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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】スクリューエレメントおよび二軸押出機
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/59 20190101AFI20241216BHJP
   B29C 48/405 20190101ALI20241216BHJP
   B29C 48/625 20190101ALI20241216BHJP
【FI】
B29C48/59
B29C48/405
B29C48/625
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024077752
(22)【出願日】2024-05-13
【審査請求日】2024-05-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】大熊 博幸
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-503897(JP,A)
【文献】特開2022-174543(JP,A)
【文献】国際公開第2020/001124(WO,A1)
【文献】特開平02-295721(JP,A)
【文献】特開平08-118439(JP,A)
【文献】実開平04-137825(JP,U)
【文献】特開平05-104609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0055012(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/59
B29C 48/405
B29C 48/625
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂組成物の混練に用いるスクリューエレメントであって、
回転軸に対して垂直な断面が多角形であって、
前記多角形は、凹部を有さず、
前記多角形の中心が前記回転軸と一致しており、
前記多角形を軸方向に進むにつれて前記回転軸を中心に回転させた外形を有し、
前記多角形の最大径をdl、最小径をdsとしたときに、dl/dsが1.3以下であり、
前記多角形の角がラウンド形状または面取りされた形状であって、前記多角形の辺は外側に膨らんでいる、スクリューエレメント。
【請求項2】
前記dl/dsが1.05以上である、請求項1に記載のスクリューエレメント。
【請求項3】
リード長が2.0dl以上10.0dl以下である、請求項1または2に記載のスクリューエレメント。
【請求項4】
前記多角形は、四角形、五角形、六角形、七角形および八角形のいずれかである、請求項1または2に記載のスクリューエレメント。
【請求項5】
シリンダーと、
前記シリンダーの内部に平行に配置される、第1スクリューおよび第2スクリューと、
を有し、
前記第1スクリューおよび前記第2スクリューは、それぞれ、シャフトに取り付けられた、熱可塑性樹脂を混練するためのスクリューエレメントを混練部に有し、
前記スクリューエレメントは、
回転軸に対して垂直な断面が多角形であって、
前記多角形は、凹部を有さず、
前記多角形の中心が前記回転軸と一致しており、
前記スクリューエレメントは、前記多角形を軸方向に進むにつれて前記回転軸を中心に回転させた外形を有し、
前記多角形の最大径をdl、最小径をdsとしたときに、dl/dsが1.3以下であり、
前記多角形の角が、ラウンド形状または面取りされた形状であって、前記多角形の辺は外側に膨らんでいる、二軸押出機。
【請求項6】
前記dl/dsが1.05以上である、請求項5に記載の二軸押出機。
【請求項7】
リード長が2.0dl以上10.0dl以下である、請求項またはに記載の二軸押出機。
【請求項8】
前記多角形は、四角形、五角形、六角形、七角形および八角形のいずれかである、請求項またはに記載の二軸押出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリューエレメントおよび二軸押出機に関する。
【背景技術】
【0002】
押出機の混練の対象となる物質の粘度は様々であり、例えば溶融粘度は高粘度のものから低粘度のものに亘る。そして、それら樹脂には種々の添加物が添加される。このような対象物を分散性良く混練するために、様々な技術が提案されている。例えば、そのような技術として二軸押出機がある(例えば特許文献1参照)。二軸押出機は、シリンダー内で2本のスクリューを用いて樹脂(熱可塑性樹脂組成物)を溶融・混練させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-19635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のように二軸押出機は、対象物を分散性良く混練し異なる成分を均一に混合する場合に用いられるが、熱可塑性樹脂組成物の混練物の均一性と温度ムラの抑制を両立することは困難を極める。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであって、二軸押出機において、熱可塑性樹脂組成物の混練物の均一性を向上させるとともに温度ムラを抑制する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると以下の発明が提供される。
1. 熱可塑性樹脂組成物の混練に用いるスクリューエレメントであって、
回転軸に対して垂直な断面が多角形であって、
前記多角形は、凹部を有さず、
前記多角形の中心が前記回転軸と一致しており、
前記多角形を軸方向に進むにつれて前記回転軸を中心に回転させた外形を有する、
スクリューエレメント。
2. 前記多角形の角が、ラウンド形状または面取りされた形状である、1.に記載のスクリューエレメント。
3. 前記多角形の辺は外側に膨らんでいる、1.または2.に記載のスクリューエレメント。
4. 前記多角形の最大径をdlとしたときに、リード長が2.0dl以上10.0dl以下である、1.または2.に記載のスクリューエレメント。
5. 前記多角形は、四角形、五角形、六角形、七角形および八角形のいずれかである、1.または2.に記載のスクリューエレメント。
6. 前記多角形の最大径をdl、最小径をdsとしたときに、dl/dsが1.3以下である、1.または2.に記載のスクリューエレメント。
7. シリンダーと、
前記シリンダーの内部に平行に配置される、第1スクリューおよび第2スクリューと、
を有し、
前記第1スクリューおよび前記第2スクリューは、それぞれ、シャフトに取り付けられた、熱可塑性樹脂組成物を混練するためのスクリューエレメントを混練部に有し、
前記スクリューエレメントは、
回転軸に対して垂直な断面が多角形であって、
前記多角形は、凹部を有さず、
前記多角形の中心が前記回転軸と一致しており、
前記スクリューエレメントは、前記多角形を軸方向に進むにつれて前記回転軸を中心に回転させた外形を有する、二軸押出機。
8. 前記多角形の角が、ラウンド形状または面取りされた形状である、7.に記載の二軸押出機。
9. 前記多角形の辺は外側に膨らんでいる、7.または8.に記載の二軸押出機。
10. 前記多角形の最大径をdlとしたときに、リード長が2.0dl~10.0dlである、7.または8.に記載の二軸押出機。
11. 前記多角形は、四角形、五角形、六角形、七角形および八角形のいずれかである、7.または8.に記載の二軸押出機。
12. 前記多角形の最大径をdl、最小径をdsとしたときに、dl/dsが1.3以下である、7.または8.に記載の二軸押出機。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、二軸押出機において、混練物の均一性を向上させるとともに温度ムラを改善する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る二軸押出機の内部構造の概略構成を示す模式図である。
図2】実施形態に係る混練部におけるシリンダー及びスクリューの構造を示す断面斜視図である。
図3】実施形態に係る混練部におけるシリンダー及びスクリューの構造を示す断面図である。
図4】実施形態に係るスクリューエレメントの一部の斜視図である
図5】実施形態に係るスクリューエレメントの一部を第三角法で示した図である。
図6】実施形態に係るスクリューエレメントの一部の周面を展開した図である。
図7】実施形態に係る比較例のシリンダー及びスクリューの構造を示す断面図である。
図8】実施形態に係る比較例のスクリューの構造を示す斜視図である。
図9】実施形態に係る第1スクリューエレメントと第2スクリューエレメントの配置を同相とした場合の例を示した図である。
図10】実施形態に係る第1スクリューエレメントと第2スクリューエレメントの配置を非同相とした場合の例を示した図である。
図11】実施形態に係るスクリューエレメントの断面形状を八角形とした場合の第1スクリューエレメントおよび第2スクリューエレメントの配置例を示した図である。
図12】実施形態に係るスクリューエレメントの断面形状を四角形とした場合の第1スクリューエレメントおよび第2スクリューエレメントの配置例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、二軸押出機1の内部構造の概略構成を示す模式図である。図1の右側を、二軸押出機1を説明する際の上流側とし、左側を下流側とする。また、二軸押出機1が備えるスクリュー10の回転軸方向(単に「軸方向」ともいう)は図1の左右方向と一致する。図2は、混練部3におけるシリンダー2及びスクリュー10の構造を示す断面斜視図であり、図1のX1-X1断面斜視図である。図3は、混練部3におけるシリンダー2及びスクリュー10の構造を示す断面図であり、図1のX1-X1断面図である。図4は、スクリューエレメント30の一部の斜視図である。なお、本実施形態のスクリューエレメント30の特徴は主に外形にあり、図4では、スプライン軸20およびそれと嵌合する構造(内孔)については省略して示している。図5は、スクリューエレメント30の一部を第三角法で示した図である。図5(a)は正面図、図5(b)が側面図、図5(c)は背面図である。図6は、スクリューエレメント30の一部の周面を展開した図である。
本実施形態では、「熱可塑性樹脂組成物」は、「熱可塑性樹脂とフィラー」の混練物や、「熱可塑性樹脂と添加剤」の混練物、「熱可塑性樹脂とフィラーおよび添加剤」の混練物のように、熱可塑性樹脂と他の原料を混練した材料を指すものとして説明する。
【0010】
二軸押出機1は、図1に示すように、シリンダー2(バレルともいう)と、スクリュー10と、ホッパ6と、加熱装置8と、を備える。
スクリュー10は、空洞状のシリンダー2に対して、その内部を回転軸方向に沿って挿通するように設けられている。スクリュー10がシリンダー2に対して回転することで、二軸押出機1では、材料供給口であるホッパ6から材料が供給され、シリンダー2内に供給された材料が混練されつつ下流側に送られる。
【0011】
<シリンダー>
シリンダー2の内部は回転軸方向に沿って長い空洞状に形成されており、回転軸方向に沿って平行に配置された一対のスクリュー10(第1スクリュー11、第2スクリュー12)が回転自在に挿通されている。シリンダー2は、1つの筒状部材で構成されてもよいし、回転軸方向に複数の筒状部材が連結されて構成されてもよい。
【0012】
シリンダー2の一端部(図1の右側端部)には材料供給口であるホッパ6が設けられ、他端部(図1の左側端部)には材料排出口であるダイス9が設けられる。シリンダー2の周囲には、電気ヒーター等の加熱装置8が設けられており、ホッパ6から供給された材料はこの加熱装置8により加熱され、この加熱およびスクリュー10、シリンダー2、および材料のせん断熱によって加熱されることで、材料は半溶融状態または溶融状態となる。
【0013】
<スクリュー>
スクリュー10(第1スクリュー11、第2スクリュー12)は、回転軸方向に延在するスプライン軸20(「シャフト」ともいう)と、このスプライン軸20により串刺し状に固定される複数のスクリューエレメント30(「セグメント」ともいう)とを有して構成されている。スクリュー10は、上流側(図1では右側)の端部に取り付けられた駆動部7によって回転方向に駆動される。なお、第1スクリュー11と第2スクリュー12は、回転速度が1:1の関係で回転する。また、第1スクリュー11と第2スクリュー12の回転方向としては、「同方向」のタイプと、「異方向」のタイプがある。また、スプライン軸20に取り付けられるスクリューエレメント30は、同方向の二軸押出機1でも、異方向の二軸押出機1でも、使用することができる。
【0014】
スクリュー10は、シリンダー2の内側に収容される。具体的には、図2に示すように、スクリュー10は、シリンダー2の内部に一対に設けられ、平行な2本の第1および第2回転軸AX1、AX2のそれぞれの軸回りに回転する。すなわち、スクリュー10は、第1スクリュー11と第2スクリュー12とを有する。第1スクリュー11と第2スクリュー12は、平行に配置される。第1スクリュー11は、第1回転軸AX1の軸回りに回転する。第2スクリュー12は、第2回転軸AX2の軸周りに回転する。なお、第1スクリュー11と第2スクリュー12を区別しない場合は、それらを単に「スクリュー10」という。また、第1および第2回転軸AX1、AX2を区別しない場合は、「回転軸AX」という。
【0015】
エレメントには様々な種類のものがあり、スクリュー10では複数種のセグメントをパターンを変えて組み合わすことで材料を送る部分(送り部5)や材料を混練する部分(混練部3)が回転軸方向の一定の範囲に亘って形成される。
【0016】
二軸押出機1は、上流側(図1の右側)から下流側(図1の左側)に向けて、供給された材料を溶融しながら下流側に送る送り部5と、送り部5から送られてきた材料を混練する混練部3と、混練部3で混練された材料を下流側に送り出す押出部4とを有する。
【0017】
混練部3、押出部4および送り部5には、それぞれにおいて発揮する機能に応じたエレメントがスプライン軸20(シャフト)に取り付けられている。
【0018】
<送り部>
送り部5は、例えば、エレメントとして、回転軸方向に螺旋状に捩れたスクリュフライト(図示略)を備える。螺旋状に捩れたスクリュフライトが回転することで材料を溶融しつつ上流側から下流側に送る。
【0019】
<混練部>
混練部3は、エレメントとして、熱可塑性樹脂組成物の混練用のスクリューエレメント30を有する。スクリューエレメント30は、スクリュー10を回転させた際に、シリンダー2の内壁との間に材料を導いて、材料を混練することができる。
【0020】
詳細は後述するが、本実施形態では、混練部3のスクリューエレメント30の形状を、回転軸AXに垂直な断面が多角形であって、多角形の中心が回転軸AXと一致するようにし、かつ、多角形は凹部(溝)を有さず、多角形を回転軸AXの方向に進むにつれて、回転軸AXを中心に回転させた外形を有する。このような構成により次の効果を実現することができる。
(1)スクリューエレメント30の外形を多角形とすることで、「最大径(長径)/最小径(短径)」を小さく設計することができ、スクリューエレメント30とシリンダー2の間のクリアランスを小さくし、かつ、スクリューエレメント30は多角形がリード方向にねじれた形とすることで、材料に対してリード方向に伸長効果を発揮させ、材料を均一に混練することができる。
(2)多角形として「最大径(長径)/最小径(短径)」を小さくし、かつ、スクリューエレメント30とシリンダー2の間のクリアランスの変動を小さくすることができるため、混練時において、材料の温度ムラを生じないようにすることができる。
以下では、スクリューエレメント30の断面形状が呈する多角形として、六角形の例を示し、続いて変形例として、八角形および四角形の例を説明する。
【0021】
<押出部>
押出部4は、送り部5と同様に、螺旋状に捩れたスクリュフライトを備える。押出部4のスクリュセグメントは、一例としてスクリュー10とシリンダー2の間のクリアランスが混練部3より小さくなるように形成されており、混練部3から送られる材料を加圧でき安定した計量(すなわち安定した吐出)を行うことができる。
【0022】
<材料>
ホッパ6から投入される材料としては、例えば、熱可塑性樹脂や、フィラー、添加剤である。具体的には、例えば、熱可塑性樹脂に、フィラーや添加剤、さらには種類の異なる熱可塑性樹脂を組み合わせた材料が投入される。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂(ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテルとポリスチレン系樹脂とのブレンド物)、ポリスチレン系樹脂(ゼネラルパーパスポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等)、ポリエステル樹脂、ホモポリマー型ポリオキシメチレン、コポリマー型ポリオキシメチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン等が挙げられ、特に、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ホモポリマー型ポリオキシメチレン、コポリマー型ポリオキシメチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体等が好ましい。これら熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
フィラーとしては、特に限定されることなく、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、硫酸マグネシウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、炭酸カルシウムウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー、ケイ酸カルシウム(ワラストナイト)、マイカ、タルク、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、クレー、カオリン、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ヨウ化銅、ヨウ化カリウム、(難燃性)水酸化マグネシウム等が挙げられ、特に、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム、マイカ、タルク、ガラスフレーク、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、ヨウ化銅、ヨウ化カリウムが好ましい。
添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、顔料、染料、着色剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、酸化防止剤、目ヤニ防止剤、結晶核剤、可塑剤等が挙げられる。
【0024】
ホッパ6から供給された材料は、加熱装置8と、混練時の原料、スクリュー10、およびシリンダー2とのせん断熱により溶融状態または半溶融状態に加熱される。
【0025】
シリンダー2は、ホッパ6と接続する穴2aを有する。ホッパ6を介して熱可塑性樹脂やフィラー、添加剤をシリンダー2内に供給することができる。なお、必要に応じて、ホッパ6の下流側には材料を堰き止めて混練度を調整するゲート部(図示せず)や混練された材料から揮発するガスをシリンダー2外に排出する開口部(図示せず)が設けられている。
【0026】
<混練部のスクリューエレメント>
図2図8を参照して、混練部3のスクリューエレメント30の概要を説明する。
【0027】
図2図3に示すように、シリンダー2は、第1シリンダー21と第2シリンダー22とを有する。第1シリンダー21と第2シリンダー22は、それぞれ、円筒状の空洞を連結させた形状となっている。第1シリンダー21には第1スクリュー11が、第2シリンダー22には第2スクリュー12が配置される。
【0028】
第1スクリュー11は、第1スプライン軸20aと、第1スプライン軸20aに軸装された第1スクリューエレメント31とを混練部3に有する。第2スクリュー12は、第2スプライン軸20bと、第2スプライン軸20bに軸装された第2スクリューエレメント32とを混練部3に有する。
【0029】
第1スクリューエレメント31および第2スクリューエレメント32は、同相に配置されてもよいし、非同相で配置されてもよい。同相とは、2つのスクリューエレメント30(第1スクリューエレメント31、第2スクリューエレメント32)の中心を結ぶ線の中点に引かれた垂直線に対して、2つのスクリューエレメント30が線対称の位置関係にあることをいい、非同相とは、線対称になっていない位置関係にあることをいう。本実施形態では、後述するように、スクリューエレメント30の最大径dlと最小径dsの比dl/dsが小さいことにより、非同相の配置が可能である。
【0030】
図4に示すように、第1スクリューエレメント31は、凹部を有さず、正六角形を第1回転軸AX1の方向に進むにつれて第1回転軸AX1を中心に回転させた外形を有する。第1スクリューエレメント31は、外形が六角形となる形状を、第1回転軸AX1を中心として捻った形状といえる。さらに言い換えると、第1スクリューエレメント31の外周面において、六角形の頂点が螺旋状に進む形状である。なお、螺旋は、送りねじ(順リード方向)に形成される。言い換えると、スクリュー10の駆動の回転方向に合わせてスクリューエレメント30の螺旋状のリードで材料を送ることができるように、スクリューエレメント30の形状、すなわち、六角形の頂点が螺旋状に進む形状が、スクリュー回転方向に合わせて設けられる。
【0031】
第2スクリューエレメント32は、第1スクリューエレメント31と同様に、凹部を有さず、正六角形を第2回転軸AX2の方向に進むにつれて第2回転軸AX2を中心に回転させた外形を有する。第2スクリューエレメント32は、外径が六角形となる形状を、第2回転軸AX2を中心として捻った形状といえる。さらに言い換えると、第2スクリューエレメント32の外周面において、六角形の頂点が螺旋状に進む形状である。なお、螺旋は、送りねじ(順リード方向)に形成される。
【0032】
スクリューエレメント30のより具体的な形状を説明する。
なお、図5図6の例では、スクリューエレメント30の両端部が90°捻られた位置関係にある。以下、第1スクリューエレメント31と第2スクリューエレメント32の形状は同じであり、それらを区別しない場合は、「スクリューエレメント30」として説明する。
【0033】
図4図5に示す例では、スクリューエレメント30の正六角形の6つの角(第1~第6頂部41~46)がラウンド形状となっている。時計回り0時の位置に第1頂部41が位置しており、時計回りに順に第2~第6頂部42~46が位置している。なお、第1~第6頂部41~46は、スクリューエレメント30の周面において、それぞれ稜線を形成している。したがって、第1~第6頂部41~46が形成する稜線は回転軸AXを中心に捻られた曲線となる。
なお、第1~第6頂部41~46が、実施形態のようにラウンド形状であったり面取りされた形状の場合は、稜線は、ラウンド形状または面取りの形状に幅に対応した一定の幅を有する形状となる。ここで、第1頂部41と第2頂部42との間の領域を第1面51、第2頂部42と第3頂部43との間の領域を第2面52、第3頂部43と第4頂部44との間の領域を第3面53、第4頂部44と第5頂部45との間の領域を第4面54、第5頂部45と第6頂部46との間の領域を第5面55、第6頂部46と第1頂部41との間の領域を第6面56とする。第1~第6面51~56は、第1~第6頂部41~46の捩れに沿って同様に捩れた曲面を有する。
【0034】
<多角形の種類>
スクリューエレメント30の断面形状である多角形は、四角形、五角形、六角形、七角形および八角形のいずれかであることが好ましく、多角形の中心は、回転軸AXと一致している。多角形を四角形以上とし、多角形の中心が回転軸AXと一致することで、多角形の最大径をdl、最小径をdsとしたときに、最大径dlと最小径dsの差を小さくすることができ(言い換えると、比dl/dsを小さくでき)、材料の伸長効果が向上する。一方、多角形が八角形より大きな多角形となると、断面が円形に近づき、最大径と最小径の差が小さくなりすぎて、十分な混練が得られない。
なお、正2n角形(nは自然数)の場合は、最大径とは互いに対向する2つの角の距離をいい、最小径は互いに対向する辺の距離をいう。正(2n+1)角形(nは自然数)の場合は、最大径とは中心からある角までの距離の2倍であり、最小径とは中心から辺までの距離の2倍をいう。
【0035】
<最大径dlと最小径dsの関係>
最大径をdlと最小径をdsの具体的な関係は次の通りである。
多角形の最大径をdl、最小径をdsとしたときに、比dl/dsが1.3以下である。比dl/dsは好ましくは、1.2以下であり、より好ましくは1.1以下である。下限は、例えば、1.05以上であり、好ましくは1.07以上であり、より好ましくは1.09以上である。比dl/dsを上記範囲にすることで、材料を効果的に伸長させることができる。また、比dl/dsを小さくすることで、シリンダー2とスクリューエレメント30との間のクリアランスの変動が小さく、材料の温度ムラの発生を抑制することができる。
【0036】
<多角形の角の形状(ラウンド形状、面取り形状)>
スクリューエレメント30の断面形状が呈する多角形は、いわゆる完全な正多角形だけでなく、角がラウンド形状や面取りされた形状であってもよい。ラウンド形状とは、角を丸めて曲面(曲線)になっている形状をいう。面取り形状とは、角が削り取られた形状であり、角の曲面の場合もあれば複数の平面を徐々にずらした形状の場合もある。多角形の角をラウンド形状や面取りされた形状とすることで、最大径dlが小さくなり、最大径dlと最小径dsの比dl/dsをさらに小さくすることができる。その結果、材料の伸長効果を高めることができる。さらに、多角形の辺が外側に膨らんだ曲線となった形状であってもよい。このような形状にすることで、最小径dsが大きくなり、最大径dlと最小径dsの比dl/dsを小さくすることができる。その結果、材料の伸長効果を高めることができる。
【0037】
また、比dl/dsを小さくすることで、スクリューエレメント30とシリンダー2の内壁面との間のクリアランスの変化を小さくできる。これによって、温度ムラが発生しにくい。また、スクリューエレメント30を送りねじ形状にすることで、クリアランスが小さくとも、材料を下流に送ることができ、また、リード方向の伸長効果が得られる。
【0038】
<最大径とリード長の関係>
多角形の最大径をdlとしたときに、リード長が2.0dl~10.0dlである。
リード長とは、スクリュー10が1回転したときに回転軸方向に進む回転軸方向の距離を「リード長」という。言い換えると、リード長は、多角形のある角が、同一の位置に戻るまでの回転軸方向の長さともいえ、例えば、時計回り0時の位置の第1頂部41(角)が同じ時計回り0時の位置になるまでの回転軸方向の距離として把握できる。
【0039】
リード長を、多角形の最大径(すなわちスクリューエレメント30の最大径)の2~10倍の長さとすることで、長い距離にわたって材料の温度ムラを抑制しながら、混練度(すなわち均一性)を向上させることができる。さらに、混時のゲルを低減できる。より具体的には、ゲルは高分子(樹脂)の高分子量成分であって、本実施形態において伸長によりゲルを伸ばして磨りつぶす効果が発揮される。
【0040】
<比較例のスクリューおよびスクリューエレメントの形態>
図7は、比較例のスクリュー(第1スクリュー111、第2スクリュー112)の断面を略楕円形状とした場合を示しており、一般的に用いられる形状の一例であり図3に対応する図である。図8は比較例のスクリュー(第1スクリュー111、第2スクリュー112)の斜視図である。
【0041】
第1スクリュー111には、スプライン軸120aに、回転軸方向からみて略楕円形状の5個のスクリューエレメント131(スクリューエレメント131a~131e)が、隣接するエレメント間で楕円形状の長軸方向が90度ずれて取り付けられている。同様に、第2スクリュー112には、第2スプライン軸120bに、回転軸方向からみて略楕円形状の5個のスクリューエレメント132(スクリューエレメント132a~132e)が、隣接するエレメント間で楕円形状の長軸方向が90度回転してずれて取り付けられている。第1スクリュー111のスクリューエレメント131と第2スクリュー112のスクリューエレメント132は、非同相に配置されている。スクリューエレメント131、132を区別しない場合は、「スクリューエレメント130」という。
【0042】
ここで、スクリューエレメント131、132において、楕円長軸の端部の形状を山、楕円短軸の端部の形状を谷とした場合、山におけるスクリューエレメント131、132の外周とシリンダー102(第1シリンダー121の壁面121a、第2シリンダー122の壁面122a)間の距離d01と、谷におけるスクリューエレメント131、132の外周とシリンダー間の距離d02とでは、距離d01と距離d02の変化が大きい。
【0043】
また、例として図7は比dl/dsを1.31以上で記載するものであり、比dl/dsを大きくしてスクリューエレメント130を回転することで、距離d01の箇所では強いせん断を受け、せん断を受けた熱可塑性樹脂組成物は距離d02の箇所である樹脂だまりに移動して混合されることで混練がなされる。しかし、比dl/dsを大きくして距離d01の箇所で強いせん断とともに強い発熱を受けた熱可塑性樹脂組成物を、樹脂だまりへ渡す構造であるため、混練はされるものの樹脂だまりにおいて熱可塑性樹脂組成物は局所的な熱ムラが発生しやすい課題があった。熱ムラは粘度ムラおよび流動ムラにつながり、材料の均一性を向上させることに対して妨げになっていた。
【0044】
また、材料に熱可塑性樹脂を含む都合、弾性体であるゲルは、距離d01の箇所で強いせん断はうけて引き伸ばされるものの、断続的なせん断であるためゲルが潰されることなく樹脂だまりへ逃げやすいという課題もある。しかしながら、本実施形態のスクリューエレメント30によると、それら課題を解消することができる。
【0045】
<第1スクリューエレメント、第2スクリューエレメントの配置例>
図9および図10を参照して、スクリューエレメント30(第1スクリューエレメント31、第2スクリューエレメント32)の位相と、最大径dlと最小径dsの関係についてシミュレーション結果をもとに説明する。スクリューエレメント30の最大径dlと最小径dsの比dl/ds=1.272である。
【0046】
図9は、第1スクリューエレメント31と第2スクリューエレメント32の配置を同相とした場合の例を示している。図9(a)は第1スクリューエレメント31と第2スクリューエレメント32間のクリアランスが最も大きい状態を示している。図9(b)は図9(a)の状態から30°回転した状態であって、第1スクリューエレメント31と第2スクリューエレメント32間のクリアランスが最も小さい状態を示している。図10は、第1スクリューエレメント31と第2スクリューエレメント32の配置を非同相(90°ズレ)とした場合の例を示している。非同相の場合には、同相の場合と比較して、第1スクリューエレメント31と第2スクリューエレメント32間のクリアランスを小さくすることができる。
【0047】
図11は、スクリューエレメント30Aの断面形状を八角形(8条タイプ)とした場合の第1スクリュー11A(第1スクリューエレメント31A)および第2スクリュー12A(第2スクリューエレメント32A)の配置例を示している。図11(a)が同相、図11(b)が非同相(22.5°ズレ)の場合を示している。また、最大径dlと最小径dsの比dl/ds=1.055である。
【0048】
図12は、スクリューエレメント30Bの断面形状を四角形(4条タイプ)とした場合の第1スクリュー11B(第1スクリューエレメント31B)および第2スクリュー12B(第2スクリューエレメント32B)の配置例を示している。図12(a)が同相、図12(b)が非同相(45°ズレ)の場合を示している。また、最大径dlと最小径dsの比dl/ds=1.232である。
【0049】
以上、本実施形態の特徴を纏めると次の通りである。
スクリューエレメント30の外周面には、凹部が無いため、シリンダー2とスクリューエレメント30との間のクリアランス変化が少ない。したがって、投入した材料(熱可塑性樹脂およびフィラー、添加物)を均一に混練することができる。また、凹部がないことで、いわゆる樹脂だまりが無く、温度ムラをなくすことが出来る。
また、スクリューエレメント30の最大径dlと最小径dsの差を小さくすることができる。より具体的には比dl/dsを小さくできる。このため、伸長流動混練りに優れ、また、材料のゲル潰しを効果的に実現できる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 二軸押出機
2 シリンダー
2a 穴
3 混練部
4 押出部
5 送り部
6 ホッパ
7 駆動部
8 加熱装置
9 材料排出口
10 スクリュー
11 第1スクリュー
12 第2スクリュー
20 スプライン軸
21 第1シリンダー
22 第2シリンダー
30 スクリューエレメント
31 第1スクリューエレメント
32 第2スクリューエレメント
【要約】
【課題】二軸押出機において、混練物の均一性を向上させるとともに温度ムラを改善する技術を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂組成物の混練に用いるスクリューエレメント30であって、回転軸AXに対して垂直な断面が多角形であって、前記多角形は、凹部を有さず、前記多角形の中心が前記回転軸AXと一致しており、前記多角形を回転軸方向に進むにつれて前記回転軸AXを中心に回転させた外形を有する、スクリューエレメント30が提供される。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12