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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-13
(45)【発行日】2024-12-23
(54)【発明の名称】他励式電気同期機
(51)【国際特許分類】
   H02K 19/12 20060101AFI20241216BHJP
   H02P 6/32 20160101ALI20241216BHJP
   H02K 11/215 20160101ALI20241216BHJP
【FI】
H02K19/12
H02P6/32
H02K11/215
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024523861
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2022079280
(87)【国際公開番号】W WO2023072738
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2024-05-13
(31)【優先権主張番号】102021212146.2
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン グワンチュン
(72)【発明者】
【氏名】トパロフ ペンヨ
(72)【発明者】
【氏名】ズィマーシート フィリップ
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-120313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 19/12
H02P 6/32
H02K 11/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他励式電気同期機(100)であって、
前記他励式電気同期機は同期機回転子(101)を有し、前記回転子は、回転子シャフト(102)と、前記回転子シャフト(102)上に回転不能に設けられた同期機回転子コイル(103)とを備え、前記回転子コイルは、動作中に直流電圧が供給され、回転子磁界を発生し、
前記他励式電気同期機は同期機固定子(104)を有し、前記同期機固定子は、前記同期機固定子(104)に対して固定された同期機固定子コイル(105)を備え、前記固定子コイルは、動作中に固定子磁界を発生し、前記固定子コイルは、動作中に前記同期機回転子(101)が回転軸(90)の周りを回転するように、前記回転子磁界と相互作用し、
前記他励式電気同期機は、前記直流電圧に対応する動作信号を、前記同期機固定子(104)へ非接触伝送するための信号伝送装置(20)を有し、
前記信号伝送装置(20)は、前記同期機回転子コイル(103)と直列に接続された信号コイル(21)を前記同期機回転子(101)に備え、磁界センサー(23)を前記同期機固定子(104)に備え、動作中に、前記磁界センサーは、前記信号コイル(21)によって発生された磁界を検出し、
前記信号コイル(21)は、前記回転子シャフト(102)の軸方向端面に配置され、
前記磁界センサー(23)は、前記信号コイル(21)に対して前記回転子シャフト(102)の軸方向に挿入されるように構成されている
他励式電気同期機(100)。
【請求項2】
前記信号コイル(21)は、空芯コイル(22)として構成されていることを特徴とする、
請求項1に記載の同期機。
【請求項3】
前記信号コイル(21)は、軸方向に開口したスリーブ(25)によって、周方向(91)に囲まれていることを特徴とする、
請求項1に記載の同期機。
【請求項4】
前記スリーブ(25)は、前記同期機回転子(101)に回転不能に取り付けられていることを特徴とする、
請求項に記載の同期機。
【請求項5】
請求項1に記載の同期機であって、
前記同期機(100)は、誘導エネルギー伝送のための電気回転変圧器(1)を備え、
前記回転変圧器(1)は、変圧器1次コイル(3)を備えた回転変圧器固定子(2)を備え、前記回転変圧器固定子は、前記同期機固定子(104)に対して固定され、
前記回転変圧器(1)は、変圧器2次コイル(5)を持つ回転変圧器回転子(4)を備え、前記回転変圧器回転子は、前記同期機回転子(101)に対して回転不能に固定され、その結果、動作中に、前記回転変圧器回転子(4)は、前記回転軸(90)の周りを、前記回転変圧器固定子(2)に対して回転し、
動作中に、前記変圧器2次コイル(5)及び前記変圧器1次コイル(3)は、前記変圧器2次コイル(5)において変圧器電圧を発生するように相互誘導を行い、
前記同期機回転子コイル(103)に、前記回転子磁界を発生するための前記直流電圧が供給されるように、前記同期機回転子コイル(103)は、前記変圧器2次コイル(5)に接続されていることを特徴とする、
同期機。
【請求項6】
前記信号コイル(21)及び前記変圧器2次コイル(5)は、互いに半径方向に間隔が空けられていることを特徴とする、
請求項に記載の同期機。
【請求項7】
前記変圧器2次コイル(5)及び前記同期機回転子コイル(103)の間には整流回路(6)が接続され、前記整流回路は、前記変圧器電圧を前記直流電圧に変換することを特徴とする、
請求項に記載の同期機。
【請求項8】
前記変圧器1次コイル(3)及び前記変圧器2次コイル(5)は、軸方向に互いに対向して配置されていることを特徴とする、
請求項に記載の同期機。
【請求項9】
前記磁界センサー(23)は、ホール効果センサー(24)を備えていることを特徴とする、
請求項1に記載の同期機。
【請求項10】
前記信号伝送装置(20)は、前記同期機固定子(104)に対して固定された処理装置(26)を備え、前記処理装置は、前記磁界センサー(23)によって発生されるセンサー信号を受信するために、前記磁界センサー(23)に電気的に接続されていることを特徴とする、
請求項1に記載の同期機。
【請求項11】
請求項に記載の同期機(100)及び電力源(201)を有する自動車(200)であって、
前記電力源(201)は、インバーター回路(7)を介して、前記変圧器1次コイル(3)に接続されている、
自動車(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期機回転子コイルを有する他励式電気同期機に関し、それは、動作中に直流電圧が供給され、回転子磁界を発生する。
【0002】
他励式電気同期機は、固定された固定子と、動作中に回転軸の周りを固定子に対して回転する回転子とを備え、それらは以下で、同期機固定子及び同期機回転子とも呼ばれる。同期機回転子の回転子磁界と、同期機固定子の固定子磁界とは、ともに作用する。他励式電気同期機では、必要とされる、同期機回転子の回転子磁界は他励式である。この目的のために、同期機回転子は、一般に、磁界を発生するための直流電圧が供給される回転子コイルを有する。誘導によって、回転子コイルへの直流電圧の供給が、通常は発生する。
【0003】
そのような同期機は、例えばEP2 869 316 B1から既知である。
【0004】
通常、同期機の所望の動作が実現するように、固定された固定子と、動作中に回転する回転子とは、互いに適合する。したがって、その適合した状態が変化すると、所望の動作から逸脱する可能性がある。よって、動作中の所望の変化を実現するのが困難であったり、又は全く実現できなかったりする場合もあり得る。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、したがって、導入部で記載された種類の他励式電気同期機、及びそのような同期機を有する自動車に対する、改良された実施形態又は少なくとも他の実施形態を示すという課題に関し、それは、先行技術から既知である欠点を解消する。特に、本発明は、簡単な実現例で向上される動作安定性及び/又は簡単な実現例で改良される動作可変性によって特徴づけられる、他励式電気同期機の実施形態及び自動車の実施形態について示すという課題に関する。
【0006】
本発明によれば、この目的は、独立請求項の主題によって解決される。好適な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
したがって、本発明は、他励式電気同期機の回転子の回転子コイルを通って流れる電流を、そこに直列に接続された信号コイルによって取出し、固定されたセンサーによって検出される磁界を、信号コイルによって発生するという概念に基づく。よって、簡単かつ効率的に、回転子コイルを通って流れている電流に対応する動作信号を、回転している回転子から固定されたセンサーに、動作中に、非接触で伝送することが可能である。その結果、同期機の動作パラメータの変化、特に、回転子コイルを通って流れる電流の変化を、簡単かつ効率的な方法で考慮することができる。これによって、同期機の動作の安定性が向上する。加えて、同期機の動作中の変化は、このようにして容易に実現され得る。これによって、同期機の動作の可変性が増す。
【0008】
本発明によれば、以下で簡単には同期機とも呼ばれる他励式電気同期機は、回転子と固定子とを備える。以下で、回転子は同期機回転子とも呼ばれ、固定子は同期機固定子とも呼ばれる。同期機回転子は、回転子コイルが回転不能に設けられた回転子シャフトを備える。以下で、回転子コイルは、同期機回転子コイルとも呼ばれる。同期機回転子コイルは、動作中、磁界を発生し、前記磁界は以下で回転子磁界とも呼ばれる。この目的のために、同期機回転子コイルには、動作中に直流電圧が供給され、その結果、電流、例えば負荷電流が、同期機回転子コイルを通って流れる。同期機固定子は、同期機固定子に固定されたコイルを備え、前記コイルは以下で、同期機の同期機固定子コイルとも呼ばれる。同期機固定子コイルは、動作中、磁界を発生し、前記磁界は以下で固定子磁界とも呼ばれる。動作中、同期機回転子が、軸方向の回転軸の周りを回転するように、回転子磁界と固定子磁界とは、互いに相互作用する。同期機は、さらに、直流電圧、ひいては負荷電流に対応する動作信号を、同期機固定子へ非接触伝送するための信号伝送装置を備える。信号伝送装置は、同期機回転子に、同期機回転子コイルと直列に接続された信号コイルを備え、同期機固定子に、磁界センサーを備える。磁界センサーは、動作中に、信号コイルによって発生した磁界を検出する。
【0009】
動作中、負荷電流は、同期機回転子コイルと直列に接続された信号コイルを通って流れる。よって、信号コイルは、以下で信号磁界とも呼ばれる磁界を発生する。信号磁界の強度は、負荷電流によって決まる。具体的には、信号磁界の強度は、負荷電流に比例する。よって磁界センサーによって検出された信号磁界は、負荷電流に左右され、その結果、信号伝送装置を用いて、動作中に回転する同期機回転子から、固定された同期機固定子へ、動作信号としての負荷電流を反映する信号磁界の非接触伝送が起こる。
【0010】
基本的に、磁界の固定子は、動作中に信号磁界を検出するなら、必要に応じて構成され得る。
【0011】
動作中、磁界センサーは、実際には、検出された信号磁界に依存するセンサー信号を発生する。
【0012】
センサー信号が、検出された信号磁界に比例するように、磁界センサーが構成されている実施形態が好ましい。よって、センサー信号は全体として、負荷電流に比例する。これによって、負荷電流を、簡単かつ確実に求めることができる。
【0013】
好適な実施形態では、磁界センサーは、ホールセンサーとしても知られるホール効果センサーを備える。好ましくは、磁界センサーは、ホール効果センサーとして構成される。よって、磁界センサーの構成が簡単であることに加えて、信号磁界に大きく依存するセンサー信号、具体的には信号磁界に比例するセンサー信号が出力される。
【0014】
ここで示される方向は、軸方向に延びている回転軸を指す。したがって、「軸方向」とは、回転軸に対して平行であり、例えば同軸を有する。さらに、「半径方向」とは、回転軸に対して横方向である。さらに、周方向は、回転軸を囲む。
【0015】
実際に、信号伝送装置は、センサー信号を受信し処理するために、同期機固定子に固定された装置を備え、前記装置は、実際には、磁界センサーに電気的に接続されている。以下で処理装置とも呼ばれる装置は、実際には、センサー信号からの負荷電流を求めるように構成される。
【0016】
基本的に、信号コイルは、必要に応じて、同期機回転子に取り付けることができる。
【0017】
好適には、信号コイルは、回転子シャフトに取り付けられる。
【0018】
信号コイルが、回転子シャフトの軸方向端面に配置された実施形態は、好適であると考えられる。よって、信号コイルと、同期機の他の磁気的に活性な構成要素との、望まれない磁気相互作用は、回避されるか又は少なくとも低減される。さらに、これによって、同期機のコンパクトに構成することが可能になる。
【0019】
基本的に、信号コイルは、必要に応じて構成され得る。
【0020】
好ましくは、信号コイルは、空芯コイルとして構成される。よって、信号コイルが同期機回転子コイルに及ぼす影響は、可能な限り、回避又は低減される。空芯コイルは磁気飽和がないので、負荷電流に対して広範囲に、特に負荷電流に比例して、信号磁界を発生することが可能である。これによって、負荷電流の確実な検出と測定が可能になる。
【0021】
基本的に、もし磁界センサーが信号磁界を検出するなら、磁界センサーは、必要に応じて、信号コイルに対して配置されてもよい。
【0022】
磁界センサーを、信号コイルの半径方向外側に配置することが考えられる。
【0023】
磁界センサーが、信号コイルに軸方向に入る実施形態は、好ましいと考えられる。磁界センサーは、よって、信号コイルによって周方向に囲まれる。よって、信号磁界の検出が改善され、及び/又はより正確になる。特に、例えばノイズのような、検出の障害が、このようにして、防がれるか又は少なくとも低減される。したがって、負荷電流は、このようにして、より簡単に及び/又はより正確に求められ得る。
【0024】
好ましい実施形態では、信号コイルは、軸方向に開口したスリーブによって、周方向に囲まれる。信号コイルは、スリーブに、具体的には軸方向に挿入される。実際には、スリーブは、信号コイルにおける、磁界センサーから半径方向に離れる側に配置される。スリーブは、特に磁気シールドの目的で機能する。よって、信号磁界は、他の磁界から影響を受けないか、又は、わずかにしか影響を受けず、逆もまた同様である。さらに、信号コイルは、このように機械的に保護されている。基本的に、スリーブは、同期機固定子に固定されてもよい。
【0025】
好適には、スリーブは、同期機回転子、具体的には回転子シャフトに、回転不能に配置される。好ましくは、スリーブは、回転子シャフトの端面から突出して、周方向に信号コイルを囲み、好適には、さらに、周方向に少なくとも部分的に磁界センサーを囲む。
【0026】
好ましくは、同期機回転子コイルには、誘導的に電力供給がなされる。
【0027】
この目的のために、同期機は、好ましくは誘導電力伝送のための電気回転変圧器を備える。この回転変圧器は、固定子及び回転子を備え、これらは以下で回転変圧器固定子及び回転変圧器回転子とも呼ばれる。回転変圧器固定子は、以下で変圧器1次コイルとも呼ばれるコイルを備える。回転変圧器回転子は、以下で変圧器2次コイルとも呼ばれるコイルを備える。回転変圧器固定子は、同期機固定子に固定されており、回転変圧器回転子は、同期回転子に回転不能に取り付けられている。よって動作中において、回転変圧器回転子は、回転の軸の周りに回転変圧器固定子に対して相対的に回転可能であり、回転の軸の周りに同期機回転子と共に回転する。動作中、変圧器1次コイル及び変圧器2次コイルは、変圧器2次コイルに交流電圧を誘起するために相互誘導をする。この交流電圧は、以下では変圧器電圧とも呼ばれる。好ましくは、変圧器1次コイル及び変圧器2次コイルは、軸方向に対向するように配置されている。
【0028】
実際には変圧器2次コイル及び同期機回転子コイルの間には、整流回路が接続されている。この整流回路は、動作中に変圧器2次コイルに誘起された変圧器電圧を、同期機回転子コイルのための直流電圧に変換する。整流回路は、そのように機能するよう構成されている。
【0029】
実際には、信号コイルは、変圧器2次コイルとは別個のものである。
【0030】
実際には、信号コイルは、変圧器2次コイル及び変圧器1次コイルから、好ましくは磁気的に分離され、及び/又は、遮蔽されている。
【0031】
有利には、信号コイルは、変圧器2次コイルから間隔が空けられ、変圧器1次コイルからも間隔が空けられている。
【0032】
好ましくは、信号コイルは、半径方向に、具体的に好ましくは軸方向にも変圧器2次コイルから間隔が空けられ、及び/又は変圧器1次コイルから間隔が空けられている。
【0033】
同期機は、直流電圧を提供する電力源によって電力が供給され得る。
【0034】
実際には、同期機は、変圧器1次コイルの上流に接続された整流回路を備える。よって、動作中に必要とされる変圧器1次コイルのための交流電圧は、その電力源から発生し得る。
【0035】
これと同様に、同期機はインバーター回路を備え得て、前記インバーター回路によって、同期機固定子コイルには、電力源を介して交流電圧が供給される。
【0036】
好適には、処理装置は、制御装置及び/又は少なくとも1つのインバーター回路に、通信可能に接続される。よって、変圧器電圧は、負荷電流に応じて変わり得る。よって、負荷電流に応じて回転子磁界を変えることも、同様に可能である。
【0037】
同期機は、基本的には、任意の応用例で用いられ得る。特に、同期機は、走行用モーターとして、例えば自動車において用いられる。好ましくは、そのような走行用モーターは、100kW-240kW、具体的には140kWの出力、つまり駆動力を有する。
【0038】
同期機は、特に、同期機を動作するための電力源としてのバッテリーを備え得る自動車において用いられる。同期機は、特に自動車を駆動するために機能するので、具体的には他励式電気同期機として構成される。
【0039】
他励式電気同期機に加えて、自動車も本発明の範囲の一部であることを理解されたい。
【0040】
本発明の、さらなる重要な特徴及び利点は、従属請求項、図面、及び図面による関連付けられた図面の説明から明らかになるであろう。
【0041】
上記の及び以下でさらに説明される特徴は、それぞれ示された組合せにおいてだけではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組合せにおいても、又は単独でも使用され得ることが理解されよう。
【0042】
本発明の好ましい例示的な実施形態は図面に図示されており、以下の説明において、より詳細に説明され、同一の参照番号は、同一、類似、又は機能的に同一の構成要素を表す。
【0043】
各図は概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、自動車における信号伝送装置を備えた、他励式電気同期機の非常に単純化した回路図である。
図2図2は、信号伝送装置の領域における、同期機の断面図である。
図3図3は、同期機の回転変圧器の断面図である。
図4図4は、他励式電気同期機の、部分断面の斜視図である。
図5図5は、他励式電気同期機の、非常に単純化した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
例えば図1図5に示されるような他励式電気同期機100は、以下では簡単のために同期機100とも呼ばれるが、自動車200で用いられ得る。他励式電気同期機100は、特に自動車200を駆動するための同期機110として用いられ得る。
【0046】
特に図1から明らかなように、同期機100は回転子101を備える。以下で、回転子101は、同期機回転子101とも呼ばれる。同期機回転子101は、回転子シャフト102と、回転子シャフト102上に回転不能に設けられた(図2図5を参照)コイル103(図1も参照)とを備える。コイル103は以下で、同期機回転子コイル103とも呼ばれる。動作中、同期機回転子コイル103は、以下で回転子磁界とも呼ばれる磁界を発生する。さらに、同期機100は、以下で同期機固定子104とも呼ばれる、固定子104を備える。加えて、同期機100は、同期機固定子に固定されたコイル105(図5を参照)を備え、このコイルは以下で、同期固定子コイル105とも呼ばれる。動作中、同期機固定子コイル105は、以下で固定子磁界とも呼ばれる磁界を発生する。動作中に同期機回転子101が回転軸90の周りを回転するように、固定子磁界と回転子磁界とは、互いに相互作用する。回転子磁界を発生するために、同期機回転子101、具体的には同期機回転子コイル103は、直流電圧を必要とする。動作中、電流は同期機回転子コイル103を通って流れ、この電流は負荷電流とも呼ばれる。
【0047】
ここで示される方向は、回転軸90と関連する。したがって、「軸方向」とは、回転軸に対して平行、具体的には同軸方向に延びる。さらに、「半径方向」とは、回転軸90に対して横方向に延びる。さらに、周方向91は、回転軸90の周りに延びる。
【0048】
図1及び図2から明らかなように、同期機100は、直流電圧に対応する動作信号を、同期機固定子104に非接触伝送するための信号伝送装置20を備える。同期機回転子101上において、信号伝送装置20は、同期機回転子コイル103と直列に接続されたコイル21を備え、このコイルは以下で、信号コイル21とも呼ばれる。よって、信号コイル21は、動作中、回転軸90の周りを同期機回転子コイル103と共回転する。さらに、信号伝送装置20は、同期機固定子104上に、磁界センサー23を備える。よって、信号コイル21は、動作中、回転軸90の周りを磁界センサー23に対して回転する。磁界センサー23は、信号コイル21によって発生された磁界を検出し、検出された磁界に応じたセンサー信号を出力するように構成される。動作中、同期機回転子コイル103と直列に接続された信号コイル21には、同期機回転子コイル103と同じ電流が流れる。よって、負荷電流は、信号コイル21を通って流れる。この過程で、信号コイル21は磁界を発生し、この磁界の強度は、負荷電流に比例する。信号コイル21によって発生される磁界は、以下で、信号磁界とも呼ばれる。信号磁界を検出することによって、負荷電流、ひいては直流電圧に対応する動作信号は、非接触の方法で、同期機固定子104に伝送される。示される例示的な実施形態では、信号コイル21は、空芯コイル22として構成される。さらに、示される例示的な実施形態における磁界センサー23は、ホール効果センサー24として構成され、これは、簡単にはホールセンサー24とも呼ばれる。
【0049】
図2で示される例示的な実施形態から明らかなように、信号コイル21は、示される例示的な実施形態において、好ましくは、回転子シャフト102の軸方向端面に配置される。そこで、磁界センサー23は、信号コイル21に軸方向に入る。磁界センサー23は、よって、信号コイル21によって、周方向91に囲まれる。これによって、信号磁界の検出がより確実になり、及び/又は磁界センサー23におけるノイズ信号が低減される。
【0050】
図2から明らかなように、信号コイル21は、軸方向に開口したスリーブ25によって、周方向91に囲まれる。よって、スリーブ25は、磁界センサー23から半径方向外側に遠ざかる、信号コイル21の側に配置される。示される例示的な実施形態では、スリーブ25は、回転子シャフト102上に回転不能に取り付けられる。スリーブ25は、特に磁気シールドとして機能する。
【0051】
示される例示的な実施形態では、同期機回転子コイル103への直流電圧の供給は、図1図3及び図4に示されるように、誘導エネルギー伝送のための電気回転変圧器1を用いて、誘導的に行われる。回転変圧器1は、固定子2及び回転子4を備える。固定子2は以下で、回転変圧器固定子2と呼ばれる。回転子4は以下で、回転変圧器回転子4と呼ばれる。回転変圧器回転子4は、同期機回転子101に対して回転不能である。回転変圧器固定子2は、同期機固定子104に対して固定されている。よって、回転変圧器回転子4は、動作中、同期機回転子101とともに、回転軸90の周りを回転変圧器固定子2に対して共回転する。誘導エネルギー伝送のために、回転変圧器固定子2は1次コイル3を、回転変圧器回転子4は2次コイル5を備える。1次コイル3及び2次コイル5は、図3及び図4から明らかなように、示される例示的な実施形態では、軸方向に互いに対向して配置される。動作中、以下で変圧器1次コイル3とも呼ばれる1次コイル3は、以下で変圧器2次コイル5とも呼ばれる2次コイル5に、以下で変圧器電圧とも呼ばれる交流電圧を誘導する。信号伝送装置20は、回転変圧器1の一部であってもよい。図1から明らかなように、必要とされる直流電圧を同期機回転子コイル103に供給するために、同期機回転子101に対して回転不能である整流回路6は、変圧器2次コイル5及び同期機回転子103の間に接続され、この整流回路6は、変圧器電圧を直流電圧に変換する。図1に示される例示的な実施形態では、整流回路6は、4つのダイオードD1-4を備えたブリッジ整流器16として、単に例示的に構成される。
【0052】
実質的に、信号コイル21と変圧器2次コイル5とは、好ましくは、互いに磁気的に分離される。この目的のために、信号コイル21と変圧器2次コイル5とは、互いに半径方向に間隔が空けられている。
【0053】
変圧器電圧を変圧器2次コイル5に誘導するために、変圧器1次コイル3は、交流電圧を必要とする。図1から明らかなように、示される例示的な実施形態では、変圧器1次コイル3は、電力源201を介して供給され、これは直流電圧を供給する。示される例示的な実施形態における電力源201は、自動車200のバッテリー202である。変圧器1次コイル3に直流電圧を供給するために、インバーター回路7が、電力源201及び変圧器1次コイル3の間に設けられる。インバーター回路7は、電力源201の直流電圧を、変圧器1次コイル3に供給すべき交流電圧に変換する。インバーター回路7がコンバーターを備えることが考えられる。同期機固定子コイル105は、同じように、電気的に供給され得る(不図示)。示される例示的な実施形態では、インバーター回路7は、単に例示的に、正弦波インバーター17として構成され、これは、4つのトランジスタT1-4と、2つの制御器GU1,GU2とを備える。
【0054】
示される例示的な実施形態では、図1から明らかなように、信号伝送装置20は、同期機固定子104に対して固定された装置26を備え、これは、磁界センサー23に電気的に接続され、磁界センサー23によって発生されたセンサー信号を受信して処理する。装置26は、以下で、処理装置26とも呼ばれる。処理装置26を用いると、同期機100、特に回転変圧器1の動作は、同期機回転子コイル103の負荷電流に応じて適応及び/又は変更され得る。この目的のために、インバーター回路7は、制御器GU1,GU2のうちの少なくとも1つと、通信可能に接続され得る(不図示)。
【0055】
図3及び図4から明らかなように、示される例示的な実施形態における回転変圧器回転子4は、回路基板8を備え、この回路基板には変圧器2次コイル5が設けられる。回路基板8は、円盤状に構成され、円形、すなわち、円盤状又はリング状のように構成される。示される例示的な実施形態における変圧器2次コイル5は、回路基板8の少なくとも1つのトレース9を備え、このトレースは、以下で、変圧器トレース9とも呼ばれる。示される例示的な実施形態では、変圧器2次コイル5は、少なくとも1つの変圧器トレース9からなり、平坦な巻線10として構成される。図3から明らかなように、回路基板8は、互いに軸方向に間隔が空けられている、2つの変圧器トレース9を備え得て、この変圧器トレースは、回転軸90を螺旋状に囲む。示される例示的な実施形態では、少なくとも1つの変圧器トレース9は、全体が回路基板8内に配置される。回転子シャフト102の回転変圧器回転子4との回転不能な接続は、図3及び図4から明らかなように、回転基板8における中央開口部14を介して、示される例示的な実施形態において実現され、この開口部を通して、回転子シャフト102が係合する。
【0056】
図3及び図4から特に明らかなように、示される例示的な実施形態における変圧器1次コイル3は、フラットコイル11として構成される。変圧器1次コイル3及び変圧器2次コイル5は、示される例示的な実施形態において、磁心12、特に、回転変圧器固定子2に対して固定されたフェライトコア13に配置される。以下で、磁心12は、変圧器磁心12とも呼ばれる。変圧器磁心12は半径方向に開口しており、その結果、変圧器2次コイル5を備えた回路基板8は変圧器磁心12に入り、そこで回転可能となるように配置される。さらに、変圧器磁心12は、軸方向に開口した凹部15を備え、この凹部に、変圧器2次コイル3が配置される。
図1
図2
図3
図4
図5