも一部を閉塞する閉塞部(リヤカバー113)を備える、動力伝達装置。
【0106】
(13)によれば、開口を介して筐体を骨格に組み付けることができる。
【0107】
(14) (9)から(13)のいずれかに記載の動力伝達装置であって、
前記搭載体は、前記骨格の前記筐体とは反対側の外面に対して着脱可能に設けられる外装部材(サイドカバー112)を備える、動力伝達装置。
【0108】
(14)によれば、意匠性が向上する。
【0109】
(15) (1)~(14)のいずれかに記載の動力伝達装置であって、
前記動力伝達装置は、装着主体に対して装着される義肢装置に介装される、動力伝達装置。
【0110】
(15)によれば、義肢装置において断続装置への異物の侵入が抑制される。
【0111】
以上、各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0112】
なお、本出願は、2021年12月15日出願の日本特許出願(特願2021-203499)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【符号の説明】
【0113】
110 膝下側部材(搭載体)
111 メインフレーム(骨格)
111F フロントフレーム(連結部)
111L、111R サイドフレーム(対向部)
111m 後部開口(開口)
112 サイドカバー(外装部材)
113 リヤカバー(閉塞部)
182 第2シャフト(第2回転体、第4回転体)
183 第1駆動ギヤ(第5回転体)
184 第1従動ギヤ(第1回転体)
186 第2従動ギヤ(第3回転体)
210 第1断続機構(断続装置)
220 第2断続機構(断続装置)
241 操作ロッド(操作部)
250 ユニットケース(筐体)
251 アッパーケース(第3筐体)
252 ミドルケース(第1筐体)
252b 上フランジ(延出部)
253 ロワケース(第2筐体)
257 ミドルブラケット(固定部材)
281 ローラ(係合子)
282 リテーナ(操作部)
283 ピン(操作部)
284 ガイド(操作部)
901 第1駆動ギヤ(第1回転体)
905 第2駆動ギヤ(第3回転体)
911 第1シャフト(第2回転体、第4回転体)
M モータ(駆動部)
WH 駆動輪(被駆動部)
SP スピンドルユニット(被駆動部)
T 変速機(動力伝達装置)
図1
図2
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