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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】電力制御システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20241216BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01G7/00 601Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024109591
(22)【出願日】2024-07-08
【審査請求日】2024-07-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 香那子
(72)【発明者】
【氏名】内田 芳文
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-161118(JP,A)
【文献】特表2015-500040(JP,A)
【文献】特開2020-010632(JP,A)
【文献】特表2016-526890(JP,A)
【文献】特表2015-501655(JP,A)
【文献】特開2023-039465(JP,A)
【文献】特表2011-527805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/02
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数のプロセッサを備え、
前記1または複数のプロセッサは、
植物を生産する施設における当該植物の成長に応じた栽培フェーズに関する状態情報を取得し、
電力価格に関する価格情報を取得し、
成長に応じた栽培フェーズに関する前記状態情報により決定される、栽培フェーズに応じた電力の使用量に関する制約条件と、取得した前記価格情報とに基づいて電力の使用を制御する、電力制御システム。
【請求項2】
ネットワークを介して前記施設から前記状態情報を取得し、
ネットワークを介して前記価格情報を取得し、
前記電力の使用を制御する制御情報を、ネットワークを介して前記施設に出力する、
請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記電力価格が相対的に低い場合に、前記制約条件を満たす範囲内で前記植物に光を照射する光源の出力を高くする、
請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項4】
前記制約条件は、前記植物の生育に必要な光の照射に関する条件である、
請求項3に記載の電力制御システム。
【請求項5】
前記制約条件は、予め定められた期間における前記光源による照射量に関する条件である、
請求項4に記載の電力制御システム。
【請求項6】
前記制約条件は、前記光源により継続して照射する最大の時間に関する条件である、
請求項4に記載の電力制御システム。
【請求項7】
前記電力価格が相対的に高い場合に、前記制約条件を満たす範囲内で前記植物に光を照射する光源の出力を低くする、
請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項8】
1または複数のプロセッサに実現させるプログラムであって、
植物を生産する施設における当該植物の成長に応じた栽培フェーズに関する状態情報を取得する機能と、
電力価格に関する価格情報を取得する機能と、
成長に応じた栽培フェーズに関する前記状態情報により決定される、栽培フェーズに応じた電力の使用量に関する制約条件と、取得した前記価格情報とに基づいて電力の使用を制御する機能と、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、植物の生育状態を監視する複数のセンサと、植物栽培装置内の環境を管理する環境管理手段と、植物を栽培する作業工程を管理する工程管理手段と、を有する植物栽培装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-166495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
植物を生産する施設において、植物の光合成に必要な光エネルギーをLED等の人工光により賄うことがある。このような施設では、人工光の照射による電力消費量が大きく、電力コストが大きいという課題がある。
本発明は、植物を生産する施設において、植物の生育を損なうことなく電力コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、1または複数のプロセッサを備え、前記1または複数のプロセッサは、植物を生産する施設における当該植物の成長に応じた栽培フェーズに関する状態情報を取得し、電力価格に関する価格情報を取得し、成長に応じた栽培フェーズに関する前記状態情報により決定される、栽培フェーズに応じた電力の使用量に関する制約条件と、取得した前記価格情報とに基づいて電力の使用を制御する、電力制御システムである。
請求項2に記載の発明は、ネットワークを介して前記施設から前記状態情報を取得し、ネットワークを介して前記価格情報を取得し、前記電力の使用を制御する制御情報を、ネットワークを介して前記施設に出力する、請求項1に記載の電力制御システムである。
請求項3に記載の発明は、前記電力価格が相対的に低い場合に、前記制約条件を満たす範囲内で前記植物に光を照射する光源の出力を高くする、請求項1に記載の電力制御システムである。
請求項4に記載の発明は、前記制約条件は、前記植物の生育に必要な光の照射に関する条件である、請求項3に記載の電力制御システムである。
請求項5に記載の発明は、前記制約条件は、予め定められた期間における前記光源による照射量に関する条件である、請求項4に記載の電力制御システムである。
請求項6に記載の発明は、前記制約条件は、前記光源により継続して照射する最大の時間に関する条件である、請求項4に記載の電力制御システムである。
請求項7に記載の発明は、前記電力価格が相対的に高い場合に、前記制約条件を満たす範囲内で前記植物に光を照射する光源の出力を低くする、請求項1に記載の電力制御システムである。
請求項8に記載の発明は、1または複数のプロセッサに実現させるプログラムであって、植物を生産する施設における当該植物の成長に応じた栽培フェーズに関する状態情報を取得する機能と、電力価格に関する価格情報を取得する機能と、成長に応じた栽培フェーズに関する前記状態情報により決定される、栽培フェーズに応じた電力の使用量に関する制約条件と、取得した前記価格情報とに基づいて電力の使用を制御する機能と、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、植物を生産する施設において、植物の生育を損なうことなく電力コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態に係る電力制御システムの構成例を示す図である。
図2】栽培装置の構成例を示す図である。
図3】制御装置および管理サーバとして用いられるコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図4】管理サーバの機能構成例を示す図である。
図5】管理サーバにおける処理の流れの例を示す図である。
図6】出力量決定部が光源の出力量を決定する処理の例を示す図である。
図7】価格情報の例を示す図である。
図8】栽培環境条件情報の例を示す図である。
図9】価格情報と制約条件とに基づく光源の出力量の決定例を示す図である。(a)は各電力出力条件における最大継続時間に関する制約条件を満たす場合の例を示す。(b)は各電力出力条件における最大継続時間に関する制約条件を満たさない場合の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<電力制御システムの構成>
図1は、本実施の形態に係る電力制御システム1の構成例を示す図である。
本実施の形態に係る電力制御システム1は、植物工場10と、管理サーバ40とを備える。植物工場10と管理サーバ40とはネットワーク50を介して接続される。
【0009】
植物工場10は、植物を生産する施設である。植物工場10は植物の光合成に必要な光エネルギーをLED(Light Emitting Diode)等の人工光源により賄う人工光型の植物工場である。植物工場10は、植物を栽培する複数の栽培装置20と、栽培装置20を制御する制御装置30とを備える。
【0010】
制御装置30は、栽培装置20における栽培環境を制御する。栽培環境としては、例えば人工光源の出力量や空気の温度、湿度、養液の供給量などが挙げられる。制御装置30は栽培装置20における植物の生育状態を監視し、植物の生育状態に関する状態情報を取得する。
状態情報は、植物の品目ごとの成長に応じた栽培フェーズを示す情報である。状態情報の一例である栽培フェーズとしては、例えば「発芽期」や「生育初期」、「生育後期」、「収穫期」などが挙げられる。植物の生育状態は、例えば栽培装置20に設置された不図示のセンサ等により監視される。制御装置30は、例えば栽培フェーズごとに想定される生育状態と、複数のセンサにより取得される植物の実際の生育状態とを比較し、状態情報を判定する。栽培フェーズごとに想定される生育状態は、例えば、予め制御装置30に記憶される。
【0011】
制御装置30は、ネットワーク50を介して管理サーバ40に状態情報を送信する。また、制御装置30は、ネットワーク50を介して管理サーバ40から栽培環境の制御に関する制御情報を取得する。制御装置30は、取得した制御情報に基づいて栽培装置20における栽培環境を制御する。
制御装置30の機能は、例えば、コンピュータにより実現される。制御装置30は、単一のコンピュータにより構成しても良いし、複数のコンピュータによる分散処理により実現しても良い。
【0012】
管理サーバ40は、ネットワーク50を介して植物工場10における植物の生育状態に関する状態情報を取得する。また、管理サーバ40は、電力価格に関する価格情報を取得する。管理サーバ40は取得した状態情報と価格情報とに基づいて植物工場10における電力の使用を制御する。管理サーバ40は、ネットワーク50を介して植物工場10に電力の使用に関する制御情報を出力する。
管理サーバ40の機能は、例えば、コンピュータにより実現される。管理サーバ40は、単一のコンピュータにより構成しても良いし、複数のコンピュータによる分散処理により実現しても良い。
【0013】
ネットワーク50は、植物工場10と、管理サーバ40との間の通信を担う情報通信ネットワークである。ネットワーク50は、データの送受信が可能であれば、その種類は特に限定されず、例えばインターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等として良い。データ通信に用いられる通信回線は、有線であっても無線であっても良い。また、複数のネットワークや通信回線を介して各装置を接続する構成としても良い。
【0014】
図2は、栽培装置20の構成例を示す図である。
栽培装置20は、図2に示すように、棚板230により区画された複数の栽培室200が上下方向に積層されて形成される。図2では栽培室200が3段積層された例を示すが、これに限定されない。栽培室200の段数は適宜変更し得る。
一つの栽培装置20において、各栽培室200では同一品目の植物を生育してもよく、異なる品目の植物を生育してもよい。また、植物工場10内で、栽培装置20ごとに異なる品目の植物を生育してもよく、複数の栽培装置20ごとに同一品目の植物を生育してもよい。また、栽培装置20ごとに異なる栽培フェーズとなるように栽培周期をずらして植物を生育してもよい。
【0015】
栽培室200は、栽培プレート210と光源220とを備える。植物工場10にて生産される植物は、栽培プレート210上で生育される。栽培プレート210には、例えば生育に必要な栄養を含んだ養液が供給される。光源220には例えばLEDが用いられる。また、光源220として蛍光灯を用いてもよい。光源220の出力は制御装置30により制御される。光源220の出力量を含めた栽培環境は、例えば栽培室200ごとに制御される。
【0016】
図3は、制御装置30および管理サーバ40として用いられるコンピュータ60のハードウェア構成例を示す図である。コンピュータ60は、CPU(Central Processing Unit)601と、RAM(Random Access Memory)602と、ROM(Read Only Memory)603とを備える。RAM602はCPU601がプログラムを実行する際に作業エリアとして使用される揮発性メモリである。ROM603はCPU601により実行されるプログラムおよびその他のデータを記憶する不揮発性メモリである。CPU601は、RAM602を作業エリアに使用し、ROM603から読み出したプログラムを実行する。
また、コンピュータ60は、ネットワーク50に接続するためのネットワークIF604と、ディスプレイに表示出力を行うための表示機構605とを備える。また、コンピュータ60は、タッチパネル等で構成され操作者による入力操作が行われる入力デバイス606を備える。
【0017】
<管理サーバの機能構成>
図4は、管理サーバ40の機能構成例を示す図である。
管理サーバ40は、価格情報取得部41と、状態情報取得部42と、栽培環境条件情報取得部43と、制約条件決定部44と、出力量決定部45と、制御情報出力部46とを備える。管理サーバ40の各機能は、例えばプロセッサであるCPU601(図3参照)により実行される。
【0018】
価格情報取得部41は、電力価格に関する価格情報を取得する。価格情報取得部41は、例えばネットワーク50(図1参照)を介して、電力卸売市場から電力の市場価格を取得する。また、価格情報取得部41は、管理サーバ40を有する会社の他のサーバから価格情報を取得してもよい。例えば電力会社が管理サーバ40を有している場合には、価格情報取得部41は電力会社の他のサーバから価格情報を取得する。
価格情報について、詳細は後述する。
【0019】
状態情報取得部42は、植物の生育状態に関する状態情報を取得する。状態情報取得部42は、制御対象である光源220を有する栽培室200(図2参照)における植物の状態情報を取得する。状態情報取得部42は、例えばネットワーク50を介して、植物工場10の制御装置30(図1参照)から状態情報を取得する。状態情報取得部42は、栽培装置20(図1参照)に設置され、植物の生育状態を監視するセンサ等から植物の生育状態を取得し、状態情報を判定してもよい。また、状態情報取得部42は、植物の生育開始時期から生育状態を推定する構成としてもよい。
【0020】
栽培環境条件情報取得部43は、栽培フェーズごとの制約条件に関する栽培環境条件情報を取得する。制約条件とは、植物の生育に必要な栽培環境を確保するために設定される、電力の使用量に関する条件である。制約条件は、例えば、光源220による光の照射に関する条件である。制約条件は、植物の品目、栽培フェーズごとに異ならせて予め設定される。
【0021】
栽培環境条件情報取得部43は、例えばネットワーク50を介して、植物工場10で生育される植物の情報が記憶されたサーバから栽培環境条件情報を取得する。植物工場10の制御装置30から栽培環境条件情報を取得する構成としてもよい。また、栽培環境条件情報が予め管理サーバ40に格納され、栽培環境条件情報取得部43が格納された栽培環境条件情報を取得する構成としてもよい。
栽培環境条件情報について、詳細は後述する。
【0022】
制約条件決定部44は、電力の使用量に関する制約条件を決定する。制約条件決定部44は、光源220の出力量の決定に使用する制約条件を決定する。制約条件決定部44は、状態情報取得部42が取得した状態情報と栽培環境条件情報取得部43が取得した栽培環境条件情報とから、対応する制約条件を決定する。
【0023】
出力量決定部45は、光源220の出力量を決定する。出力量決定部45は、制約条件決定部44が決定した制約条件を満たす範囲内で、価格情報に基づいて光源220の出力量を決定する。
制約条件を考慮しない場合、電力価格が高い場合に光源220の出力を低く、電力価格が低い場合に光源220の出力を高くすることが電力コストを低減するためには望ましい。電力価格が高い場合に光源220の出力を低くすることで電力の消費を抑制し、電力コストを低減することができる。
【0024】
しかしながら、例えば光源220の出力が低い状態が続くと植物の生育が鈍化し生産性が低下する。そのため、植物の生育を阻害しない範囲内で光源220の出力を制御する必要がある。そこで本実施の形態において、出力量決定部45は、価格情報と制約条件とに基づいて光源220の出力量を決定する。
出力量決定部45は、例えば電力価格が相対的に低い場合に、制約条件を満たす範囲内で光源220の出力を高く決定する。また、出力量決定部45は、例えば電力価格が相対的に高い場合に、制約条件を満たす範囲内で光源220の出力を低く決定する。
【0025】
電力価格が相対的に低いとは、予め定められた期間における他の時間帯と比べて電力価格が相対的に低いことである。例えば予め定められた期間における電力価格の変動幅のうちで閾値が定められ、電力価格が閾値よりも低い場合を電力価格が相対的に低い場合としてもよい。
電力価格が相対的に高いとは、予め定められた期間における他の時間帯と比べて電力価格が相対的に高いことである。例えば予め定められた期間における電力価格の変動幅のうちで閾値が定められ、電力価格が閾値よりも高い場合を電力価格が相対的に高い場合としてもよい。
【0026】
制御情報出力部46は、電力の使用に関する制御情報を出力する。制御情報出力部46は、ネットワーク50を介して植物工場10に制御情報を出力する。制御情報は、出力量決定部45により決定された光源220の出力量を含む。
【0027】
<管理サーバにおける処理フロー>
管理サーバ40における処理の流れについて、図5乃至図9を用いて説明する。
図5は、管理サーバ40における処理の流れの例を示す図である。
図5において、まず、価格情報取得部41が電力価格に関する価格情報を取得する(ステップ1001)。価格情報取得部41は、例えばネットワーク50を介して価格情報を取得する。価格情報とは、電力価格として例えば時間ごとの電力単価P(円/kWh)を示す情報である。
【0028】
図7は、価格情報の例を示す図である。図7に示すように、価格情報としては例えば日付ごとに30分ごとの電力単価Pが示される。価格情報取得部41は、予め定められた期間分の価格情報を取得する。価格情報取得部41は、例えば現在から24時間後までの価格情報を取得する。
次に、状態情報取得部42が植物の生育状態に関する状態情報を取得する(ステップ1002)。状態情報取得部42は植物の品目と栽培フェーズとを取得する。次に、栽培環境条件情報取得部43が栽培環境条件情報を取得する(ステップ1003)。
【0029】
図8は、栽培環境条件情報の例を示す図である。図8に示すように、栽培環境条件情報は栽培フェーズごとに、光源220の出力に関する電力出力条件ごとの予め定められた制約条件を示す。ここでは、電力出力条件として光源220は「低」、「中」、「高」の三段階の電力出力の切り替えが可能である場合について示す。図8に示す制約条件は、各電力出力条件における最大継続時間と累積時間に関する条件である。栽培環境条件情報は植物の品目ごとに予め定められる。
【0030】
最大継続時間および累積時間に関する制約条件は、植物の成長阻害を防ぐために設定される。
例えば栽培フェーズ「初期」においては、最大継続時間に関する制約条件から、電力出力条件「低」で2時間以上継続して照射を行うことはできない。また、栽培フェーズ「初期」においては、累積時間に関する制約条件から、予め定められた期間において電力出力条件「低」と電力出力条件「高」の累積時間を等しくする必要がある。
【0031】
なお、電力出力条件はここでは光源220の出力を示すが、これに限定されない。例えば栽培環境条件情報は温度や湿度等の栽培環境を制御する空調の出力に関する制約条件を含んでもよい。
次に、制約条件決定部44が電力の使用量に関する制約条件を決定する(ステップ1004)。制約条件決定部44は、栽培環境条件情報から、状態情報取得部42が取得した植物の品目と栽培フェーズに対応する制約条件を決定する。
【0032】
次に、出力量決定部45が光源220の出力量を決定する(ステップ1005)。出力量決定部45は、価格情報と制約条件とに基づいて光源220の出力量を決定する。出力量決定部45が光源220の出力量を決定する処理について、詳細は後述する。
そして、制御情報出力部46が光源220の出力量を含む制御情報を出力する(ステップ1006)。制御情報出力部46は、ネットワーク50を介して植物工場10に制御情報を出力する。
【0033】
図5のステップ1005における処理について、図6を用いて詳細に説明する。
図6は、出力量決定部45が光源220の出力量を決定する処理の例を示す図である。図6では、各電力出力条件における累積時間に関する制約条件は考慮せず、最大継続時間に関する条件を制約条件として用いた例を示す。また、図6においては、光源220が「低」、「中」、「高」の三段階の電力出力条件の切り替えが可能である場合について説明する。
【0034】
以下において、「電力単価Pが相対的に低い」とは電力単価Pが閾値P_lowよりも低いことを示すものとする。また、「電力単価Pが相対的に高い」とは電力単価Pが閾値P_highよりも高いことを示すものとする。閾値P_lowおよび閾値P_highは予め定められた閾値であり、P_highはP_lowよりも大きい値が設定される。
【0035】
図6において、まず、出力量決定部45は、価格情報から電力単価Pが相対的に高い時間帯を特定し、各時間帯の継続時間D1を算出する(ステップ1011)。出力量決定部45は、価格情報からP_high <Pとなる継続時間D1を算出する。P_high <Pとなる時間帯が複数ある場合、各時間帯ごとの継続時間D1を算出する。
次に、出力量決定部45は、継続時間D1が制約条件を満たすか否かを判定する(ステップ1012)。P_high <Pとなる時間帯が複数ある場合、各時間帯ごとの継続時間D1について制約条件を満たすか否かが判定される。
【0036】
継続時間D1が制約条件を満たす場合(ステップ1012でYES)、電力単価Pが相対的に高い時間帯に電力出力条件「低」を割り当てる(ステップ1013)。一方で継続時間D1が制約条件を満たさない場合(ステップ1012でNO)、電力単価Pが相対的に高い時間帯のうち、制約条件を満たす部分に電力出力条件「低」を割り当てる(ステップ1014)。そして、電力単価Pが相対的に高い時間帯のうち、制約条件を超える部分に電力出力条件「中」を割り当てる(ステップ1015)。
【0037】
次に、出力量決定部45は、価格情報から電力単価Pが相対的に低い時間帯を特定し、各時間帯の継続時間D2を算出する(ステップ1016)。出力量決定部45は、価格情報からP_low >Pとなる継続時間D2を算出する。P_low >Pとなる時間帯が複数ある場合、各時間帯ごとの継続時間D2を算出する。
次に、出力量決定部45は、継続時間D2が制約条件を満たすか否かを判定する(ステップ1017)。P_low >Pとなる時間帯が複数ある場合、各時間帯ごとの継続時間D2について制約条件を満たすか否かが判定される。
【0038】
継続時間D2が制約条件を満たす場合(ステップ1017でYES)、電力単価Pが相対的に低い時間帯に電力出力条件「高」を割り当てる(ステップ1018)。一方で継続時間D2が制約条件を満たさない場合(ステップ1017でNO)、電力単価Pが相対的に低い時間帯のうち、制約条件を満たす部分に電力出力条件「高」を割り当てる(ステップ1019)。そして、電力単価Pが相対的に低い時間帯のうち、制約条件を超える部分に電力出力条件「中」を割り当てる(ステップ1020)。
そして、出力量決定部45は、残りの部分に電力出力条件「中」を割り当てる(ステップ1021)。
【0039】
このように、出力量決定部45は、制約条件を満たす範囲内で、電力単価Pが相対的に低い場合に光源220の出力量を高く、電力単価Pが相対的に高い場合に光源220の出力量を低く決定する。なお、図6においては制約条件として各電力出力条件における最大継続時間に関する条件のみを用いた場合の例を示した。出力量決定部45は、制約条件として各電力出力条件における累積時間に関する条件をさらに用いて光源220の出力量を決定してもよい。
【0040】
例えば、出力量決定部45は、予め定められた期間において電力出力条件「低」と電力出力条件「高」の累積時間が等しくなるように光源220の出力量を決定する。出力量決定部45は、制約条件を満たす範囲内で電力単価Pが相対的に高い時間帯に電力出力条件「低」を割り当て、電力単価Pが相対的に低い時間帯に電力出力条件「高」を割り当てる。そして、出力量決定部45は、制約条件を満たさない部分について電力出力条件「中」を割り当てる。
【0041】
例えば、出力量決定部45は、予め定められた期間における価格情報から電力単価Pが相対的に高い時間帯と相対的に低い時間帯とを特定する。出力量決定部45は電力単価Pが相対的に高い時間帯と相対的に低い時間帯それぞれの累積時間を算出する。
出力量決定部45は、例えば電力単価Pが相対的に高い時間帯と相対的に低い時間帯のうち累積時間が短い方に合わせて電力出力条件を割り当てる。累積時間が長い方については、時間が超過した部分について電力出力条件「中」を割り当てる。
【0042】
図9は、価格情報と制約条件とに基づく光源220の出力量の決定例を示す図である。(a)は各電力出力条件における最大継続時間に関する制約条件を満たす場合の例を示す。(b)は各電力出力条件における最大継続時間に関する制約条件を満たさない場合の例を示す。
図9では、各電力出力条件における最大継続時間に関する条件を制約条件として用いた例を示す。また、図9においては、光源220が「低」、「中」、「高」の三段階の電力出力条件の切り替えが可能である場合について説明する。図9において、横軸は時間を、縦軸は電力単価P(円/kWh)を示す。
【0043】
図9(a)において、電力単価Pが相対的に高い時間帯は時間t3から時間t4までの期間と、時間t7から時間t8までの期間である。図6のステップ1012では、これらの期間の継続時間D1がそれぞれ制約条件を満たすか否かが判定される。図9(a)においては各電力出力条件における最大継続時間に関する制約条件を満たすため、これらの期間には電力出力条件「低」が割り当てられる。
【0044】
また、図9(a)において、電力単価Pが相対的に低い時間帯は時間t1から時間t2までの期間と、時間t5から時間t6までの期間である。図6のステップ1017では、これらの期間の継続時間D2がそれぞれ制約条件を満たすか否かが判定される。図9(a)においては各電力出力条件における最大継続時間に関する制約条件を満たすため、これらの期間には電力出力条件「高」が割り当てられる。
そして、残りの部分には電力出力条件「中」が割り当てられる。つまり、時間t2から時間t3まで、時間t4から時間t5まで、時間t6から時間t7まで、時間t8から時間t9までの期間には電力出力条件「中」が割り当てられる。
【0045】
一方で、図9(b)は各電力出力条件における最大継続時間に関する制約条件を満たさない場合の例を示す。図9(b)において、電力単価Pが相対的に高い時間帯は時間t3から時間t4までの期間と、時間t7から時間t8までの期間である。
ここで、時間t7から時間t8までの期間が最大継続時間に関する制約条件を満たさないとする。この期間は、時間t7から時間T2までの部分は制約条件を満たすが、時間T2から時間t8までの部分は制約条件を満たさない。この場合、時間t7から時間T2までの制約条件を満たす部分には電力出力条件「低」が割り当てられる。そして、時間T2から時間t8までの制約条件を満たさない部分には電力出力条件「中」が割り当てられる。
【0046】
また、図9(b)において、電力単価Pが相対的に低い時間帯は時間t1から時間t2までの期間と、時間t5から時間t6までの期間である。
ここで、時間t1から時間t2までの期間が最大継続時間に関する制約条件を満たさないとする。この期間は、時間t1から時間T1までの部分は制約条件を満たすが、時間T1から時間t2までの部分は制約条件を満たさない。この場合、時間t1から時間T1までの制約条件を満たす部分には電力出力条件「高」が割り当てられる。そして、時間T1から時間t2までの制約条件を満たさない部分には電力出力条件「中」が割り当てられる。
【0047】
そして、残りの部分には電力出力条件「中」が割り当てられる。つまり、時間t2から時間t3まで、時間t4から時間t5まで、時間t6から時間t7まで、時間t8から時間t9までの期間には電力出力条件「中」が割り当てられる。
【0048】
なお、図9に示す例は一例であり、これに限定されない。例えば、制約条件として各電力出力条件における累積時間に関する条件をさらに用いて光源220の出力量を決定してもよい。また、例えばP_highとP_lowとを同じ値に設定し、電力出力条件を「低」、「高」の二段階で切り替える構成としてもよい。また、閾値をより細かく設定し、電力出力条件をより細かく設定できる構成としてもよい。
【0049】
また、出力量決定部45は、光源220の出力量を決定するだけでなく、空気の温度や湿度を含む栽培条件を決定する構成としてもよい。例えば、光源220の出力量、空気の温度、湿度に関する栽培条件のテーブルが予め作成される。出力量決定部45は、価格情報と制約条件とに基づいて栽培条件のテーブルから適当な栽培条件を選択する。このように、予め定められた栽培条件を割り当てることにより栽培条件を制御してもよい。
【0050】
また、本実施の形態においては、管理サーバ40は、ネットワーク50を介して植物工場10における植物の生育状態に関する状態情報を取得しているが、これに限定されない。例えば、制御装置30が図4に示した管理サーバ40の機能構成を備える構成としてもよい。また、管理サーバ40が植物工場10の内部に備えられる構成としてもよい。また、管理サーバ40は栽培装置20から直接状態情報等を取得し、直接制御情報を出力する構成としてもよい。
【0051】
本実施の形態において、管理サーバ40は、例えば栽培装置20ごとに植物が異なる栽培フェーズにあることを利用した電力制御を行ってもよい。例えば、栽培フェーズをずらすことで、電力価格が相対的に高い時間帯に同時に電力出力条件「高」となる栽培装置20を減らす。これにより植物工場10全体における電力コストを低減することが考えられる。
また、本実施の形態において、電力出力条件「高」の状態を代替する代替条件を設定してもよい。例えば、制約条件として電力出力条件「高」の状態が5時間必要であった場合に、代替条件として電力出力条件「中」の状態が8時間必要、と置き換えてもよい。
【0052】
以上説明したように、人工光型の植物工場10は植物の栽培環境条件を人工的に制御することができるため、電力負荷を調整可能という特徴を持つ。例えば光源220の出力を制御することで、昼夜を逆転させて植物を生育することができる。本実施の形態においては、電力の市場価格と連動して電力負荷を調整することで、電力コストを低減することができる。また、植物の栽培特性に応じた各種環境条件の制約条件を設けることで、植物の生育を損なうことなく電力コストを低減することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…電力制御システム、10…植物工場、20…栽培装置、30…制御装置、40…管理サーバ、41…価格情報取得部、42…状態情報取得部、43…栽培環境条件情報取得部、44…制約条件決定部、45…出力量決定部、46…制御情報出力部、50…ネットワーク、200…栽培室、210…栽培プレート、220…光源、230…棚板
【要約】
【課題】植物を生産する施設において、植物の生育を損なうことなく電力コストを低減する。
【解決手段】電力システムは、1または複数のプロセッサを備え、1または複数のプロセッサは、植物を生産する施設における植物の生育状態に関する状態情報を取得し、電力価格に関する価格情報を取得し、取得した状態情報により決定される電力の使用量に関する制約条件と、取得した価格情報とに基づいて電力の使用を制御する。
【選択図】図1
図1
図2
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図9