(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】ベルト
(51)【国際特許分類】
F16G 1/08 20060101AFI20241216BHJP
F16G 1/28 20060101ALI20241216BHJP
【FI】
F16G1/08 A
F16G1/28 A
(21)【出願番号】P 2024520446
(86)(22)【出願日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2023017317
(87)【国際公開番号】W WO2023219064
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2024-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2022078975
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】高原 将人
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/002899(WO,A1)
【文献】特開2021-55845(JP,A)
【文献】特開2019-29211(JP,A)
【文献】特表2015-505758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 1/08
F16G 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体と、
導電性を有する芯線を含む1又は複数の通電用芯体コードと、
上記通電用芯体コードより単位長当たりの電気抵抗が高い1又は複数の補強用芯体コードと
を備え、
上記通電用芯体コード及び上記補強用芯体コードが、上記ベルト本体の幅方向に間隔を空けて長さ方向に沿って上記ベルト本体に埋設されており、
上記通電用芯体コードが、上記芯線を被覆するように周面を構成する被覆膜を有し、
上記
被覆膜が上記ベルト本体と融着しているベルト。
【請求項2】
上記ベルト本体の主成分が、エラストマーであり、
上記被覆膜の主成分が、ポリエチレン又はポリエステルである請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
上記エラストマーが、難燃性素材である請求項2に記載のベルト。
【請求項4】
その摩擦係数が上記ベルト本体の摩擦係数よりも低く、上記ベルト本体の片面又は両面を被覆するカバー層を備える請求項1、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【請求項5】
少なくとも片面の上記カバー層の主成分が、ナイロン系樹脂又はフッ素系樹脂である請求項4に記載のベルト。
【請求項6】
その硬度が上記ベルト本体の硬度よりも高く、上記ベルト本体の片面又は両面を被覆するカバー層を備える請求項1、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【請求項7】
少なくとも片面の上記カバー層の主成分が、熱可塑性エラストマー系樹脂である請求項6に記載のベルト。
【請求項8】
上記ベルト本体のJIS-A硬度が、70以上100未満である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【請求項9】
上記ベルト本体が、少なくとも片面に上記通電用芯体コード及び上記補強用芯体コードを支持するための凹部である芯体支持部を有し、
上記芯体支持部が被覆されている請求項1、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【請求項10】
上記幅方向の最も外側に位置する芯体コードがそれぞれ補強用芯体コードである請求項1、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【請求項11】
複数の上記通電用芯体コードを有し、
隣接する上記通電用芯体コードの間に上記補強用芯体コードが配置されている請求項1、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【請求項12】
複数の上記通電用芯体コードを有し、
2本以上5本以下の上記通電用芯体コードが連続して隣接する芯体コード群が形成されている請求項1、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【請求項13】
上記通電用芯体コードの芯線が、軟銅線又は銅合金線である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【請求項14】
上記通電用芯体コードの芯線が、単線、集合撚り線又はロープ撚り線である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【請求項15】
上記通電用芯体コードが、シールド線、ケーブル又はシールド付きケーブルである請求項1、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【請求項16】
上記ベルト本体が、厚さ方向に貫通する1又は複数のベルト穴を有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【請求項17】
上記通電用芯体コードが、少なくとも一端側にコネクタを有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【請求項18】
平ベルトである請求項1、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【請求項19】
上記ベルト本体の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部を備える歯付ベルトである請求項1、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫等での物品の昇降や搬送に、ベルトが用いられる場合がある。この場合、例えばベルトに開けた貫通孔を介してネジにより台車をベルトに固定し、上記ベルトを駆動するプーリを回転動作することでこの台車を上下あるいは左右に移動させる。上記物品は、上記台車に入れられて昇降や搬送される。
【0003】
上記台車には、例えば積み込んだ荷が台車から滑り落ちないようにストッパーが搭載されているものがある。このストッパーは台車に荷を搭載する時や荷を積み降ろす時には障害とならないように格納可能に電気制御される場合がある。このように台車には電気により制御される付加機能が搭載されている場合が少なくない。
【0004】
このような付加機能を制御する電気信号や電源の配線(以下、単に「配線」ともいう)を、芯体コードと兼用するベルトが提案されている(特開2019-60403号公報参照)。このベルトでは、芯体コードを通電可能な材質とすることで、給電ケーブルとしても兼用しているので、ベルトの厚みの増加を抑止しつつ、配線をベルト内に埋設することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような通電機能を芯体コードに持たせたベルトでは、通電機能を担う芯体コードに配線が接続されるため、芯体コードにベルトの動きとは異なる方向に張力が加わる場合がある。このため、芯体コードとベルト本体とが剥離し易く、ベルトに不具合が生じるおそれがある。
【0007】
本発明はこのような不都合に鑑みてなされたものであり、電気信号や電源の配線として芯体コードを利用しても、芯体コードとベルト本体とが剥離することを抑止できるベルトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るベルトは、ベルト本体と、導電性を有する芯線を含む1又は複数の通電用芯体コードと、上記通電用芯体コードより単位長当たりの電気抵抗が高い1又は複数の補強用芯体コードとを備え、上記通電用芯体コード及び上記補強用芯体コードが、上記ベルト本体の幅方向に間隔を空けて長さ方向に沿って上記ベルト本体に埋設されており、上記通電用芯体コードが、上記芯線を被覆するように周面を構成する被覆膜を有し、上記被覆膜が上記ベルト本体と融着している。
【発明の効果】
【0009】
本発明のベルトは、電気信号や電源の配線として芯体コードを利用しても、芯体コードとベルト本体とが剥離することを抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るベルトを示す模式的斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のベルトのA-A線での模式的断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のベルトのB-B線での模式的断面図である。
【
図4】
図4は、
図1のベルトのベルト穴付近の補強用芯体コードを示す模式的斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4とは異なる構成のベルト穴付近の補強用芯体コードを示す模式的斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1とは異なる実施形態に係るベルトを示す模式的斜視図である。
【
図7】
図7は、
図3及び
図6とは異なる実施形態に係るベルトの模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。
【0012】
本発明の一実施形態に係るベルトは、ベルト本体と、導電性を有する芯線を含む1又は複数の通電用芯体コードと、上記通電用芯体コードより単位長当たりの電気抵抗が高い1又は複数の補強用芯体コードとを備え、上記通電用芯体コード及び上記補強用芯体コードが、上記ベルト本体の幅方向に間隔を空けて長さ方向に沿って上記ベルト本体に埋設されており、上記通電用芯体コードが、上記芯線を被覆するように周面を構成する被覆膜を有し、上記被覆膜が上記ベルト本体と融着している。
【0013】
当該ベルトは、通電用芯体コードが芯線と被覆膜とを有しているので、通電用芯体コードに配線が接続された際、芯体コードに加わった張力は、芯線と被覆膜との双方に伝わる。このうち被覆膜はベルト本体と融着しているので、ベルト本体と通電用芯体コードとの双方に同じ方向の張力が働く。従って、当該ベルトは、通電用芯体コードとベルト本体とが剥離することを抑止することができる。
【0014】
上記ベルト本体の主成分が、エラストマーであり、上記被覆膜の主成分が、ポリエチレン又はポリエステルであるとよい。このように上記ベルト本体の主成分をエラストマーとし、上記被覆膜の主成分をポリエチレン又はポリエステルとすることで、容易に上記被覆膜を上記ベルト本体に融着させることができる。
【0015】
上記エラストマーが、難燃性素材であるとよい。このように上記エラストマーを難燃性素材とすることで、漏電等によるベルト本体の発火を確実に抑止できる。
【0016】
その摩擦係数が上記ベルト本体の摩擦係数よりも低く、上記ベルト本体の片面又は両面を被覆するカバー層を備えるとよい。このように低摩擦係数のカバー層を設けることで、当該ベルトを使用時の耐摩耗性に優れたものとすることができる。
【0017】
少なくとも片面の上記カバー層の主成分が、ナイロン系樹脂又はフッ素系樹脂であるとよい。このように上記カバー層の主成分をナイロン系樹脂又はフッ素系樹脂とすることで、上記カバー層の摩擦係数を低減できる。
【0018】
その硬度が上記ベルト本体の硬度よりも高く、上記ベルト本体の片面又は両面を被覆するカバー層を備えるとよい。このように高硬度のカバー層を設けることで、当該ベルトの強度を高めることや、耐摩耗性を高めることができる。
【0019】
少なくとも片面の上記カバー層の主成分が、熱可塑性エラストマー系樹脂であるとよい。このように上記カバー層の主成分を熱可塑性エラストマー系樹脂とすることで、ベルト本体とカバー層とを剥離し難いものとすることができる。
【0020】
上記ベルト本体のJIS-A硬度としては、70以上100未満が好ましい。このように上記ベルト本体のJIS-A硬度を上記範囲内とすることで、強度の低下を抑止しつつ伝動効率を高められる。
【0021】
上記ベルト本体が、少なくとも片面に上記通電用芯体コード及び上記補強用芯体コードを支持するための凹部である芯体支持部を有し、上記芯体支持部が被覆されているとよい。このように芯体支持部を有することで、当該ベルトを製造する際の通電用芯体コード及び補強用芯体コードの埋設位置を制御し易い。また、上記芯体支持部を被覆することで、当該ベルトを使用する際に、通電用芯体コードが他の導体と短絡することを抑止できる。
【0022】
上記幅方向の最も外側に位置する芯体コードがそれぞれ補強用芯体コードであるとよい。上記幅方向の最も外側に位置する芯体コードは、当該ベルトの側面からの擦れによる摩耗等により電気抵抗が経年増加するおそれがある。このため、上記幅方向の最も外側に位置する芯体コードをそれぞれ補強用芯体コードとし、電気信号あるいは電源の配線に用いないことで、配線としての信頼性を高めることができる。
【0023】
複数の上記通電用芯体コードを有し、隣接する上記通電用芯体コードの間に上記補強用芯体コードが配置されているとよい。このように隣接する上記通電用芯体コードの間に上記補強用芯体コードを配置することで、当該ベルトの強度が局所的に低下することを抑止できる。
【0024】
複数の上記通電用芯体コードを有し、2本以上5本以下の上記通電用芯体コードが連続して隣接する芯体コード群が形成されているとよい。このように芯体コード群を構成することで、例えば電源配線等のように低抵抗が要求される配線に対して並列接続を行い易い。また、同一信号に対して並列して通電用芯体コードを用いる場合、芯体コード群を構成する通電用芯体コード間の平均間隔を狭くすることができるので、当該ベルトの幅の増加をさらに抑止できる。
【0025】
上記通電用芯体コードの芯線が、軟銅線又は銅合金線であるとよい。銅は単位長当たりの電気抵抗が低く、通電用途に好適である。また、軟銅線及び銅合金線は屈曲し易いため、断線等の不具合が生じることを抑止できる。
【0026】
上記通電用芯体コードの芯線が、単線、集合撚り線又はロープ撚り線であるとよい。上記通電用芯体コードの芯線を単線とすることで、芯体の断面が最密となるので、芯線を低抵抗化し易い。また、上記通電用芯体コードの芯線を集合撚り線又はロープ撚り線とすることで、芯体の強度が高められ断線等の不具合が生じることを抑止できるとともに、当該ベルトの屈曲疲労性を向上させることができる。
【0027】
上記通電用芯体コードが、シールド線、ケーブル又はシールド付きケーブルであるとよい。このように上記通電用芯体コードをシールド線、ケーブル又はシールド付きケーブルとすることで、上記通電用芯体コードのノイズ耐性を高めることができる。
【0028】
上記ベルト本体が、厚さ方向に貫通する1又は複数のベルト穴を有するとよい。このように上記ベルト本体に1又は複数のベルト穴を設けることで、当該ベルトを台車等に固定し易い。
【0029】
上記通電用芯体コードが、少なくとも一端側にコネクタを有するとよい。このように上記通電用芯体コードの少なくとも一端側にコネクタを設けることで、当該ベルトと他の機器との配線を容易に行うことができる。
【0030】
当該ベルトが、平ベルトであるとよい。当該ベルトは、通電機能を必要とする平ベルトに好適に用いることができる。
【0031】
当該ベルトが、上記ベルト本体の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部を備える歯付ベルトであるとよい。当該ベルトは、通電機能を必要とする歯付ベルトに好適に用いることができる。
【0032】
ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分を意味し、好ましくは含有量が50質量%以上、より好ましくは90質量%以上の成分をいう。「JIS-A硬度」とは、JIS-K-7312:1996(A法)に準じて固定されたベルト表面にA型硬度計の押針を当てて測定した硬度をいう。
【0033】
また「摩擦係数」は、以下の手順により測定される値を指す。ベルトから5cm×15cm四方の大きさの試験片を切り取る。静摩擦係数測定機(例えば新東化学株式会社製静摩擦測定機 TYPE:10)に、上記試験片を固定する。ミガキ鋼を試験片の上に固定し、測定機の台を上昇させ、ミガキ鋼が動いた時の目盛りを読み取り、摩擦係数値とする。
【0034】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の一実施形態に係るベルトについて、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
〔第1実施形態〕
図1、
図2及び
図3に示すベルト1は、ベルト本体10と、4本の通電用芯体コード20と、6本の補強用芯体コード30と、カバー層40とを備える。当該ベルト1は、平ベルトである。当該ベルト1は、通電機能を必要とする平ベルトに好適に用いることができる。
【0036】
また、ベルト本体10は、厚さ方向に貫通する1又は複数の(
図1では3つの)ベルト穴11を有し、通電用芯体コード20及び補強用芯体コード30は、ベルト本体10の幅方向に間隔を空けて長さ方向に沿ってベルト本体10に埋設されている。
【0037】
<ベルト本体>
ベルト本体10の主成分は、ゴム又は樹脂である。上記ゴムとしては、エチレン-プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)等のエチレン-α-オレフィンゴム、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR)等を挙げることができる。上記ゴムは、これらのうちの1種でもよいが、2種以上をブレンドしたものであってもよい。上記樹脂としては、熱可塑性のポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン等を挙げることができる。
【0038】
中でもベルト本体10の主成分が、エチレン-α-オレフィンゴム、熱可塑性ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル等のエラストマーであることが好ましく、熱可塑性ウレタン、ポリアミド及びポリエステルがより好ましい。熱可塑性ウレタンは、低発塵性で耐摩耗性に優れる。ポリアミドは、耐油性、耐薬品性及び耐摩耗性に優れる。ポリエステルは、耐水性、低温柔軟性、強度及び耐疲労性に優れる。また、上記エラストマーは、難燃性素材であるとよい。このように上記エラストマーを難燃性素材とすることで、漏電等によるベルト本体10の発火を確実に抑止できる。
【0039】
ベルト本体10の平均厚さは、当該ベルト1に要求される強度等により適宜決定されるが、例えば1mm以上10mm以下とできる。
【0040】
ベルト本体10の幅及び長さは、当該ベルト1の用途に応じて適宜決定される。なお、当該ベルト1は、両端部を有するオープンベルトとして主に用いられる。
【0041】
ベルト本体10のJIS-A硬度の下限としては、70が好ましく、75がより好ましい。一方、ベルト本体10のJIS-A硬度は、100未満が好ましく、95未満がより好ましく、80未満がさらに好ましい。ベルト本体10のJIS-A硬度が上記下限未満であると、ベルト本体10の強度、ひいては当該ベルト1の強度が不足するおそれがある。逆に、ベルト本体10のJIS-A硬度が上記上限以上であると、当該ベルト1の伝動効率が低下するおそれがある。
【0042】
図1及び
図2に示すように、当該ベルト1ではベルト本体10が片面(駆動面)に通電用芯体コード20及び補強用芯体コード30を支持するための凹部である複数の芯体支持部20aを有している。当該ベルト1を製造する際、複数の芯体支持部20aにより通電用芯体コード20及び補強用芯体コード30を支持しつつ、例えば押出成形によりベルト本体10を製造することができる。つまり、このように芯体支持部20aを有することで、当該ベルト1を製造する際の通電用芯体コード20及び補強用芯体コード30の埋設位置を制御し易い。
【0043】
芯体支持部20aは被覆されていることが好ましい。当該ベルト1では、後述する第2カバー層42により被覆されている。芯体支持部20aを被覆することで、当該ベルト1を使用する際に、通電用芯体コード20が他の導体と短絡することを抑止できる。
【0044】
ベルト本体10は、各種添加剤を含んでもよい。このような添加剤としては、例えば酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、防曇剤、難燃剤、表面調整剤、顔料、フィラー、ワックス等が挙げられる。
【0045】
ベルト穴11は、例えば台車等の連結対象物を当該ベルト1に固定するために用いられ、具体的には例えばネジが差し込まれて当該ベルト1と締結される。ベルト穴11の断面形状は、特に限定されるものではないが、一般には円形状とされる。以下、ベルト穴11の断面が円形状であることを前提に説明するが、他の形状を排除するものではない。
【0046】
ベルト穴11は、単数であってもよいが、上記連結対象物が回転することを抑止するため複数設けられることが好ましい。また、上記連結対象物の重量に応じて、ベルト穴11の数は3以上としてもよい。あるいは、取り付け位置の調整が可能となるようにベルト穴11を上記連結対象物への締結数より多く設けることも可能である。
【0047】
ベルト穴11は、ベルト本体10の幅方向中央部に設けられることが好ましい。ベルト穴11をベルト本体10の幅方向中央部に設けることで、上記連結対象物を安定して連結することができる。
【0048】
また、ベルト穴11は、一般にベルト本体10の長さ方向の一方の端部又は両端部に設けられる。上記連結対象物は、ベルト本体10の長さ方向の端部に連結される場合が多いためである。
【0049】
複数のベルト穴11が設けられている場合、複数のベルト穴11は、その中心が長さ方向に沿って並ぶように配列される。隣接するベルト穴11間は、上記連結対象物が締結できるように適宜定められる。複数のベルト穴11は、等間隔に並んでいることが好ましい。このように複数のベルト穴11を等間隔で並べることで、上記連結対象物を締結する際に、ベルト本体10にかかる圧力が均一に分散され易くなり、局所的に圧力が集中してベルト本体10が損傷することを抑止できる。
【0050】
ベルト穴11の直径の下限としては、2mmが好ましく、3mmがより好ましい。一方、ベルト穴11の直径の上限としては、7mmが好ましく、6mmがより好ましい。ベルト穴11の直径が上記下限未満であると、上記連結対象物との締結強度が十分に確保できないおそれがある。逆に、ベルト穴11の直径が上記上限を超えると、ベルト穴11近傍のベルト本体10の強度が不足するおそれや、通電用芯体コード20のコード数が十分に確保できなくなるおそれがある。
【0051】
<通電用芯体コード>
通電用芯体コード20は、線状体であり、例えば円形断面を有する。通電用芯体コード20は、
図3に示すように、導電性を有する芯線21を含むとともに、芯線21を被覆するように周面を構成する被覆膜22を有する。
【0052】
また、通電用芯体コード20は、
図1に示すように、少なくとも一端側にコネクタ23を有するとよい。コネクタ23は、通電用芯体コード20を当該ベルト1外の信号線と接続するための部材である。このように通電用芯体コード20の少なくとも一端側にコネクタ23を設けることで、当該ベルト1と他の機器との配線を容易に行うことができる。なお、コネクタ23は、通電用芯体コード20の両端に設けられてもよい。
【0053】
通電用芯体コード20は、シールド線、ケーブル又はシールド付きケーブルであるとよい。このように通電用芯体コード20をシールド線、ケーブル又はシールド付きケーブルとすることで、通電用芯体コード20のノイズ耐性を高めることができる。
【0054】
通電用芯体コード20の平均径の下限としては、0.2mmが好ましく、0.5mmがより好ましく、1mmがさらに好ましい。一方、通電用芯体コード20の平均径の上限としては、2.5mmが好ましく、1.5mmがより好ましい。通電用芯体コード20の平均径が上記下限未満であると、通電用芯体コード20の電気抵抗が十分に下げられず、電気信号あるいは電源として機能を十分に果たさないおそれがある。逆に、通電用芯体コード20の平均径が上記上限を超えると、当該ベルト1の幅が大きくなり過ぎるおそれがある。ここで、「平均径」とは任意の10点で測定した直径の平均値をいう。以下、全ての「平均」について同様である。つまり、「平均」とは、測定対象について任意の10点で測定した値から算出される平均をいう。
【0055】
(芯線)
芯線21としては、スチール線や銅線等を挙げることができる。中でも銅線が好ましく、軟銅線又は銅合金線がより好ましい。銅線は単位長当たりの電気抵抗が低く、通電用途に好適である。また、軟銅線及び銅合金線は屈曲し易いため、断線等の不具合が生じることを抑止できる。
【0056】
通電用芯体コード20の芯線21は、単線、集合撚り線又はロープ撚り線であるとよい。通電用芯体コード20の芯線21を単線とすることで、芯線21の断面が最密となるので、芯線21を低抵抗化し易い。また、通電用芯体コード20の芯線21を集合撚り線又はロープ撚り線とすることで、芯線21の強度が高められ断線等の不具合が生じることを抑止できるとともに、当該ベルト1の屈曲疲労性を向上させることができる。
【0057】
(被覆膜)
被覆膜22は、絶縁体で構成されているとよい。このように被覆膜22を絶縁体で構成することで、通電用芯体コード20が他の通電用芯体コード20等と接触した際の電気的特性の変化を抑止できる。また、当該ベルト1は、通電用芯体コード20を下方から支持しつつ製造されるため、その支持点において、
図2に示すように、製造後の当該ベルト1に通電用芯体コード20の一部がベルト本体10から露出する芯体支持部20aが存在する場合がある。このように芯体支持部20aが存在しても、絶縁体で構成された被覆膜22を有することで、通電用芯体コード20に電流が流れた場合の短絡や感電を防止することができる。
【0058】
被覆膜22は、ベルト本体10と融着している。すなわち、被覆膜22は、その原形を保ちつつ、ベルト本体10との界面でベルト本体10と被覆膜22とが加熱溶融されて溶着している。
【0059】
被覆膜22の主成分の融点は、ベルト本体10の主成分の融点より小さいとよい。このように被覆膜22の主成分の融点をベルト本体10の主成分の融点より小さくすることで、製造時の当該ベルト1の成形温度を被覆膜22の融点以上として、確実に被覆膜22を融着させることができる。
【0060】
ベルト本体10の主成分をエラストマーである場合、被覆膜22の主成分が、ポリエチレン又はポリエステルであるとよい。このようにベルト本体10の主成分をエラストマーとし、被覆膜22の主成分をポリエチレン又はポリエステルとすることで、容易に被覆膜22をベルト本体10に融着させることができる。
【0061】
(ベルト穴との関係)
図3に示すように、ベルト穴11は、後述する補強用芯体コード30上に設けられてもよい。つまり、ベルト穴11によって補強用芯体コード30が切除されてもよい。このとき、
図4に示すように、補強用芯体コード30のうちベルト穴11に露出する部分(
図4の切除部分30a)が削り取られていてもよいし、
図5に示すように、補強用芯体コード30のうちベルト穴11に対応する部分(
図4の切除部分30b)が切断されていてもよい。いずれの場合も、補強用芯体コード30はベルト穴11が設けられていない領域を補強することとなる。一方、ベルト穴11は、電気的な接続を喪失してしまうため、通電用芯体コード20上には設けることができない。逆に言えば、通電用芯体コード20は、ベルト穴11を避けて配設される。
【0062】
ここで通電用芯体コード20をベルト穴11から離す距離について検討する。ベルト穴11にネジが差し込まれ、連結対象物と当該ベルト1とが締結される。ネジの上面部は構造上ベルト穴11より直径が大きいから、上記連結対象物に当該ベルト1を固定すべくネジを締めていくと、ネジ上面部が当該ベルト1に押し付けられる。このとき、ネジ上面部に近い領域に通電用芯体コード20が配置されていると、この押し付け圧力により通電用芯体コード20の抵抗値が変化し、所望の電気的特性が得られないおそれが生じる。このため、通電用芯体コード20は、ねじ止めの押し付け力により電気的特性が変化しないようにベルト穴11から一定の距離を離す必要がある。具体的には、通電用芯体コード20とベルト穴11の周縁との距離(
図3に示す距離D)の下限としては、0.5mmが好ましく、0.7mmがより好ましい。一方、上記距離Dの上限は、特に限定されるものではないが、大きく取り過ぎると必要な本数の通電用芯体コード20を配置することができなくなるおそれがあるという観点で、例えば5mmとすることができる。
【0063】
<補強用芯体コード>
補強用芯体コード30は、線状体であり、例えば円形断面を有する。補強用芯体コード30は、芯線31を含み、通電用芯体コード20より単位長当たりの電気抵抗が高い。
【0064】
補強用芯体コード30の芯線31は、通電用芯体コード20の芯線21と同じ材質とすることもできるが、補強用芯体コード30の芯線31は、通電用芯体コード20の芯線21と異なる材質とするとよい。このように補強用芯体コード30の芯線31を通電用芯体コード20の芯線21と異なるものとすることで、通電用芯体コード20の芯線21として電気抵抗率の低いものを採用することが可能となるため、必要な電気抵抗を確保するための通電用芯体コード20の並列数を下げ易い。中でも、通電用芯体コード20の芯線21を電気抵抗率の低い銅線とし、補強用芯体コード30の芯線31を絶縁性を有するアラミド線とすることが好ましい。
【0065】
また、補強用芯体コード30の芯線31が導電性を有する場合にあっては、通電用芯体コード20の芯線21を絶縁性を有する被覆膜22で被覆された銅線とし、補強用芯体コード30の芯線31をスチール線とすることが好ましい。スチール線は剛性が高く、径が小さいものであっても強度を維持することができる。この補強用芯体コード30は絶縁層(被覆膜)を有さない構成とすることもできる。通電用芯体コード20が被覆膜22を有しているので、絶縁層を有さないスチール線が仮に通電用芯体コード20と接触した場合であっても、通電用芯体コード20の電気信号あるいは電源としての機能に影響が生じ難い。このように補強用芯体コード30は、絶縁層を設ける必要がなく、かつ径を小さくできるので、特に幅方向のスペースを必要としない。従って、補強用芯体コード30の芯線31をスチール線とすることで、通電用芯体コード20の配設領域を広く確保しつつ、当該ベルト1の強度を維持することができる。以上から、通電用芯体コード20の芯線21を絶縁性を有する被覆膜22で被覆された銅線とし、補強用芯体コード30の芯線31をスチール線とすることで、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ当該ベルト1の幅の増加をさらに抑止できる。
【0066】
補強用芯体コード30の平均径の下限としては、0.1mmが好ましく、0.2mmがより好ましく、0.5mmがさらに好ましい。一方、補強用芯体コード30の平均径の上限としては、2mmが好ましく、1mmがより好ましい。補強用芯体コード30の平均径が上記下限未満であると、補強用芯体コード30の強度が不足するおそれがある。逆に、補強用芯体コード30の平均径が上記上限を超えると、当該ベルト1の重量が重くなり過ぎるおそれ、当該ベルト1の曲げ剛性が高くなり過ぎ、特に小径のプーリに巻き付き難くなるおそれや、補強用芯体コード30を被覆するためのベルト本体10の厚みが厚くなり過ぎるおそれがある。
【0067】
<通電用芯体コードと補強用芯体コードとの関係>
通電用芯体コード20の平均径は、補強用芯体コード30の平均径より大きいとよい。このように通電用芯体コード20の平均径を補強用芯体コード30の平均径より大きくすることで、通電用芯体コード20の単位長当たりの電気抵抗を容易に下げることができる。特に、通電用芯体コード20の材質と補強用芯体コード30の材質とが同じものである場合は、通電用芯体コード20の平均径を補強用芯体コード30の平均径より大きくすることで、単位長当たりの電気抵抗を下げることが可能となる。
【0068】
4本の通電用芯体コード20及び6本の補強用芯体コード30(まとめて「芯体コード」ともいう)は、
図3に示すように、ベルト本体10の一方の面から芯体コードの外周へ至る最短距離が一定となるように並べられている。このような配列とすることで、10本の芯体コードを下方から支持しつつ、押出成形することで容易にベルト本体10を製造することができる。
【0069】
ベルト本体10の幅方向の最も外側に位置する芯体コードがそれぞれ補強用芯体コード30であるとよい。上記幅方向の最も外側に位置する芯体コードは、当該ベルト1の側面からの擦れによる摩耗等により電気抵抗が経年増加するおそれがある。このため、上記幅方向の最も外側に位置する芯体コードをそれぞれ補強用芯体コード30とし、電気信号あるいは電源の配線に用いないことで、配線としての信頼性を高めることができる。
【0070】
最も外側に配設される補強用芯体コード30の中心軸と、これと近接するベルト本体10の側面との平均距離(「補強用芯体コード30とベルト本体10の側面との平均距離」ともいう)の下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、上記補強用芯体コード30とベルト本体10の側面との平均距離の上限としては、1mmが好ましく、0.7mmがより好ましい。上記補強用芯体コード30とベルト本体10の側面との平均距離が上記下限未満であると、当該ベルト1の製造時に、最も外側に配設される補強用芯体コード30がベルト本体10の側面から露出するおそれがある。逆に、上記補強用芯体コード30とベルト本体10の側面との平均距離が上記上限を超えると、ベルト本体10の側縁が駆動時にばたつき易くなり、補強用芯体コード30による駆動の正確性の向上効果が不十分となるおそれがある。
【0071】
当該ベルト1では、
図3に示すように、隣接する通電用芯体コード20の間に補強用芯体コード30が配置されている。このように隣接する通電用芯体コード20の間に補強用芯体コード30を配置することで、当該ベルト1の強度が局所的に低下することを抑止できる。
【0072】
通電用芯体コード20と補強用芯体コード30との配列は、ベルト本体10の長さ方向の中心を軸として対称であるとよい。当該ベルト1は駆動時には張力をかけて使用されるが、このように通電用芯体コード20と補強用芯体コード30を対称に配列することで、ベルト本体10の幅方向に対して均一に張力がかかり、当該ベルト1の走行時の片寄りを防止することができる。
【0073】
隣接する芯体コードの平均ピッチP(
図3参照;隣接する芯体コードの中心軸間の当該ベルト1の幅方向の平均距離)の下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、平均ピッチPの上限としては、4mmが好ましく、1mmがより好ましい。平均ピッチPが上記下限未満であると、複数の通電用芯体コード20間の絶縁性が十分に確保できないおそれや、当該ベルト1の可撓性が不十分となるおそれがある。逆に、平均ピッチPが上記上限を超えると、当該ベルト1が幅方向に不要に大きくなるおそれや、補強用芯体コード30による当該ベルト1の強度、耐久性、駆動の正確性等の向上効果が不十分となるおそれがある。なお、ベルト穴11と重なる位置に芯体コードを配置しない場合にあっては、このベルト穴11を挟んで配置される2本の芯体コード間の平均ピッチPについては、この限りではない。
【0074】
平均ピッチPは、隣接する芯体コードの種類(通電用芯体コード20及び補強用芯体コード30)の組み合わせによらず、一定ピッチであることが好ましい。つまり、隣接する通電用芯体コード20間、隣接する補強用芯体コード30間及び隣接する通電用芯体コード20-補強用芯体コード30間で、その隣接する芯体コードの組み合わせによらず平均ピッチPは等しいことが好ましい。このように芯体コードの種類によらず等ピッチで芯体コードを配置することで、ベルト本体10の駆動時にばたつきが発生することを抑止できる。また、平均ピッチPを等しくすることで、各芯体コードに均一に荷重がかかるので、特定の芯線コードに局所的に荷重がかかることによる早期断線や通電用芯体コード20の電気抵抗の上昇を防ぐことができる。なお、「平均ピッチPが等しい」とは、完全に等しい場合に加えて、各平均ピッチPが実用的な誤差の範囲(例えば中央値から5%以下の誤差の範囲)に収まっている場合を含む。
【0075】
<カバー層>
当該ベルト1では、カバー層40は、ベルト本体10の搬送面を被覆する第1カバー層41と、駆動面を被覆する第2カバー層42とから構成される。すなわち、当該ベルト1では、カバー層40は、ベルト本体10の両面を被覆する。
【0076】
カバー層40は、その摩擦係数がベルト本体10の摩擦係数よりも低いことが好ましい。このように低摩擦係数のカバー層40を設けることで、当該ベルト1を使用時の耐摩耗性に優れたものとすることができる。具体的には、カバー層40の摩擦係数としては0.15以上0.25以下が好ましい。
【0077】
この場合、カバー層40の主成分としては、ナイロン系樹脂又はフッ素系樹脂が好ましい。このようにカバー層40の主成分をナイロン系樹脂又はフッ素系樹脂とすることで、カバー層40の摩擦係数を低減できる。上記ナイロン系樹脂としては、6,6ナイロン、6ナイロン等を挙げることができる。上記フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等を挙げることができる。
【0078】
また、カバー層40は、その硬度がベルト本体10の硬度よりも高いことも好ましい。このように高硬度のカバー層40を設けることで、当該ベルト1の強度を高めることや、耐摩耗性を高めることができる。なお、カバー層40のJIS-A硬度としては、効果の観点から、85以上95以下が好ましい。
【0079】
この場合、カバー層40の主成分としては、熱可塑性エラストマー系樹脂であるとよい。このようにカバー層40の主成分を熱可塑性エラストマー系樹脂とすることで、ベルト本体10とカバー層40とを剥離し難いものとすることができる。上記熱可塑性エラストマー系樹脂としては、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等を挙げることができる。
【0080】
第1カバー層41と第2カバー層42とは、異なる種類とすることもできる。例えば第1カバー層41をその摩擦係数がベルト本体10の摩擦係数よりも低いナイロン系樹脂又はフッ素系樹脂とし、第2カバー層42をその硬度がベルト本体10の硬度よりも高い熱可塑性エラストマー系樹脂とすることもできる。
【0081】
カバー層40の平均厚さの下限としては、15μmが好ましく、25μmがより好ましい。一方、カバー層40の平均厚さの上限としては、3000μmが好ましく、2000μmがより好ましい。カバー層40の平均厚さが上記下限未満であると、カバー層40が破れ易くなるおそれがある。逆に、カバー層40の平均厚さが上記上限を超えると、当該ベルト1の剛性が高くなり過ぎるおそれがある。なお、第1カバー層41の平均厚さと第2カバー層42の平均厚さは異なってもよいが、当該ベルト1の反りの観点から等しいことが好ましい。
【0082】
<当該ベルトの製造方法>
当該ベルト1は、例えば押出成形工程とカバー層積層工程とを備える製造方法により製造することができる。
【0083】
(押出成形工程)
押出成形工程では、押出成形により通電用芯体コード20及び補強用芯体コード30が埋設されたゴム又は樹脂組成物を主成分とする押出成形体を形成する。
【0084】
具体的には、複数の芯体コード(通電用芯体コード20及び補強用芯体コード30)を押出機のシリンダ先端に取り付けたクロスヘッドに挿通し、芯体支持部20aで支持しつつ、その両側を溶融したゴム又は樹脂組成物で被覆するように押出成形する。あるいは、溶融押出したゴム又は樹脂組成物と複数の芯体コードとを一対のロールで挟み込み加圧することで、複数の芯体コードをゴム又は樹脂組成物内に埋め込んでもよい。このゴム又は樹脂組成物がベルト本体10を構成する。
【0085】
押出成形においてゴム又は樹脂組成物を溶融させるための加熱温度は、ゴム又は樹脂の種類や硬化剤の利用の有無等に依存するが、上記加熱温度の下限としては、150℃が好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、250℃が好ましい。上記加熱温度が上記下限未満であると、ゴム又は樹脂組成物が十分に溶融せず、押出成形が困難となるおそれがある。逆に、上記加熱温度が上記上限を超えると、押出成形体が不要に熱くなるため、冷却時間が不要に長くなり、当該ベルト1の製造効率が低下するおそれがある。また、この加熱により被覆膜22がベルト本体10に融着するように、上記加熱温度の最大値は被覆膜22の融点よりも高い温度とされる。
【0086】
上記押出成形体を冷却することで、ベルト本体10を得ることができる。
【0087】
<カバー層積層工程>
カバー層積層工程では、押出成形工程で得られたベルト本体10の両面にカバー層40を積層する。
【0088】
カバー層40の積層は、上記押出成形工程でベルト本体10を成形する際、ベルト本体10の上側もしくは下側、あるいは両側から薄膜形状のカバー層40を繰り出して、例えばベルト本体10と上記ロールとの間に挿入し、挟み込むことで行える。
【0089】
次に、ベルト本体10にカバー層40が積層された積層体を冷却する。冷却の方法としては、例えば空冷、水冷等が挙げられる。冷却の温度及び時間の条件としては特に限定されないが、設定条件としては、例えば形成される積層体の内部温度を10℃以上40℃以下に冷却できる条件が挙げられる。
【0090】
以上のようにして当該ベルト1を製造することができる。
【0091】
<利点>
当該ベルト1は、通電用芯体コード20が芯線21と被覆膜22とを有しているので、通電用芯体コード20に配線が接続された際、芯体コードに加わった張力は、芯線21と被覆膜22との双方に伝わる。このうち被覆膜22はベルト本体10と融着しているので、ベルト本体10と通電用芯体コード20との双方に同じ方向の張力が働く。従って、当該ベルト1は、通電用芯体コード20とベルト本体10とが剥離することを抑止することができる。
【0092】
〔第2実施形態〕
図4に示すベルト2は、ベルト本体10と、ベルト本体10の一方の面に長さ方向に等間隔で配設された複数の歯部50と、導電性を有する芯線21を含む4本の通電用芯体コード20と、通電用芯体コード20より単位長当たりの電気抵抗が高い6本の補強用芯体コード30とを備え、通電用芯体コード20及び補強用芯体コード30が、ベルト本体10の幅方向に間隔を空けて長さ方向に沿ってベルト本体10に埋設されており、通電用芯体コード20が、芯線21を被覆するように周面を構成する被覆膜22を有し、被覆膜22がベルト本体10と融着している。当該ベルト2は、歯付ベルトである。
【0093】
当該ベルト2は、歯部50を備える点及びカバー層40を備えていない点以外は、
図1に示すベルト1と同様に構成できるので、同一符号を付して詳細説明を省略する。なお、当該ベルト2においては、ベルト穴11は、
図4に示すように、歯部50間に設けられてもよいが、歯部50を貫通するように設けることもできる。また、複数のベルト穴11を有する場合のベルト穴11の間隔は、
図4に示すように、歯部50の間隔と一致していてもよいが、一致していなくともよい。
【0094】
<歯部>
歯部50は、断面が台形、三角形、半円形、山形、波形、正規分布曲線状等の凸条部である。また、歯部50は、その稜線(軸方向)がベルト本体10の幅方向と一致するように配設されている。
【0095】
歯部50の平均高さ及び歯部50間のピッチは、当該ベルト2の用途に応じて適宜決定される。歯部50の平均高さは、例えば1.0mm以上10mm以下とできる。また、歯部50間のピッチは、例えば2mm以上25mm以下とできる。
【0096】
歯部50の主成分は、ベルト本体10と同様とできる。また、歯部50にはベルト本体10と同様の添加剤を含めてもよい。
【0097】
<利点>
当該ベルト2は、通電機能を必要とする歯付ベルトに好適に用いることができる。
【0098】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0099】
上記実施形態では、本発明のベルトが4本の通電用芯体コードと、6本の補強用芯体コードとを備える場合を例にとり説明したが、通電用芯体コード及び補強用芯体コードのコード数は、上述に限定されるものではなく、それぞれ1又は複数の任意の本数で構成し得る。通電用芯体コードのコード数は、必要とされる電気信号や電源の配線数に応じて適宜決定され、補強用芯体コードのコード数は、当該ベルトに必要な強度に応じて適宜決定される。
【0100】
上記実施形態では、ベルト本体が厚さ方向に貫通する1又は複数のベルト穴を有する場合を説明したが、ベルト穴は必須の構成要件ではなく、ベルト穴を有さないベルトも本発明の意図するところである。
【0101】
上記実施形態では、ベルト本体が片面に芯体支持部を有している場合を説明したが、ベルト本体は、芯体支持部をベルト本体の両面に有する構成としてもよく、また逆に芯体支持部を有さない構成としてもよい。
【0102】
上記第1実施形態では、カバー層がベルト本体の両面を被覆する場合を説明したが、カバー層が搬送面又は駆動面のいずれか一方のみを被覆する構成とすることもできる。また、カバー層を有さないベルトも本発明の意図するところである。
【0103】
上記第2実施形態では、カバー層を備えない歯付ベルトを説明したが、当該ベルトは、ベルト本体の片面又は両面を被覆するカバー層を備えてもよい。この場合、カバー層は第1実施形態のカバー層と同様に構成できる。
【0104】
上記実施形態では、通電用芯体コードが少なくとも一端側にコネクタを有する場合を説明したが、通電用芯体コードがコネクタを有さないベルトも本発明の意図するところである。
【0105】
上記実施形態では、隣接する通電用芯体コードの間に補強用芯体コードが配置されている構成について説明したが、通電用芯体コード及び補強用芯体コードの配列は、これに限定されるものではない。
図5に示すベルト3のように、通電用芯体コード20が連続して隣接する芯体コード群24が形成されている構成とすることができる。このように芯体コード群24を構成することで、例えば電源配線等のように低抵抗が要求される配線に対して並列接続を行い易い。なお、当該ベルト3は、芯体コード群24が形成されている以外は、
図3に示すベルト1と同様に構成することができるので、対応する構成には同一符号を付し詳細説明を省略する。
【0106】
芯体コード群24を構成する通電用芯体コード20の本数としては、2本以上5本以下が好ましい。上記本数が上記下限未満であると、芯体コード群24が形成できない。逆に、上記本数が上記上限を超えると、この芯体コード群24の補強用芯体コード30間の間隔が大きくなり過ぎ、芯体コード群24付近の強度が低下するおそれがある。
【0107】
芯体コード群24を構成する通電用芯体コード20間の平均間隔は、通電用芯体コード20と補強用芯体コード30との間の平均間隔より小さいことが好ましい。同一信号に対して並列して通電用芯体コード20を用いる場合、芯体コード群24を構成する通電用芯体コード20間の平均間隔を狭くすることができるので、当該ベルト3の幅の増加をさらに抑止できる。
【0108】
図5に示すベルト3では、芯体コード群24が1箇所に設けられている構成を示しているが、芯体コード群24は複数箇所に設けてもよい。また、
図5に示すように、芯体コード群24に属さない単独の通電用芯体コード20が設けられていてもよいし、全ての通電用芯体コード20がいずれかの芯体コード群24に属する構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明のベルトは、電気信号や電源の配線として必要な芯体コード数を確保しつつ幅の増加を抑止できる。
【符号の説明】
【0110】
1、2、3 ベルト
10 ベルト本体
11 ベルト穴
20 通電用芯体コード
20a 芯体支持部
21 芯線
22 被覆膜
23 コネクタ
24 芯体コード群
30 補強用芯体コード
30a、30b 切除部分
31 芯線
40 カバー層
41 第1カバー層
42 第2カバー層
50 歯部
D 距離
P 平均ピッチ