(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置の印刷パラメータを特定するためのコンピュータ実装方法、データ処理システム、インクジェット印刷方法、及びインクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241216BHJP
G02C 7/00 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 109
B41J2/01 451
G02C7/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024038784
(22)【出願日】2024-03-13
(62)【分割の表示】P 2024515365の分割
【原出願日】2022-09-09
【審査請求日】2024-04-11
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507062222
【氏名又は名称】カール ツァイス ヴィジョン インターナショナル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン ロネ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】ハルシュヴァルダン ヤドワド
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-052323(JP,A)
【文献】特開2020-032726(JP,A)
【文献】特開2004-004503(JP,A)
【文献】国際公開第2011/125844(WO,A1)
【文献】特開2003-145747(JP,A)
【文献】特開平1-252925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
G02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲表面を含む眼鏡レンズ基材(4)の表面(3)にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置(2)の印刷パラメータ値(1)を特定するコンピュータ実装方法(100)であって、前記インクジェット印刷装置(2)は、複数の印刷ノズル(6、6a、6b、6c)を備える1つの単独コンポーネントとしての印刷ヘッド(5)を含む、コンピュータ実装方法(100)において、
コンピュータ上で実行される以下の方法ステップ、すなわち
- 前記複数の印刷ノズル(6、6a、6b、6c)を少なくとも2つの印刷ノズルグループ(10a、10b、10c、10d、10e)にグループ分けするステップ(S2)と、
- 各印刷ノズルグループ(10a、10b、10c、10d、10e)の少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータ(7、7a、7b、7c、7d、7e、7f)の印刷パラメータ値(1)を個別に特定するステップ(S3)と、
を含み、
前記印刷ヘッド(5)は、
前記眼鏡レンズ基材(4)に対して傾斜されないように構成されることを特徴とする
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータ(7、7a、7b、7c、7d、7e、7f)は、吐出温度、吐出持続時間、吐出周波数、ノルム値、波形パラメータ、及び調整可能なインク特性からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項3】
少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パス内で使用されることになることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項4】
各印刷ノズルグループ(10a、10b、10c、10d、10e)は単独の印刷ノズル(6、6a、6b、6c)を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項5】
- 前記眼鏡レンズ基材(4)の前記表面(3)の幾何学的特徴及び前記印刷ヘッド(5)の幾何学的特徴に関する入力データ(8、8a、8b)を取得するステップ(S1)を含み、
前記印刷パラメータ値(1)は、前記入力データ(8、8a、8b)に応じて個別に特定されることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項6】
前記入力データは、前記眼鏡レンズ基材(4)の前記表面(3)と前記印刷ヘッド(5)との幾何学的関係を特定するために使用され、前記印刷パラメータ値(1)は前記幾何学的関係に応じて個別に特定されることを特徴とする、請求項5に記載の
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項7】
幾何学的関係という用語は、前記印刷ヘッドと前記眼鏡レンズ基材との相互に関するアラインメントを指すことを特徴とする、請求項6に記載の
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項8】
前記幾何学的関係は、変位ベクトル、速度ベクトル、入射角α、距離Δ、及びアーク長さsからなる群より選択される少なくとも1つのパラメータ(11a、11b。11c)により説明されることを特徴とする、請求項6に記載の
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項9】
前記入力データ(8、8a、8b)は、環境条件、調整不能なインク特性、及び/又は前記眼鏡レンズ基材(4)の材料特性に関するデータを含むことを特徴とする、請求項5に記載の
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータ(7、7a、7b、7c、7d、7e、7f)の前記印刷パラメータ値(1)を個別に特定する前記方法ステップ(S3)は、前記眼鏡レンズ基材(4)の前記表面(3)上の特定のデータポイント群への印刷パラメータ値(1)の割当てを含むパラメータマップ(12)を推測するステップ(S6)を含むことを特徴とする、請求項6に記載の
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項11】
前記パラメータマップ(12)を推測することは、前記眼鏡レンズ基材(4)の前記表面(3)をデータポイントのグリッドに変換することを含むことを特徴とする、請求項10に記載の
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータ(7、7a、7b、7c、7d、7e、7f)の前記印刷パラメータ値(1)を個別に特定する前記方法ステップ(S3)は、前記眼鏡レンズ基材(4)の前記表面(3)と前記印刷ヘッドとの前記幾何学的関係を説明するパラメータ(11a、11b、11c)と前記調整可能な印刷パラメータ(7、7a、7b、7c、7d、7e、7f)の印刷パラメータ値(1)との相関を含むルックアップテーブルを提供することを含むことを特徴とする、請求項11に記載の
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項13】
前記印刷パラメータ値(1)を特定することは、前記データポイントの前記ルックアップテーブルから印刷パラメータ値のセットを導き出すことを含むことを特徴とする、請求項12に記載の
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項14】
前記パラメータマップ(12)は、前記眼鏡レンズ基材(4)の前記表面(3)と前記印刷ヘッド(5)との前記幾何学的関係を説明するパラメータ(11a、11b、11c)と前記調整可能な印刷パラメータ(7、7a、7b、7c、7d、7e、7f)の印刷パラメータ値(1)との相関に適用される費用関数を最適化すること(S5)により推測されることを特徴とする、請求項10に記載の
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項15】
各印刷ノズルグループ(10a、10b、10c、10d、10e)の前記少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータ(7、7a、7b、7c、7d、7e、7f)の前記印刷パラメータ値(1)は個別に特定され、それによって前記眼鏡レンズ基材(4)の前記表面(3)に
対する前記印刷ヘッド(5)の傾斜角度は印刷前及び/又は印刷中に調整されなくてよいことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の
コンピュータ実装方法(100)。
【請求項16】
プロセッサ(20)と、前記プロセッサ(20)に連結された記憶媒体(21)とを含むデータ処理システム(200)であって、前記プロセッサ(20)は湾曲表面を含む眼鏡レンズ基材(4)の表面(3)にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置(2)の印刷パラメータ値(1)を、前記記憶媒体(21)上に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて特定するようになされ、前記インクジェット印刷装置(2)は複数の印刷ノズル(6、6a、6b、6c)を備える1つの単独コンポーネントとしての印刷ヘッド(5)を含む、データ処理システム(200)において、前記プロセッサ(20)は、前記複数の印刷ノズル(6、6a、6b、6c)を少なくとも2つの印刷ノズルグループ(10a、10b、10c、10d、10e)にグループ分けし、各印刷ノズルグループ(10a、10b、10c、10d、10e)の少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータ(7、7a、7b、7c、7d、7e、7f)の印刷パラメータ値(1)を個別に特定するようになされ、前記印刷ヘッド(5)は、
前記眼鏡レンズ基材(4)に対して傾斜されないように構成されることを特徴とする、データ処理システム(200)。
【請求項17】
前記プロセッサ(20)は、前記眼鏡レンズ基材(4)の幾何学的特徴と前記印刷ヘッド(5)の幾何学的特徴とに応じて前記印刷パラメータ値(1)を個別に特定するようになされることを特徴とする、請求項16に記載のデータ処理システム(200)。
【請求項18】
コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに、湾曲表面を含む眼鏡レンズ基材(4)の表面(3)にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置(2)の印刷パラメータ値(1)を特定させる命令を含み、前記インクジェット印刷装置(2)は複数の印刷ノズル(6、6a、6b、6c)を備える1つの単独コンポーネントとしての印刷ヘッド(5)を含む、コンピュータプログラムであって、前記命令は、前記コンピュータに、前記複数の印刷ノズル(6、6a、6b、6c)を少なくとも2つの印刷ノズルグループ(10a、10b、10c、10d、10e)にグループ分けさせ、各印刷ノズルグループ(10a、10b、10c、10d、10e)の少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータ(7、7a、7b、7c、7d、7e、7f)の印刷パラメータ値(1)を個別に特定させ、前記印刷ヘッド(5)は、
前記眼鏡レンズ基材(4)に対して傾斜されないように構成されることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項19】
コンピュータにより実行されると、前記コンピュータに、湾曲表面を含む眼鏡レンズ基材(4)の表面(3)にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置(2)の印刷パラメータ値(1)を特定させる命令を含み、前記インクジェット印刷装置(2)は複数の印刷ノズル(6、6a、6b、6c)を備える1つの単独コンポーネントとしての印刷ヘッド(5)を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、前記命令は、前記コンピュータに、前記複数の印刷ノズル(6、6a、6b、6c)を少なくとも2つの印刷ノズルグループ(10a、10b、10c、10d、10e)にグループ分けさせ、各印刷ノズルグループ(10a、10b、10c、10d、10e)の少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータ(7、7a、7b、7c、7d、7e、7f)の印刷パラメータ値を個別に特定させ、前記印刷ヘッド(5)は、
前記眼鏡レンズ基材(4)に対して傾斜されないように構成されることを特徴とする非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
湾曲表面を含む眼鏡レンズ基材(4)の表面(3)に、複数の印刷ノズル(6、6a、6b、6c)を備える1つの単独コンポーネントとしての印刷ヘッド(5)を含むインクジェット印刷装置(2)により、少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータ(7、7a、7b、7c、7d、7e、7f)の印刷パラメータ値(1)を使ってパターンが印刷される、インクジェット印刷方法であって、前記少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータ(7、7a、7b、7c、7d、7e、7f)の前記印刷パラメータ値(1)は請求項1又は請求項2に記載のコンピュータ実装方法にしたがって特定されることを特徴とするインクジェット印刷方法。
【請求項21】
前記眼鏡レンズ基材(4)の前記表面(3)に
対する前記印刷ヘッド(5)の傾斜角度は、印刷前及び/又は印刷中に調整されないことを特徴とする、請求項20に記載の
インクジェット印刷方法。
【請求項22】
湾曲表面を含む眼鏡レンズ基材(4)の表面(3)にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置(2)であって、
- 複数の印刷ノズル(6、6a、6b、6c)を備える1つの単独コンポーネントとしての印刷ヘッド(5)と、
- プロセッサ(20)と、前記プロセッサ(20)に連結された記憶媒体(21)を含むデータ処理システム(200)であって、前記プロセッサ(20)は、印刷パラメータ値(1)を前記記憶媒体(21)に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて特定するようになされたデータ処理システム(200)と、
を含む、装置において、
前記プロセッサ(20)は、前記複数の印刷ノズル(6、6a、6b、6c)を少なくとも2つの印刷ノズルグループ(10a、10b、10c、10d、10e)にグループ分けし、各印刷ノズルグループ(10a、10b、10c、10d、10e)の少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータ(7、7a、7b、7c、7d、7e、7f)の印刷パラメータ値(1)を個別に特定するようになされ、前記印刷ヘッド(5)は、
前記眼鏡レンズ基材(4)に対して傾斜されないように構成されることを特徴とするインクジェット印刷装置(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズ基材の表面上にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法、複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含むインクジェット印刷装置、データ処理システム、コンピュータプログラム、非一時的コンピュータ可読記憶媒体、インクジェット印刷方法、インクジェット印刷装置、及び眼鏡レンズ基材の表面上にパターンが印刷された眼鏡レンズ基材に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット技術は、眼鏡レンズの分野において、国際公開第2010/084272A1号パンフレット及び国際公開第2014/053716A1号パンフレットにおいて開示されているような永久的又は一時的レンズマーキング等、様々な目的のために使用される。
【0003】
独国特許出願公開第102007037730A1号明細書は眼鏡レンズの製造方法を開示しており、その中では第一及び第二のマーキングが、それぞれ第一及び第二の光学活性エリアの表面の上、中、又は下に提供される。第二のマーキングは、第一のマーキングに関して所定の3次元位置関係を有する。どちらのマーキングも、インクジェット印刷によって付着させられる。
【0004】
さらに、インクジェット印刷は、米国特許出願公開第2019/0310492A1号明細書において開示されているように、コーティングあり、又はコーティングなしの眼鏡レンズの表面の部分的エリアにマスキングを堆積させるために使用できる。その中で開示されているインクジェット印刷プロセスは、本発明に最も近い先行技術とみなされる。
【0005】
眼鏡レンズ業界で使用されている先行技術のプリンタは、平坦な表面への標的材料の堆積のために最適化された「フラットベッド」型印刷ヘッドを用いる。それゆえ、これらのプリンタでは、特に平坦で曲率の小さい眼鏡レンズの場合に良好な結果が得られる。噴射プロセス中、ノズルには、圧電駆動から生じる衝撃波を利用することによってインクが充填され、そこから吐出される(=小滴を噴射する)。ノズルは、それらに特定の電圧プロファイルを適用することによって精細に制御できる。典型的な固体インクプリンタは、300~1000dpi及び10~50kHzの吐出周波数で動作する。中でも、調整可能なパラメータは発射周波数、波形、ノルム、及び吐出温度である。
【0006】
しかしながら、本発明の発明者らは、より曲率の大きい眼鏡レンズにインクジェット技術を使用した場合の印刷品質の問題に気付いた。発明者らは、レンズのエリアごとに、そこに行われる印刷の品質が変化することを見出した。高い曲率の眼鏡レンズの場合、印刷品質は眼鏡レンズの縁部に向かって大きく劣化する。これは、バーのような形状の先行技術の産業用印刷ヘッドと、非平坦の、例えば球形又はフリーフォームの、光学パワーを有する眼鏡レンズの表面とのミスマッチの直接的な結果と考えられた。例えば、本特許出願の出願人の現在のポートフォリオでは、実際のフロントカーブが40mm~1000mmのブランクを利用する。
【0007】
国際公開第03/023684A1号パンフレットは、平坦な基材からの3次元の装飾オブジェクトの製作を扱っている。基材が製作プロセスの前に装飾されている場合、この装飾は、製作プロセス中に鋳型又は金型の形状に合うように基材を流し、引き伸ばすことによってミスアライン状態となり、変形する可能性がある。基材が製作プロセスの後に装飾されると、装飾の歪みは排除できる。しかしながら、装飾前の3次元形状により、装飾プロセスは複雑でコストがかかる。適応型の事前装飾方式では、目的をもって歪められた装飾が利用され、これは平坦な基材に適用される。基材の形状と表面が製作中に変化するため、歪んだ装飾はその所望の外観に変形することが意図される。成形同時装飾及びインサート成形装飾の分野のほか、湾曲面への画像投射の分野においても同様の問題が指摘されている。
【0008】
これらの問題に対処するために、国際公開第03/023684A1号パンフレットでは、画像の外観をコンピュータで変形させ、画像を、その画像が適用されることになる基材のトポグラフィに合わせるシステムと方法が提案されている。提案された方法は、基材のトポグラフィを測定することと、基材のトポグラフィの測定値にしたがって未変形のグラフィカル画像を変形後のグラフィカル画像に変形することを含む。しかしながら、この方法には基材のトポグラフィの複雑な特定が必要となる。さらに、国際公開第03/023684A1号パンフレットには、インクジェット印刷が変形後のグラフィカル画像を基材に適用するための適当な方法として述べられているが、その適用方法が画像の歪みに与える影響は考慮されていない。
【0009】
国際公開第01/73492A2号パンフレットは、レンチキュラ技術を湾曲表面に適用して、見ている人がほとんど画像の歪みを経験しないようにする方法を開示している。この方法は、2つ以上のフレームを含む湾曲表面に適用するためのインタレース画像を準備して、インタレース画像を所定の観察距離からレンチキュラレンズを通して見たときに、インタレース画像が実質的に歪みがないように見えるようにすることを含む。インタレース画像は、インクジェット印刷によって印刷できる。しかしながら、インクジェット印刷方式が画像の歪みに与える影響については述べられていない。
【0010】
国際公開第2018/197003A1号パンフレットは、直線状に配置された複数のインクジェット印刷ヘッドを使ってレンズにコーティングするシステムと方法を開示している。レンズ上に印刷される画像に基づいて、レンズの形状、標的製品、及び印刷ヘッドの数に基づく複数の画像層が生成される。複数のインクジェット印刷ヘッドのうちの少なくとも2つがレンズ上に画像を印刷するために使用され、それによって少なくとも2つの印刷ヘッドの各々が複数の画像層のうちの少なくとも1つの画像層を印刷する。画像を印刷するために、印刷ヘッド及び/又はレンズの何れかの移動に関連付けられる複数の印刷パスが必要となる。それゆえ、移動のための適当なハードウェア構成が必要であり、全体的なプロセスは時間のかかるものとなり得る。
【0011】
欧州特許出願公開第2555043A1号明細書は、眼鏡レンズにマーキングをインクジェット印刷する方法を開示している。特にレンズの表面特性、例えばそこに付着されるコーティング特性に応じて異なる印刷パラメータ値が選択される。したがって、各レンズについて個別化がなされるが、各レンズには、各印刷ノズルのための同じパラメータ値でコーティングされる。それゆえ、印刷結果は、レンズの曲率のために、満足できるものではないことがある。
【0012】
国際公開第2020/079624A1号パンフレットは、移動中にガラス支持体を配置する方法及び、ガラス支持体に画像を印刷するための、配置方法を含む方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の先行技術に関して、本発明の目的は、眼鏡レンズ基材の表面、例えば湾曲表面に印刷パターンを、より高い印刷パターン特性でインクジェット印刷することを可能にする方法を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、眼鏡レンズ基材の表面、特に湾曲表面上でよりよい印刷結果を実現するデータ処理システム、インクジェット印刷方法、及びインクジェット印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
1つ目の目的は、特許請求項1及び請求項20において特許請求されている、印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法により達成される。他の目的は、請求項11及び請求項32において特許請求されているデータ処理システム、請求項15及び請求項35において特許請求されているインクジェット印刷方法及び請求項17及び請求項37において特許請求されているインクジェット印刷装置によって達成される。従属項には、本発明のさらなる発展型が含まれる。
【0016】
本明細書全体を通じて、以下の定義が適用される。
【0017】
「調整可能なインク特性」という用語は、基本的にユーザにより調整可能なインクの特性、例えばインクの温度、インクの固形分等を指す。
【0018】
「解析データ」という用語は、印刷パターンを、例えば光学顕微鏡又は白色色干渉法によって解析することにより得られたデータを指す。
【0019】
「アーク長さ」という用語は、眼鏡レンズ基材表面上の2点間の、表面に沿って測定された距離(
図4参照)を指す。
【0020】
表面は、それがその面積の全体又は一部において曲率が連続的に変化する回転表面の一部であるときに、「球面」と呼ばれる(ISO 13666:2019(E),3.4.3項)。
【0021】
「コンピュータ」という用語は、多くの数値演算及び論理演算を含む実質的な計算を人間の介入なく実行できる機能ユニットを指す。コンピュータは、スタンドアロンユニットも、複数の相互に接続されたユニットも含み得る(ISO/IEC 2382:2015)。
【0022】
「コンピュータ実装」という用語は、少なくとも1つの特徴がコンピュータプログラムによって実現されるコンピュータ、コンピュータネットワーク、又はその他のプログラム可能な装置にかかわる特許請求項をカバーするための表現である。例えば、コンピュータ実装方法は実際にコンピュータ上で実行される方法である。
【0023】
「コンピュータプログラム」という用語は、ある方法を明示するコンピュータ実行可能命令のシーケンスを指す。これは、特定のプログラミング言語のルールに適合し、特定の機能、タスク、又は問題を解決するために必要な宣言及び文又は命令からなるシンタックスユニットである(ISO/IEC 2382:2015)。
【0024】
「費用関数」という用語は、眼鏡レンズ基材の表面上の特定の点群に対応する特定の印刷パラメータセットの費用を規定する、より多次元の(more-dimensional)数学関数を指す。低費用さらには最小費用を規定する費用関数内の特定の経路は、パラメータマップを推測するために使用される。費用は、1つ又は複数の品質パラメータとして定義され得て、例えば品質パラメータが高いほど費用は低い。具体的な用途に応じて、費用関数内の異なる品質パラメータの重みは変化させてよく、すなわち、1つ又は複数の特定の品質パラメータは、それらに他の品質パラメータより高い重みを割り当てることによって強調できる。
【0025】
「湾曲表面」という用語は、平坦でなく、凹若しくは凸部分又はその両方を示す表面を指す。
【0026】
「データ」という用語は、通信、解釈、又は処理に適した公式化された方法による情報の再解釈可能な表現を指す(ISO/IEC 2382:2015)。
【0027】
「データ処理」という用語は、データに対する動作の体系的な実行、例えばデータに対する数値若しくは論理演算、データのマージ若しくはソート、プログラムのアセンブル若しくはコンパイル、又はテキストに対する、編集、ソート、マージ、保存、読み出し、表示、又は印刷等の動作を指す(ISO/IEC 2382:2015)。
【0028】
「データ処理システム」という用語は、データ処理を行う1つ又は複数のコンピュータ、周辺機器、及びソフトウェアを指す(ISO/IEC2382:2015)。
【0029】
「変位ベクトル」という用語は、それぞれ大きさ又は長さと方向を有し、眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの相互に関する位置を説明する、おそらく特定の参照点を参照する幾何オブジェクトを指す。
【0030】
「距離」という用語は、2点間の空間の長さを指す。特に別段のことわりがないかぎり、これは2点の最短直線長さを指す。
【0031】
「吐出温度」という用語は、印刷ノズル先端における温度を説明する印刷パラメータを指す。
【0032】
「環境条件」という用語は、眼鏡レンズ基材及び眼鏡レンズ基材の表面上にパターンを印刷するために使用されるインクジェット印刷装置の環境内の条件、例えば気温、湿度等を指す。
【0033】
「フリーフォーム表面」とは、特にエリア的に定義される関数、特に2回連続微分可能なエリア的定義関数により表すことのできる複雑な表面と理解するものとする。適当なエリア的定義関数の例は、(特にピースワイズ)多項式関数(特に、双3次スプライン、4次以上のより高度のスプライン、又は多項式非一様有利Bスプライン(NURBS)等の多項式スプライン)である。少なくとも1つの主経線に沿って円形として説明される球面、非球面、円筒面、トロイダル表面等の単純な表面は、これとは区別されるものとする。特に、フリーフォーム表面は、軸対称又は点対称を示す必要はなく、表面のエリアごとに平均表面屈折率の異なる値を有することができる。フリーフォーム表面を呈する眼鏡レンズはISO 13666:2019(E),3.7.7項による屈折力変化レンズ、すなわち複数の焦点屈折力を提供するように設計された、そのエリアの一部又は全部において焦点屈折力が平滑に変化する眼鏡レンズとみなすことができる。
【0034】
「幾何学的特徴」という用語は、眼鏡レンズ基材の、例えばその寸法、その表面曲率等及び印刷ヘッドの、例えばその寸法、向き、個々のノズルの間隔、ノズルの配置等の幾何学特性を指す。表面曲率は、例えば表面サグ関数により説明できる。
【0035】
「幾何学的関係」という用語は、印刷ヘッドと眼鏡レンズ基材の相互に関するアラインメントを指す。これは、例えば変位ベクトル、速度ベクトル、入射角α、距離、又はアーク長さによって説明できる。
【0036】
「グレイレベル」という用語は、液滴が噴射されないときの「ヌル液滴」を含む、ノズルが生成できる液滴サイズの数を指す。
【0037】
「入射角」という用語は、眼鏡レンズ基材の表面上の特定の点の法線ベクトルnと、吐出されたインクがノズルからレンズ表面へと輸送される吐出ベクトルjとの間の角度αを指す(
図4参照)。
【0038】
「インク」という用語は、インクジェット印刷プロセス内の液滴によって堆積可能な、その色を問わないあらゆる組成物(「被噴射材料」)を指す。液滴の形成と堆積を可能にする、又は容易にするために、インクを特定の温度まで加熱する必要があることがある。
【0039】
「インクジェット印刷」という用語は、インク液滴の離散的堆積によって表面上のパターンを生成する非接触方式であるドロップ・オン・デマンド方式のインクジェット印刷を指す。インクジェット印刷は、複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含むインクジェット印刷装置により実行される。
【0040】
「入力データ」という用語は、データ処理システム又はその何れかの部分に、保存又は処理のために入力されるデータを指す。これはまた、コンピュータの何れかの構成部品により受信されている、又は受信されることになるデータも指し得る(ISO/IEC 2382:2015)。
【0041】
「命令」という用語は、何れかの関連するオペランドの動作及び識別の指定を指す(ISO/IEC 2382:2015)。
【0042】
「噴射持続時間」という用語は、インクがその間に特定の印刷ノズルから吐出される時間を説明する印刷パラメータを指す。
【0043】
「吐出周波数」という用語は、特定の印刷ノズルの単位時間、例えば毎秒又は毎分の吐出イベントの量を説明する印刷パラメータを指す。通常の吐出周波数はキロヘルツの範囲、例えば10~50kHzである。
【0044】
「ルックアップテーブル」という用語は、異なるパラメータ、例えば眼鏡レンズ基材表面と印刷ヘッドとの間の幾何学的関係を説明するパラメータと調整可能な印刷パラメータを相関させるデータアレイを指す。ルックアップテーブルは、保存して、必要に応じてパラメータマッピングに使用できる。
【0045】
「材料特性」という用語は、それぞれインクの特性及び/又は眼鏡レンズ基材とその表面の特性を指す。インクの材料特性の例は、静及び動粘性、静及び動表面張力、電荷等である。眼鏡レンズ基材及びその表面の材料特性の例は、表面疎水性、表面電荷、表面処理、表面機能性等である。
【0046】
「調整不能インク特性」という用語は、ユーザが調整できないインクの特性、例えばインクの化学組成を指す。
【0047】
「非一時的コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、永久的なデータ保存のための記憶媒体を指し、すなわちデータは電気がなくても保存される。その例には、フラッシュメモリ、リードオンリメモリ、強磁性ランダムアクセスメモリ、ほとんどの種類の磁気コンピュータ記憶装置、例えばハードディスクドライブ、フロッピディスク、及び磁気テープ、並びに光ディスクが含まれる。
【0048】
「ノルム値」という用語は、それによって特定の印刷ノズルに印加される電圧が調整される増倍可変係数を説明する印刷パラメータを指す。ノルム値の調整は、印刷ヘッドの発射信号を較正するために使用される。ノルム値は、各ノズルに関する発射電圧の変化を定量化する可変係数とみなすことができる。
【0049】
「最適化」という用語は、1つ又は複数の特性の最適値に到達することを目的とするプロセスを指す。例えば、パラメータマップの最適化とは、パラメータマップが特定の特性又は標的値に関して改善されることを意味する。
【0050】
「パターン」という用語は、1つ又は複数のマクロ的要素、例えば数字、何れかの種類のグラフィクスの文字、ドット等のグラフィック表現、記号等を指す。
【0051】
「パラメータ」という用語は、あるオブジェクト又は方法の特定の特性を説明する可変値、例えば温度、距離、吐出周波数等を指す。パラメータは特定の「パラメータ値」を示し、これは一定であり得、又は変化し得て、例えば25℃、10mm、20kHz等である。
【0052】
「パラメータマップ」という用語は、個別の印刷パラメータ値(例えばP(x,y,z))を眼鏡レンズ基材の表面上の特定の点群(x,y,z)に割り当てることを指す。これらの点群は、費用関数と表面幾何学を入力として特定された同様の「費用値」を有することによって定義できる。パラメータマップは、各表面について固有であり得る。このようなパラメータマップを取得するプロセスは、パラメータマッピングと呼ばれる。例えば、これらの特定の点群を使って画像を、例えば印刷パラメータ値Pの8つの異なるセットで印刷される8つのサブピクチャに分割することは、パラメータマッピングと理解できる。
【0053】
「ポーズ」という用語は、3次元空間における名前が挙げられたオブジェクト又はコンポーネント、例えば眼鏡レンズ基材若しくは印刷ヘッド、又は参照軸の位置及び向きの組合せを意味すると理解されたく、ISO 8373:2021-11,5.5項も参照されたい。これによれば、デカルト座標系に関する質点位置は、座標方向x,y,zに沿った距離により定義される。この質点において第二のデカルト座標系を広げた場合、この座標の交差の向きは基本座標系の対応する軸に関するその座標軸の角度オフセットにより定義される。基本座標系に関する新しい座標系の位置を説明するには、さらに3つの角度が必要である。
【0054】
「印刷ヘッド」という用語は、インクジェット印刷装置のうち、印刷ノズルを担持する部品を指し、好ましくは単独のコンポーネントである。印刷ヘッドにより、印刷される表面を完全にカバーすることができ得、すなわち印刷される表面全体に、1つの印刷ヘッドを使ったシングル印刷パス内で印刷できる。
【0055】
「印刷ノズル」という用語は、インクジェット印刷装置のノズルを指す。複数の印刷ノズルがインクジェット印刷装置の印刷ヘッドに配置される。インクの吐出プロセス中、印刷ノズルにはインクが充填され、圧電駆動から生じる衝撃波を利用してインクが吐出される。それゆえ、印刷ノズルには特定の電圧プロファイルが印加される。
【0056】
「印刷ノズルグループ」という用語は、同じ印刷パラメータ値を使って共通に制御され1つ又は複数の印刷ノズルを指す。1つの印刷ノズルグループは、シングル印刷パス内に印刷すべき表面の一部のみをカバーし得て、すなわち、印刷すべき表面全体に印刷するためには少なくとも2つの印刷ノズルグループの印刷ノズルが必要となり得る。
【0057】
「印刷パラメータ」という用語は、印刷プロセスのパラメータを指す。印刷パラメータは、調整可能な印刷パラメータ、すなわち基本的にユーザが調整できる、吐出周波数、吐出温度、吐出持続時間等と、調整不能な印刷パラメータ、すなわちユーザが調整できない印刷パラメータ、例えば印刷ヘッドの形状、印刷ノズルの数の何れかである。幾つかの印刷パラメータは、いわゆるグレイレベルとしてまとめられてよく、すなわち、本開示においては、幾つかの印刷パラメータの代わりに、グレイレベルを共通の印刷パラメータとみなすことができる。
【0058】
「印刷パラメータ値」という用語は、印刷パラメータのパラメータ値を指す。
【0059】
「印刷プロセス」という用語は、ドロップ・オン・デマンド技術を用いるインクジェット印刷プロセス、すなわち基材表面にインク液滴を堆積させるプロセスを指す。印刷プロセスは、印刷パラメータ及びそれぞれの印刷パラメータ値により説明できる。
【0060】
「プロセッサ」という用語は、コンピュータ内の命令を解釈し、実行する機能ユニットを指す。プロセッサは、1つ又は複数のプロセッサ及びそれらの内部ストレージからなる機能ユニットである処理ユニットの一部であり得る(ISO/IEC 2382:2015)。
【0061】
「品質パラメータ」という用語は、インクジェット印刷プロセスの品質を説明するパラメータ、例えばサテライト滴の数、印刷点の真円度等を指す。
【0062】
「シングル印刷パス」という用語は、少なくとも2つの印刷ノズルグループの印刷ノズルが眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するために同時に使用される印刷プロセスを指す。換言すれば、少なくとも2つの印刷ノズルグループが同じ印刷パス内で使用される。シングル印刷パスは1つの印刷又は画像層に対応し得て、すなわち1つの印刷又は画像層を印刷するために、少なくとも2つの印刷ノズルグループを使用できる。
【0063】
「眼鏡レンズ」という用語は、眼球の正面に、ただしそれと接触せずに装用される眼科レンズ(ISO 13666:2019(E),3.5.2項)を指し、この場合、眼科レンズは、眼の測定、矯正、及び/若しくは保護を目的として、又はその外観を変化させるために使用されるものである(ISO 13666:2019(E),3.5.1項)。
【0064】
「眼鏡レンズ基材」という用語は、眼鏡レンズの製造プロセス中に使用される1個の光学材料、例えば完成眼鏡レンズの前駆体のほか、完成レンズ(ISO 13666:2019(E),3.8.9項)自体を指す。完成レンズの前駆体は、例えばレンズブランクであり、「レンズブランク」という用語は、レンズの製作のための1つの光学的に仕上げられた表面を有する1個の光学材料(ISO 13666:2019(E),3.8.1項)又は、カット前の完成レンズを指し、「カット前の完成レンズ」という用語は、玉形加工の前の完成レンズを説明する(ISO 13666:2019(E),3.8.8項)。
【0065】
表面は、それが球の内面又は外面の一部である場合に「球面」と呼ばれ(ISO 13666:2019(E),3.4.1項)、それによってその断面は各経線について円形である。
【0066】
「記憶媒体」という用語は、その中にデータを格納でき、その中にそれら保持でき、そこからそれらを読み出すことのできる機能ユニットを指す(ISO/IEC 2382:2015)。
【0067】
「表面」という用語は、3次元眼鏡レンズ基材又は3次元被覆レンズの、環境と直接接触するあらゆる層を指す。表面は、その境界とみなすことができる。眼鏡レンズ基材の表面には、その前面(ISO 13666:2019(E),3.2.13項)、縁辺、後面(ISO 13666:2019(E),3.2.14項)が含まれる。異なる形状の表面(表面タイプ)の例は、フリーフォーム累進表面、フリーフォーム単焦点表面、屈折力可変表面、(非)球面、円筒面、及び(ア)トロイダル表面等である。しかしながら、本発明は特定の表面タイプに限定されない。
【0068】
眼鏡レンズに関して、「前面」という表現は、眼鏡レンズのうち、眼の反対側に適合されることになる表面について使用される(ISO 13666:2019(E),3.8.13項)。レンズブランクに関して、「前面」という表現は、最終的にこのレンズブランクから製造される眼鏡レンズの前面となる表面について使用される。レンズブランクの前面の、眼鏡レンズの製造の開始オブジェクトとして使用されるある部分の曲率はすでに、製造される眼鏡レンズに曲率に近いものであり得る。
【0069】
眼鏡レンズに関して、「後面」という表現は、眼鏡レンズのうち、眼のより近くに適合されることになる表面について使用される(ISO 13666:2019(E),3.8.14項)。レンズブランクに関して、「後面」という表現は、最終的にこのレンズブランクから製造される眼鏡レンズの後面となる表面について使用される。セミフィニッシュトレンズブランクの後面は、眼鏡レンズの製造プロセス中に機械加工され得る。
【0070】
「速度ベクトル」という用語は、それぞれある大きさ又は長さと、方向を有し、眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの相互に関する移動の速度を説明する、おそらく特定の参照点を参照する幾何学的オブジェクトを指す。
【0071】
「装置の仮想表現」という用語は、それぞれの構造的設計特徴及び/又は設計特徴を説明する数値及び/又は解析データセット(数値及び/又は解析表現)を有する装置の実装等、装置のデジタル表現(いわゆるデジタルツイン)を指す。例えば、このようなデータセットは、コンピュータメのメモリ内又はコンピュータ可読(特に非一時的)記憶媒体に保存され得る。それに加えて、データセットは、例えばインタネットやローカルエリアネットワーク(LAN)等のデータネットワークから呼び出され得る。装置の表現に似たデータセットは、装置のあらゆる種類の特徴、特に構造的特徴の説明、ユニットの材料等を含み得る。このような説明には、例えば装置の構造的特徴の数学的説明を含み得る。仮想表現は、符号化又は暗号化された形態とすることができる。装置の仮想表現は、それに加えて、又は代替的に、それぞれの特徴を有する物理的装置を製造するために装置の1つ又は複数の製造機械を制御するためのコンピュータ可読命令を含み得る。
【0072】
「波形パラメータ」という用語は、印刷ノズルに印加される電圧プロファイルを説明する印刷パラメータ、例えば最小電圧、最大電圧、勾配、電圧印加持続時間等を指す。通常、電圧プロファイルは複数の波形パラメータにより説明される。発明に関して、1つ又は複数の波形パラメータは調整できる。
【0073】
冠詞(a、an、及びthe)は、本明細書及び付属の特許請求の範囲で使用されるかぎり、明確に、疑いなく単数に限定される場合を除き、複数形も含む。
【0074】
「及び/又は」という用語は、本明細書で使用されるかぎり、2つ以上の要素の連続において使用される場合、列挙された要素の何れも単独で使用され得る、又は列挙された要素のうちの2つ以上のあらゆる組合せが使用され得ることを意味する。例えば、方法A、B、及び/又はCの使用が記載されているとき、方法Aのみ、方法Bのみ、方法Cのみ、AとBの組合せ、AとCの組合せ、BとCの組合せ、A、B、Cの組合せが使用され得る。
【0075】
第一の態様において、本発明は、眼鏡レンズ基材の表面、特に湾曲表面上にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法を提供する。インクジェット印刷装置は、複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含む。
【0076】
本発明によれば、方法は、複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けするステップと、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定する、例えば計算するステップと、を含む。好ましくは、少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パスで使用されることになる。
【0077】
眼鏡レンズ基材の表面は、前面でも後面でもよい。さらに、これは球面、非球面、フリーフォーム表面、又はその他の種類の表面、例えば前述のもののうちの1つでよい。前面及び後面の表面の種類は同じでも相互に異なっていてもよい。
【0078】
1つの印刷ノズルグループは、単独の、すなわち1つのみの印刷ノズル、幾つかの印刷ノズル、又は複数の印刷ノズル、を含み得る。印刷ノズルグループの数は、少なくとも2つの印刷ノズルグループから、印刷ノズルの数と等しい多数の印刷ノズルグループ、すなわち各印刷ノズルグループが単独の印刷ノズルを含み得る場合まで、様々であってよい。印刷ノズルグループの数が少ないほど、対応する印刷パラメータ値の特定と、おそらくはその最適化が容易となる。印刷ノズルグループの数が増えると、印刷パラメータ値を眼鏡レンズ基材の表面によりよく適応させることができ、よりよい印刷結果が得られ得る。
【0079】
本発明の1つの基本的なアイディアは、印刷ノズルのグループについて、さらには個々の印刷ノズルについて印刷パラメータ値を個別に最適化することによって、ドット形状及び衝突面積等のパラメータにより測定可能な全体的な印刷品質を大幅に改善できるとの発見に基づいている。特に、印刷パラメータ値は、印刷ヘッドと眼鏡レンズ基材との様々な相対位置について個別に特定し、最適化できる。印刷結果に影響を与え得る他の、又は追加の影響要因としては、例えば異方的な表面構造又は表面疎水性等も考慮できる。
【0080】
さらに、提案の方法によって、シングル印刷パスで改善された印刷パターンを得ることができる。換言すれば、異なる層を印刷する必要がなく、これによって時間と生産コストが削減される。さらに、1つの印刷ヘッドだけがあればよく、これによって時間と生産コストはさらに削減される。眼鏡レンズ基材及び/又は印刷ヘッドを移動させるためのハードウェア配置を省くことができる。
【0081】
提案の方法は、眼鏡レンズ基材の表面が、インクジェット印刷技術を用いて構築、コーティング、及び/又は表面/材料内改質される、例えばコーティング又は拡散手順を用いた色付け、永久的又は一時的レンズマーキング、マスキング層、接着剤層スポット、アディティブマニュファクチャリング等、何れのプロセスにも利用できる。この手順は特に、その印刷結果を「ソフトウェア」により、すなわち印刷パラメータの平均的設定を補償するために複雑な位置決めシステム又はロボットを導入する代わりに、本発明のコンピュータ実装方法によって最適化できる眼鏡レンズ基材の処理について特に興味深い。眼鏡レンズ基材の表面は通常、例えばカスタム化された要求によって、固有の形状を有するため、提案の方法によれば、高い印刷品質及び低い設備費用での高速印刷が可能となる。前述の方法は、高品質で印刷できる幅広い眼鏡レンズ基材に広く適用され、したがって、インクジェット印刷技術を眼鏡レンズの生産中のその他の用途にも使用できることになる。
【0082】
少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータは、吐出温度、吐出持続時間、吐出周波数、ノルム値、波形パラメータ、及び調整可能なインク特性からなる群より選択できる。好ましくは、複数の印刷パラメータのための印刷パラメータ値は、個別に、すなわち各印刷ノズルグループについて特定できる。考慮される印刷パラメータ及び特定すべきそれぞれの印刷パラメータ値の量が少ないほど、その特定及び、おそらくは最適化はより容易となる。特定すべき印刷パラメータ値が多ければ、印刷プロセスは眼鏡レンズ基材の表面によりよく適応させることができ、より良い印刷結果が得られ得る。
【0083】
例えば、吐出周波数を制御することにより、着弾間隔、すなわち隣接する液滴間の時間が設定される。吐出周波数が高いと、隣接する液滴間の着弾間隔は液滴の固化時間より短くなる。それに対して、低い吐出周波数での隣接する液滴間の着弾間隔は、液滴の固化時間より長い。その結果、隣接する液滴間の合一がなくなる。眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの幾何学的特徴に基づいて適応された印刷パラメータ値により、インク滴周囲にサテライトが少なく、インク滴形状の歪みが小さい、より高い印刷品質が得られる。
【0084】
本発明の方法の特定の発展型において、方法は、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドの幾何学的特徴に関する入力データを取得することを含み得る。すると、印刷パラメータ値は、入力データ、すなわち眼鏡レンズ基材の表面及び印刷ヘッドの幾何学的特徴に応じて個別に特定できる。印刷されるべき眼鏡レンズ基材の表面の幾何学的特徴、特に表面曲率、及び印刷ヘッドの幾何学的特徴を解析することによって、印刷プロセス中に眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドとの幾何学的関係を推測できる。換言すれば、入力データは、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を特定するために使用でき、幾何学的関係は、変位ベクトル、速度ベクトル、入射角α、距離、又はアーク長さsからなる群より選択される少なくとも1つのパラメータにより説明される。幾何学的関係を説明するパラメータの少なくとも1つ、好ましくは複数、さらには全部は、印刷パラメータ値の個別の特定のために選択し、使用できる。
【0085】
この幾何学的関係を考慮して、印刷ヘッドのノズル又はノズルグループの各々について、少なくとも1つの印刷パラメータに関して詳細にされ、最適化された印刷パラメータ値を、特定、例えば計算することができる。換言すれば、印刷パラメータ値は、幾何学的特徴に関して特定でき、それによって各印刷ノズルグループを個別に制御することにより、湾曲表面への印刷品質を向上させることができる。眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドを相互に関して位置付けることによって印刷パラメータの平均的設定を補償するための複雑な位置決めシステム又はロボットは不要である。さらに、平坦ではない面、すなわち印刷ノズルが配置される平面を有する印刷ヘッドの使用が容易となり得る。
【0086】
入力データは、例えばそれを異なる眼鏡レンズ基材及び/又は印刷ヘッドの幾何学的特徴を記憶するための記憶ユニットから有線又は無線転送によって受け取ることにより取得できる。他の可能性は、本発明の方法を実行するデータ処理システムに連結された入力ユニットを使って、幾何学的特徴を手作業で、又は自動的に入力することである。幾何学的特徴は、例えば作表された値の形態で提供でき、又は幾何学的特徴は、適当な測定システムを使って直接測定し、処理できる。それらの組合せもまた利用可能である。
【0087】
眼鏡レンズ基材及び印刷ヘッドの幾何学的特徴とは別に、入力データは環境条件、調整不能なインク特性、及び/又は眼鏡レンズ基材の材料特性に関するデータを含み得る。
【0088】
印刷パラメータ値を特定する際にこれらの追加の影響要因を考慮することによって、印刷プロセスを全体的な条件にさらによりよく適合させ、印刷結果をさらに改善することができる。例えば、これらの追加的な影響要因は、後述のような少なくとも1つのパラメータマップを推測する際に考慮でき、すなわち、パラメータマップは印刷プロセス中の眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドとの幾何学的関係を説明するだけでなく、印刷プロセスに影響を与えることがあるその他の影響要因も含む。
【0089】
本発明の方法の別の特定の発展型において、少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定する方法ステップは、眼鏡レンズ基材の表面上の特定の点群への印刷パラメータ値の割り当てを含むパラメータマップを推測するステップを含み得る。
【0090】
パラメータマップを推測するために、眼鏡レンズ基材の表面を説明する、例えば入力データの一部としての既知の幾何学的特徴、例えば実際のフロントカーブ径は、表面をデータポイントのグリッド又はメッシュに変換するために使用できる。すると、これらのデータポイントを通じてループ状にし、実際の設定、すなわち印刷パラメータ値セットを事前に作成されたユニバーサルルックアップテーブルの中で探すことができる。ルックアップテーブルは、特定のデータポイント及び特定の印刷ヘッドのための最適化された印刷パラメータ値、すなわち眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドとの特定の幾何学的関係を含み得る。このルックアップテーブル内に保存された1つの同じデータポイントが多くの異なる表面上に存在する可能性がある。
【0091】
推測されたパラメータマップは、完全な印刷パラメータ空間を最適化する、例えばインク液滴のドット形状又は重みを入射角、ノズル基材距離、印刷ヘッドの速度ベクトル、吐出周波数、及び吐出持続時間に応じて最適化するための基本的な参照システムを形成し得る。
【0092】
例えば、パラメータマップは、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を説明するパラメータと、調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値との相関関係、例えばルックアップテーブルに記憶された相関関係に適用される費用関数を最適化することによって推測され得る。
【0093】
費用関数の最適化は、最急降下法、遺伝的アルゴリズム、及び機械学習からなる群より選択される少なくとも1つの方法を使って行うことができる。例えば、いわゆるBroyden-Fletcher-Goldfarb-Shannoアルゴリズムを最適化に使用できる。
【0094】
さらに、機械学習プロセスを最適化に使用できる。これによって、現在はその影響が考慮されていない別の影響要因を検出し、考慮することが可能となり得る。
【0095】
本発明の方法の別の特定の発展型において、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定でき、それによって、眼鏡レンズ基材の表面に対する印刷ヘッドの傾斜角度を印刷前及び/又は印刷中に調整する必要がなくなる。
【0096】
例えば、印刷すべき表面と印刷ヘッドの、複数のノズルを含む表面は、基本的に印刷プロセス全体を通じて平行な向きであり得る。
【0097】
これによって、本来は印刷結果を最適化するために必要な、印刷前及び/又は印刷中に眼鏡レンズ基材及び/又は印刷ヘッドを回転させる、例えば機械的に傾けるための複雑なハードウェア配置が不要となる。先行技術の傾斜機器等の複雑なハードウェア配置により実現される効果は、完全に個別化された印刷パラメータ値、すなわち印刷ノズルグループについて個別化された吐出プロファイルのみによって模倣できる。
【0098】
印刷ヘッド及び印刷表面の大きさに応じて、すなわち印刷ヘッドの大きさが印刷表面全体をカバーできるものである場合、眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの両方のポーズ、すなわち位置と向きは眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷している間にも相互に関して一定のままであり得る。換言すれば、眼鏡レンズ基材及び印刷ヘッドを相互に関して移動させることなく、1つ又は複数の調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を調整するだけで、改善されたパターンを得ることができる。これによって、さらにより簡素化されたハードウェア配置が可能となり得る。
【0099】
本発明の別の態様によれば、プロセッサ及びプロセッサに連結された記憶媒体を含むデータ処理システムが提供される。プロセッサは、眼鏡レンズ基材の表面に記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムに基づいてパターンを印刷するための複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含むインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するようになされる。
【0100】
プロセッサは、複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けし、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定するようになされる。好ましくは、少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パスで使用されることになる。
【0101】
換言すれば、データ処理システムは、前述のような眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装可能方法のうちの1つを実行するように構成される。したがって、眼鏡レンズ基材の表面上にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法及びその利点を述べた前述の説明を参照されたい。
【0102】
特定の発展型において、プロセッサは、印刷パラメータ値を眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの幾何学的特徴に応じて個別に特定するようになされる。
【0103】
本発明の別の態様によれば、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定させる命令を含むコンピュータプログラムが提供され、インクジェット印刷装置は複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含む。命令は、コンピュータに複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けさせて、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定させる。好ましくは、少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パス内で使用されることになる。
【0104】
換言すれば、コンピュータプログラムは、前述のように眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法のうちの1つを実行するための命令を含む。したがって、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法及びその利点を述べた前述の説明を参照されたい。
【0105】
本発明の別の態様によれば、コンピュータにより実行されると、コンピュータに、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定させる命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体が提供され、インクジェット印刷装置は複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含む。命令は、コンピュータに、複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けさせ、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定させる。好ましくは、少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パス内で使用されることになる。
【0106】
換言すれば、非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、前述のように眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法のうちの1つを実行するための命令を含む。したがって、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法及びその利点を述べた前述の説明を参照されたい。
【0107】
本発明の別の態様によれば、インクジェット印刷方法が提供され、パターンが眼鏡レンズ基材の表面に、複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含むインクジェット印刷装置により、少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を使って印刷される。少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は、前述のコンピュータ実装方法にしたがって特定される。
【0108】
換言すれば、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法であって、インクジェット印刷装置は複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含み、複数の印刷ノズルを印刷ノズルグループにグループ分けするステップと、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定するステップを含む方法により、少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を特定した後に、特定された印刷パラメータを使った実際の印刷を実行できる。したがって、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法及びその利点を述べた前述の説明を参照されたい。インクジェット印刷方法は例えば、コーティング又は拡散手順を使用した色付け、永久的又は一時的レンズマーキング、マスキング層、例えばコーティングの適用のために表面粗さを増大させる接着剤層スポット、アディティブマニュファクチャリング等に使用できる。
【0109】
インクジェット印刷方法の特定の発展型において、眼鏡レンズ基材の表面に対する印刷ヘッドの傾斜角度は、印刷前及び/又は印刷中に調整されない。
【0110】
例えば、印刷表面と印刷ヘッドの、印刷ノズルを含む表面は、印刷プロセス全体を通じて基本的に平行な向きであり得る。
【0111】
これによって、本来は印刷結果を最適化するのに必要な、印刷前及び/又は印刷中に眼鏡レンズ表面及び/又は印刷ヘッドを回転させる、例えば機械的に傾けるための複雑なハードウェア配置は不要となる。先行技術の傾斜機器等の複雑なハードウェア配置により実現される効果は、完全に個別化された印刷パラメータ値、すなわち印刷ノズルグループについて個別化された吐出プロファイルのみによって模倣できる。
【0112】
印刷ヘッド及び印刷表面の大きさに応じて、すなわち印刷ヘッドの大きさが印刷表面全体をカバーできるものである場合、眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの両方のポーズ、すなわち位置と向きは眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷している間にも相互に関して一定のままであり得る。換言すれば、眼鏡レンズ基材及び印刷ヘッドを相互に関して移動させることなく、1つ又は複数の調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を調整するだけで、改善されたパターンを得ることができる。これによって、さらに格段に簡素化されたハードウェア配置が可能となり得る。本発明の別の態様によれば、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置が提供される。インクジェット印刷装置は、複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドと、プロセッサ及びプロセッサに連結される記憶媒体を含むデータ処理システムと、を含み、プロセッサは記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて印刷パラメータを特定するようになされる。プロセッサは、複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けし、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定するようになされる。好ましくは、少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パス内で使用されることになる。
【0113】
インクジェット印刷装置は、前述のインクジェット印刷方法を実行するように構成される。したがって、パターンが眼鏡レンズ基材の表面に印刷されるインクジェット印刷方法及びその利点について述べた前述の説明を参照されたい。
【0114】
本発明の別の態様によれば、少なくとも以下の種類のデータ、すなわち(i)装置を製造するために1つ又は複数の製造機械に供給されるように構成された前述のインクジェット印刷装置の仮想表現、又は(ii)前述のようなインクジェット装置を製造するための1つ又は複数の製造機械を制御するコンピュータ可読命令を含むデータのうちの少なくとも1つの種類を含むコンピュータ可読データ信号の形態のデータセットデータセットが提供される。
【0115】
本発明の別の態様によれば、コンピュータ可読データキャリア信号の形態のデータセットが提供される。データセットは、以下の種類のデータ、すなわち(i)眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置に供給されるように構成される、複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含むインクジェット印刷装置の少なくとも2つの印刷ノズルグループに個別の少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値、又は(ii)複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含むインクジェット印刷装置の少なくとも2つの印刷ノズルグループに、少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの個々の印刷パラメータ値を適用することによって、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するようにインクジェット印刷装置を制御するためのコンピュータ可読命令を含むデータのうちの少なくとも1つの種類を含む。
【0116】
データセットは、前述のインクジェット印刷方法、すなわち複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含むインクジェット印刷装置で、少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を使って眼鏡レンズ基材の表面にパターンが印刷される方法を実行するために使用できる。
【0117】
データは、前述の眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法を実行することによって得られる。したがって、この方法及びその利点について述べた前述の説明を参照されたい。
【0118】
本発明の別の態様によれば、眼鏡レンズ表面の湾曲表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法が提供され、インクジェット印刷装置は複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含む。方法は、眼鏡レンズ基材の表面及び印刷ヘッドの幾何学的特徴に関する入力データを取得するステップであって、入力データは眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を特定するために使用されるステップと、複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けするステップと、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を幾何学的関係に応じて個別に特定するステップと、を含む。好ましくは、少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パス内で使用されることになる。
【0119】
眼鏡レンズ基材の表面は、前面でも又は後面でもよい。さらに、これは球面、非球面、フリーフォーム表面、又は、例えば前述のものの1つのような他の何れの表面タイプでもよい。前面及び後面の表面のタイプは、同じでも相互に異なっていてもよい。
【0120】
1つの印刷ノズルグループは、単独の、すなわち1つのみの印刷ノズル、幾つかの印刷ノズル、又は複数の印刷ノズル、を含み得る。印刷ノズルグループの数は、少なくとも2つの印刷ノズルグループから、印刷ノズルの数と等しい多数の印刷ノズルグループ、すなわち各印刷ノズルグループが単独の印刷ノズルを含み得る場合まで、様々であってよい。印刷ノズルグループの数が少ないほど、対応する印刷パラメータ値の特定と、おそらくはその最適化が容易となる。印刷ノズルグループの数が増えると、印刷パラメータ値を眼鏡レンズ基材の表面によりよく適応させることができ、よりよい印刷結果が得られ得る。
【0121】
本発明の1つの基本的なアイディアは、印刷ノズルのグループについて、さらには個々の印刷ノズルについて印刷パラメータ値を個別に最適化することによって、ドット形状及び衝突面積等のパラメータにより測定可能な全体的な印刷品質を大幅に改善できるとの発見に基づいている。特に、印刷パラメータ値は、印刷ヘッドと眼鏡レンズ基材との様々な相対位置について個別に特定し、最適化できる。印刷結果に影響を与え得る他の、又は追加の影響要因、例えば異方的な表面構造又は表面疎水性等も考慮できる。さらに、平坦でない表面、すなわち印刷ノズルが配置される平面を有する印刷ヘッドの使用が容易にされ得る。
【0122】
さらに、提案の方法によって、シングル印刷パスで改善された印刷パターンを得ることができる。換言すれば、異なる層を印刷する必要がなく、これによって時間と生産コストが削減される。さらに、1つの印刷ヘッドだけがあればよく、これによって時間と生産コストはさらに削減される。眼鏡レンズ基材及び/又は印刷ヘッドを移動させるためのハードウェア配置を省くことができる。
【0123】
提案の方法は、眼鏡レンズ基材の表面が、インクジェット印刷技術を用いて構築、コーティング、及び/又は表面/材料内改質される、例えばコーティング又は拡散手順を用いた色付け、永久的又は一時的レンズマーキング、マスキング層、接着剤層スポット、アディティブマニュファクチャリング等、何れのプロセスにも利用できる。この手順は特に、その印刷結果を「ソフトウェア」により、すなわち印刷パラメータの平均的設定を補償するために複雑な位置決めシステム又はロボットを導入する代わりに、本発明のコンピュータ実装方法によって最適化できる眼鏡レンズ基材の処理について特に興味深い。眼鏡レンズ基材の表面は通常、例えばカスタム化された要求によって、固有の形状を有するため、提案の方法によれば、高い印刷品質及び低い設備費用での高速印刷が可能となる。前述の方法は、高品質で印刷できる幅広い眼鏡レンズ基材に広く適用され、したがって、インクジェット印刷技術を眼鏡レンズの生産中のその他の用途にも使用できることになる。
【0124】
少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータは、吐出温度、吐出持続時間、吐出周波数、ノルム値、波形パラメータ、及び調整可能なインク特性からなる群より選択できる。好ましくは、複数の印刷パラメータのための印刷パラメータ値は、個別に、すなわち各印刷ノズルグループについて特定できる。考慮される印刷パラメータ及び特定すべきそれぞれの印刷パラメータ値の量が少ないほど、その特定及び、おそらくは最適化はより容易となる。特定すべき印刷パラメータ値が多ければ、印刷プロセスは眼鏡レンズ基材の表面によりよく適応させることができ、より良い印刷結果が得られ得る。
【0125】
例えば、吐出周波数を制御することにより、着弾間隔、すなわち隣接する液滴間の時間が設定される。吐出周波数が高いと、隣接する液滴間の着弾間隔は液滴の固化時間より短くなる。それに対して、低い吐出周波数での隣接する液滴間の着弾間隔は、液滴の固化時間より長い。その結果、隣接する液滴間の合一がなくなる。眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの幾何学的特徴に基づいて適応された印刷パラメータ値により、インク滴周囲にサテライトが少なく、インク滴形状の歪みが小さい、より高い印刷品質が得られる。
【0126】
幾何学的特徴、特に印刷される眼鏡レンズ基材の表面の表面曲率、及び印刷ヘッドの幾何学的特徴を解析することにより、印刷プロセス中の眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの幾何学的関係を導き出すことができる。換言すれば、入力データは、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を特定するために使用される。
【0127】
幾何学的関係は、変位ベクトル、速度ベクトル、入射角α、距離Δ、及びアーク長さsからなる群より選択される少なくとも1つのパラメータによって説明され得る。それゆえ、幾何学的関係を説明するパラメータの少なくとも1つは、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定するために使用され得る。幾何学的関係を説明するパラメータのうちの少なくとも1つ、好ましくは複数、さらには全部を印刷パラメータ値の個別の特定のために選択し、使用できる。
【0128】
この幾何学的関係を考慮して、印印刷ヘッドのノズル、又はノズルグループの各々について、少なくとも1つの印刷パラメータに関して個別に詳細にされ、最適化された印刷パラメータ値を、特定、例えば計算することができる。換言すれば、印刷パラメータ値は幾何学的特徴に関して特定され、それによって各印刷ノズルグループを個別に制御することによって湾曲表面上の印刷品質を向上させることができる。眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドを相互に関して位置決めすることによって、印刷パラメータの平均的設定を補償するための複雑な位置決めシステム又はロボットは不要である。
【0129】
入力データは、例えばそれを異なる眼鏡レンズ基材及び/又は印刷ヘッドの幾何学的特徴を記憶するための記憶ユニットから有線又は無線転送によって受け取ることにより取得できる。他の可能性は、本発明の方法を実行するデータ処理システムに連結された入力ユニットを使って、幾何学的特徴を手作業で、又は自動的に入力することである。幾何学的特徴は、例えば表にされた値の形態で提供でき、又は幾何学的特徴は、適当な測定システムを使って直接測定し、処理できる。それらの組合せもまた利用可能である。
【0130】
任意選択により、入力データは環境条件、調整不能なインク特性、及び/又は眼鏡レンズ基材の材料特性に関するデータを含み得る。したがって、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は、入力データは環境条件、調整不能なインク特性、及び/又は眼鏡レンズ基材の材料特性に関するデータに応じて個別に特定され得る。
【0131】
印刷パラメータ値を特定する際にこれらの追加の影響要因を考慮することによって、印刷プロセスを全体的な条件にさらによりよく適合させ、印刷結果をさらに改善することができる。例えば、これらの追加的な影響要因は、後述のような少なくとも1つのパラメータマップを推測する際に考慮でき、すなわち、パラメータマップは印刷プロセス中の眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドとの幾何学的関係を説明するだけでなく、印刷プロセスに影響を与えることがあるその他の影響要因も含む。
【0132】
特定の発展型において、少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定する方法ステップは、眼鏡レンズ基材の表面上のデータポイント群への印刷パラメータ値の割り当てを含むパラメータマップを推測するステップを含み得る。パラメータマップを推測するステップは、眼鏡レンズ基材の表面をデータポイントのグリッドに変換することを含み得る。
【0133】
少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定する方法ステップは、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を説明するパラメータと、調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値との相関を含むルックアップテーブルを提供することも含み得る。印刷パラメータ値を個別に特定することはすると、データポイントについてルックアップテーブルから印刷パラメータ値のセットを読み出すことを含み得る。
【0134】
任意選択により、パラメータマップは、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を説明するパラメータと調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値との相関に適用される費用関数を最適化することによって推測され得る。
【0135】
換言すれば、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を説明する各パラメータ又はその組合せについて、印刷パラメータ値の特定のセットを割り当てることができる。環境条件及び材料特性に関する入力データは、ルックアップテーブルの作成時に考慮され得る。ルックアップテーブルは、特定のデータポイント及び特定の印刷ヘッドについて最適化された印刷パラメータ値、すなわち眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの特定の幾何学的関係を含み得る。このルックアップテーブルに記憶された1つの同じデータポイントは、多くの異なる表面上にあり得る。
【0136】
パラメータマップを推測するために、眼鏡レンズ基材の表面を説明する、例えば入力データの一部としての既知の幾何学的特徴、例えば実際のフロントカーブ径は、表面をデータポイントのグリッド又はメッシュに変換するために使用できる。すると、これらのデータポイントを通じてループ状にし、実際の設定、すなわち印刷パラメータ値セットを事前に作成されたユニバーサルルックアップテーブルの中で探すことができる。
【0137】
推測されたパラメータマップは、完全な印刷パラメータ空間を最適化する、例えばインク液滴のドット形状又は重さを入射斜角、ノズル基板距離、印刷ヘッドの速度ベクトル、吐出周波数、及び吐出持続時間に応じて最適化するための基本的参照システムを形成し得る。
【0138】
例えば、パラメータマップは、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を説明するパラメータと調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値との相関、例えばルックアップテーブルに記憶された相関に適用される費用関数を最適化することによって推測され得る。
【0139】
費用関数の最適化は、最急降下法、遺伝的アルゴリズム、及び機械学習からなる群より選択される少なくとも1つの方法を使って行うことができる。例えば、いわゆるBroyden-Fletcher-Goldfarb-Shannoアルゴリズムを最適化に使用できる。
【0140】
さらに、機械学習プロセスを最適化に使用できる。これによって、現在はその影響が考慮されていない別の影響要因を検出し、考慮することが可能となり得る。
【0141】
別の特定の発展型において、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定でき、それによって、眼鏡レンズ基材の表面に対する印刷ヘッドの傾斜角度を印刷前及び/又は印刷中に調整する必要がなくなる。
【0142】
例えば、印刷すべき表面と印刷ヘッドの、複数のノズルを含む表面は、基本的に印刷プロセス全体を通じて平行な向きであり得る。
【0143】
これによって、本来は印刷結果を最適化するために必要な、印刷前及び/又は印刷中に眼鏡レンズ基材及び/又は印刷ヘッドを回転させる、例えば機械的に傾けるための複雑なハードウェア配置が不要となる。先行技術の傾斜機器等の複雑なハードウェア配置により実現される効果は、完全に個別化された印刷パラメータ値、すなわち印刷ノズルグループについて個別化された吐出プロファイルのみによって模倣できる。
【0144】
印刷ヘッド及び印刷表面の大きさに応じて、すなわち印刷ヘッドの大きさが印刷表面全体をカバーできるものである場合、眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの両方のポーズ、すなわち位置と向きは眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷している間にも相互に関して一定のままであり得る。換言すれば、眼鏡レンズ基材及び印刷ヘッドを相互に関して移動させることなく、1つ又は複数の調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を調整するだけで、改善されたパターンを得ることができる。これによって、さらにより簡素化されたハードウェア配置が可能となり得る。
【0145】
本発明の別の態様によれば、プロセッサ及びプロセッサに連結された記憶媒体を含むデータ処理システムが提供され、プロセッサは、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置であって、複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含むインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を、記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて特定するようになされる。
【0146】
プロセッサは、複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けし、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係に応じて個別に特定するようになされ、幾何学的関係は、眼鏡レンズ基材の表面及び印刷ヘッドの幾何学的特徴に関する入力データを使って特定される。好ましくは、少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パスで使用されることになる。
【0147】
換言すれば、データ処理システムは、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装可能方法のうちの1つを実行するように構成され、印刷パラメータ値は、前述の眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係に応じて個別に特定される。したがって、眼鏡レンズ基材の表面上にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのこのコンピュータ実装方法及びその利点を述べた前述の説明を参照されたい。
【0148】
本発明の別の態様によれば、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定させる命令を含むコンピュータプログラムが提供され、インクジェット印刷装置は複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含む。命令は、コンピュータに複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けさせて、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係に応じて個別に特定させ、幾何学的関係は、眼鏡レンズ基材の表面及び印刷ヘッドの幾何学的特徴に関する入力を、データを使って特定される。好ましくは、少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パス内で使用されることになる。
【0149】
換言すれば、コンピュータプログラムは、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法のうちの1つを実行するための命令を含み、印刷パラメータ値は、前述のように眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係に応じて個別に特定される。したがって、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのこのコンピュータ実装方法及びその利点を述べた前述の説明を参照されたい。
【0150】
本発明の別の態様によれば、コンピュータにより実行されると、コンピュータに、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定させる命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体が提供され、インクジェット印刷装置は複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含む。命令は、コンピュータに、複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けさせ、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係に応じて個別に特定させ、幾何学的関係は、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドの幾何学的特徴に関する入力データを使って特定される。好ましくは、少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パス内で使用されることになる。
【0151】
換言すれば、非一時的コンピュータ可読記憶媒体は眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法のうちの1つを実行するための命令を含み、印刷パラメータ値は、前述のように眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係に応じて個別に特定される。したがって、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法及びその利点を述べた前述の説明を参照されたい。
【0152】
本発明の別の態様によれば、インクジェット印刷方法が提供され、パターンが眼鏡レンズ基材の表面に、複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含むインクジェット印刷装置により、少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を使って印刷される。少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は、コンピュータ実装方法にしたがって特定され、印刷パラメータ値は、前述のように眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係に応じて個別に特定される。
【0153】
換言すれば、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法であって、インクジェット印刷装置は複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含み、複数の印刷ノズルを印刷ノズルグループにグループ分けするステップと、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係に応じて個別に特定するステップを含む方法により、少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を特定した後に、特定された印刷パラメータ値を使った実際の印刷を実行できる。したがって、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法であって、印刷パラメータ値は眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係に応じて個別に特定される方法及びその利点を述べた前述の説明を参照されたい。インクジェット印刷方法は例えば、コーティング又は拡散手順を使用した色付け、永久的又は一時的レンズマーキング、マスキング層、例えばコーティングの適用のために表面粗さを増大させる接着剤層スポット、アディティブマニュファクチャリング等に使用できる。
【0154】
インクジェット印刷方法の特定の発展型において、眼鏡レンズ基材の表面に対する印刷ヘッドの傾斜角度は、印刷前及び/又は印刷中に調整されない。
【0155】
例えば、印刷表面と印刷ヘッドの、印刷ノズルを含む表面は、印刷プロセス全体を通じて基本的に平行な向きであり得る。
【0156】
これによって、本来は印刷結果を最適化するのに必要な、印刷前及び/又は印刷中に眼鏡レンズ表面及び/又は印刷ヘッドを回転させる、例えば機械的に傾けるための複雑なハードウェア配置は不要となる。先行技術の傾斜機器等の複雑なハードウェア配置により実現される効果は、完全に個別化された印刷パラメータ値、すなわち印刷ノズルグループについて個別化された吐出プロファイルのみによって模倣できる。
【0157】
印刷ヘッド及び印刷表面の大きさに応じて、すなわち印刷ヘッドの大きさが印刷表面全体をカバーできるものである場合、眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの両方のポーズ、すなわち位置と向きは眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷している間も相互に関して一定のままであり得る。換言すれば、眼鏡レンズ基材及び印刷ヘッドを相互に関して移動させることなく、1つ又は複数の調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を調整するだけで、改善されたパターンを得ることができる。これによって、はるかに簡素化されたハードウェア配置が実現され得る。
【0158】
本発明の別の態様によれば、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置が提供される。インクジェット印刷装置は、複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドと、プロセッサ及びプロセッサに連結される記憶媒体を含むデータ処理システムと、を含み、プロセッサは記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて印刷パラメータ値を特定するようになされる。プロセッサは、複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けし、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係に応じて個別に特定するようになされ、幾何学的関係は、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドの幾何学的特徴に関する入力データを使って特定される。好ましくは、少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パス内で使用されることになる。
【0159】
インクジェット印刷装置は、前述のインクジェット印刷方法を実行するように構成される。したがって、パターンが眼鏡レンズ基材の表面に印刷されるインクジェット印刷方法及びその利点について述べた前述の説明を参照されたい。
【0160】
本発明の別の態様によれば、少なくとも以下の種類のデータ、すなわち(i)装置を製造するために1つ又は複数の製造機械に供給されるように構成された前述のインクジェット印刷装置の仮想表現、又は(ii)前述のようなインクジェット装置を製造するための1つ又は複数の製造機械を制御するコンピュータ可読命令を含むデータのうちの少なくとも1つの種類を含むコンピュータ可読データ信号の形態のデータセットデータセットが提供される。
【0161】
本発明のその他の特徴、特性、及び利点は、添付の図面と併せた以下の実施形態の説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【
図1】印刷プロセス中に眼鏡レンズ基材の湾曲表面上で移動する先行技術によるインクジェット印刷ヘッドを概略的に示す。
【
図2】先行技術による複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを下からの平面図で示す。
【
図3】先行技術によるインクジェット印刷ヘッドのノズルに印加される典型的な電圧プロファイルを示す。
【
図4】眼鏡レンズ基材の表面を概略的に示す(半分に切断した断面図)。
【
図5】眼鏡レンズ基材の表面を通過する印刷ヘッドを概略的に示す(上面図)。
【
図6】パラメータD=50.0mm、r=425.0mmの眼鏡レンズ基材の前面を形成する点の離散化されたx,y,z位置を示す。3つの矢印は、
図5に示される3つの単独印刷ヘッドノズルの印刷プロセス中のx,y経路を示す。
【
図7】印刷プロセス中の
図5に示される3つの印刷ノズルと眼鏡レンズ基材の表面との間の計算による高さの差を示す。
【
図8】パラメータD=50.0mm、r=425.0mmの眼鏡レンズ基材の前面の法線ベクトルn(x,y,z)と
図5に示される3つの印刷ノズルの入射インクジェット(0,0,-1)との間の入射角度α(x,y,z)を示す。
【
図9】
図5に示される3つの印刷ノズルのそれぞれの経路に沿った入射角を示す。
【
図10】印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法のある実施形態を示すフローチャートである。
【
図11】印刷ノズルグループを備える印刷ヘッドを概略的に示す。
【
図12】印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法の別の実施形態を示すフローチャートである。
【
図13】印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法のさらに別の実施形態のブロック図を示す。
【
図14】インクジェット印刷装置のある実施形態を概略的に示す。
【
図15】認識された輪郭の直径が65mmの眼鏡レンズ基材の印刷済み湾曲表面のRecon画像を示す。
【
図16】印刷済みの湾曲表面の他のRecon画像を示す。ワックスパターンに読み込まれたノズルアレイデータが重ねられている。
【
図17】ノルム値が50で印刷された表面のタイル5番の当初の顕微鏡画像を示す。
【
図18】
図17に示される画像から得られた白黒二値化顕微鏡画像を示す。
【
図19】
図17の、主要特徴とサテライトがマークされた顕微鏡画像を示す。
【
図20】相当半径と適用されるノルム値に応じた主要特徴の平均真円度を示す。
【
図21】相当半径と適用されるノルム値に応じたタイル1枚当たりのサテライトの数を示す。
【
図22】相当半径と適用されるノルム値に応じた費用関数のグラフィック表現を示す。
【
図23】相当半径と適用されるノルム値に応じた他の費用関数のグラフィック表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0163】
図1は、本発明の基本となる技術的問題を示している。あるパターンが眼鏡レンズ基材4の湾曲表面3上に、複数の印刷ノズル6を備える印刷ヘッド2を含むインクジェット印刷装置を使って印刷されるところである。印刷ノズル6はインクの液滴9を吐出し、それが眼鏡レンズ基材4の表面3上に堆積される。
【0164】
図2に示される典型的な印刷ヘッド2は、例えば880の印刷ノズル6を含み得て、これらは複数の列及び行に特定の間隔で配置される。例えば、300の印刷ノズル6がx方向に1インチごとに配置され得て、それによって得られる印刷分解能又はピクセル密度はそれぞれ300ドット/インチ(dpi)となる。
【0165】
先行技術によれば、全ての印刷ノズルが均一に制御され、すなわち、調整可能な印刷パラメータ8のための同じ印刷パラメータ値1が全ての印刷ノズル6について使用される。これによって、眼鏡レンズ基材4の表面6が均一、例えば平坦であるかぎり、均一な印刷画像が得られる。しかしながら、眼鏡レンズ基材4の表面6が均一でない、例えば
図1に示される湾曲表面6を呈する場合、印刷結果は不利な影響を受ける。これは、印刷ノズル6と眼鏡レンズ基材4の表面3との異なる距離Δ
1、Δ
2に起因する。典型的に、印刷ノズル6と眼鏡レンズ基材4の表面3との最小距離Δ
1は5mm未満である。その相対的位置依存値Δ
2は変化し、典型的には、眼鏡レンズ基材4の外側部分に向かって増大する。
【0166】
図3は、印刷プロセス中の印刷ノズル6に印加される典型的な電圧プロファイルを示す。幾つかの相、すなわち静止相、プレフィル相、吐出相、レフィル/取消相を区別できる。先行技術によれば、全ての印刷ノズルに同じ電圧プロファイルが印加される。印刷プロセスを調整し、全体的な印刷品質に影響を与えるために、電圧プロファイルを変更できる。例えば、各相について、最小及び最大電圧、勾配及び/又は持続時間を変更できる。電圧プロファイルを変更することによって調整可能な印刷パラメータ8は、吐出周波数、波形、及びノルムである。
【0167】
図4は、眼鏡レンズ基材4の湾曲表面3を半分に切断した断面図において概略的に示しており、nは表面3の何れかの点における法線ベクトル、jは吐出されたインクが印刷ノズル6から表面3へと移送される吐出ベクトル、αは法線ベクトルnと吐出ベクトルjとの間の入射角、rは球から得られた表面3の真のフロントカーブ(真の曲率半径)、dx、dy(
図4では図示せず)及びdzは使用される座標系内で離散化された差、sは表面3上の2点間の概算のアーク長さである。
【0168】
図5は、直径Dの眼鏡レンズ基材4の表面3を、上面図において、印刷プロセス中の印刷ヘッド5の3つの異なる印刷ノズル6a、6b、6cの、すなわち印刷ヘッド5と表面3が移動方向mに沿って相互に関して線形に移動する場合のx,y-方向の移動経路と共に示す。
【0169】
図6~9を参照して、
図4及び5に示される例示的表面3への印刷に関連する影響をさらに説明する。例示的な吐出ベクトルjは0,0,-1となるように選択されている。
図6は、パラメータD=50.0mm、r=425.0mmでの、眼鏡レンズ基材4の前表面3を形成する点の離散化されたx,y,z位置を示す。3つの矢印は、印刷プロセス中の
図5に示される3つの単独の印刷ノズル6a、6b、6cのx,y経路を示す。z位置は
図6において、424.150~424.900の範囲の数字により表されている。しかしながら、留意すべき点として、z位置は徐々に変化するが、これは
図6においては、図面の形式上の要求によって示すことができない。したがって、z位置の注釈付きの数値はz位置の一般的コースを代表するための例にすぎない。
【0170】
図7は、印刷プロセス中の印刷ノズル6a、6b、6cと表面3との間の対応する計算された高さプロファイル、すなわち
図6の矢印に沿ったz位置を示す。印刷ノズル6と眼鏡レンズ基材4の表面3との間の最小距離Δ
1は1mmである。
【0171】
図6及び7からわかるように、印刷ノズル6aの経路に沿った高さの差は、印刷ノズル6b、6cの場合よりはるかに大きい。これは、一貫しない印刷結果につながり、すなわち全体的な印刷品質は、表面3の中心について最適化されている場合、眼鏡レンズ基材4の縁部に向かって大きく劣化する。
【0172】
図8は、パラメータD=50.0mm、r=425.0mmの眼鏡レンズ基材4の前表面3を形成する点の離散化されたx,y位置を示す。3つの矢印は、印刷プロセス中の
図5に示される3つの単独の印刷ノズル6a、6b、6cのx,y経路を示す。異なるx,y位置での入射角αは
図8では0.400~3.600の範囲の数値により表される。しかしながら、留意すべき点として、入射角αは徐々に変化するが、これは
図8においては、図面の形式上の要求によって示すことができない。したがって、入射角αの注釈付きの数値は入射角αの一般的コースを代表するための例にすぎない。
図9は、印刷ノズル6a、6b、6cのx位置に依存する入射角α、すなわち
図8の矢印に沿った入射角αを示す。入射角αは0°~3.5°超の間で変化し、偏差は印刷ノズル6b、6cと比較して印刷ノズル6aについてはるかに大きい。一般に、入射角αは眼鏡レンズ基材4の縁部に向かって増大する。これによって、
図6及び7に関して説明した高さの差によりすでに生じている一貫しない印刷結果が増幅され、すなわち全体的な印刷品質は、表面3の中心について最適化されている場合、レンズ基材4の縁部に向かってさらにより大きく劣化する。
【0173】
印刷ノズル6と眼鏡レンズ基材4の表面3との間の距離Δが増大し、入射角αが増大すると、本発明の発明者には、散乱した印刷結果、すなわち多数の小さいドットが生じる明瞭な傾向が見られた。
【0174】
前述のような印刷品質に悪影響を与える効果を低減させるために、眼鏡レンズ基材4の表面3にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置2の印刷パラメータ値1を特定するためのコンピュータ実装方法100が提案される。インクジェット印刷装置2は、複数の印刷ノズル6を備える印刷ヘッド5を含む。
図10に示されるフローチャートは、このような方法100の第一の実施形態に関する。
【0175】
第一のステップS1で、眼鏡レンズ基材4の表面3及びインクジェット印刷装置2の印刷ヘッド5の幾何学的特徴に関する入力データ8が取得される。このデータは、眼鏡レンズ基材4の表面3の位相幾何学的形状に関するデータ、例えばその直径D、その真のフロントカーブr、及び印刷ヘッド5に関する幾何学データ、例えばその向き、印刷ノズル6の数、印刷ノズル6の間隔等を含み得る。例えば、直径Dは50mmであり、真の曲率半径rは425.0mmである。印刷ヘッド5は880の印刷ノズル6を含み得て、そのノズル間隔はx方向に1インチ当たり300である。
【0176】
ステップS2で、複数の印刷ノズル6は5つの印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10eにグループ分けされる。印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10eの正確な数は、眼鏡レンズ基材4の幾何学的特徴及び/又は必要な印刷品質に依存して変化し得る。5つの印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10のうちの少なくとも2つがシングル印刷パス内で使用されることになる。任意選択により、印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10の全てがシングル印刷パス内で使用されることになる。
【0177】
図11は印刷ヘッド5を示し、これは、印刷ヘッド5の移動方向mに関して対称に配置される5つの印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10eにグループ分けされている。縁に向かって、最も少ない数の印刷ノズル6を含む2つの印刷ノズルグループ10a、10eが配置される。より中央の近くに、より多くの印刷ノズル6を含む2つの印刷ノズルグループ10b、10dが配置される。中央の印刷ノズルグループ10cは、最も多い数の印刷ノズル6を含む。印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10eのこの数及びそれらの配置は、
図7及び9に示される高さの差及び入射角αの過程から得られ、これらは淵に向かって急峻であり、中央において平坦である。
【0178】
再び
図10を参照すると、ステップS3で、調整可能な印刷パラメータ7のための印刷パラメータ値1は、各印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10eに関して個別に特定される。例えば、1つ又は複数の印刷パラメータ7の、吐出温度、吐出持続時間、吐出周波数、ノルム値、波形パラメータ、及び調整可能なインク特性の群から選択される印刷パラメータ値1は、各印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10eについて特定できる。
【0179】
その後、各印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10eについて特定された印刷パラメータ値1を使って、眼鏡レンズ基材4の表面3上にパターンを印刷することができる。任意選択により、眼鏡レンズ基材4の表面3に対する印刷ヘッド5の傾斜角度は、印刷前及び/又は印刷中に調整されない。
【0180】
図12は、眼鏡レンズ基材4の表面3にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置2の印刷パラメータ値1を特定するためのコンピュータ実装方法100の別の実施形態のフローチャートを示す。ステップS1及びS2に関しては、
図10の説明を参照されたい。
【0181】
ステップS3、すなわち各印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10eについての調整可能な印刷パラメータ7、7a、7b、7c、7d、7e、7fの印刷パラメータ値1を個別に特定するステップは、サブステップS4~S6を含む。
【0182】
ステップS4で、ルックアップテーブル13と費用関数が提供される。例えば、ルックアップテーブル13は、記憶媒体から読み出され得る。ルックアップテーブル13には、眼鏡レンズ基材4の表面3と印刷ヘッド5との間の幾何学的関係を説明するパラメータ11、11a、11b、11cと調整可能な印刷パラメータ7、7a、7b、7c、7d、7e、7fとの相関が含まれる。費用関数は、万能評価費用関数でも、特定の使用のケースに専用の、すなわち特定の使用のケースに関係する品質パラメータを考慮した費用関数でもあり得る。
【0183】
ステップS5で、費用関数はルックアップテーブル13に適用され、入力データ8、8a、8b、8c、8dに対応する適当な印刷パラメータ値1を検索するために最適化される。換言すれば、最小の費用総額につながる印刷パラメータ値1、例えばそこに印刷されることになる眼鏡レンズ基材4の表面3の全体を考慮した、品質パラメータとしての生じ得る最小数のサテライトがルックアップテーブル13から検索される。費用関数の最適化は、最急降下法、遺伝的アルゴリズム、及び機械学習からなる群より選択される少なくとも1つの方法を使って行うことができる。
【0184】
ステップS6で、パラメータマップ12が最適化結果を考慮して推測され、これは印刷パラメータ値1の眼鏡レンズ基材4の表面3上の特定の点群への割り当てを含む。換言すれば、印刷パラメータ値1は、各印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10eについて個別に特定され、パラメータマップ12として保存される。
【0185】
その後、各印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10eについて特定された印刷パラメータ値1、すなわちパラメータマップ12を使ってパターンを眼鏡レンズ基材4の表面3に印刷することができる。1回の印刷プロセス中に印刷パラメータ値1を修正することができない、例えばグレイレベルを変更できない場合、実際の印刷パラメータ値1とその分布を、例えば0から半径Rの4つの部分に離散化することができ、1つの画像の代わりに幾つかのサブイメージ、異なる印刷パラメータ値で例えば4つのサブイメージ、例えば相互にフィットする4つの「リング」が印刷される。
【0186】
図13に示されるブロック図は、眼鏡レンズ基材4の表面3にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置2の印刷パラメータ値1を特定するためのコンピュータ実装方法100のまた別の実施形態を示す。
【0187】
方法100は、印刷される眼鏡レンズ基材4の表面3の各表面点が、最適化された印刷パラメータ7a、7b、7c、7d、7e、7fを計算し、適用することによって個別に考慮されるべきであるとの発見に基づく。ステップS1において得られる必要な入力データ8a、8b、8c、8dは、眼鏡レンズ基材4の表面3の幾何学的特徴、すなわちレンズ形状並びに、インクジェット印刷装置2の一部としての印刷ヘッド5の幾何学的特徴、及び任意選択により、環境条件並びにインク9及び/又は眼鏡レンズ基材4の材料特性に関する。
【0188】
この入力データ8a、8b、8c、8dから、眼鏡レンズ基材4の表面3と印刷ヘッド5との幾何学的関係を説明するパラメータ11a、11b、11cのためのパラメータ値が推測される。これらは、印刷プロセス中の「インクジェット印刷装置-眼鏡レンズ基材」のシステムを説明する。好ましいパラメータ11a、11b、11cは、例えば入射角α、変位ベクトル、速度ベクトル、距離Δ、及びアーク長さsを含む。
【0189】
ステップS3で、印刷パラメータ7a、7b、7c、7d、7e、7fの印刷パラメータ値1は、それ以前にステップS2で作成された各印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10eについて計算される。この実施形態において考慮される印刷パラメータ7a、7b、7c、7d、7e、7fは、吐出温度、吐出持続時間、吐出周期数、ノルム値、波形パラメータ、及び調整可能なインク特性である。その他の設定及び/又は特性も考慮され得る。
【0190】
印刷パラメータ値1を検索するために、ステップS4でルックアップテーブル13が提供され、これは事前に作成され、眼鏡レンズ基材4の表面3と印刷ヘッドとの幾何学的関係を説明するパラメータ11a、11b、11cと調整可能な印刷パラメータ7a、7b、7c、7d、7e、7fの印刷パラメータ値1の相関を含む。印刷パラメータ7a、7b、7c、7d、7e、7fは、関数パラメータと理解することができる。眼鏡レンズ基材4の表面3と印刷ヘッド5との幾何学的関係を説明する各パラメータ11a、11b、11c又はそれらの組合せについて、印刷パラメータ7a、7b、7c、7d、7e、7fの特定のセットが割り当てられる。環境条件及び材料特性に関する入力データ8c、8dは、ルックアップテーブル13を作成する際に考慮に入れられ得る。
【0191】
さらに、ステップS5で費用関数が提供され、これはルックアップテーブル13に適用され、最適化される。最後に、ステップS6で、パラメータマップ12は最適化された費用関数から検索される。眼鏡レンズ基材4の表面3上の特定の点群に割り当てられた印刷パラメータ7a、7b、7c、7d、7e、7fは、パラメータマップ12に保存される。
【0192】
図14は、ドロップ・オン・デマンド技術を用いたインクジェット印刷装置2のある実施形態を示す。インクジェット印刷装置2は、複数の印刷ノズル6を備える印刷ヘッド5を含む。さらに、インクジェット印刷装置2は、プロセッサ20と、プロセッサ20に連結される記憶媒体21を含むデータ処理システム200を含み、これは
図14の両方向矢印により表される。プロセッサ20は、複数の印刷ノズル6を少なくとも2つの印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10eにグループ分けし、各印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10eの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータ7、7a、7b、7c、7d、7e、7fの印刷パラメータ値1を記憶媒体21に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて個別に特定するようになされる。記憶媒体21はまた、ルックアップテーブル13及び/又は検索されたパラメータマップ12を保存するためにも使用され得る。換言すれば、データ処理システム200は、本明細書に記載の印刷パラメータ値1を特定するためのコンピュータ実装方法のうちの1つを実行し得る。特定された印刷パラメータ値1は、印刷プロセスを実行するために印刷ヘッド5及び印刷ノズル6に伝送される。
【0193】
図15~23を参照して、以下に、ルックアップテーブル13の作成とパラメータマップ12の検索をより詳しく説明する。
【0194】
この実施形態の中では、ホットメルト印刷技術がワックス液滴を眼鏡レンズ基材4の凸状湾曲表面3上に異なるパターンで印刷するために使用される。表面3及び適用されるワックスパターンは、工業用顕微鏡を使ってその写真が撮影される。印刷されたワックスパターンの中の特定のタイルについて得られた画像は、塗布された液滴の真円度及び形成されたサテライト(小さい、広がった、望ましくない液滴)の数の点で解析される。これらの特性は、定量化でき、印刷品質パラメータの例として使用される。
【0195】
Zeiss Reconシステムを用いて、眼鏡レンズ基材4の表面3全体の概観画像が得られ、適用されるワックスパターンの相対的なタイル位置がこれらの画像から再構成される。顕微鏡及びReconシステムから収集したテータを組み合わせて、計算された品質パラメータ値は表面3上の基本のタイルの位置に関係付けられる。この情報は、眼鏡レンズ基材4の表面3に印刷される印刷パラメータ7、7a、7b、7c、7d、7e、7fのための適当な値に関するルックアップテーブル13を導き出すために使用される。
【0196】
実験ステップは、インクジェット印刷装置2のノルム値の異なる設定を使って眼鏡レンズ基材4の表面3にホットメルト印刷を行うこと(予備吐出中、移動せず)と、印刷された表面3のRecon画像を撮影することと、Recon画像を解析して、タイルの位置特定を行うことと、適用されたパターンの異なるタイルの顕微鏡画像を撮影することと、品質パラメータを定義して顕微鏡画像を解析することと、品質パラメータを表面3にマッピングすることと、オプティマイザを作動させて、レンズごとのパラメータマップ12を作成することと、を含む。
【0197】
眼鏡レンズ基材の表面への印刷
印刷は、Xerox M1印刷ヘッドを備えるTecoプリンタを使って行われる。Xerox M1印刷ヘッドシリーズの技術データシートから、個々の印刷ノズル6、6a、6b、6cの絶対及び相対位置がわかる。この情報に基づいて、個々のノズルの(x,y)アレイが導き出され、それを使って画像解析中に1つのタイルが識別される。標準的な印刷プロセスにおいて、どの印刷ノズル6、6a、6b、6cが表面3のどの部分を通過するかがわかり、それにしたがってノズル発射シーケンスが計算される。
【0198】
まず、位置決めシステムを使って、印刷されるべき眼鏡レンズ基材4を印刷ヘッド5の下に位置付ける。印刷ヘッド5の「予備吐出」機能を使用し、ワックスを眼鏡レンズ基材4の表面3に堆積させる。「予備吐出」中、眼鏡レンズ基材4は動かない。表面3上に形成されたパターンは、Xerox M1印刷ヘッドのノズルプレートにより画定されるグリッドに対応する。実験中、5回のショット(波形の繰り返し-10Hz、500ms)が、同じ幾何学形状及び印刷ヘッド5までの最小距離を有する複数の6つの眼鏡レンズ基材4の各々に対し発射される。これらの眼鏡レンズ基材4同士で、印刷パラメータ7、7a、7b、7c、7d、7e、7fのノルム値は、20から60へと10刻みで増やされる。
【0199】
Recon画像の取得と解析
眼鏡レンズ基材4の表面3上のグリッドタイルの相対及び絶対位置は、Recon画像から再構成できる。Zeiss Reconシステムは、例えばレーザ彫刻及び同様の構造の検出のために眼鏡レンズの高品質な画像を取得するために使用されるシステムである。この場合、Reconシステムは、1つのワックス液滴の(x,y)位置を検出するために使用される。ソフトウェアについては、Recon画像の解析にOpenCVとPythonが使用された。
【0200】
図15において、眼鏡レンズ基材4の外輪郭とその中心(画像のピクセル座標)が示されている。中心は、レンズ輪郭を形成する点までの二乗距離の合計を最小化することによって特定された。レンズ中心位置がわかると、そこから眼鏡レンズ基材4の全ての輪郭点までの平均距離が計算される。これらの数と眼鏡レンズ基材4の既知の物理的直径(65mm)から、適正な計数逓倍率(ピクセル-マイクロメートル)を計算できる。
【0201】
次のステップで、堆積されたワックス液滴はOpenCVにより認識され、それらの位置はマーカ(
図15の黒いドット)と一部が重複する。これらのマーカの周囲に凸閉包が構成され、この点のうちの3つ(大きい黒いドットとしてマークされる)を使って単位ベクトルが得られる。これらのベクトルは、画像と印刷ヘッド5の読み込まれたノズル位置の座標系を整列させるための回転マトリクスの構成に必要である。Recon画像からの表面3の中心位置は、読み込まれたノズルアレイの(x,y)並進にも使用される。
【0202】
図16において、印刷されたワックスドットは印刷ノズル6、6a、6b、6c(黒いドット)の「理論的」位置と重ねられ、これらは観察されたドットとよく整合する。顕微鏡解析のために使用されるタイルの中心点(「実際の」液滴の座標)は×印として示されている。
【0203】
顕微鏡画像の取得と解析
顕微鏡画像をZeiss Smart Zoom 5の顕微鏡を使って得た。この顕微鏡は、眼鏡レンズ基材4の表面3上のタイル位置に応じて傾けられて、焦点ずれ領域が最小にされ、コントラストが最大にされた。顕微鏡画像取得に使用される設定は以下のとおり:顕微鏡のタイプ - 画像、対物レンズ - 5、倍率 - 101×、解像度 - 2.2040μm px-1、露出時間0.2819ms、照明 - 右上照明。
【0204】
Recon画像について、OpenCVとPythonが顕微鏡画像の解析に使用された。ノルム値50で印刷された表面3のタイル番号5が
図17に示されている。このタイルの中心点が
図16のRecon画像にマークされている。左側の画像の中心から上に向かって、これは8つの黒い×印のうちの5番目である。
【0205】
画像解析の第一のステップは、生画像のグレイスケールへの変換である。第二に、画像にガウスぼかしが適用されて、輪郭認識に影響を与えるピクセルノイズが排除される(
図18)。画像の必要な「前処理」は、使用される解析技術と使用される実験設定に依存する。例えば、大きいドット(「主要特徴」)の認識は、カーネルサイズ15のガウスぼかしを使って最も良好に行われた。サイズの小さいサテライトの検出には、カーネルサイズ5のガウスぼかしが使用された。
【0206】
ガウスぼかしが適用されたグレイスケール画像から、白黒画像が適応的二値化関数を使って取得できる。ここで使用されるパラメータは、それぞれ主要特徴の検出の(111-6)、サテライト検出の(141-6)である。主要特徴の検出のための二値化白黒画像が
図19に示されている。輪郭認識が白黒画像について行われ、主要特徴(A<300px
2)又はサテライト(20px
2<A<300px
2)として分類されるブロブを検出した。第一の導出された品質パラメータは1タイル当たりのサテライト数である(多いほど悪い)。第二の品質パラメータは、検出された主要特徴の真円度である(真円は1と等しく、式(I)参照)。
C=4
*π
*A/P
2 式(I)
式中、Cは真円度、A=ピクセル二乗としてのブロブ面積、P=ピクセルを単位とするブロブである。
【0207】
図19では見つかった主要特徴が破線の長方形でマークされ、見つかったサテライトは黒いドットでマークされる。
【0208】
パラメータのマッピングと最適化
解析された顕微鏡画像の各々について、得られた品質パラメータ(平均的(mean)特徴の真円度とサテライトの数)がRecon画像から得られた対応するタイルの中心点に帰属させられる。便宜上、計算された(x,y)点は直径65mmの眼鏡レンズ基材4の相当半径(
図20~22のy軸参照)として表現されている。データベース又はルックアップテーブル13の体系的構築のために、レンズ特定ではない特性として表面-ノズル距離が使用されることが好ましい。
【0209】
図20及び21の黒い×印は1つの例示的な試験設定を表す。これらの支持点間の線形補間のために、より細かいメッシュが使用される。視覚的に、ノルム値40は適用される条件にとって好適な選択のように見える。形成されるサテライトの数についても、ノルム値40は良好に機能するように見える。最後に、目的は、印刷プロセスを、それをもとに最適化するため適正な品質パラメータに基づく費用関数を定義することである。
【0210】
一例として、式(II)に示される関数が
図22の作成に、すなわち異なる相当半径及びノルム値に応じた費用を計算するために使用され、形成されたサテライト数と真円度が品質パラメータとして考慮される。
費用=gridz1/(gridz0)
3 式(II)
【0211】
可変値gridz1は1タイル当たりのサテライト数であり、可変値gridz0は検出された液滴の平均真円度である。この費用関数を通じて0から1(眼鏡レンズ基材4の相当半径)を通過しなければならないため、「最安」ルートは、選択されたオプティマイザを使って見つけ、必要に応じて別の付帯条件を含めることができる。例えば、費用関数は、具体的な用途に応じてサテライト又は真円度に焦点を合わせることができる。この特定の例の「最安ルート」は黒い矢印でマークされ、ノルム値20に対応する。異なる費用関数を定義することにより、異なる最安ルートが得られ、これらは必ずしも線形でなくてもよい。
【0212】
図22の黒い矢印は、パラメータマップ12のグラフィック表現であり、これは特定された印刷パラメータ値1、すなわちノルム値20を含む。他のケースでは、特定された最適ノルム値は相当半径と共に変化し得て、異なる印刷ノズルグループ10a、10b、10c、10d、10eについて異なノルム値が特定される。
【0213】
図23は
図22と同様のグラフィック表現を示し、定義の異なる費用関数が使用される(式(III))
費用=費用=gridz1/(gridz0)
2 式(III)
【0214】
式(III)では式(II)と比較してサテライトの数はそれほど明確にされない、すなわち(grindz1)3の代わりに(gridz1)2であるため、両方の品質パラメータの影響はよりバランスがとれたものとなる。
【0215】
本発明の好ましい特徴は以下のとおりである:
1.眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定するためのコンピュータ実装方法において、インクジェット印刷装置は、複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含み、
- 複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けするステップと、
- 各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定するステップと、
を含む。
2.少なくとも1つの調整パラメータは、吐出温度、吐出持続時間、吐出周波数、ノルム値、波形パラメータ、及び調整可能なインク特性からなる群より選択される、1項の方法。
3.各印刷ノズルグループは単独の印刷ノズルを含む、1項又は2項の方法。
4.
- 眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドの幾何学的特徴に関する入力データを取得するステップ
を含み、
印刷パラメータ値は、入力データに応じて個別に特定される、
1~3項の何れか1項の方法。
5.入力データは、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を特定するために使用され、幾何学的関係は、変位ベクトル、速度ベクトル、入射角α、距離Δ、及びアーク長さsからなる群より選択される少なくとも1つのパラメータにより説明される、4項の方法。
6.入力データは、環境条件、調整不能なインク特性、及び/又は眼鏡レンズ基材の材料特性に関するデータを含む、4項又は5項の方法。
7.少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定する方法ステップは、眼鏡レンズ基材の表面上の特定の点群への印刷パラメータ値の割り当てを含むパラメータマップを推測するステップを含む、1~6項の何れか1項の方法。
8.パラメータマップは、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を説明するパラメータと調整可能な印刷パラメータとの相関に適用される費用関数を最適化することにより推測される、少なくとも5項と組み合わせられる7項の方法。
9.最適化では、最急降下法、遺伝的アルゴリズム、及び機械学習の群より選択される少なくとも1つの方法を使用する、8項の方法。
10.費用関数は品質パラメータに応じた費用を定義する、8項又は9項の方法。
11.品質パラメータは、形成されたサテライトの数及び/又は印刷された平均的特徴の真円度を含む、10項の方法。
12.パラメータマップはルックアップテーブルを使って推測される、7~11項の何れか1項の方法。
13.眼鏡レンズ基材の表面は湾曲表面である、1~12項の何れか1項の方法。
14.少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パス内で使用されることになる、1~13項の何れか1項の方法。
15.各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は個別に特定され、それによって眼鏡レンズ基材の表面に対する印刷ヘッドの傾斜角度は印刷前及び/又は印刷中に調整されなくてよい、1~14項の何れか1項の方法。
16.各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は個別に特定され、それによって眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの両方のポーズは、眼鏡レンズ基材の表面上へのパターンの印刷中に相互に関して一定のままである、1~15項の何れか1項の方法。
17.プロセッサとプロセッサに連結された記憶媒体とを含むデータ処理システムにおいて、プロセッサは眼鏡レンズ基材の湾曲表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を、記憶媒体上に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて特定するようになされ、インクジェット印刷装置は複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含み、プロセッサは、複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けし、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定するようになされるデータ処理システム。
18.少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータは、吐出温度、吐出持続時間、吐出周波数、ノルム値、波形パラメータ、及び調整可能なインク特性の群より選択される、17項のデータ処理システム。
19.各印刷ノズルグループは単独の印刷ノズルを含む、17項又は18項のデータ処理システム。
20.プロセッサは、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドの幾何学的特徴に関する入力データを取得するようになされ、プロセッサは、印刷パラメータ値を入力データに応じて個別に特定するようになされる、17~19項の何れか1項のデータ処理システム。
21.プロセッサは、入力データを使って、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を特定するようになされ、幾何学的関係は、変位ベクトル、速度ベクトル、入射角α、距離Δ、及びアーク長さsからなる群より選択される少なくとも1つのパラメータにより説明される、20項のデータ処理システム。
22.入力データは、環境条件、調整不能なインク特性、及び/又は眼鏡レンズ基材の材料特性に関するデータを含む、20項又は21項のデータ処理システム。
23.プロセッサは、眼鏡レンズ基材の表面上の特定の点群への印刷パラメータ値の割り当てを含むパラメータマップを推測するようになされる、17~22項の何れか1項のデータ処理システム。
24.プロセッサは、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を説明するパラメータと調整可能な印刷パラメータとの相関に適用される費用関数を最適化することによりパラメータマップを推測するようになされる、少なくとも21項と組み合わせられる23項のデータ処理システム。
25.最適化では、最急降下法、遺伝的アルゴリズム、及び機械学習の群より選択される少なくとも1つの方法を使用する、24項のデータ処理システム。
26.費用関数は品質パラメータに応じた費用を定義する、24項又は25項のデータ処理システム。
27.品質パラメータは、形成されたサテライトの数及び/又は印刷された平均的特徴の真円度を含む、26項のデータ処理システム。
28.パラメータマップはルックアップテーブルを使って推測される、23~27項の何れか1項のデータ処理システム。
29.眼鏡レンズ基材の表面は湾曲表面である、17~28項の何れか1項のデータ処理システム。
30.少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パス内で使用されることになる、17~29項の何れか1項のデータ処理システム。
31.各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は個別に特定され、それによって眼鏡レンズ基材の表面に対する印刷ヘッドの傾斜角度は印刷前及び/又は印刷中に調整されなくてよい、17~30項の何れか1項のデータ処理システム。
32.各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は個別に特定され、それによって眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの両方のポーズは、眼鏡レンズ基材の表面上へのパターンの印刷中に相互に関して一定のままである、17~31項の何れか1項のデータ処理システム。
33.コンピュータプログラムにおいて、プログラムがコンピュータにより実行されると、コンピュータに、眼鏡レンズ基材の湾曲表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定させる命令を含み、インクジェット印刷装置は複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含み、命令は、コンピュータに、複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けさせ、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定させるコンピュータプログラム。
34.少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータは、吐出温度、吐出持続時間、吐出周波数、ノルム値、波形パラメータ、及び調整可能なインク特性の群より選択される、33項のコンピュータプログラム。
35.各印刷ノズルグループは単独の印刷ノズルを含む、33項又は34項のコンピュータプログラム。
36.命令は、コンピュータに、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドの幾何学的特徴に関する入力データを取得させ、コンピュータは、印刷パラメータ値を入力データに応じて個別に特定させられる、33~35項の何れか1項のコンピュータプログラム。
37.命令は、コンピュータに、入力データを使って眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を特定させ、幾何学的関係は、変位ベクトル、速度ベクトル、入射角α、距離Δ、及びアーク長さsからなる群より選択される少なくとも1つのパラメータにより説明される、36項のコンピュータプログラム。
38.入力データは、環境条件、調整不能なインク特性、及び/又は眼鏡レンズ基材の材料特性に関するデータを含む、36項又は37項のコンピュータプログラム。
39.命令は、コンピュータに、印刷パラメータ値の眼鏡レンズ基材の表面上の特定の点群への割り当てを含むパラメータマップを推測させる、33~38項の何れか1項のコンピュータプログラム。
40.命令は、コンピュータに、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を説明するパラメータの調整可能な印刷パラメータとの相関に適用される費用関数を最適化することによってパラメータマップを推測させる、少なくとも37項と組み合わせられる39項のコンピュータプログラム。
41.最適化では、最急降下法、遺伝的アルゴリズム、及び機械学習の群より選択される少なくとも1つの方法を使用する、40項のコンピュータプログラム。
42.費用関数は品質パラメータに応じた費用を定義する、40項又は41項のコンピュータプログラム。
43.品質パラメータは、形成されたサテライトの数及び/又は印刷された平均的特徴の真円度を含む、42項のコンピュータプログラム。
44.パラメータマップはルックアップテーブルを使って推測される、39~43項の何れか1項のコンピュータプログラム。
45.眼鏡レンズ基材の表面は湾曲表面である、33~44項の何れか1項のコンピュータプログラム。
46.少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パス内で使用されることになる、33~44項の何れか1項のデータ処理システム。
47.各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は個別に特定され、それによって眼鏡レンズ基材の表面に対する印刷ヘッドの傾斜角度は印刷前及び/又は印刷中に調整されなくてよい、33~46項の何れか1項のコンピュータプログラム。
48.各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は個別に特定され、それによって眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの両方のポーズは、眼鏡レンズ基材の表面上へのパターンの印刷中に相互に関して一定のままである、33~47項の何れか1項のコンピュータプログラム。
49.非一時的コンピュータ可読記憶媒体において、コンピュータにより実行されると、コンピュータに、眼鏡レンズ基材の湾曲表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置の印刷パラメータ値を特定させる命令を含み、インクジェット印刷装置は複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含み、命令は、コンピュータに、複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けさせ、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定させる非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
50.少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータは、吐出温度、吐出持続時間、吐出周波数、ノルム値、波形パラメータ、及び調整可能なインク特性の群より選択される、49項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
51.各印刷ノズルグループは単独の印刷ノズルを含む、49項又は50項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
52.命令は、コンピュータに、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドの幾何学的特徴に関する入力データを取得させ、コンピュータは、印刷パラメータ値を入力データに応じて個別に特定させられる、49~51項の何れか1項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
53.命令は、コンピュータに、入力データを使って眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を特定させ、幾何学的関係は、変位ベクトル、速度ベクトル、入射角α、距離Δ、及びアーク長さsからなる群より選択される少なくとも1つのパラメータにより説明される、52項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
54.入力データは、環境条件、調整不能なインク特性、及び/又は眼鏡レンズ基材の材料特性に関するデータを含む、52項又は53項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
55.命令は、コンピュータに、印刷パラメータ値の眼鏡レンズ基材の表面上の特定の点群への割り当てを含むパラメータマップを推測させる、49~54項の何れか1項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
56.命令は、コンピュータに、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を説明するパラメータの調整可能な印刷パラメータとの相関に適用される費用関数を最適化することによってパラメータマップを推測させる、少なくとも53項と組み合わされる55項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
57.最適化では、最急降下法、遺伝的アルゴリズム、及び機械学習の群より選択される少なくとも1つの方法を使用する、56項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
58.費用関数は品質パラメータに応じた費用を定義する、56項又は57項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
59.品質パラメータは、形成されたサテライトの数及び/又は印刷された平均的特徴の真円度を含む、58項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
60.パラメータマップはルックアップテーブルを使って推測される、55~59項の何れか1項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
61.眼鏡レンズ基材の表面は湾曲表面である、49~60項の何れか1項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
62.少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パス内で使用されることになる、49~61項の何れか1項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
63.各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は個別に特定され、それによって眼鏡レンズ基材の表面に対する印刷ヘッドの傾斜角度は印刷前及び/又は印刷中に調整されなくてよい、49~62項の何れか1項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
64.各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は個別に特定され、それによって眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの両方のポーズは、眼鏡レンズ基材の表面上へのパターンの印刷中に相互に関して一定のままである、49~63項の何れか1項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
65.インクジェット印刷方法において、パターンは眼鏡レンズ基材の湾曲表面に、複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含むインクジェット印刷装置で、少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を使って印刷され、少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は1~16項の何れか1項のコンピュータ実装方法にしたがって特定される方法。
66.パターンは、永久的レンズマーキング、一時的レンズマーキング、マスキング層の適用、接着剤層スポットの適用、アディティブマニュファクチャリング、及び色付けからなる群より選択される少なくとも1つのプロセスのために印刷される65項の方法。
67.眼鏡レンズ基材の表面に対する印刷ヘッドの傾斜角度は、印刷前及び/又は印刷中に調整されない、65項又は66項の方法。
68.眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの両方のポーズは、眼鏡レンズ基材の表面上へのパターンの印刷中に相互に関して一定のままである、65~67項の何れか1項の方法。
69.眼鏡レンズ基材の湾曲表面にパターンを印刷するためのインクジェット印刷装置において、
- 複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドと、
- プロセッサと、プロセッサに連結された記憶媒体を含むデータ処理システムであって、プロセッサは、印刷パラメータ値を記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムに基づいて特定するようになされたデータ処理システムと、
を含み、
プロセッサは、複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けし、各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定するようになされる、インクジェット印刷装置。
70.少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータは、吐出温度、吐出持続時間、吐出周波数、ノルム値、波形パラメータ、及び調整可能なインク特性の群より選択される、69項のインクジェット印刷装置。
71.各印刷ノズルグループは単独の印刷ノズルを含む、69項又は70項のインクジェット印刷装置。
72.プロセッサは、眼鏡レンズ基材の表面及び印刷ヘッドの幾何学的特徴に関する入力データを取得するようになされ、プロセッサは、印刷パラメータ値を入力データに応じて個別に特定するようになされる、69~71項の何れか1項のインクジェット印刷装置。
73.プロセッサは、入力データを使って、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を特定するようになされ、幾何学的関係は、変位ベクトル、速度ベクトル、入射角α、距離Δ、及びアーク長さsからなる群より選択される少なくとも1つのパラメータにより説明される、72項のインクジェット印刷装置。
74.入力データは、環境条件、調整不能なインク特性、及び/又は眼鏡レンズ基材の材料特性に関するデータを含む、72項又は73項のインクジェット印刷装置。
75.プロセッサは、眼鏡レンズ基材の表面上の特定の点群への印刷パラメータ値の割り当てを含むパラメータマップを推測するようになされる、69~74項の何れか1項のインクジェット印刷装置。
76.プロセッサは、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を説明するパラメータの調整可能な印刷パラメータとの相関に適用される費用関数を最適化することよってパラメータマップを推測するようになされる、少なくとも59項と組み合わせられる75項のインクジェット印刷装置。
77.最適化では、最急降下法、遺伝的アルゴリズム、及び機械学習の群より選択される少なくとも1つの方法を使用する、76項のインクジェット印刷装置。
78.費用関数は品質パラメータに応じた費用を定義する、76項又は77項のインクジェット印刷装置。
79.品質パラメータは、形成されたサテライトの数及び/又は印刷された平均的特徴の真円度を含む、78項のインクジェット印刷装置。
80.パラメータマップはルックアップテーブルを使って推測される、75~79項の何れか1項のインクジェット印刷装置。
81.眼鏡レンズ基材の表面は湾曲表面である、69~80項の何れか1項のインクジェット印刷装置。
82.少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パス内で使用されることになる、69~81項の何れか1項のインクジェット印刷装置。
83.各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は個別に特定され、それによって眼鏡レンズ基材の表面に対する印刷ヘッドの傾斜角度は印刷前及び/又は印刷中に調整されなくてよい、69~82項の何れか1項のインクジェット印刷装置。
84.各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は個別に特定され、それによって眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの両方のポーズは、眼鏡レンズ基材の表面上へのパターンの印刷中に相互に関して一定のままである、69~83項の何れか1項のインクジェット印刷装置。
85.眼鏡レンズ基材の湾曲表面に印刷されるパターンは、65~68項の何れか1項の方法により取得可能である眼鏡レンズ基材。
86.コンピュータ可読データキャリア信号の形態のデータセットにおいて、データセットは、以下の種類のデータ、すなわち(i)眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するためにインクジェット印刷装置に供給されるように構成される、複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含むインクジェット印刷装置の少なくとも2つの印刷ノズルグループに個別の少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値、又は(ii)複数の印刷ノズルを備える印刷ヘッドを含むインクジェット印刷装置の少なくとも2つの印刷ノズルグループに、少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの個々の印刷パラメータ値を適用することによって、眼鏡レンズ基材の表面にパターンを印刷するようにインクジェット印刷装置を制御するためのコンピュータ可読命令を含むデータのうちの少なくとも1つの種類を含むデータセット。
87.少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータは、吐出温度、吐出持続時間、吐出周波数、ノルム値、波形パラメータ、及び調整可能なインク特性の群から選択される、86項のデータセット。
88.各印刷ノズルグループは単独の印刷ノズルを含む、86項又は87項のデータ。
89.命令は、コンピュータに、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドの幾何学的特徴に関する入力データを取得させ、コンピュータは、印刷パラメータ値を入力データに応じて個別に特定させられる、86~88項の何れか1項のデータセット。
90.命令は、コンピュータに、入力データを使って眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を特定させ、幾何学的関係は、変位ベクトル、速度ベクトル、入射角α、距離Δ、及びアーク長さsからなる群より選択される少なくとも1つのパラメータにより説明される、89項のデータセット。
91.入力データは、環境条件、調整不能なインク特性、及び/又は眼鏡レンズ基材の材料特性に関するデータを含む、89項又は90項のデータセット。
92.命令は、コンピュータに、印刷パラメータ値の眼鏡レンズ基材の表面上の特定の点群への割り当てを含むパラメータマップを推測させる、86~91項の何れか1項のデータセット。
93.命令は、コンピュータに、眼鏡レンズ基材の表面と印刷ヘッドとの幾何学的関係を説明するパラメータの調整可能な印刷パラメータとの相関に適用される費用関数を最適化することによってパラメータマップを推測させる、少なくとも84項と組み合わせられる92項のデータセット。
94.最適化では、最急降下法、遺伝的アルゴリズム、及び機械学習の群より選択される少なくとも1つの方法を使用する、93項のデータセット。
95.費用関数は品質パラメータに応じた費用を定義する、93項又は94項のデータセット。
96.品質パラメータは、形成されたサテライトの数及び/又は印刷された平均的特徴の真円度を含む、95項のデータセット。
97.パラメータマップはルックアップテーブルを使って推測される、92~96項の何れか1項のデータセット。
98.眼鏡レンズ基材の表面は湾曲表面である、86~97項の何れか1項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
99.少なくとも2つの印刷ノズルグループがシングル印刷パス内で使用されることになる、86~98項の何れか1項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
100.各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は個別に特定され、それによって眼鏡レンズ基材の表面に対する印刷ヘッドの傾斜角度は印刷前及び/又は印刷中に調整されなくてよい、86~99項の何れか1項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
101.各印刷ノズルグループの少なくとも1つの調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値は個別に特定され、それによって眼鏡レンズ基材と印刷ヘッドの両方のポーズは、眼鏡レンズ基材の表面上へのパターンの印刷中に相互に関して一定のままである、86~100項の何れか1項の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
102.以下の種類のデータ、すなわち(i)その装置を製造するための1つ又は複数の製造機械に供給されるように構成された、69~84項の何れか1項による装置の仮想表現、又は(ii)69~84項の何れか1項による装置を製造するための1つ又は複数の製造機械を制御するためのコンピュータ可読命令を含むデータのうちの少なくとも1つの種類を含むコンピュータ可読データ信号の形態のデータセットデータセット。
【符号の説明】
【0216】
1 印刷パラメータ値
2 インクジェット印刷装置
3 表面
4 眼鏡レンズ基材
5 印刷ヘッド
6、6a、6b、6c 印刷ノズル
7、7a、7b、7c、7d、7e、7f 印刷パラメータ
8、8a、8b、8c、8d 入力データ
9 インク
10a、10b、10c、10d、10e 印刷ノズルグループ
11、11a、11b、11c 幾何学的関係を説明するパラメータ
12 パラメータマップ
13 ルックアップテーブル
20 プロセッサ
21 記憶媒体
100 方法
200 データ処理システム
D 直径
dx、dy、dz 使用される座標系内の離散化された差
j 吐出ベクトル
m 印刷ヘッド移動方向
n 法線ベクトル
r 真のフロントカーブ
s アーク長さ
α 入射角
Δ1、Δ2 印刷ノズルと基材表面との間の距離
S1 眼鏡レンズ基材の表面とインクジェット印刷装置の印刷ヘッドの幾何学的特徴に関する入力データを取得する
S2 複数の印刷ノズルを少なくとも2つの印刷ノズルグループにグループ分けする
S3 各印刷ノズルグループのための調整可能な印刷パラメータの印刷パラメータ値を個別に特定する
S4 ルックアップテーブルと費用関数を提供する。
S5 必要関数を適用し、最適化する
S6 パラメータマップを推測する