(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】マッチング方法、タクシー管理装置、端末装置、タクシー運用システム、端末プログラム及びマッチングプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/47 20240101AFI20241216BHJP
【FI】
G06Q50/47
(21)【出願番号】P 2024008386
(22)【出願日】2024-01-24
(62)【分割の表示】P 2020121822の分割
【原出願日】2020-07-16
【審査請求日】2024-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 真一
(72)【発明者】
【氏名】塩津 真一
(72)【発明者】
【氏名】白石 春樹
(72)【発明者】
【氏名】前畑 実
(72)【発明者】
【氏名】一津屋 美岐
(72)【発明者】
【氏名】池田 知弘
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/197854(WO,A1)
【文献】特開2017-168047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを含む制御部と通信部とを備えたタクシー管理装置にて実行される方法であって、且つ、複数の通訳登録者を含む複数のユーザの中からタクシーへの相乗りの対象となる第1人物及び第2人物の組み合わせを特定するマッチング方法であって、
タクシーは基準言語を公用語とする国にて運用され、前記第1人物の使用言語は前記基準言語と異なり、
前記複数のユーザに対応付けられた複数の端末装置の夫々から送信され
て前記通信部にて受信される受信情報は、各ユーザのタクシーによる出発地及び目的地を特定する各ユーザの移動希望情報
と、各ユーザの識別情報と、を含み、
前記制御部にて
、各ユーザの識別情報と各ユーザの使用言語との対応関係及び各通訳登録者の識別情報と各通訳登録者の通訳能力情報との対応関係を示すデータを参照しつつ前記受信情報に基づき、各ユーザのタクシーによる出発地及び目的地、各ユーザの使用言語、並びに、前記複数の通訳登録者の通訳能力情報を含むマッチング情報を取得して、前記マッチング情報に基づき前記基準言語及び前記第1人物の使用言語間の通訳が可能なユーザである前記第2人物と前記第1人物との組み合わせを特定し、組み合わせの特定結果に応じた信号を前記通信部により前記第1人物及び前記第2人物に対応付けられた各端末装置に送信する
、マッチング方法。
【請求項2】
前記通訳能力情報は、前記通訳登録者ごとに前記通訳登録者の通訳可能言語を特定し、
前記通訳可能言語における通訳は、前記基準言語と非基準言語との間の通訳である
、請求項1に記載のマッチング方法。
【請求項3】
前記通訳能力情報により、前記通訳登録者ごとに且つ前記通訳可能言語ごとに通訳の習熟レベルが規定される
、請求項2に記載のマッチング方法。
【請求項4】
語学検定試験の結果に基づく語学検定データを用いて前記習熟レベルを決定する
、請求項3に記載のマッチング方法。
【請求項5】
前記マッチング情報は、各ユーザの使用言語、年齢及び性別を含む属性情報を有する
、請求項1~4の何れかに記載のマッチング方法。
【請求項6】
何れかの通訳登録者に対する前記属性情報は観光地の知識量情報を含む
、請求項5に記載のマッチング方法。
【請求項7】
前記マッチング情報は、タクシーによる前記第1人物の出発希望日時、及び、タクシーによる前記第2人物の出発希望日時又は出発可能日時を含む
、請求項1~6の何れかに記載のマッチング方法。
【請求項8】
前記第1人物と前記第1人物に同行する1以上の人物とから成るグループが1台のタクシーに乗車する場合、前記マッチング情報は前記グループの構成人数を示す情報を含み、前記第2人物は前記第1人物に同行する1以上の人物と異なる
、請求項1~7の何れかに記載のマッチング方法。
【請求項9】
タクシーによる前記第1人物の出発地及び目的地を示す配車要求信号が前記通信部にて受信されることに応答して、前記通信部を用いて前記タクシー管理装置から各通訳登録者に対応付けられた端末装置に対し、前記第1人物の出発地及び目的地並びに前記第1人物の使用言語を示す募集信号を送信する
、請求項1~8の何れかに記載のマッチング方法。
【請求項10】
前記第1人物及び前記第2人物の組み合わせの特定後、前記第1人物及び前記第2人物の乗車の対象となるタクシーに設置された車載装置に対し前記通信部を用いて前記タクシー管理装置から配車に関わる信号を送信する
、請求項1~9の何れかに記載のマッチング方法。
【請求項11】
前記第1人物及び前記第2人物の組み合わせの特定後、前記タクシー管理装置から前記第2人物に対応付けられた端末装置に対し前記通信部を用いて前記第1人物が前記第2人物と相乗りする予定であることを示す照会信号を送信し、その後、前記第2人物に対応付けられた端末装置からの承認信号が前記通信部にて受信されると、前記第1人物及び前記第2人物の乗車の対象となるタクシーに設置された車載装置に対し前記通信部を用いて前記タクシー管理装置から配車に関わる信号を送信する
、請求項1~9の何れかに記載のマッチング方法。
【請求項12】
複数の通訳登録者を含む複数のユーザの中からタクシーへの相乗りの対象となる第1人物及び第2人物の組み合わせを特定するタクシー管理装置であって、
前記複数のユーザに対応付けられた複数の端末装置の夫々から送信され
て前記タクシー管理装置にて受信される受信情報は、各ユーザのタクシーによる出発地及び目的地を特定する各ユーザの移動希望情報
と、各ユーザの識別情報と、を含み、
タクシーは基準言語を公用語とする国にて運用され、前記第1人物の使用言語は前記基準言語と異なり、
当該タクシー管理装置は、
各ユーザの識別情報と各ユーザの使用言語との対応関係及び各通訳登録者の識別情報と各通訳登録者の通訳能力情報との対応関係を示すデータを参照しつつ前記受信情報に基づき、各ユーザのタクシーによる出発地及び目的地、各ユーザの使用言語、並びに、前記複数の通訳登録者の通訳能力情報を含むマッチング情報
を取得し、前記マッチング情報に基づいて、前記基準言語及び前記第1人物の使用言語間の通訳が可能なユーザである前記第2人物と前記第1人物との組み合わせを特定し、組み合わせの特定結果に応じた信号を前記第1人物及び前記第2人物に対応付けられた各端末装置に送信する
、タクシー管理装置。
【請求項13】
複数の通訳登録者を含む複数のユーザの中からタクシーへの相乗りの対象となる第1人物及び第2人物の組み合わせを特定するタクシー管理装置と、
前記複数のユーザに対応付けられた複数の端末装置と、を備えたタクシー運用システムであって、
タクシーは基準言語を公用語とする国にて運用され、前記第1人物の使用言語は前記基準言語と異なり、
前記タクシー管理装置は、マッチング情報に基づいて、前記基準言語及び前記第1人物の使用言語間の通訳が可能なユーザである前記第2人物と前記第1人物との組み合わせを特定し、
前記マッチング情報は、各ユーザのタクシーによる出発地及び目的地、各ユーザの使用言語、並びに、前記複数の通訳登録者の通訳能力情報を含み、
前記複数の端末装置の夫々から送信されて前記タクシー管理装置にて受信される受信情報は、各ユーザのタクシーによる出発地及び目的地を特定
する各ユーザの移動希望情報と、各ユーザの識別情報と、を含み、
前記タクシー管理装置は、各ユーザの識別情報と各ユーザの使用言語との対応関係及び各通訳登録者の識別情報と各通訳登録者の通訳能力情報との対応関係を示すデータを参照しつつ前記受信情報に基づき、前記マッチング情報を取得する
、タクシー運用システム。
【請求項14】
プロセッサを含む制御部と通信部とを備えたタクシー管理装置にて実行される処理であって且つ複数の通訳登録者を含む複数のユーザの中からタクシーへの相乗りの対象となる第1人物及び第2人物の組み合わせを特定する処理を、前記制御部に実行させるマッチングプログラムであって、
タクシーは基準言語を公用語とする国にて運用され、前記第1人物の使用言語は前記基準言語と異なり、
各ユーザの識別情報と各ユーザの使用言語との対応関係及び各通訳登録者の識別情報と各通訳登録者の通訳能力情報との対応関係を示すデータを参照しつつ前記通信部での受信情報に基づき、各ユーザのタクシーによる出発地及び目的地、各ユーザの使用言語、並びに、前記複数の通訳登録者の通訳能力情報を含むマッチング情報を取得するステップを前記制御部に実行させ、
前記通信部での受信情報は、前記複数のユーザに対応付けられた複数の端末装置の夫々から送信され
て前記通信部にて受信される情報であって、各ユーザのタクシーによる出発地及び目的地を特定する
各ユーザの移動希望情報と、各ユーザの識別情報と、を含み、
前記マッチング情報に基づき、前記基準言語及び前記第1人物の使用言語間の通訳が可能なユーザである前記第2人物と前記第1人物との組み合わせを特定するステップと、
組み合わせの特定結果に応じた信号を前記通信部を用いて前記第1人物及び前記第2人物に対応付けられた各端末装置に送信するステップと、を前記制御部に実行させる
、マッチングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マッチング方法、タクシー管理装置、端末装置、タクシー運用システム、端末プログラム及びマッチングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
或る国(例えば日本国)において、当該国の公用語(日本国であれば日本語)と異なる言語を使用言語とする外国人がタクシーを利用することも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-146261号公報
【文献】特開2011-76417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この際、外国人のタクシー利用者はタクシーでの会話に不安を覚えることも多く、タクシー利用者の要望が運転手に正しく伝わらないなどといったトラブルが発生することもある。特に例えば、国際的なイベント会場でのイベント終了後(例えばスポーツの国際大会会場の試合終了後)には各種国籍の多数の外国人が一斉に会場から移動するため、運転手とのコミュニケーションが円滑に進まないと、大きな混乱が生じうる。
【0005】
一方で、タクシー利用者の中には通訳能力を有するものも多い。仮に、外国人のタクシー利用者と通訳能力を有するタクシー利用者を共通のタクシーに相乗りさせることができたならば、タクシー利用における言語の壁の問題は解消又は低減される。
【0006】
本発明は、上記問題に対応する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るマッチング方法は、複数の通訳登録者を含む複数のユーザの中からタクシーへの相乗りの対象となる第1人物及び第2人物の組み合わせを特定するマッチング方法であって、タクシー管理装置にて実行される。当該マッチング方法において、タクシーは基準言語を公用語とする国にて運用され、前記第1人物の使用言語は前記基準言語と異なり、マッチング情報に基づいて、前記基準言語及び前記第1人物の使用言語間の通訳が可能なユーザである前記第2人物と前記第1人物との組み合わせを特定し、前記マッチング情報は、各ユーザのタクシーによる出発地及び目的地、各ユーザの使用言語、並びに、前記複数の通訳登録者の通訳能力情報を含む。また本発明に係るタクシー管理装置は、第1人物の使用言語を特定する情報を含む第1情報、及び、第2人物の通訳可能言語を特定する情報を含む第2情報を取得する情報取得部と、前記第1情報及び前記第2情報に基づき、前記第1人物及び前記第2人物がタクシーに相乗りしたときにおける前記第2人物の運賃の割引設定を行う割引設定部と、を備えた構成(第1の構成)である。
【0008】
上記第1の構成に係るタクシー管理装置において、タクシーは基準言語を公用語とする国にて運用され、前記第1人物の使用言語は前記基準言語と異なり、前記基準言語と前記第1人物の使用言語との間の通訳が前記第2人物において可能である場合、そうでない場合と比べ、前記割引設定部は、前記相乗りの際の前記第2人物の運賃を低く設定する構成(第2の構成)であっても良い。
【0009】
上記第2の構成に係るタクシー管理装置において、前記基準言語と前記第1人物の使用言語との間の通訳が前記第2人物において可能である場合、その通訳の習熟レベルも前記第2情報に含まれ、前記割引設定部は、その通訳の習熟レベルに応じ、前記相乗りの際の前記第2人物の運賃の割引設定を行う構成(第3の構成)であっても良い。
【0010】
上記第3の構成に係るタクシー管理装置において、前記基準言語と前記第1人物の使用言語との間の通訳が前記第2人物において可能である場合、前記割引設定部は、前記習熟レベルが高いほど、前記相乗りの際の前記第2人物の運賃を低く設定する構成(第4の構成)であっても良い。
【0011】
上記第3又は第4の構成に係るタクシー管理装置において、前記第2人物を含む複数の通訳登録者の夫々についての通訳能力情報を登録して保持する通訳能力情報登録部を備え、前記通訳能力情報は、前記通訳登録者ごとに前記通訳登録者の通訳可能言語を特定し、前記通訳可能言語における通訳は、前記基準言語と非基準言語との間の通訳であり、前記通訳能力情報において、前記通訳登録者ごとに且つ前記通訳可能言語ごとに通訳の習熟レベルが規定され、前記第2情報は前記第2人物についての前記通訳能力情報を含む構成(第5の構成)であっても良い。
【0012】
上記第5の構成に係るタクシー管理装置において、マッチング情報に基づいて、1以上の通訳登録者を含む複数のユーザの中から、前記第1人物を選定するとともに、前記基準言語と前記第1人物の使用言語との間の通訳が可能なユーザを前記第2人物として選定するマッチング処理部を更に備え、前記マッチング情報は、各ユーザのタクシーによる出発地及び目的地、各ユーザの使用言語、及び、前記1以上の通訳登録者の前記通訳能力情報を含む構成(第6の構成)であっても良い。
【0013】
上記第1~第6の構成の何れかに係るタクシー管理装置において、前記割引設定部の設定結果をタクシーに搭載された車載装置に送信する通信部を更に備えた構成(第7の構成)であっても良い。
【0014】
上記第2~第6の構成の何れかに係るタクシー管理装置において、前記第1情報及び前記第2情報に基づき、前記第1人物及び前記第2人物がタクシーに相乗りしたときにおける前記第1人物の運賃の割増設定を行う割増設定部を更に備え、前記基準言語と前記第1人物の使用言語との間の通訳が前記第2人物において可能である場合、そうでない場合と比べ、前記割増設定部は、前記相乗りの際の前記第1人物の運賃を高く設定する構成(第8の構成)であっても良い。
【0015】
上記第8の構成に係るタクシー管理装置において、前記割増設定部の設定結果をタクシーに搭載された車載装置に送信する通信部を更に備えた構成(第9の構成)であっても良い。
【0016】
本発明に係るタクシー運用システムは、上記第1~第9の構成の何れかに係るタクシー管理装置と、タクシーに搭載され、前記タクシー管理装置と通信可能な車載装置と、を備えた構成(第10の構成)である。
【0017】
本発明に係る運賃設定方法は、第1人物の使用言語を特定する情報を含む第1情報、及び、第2人物の通訳可能言語を特定する情報を含む第2情報に基づき、前記第1人物及び前記第2人物がタクシーに相乗りしたときにおける前記第2人物の運賃の割引設定を行う構成(第11の構成)である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記問題に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るタクシー運用システムの全体構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る端末装置の概略機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るサーバ装置の概略機能ブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る車載装置の概略機能ブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態のタクシー運用システムにて提供される特殊配車サービスの概要を表す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係り、サーバ装置にて保持される配車アプリ登録者データの構成図である。
【
図7】本発明の実施形態に係り、サーバ装置にて保持される通訳登録者データの構成図である。
【
図8】
図7の通訳登録者データ内における通訳能力情報の例を示す図である。
【
図9】
図8の通訳能力情報中の通訳レベルの設定に供される語学検定データの構成図である。
【
図10】本発明の実施形態に係り、サーバ装置にて設定される割引率データの構成図である。
【
図11】本発明の実施形態に係り、通訳登録者の一人である注目人物の運賃の算出方法を表すフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態に係り、特殊配車サービスに関わるサーバ制御部の機能ブロック図である。
【
図13】本発明の実施形態に属する第1実施例に係り、各被通訳者の端末装置及び各通訳登録者の端末装置からサーバ装置に対し配車要求信号及び相乗り対応信号が送信される様子を示す図である。
【
図14】本発明の実施形態に属する第1実施例に係り、タクシーへの相乗り対象者を選定するための動作の流れを表すフローチャートである。
【
図15】本発明の実施形態に属する第1実施例に係り、一人の被通訳者と一人の通訳登録者に注目した特殊配車サービスの説明図である。
【
図16】本発明の実施形態に属する第2実施例に係り、一人の被通訳者と一人の通訳登録者に注目した特殊配車サービスの説明図である。
【
図17】本発明の実施形態に属する第4実施例に係り、サーバ装置にて設定される割引料データの構成図である。
【
図18】本発明の実施形態に属する第4実施例に係り、通訳登録者の一人である注目人物の運賃の算出方法を表すフローチャートである。
【
図19】本発明の実施形態に属する第7実施例に係り、特殊配車サービスに関わるサーバ制御部の機能ブロック図である。
【
図20】本発明の実施形態に属する第7実施例に係り、サーバ装置にて設定される割増率データの構成図である。
【
図21】本発明の実施形態に属する第7実施例に係り、通訳登録者及び被通訳者の運賃の算出方法を表すフローチャートである。
【
図22】本発明の実施形態に属する第7実施例に係り、サーバ装置にて設定される割増料データの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量又は部材等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量又は部材等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“D1”によって参照される配車アプリ登録者データは(
図6参照)、配車アプリ登録者データD1と表記されることもあるし、データD1と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0021】
図1に本発明の実施形態に係るタクシー運用システムSYSの全体構成を示す。タクシー運用システムSYSは、1以上の端末装置10と、サーバ装置20と、1以上の車載装置30と、で構成される。サーバ装置20は、本発明に係るタクシー管理装置の例である。サーバ装置20は、互いに分離しつつも無線又は有線にて互いに接続された複数のコンピュータ装置により形成されていても良い。タクシー運用システムSYSの下で複数のタクシーが運営される。
【0022】
端末装置10は、ユーザが所持及び操作する機器であり、例えば、ユーザが所持するスマートホン、タブレット、パーソナルコンピュータである。ユーザはタクシー運用システムSYSの利用者であり、タクシーに乗車する又はタクシーへの乗車を予定する旅客となり得る。サーバ装置20は、各端末装置10及び各車載装置30と所定の通信網(移動体通信ネットワーク)を介して無線接続され、各端末装置10及び各車載装置30と無線による双方向通信が可能である。車載装置30はタクシー運用システムSYSに属する各タクシーに搭載される電子機器である。車載装置30は例えばタブレット型の電子機器として構成される。
【0023】
図2は端末装置10の概略機能ブロック図である。端末装置10は、端末制御部11、端末通信部12、端末記憶部13、インターフェース部14及びGPS処理部15を備える。この他、
図2に示されない様々な他の機能部位が端末装置10に設けられ得るが、他の機能部位の図示は省略されている。
【0024】
端末制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only memory)及びRAM(Random access memory)等にて構成され、ROMに格納されたプログラムをCPUが実行することで、各種機能を実現すると共に端末装置10の全体の動作を制御する。端末通信部12は、端末装置10と異なる装置と無線通信を行うための処理を実行する。端末装置10との通信の相手にはサーバ装置20が含まれる。端末記憶部13は、ROM及びRAM等にて構成され、端末制御部11の制御の下で任意の情報及びデータを記憶する。インターフェース部14は、端末装置10と端末装置10の操作者(上述のユーザに相当)との間のマンマシンインターフェースであり、表示画面、操作部、マイクロホン及びスピーカ等から成る。
【0025】
GPS処理部15は、GPS(Global Positioning System)を形成する複数のGPS衛星からの信号を受信することで端末装置10の現在位置を検出し、端末装置10の現在位置を示す端末位置情報を生成する。端末位置情報では、端末装置10の現在位置が、地球上における経度及び緯度によって表現される。端末位置情報は所定周期で順次生成される。或る端末装置10についての端末位置情報は、当該端末装置10を所持するユーザの現地位置を表している。
【0026】
図3はサーバ装置20の概略機能ブロック図である。サーバ装置20は、サーバ制御部21、サーバ通信部22、サーバ記憶部23及びインターフェース部24を備える。この他、
図3に示されない様々な他の機能部位がサーバ装置20に設けられ得るが、他の機能部位の図示は省略されている。
【0027】
サーバ制御部21は、CPU、ROM及びRAM等にて構成され、ROMに格納されたプログラムをCPUが実行することで、各種機能を実現すると共にサーバ装置20の全体の動作を制御する。サーバ通信部22は、サーバ装置20と異なる装置と無線通信を行うための処理を実行する。サーバ装置20との通信の相手には端末装置10及び車載装置30が含まれる。サーバ記憶部23は、ROM及びRAM等にて構成され、サーバ制御部21の制御の下で任意の情報及びデータを記憶する。インターフェース部24は、サーバ装置20とサーバ装置20の操作者との間のマンマシンインターフェースであり、表示画面、操作部、マイクロホン及びスピーカ等から成る。
【0028】
図4は車載装置30の概略機能ブロック図である。車載装置30は、車載制御部31、車載通信部32、車載記憶部33、インターフェース部34及びGPS処理部35を備える。この他、
図4に示されない様々な他の機能部位が車載装置30に設けられ得るが、他の機能部位の図示は省略されている。
【0029】
車載制御部31は、CPU、ROM及びRAM等にて構成され、ROMに格納されたプログラムをCPUが実行することで、各種機能を実現すると共に車載装置30の全体の動作を制御する。車載通信部32は、車載装置30と異なる装置と無線通信を行うための処理を実行する。車載装置30との通信の相手にはサーバ装置20が含まれる。車載記憶部33は、ROM及びRAM等にて構成され、車載制御部31の制御の下で任意の情報及びデータを記憶する。インターフェース部34は、車載装置30と車載装置30の操作者(当該車載装置30が搭載されたタクシーの運転手に相当)との間のマンマシンインターフェースであり、表示画面、操作部、マイクロホン及びスピーカ等から成る。
【0030】
GPS処理部35は、GPSを形成する複数のGPS衛星からの信号を受信することで車載装置30の現在位置を検出し、車載装置30の現在位置を示す車両位置情報を生成する。車両位置情報では、車載装置30の現在位置が、地球上における経度及び緯度によって表現される。車両位置情報は所定周期で順次生成される。或る車載装置30についての車両位置情報は、当該車載装置30が搭載されたタクシーの現地位置を表している。
【0031】
尚、端末装置10、サーバ装置20、車載装置30における信号の送受信に関し、任意の信号又は情報の受信とは詳細には端末通信部12、サーバ通信部22、車載通信部32での受信(換言すれば端末通信部12、サーバ通信部22、車載通信部32を用いた受信)を指すと共に、任意の信号又は情報の送信とは詳細には端末通信部12、サーバ通信部22、車載通信部32からの送信(換言すれば端末通信部12、サーバ通信部22、車載通信部32を用いた送信)を指すが、以下では、端末通信部12、サーバ通信部22、車載通信部32の記述を省略することがある。
【0032】
タクシー運用システムSYS及びタクシー運用システムSYSにおけるタクシーは、所定の基準言語を公用語とする国にて運用される。本実施形態では、タクシー運用システムSYS及びタクシー運用システムSYSにおけるタクシーが日本国において運用されることを想定する。このため、基準言語は日本語である。タクシーの運転手の内、一部の運転手は、基準言語(ここでは日本語)以外の言語で会話することも可能であり得るが、タクシーの運転手は基本的に基準言語のみを正確に理解し且つ基準言語にて会話を行うものとする。即ち、各タクシーの運転手の使用言語は日本語である。本実施形態において、通訳とは、基準言語と、基準言語以外の言語(以下、非基準言語と称する)との間の通訳を意味する。尚、説明を分かりやすくするために、当該国(地域)において大多数の人が用いる言語を、当該国で基準となっている言語と捉え、その意味において当該言語を基準言語と称する。
【0033】
図5を参照して、タクシー運用システムSYSで提供される特徴的な配車サービス(以下、特殊配車サービスと称する)の概要を説明する。
図5において、人物P、Qは、夫々、第1、第2のユーザを表している。人物Pの使用言語は基準言語と異なっていて、人物Pがタクシーでの会話に不安を持っており、タクシーの利用の際、通訳を希望している。人物Qは人物Pの使用言語と基準言語との間の通訳能力を有している。即ち、人物Qの通訳可能言語に人物Pの使用言語が含まれている。サーバ装置20は、複数のユーザの夫々における移動希望情報(タクシーによる出発地及び目的地等)及び使用言語、並びに、通訳能力を有する各ユーザの通訳可能言語などに基づき、1台のタクシーに相乗りさせるユーザのマッチングを行う。相乗りとは、1台のタクシーに複数の人物(複数のユーザ)が同乗することを指す。当然ながら、同乗する複数の人物とは、運転手以外の複数の人物を指す。
図5では、マッチングの結果、人物Pと相乗りすべき人物として人物Qが選定されている。このとき、サーバ装置20は、人物Qの通訳能力及び通訳作業などを考慮して人物Qの運賃を無料又は低廉に設定し、その設定結果並びに出発地及び目的地を含む配車指示を、人物P及びQが相乗りすべきタクシーの車載装置30に送信する。その後、実際に人物P及びQが1台のタクシーに相乗りしたとき、上記設定結果に従い、人物Qの運賃が無料とされる又は標準運賃よりも低廉とされる。
【0034】
これにより、人物Pの言語に関する不安が解消されると同時に人物Qは無料又は低運賃でタクシーを利用することができ、双方にとってメリットのあるサービスを提供できる。
【0035】
特殊配車サービスはサーバ装置20が主体となって実現される。特殊配車サービスを実現するためのサーバ装置20の構成及び動作を詳細に説明する。
【0036】
図6及び
図7に、サーバ記憶部23に記憶及び保持される配車アプリ登録者データD1及び通訳登録者データD2の構造を示す。特殊配車サービスを利用するための所定のアプリケーションプログラム(以下、配車アプリと称する)が各端末装置10に予めインストールされていて、各端末装置10において端末制御部11により配車アプリを実行可能であるとする。各端末装置10にて配車アプリを起動させた状態で、各ユーザが自身の固有情報をインターフェース部14を通じて各端末装置10に入力する。これにより、各ユーザの固有情報が各端末装置10からサーバ装置20に伝達され、各ユーザの固有情報が配車アプリ登録者データD1又は通訳登録者データD2に格納される。
【0037】
タクシー運用システムSYSにおける各ユーザは、
図5の人物P及びQの何れかになり得る。特殊配車サービスに人物Pとして参加しうるユーザを特に被通訳者と称し、特殊配車サービスに人物Qとして参加しうるユーザを特に通訳登録者と称する。各被通訳者の固有情報はデータD1に格納され且つ各通訳登録者の固有情報はデータD2に格納される。これらの格納の後に、特殊配車サービスが実際に運用される。
【0038】
配車アプリ登録者データD1には、複数の個人IDが設定され、各個人IDに一人の被通訳者が対応付けられた上で当該一人の被通訳者の固有情報がデータD1内に含められる。或る被通訳者の固有情報は、当該被通訳者の氏名、属性情報及び個人認証情報を含む。尚、図面煩雑化の防止のため、
図6の表中では属性情報の詳細を示していない。或る被通訳者の属性情報は、当該被通訳者の属性を表す情報であり、当該被通訳者の使用言語、国籍、年齢、性別、趣味などを含む。或る被通訳者が複数の言語の何れかで会話することができる場合、その複数の言語の内、当該被通訳者が選択した主たる言語が使用言語として登録されて良い。或る被通訳者の個人認証情報は、当該被通訳者の身分を証明するための情報であり、犯罪の防止等を目的としてデータD1に含められる。例えば、或る被通訳者は、自分自身の身分を証明するためにパスポートを利用することができ、この場合、パスポートが当該被通訳者の個人認証情報となる。
【0039】
通訳登録者データD2には、複数の通訳登録者IDが設定され、各通訳登録者IDに一人の通訳登録者が対応付けられた上で当該一人の通訳登録者の固有情報がデータD2内に含められる。或る通訳登録者の固有情報は、当該通訳登録者の氏名、属性情報及び個人認証情報を含み、更に当該通訳登録者の通訳能力情報を含む。尚、図面煩雑化の防止のため、
図7の表中では属性情報及び通訳能力情報の詳細を示していない。或る通訳登録者の属性情報は、当該通訳登録者の属性を表す情報であり、当該通訳登録者の使用言語、国籍、年齢、性別、趣味などを含む。或る通訳登録者が複数の言語の何れかで会話することができる場合、その複数の言語の内、当該通訳登録者が選択した主たる言語が使用言語として登録されて良い。或る通訳登録者の個人認証情報は、当該通訳登録者の身分を証明するための情報であり、犯罪の防止等を目的としてデータD2に含められる。例えば、或る通訳登録者は、自分自身の身分を証明するためにパスポートを利用することができ、この場合、パスポートが当該通訳登録者の個人認証情報となる。
【0040】
通訳能力情報は、通訳登録者の通訳可能言語及び通訳レベルを特定する情報である。通訳登録者データD2において、通訳登録者ごとに通訳能力情報が登録及び保持される。
【0041】
或る通訳登録者について、通訳可能言語とは、通訳登録者により基準言語との間で通訳が可能な言語を指す。例えば、或る特定の通訳登録者が、日本語及び英語間の通訳と日本語及び仏語間の通訳とを行うことができるとき、特定の通訳登録者の通訳可能言語は英語及び仏語となる。
【0042】
通訳レベルとは通訳の習熟レベルを表す。通訳登録者データD2では、通訳可能な非基準言語ごとに、通訳レベルがレベルLV1、LV2、LV3及びLV4の何れかに設定される(
図8参照)。レベルLV1、LV2、LV3及びLV4の内、レベルLV1が最も高く、レベルLV1から、レベルLV2、レベルLV3を通じて、レベルLV4に向かうにつれて通訳レベルが低くなるものとする。通訳レベルが高いほど通訳の習熟レベルが高く、通訳をより正確に且つより円滑に行うことができると期待される。
【0043】
図8に、三人の通訳登録者510、520及び530についての通訳能力情報の例を示す。
図8に示す情報が
図7の通訳登録者データD2に含まれる。通訳登録者510は、日本語及び英語間の通訳と日本語及び中国語間の通訳と日本語及び仏語間の通訳とを行うことが可能であって(即ち通訳登録者510の通訳可能言語に英語、中国語及び仏語が含まれ)、それら3種類の通訳が可能であることが通訳登録者データD2に登録されている。そして、通訳登録者510について、日本語及び英語間の通訳における通訳レベル、日本語及び中国語間の通訳における通訳レベル、日本語及び仏語間の通訳における通訳レベルが、夫々、レベルLV2、LV1、LV3であることが通訳登録者データD2に登録されている。通訳登録者520は、日本語及び独語間の通訳と日本語及びスワヒリ語間の通訳を行うことが可能であって(即ち通訳登録者520の通訳可能言語に独語及びスワヒリ語が含まれ)、それら2種類の通訳が可能であることが通訳登録者データD2に登録されている。そして、通訳登録者520について、日本語及び独語間の通訳における通訳レベル、日本語及びスワヒリ語間の通訳における通訳レベルが、夫々、レベルLV4、LV1であることが通訳登録者データD2に登録されている。通訳登録者530は、日本語及び中国語間の通訳のみが可能であって(即ち通訳登録者530の通訳可能言語には中国語のみが含まれ)、そのことが通訳登録者データD2に登録されている。そして、通訳登録者530について、日本語及び中国語間の通訳における通訳レベルがレベルLV2であることが通訳登録者データD2に登録されている。このように、通訳登録者データD2における通訳能力情報により、通訳登録者ごとに且つ通訳可能言語ごとに通訳レベル(通訳の習熟レベル)が規定される。
【0044】
サーバ装置20において、サーバ制御部21は各通訳登録者の通訳レベルを通訳レベル推定用情報に従って決定することができる。例えば、サーバ装置20に提供される
図9に示すような語学検定データを通訳レベル推定用情報として用いることができる。語学検定データは、通訳登録者の夫々について、非基準言語ごとに非基準言語の習熟レベルを数値化して表したものであり、語学検定機関で実施済みの語学検定試験の結果に基づき生成される。例えば、通訳登録者510が、英語の習熟レベルを得点化する英語の語学検定試験にて第1、第2、第3、第4の得点を取得すれば、通訳登録者510の英語の通訳レベルは、夫々、レベルLV1、LV2、LV3、LV4に設定される。ここで、(第1の得点)>(第2の得点)>(第3の得点)>(第4の得点)、である。尚、通訳登録者510を含む任意の通訳登録者は基準言語を十分に扱えるものとする。故に、通訳登録者510が英語を解することができれば、日本語及び英語間の通訳が可能である(他の通訳登録者についても同様)。
【0045】
サーバ装置20に対する語学検定データの提供方法は任意である。例えば、語学検定機関に設置されたコンピュータ装置からサーバ装置20に対して語学検定データが提供されて良い。或いは、通訳登録者が語学検定機関での認証を添えて自身の語学検定データをサーバ装置20の管理者に提出しても良く、この場合、提出された語学検定データに基づきデータD2内の通訳能力情報が設定される。
【0046】
上述の語学検定データは通訳レベル推定用情報の一例に過ぎない。通訳レベル推定用情報は、各通訳登録者における基準言語及び非基準言語間の通訳の習熟レベルを非基準言語ごとに推定するためのデータであれば任意である。例えば、通訳登録者の通訳に関してネットワークに上げられている情報(通訳を利用したユーザからの所謂口コミ情報など)が通訳レベル推定用情報に含められていても良い。また、本実施形態では、通訳レベルをレベルLV1~LV4の4段階で設定することを想定しているが、通訳レベルの設定の段階数は2以上のであれば任意である。
【0047】
図10に、サーバ記憶部23に記憶及び保持されている割引率データD3の構造を示す。割引率データD3では、通訳レベルに応じた通訳登録者の運賃の割引率k
Dが非基準言語ごとに規定されている。つまり、割引率データD3では、割引率k
Dが非基準言語ごとに且つ通訳レベルごとに規定されており、被通訳者及び通訳登録者が人物P及びQとして実際に1台のタクシーに相乗りした場合における通訳登録者の運賃は標準運賃の(1-k
D)倍とされる。“0<k
D≦1”が満たされる。
【0048】
図11を参照し、通訳登録者の一人である注目人物の運賃の算出方法について説明を加える。注目人物の標準運賃は、注目人物を乗せた状態でのタクシーの走行距離及び走行時間、並びに、注目人物のタクシーの乗車地、降車地、乗車開始時刻及び乗車終了時刻などに基づき、所定の標準運賃算出条件に従って算出される。この点については被通訳者も同様である。後述の事前確定運賃サービスが導入されていない場合にあっては、標準運賃の算出自体はタクシーに搭載されたタクシーメータ又は車載装置30にて実行される。ここでは、事前確定運賃サービスが導入されていないと考える。
【0049】
特定の乗車条件にて注目人物が特定の乗車地から特定の降車地までタクシーで移動したときの、注目人物の標準運賃は運賃FREFであったとする。ここで、特定の乗車条件とは、注目人物と被通訳者との相乗り有無を除く乗車条件であり、注目人物を乗せた状態でのタクシーの走行距離及び走行時間、並びに、注目人物のタクシーの乗車地、降車地、乗車開始時刻及び乗車終了時刻などの条件である。この場合において、仮に、特定の乗車条件にて注目人物が一人で特定の乗車地から特定の降車地までタクシーで移動したならば(ステップS11のN)、注目人物の運賃は標準運賃FREFとなる(ステップS14)。一方、特定の乗車条件にて注目人物(通訳登録者)と被通訳者が1台のタクシーに相乗りした状態で注目人物が特定の乗車地から特定の降車地まで移動し、且つ、注目人物(通訳登録者)の通訳可能言語に被通訳者の使用言語が含まれているのであれば(ステップS11及びS12のY)、注目人物の運賃は標準運賃FREFの(1-kD)倍とされる(ステップS13)。特定の乗車条件にて注目人物(通訳登録者)と被通訳者が1台のタクシーに相乗りした状態で注目人物が特定の乗車地から特定の降車地まで移動した場合であっても、注目人物(通訳登録者)の通訳可能言語に被通訳者の使用言語が含まれていないのであれば(ステップS11のY及びステップS12のN)、注目人物の運賃は標準運賃FREFとなる(ステップS14)。
【0050】
注目人物に対して割引率kDが設定された場合、設定された割引率kDを特定する情報を含む信号が、サーバ装置20(サーバ通信部22)から、注目人物と被通訳者が相乗りすべきタクシーの車載装置30に対し送信される。当該タクシーの車載装置30からタクシーメータに割引率kDを特定する情報が提供されることで、注目人物の運賃が実際に“FREF・(1-kD)”とされる。車載装置30にタクシーメータの機能を担わせても良い。
【0051】
通訳される非基準言語が一定である場合、通訳レベルが高いほど、対応する割引率k
Dが高くなる。割引率k
Dが設定された通訳登録者の運賃は、割引率k
Dが高いほど低くなる。即ち例えば、
図10に示す如く、被通訳者としての人物Pの使用言語が中国語であって且つ通訳登録者としての人物Qの通訳可能言語に中国語が含まれる場合において、人物Qの中国語の通訳レベルがレベルLV1、LV2、LV3、LV4であるとき、人物Qの割引率k
Dは、夫々、70%、60%、50%、30%に設定される。同様に例えば、被通訳者としての人物Pの使用言語がスワヒリ語であって且つ通訳登録者としての人物Qの通訳可能言語にスワヒリ語が含まれる場合において、人物Qのスワヒリ語の通訳レベルがレベルLV1、LV2、LV3、LV4であるとき、人物Qの割引率k
Dは、夫々、100%、90%、80%、60%に設定される。“k
D=1”であるとき、即ち割引率k
Dに1が設定されたとき、人物Qの運賃はゼロとなる。但し、“k
D=1”となることが無いように割引率データD3を構成しても良い。
【0052】
図12に、特殊配車サービスに関わるサーバ制御部21の機能ブロック図を示す。サーバ制御部21は、情報取得部21A、マッチング処理部21B及び割引設定部21Cを備える。情報取得部21Aは、被通訳者に関する被通訳者情報(第1情報)と通訳登録者に関する通訳登録者情報(第2情報)を取得する。被通訳者情報は、少なくとも被通訳者の使用言語を特定する情報を含む。通訳登録者情報は、少なくとも通訳登録者の通訳可能言語を特定する情報を含み、望ましくは通訳登録者の通訳能力情報(
図7及び
図8参照)を含む。マッチング処理部21Bは、相乗りすべき被通訳者と通訳登録者のマッチング処理を行う(詳細は後述)。割引設定部21Cは、被通訳者情報及び通訳登録者情報に基づいて、被通訳者及び通訳登録者が1台のタクシーに相乗りしたときにおける通訳登録者の運賃の割引設定を行う。通訳登録者の運賃の割引設定は、通訳登録者の運賃に対する割引有無の設定と、割引がある際の割引率k
Dの設定と、を含む。
【0053】
以下、複数の実施例の中で、タクシー運用システムSYSに関する具体的な動作例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述した事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0054】
<<第1実施例>>
タクシー運用システムSYSの第1実施例を説明する。第1実施例では、リアルタイムで被通訳者と通訳登録者をマッチングさせて、マッチングさせた被通訳者及び通訳登録者の相乗りを促進する動作を説明する。
【0055】
図13を参照する。複数の被通訳者が所持する複数の端末装置10の夫々から配車要求信号Req_Pがサーバ装置20に送信され、複数の通訳登録者が所持する複数の端末装置10の夫々から相乗り対応信号Req_Qがサーバ装置20に送信される。
図13では、複数の被通訳者に対応する複数の配車要求信号Req_Pと複数の通訳登録者に対応する複数の相乗り対応信号Req_Qが同時期にサーバ装置20に送信される様子が示されている。例えば、国際的なイベント会場でのイベント終了後(例えばスポーツの国際大会会場の試合終了後)に多くの国籍の人物が会場から移動するケースにおいて、多数の信号Req_P及びReq_Qが同時期にサーバ装置20に送信されると想定される。
【0056】
或る特定の被通訳者に対応する配車要求信号Req_Pは、特定の被通訳者の移動希望情報及び個人ID(
図6参照)を含み、且つ、通訳を希望する旨の情報を含んでいる。被通訳者の移動希望情報は、被通訳者のタクシーによる出発地及び目的地を含んでいる。被通訳者の移動希望情報は、被通訳者のタクシーによる経由地、出発希望時刻、到着希望時刻などを更に含むこともある。
【0057】
或る特定の通訳登録者に対応する相乗り対応信号Req_Qは、特定の通訳登録者の移動希望情報及び通訳登録者ID(
図7参照)を含み、且つ、被通訳者との相乗りを希望又は許可する旨の情報を含んでいる。通訳登録者の移動希望情報は、通訳登録者のタクシーによる出発地及び目的地を含んでいる。通訳登録者の移動希望情報は、通訳登録者のタクシーによる経由地、出発希望時刻、到着希望時刻などを更に含むこともある。
【0058】
被通訳者又は通訳登録者がタクシーに乗車して移動する場合、被通訳者又は通訳登録者はタクシーにとっての旅客である。出発地とは、タクシーによる旅客の移動の出発地点であって、旅客がタクシーに乗車する地点(タクシーへの乗車を開始する地点)である。故に、タクシーの利用に関して出発地と乗車地は同義である。目的地とは、タクシーを利用して旅客が到達することを望む目的地点であって、旅客がタクシーを降車する地点でもある。故に、タクシーの利用に関して目的地と降車地は同義である。
【0059】
図14を参照し、被通訳者及び通訳登録者のマッチングの流れを説明する。マッチングとは、1台のタクシーに相乗りすべき被通訳者及び通訳登録者の組み合わせを選定することを指す。ステップS31~S33の処理はサーバ装置20にて実行される。尚、
図13の例では、複数の端末装置10からの複数の配車要求信号Req_Pと複数の端末装置10からの複数の相乗り対応信号Req_Qとがサーバ装置20にて受信される様子が示されているが、サーバ装置20にて受信される配車要求信号Req_Pの個数は1以上であれば任意であり、サーバ装置20にて受信される相乗り対応信号Req_Qの個数も1以上であれば任意である。
【0060】
まず、ステップS31において、1以上の被通訳者の端末装置10からの1以上の配車要求信号Req_Pがサーバ装置20(サーバ通信部22)にて受信される。ステップS31において、情報取得部21A(
図12参照)は、その受信結果に基づき、各被通訳者に関する被通訳者情報(第1情報)として、各被通訳者の移動希望情報及び固有情報を取得する。情報取得部21Aは、配車アプリ登録者データD1(
図6参照)を参照し、各配車要求信号Req_Pに含まれる個人IDに基づきデータD1から各被通訳者の固有情報を取得できる。
【0061】
一方、ステップS32において、1以上の通訳登録者の端末装置10からの1以上の相乗り対応信号Req_Qがサーバ装置20(サーバ通信部22)にて受信される。ステップS32において、情報取得部21Aは、その受信結果に基づき、各通訳登録者に関する通訳登録者情報(第2情報)として、各通訳登録者の移動希望情報及び固有情報を取得する。情報取得部21Aは、通訳登録者データD2(
図7参照)を参照し、各相乗り対応信号Req_Qに含まれる通訳登録者IDに基づきデータD2から各通訳登録者の固有情報を取得できる。
【0062】
尚、ステップS31及びS32の処理の実行順序は任意であり、それらが同時に行われることがあっても良い。また、被通訳者の固有情報の全部又は一部(例えば使用言語を特定する情報)は配車要求信号Req_Pに含まれていても良く、この場合、情報取得部21Aは、配車要求信号Req_Pから被通訳者の固有情報の全部又は一部(例えば使用言語を特定する情報)を抽出しても良い。
【0063】
ステップS31及びS32の後、ステップS33において、マッチング処理部21B(
図12参照)によりマッチング処理が行われる。マッチング処理では、ステップS31及びS32での取得情報を含むマッチング情報に基づき、1台のタクシーに相乗りさせるべき被通訳者及び通訳登録者を相乗り対象者として選定する。ここで選定された被通訳者及び通訳登録者が
図5の人物P及びQに相当する。即ち、マッチング処理では、マッチング情報に基づいて、1以上の通訳登録者を含む複数のユーザの中から、被通訳者である人物Pを選定すると共に、基準言語と人物Pの使用言語との間の通訳が可能なユーザ(通訳登録者)を人物Qとして選定する。この際、出発地が完全に又は或る程度一致する被通訳者及び通訳登録者であって、且つ、目的地も完全に又は或る程度一致する被通訳者及び通訳登録者が、相乗り対象者(P及びQ)として選定される。マッチング情報は、ステップS31及びS32での取得情報、即ち、各被通訳者の被通訳者情報(移動希望情報及び固有情報)及び各通訳登録者の通訳登録者情報(移動希望情報及び固有情報)を含んでいるため、各ユーザのタクシーによる出発地及び目的地、各ユーザの使用言語、及び、各通訳登録者の通訳能力情報を含む(
図6及び
図7を適宜参照)。故に、適正な相乗り対象者を選定できる。
【0064】
つまり、出発地及び目的地が完全に又は或る程度一致するユーザ同士であって、通訳を望むユーザ(被通訳者)と通訳が可能なユーザ(通訳登録者)を、相乗り対象者として適正にマッチングさせることが可能となる。
【0065】
このとき、マッチング情報に各ユーザの属性情報(使用言語以外の属性情報;
図6及び
図7参照)を含めておくことで、様々な観点から相乗り対象者をマッチングさせることが可能となり、マッチングの適正化が促進される。例えば、異性のユーザ同士よりも同性のユーザ同士がマッチングされやすくなるようにしたり、趣味の一致するユーザ同士をマッチングさせるといったことが可能となる。尚、通訳登録者の属性情報に観光地の知識量情報などが含まれていても良い。例えば、人物Pとしての被通訳者が京都市内をタクシーで移動する際、京都に関する知識が豊富な通訳登録者は人物Qとして選定されやすくなるといった応用が可能である。
【0066】
図15に、被通訳者の一人である人物Pと通訳登録者の一人である人物Qに注目したタクシー運用システムSYSの動作の流れを示す。
図15の人物P及びQは、
図5の人物P及びQと同じ人物を指す。
図15では、図示の煩雑化防止のため、
図12に示される複数の被通訳者及び複数の通訳登録者の内、マッチング処理により1組の相乗り対象者として選定される人物P及びQのみが示されている。人物P、Qが所持する端末装置10を、特に夫々符号“10P”、“10Q”にて参照する。
【0067】
信号610は端末装置10Pからサーバ装置20に送信される配車要求信号Req_Pであり、信号612は端末装置10Qからサーバ装置20に送信される相乗り対応信号Req_Qである。サーバ装置20では、信号610及び612の受信結果に基づく情報取得処理614が実行された後、マッチング処理616及びタクシー探索処理618が実行される。情報取得処理614は
図14のステップS31及びS32の処理に相当し、マッチング処理616は
図14のステップS33の処理に相当する。マッチング処理616の結果、人物P及びQが相乗り対象者として選定される。
【0068】
タクシー運用システムSYSに属する複数のタクシーの各車載装置30は、順次取得される車両位置情報をサーバ装置20に順次送信する。タクシー探索処理618において、サーバ制御部21は、各車載装置30からの車両位置情報と、信号610及び612(特に人物P及びQの出発地)とに基づいて、人物P及びQを相乗りさせるのに適したタクシーを探索し、探索されたタクシーを対象タクシーに設定する。この際、空車状態のタクシーのみが探索対象に含められるようにして良い。探索自体は既存技術であるため、詳細な説明を省略する。尚、マッチングの結果とタクシーの探索結果が最適化されるよう、マッチング処理616及びタクシー探索処理618が並列に行われても良い。
【0069】
マッチング処理616により人物P及びQが相乗り対象者として選定されると、割引設定部21C(
図12参照)により割引設定処理620が実行される。割引設定処理620において、割引設定部21Cは、人物Pの使用言語と人物Qの通訳能力情報とに基づき、人物Qに対する割引率k
Dを設定する。割引率k
Dの設定方法は
図10等を参照して上述した通りである。即ち例えば、人物Pの使用言語が中国語である場合において、人物Qの中国語の通訳レベルがレベルLV1、LV2、LV3、LV4であるとき、人物Qの割引率k
Dは、夫々、70%、60%、50%、30%に設定される。同様に例えば、人物Pの使用言語がスワヒリ語である場合において、人物Qのスワヒリ語の通訳レベルがレベルLV1、LV2、LV3、LV4であるとき、人物Qの割引率k
Dは、夫々、100%、90%、80%、60%に設定される。
【0070】
割引設定処理620の後、サーバ制御部21はサーバ通信部22を用いて照会信号622を端末装置10Qに送信する。照会信号622の内容には、人物Pが人物Qと相乗りする予定であること、人物Pの使用言語、及び、割引設定処理620にて設定された割引率kDが含まれる。また、対象タクシーに乗車するために人物Qがいつ、どこにくるべきかを示す情報(例えば「本日、16時55分頃に○○に来てください」といった情報)、及び、割引の適用には本人確認書類が必要であることを示す情報(例えば「割引の適用をうけるためには本人確認用に運転免許証が必要です」といった情報)も、照会信号622に含まれる。更には、人物Pの使用言語以外の、人物Pの属性情報(国籍、性別等)も照会信号622に含まれていても良い。照会信号622に含まれる内容は、端末装置10Qにて実行されている配車アプリにより端末装置10Qのインターフェース部14を通じて人物Qに伝達される。
【0071】
人物Qが、照会信号622に含まれる内容を参照した上で、相乗りへの承認を意図する承認操作を端末装置10Qのインターフェース部14に入力すると、端末装置10Qにて実行されている配車アプリの制御の下、承認信号624が生成され、端末装置10Qからサーバ装置20に対し承認信号624が送信される。尚、詳細な説明は省略するが、上記承認が行われなかったときには、マッチング処理616の再度の実行により相乗り対象者が再選定される。
【0072】
サーバ装置20にて承認信号624が受信されると、サーバ制御部21は、端末装置10Pに対して配車完了信号626を送信すると共に、タクシー探索処理618にて設定された対象タクシーの車載装置30に向けて配車指示信号630を送信する。配車完了信号626は、信号610に基づきタクシーの配車が完了して人物Pが指定した出発地にタクシーがこれから向かうこと又は人物Pが指定した出発地にてタクシーが既に待機していること、及び、通訳者の手配が完了して通訳可能な人物が相乗りすること等を示す信号である。人物Pは、配車完了信号626の内容を端末装置10Pのインターフェース部14にて確認し、タクシーによる人物Pの出発地に向かう(或いは、すでに出発地にいる場合には、そこでタクシーの到着を待機する)。
【0073】
配車指示信号630は、サーバ制御部21の制御の下、サーバ通信部22から対象タクシーの車載装置30に送信される信号であって、タクシーの配車を指示する信号である。対象タクシーが旅客を迎えに行くべき迎車地(人物P及びQの出発地に相当)、人物P及びQが相乗りすること、割引設定処理620にて設定された人物Qの割引率kD、及び、人物Qの本人確認方法(例えば運転免許証の提示)などが信号630の内容に含まれる。対象タクシーにおいて、信号630の内容はインターフェース部34を通じて運転手に伝達される(例えば、インターフェース部34の表示画面に表示される)。対象タクシーの運転手は、信号630の内容を確認して、迎車地に向かう。
【0074】
対象タクシーにおいて、人物P及びQが相乗りにて乗車した後、人物Pが降車する際、人物Pに対しては標準運賃が請求される。人物Pの標準運賃は、人物Pを乗せた状態でのタクシーの走行距離及び走行時間、並びに、人物Pのタクシーの乗車地、降車地、乗車開始時刻及び乗車終了時刻などに基づき、所定の標準運賃算出条件に従って算出される。一方、対象タクシーにおいて、人物P及びQが相乗りにて乗車した後、人物Qが降車する際、人物Qに対しては割引率kDによる割引適用後の運賃が請求される。但し、割引適用後の運賃がゼロであるならば運賃の請求は無い。割引適用後の運賃は、人物Qに対して算出された標準運賃の(1-kD)倍である。
【0075】
<<第2実施例>>
タクシー運用システムSYSの第2実施例を説明する。第1実施例では、主としてリアルタイムで被通訳者と通訳登録者をマッチングさせるケース(以下、リアルタイムケースと称する)が想定されている。即ち例えば、国際的なイベント会場でのイベント終了後(例えばスポーツの国際大会会場の試合終了後)に多くの国籍の人物が会場から移動する状況において、現在、会場近辺にいる多数の人物が会場から即時離れるための移動手段としてタクシーを利用するようなケースが、リアルタイムケースに相当する。但し、タクシー運用システムSYSにおける上記特殊配車サービスは予約配車にも適用できる。
【0076】
第2実施例では予約配車に対して特殊配車サービスを適用するケース(以下、予約配車ケースと称する)を想定する。予約配車は、将来の任意の日時を出発日時に設定してタクシーの配車を行うサービスである。予約配車ケースにおいても、基本的には第1実施例と同様の動作が行われ、第1実施例に記載の事項は特に記述なき限り第2実施例の予約配車ケースにも適用される。
【0077】
但し、予約配車ケースにおいては、各配車要求信号Req_Pの移動希望情報に出発希望日時が含められ、各相乗り対応信号Req_Qの移動希望情報に出発希望日時又は出発可能日時が含められる。出発希望日時及び出発可能日時は、当然、信号Req_P及びReq_Qの送信日時から見て将来の日時である。
【0078】
一人の人物Pに注目した場合、配車要求信号Req_Pにおける出発希望日時は、人物Pのタクシーによる移動開始を希望する日時である。一人の人物Qに注目した場合、相乗り対応信号Req_Qにおける出発希望日時は、人物Qのタクシーによる移動開始を希望する日時である。相乗り対応信号Req_Qにおける出発可能日時は、人物Qのタクシーによる移動開始日時として人物Qにて認容される日時を表し、相応の時間幅を有していて良い。例えば、2020年4月5日の午前10時ちょうどから午前11時30分までの時間帯が出発可能日時に設定されていても良い。これは、その時間帯内に出発できるのであれば、相乗りする相手の都合に併せても良いと人物Qが考えていることを表す。運賃の無料化又は低廉化を望める人物Qは、或る程度、時間に関して譲歩しても構わないと考える場合もある。故に、人物Qは、自身の都合を考慮しつつ、相乗り対応信号Req_Qの移動希望情報に出発希望日時又は出発可能日時を含める。
【0079】
一人の被通訳者である人物Pに注目して配車要求信号Req_Pを説明したが、他の任意の被通訳者に対応する配車要求信号Req_Pも同様であり、一人の通訳登録者である人物Qに注目して相乗り対応信号Req_Qを説明したが、他の任意の通訳登録者に対応する相乗り対応信号Req_Qも同様である。
【0080】
予約配車ケースにおいても、マッチングの流れは
図14に示した通りであり、ステップS31~S33の処理を通じて相乗り対象者が選定される。但し、予約配車ケースでは、マッチング情報に、各信号Req_P中の出発希望日時と各信号Req_Q中の出発希望日時又は出発可能日時が追加され、出発日時に関する被通訳者及び通訳登録者の希望に沿ったマッチングが行われる。結果、出発地及び目的地が完全に又は或る程度一致し、且つ、出発日時に関する希望が完全に又は或る程度の一致しているユーザ同士であって、通訳を望むユーザ(被通訳者)と通訳が可能なユーザ(通訳登録者)を、相乗り対象者として適正にマッチングさせることが可能となる。
【0081】
被通訳者の一人である人物Pと通訳登録者の一人である人物Qに注目したタクシー運用システムSYSの動作の流れも、
図15を参照して第1実施例で説明したものと同様であるが、
図15に対し若干の変形が施され、
図16のようになる。
図15及び
図16間の相違部分(即ちリアルタイムケース及び予約配車ケース間の相違部分)に主に注目して、予約配車ケースに係るタクシー運用システムSYSの動作を説明する。
【0082】
信号610及び612の送受信、信号610及び612に基づく情報取得処理614及びマッチング処理616は第1実施例で述べた通りである。但し、端末装置10Pからの配車要求信号Req_Pである信号610の内容には人物Pの出発希望日時が含まれ、端末装置10Qからの相乗り対応信号Req_Qである信号612の内容には人物Qの出発希望日時又は出発可能日時が含まれる。
【0083】
予約配車ケースにおいては、タクシー探索処理618の代わりにタクシー設定処理618’が実行される。タクシー設定処理618’では、タクシー運用システムSYSに属する1台の任意のタクシーが対象タクシーに設定されて良い。但し、信号610中の出発希望日時の時点で実車状態となることが予想されるタクシーなど、対象タクシーに設定されることが望ましくないタクシーは対象タクシーの設定対象から除外される。
【0084】
また、予約配車ケースにおいては、承認信号624がサーバ装置20にて受信された後、配車完了信号626の代わりに配車予約完了信号626’がサーバ装置20から端末装置10Pに送信される。配車予約完了信号626’は、信号610に基づきタクシーの配車予約が完了したこと及び通訳者の手配が完了して通訳可能な人物が相乗りすること等を示す信号である。人物Pは、配車予約完了信号626’の内容を端末装置10Pのインターフェース部14にて確認し、乗車の当日の適切な時刻に自身が指定した出発地に赴く。
【0085】
更に、予約配車ケースにおいては、承認信号624がサーバ装置20にて受信された後、配車指示信号630の代わりに配車予約指示信号630’がサーバ装置20から端末装置10Pに送信される。配車予約指示信号630’は、タクシーの配車予約を表す信号であって、対象タクシーが旅客を迎えに行くべき迎車地(人物P及びQの出発地に相当)及び迎車日時、人物P及びQが相乗りすること、割引設定処理620にて設定された人物Qの割引率kD、及び、人物Qの本人確認方法(例えば運転免許証の提示)などが、信号630’の内容として含まれる。迎車日時は信号610中に指定された人物Pの出発希望日時と一致する。対象タクシーにおいて、信号630’の内容はインターフェース部34を通じて運転手に伝達され(例えば、インターフェース部34の表示画面に表示され)、対象タクシーの運転手は信号630’の内容を確認してタイムリーに迎車地に向かう。
【0086】
信号610及び612の送受信日(例えば2020年4月3日)が人物Pの出発希望日時における日付(例えば2020年4月5日)より前である場合、対象タクシーの設定及び配車予約指示信号630’の送信は、人物P及びQの乗車当日(例えば2020年4月5日)に実行されて良く、当日の各タクシーの運行状況に応じて対象タクシーが動的に設定されて良い。
【0087】
人物P及びQに対して請求される運賃は第1実施例で述べた通りである。但し、人物Pに対して請求される運賃には所定の予約料金が加算されることもあり、これに加えて、人物Qに対して請求される運賃にも所定の予約料金が加算されることもある。人物Pに対して請求される運賃と、人物Qに対して請求される運賃の内、前者の運賃に対してのみ予約料金が加算されるようにしても良い。
【0088】
<<第3実施例>>
タクシー運用システムSYSの第3実施例を説明する。サーバ装置20が配車要求信号Req_Pを受信したとき、サーバ装置20から各通訳登録者に対し相乗りの募集をかけるようにしても良い。例えば、人物Pの端末装置10から配車要求信号Req_Pを受信したとき、サーバ制御部21は、人物Pの移動希望情報と人物Pの固有情報の全部又は一部(少なくとも使用言語を含む)を含む募集信号を、各通訳登録者の端末装置10に送信しても良い。この際、募集信号中の情報を自身の端末装置10で確認した何人かの通訳登録者は、配車要求信号Req_Pの内容に沿った条件の相乗り対応信号Req_Qを自身の端末装置10から送信することが期待される。
【0089】
このような募集は、第2実施例に係る予約配車ケースにおいて特に有益であると考えられるが、第1実施例に係るリアルタイムケースにおいても有益となり得る。
【0090】
<<第4実施例>>
タクシー運用システムSYSの第4実施例を説明する。被通訳者と相乗りする通訳登録者の運賃を標準運賃より低くするために割引率を設定する方法を上述したが、割引率の代わりに割引料を設定しても良い。これを第4実施例として説明する。
【0091】
図17に第4実施例に係る割引料データD3aの構造を示す。第4実施例では、
図10の割引率データD3の代わりに割引料データD3aがサーバ記憶部23に記憶及び保持される。割引料データD3aでは、通訳レベルに応じた通訳登録者の運賃の割引料F
Dが非基準言語ごとに規定されている。つまり、被通訳者及び通訳登録者が人物P及びQとして1台のタクシーに相乗りした場合における通訳登録者の運賃は標準運賃から割引料F
Dを減じた金額とされ、割引料データD3aでは、割引料F
Dが非基準言語ごとに且つ通訳レベルごとに規定されている。“0<F
D”が満たされる。
【0092】
図18を参照し、通訳登録者の一人である注目人物の運賃の算出方法について説明を加える。特定の乗車条件にて注目人物が特定の乗車地から特定の降車地までタクシーで移動したときの、注目人物の標準運賃は運賃F
REFであったとする。ここで、特定の乗車条件とは、注目人物と被通訳者との相乗り有無を除く乗車条件であり、注目人物を乗せた状態でのタクシーの走行距離及び走行時間、並びに、注目人物のタクシーの乗車地、降車地、乗車開始時刻及び乗車終了時刻などの条件である。この場合において、仮に、特定の乗車条件にて注目人物が一人で特定の乗車地から特定の降車地までタクシーで移動したならば(ステップS11aのN)、注目人物の運賃は標準運賃F
REFとなる(ステップS14a)。一方、特定の乗車条件にて注目人物(通訳登録者)と被通訳者が1台のタクシーに相乗りした状態で注目人物が特定の乗車地から特定の降車地まで移動し、且つ、注目人物(通訳登録者)の通訳可能言語に被通訳者の使用言語が含まれているのであれば(ステップS11a及びS12aのY)、注目人物の運賃は金額(F
REF-F
D)及びゼロの内の高い方とされる、即ち、“F
REF-F
D>0”ならば金額(F
REF-F
D)とされ、“F
REF-F
D≦0”ならばゼロ(無料)とされる(ステップS13a)。特定の乗車条件にて注目人物(通訳登録者)と被通訳者が1台のタクシーに相乗りした状態で注目人物が特定の乗車地から特定の降車地まで移動した場合であっても、注目人物(通訳登録者)の通訳可能言語に被通訳者の使用言語が含まれていないのであれば(ステップS11aのY及びステップS12aのN)。注目人物の運賃は標準運賃F
REFとなる(ステップS14a)。
【0093】
注目人物に対して割引料FDが設定された場合、設定された割引料FDを特定する情報を含む信号が、サーバ装置20から、注目人物及び被通訳者が相乗りすべきタクシーの車載装置30に送信される。当該タクシーの車載装置30からタクシーメータに割引料FDを特定する情報が提供されることで、注目人物の運賃が実際に金額(FREF-FD)又はゼロの内の高い方とされる(ステップS13a)。車載装置30にタクシーメータの機能を担わせても良い。
【0094】
通訳される非基準言語が一定である場合、通訳レベルが高いほど、対応する割引料F
Dが高くなる。割引料F
Dが設定された通訳登録者の運賃は、割引料F
Dが高いほど低くなる(但しゼロを下回ることは無い)。即ち例えば、
図17に示す如く、被通訳者としての人物Pの使用言語が中国語であって且つ通訳登録者としての人物Qの通訳可能言語に中国語が含まれる場合において、人物Qの中国語の通訳レベルがレベルLV1、LV2、LV3、LV4であるとき、人物Qの割引料F
Dは、夫々、1200円、1000円、800円、600円に設定される。同様に例えば、被通訳者としての人物Pの使用言語がスワヒリ語であって且つ通訳登録者としての人物Qの通訳可能言語にスワヒリ語が含まれる場合において、人物Qのスワヒリ語の通訳レベルがレベルLV1、LV2、LV3、LV4であるとき、人物Qの割引料F
Dは、夫々、2000円、1800円、1600円、1400円に設定される。
【0095】
第4実施例を第1実施例に係る
図15の動作又は第2実施例に係る
図16の動作と組み合わせた場合、割引設定処理620では割引率k
Dの代わりに割引料F
Dが設定され、照会信号622と配車指示信号630又は配車予約指示信号630’には割引率k
Dの情報の代わりに割引料F
Dの情報が含まれる。結果、人物Qが人物Pと相乗りする対象タクシーから降車する際、人物Qに対しては割引料F
Dによる割引適用後の運賃が請求される。但し、割引適用後の運賃がゼロであるならば運賃の請求は無い。割引適用後の運賃は、人物Qに対して算出された標準運賃から割引料F
Dを減じた金額と、ゼロの内の、高い方である。
【0096】
上述したように、割引設定部21Cは、通訳者の使用言語を特定する情報を含む被通訳者情報と、通訳登録者の通訳可能言語を特定する情報を含む通訳登録者情報とに基づき、被通訳者及び通訳登録者が1台のタクシーに相乗りしたときにおける通訳登録者の運賃の割引設定を行う。第4実施例において通訳登録者の運賃の割引設定は、通訳登録者の運賃に対する割引有無の設定と、割引がある際の割引料FDの設定と、を含むことになる。
【0097】
被通訳者と相乗りする通訳登録者(但し、基準言語と被通訳者の使用言語との間の通訳が可能な通訳登録者に限る)の運賃が標準運賃よりも低廉になる限り、割引設定の方法は様々に変更可能であり、割引率kDと割引料FDの組み合わせによって割引設定を行うようにしても良い。相乗りの際のタクシーの走行距離や、時間帯、曜日などに応じて、割引の条件が調整されても良い。
【0098】
<<第5実施例>>
タクシー運用システムSYSの第5実施例を説明する。日本国では事前確定運賃サービスの利用も可能となっている。事前確定運賃サービスでは、旅客(ユーザ)が実際にタクシーに乗車してタクシーの賃走(実車)が開始される前に、旅客が指定した出発地及び目的地に基づいて出発地及び目的地間のタクシーの運賃を事前確定運賃として算出しておくと共に出発地及び目的地間のタクシーの走行予定ルートを設定する。そして、事前確定運賃に合意した運転手は、原則、設定された走行予定ルートで賃走(実車)を行い、事前確定運賃を実際の運賃として旅客に対し支払いを求める。
【0099】
事前確定運賃サービスと特殊配車サービスが組み合わせて実施されることがあっても良い。この組み合わせが行われた場合にあっても、特殊配車サービスによる人物P及びQの運賃の算出方法は上述したものと同じである。但し、この組み合わせが行われた場合、人物P及びQの運賃の夫々は、タクシー内のタクシーメータ又は車載装置30ではなく、サーバ制御部21にて事前確定運賃として算出及び決定され、決定された事前確定運賃の情報がサーバ装置20からタクシー(
図15又は
図16の対象タクシー)の車載装置30に送信される。人物Pの事前確定運賃は、人物Pの標準運賃と同じ算出方法によって算出されるため、第1実施例で述べた人物Pの標準運賃と一致する。人物Qの事前確定運賃は、人物Qに対して算出された標準運賃が運賃F
REFであったとすると、“F
REF・(1-k
D)”とされる。或いは、第4実施例の割引料F
Dが採用されたならば、人物Qの事前確定運賃は、“(F
REF-F
D)”及びゼロの内、高い方とされる。
【0100】
<<第6実施例>>
タクシー運用システムSYSの第6実施例を説明する。
【0101】
旅客として人物Pのみがタクシーに乗車する第1ケースにおいて、タクシーの売上は、人物Pの標準運賃(例えば2000円)となる。一方、タクシーに人物P及びQが相乗りする第2ケースにおいて、タクシーの売上は、人物Pの標準運賃(例えば2000円)と人物Qの運賃(例えば400円)との和となる。これは、第1ケースよりも第2ケースの方が、タクシーの売上が大きくなることを意味する(但し、人物Qの運賃が無料ではないと仮定)。売上の増大分の一部又は全部がサーバ装置20の運用会社等に分配されるといった運営方法も可能であるが、第2ケースにおける人物Pの運賃を第1ケースにおける人物Pの運賃(例えば2000円)より低下させるようにしても良い。この際、第1ケースにおける人物Pの運賃(例えば2000円)と、第2ケースにおける人物Pの運賃と人物Qの運賃との和が等しくなるようにしても良い。
【0102】
被通訳者と被通訳者に同行する1以上の人物にてグループが形成され、被通訳者を含むグループが1台のタクシーに乗車する際においては、グループの構成人数を示すグループ人数情報を上述の配車要求信号Req_P(
図13参照)に含めておくと良い。これにより、上述の被通訳者情報にグループ人数情報が含められる(
図14のステップS31参照)。尚、上記グループには通訳登録者は含まれない。マッチング処理では、グループ人数情報を考慮して相乗り対象者の選定を行うことが好ましい(
図14のステップS33参照)。
【0103】
任意のユーザとサーバ装置20(サーバ装置20の管理者)との間における任意の情報のやり取りは、端末装置10を用いない態様で実現されても良く、例えば、音声通話、ファクシミリ通信などで実現されても良い。
【0104】
車載装置30の代わりに、文字情報のみを表示可能なハンディ端末がタクシーに設置されている場合もありうる。この場合、信号630又は630’(
図15m他派
図16参照)はハンディ端末に送信される。ハンディ端末も車載装置の一種であると考えることができる。
【0105】
<<第7実施例>>
タクシー運用システムSYSの第7実施例を説明する。
図19に示す如く、特殊配車サービスに関わるサーバ制御部21は、情報取得部21A、マッチング処理部21B及び割引設定部21Cに加えて、割増設定部21Dを有していて良い。第7実施例では、割増設定部21Dの機能について説明する。割増設定部21Dは、被通訳者情報及び通訳登録者情報に基づいて、被通訳者及び通訳登録者が1台のタクシーに相乗りしたときにおける被通訳者の運賃の割増設定を行う。被通訳者の運賃の割増設定は、被通訳者の運賃に対する割増有無の設定と、割増がある際の割増率k
Uの設定と、を含む。
【0106】
図20に割増設定において参照される割増率データD4の構造を示す。割増率データD4はサーバ記憶部23に記憶及び保持される。割増率データD4では、被通訳者の運賃の割増率k
Uが非基準言語ごとに規定されている。つまり、割増率データD4では、割増率k
Uが非基準言語ごとに規定されており、被通訳者及び通訳登録者が人物P及びQとして実際に1台のタクシーに相乗りした場合における被通訳者の運賃は標準運賃の(1+k
U)倍とされる。この際の割増率k
Uは、被通訳者の使用言語が何れの非基準言語であるかに基づいて、決定される。“0<k
U”が満たされる。
【0107】
図21を参照し、被通訳者及び通訳登録者の運賃の算出方法を説明する。被通訳者に対する割増設定と通訳登録者に対する割引設定の双方を行っても良く、
図21では、それらが共に行われることを想定している。但し、第7実施例において、通訳登録者に対する割引設定を非実行としても良い(即ち、通訳登録者の運賃を、被通訳者との相乗りの有無に関係なく、常に標準運賃にしても良い)。上述したように、任意の注目人物の標準運賃は、注目人物を乗せた状態でのタクシーの走行距離及び走行時間、並びに、注目人物のタクシーの乗車地、降車地、乗車開始時刻及び乗車終了時刻などに基づき、所定の標準運賃算出条件に従って算出される。事前確定運賃サービスが導入されていない場合にあっては、標準運賃の算出自体はタクシーに搭載されたタクシーメータ又は車載装置30にて実行される。ここでは、事前確定運賃サービスが導入されていないと考える。
【0108】
今、一人の注目人物である第1注目人物が通訳登録者であって、他の一人の注目人物である第2注目人物が被通訳者である場合を考える。そして、特定の乗車条件にて各注目人物が特定の乗車地から特定の降車地までタクシーで移動したときの、各注目人物の標準運賃は運賃FREFであったとする。ここで、特定の乗車条件とは、被通訳者と通訳登録者との相乗り有無を除く乗車条件であり、注目人物を乗せた状態でのタクシーの走行距離及び走行時間、並びに、注目人物のタクシーの乗車地、降車地、乗車開始時刻及び乗車終了時刻などの条件である。
【0109】
この場合において、仮に、特定の乗車条件にて各注目人物が一人で特定の乗車地から特定の降車地までタクシーで移動したならば(ステップS51のN)、各注目人物の運賃は標準運賃FREFとなる(ステップS55)。一方、特定の乗車条件にて第1注目人物(通訳登録者)と第2注目人物(被通訳者)が1台のタクシーに相乗りした状態で各注目人物が特定の乗車地から特定の降車地まで移動し、且つ、第1注目人物(通訳登録者)の通訳可能言語に第2注目人物(被通訳者)の使用言語が含まれているのであれば(ステップS51及びS52のY)、第1注目人物(通訳登録者)の運賃を標準運賃FREFの(1-kD)倍とする割引設定が成されると共に(ステップS53)、第2注目人物(被通訳者)の運賃を標準運賃FREFの(1+kU)倍とする割増設定が成される(ステップS54)。特定の乗車条件にて第1注目人物(通訳登録者)と第2注目人物(被通訳者)が1台のタクシーに相乗りした状態で各注目人物が特定の乗車地から特定の降車地まで移動した場合であっても、第1注目人物(通訳登録者)の通訳可能言語に第2注目人物(被通訳者)の使用言語が含まれていないのであれば(ステップS51のY及びステップS52のN)、各注目人物の運賃は標準運賃FREFとなる(ステップS55)。
【0110】
第1注目人物(通訳登録者)に対して割引率kDが設定された場合、設定された割引率kDを特定する情報を含む信号が、サーバ装置20(サーバ通信部22)から、第1及び第2注目人物が相乗りすべきタクシーの車載装置30に対し送信される。当該タクシーの車載装置30からタクシーメータに割引率kDを特定する情報が提供されることで、第1注目人物(通訳登録者)の運賃が実際に“FREF・(1-kD)”とされる。車載装置30にタクシーメータの機能を担わせても良い。
【0111】
第2注目人物(被通訳者)に対して割増率kUが設定された場合、設定された割増率kUを特定する情報を含む信号が、サーバ装置20(サーバ通信部22)から、第1及び第2注目人物が相乗りすべきタクシーの車載装置30に対し送信される。当該タクシーの車載装置30からタクシーメータに割増率kUを特定する情報が提供されることで、第2注目人物(被通訳者)の運賃が実際に“FREF・(1+kU)”とされる。車載装置30にタクシーメータの機能を担わせても良い。
【0112】
図20に示す割増率データD4の例では、非基準言語としての英語、中国語、仏語、独語、スワヒリ語に対し、夫々、10%、15%、20%、20%、30%の割増率k
Uが設定されている。このため、例えば、被通訳者としての人物Pの使用言語が中国語であって且つ通訳登録者としての人物Qの通訳可能言語に中国語が含まれる場合、人物Pの割増率k
Uは15%に設定される。同様に例えば、被通訳者としての人物Pの使用言語がスワヒリ語であって且つ通訳登録者としての人物Qの通訳可能言語にスワヒリ語が含まれる場合、人物Pの割増率k
Uは30%に設定される。
【0113】
第7実施例に係る割増設定を
図15の動作の流れに適用する場合、
図15の割引設定処理620が行われる段階で、割引設定処理620と並行して割増設定処理を行えば良い(第7実施例に係る割増設定を
図16の動作の流れに適用する場合も同様)。割増設定処理において、割増設定部21Dは、人物Pの使用言語と人物Qの通訳能力情報とに基づき、人物Pに対する割引率k
Dを設定する。
【0114】
第7実施例が適用された
図15の動作において、割引設定処理620及び割増設定処理の後の動作は、第1実施例で示した通りである。但し、配車指示信号630には割増率k
Uの情報が追加される。即ち、対象タクシーが旅客を迎えに行くべき迎車地(人物P及びQの出発地に相当)、人物P及びQが相乗りすること、割引設定処理620にて設定された人物Qの割引率k
D、割増設定処理にて設定された人物Pの割増率k
U、及び、人物Qの本人確認方法(例えば運転免許証の提示)などが信号630の内容に含まれる。対象タクシーにおいて、信号630の内容はインターフェース部34を通じて運転手に伝達される(例えば、インターフェース部34の表示画面に表示される)。対象タクシーの運転手は、信号630の内容を確認して、迎車地に向かう。
【0115】
対象タクシーにおいて、人物P及びQが相乗りにて乗車した後、人物Pが降車する際、人物Pに対しては割増率kUによる割増適用後の運賃が請求される。割増適用後の運賃は、人物Pに対して算出された標準運賃の(1+kU)倍である。一方、対象タクシーにおいて、人物P及びQが相乗りにて乗車した後、人物Qが降車する際、人物Qに対しては割引率kDによる割引適用後の運賃が請求される。但し、割引適用後の運賃がゼロであるならば運賃の請求は無い。割引適用後の運賃は、人物Qに対して算出された標準運賃の(1-kD)倍である。
【0116】
人物Pの運賃の割増は、いわば通訳の対価であり、割増があっても通訳の恩恵を得ることができるのであるから、有益なサービスを構築できると考えられる。
【0117】
割増率データD4の代わりに、
図22の割増料データD4aをサーバ記憶部23に記憶及び保持させておき、割増料データD4aを用いて、被通訳者及び通訳登録者が1台のタクシーに相乗りしたときにおける被通訳者の運賃の割増設定を行うようにしても良い。つまり、被通訳者及び通訳登録者が人物P及びQとして1台のタクシーに相乗りした場合における被通訳者の運賃は標準運賃に割増料F
Uを加算した金額とされても良い。割増率データD4aでは、被通訳者の運賃の割増料F
Uが非基準言語ごとに規定されている。被通訳者及び通訳登録者が人物P及びQとして1台のタクシーに相乗りした場合において、被通訳者の割増料F
Uは、被通訳者の使用言語が何れの非基準言語であるかに基づいて、決定される。“0<F
D”が満たされる。
【0118】
割増料F
Uの加算により被通訳者の割増設定を行う場合、
図21の動作では以下のようにすれば良い。即ち、特定の乗車条件にて第1注目人物(通訳登録者)と第2注目人物(被通訳者)が1台のタクシーに相乗りした状態で各注目人物が特定の乗車地から特定の降車地まで移動し、且つ、第1注目人物(通訳登録者)の通訳可能言語に第2注目人物(被通訳者)の使用言語が含まれているのであれば(ステップS51及びS52のY)、ステップS54において第2注目人物(被通訳者)の運賃を標準運賃F
REFの(1+k
U)倍とする代わりに、第2注目人物(被通訳者)の運賃を(F
REF+F
U)とする割増設定を行えば良い。
【0119】
第2注目人物(被通訳者)に対して割増料FUが設定された場合、設定された割増料FUを特定する情報を含む信号が、サーバ装置20(サーバ通信部22)から、第1及び第2注目人物が相乗りすべきタクシーの車載装置30に対し送信される。当該タクシーの車載装置30からタクシーメータに割増料FUを特定する情報が提供されることで、第2注目人物(被通訳者)の運賃が実際に(FREF+FU)とされる。車載装置30にタクシーメータの機能を担わせても良い。
【0120】
図22に示す割増料データD4の例では、非基準言語としての英語、中国語、仏語、独語、スワヒリ語に対し、夫々、500円、700円、900円、900円、1500円の割増料F
Uが設定されている。このため、例えば、被通訳者としての人物Pの使用言語が中国語であって且つ通訳登録者としての人物Qの通訳可能言語に中国語が含まれる場合、人物Pの割増料F
Uは700円に設定される。同様に例えば、被通訳者としての人物Pの使用言語がスワヒリ語であって且つ通訳登録者としての人物Qの通訳可能言語にスワヒリ語が含まれる場合、人物Pの割増料F
Uは1500円に設定される。
【0121】
第4実施例で述べたように、通訳登録者としての人物Qに対しても、割引率k
Dの代わりに割引料F
Dが適用されても良い(
図17参照)。
【0122】
また、第7実施例において第5実施例で述べた事前確定運賃サービスが利用される場合にあっては、人物P及びQの運賃の夫々は、タクシー内のタクシーメータ又は車載装置30ではなく、サーバ制御部21にて事前確定運賃として算出及び決定され、決定された事前確定運賃の情報がサーバ装置20からタクシー(
図15又は
図16の対象タクシー)の車載装置30に送信される。人物Pの事前確定運賃は、人物Pに対して算出された標準運賃が運賃F
REFであったとすると、“F
REF・(1+k
U)”とされる。或いは、割引料F
Uが採用されたならば、人物Pの事前確定運賃は“(F
REF+F
U)”とされる。人物Qの事前確定運賃は、人物Qに対して算出された標準運賃が運賃F
REFであったとすると、“F
REF・(1-k
D)”とされる。或いは、割引料F
Dが採用されたならば、人物Qの事前確定運賃は、“(F
REF-F
D)”及びゼロの内、高い方とされる。
【0123】
尚、通訳登録者としての人物Qの通訳レベルに応じ、被通訳者としての人物Pに適用される割増率kU又は割増料FUを設定及び変更しても良い。例えば、人物Pの使用言語についての人物Qの通訳レベルが高まるにつれて、割増率kU又は割増料FUを増大させても良い。
【0124】
<<本発明の考察>>
上述の実施形態にて具体化された本発明について考察する。
【0125】
本発明の一側面に係るタクシー管理装置(20)は、第1人物(例えば被通訳者としての人物P)の使用言語を特定する情報を含む第1情報(例えば人物Pに関する被通訳者情報)、及び、第2人物(例えば通訳登録者としての人物Q)の通訳可能言語を特定する情報を含む第2情報(例えば人物Qに関する通訳登録者情報)を取得する情報取得部(21A)と、前記第1情報及び前記第2情報に基づき、前記第1人物及び前記第2人物がタクシーに相乗りしたときにおける前記第2人物の運賃の割引設定を行う割引設定部(21C)と、を備えた構成(以下、構成W1と称する)を有する。
【0126】
言語の壁により第1人物がタクシーでの会話に不安を持っており、タクシーの利用の際、通訳を希望することがある。他方、第2人物は第1人物の使用言語を解して使用言語の通訳を行うことが可能な場合がある。この場合において、第1人物と第2人物をタクシーに相乗りさせれば、第1人物の言語に関する不安が解消される。この相乗りの促進に寄与すべく、構成W1に係るタクシー管理装置では割引設定部が設けられる。これにより、第1人物の言語に関する不安が解消されると同時に第2人物は無料又は低運賃でタクシーを利用できる可能性が生まれ、双方にとってメリットのあるサービスを提供できる。
【0127】
第1情報は、例えば人物Pに関する被通訳者情報である。上述の実施形態において人物Pは被通訳者であり、人物Pに関する被通訳者情報は、人物Pの移動希望情報及び固有情報を含んでいて良い(
図14のステップS31参照)。人物Pの固有情報により人物Pの使用言語が特定される(
図6参照)。
第2情報は、例えば人物Qに関する通訳登録者情報である。上述の実施形態において人物Qは通訳登録者であり、人物Qに関する通訳登録者情報は、人物Qの移動希望情報及び固有情報を含んでいて良い(
図14のステップS32参照)。人物Qの固有情報により人物Qの通訳可能言語が特定される(
図7及び
図8参照)。
【0128】
具体的には例えば、構成W
1に係るタクシー管理装置において、タクシーは基準言語を公用語とする国にて運用され、前記第1人物の使用言語は前記基準言語と異なり、前記基準言語と前記第1人物の使用言語との間の通訳が前記第2人物において可能である場合、そうでない場合と比べ、前記割引設定部は、前記相乗りの際の前記第2人物の運賃を低く設定する構成(以下、構成W
2と称する)を有する(
図11又は
図18参照)。
【0129】
これにより、第1人物の言語に関する不安が解消されると同時に、通訳可能な第2人物は無料又は低運賃でタクシーを利用でき、双方にとってメリットのあるサービスを提供できる。
【0130】
また例えば、構成W
2に係るタクシー管理装置において、前記基準言語と前記第1人物の使用言語との間の通訳が前記第2人物において可能である場合、その通訳の習熟レベル(通訳レベル)も前記第2情報に含まれ(
図7及び
図8参照)、前記割引設定部は、その通訳の習熟レベルに応じ、前記相乗りの際の前記第2人物の運賃の割引設定を行う構成(以下、構成W
3と称する)であっても良い(
図10及び
図11参照又は
図17及び
図18参照)。
【0131】
これにより、通訳の習熟レベル(通訳レベル)に応じた適正な割引設定を行うことができる。例えば、通訳の習熟レベルが高く高品質の通訳が可能な場合にあっては割引の程度を大きくするといったことが可能となり、通訳の対価とも言うべき割引の大きさを妥当なものとすることができる。
【0132】
具体的には例えば、構成W
3に係るタクシー管理装置において、前記基準言語と前記第1人物の使用言語との間の通訳が前記第2人物において可能である場合、前記割引設定部は、前記習熟レベルが高いほど、前記相乗りの際の前記第2人物の運賃を低く設定する構成(以下、構成W
4と称する)であっても良い(
図10及び
図11参照又は
図17及び
図18参照)。
【0133】
また具体的には例えば、構成W
3又はW
4に係るタクシー管理装置において、前記第2人物(例えば人物Q)を含む複数の通訳登録者の夫々についての通訳能力情報を登録して保持する通訳能力情報登録部(23)を備え、前記通訳能力情報は、前記通訳登録者ごとに前記通訳登録者の通訳可能言語を特定し、前記通訳可能言語における通訳は、前記基準言語と非基準言語との間の通訳であり、前記通訳能力情報において、前記通訳登録者ごとに且つ前記通訳可能言語ごとに通訳の習熟レベルが規定され、前記第2情報は前記第2人物についての前記通訳能力情報を含む構成(以下、構成W
5と称する)であっても良い(
図7及び
図8参照)。
【0134】
これにより、通訳登録者ごとに且つ通訳可能言語ごとに、通訳の習熟レベル(通訳レベル)に応じた適正な割引設定が可能となる。
【0135】
通訳能力情報登録部は、上述の実施形態ではサーバ記憶部23により構成され、サーバ記憶部23での通訳登録者データD2の記憶により、前記第2人物を含む複数の通訳登録者の夫々についての通訳能力情報が登録及び保持される。
【0136】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0137】
SYS タクシー運用システム
10 端末装置
20 サーバ装置(タクシー管理装置)
30 車載装置
21 サーバ制御部
21A 情報取得部
21B マッチング処理部
21C 割引設定部
21D 割増設定部
D1 配車アプリ登録者データ
D2 通訳登録者データ
D3 割引率データ
D3a 割引料データ
D4 割増率データ
D4a 割増料データ