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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】タンク用遮断弁
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/22 20060101AFI20241216BHJP
   F16K 17/36 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
B65D90/22 E
F16K17/36 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024079022
(22)【出願日】2024-05-14
【審査請求日】2024-05-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1) 配布日(公開日) :令和5年6月8日 配布(公開)した場所:北海道歯舞漁協 北海道根室市歯舞4丁目120-1 公開資料:パンフレット (2) 配布日(公開日) :令和5年7月4日 配布(公開)した場所:静岡県漁連購買部 静岡市葵区追手町9-18 公開資料:パンフレット (3) 配布日(公開日) :令和5年9月21日 配布(公開)した場所:2023年度 火力原子力発電大会(北海道大会)(会期:令和5年9月21日~22日) 札幌コンベンションセンター 中ホール(技術展示会場)(北海道札幌市白石区東札幌6条1丁目-1) 主催者 一般社団法人火力原子力発電技術協会 公開資料:パンフレット (4) 発行日 :令和5年9月25日 刊行物 :国立大学法人東北大学 工学研究科 土木工学専攻の卒業論文 公開資料:卒業論文(抜粋) (5) 配布日(公開日) :令和5年11月8日 配布(公開)した場所:大阪府政策企画部危機管理室消防保安課保安グループ 大阪市中央区大手前2丁目 公開資料:パンフレット
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000221546
【氏名又は名称】東電設計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000142078
【氏名又は名称】株式会社協成
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】保延 宏行
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田口 英樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 裕典
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆志
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-047406(JP,A)
【文献】特開平01-174323(JP,A)
【文献】特開昭55-020975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/22
F16K 17/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するタンクに設けられた配管の流路を遮断するタンク用遮断弁であって、
一部が大気解放された圧力検出室を備え、外部から前記圧力検出室内への水の流入と、水の流入に伴う前記圧力検出室内からの大気への気体の流出とによる圧力の変化に基づいて、前記タンクの浸水を検出する水検出部と、
前記水検出部により検出された浸水に基づいて動作し、前記タンクに貯留された液体が流通する前記流路を遮断する遮断部と、
を備え
前記遮断部は、前記流路を開放する開放位置と、前記流路を閉塞する閉塞位置とを移動可能であり、前記閉塞位置に向けて付勢され、
前記遮断部を前記開放位置でロックするロック機構が設けられ、
前記ロック機構は、ロック動作部と、前記水検出部で検出される水圧の変化を前記ロック動作部に伝達するロック操作部が設けられ、
前記水検出部で検出される水圧の変化によって前記ロック操作部が操作されて前記ロック動作部を動作させることで、前記ロック機構のロックが解除され、前記遮断部が前記閉塞位置になる
タンク用遮断弁。
【請求項2】
前記圧力検出室は、
大気解放され、外部から水が流入する流入口と、
前記流入口よりも上方に備えられ、大気解放され、気体が流出する流出口と、を有する、
請求項1に記載のタンク用遮断弁。
【請求項3】
前記圧力検出室は、
大気解放され、外部から水が流入する流入口と、
大気解放され、前記圧力検出室から気体が流出する流出口と、
前記流入口側の第1空間と前記流出口側の第2空間とを隔てるダイアフラムと、を有し、
前記ダイアフラムが前記第1空間と前記第2空間との間の差圧を検出する、
請求項1に記載のタンク用遮断弁。
【請求項4】
前記流出口は、外部からの気体または液体の流入を防ぐ逆止弁を備える、
請求項2又は3に記載のタンク用遮断弁。
【請求項5】
前記水検出部を覆うように形成され、上方からの降水に対して前記圧力検出室内への浸水を防止しつつ、下方から水が流入した際に前記圧力検出室内を浸水させるフード部をさらに備える、
請求項1に記載のタンク用遮断弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水害時にタンク内に貯留された液体の流出を防止するタンク用遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、港などの沿岸地域には、漁船などの船舶に燃料を補給するためのオイルタンク等の液体を貯留するタンクが設けられている(例えば、特許文献1、2参照)。このようなタンクでは、津波等の水害被害を受けるおそれがある。そのため、沿岸地域に設置されたタンクの配管が津波等の水害によって損傷した場合に、タンク内部に貯留された液体が外部に流出するという問題があり、このような流出を防止するために配管に遮断弁等を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-149449号公報
【文献】特開2015-227182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のタンク近傍の配管に設けられる遮断弁として、電気式や空気式の遠隔遮断弁を設けることが一般的である。しかしながら、これらの電気式や空気式の遮断弁は、防爆仕様になっており、弁本体や電気・空気設備にかかる費用が増大することから、その点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、水害等によりタンクが水に浸り、タンクが浮上、移動し、配管が損傷を受けた場合であっても、タンク内の液体の流出を低コストとなる構造により防止できるタンク用遮断弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、液体を貯留するタンクに設けられた配管の流路を遮断するタンク用遮断弁であって、一部が大気解放された圧力検出室を備え、外部から前記圧力検出室内への水の流入と、水の流入に伴う前記圧力検出室内からの大気への気体の流出とによる圧力の変化に基づいて、前記タンクの浸水を検出する水検出部と、前記水検出部により検出された浸水に基づいて動作し、前記タンクに貯留された液体が流通する前記流路を遮断する遮断部と、を備え、前記遮断部は、前記流路を開放する開放位置と、前記流路を閉塞する閉塞位置とを移動可能であり、前記閉塞位置に向けて付勢され、前記遮断部を前記開放位置でロックするロック機構が設けられ、前記ロック機構は、ロック動作部と、前記水検出部で検出される水圧の変化を前記ロック動作部に伝達するロック操作部が設けられ、前記水検出部で検出される水圧の変化によって前記ロック操作部が操作されて前記ロック動作部を動作させることで、前記ロック機構のロックが解除され、前記遮断部が前記閉塞位置になる、タンク用遮断弁である。
【0007】
本発明によれば、水検出部において圧力検出室に対する水の流入と気体の流出による圧力変化によってタンク及びタンク用遮断弁とその配管が浸水したことを検出するという、電気的な構成によらず機械的な構成により浸水を検出することができる。そして、その水検出部による浸水の検出によって流路を遮断するように遮断部を動作させることができる。そのため、本発明では、タンク遮断弁自体が津波等の水害によって水位が上がることで、圧力検出室内に水が流入し、このときの圧力検出室内の水圧を検知して作動することから、従来のような電気・空圧設備が不要であり、これら設備に対して防爆仕様とする必要もなくなるので、設備にかかる費用を低減できる。このように本発明では、水害等によりタンク及びタンク用遮断弁とその配管が水に浸った場合であっても、タンク内の液体の流出を低コストとなる構造により防止することができる。
【0008】
また、本発明は、前記圧力検出室は、大気解放され、外部から水が流入する流入口と、前記流入口よりも上方に備えられ、大気解放され、気体が流出する流出口と、を有することが好ましい。
【0009】
本発明によれば、津波などの水害が発生したときに、流入口から圧力検出室内に水が流入し、流入口より上方に位置する流出口から圧力検出室内の気体を大気に流出させることができる。そのため、水害発生時において圧力検出室内に水が溜まることから、圧力検出室内に流入する水による圧力変化を検知することで、タンク及びタンク用遮断弁とその配管の浸水を検出することができる。
【0010】
また、本発明は、前記圧力検出室は、大気解放され、外部から水が流入する流入口と、大気解放され、前記圧力検出室から気体が流出する流出口と、前記流入口側の第1空間と前記流出口側の第2空間とを隔てるダイアフラムと、を有し、前記ダイアフラムが前記第1空間と前記第2空間との間の差圧を検出する、ことを特徴としてもよい。
【0011】
本発明によれば、津波などの水害が発生して水位が上がると、流入口から圧力検出室の第1空間内に水が流入し、流入口より上方に位置する流出口から圧力検出室の第2空間内の気体を大気に流出させることができる。すなわち、水害発生時において第1空間内に水が流入することによる水圧により、第1空間と第2空間とを隔てるダイアフラムが第2空間側に押されて第2空間内の気体を流出口から流出させることができる。このときのダイアフラムの変位量から第1空間と第2空間との間の差圧を検出することができ、これによりタンク及びタンク用遮断弁とその配管の浸水を検出することができる。
【0012】
また、本発明は、前記流出口は、外部からの気体または液体の流入を防ぐ逆止弁を備えることを特徴としてもよい。
【0013】
本発明によれば、流出口に逆止弁が設けられているので、圧力検出室内の気体を確実に外部に流出させることができ、かつ外部からの気体や液体が流出口から圧力検出室内へ流入することを阻止できる。つまり、圧力検出室内には流入口からの水のみが流入することから、圧力検出室内に流入する水による圧力変化のみを正確に検知することができる。
【0014】
また、本発明は、前記水検出部を覆うように形成され、上方からの降水に対して前記圧力検出室内への浸水を防止しつつ、下方から水が流入した際に前記圧力検出室内を浸水させるフード部をさらに備えることを特徴としてもよい。
【0015】
本発明によれば、水検出部を覆うフード部が設けられているので、上方からの降水により圧力検出室内が浸水することを防止することができ、誤動作を防止できる。また、フード部を設けることで、下方から流入した水を外部に流出させずに圧力検出室内に充填させることができる。これにより、圧力検出室内には流入口からの水のみが流入することから、圧力検出室内に流入する水による圧力変化のみを正確に検知することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るタンク用遮断弁によれば、水害等によりタンクが水に浸り、タンクが浮上、移動し、配管が損傷を受けた場合であっても、タンク内の液体の流出を低コストとなる構造により防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態による遮断弁を備えたタンクの構成を示す側面図である。
図2】遮断弁の構成を示す断面図であって、非遮断状態を示す図である。
図3】遮断弁の構成を示す断面図であって、遮断状態を示す図である。
図4】圧力検出室に水が流入する前の状態を示す図である。
図5】圧力検出室に水が流入した後の状態を示す図である。
図6】流入口にフィルタとストレーナを設けた遮断弁を示す縦断面図である。
図7】流出口に空気抜き孔を設けた遮断弁を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るタンク用遮断弁について説明する。
【0019】
図1は、実施形態の遮断弁1を備えたタンク10の構成を示す側面図である。
図1に示す実施形態のタンク用遮断弁(以下、遮断弁1)は、液体Mを貯留するタンク10に設けられた配管11の流路を遮断する。遮断弁1は、津波や高潮、台風、豪雨、ダムや堤防の決壊、越流など、あらゆる水害に伴って水に浸かり得る地域(沿岸地域など)に設置されたタンク10を対象とし、水害時に水に浸り、配管11が損傷した場合であってもタンク10に貯留された液体Mが漏出することを防止する機械式のものである。ここで、図1は、津波発生時における状態を示している。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態のタンク10は、例えば円筒型に形成されたオイルタンクである。タンク10は、例えば、漁船などの船舶用の燃料や、ガソリンや軽油等の危険物や薬品等である液体Mを貯留する。タンク10は、地面に設けられた基台12に設置されている。タンク10と基台12とは、例えば、アンカーボルト及びナット等を用いて固定されている。タンク10と基台12との固定手段は、流出防止用にFRP等を用いてタンク10と基台12とが一体化するように補強されていてもよい。または、タンク10と基台12とは、固定されていない場合もある。
【0021】
タンク10の下方には、配管11が設けられている。配管11は、タンク10の内部に貯留された燃料等の液体Mが流通する。配管11は、船舶等に燃料を供給する。配管11の一端は、タンク10に接続され他端は船舶等に燃料を供給するためのノズル等が接続されている。配管11の途中には、例えば、配管11の流路を遮断する手動式の仕切弁13が設けられている。通常時において配管11の流路は仕切弁13により開放されている。仕切弁13の下流側には、タンク10用の遮断弁1(タンク用遮断弁)が設けられている。遮断弁1は、本実施形態において横方向に延在する配管11の途中に設けられる。遮断弁1は、浸水時に配管11の流路を自動的に遮断する。遮断弁1は、万が一にタンク10が流された際に、タンク10及び配管11と一体となって移動してもよい。
【0022】
図2は、遮断弁1の構成を示す断面図であって、非遮断状態を示す図である。図3は、遮断弁1の構成を示す断面図であって、遮断状態を示す図である。
図2及び図3に示すように、遮断弁1は、タンク10の浸水を検出する水検出部20と、配管11に接続される流路43を遮断する遮断部30と、水検出部20を覆うように形成されたフード部50と、を備える。遮断弁1は、内部の流路43の管軸方向が配管11と略平行となる横向きとなる姿勢で設置される。
【0023】
遮断部30は、タンク10に貯留された液体が流通する流路43を有する弁箱40に設けられる。弁箱40は、水検出部20が取り付けられる第1ハウジング41と、第1ハウジング41に接続されると共に配管11に接続される第2ハウジング42と、を備える。第1ハウジング41は、遮断弁1が設置された状態で、第2ハウジング42の上側に位置する。水検出部20は、第1ハウジング41の側面に位置する。
【0024】
流路43は、図1において紙面左側の流入部431と、紙面右側の流出部432と、流路43の中央に設けられ、流入部431の下流部と流出部432の上流部とを接続する中央連通部433と、を有する。遮断弁1の流路43を通過する配管11内の水Wは、左から右に流通する。すなわち上流側の配管11の水Wは、流入部431から流入、中央連通部433を通過して流出部432から下流側の配管11に流れる。
【0025】
遮断部30は、水検出部20により検出された浸水に基づいて動作する。遮断部30は、水検出部20による検出された浸水に基づいて上下方向に往復移動する弁体支持軸31と、弁体支持軸31を収容する収容部32と、弁体支持軸31の往復移動によって流路43を遮断する弁体33と、を備える。
【0026】
弁体支持軸31の一端(ここでは下端)には、弁体33が固定されている。すなわち、弁体33は、弁体支持軸31の上下方向の往復移動とともに上下に移動する。弁体支持軸31は、水検出部20のコイルばね61と連動して動作するロック機構34を備える。弁体支持軸31は、ロック機構34がロックされた状態で上昇位置(図2参照)となり、ロック機構34がロック解除された状態で下降位置(図3参照)となる。弁体支持軸31に支持される弁体33は、弁体支持軸31が上昇位置(ロック機構34がロック位置)のときに流路43を開放し、弁体支持軸31が下降位置(ロック機構34がロック解除位置)のときに流路43を閉塞する。
【0027】
弁体33は、流路43において、上下移動可能に設けられている。弁体33は、流路43の中央連通部433を塞ぐように開閉可能に設けられている。中央連通部433の流入部431との開口外周縁には、弁体33が開閉可能に当接される弁座433aが設けられている。弁体33の下端の外径は、中央連通部433の開口の内径よりも大径である。弁体33は、弁座433aに対して上側から押し付けた状態で当接することで、中央連通部433を塞ぐ。
【0028】
ロック機構34は、弁体33を弁体支持軸31とともに弁座433aに押し付ける方向に付勢する付勢部材(図示省略)を備える。付勢部材は、収容部32内で一端を支持されて、他端で弁体支持軸31及び弁体33を弁座433aに押し付ける方向に付勢するように組み込まれている。ロック機構34は、図2に示すように付勢部材の付勢力に抗して弁体33を弁座433aから離反した状態(開放位置P1)でロックし、図3に示すように水検出部20のコイルばね61が押されたときにロック操作片342を介して弁体33を弁座433aに当接させた状態(閉塞位置P2)でロックを解除する。
【0029】
ロック機構34は、ロック動作部341と、ロック動作部341を操作するロック操作片342と、を有する。ロック操作片342は、水検出部20の検出動作により軸線方向X(後述する)に進退移動する。ロック動作部341は、ロック操作片342の操作によって弁体支持軸31及び弁体33を付勢部材の付勢力に抗して上昇させて弁体33を弁座433aから離反した状態となる開放位置P1でロックする。また、ロック動作部341は、ロック操作片342の操作によって弁体支持軸31及び弁体33を付勢部材の付勢力によって下降させて弁体33を弁座433aに当接させた状態となる閉塞位置P2でロックを解除する。
【0030】
ここで、水検出部20及びフード部50において、後述するダイアフラム24における平面視中心を通るダイアフラム軸Oという。そして、ダイアフラム軸Oに平行な方向を軸線方向Xという。軸線方向Xで弁体支持軸31側を内側X1、その反対側を外側X2という。また、ダイアフラム軸Oを軸方向から見てダイアフラム軸Oに直交する方向を径方向という。
【0031】
図1に示すように、フード部50は、水検出部20を覆うように形成され、上方からの降水に対して圧力検出室21内への浸水を防止しつつ、下方の流入口22から水Wが流入した際に圧力検出室21内を浸水させる。フード部50は、軸線方向Xに二分割されている。一対の分割されたフード部50は、後述するダイアフラム24の外周縁24aを全周にわたって挟持した状態で一体的に固定されている。
【0032】
フード部50は、ダイアフラム軸Oと同軸となる略円筒状に形成されている。フード部50は、水検出部20を収容する圧力検出室21を形成する第1フード本体51と、コイルばね61が収容される第2フード本体52と、第1フード本体51は、第1ハウジング41に固定される。第2フード本体52は、第1フード本体51を挟んだ第1ハウジング41の反対側(外側X2)に設けられる。第1フード本体51は、軸線方向Xの中央部に位置してダイアフラム24を支持する中央筒51Aと、中央筒51Aの第1ハウジング41側に位置する内側板51Bと、中央筒51Aの第2フード本体52側に位置する外側板51Cと、を有する。フード部50において、中央筒51Aの内径が最も大きい。
【0033】
第2フード本体52は、ダイアフラム軸Oと同軸に設けられる筒状である。第2フード本体52の内端部は、開口端であり、第1フード本体51の内側(圧力検出室21)に連通している。第2フード本体52の外端部は蓋体53によって塞がれている。第2フード本体52の内側には、ダイアフラム軸Oと同軸に設けられるコイルばね61が収容されている。第2フード本体52の内径は、コイルばね61の外径よりも大きい。第2フード本体52内において、蓋体53の内側X1には、コイルばね61の一端61aを支持する反力壁54が設けられている。
【0034】
図4は、圧力検出室21に水Wが流入する前の状態を示す図である。図5は、圧力検出室21に水Wが流入した後の状態を示す図である。
図4及び図5に示すように、水検出部20は、一部が大気解放された圧力検出室21を備える。水検出部20は、外部から圧力検出室21内への水Wの流入と、水Wの流入に伴う圧力検出室21内からの大気への気体Eの流出と、による圧力の変化に基づいて、タンク10の浸水を検出する。
【0035】
圧力検出室21は、流入口22と、流出口23と、を有する。流入口22は、圧力検出室21の下方に設けられ、大気解放され、外部から水Wが流入する。流入口22は、フード部50において軸線方向Xから見て左右一方側(図3図4及び図5において紙面奥側)に配置され、下向きに開口している。流入口22は、下方に向かうに従い大径となるような傘状に形成されている。このように、流入口22を傘形状とすることにより、水Wの流入が安定し、水Wの検出における誤動作を防ぐことができる。流出口23は、流入口22よりも上方に備えられ、大気解放され、圧力検出室21から気体Eが流出する。流出口23は、上向きに開口している。
なお、流入口22は、不特定の方向からくる津波に対して、水Wが流入できるよう、すなわちバルブや近隣構造物の遮蔽や渦により水Wの流入が規制されないように、複数設けることが望ましい。
【0036】
圧力検出室21は、流入口22側の第1空間21Aと流出口23側の第2空間21Bとを上下方向に直交する横方向(軸線方向X)に隔てるダイアフラム24を有する。第1空間21Aは、第1ハウジング41側に位置している。第2空間21Bは、ダイアフラム24を挟んで第1空間21Aとは反対側に位置している。流入口22は、第1空間21Aに連通し、第2空間21Bには非連通である。流出口23は、第2空間21Bに連通し、第1空間21Aには非連通である。流出口23を設けることで、流入口22から水Wが第1空間21Aに浸水した際に、第1空間21Aに空気溜りができないように上方に気体Eを抜くことができる。
【0037】
ダイアフラム24は、圧力検出室21内で圧力検出室21を横方向に区画するように配置され、第1空間21Aと第2空間21Bとの間の差圧を検出する。ダイアフラム24は、外周縁24aが後述する分割された一対のフード部によって挟持された状態で固定されている。ダイアフラム24は、弾性を有する部材により形成され、第1空間21Aと第2空間21Bとを液密に区画している。
【0038】
ダイアフラム24の平面視中央部は、一対の支持板62A、62Bによって挟持されて支持されている。第1支持板62Aは、第1空間21A側からダイアフラム24を支持している。第2支持板62Bは、第2空間21B側からダイアフラム24を支持している。第1支持板62Aには、ダイアフラム軸Oと同軸に延びるロック操作片342の一端342aが固定されている。ロック操作片342は、フード部50及び圧力検出室21を液密に貫通し、他端342bが第1ハウジング41内でロック動作部341に連結されている(図2参照)。ダイアフラム24は、第1空間21A内に流入する水Wとコイルばね61のばね力の作用によって軸線方向Xに進退移動可能である。
【0039】
第2支持板62Bの外径は、フード部50の中央筒51Aの内径より小さい。第2支持板62Bの外面62aには、コイルばね61の他端61bが外側X2から押圧している。すなわち、第2支持板62Bに支持されるダイアフラム24は、コイルばね61の付勢力によって内側X1に付勢された状態で維持される。なお、第1空間21Aに水Wが流入すると、その水圧によってダイアフラム24はコイルばね61の付勢力に抗して外側X2に変位する。そして、第1空間21Aの水Wが流出すると、第1空間21A内の水圧が低下するので、ダイアフラム24はコイルばね61の付勢力に抗して外側X2に変位する。
【0040】
水検出部20では、第1空間21Aと第2空間21Bとの間の差圧を検出することで水Wが圧力検出室21の第1空間21Aに流入したことを検出する。例えば、図5に示すように、水Wが第1空間21Aに流入した後(津波が発生した状態)の第2水頭h2を検出し、水Wが第1空間21Aに流入する前(津波が発生していない状態)の第1水頭h1との水頭差Δh(=h2-h1)から水圧変化(圧力変化)を検出する。このときの水圧変化を検出したときに、第1空間21Aに水Wが満たされた状態となり、その水圧によりダイアフラム24がコイルばね61の付勢に抗して外側X2に変位する。例えば、遮断弁1が動作する水圧としては、0kPaより大きく2.0kPa以下に設定される。
【0041】
図6は、流入口22にフィルタ25とストレーナ26を設けた遮断弁1を示す縦断面図である。
図6に示すように、流入口22には、メッシュ状のフィルタ25と、フィルタ25を外周側から覆うスリット又は小孔が形成された筒状のストレーナ26と、を有する。フィルタ25は、円錐型である。流入口22にフィルタ25とストレーナ26を設けることで、津波の水Wに含まれる木くず、葉、泥、小石等の漂流物の圧力検出室21の第1空間21Aへの侵入を防止しつつ、水Wを通過させることができる。これにより、流入口22のごみの詰まり、葉の貼付き等によって水Wが圧力検出室21に流入しない不具合を防止できる。
【0042】
図7は、流出口23に空気抜き孔55を設けた遮断弁1を示す縦断面図である。
図7に示すように、流出口23は、外部からの気体または液体の流入を防ぐ空気抜き孔55(逆止弁)を備える。ここで、図7では、流出口23は、第2フード本体52に設けられている。空気抜き孔55は、流出口23から上方に延びU形状の折り返し部55aで折り返してさらに下向きに延びる形状である。空気抜き孔55の先端開口55bが下向きであるので、降水時の水が空気抜き孔55から第2空間21Bの内部に流入することを防止できる。
【0043】
上述したような構成の遮断弁1の動作について説明する。
図5に示すように、水害発生時にフード部50の内部である圧力検出室21の第1空間21Aに流入口22から水Wが流入すると、ダイアフラム24が水Wの圧力によって第2空間21B側(外側X2)に変位する。このときの第1空間21A内に流入される水Wの圧力は、コイルばね61のばね力(付勢力)よりも大きくなる。そのため、ダイアフラム24はコイルばね61の付勢力に抗して外側X2に変位する。このとき、第2空間21B内の気体Eは、流出口23から外部に流出する。
【0044】
ダイアフラム24が軸線方向Xで外側X2に移動すると、ダイアフラム24を支持する第1支持板62Aに固定されるロック機構34のロック操作片342も外側X2に移動する。そして、ロック操作片342の移動によってロック機構34のロック動作部341のロックが解除される。
【0045】
次に、ロック機構34のロックが解除されると、図3に示すように、弁体支持軸31及び弁体33が不図示の付勢部材の付勢力によって下降して、弁体33が流路43の中央連通部433に形成される弁座433aに押し付けられる。つまり弁体33は、開放位置P1(図2参照)から閉塞位置P2となり、津波等の水害発生時に停電が生じた場合でも、津波による水Wを検出して確実に遮断部30内の流路43を遮断することができる。
【0046】
その後、手動式の仕切弁13(図1参照)を閉じてタンク10から燃料等の液体Mが流出することが防止される。遮断弁1は、配管11から取り外されて、新品に交換される。遮断弁1は、交換部品を交換して再利用されてもよい。
【0047】
次に、遮断弁1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態による遮断弁1は、液体Mを貯留するタンク10に設けられた配管11の流路を遮断する。遮断弁は、一部が大気解放された圧力検出室21を備え、外部から圧力検出室21内への水Wの流入と、水Wの流入に伴う圧力検出室21内からの大気への気体Eの流出とによる圧力の変化に基づいて、タンク10の浸水を検出する水検出部29と、水検出部20により検出された浸水に基づいて動作し、タンク10に貯留された液体Mが流通する流路43を遮断する遮断部30と、を備える。
【0048】
本実施形態による遮断弁1によれば、水検出部20において圧力検出室21に対する水Wの流入と気体Eの流出による圧力変化によってタンク10が浸水したことを検出するという、電気的な構成によらず機械的な構成により浸水を検出することができる。そして、水検出部20による浸水の検出によって流路43を遮断するように遮断部30を動作させることができる。そのため、本実施形態では、遮断弁1自体が津波等の水害によって水位が上がることで、圧力検出室21内に水Wが流入し、このときの圧力検出室21内の水圧を検知して作動することから、従来のような電気・空圧設備が不要であり、これら設備に対して防爆仕様とする必要もなくなるので、設備にかかる費用を低減できる。このように本実施形態では、水害等によりタンク10及び遮断弁1とその配管11が水に浸った場合であっても、タンク10内の液体Mの流出を低コストとなる構造により防止することができる。
【0049】
また、本実施形態では、圧力検出室21は、大気解放され、外部から水Wが流入する流入口22と、流入口22よりも上方に備えられ、大気解放され、気体Eが流出する流出口23と、を有する。
このため、津波などの水害が発生したときに、流入口22から圧力検出室21内に水Wが流入し、流入口22より上方に位置する流出口23から圧力検出室21内の気体Eを大気に流出させることができる。そのため、水害発生時において圧力検出室21内に水が溜まることから、圧力検出室21内に流入する水Wによる圧力変化を検知することで、タンク10及び遮断弁1とその配管11の浸水を検出することができる。
【0050】
また、本実施形態では、流入口22側の第1空間21Aと流出口23側の第2空間21Bとを隔てるダイアフラム24を有する。ダイアフラム24は、第1空間21Aと第2空間21Bとの間の差圧を検出する。
このため、津波などの水害が発生して水位が上がると、流入口22から圧力検出室21の第1空間21A内に水Wが流入し、流入口22より上方に位置する流出口23から圧力検出室21の第2空間21B内の気体Eを大気に流出させることができる。すなわち、水害発生時において第1空間21A内に水Wが流入することによる水圧により、第1空間21Aと第2空間21Bとを隔てるダイアフラム24が第2空間21B側に押されて第2空間21B内の気体Eを流出口23から流出させることができる。このときのダイアフラム24の変位量から第1空間21Aと第2空間21Bとの間の差圧を検出することができ、これにより遮断弁1の浸水を検出することができる。
【0051】
また、本実施形態では、流出口23は、外部からの気体または液体の流入を防ぐ空気抜き孔55を備える。
本実施形態では、流出口23に空気抜き孔55が設けられているので、圧力検出室21内の気体Eを確実に外部に流出させることができ、かつ外部からの気体や液体が流出口23から圧力検出室21内へ流入することを阻止できる。つまり、圧力検出室21内には流入口22からの水Wのみが流入することから、圧力検出室21内に流入する水による圧力変化のみを正確に検知することができる。
【0052】
また、本実施形態では、水検出部20を覆うように形成され、上方からの降水に対して圧力検出室21内への浸水を防止しつつ、下方から水Wが流入した際に圧力検出室21内を浸水させるフード部50をさらに備える。
このように、水検出部20を覆うフード部50が設けられているので、上方からの降水により圧力検出室21内が浸水することを防止することができ、誤動作を防止できる。また、フード部50を設けることで、下方から流入した水Wを外部に流出させずに圧力検出室21内に充填させることができる。これにより、圧力検出室21内には流入口22からの水のみが流入することから、圧力検出室21内に流入する水による圧力変化のみを正確に検知することができる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0054】
例えば、本実施形態では、水検出部20の水検出方法として、第1空間21Aと第2空間21Bとの間の差圧を用いているが、これは一例であって他の検出方法を採用することも可能である。例えば、ダイアフラム24の押圧力によって変化するコイルばね61のばね力の値を検出する水検出方法を採用することも可能ある。例えば、上述したように、水圧とコイルばね等のばね力との圧力差で0kPaより大きく2.0kPa以下の範囲に設定すればよい。つまり、ばね力が1.0kPaである場合に、第1空間21Aに流入する水Wの水圧が1.0kPaを超えたときにダイアフラム24が第2空間21B側に押圧される。
【0055】
また、本実施形態では、流入口22がフード部50において軸線方向Xから見て左右一方側に配置されているが、左右両側のそれぞれに配置されていてもよい。すなわち、流入口22は、1箇所であることに限定されず、複数設けられていてもよい。また、流入口22は、下向きに開口していることに限定されず、横向きに開口するものであってもよい。
【0056】
さらに、本実施形態では、流出口23に設けられる逆止弁として、下向きに折り曲げられた折り返し部55aを有する空気抜き孔55を採用しているが、このような構成に限定されることはない。他の逆止弁の構成として、例えば、流出口23から鉛直方向の上方に延びるパイプの先端に第2空間21Bから押し出される気体Eの圧力で破断し得る素材で封止する構成の逆止弁を採用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 遮断弁(タンク用遮断弁)、10 タンク、11 配管、20 水検出部、21 圧力検出室、21A 第1空間、21B 第2空間、22 流入口、23 流出口、24 ダイアフラム、25 フィルタ、26 ストレーナ、30遮断部、31 弁体支持軸、33 弁体、34 ロック機構、40 弁箱、43 流路、50 フード部、55 空気抜き孔(逆止弁)、61 コイルばね、5 ガイド部、433 中央連通部、433a 弁座、E 気体、M 液体、O ダイアフラム軸、X 軸線方向、W 水
【要約】
【課題】水害等によりタンクが水に浸り、タンクが浮上、移動し、配管が損傷を受けた場合であっても、タンク内の液体の流出を低コストとなる構造により防止できるタンク用遮断弁。
【解決手段】液体Mを貯留するタンクに設けられた配管11の流路を遮断する。遮断弁は、一部が大気解放された圧力検出室を備え、外部から圧力検出室内への水Wの流入と、水Wの流入に伴う圧力検出室内からの大気への気体Eの流出とによる圧力の変化に基づいて、タンクの浸水を検出する水検出部20と、水検出部20により検出された浸水に基づいて動作し、タンクに貯留された液体Mが流通する流路43を遮断する遮断部30と、を備える。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7