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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】棒状材用支持具
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/10 20060101AFI20241217BHJP
   F16B 1/00 20060101ALI20241217BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F16B2/10 A
F16B1/00 A
F16B7/04 301M
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020044711
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021143755
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000136686
【氏名又は名称】合同会社ブレスト工業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠太
(72)【発明者】
【氏名】今野 洋一郎
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-007519(JP,A)
【文献】特開2019-090513(JP,A)
【文献】特開2018-189154(JP,A)
【文献】実開平04-056903(JP,U)
【文献】特開2019-152255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00- 2/26
F16B 1/00
F16B 7/00- 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状材の側面の任意の位置に着脱自在に取り付けられる棒状材用支持具において、
前記棒状材の側面の一方側に係合する本体部と、
前記本体部に対して接離自在に配置され、前記棒状材の側面の他方側に係合する挟持部と、
前記本体部と前記挟持部とを、それらの間に前記棒状材を挟んで締結するための締結ボルトと、
前記本体部と前記挟持部とを、それらの間に配置された前記棒状材に向かって付勢する弾性部材と、
を具備し、
前記本体部は、底板と、一対の側板とを有し、
前記挟持部は底板と、鉤形状の一対の溝板とを有し、
前記挟持部は、前記一対の側板の間に収容され、前記本体部と前記挟持部とは互いの底板において前記締結ボルトにより締結され、前記一対の側板の先端縁と前記一対の溝板との間の中空部に前記棒状材は受容され、
前記本体部は、前記棒状材に対して前記本体部を押し付けることにより、前記棒状材を前記一対の側板の先端縁と前記一対の溝板との間の前記中空部に案内する案内縁をさらに有し、
前記一対の側板の先端縁前記一対の溝板との間の中空部に前記棒状材を受容するために、前記棒状材に対して前記本体部を押し付ける方向と、前記一対の側板の先端縁前記一対の溝板との間の中空部を拡げるために、前記弾性部材の付勢力に抗う力で前記締結ボルトを押し込む方向とが略一致する、
棒状材用支持具。
【請求項2】
前記一対の側板の先端縁には、前記棒状材を受容する凹部が設けられる、
請求項1記載の棒状材用支持具。
【請求項3】
前記案内縁は、前記一対の側板の先端縁の凹部よりも外側であって、前記前記棒状材に対して前記本体部を押し付ける位置から前記一対の側板の先端縁の凹部にかけて緩やかに曲がっている、
請求項2記載の棒状材用支持具。
【請求項4】
前記本体部の底板には、前記締結ボルトが挿入される挿入孔が設けられ、
前記挟持部の底板には、前記締結ボルトが螺合されるネジ孔が設けられ、
前記締結ボルトが前記挿入孔に挿入され、そのネジ部が前記ネジ孔に螺合されることで前記本体部と前記挟持部が締結される、
請求項1記載の棒状材用支持具。
【請求項5】
前記一対の側板が対峙する向きに直交する前記本体部の底板の長さ方向に関して、前記挿入孔は、前記本体部の底板の中央位置からオフセットした位置に設けられ、
前記一対の溝板が対峙する向きに直交する前記挟持部の底板の長さ方向に関して、前記ネジ孔は、前記挟持部の底板の中央位置からオフセットした位置に設けられる、
請求項4記載の棒状材用支持具。
【請求項6】
前記一対の側板が対峙する向きに直交する前記本体部の底板の長さ方向への前記挟持部の可動域を拡大するために、前記挿入孔は長円形状又は矩形状を有する、請求項4又は請求項5に記載の棒状材用支持具。
【請求項7】
前記弾性部材は、前記本体部と前記締結ボルトのヘッドとの間に介装される請求項1乃至6のいずれか一項に記載の棒状材用支持具。
【請求項8】
前記弾性部材が円錐コイルバネである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の棒状材用支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状材用支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
天井スラブ等から吊りボルトを吊り下げ、この吊りボルトに各種の電設資材(ケーブルや配管等)を固定するための吊りボルト用支持具が知られている(例えば、特許文献1~4参照)。吊りボルト用支持具は、吊りボルトに対して任意の高さ位置に留め、パイラッククリップ等の支持金具を介してケーブル、配管等の電設資材を任意の姿勢で支持する構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5849424号公報
【文献】特許第5102997号公報
【文献】特許第5069193号公報
【文献】実開昭61-162687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した吊りボルト用支持具にあっては次のような問題があった。すなわち、吊りボルトの任意の高さ位置にネジ締め等により留め付ける際、吊りボルト用支持具を一方の手で位置決めし、他方の手で締結ボルトを締める等の作業を行う必要があった。このため、作業者は両手を使うこととなる。しかしながら、他の資材との位置関係、すなわち電設資材の取り回し状況に応じて、吊りボルト用支持具の高さ位置を調整する必要が生じる。このような場合、不安定な脚立や梯子の上で吊りボルト用支持具を適切な高さ位置に調整しつつ、ねじ締め作業を行わなければならず、危険かつ煩雑であった。
【0005】
また、吊りボルト用金具は、通常、使用個数が多い上、一旦吊りボルトに取り付けると取り外さないで使用するため、仮止め構造が複雑であると製造コストが上昇して、全体の製品コストが上昇するという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、吊りボルトに対し簡単な操作で仮止めができると共に、低コストで製造することができる吊りボルト用支持具が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る棒状材用支持具は、棒状材の側面の任意の位置に着脱自在に取り付けられる。棒状材用支持具は、棒状材の側面の一方側に係合する本体部と、本体部に対して接離自在に配置され、棒状材の側面の他方側に係合する挟持部と、本体部と挟持部とをそれらの間に棒状材を挟んで締結するための締結ボルトと、本体部と挟持部とを、それらの間に配置された棒状材に向かって付勢する弾性部材と、を具備する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吊りボルトに対して簡単な操作で吊りボルト用支持具を仮止めができると共に、低コストで製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る吊りボルト用支持具の使用状態の一例を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る吊りボルト用支持具の使用状態の他の例を示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係る吊りボルト用支持具を示す斜視図である。
図4図3の吊りボルト用支持具を示す上面図である。
図5図4の吊りボルト用支持具の本体部と挟持部とともに示す上面図である。
図6図3の吊りボルト用支持具を示す分解斜視図である。
図7図3の吊りボルト用支持具を示す分解上面図である。
図8図3の吊りボルト用支持具の本体部を示す正面図である。
図9図1の吊りボルト用支持具を吊りボルトに仮止めするときの挟持部の動きを説明するための補足図である。
図10図1の吊りボルト用支持具を吊りボルトから外すときの挟持部の動きを説明するための補足図である。
図11図1の吊りボルト用支持具を吊りボルトに本止め状態を示す上面図である。
図12】第2実施形態に係る吊りボルト用支持具を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1図2は本発明の第1実施形態に係る吊りボルト用支持具10の使用状態をそれぞれ示している。図1図2に示すように、吊りボルト用支持具10は吊りボルトBに固定されて使用される。例えば、図1に示すように、吊りボルトBに固定された吊りボルト用支持具10にパイラッククリップQが取り付けられ、パイラッククリップQに電線用配管P(電設資材)が通され,ボルトナットにより固定される。また、図2に示すように、吊りボルトBに固定された吊りボルト用支持具10にネジを介して半円形状に湾曲した鋼棒としてのケーブル支持金具Sが取り付けられ、ケーブル支持金具SにケーブルCが敷設され、結束バンドにより固定される。
【0011】
図3乃至図8示すように、吊りボルト用支持具10は、有底の略角筒体に構成された本体金具(本体部)20の内部に、横断面略コ字形の溝枠に構成された補助金具(挟持部)60を収容し、これら本体部20及び挟持部60は、互いの底板において締結ボルト90で締結されている。本体部20の上下の側板の先端縁は凹状に切り欠かれている。挟持部60の上下の溝板は鉤形状に構成されている。本体部20の上下の側板の凹状の縁部と挟持部60の鉤形状の溝板との間に吊りボルトBを導入する。本体部20と挟持部60とは弾性部材により、吊りボルトBを挟持する向きに付勢されている。弾性部材により締結ボルト90を完全に締め付けていない仮締め状態で、吊りボルトBに吊りボルト用支持具10を仮止めできる。典型的には、これらの部品は金属製であるが、全ての部品又は一部の部品が硬質樹脂製であってもよい。詳細には、吊りボルト用支持具10は以下のように構成される。
【0012】
本体部20は、有底の略角筒体に構成される。具体的には、本体部20は、矩形板状の本体ベース部30と、本体ベース部30の短辺側の両縁部に設けられた板状の一対のブラケット取付部40、50と、長辺側の両縁部に設けられた板状の一対の支持部31,32と、を備えている。典型的には、本体部20を構成する本体ベース部30、ブラケット取付部40,50、及び支持部31,32は、1枚の板金を折曲、変形、切削、穿孔等して形成される。
【0013】
本体ベース部30には締結ボルト90のネジ部が挿入される挿入孔30aが形成されている。図8に示すように、挿入孔30aは長円形状を有し、本体ベース部30の中央位置から長さ方向にオフセットした位置に設けられる。なお、挿入孔30aは長円に限られず、矩形状としても良い。長円状や矩形状とすることで、本体部20に対する挟持部60の可動域を拡大することができ、挟持部60を本体部20に対して傾斜させたり、その位置を調整することができ、吊りボルトBの直径が異なった場合にでも設計変更することなく、使用することができる。
【0014】
支持部31,32は、それぞれ本体ベース部30に対して直角に折曲して形成されている。支持部31,32の先端縁には、それぞれ緩やかな円弧状の凹部(第1凹部)31a,32aが形成されている。凹部31a,32aの円弧の直径は吊りボルトBの直径より大きい。
【0015】
ブラケット取付部40、50は、それぞれ本体ベース部30に対して直角に折曲して形成されている。ブラケット取付部40、50それぞれの中央にはブラケット取付孔40a、50aが形成されている。なお、ブラケット取付孔40a,50aは、吊りボルト用支持具10を使用する用途に応じた様々な構造、例えば、ネジ孔、突起などに代替することができる。
【0016】
ブラケット取付部40の両側縁部には、板状の案内部41,42が設けられている。案内部41,42は、それぞれブラケット取付部40に対して直角に折曲して形成されている。案内部41,42は、支持部31,32の外側に位置し、その先端縁は支持部31,32の第1凹部31a,32aに到達する。本体部20の先端側に対応する案内部41,42の先端側の角縁は緩やかな曲線状に切り欠かれ、支持部31,32の第1凹部31a,32aに連続する案内縁41a,42aが形成される。
【0017】
ブラケット取付部50の両側縁部には、板状の案内部51,52が設けられている。案内部51,52は、それぞれブラケット取付部50に対して直角に折曲して形成されている。案内部51,52は、支持部31,32の外側に位置し、その先端縁は支持部31,32の第1凹部31a,32aに到達する。案内部51,52の先端縁には円弧状に窪んだ外側凹部51a,52aが設けられている。外側凹部51a,52aの円弧の直径は吊りボルトBの直径よりも大きい。
【0018】
図5図6図7に示すように、挟持部60は、横断面コ字形の溝枠に構成される。挟持部60は、その奥行が本体部20の内空の奥行と略等価であり、その幅が本体部20の
内空の幅よりも短く構成される。それにより、本体部20の内空における挟持部60の可動域は広がり、本体部20に対して傾斜させたり、スライド移動させたりが可能となる。
【0019】
具体的には、挟持部60は、矩形板状の挟持ベース部70と、挟持ベース部70の長辺側の両縁部に設けられた板状の一対の係合部(フック板)80とを備えている。図6に示すように、挟持ベース部70には締結ボルト90のネジ部に螺合するネジ孔71が形成されている。ネジ孔71は、挟持ベース部70の中央位置から長さ方向にオフセットした位置に設けられる。本体ベース部30にあけられた挿入孔30aと挟持ベース部70にあけられたネジ孔71とは、ともに中央位置からオフセットした位置に設けられる。それにより、挟持部60を本体部20に挿入して締結ボルト90に締結する組立作業において、挟持部60の向きを間違える事態を抑えられ、組み立て作業を効率的に行うことができる。一対の係合部80のそれぞれの先端側に鉤状のフック片81,82が形成される。フック片81,82は内側下方に向かって湾曲しており、それぞれの内側辺は緩やかな円弧状のフック部(第2凹部)81a,82aを構成する。フック片81,82の外側辺は緩やかに湾曲する案内縁81b、82bを構成する。案内縁81b、82bがあることで、吊りボルトBを本体部20側の案内縁41a,42aと、挟持部60側のフック片81,82との間に簡単に案内することができる。フック部81a,82aの円弧の直径は吊りボルトBの直径より大きい。
【0020】
上述した本体部20の第1凹部31a,32a、挟持部60のフック部81a,82a及び外側凹部51a,52aにより、吊りボルトBを保持あるいは通すための中空部Hが形成される。
【0021】
本体部20と挟持部60とは、互いの底板箇所において締結ボルト90によって締結されている。具体的には、締結ボルト90は、本体ベース部30に挿入孔30aに挿入され、そのネジ部が挟持ベース部70のネジ孔71に螺合されている。したがって、挟持部60は本体部20に対して締結ボルト90の軸方向に沿って締結ボルト90の長さの範囲で接近、離反可能である。
【0022】
吊りボルト用支持具10は、本体部20と挟持部60とを互いに接近する方向に付勢する弾性部材を備える。ここで、本体部20と挟持部60とを互いに接近する方向とは、第1凹部31a、32aと第2凹部81a、82aの間の中空部Hの間隔が狭くなる方向に対応する。図3図4図5に示すように、ここでは、締結ボルト90のヘッド91と本体部20の本体ベース部30との間には、円錐コイルバネ(弾性部材)95が介装されている。なお、第1凹部31a、32aと第2凹部81a、82aの間の中空部Hの間隔が狭くなる方向に本体部20と挟持部60とを付勢させることができるのであれば、その構成は上記に限定されない。例えば、締結ボルト90を挟持部60側から挿入する構成であってもよい。また、円錐コイルバネ95は、本体ベース部30と挟持ベース部70との間に介在される引張コイルバネに代替されることができる。
【0023】
以下、円錐コイルバネ95が少しつぶされる状態になるまで締結ボルト90を締めることを仮締め、円錐コイルバネ95が完全につぶされた状態になるなど、これ以上締められない状態になるまで締結ボルト90を締めることを本締めとして、それぞれを区別する。
【0024】
本実施形態に係る吊りボルト用支持具10は締結ボルト90を仮締めした状態で使用される。この状態において、円錐コイルバネ95は、締結ボルト90のヘッド91を本体ベース部30から離間させる方向に付勢する。締結ボルト90には挟持ベース部70が螺合しているため、挟持ベース部70は本体ベース部30(図5中下方向)に向かって引き付けられ、本体ベース部30に重なって密着する。このとき、第1凹部31a、32aと第2凹部81a、82aとの間の中空部Hは、吊りボルトBの直径よりも狭くなるように構成されている。
【0025】
このように構成された吊りボルト用支持具10は、図9図10及び図11に示すように使用される。本実施形態に係る吊りボルト用支持具10の1つの特徴は、吊りボルトに対して吊りボルト用支持具10を押し込むだけで、吊りボルトに吊りボルト用支持具10を仮止めできる構造を有する点にある。吊りボルト用支持具10を吊りボルトに対して押し込むだけで仮止めできる原理は以下のとおりである。
【0026】
図9(a)に示すように、作業者は、本体部20側の案内縁41a,42aと、挟持部60側のフック片81,82との間に吊りボルトBが位置するように吊りボルト用支持具10を操作し、吊りボルトBに対して吊りボルト用支持具10を押し込む。すると、挟持部60は、吊りボルトBによって押され、矢印M1に向かってスライドしながら、挟持ベース部70の端部箇所P1を支点に矢印R1の向きに回転される。このように、吊りボルトBは、挟持部60を押しながら、案内縁41a,42aに沿って中空部Hに向かって進入することができる。
【0027】
図9(b)に示すように、吊りボルトBに対して吊りボルト用支持具10をスライドさせると、挟持部60は、吊りボルトBによって矢印M2の方向に持ち上げられる。それにより、吊りボルトBを中空部Hに収容することができる。
【0028】
図9(c)に示すように、中空部Hに収容された吊りボルトBの周面の一方側に本体部20の第1凹部31a,32aが係合すると共に、吊りボルトBの周面の他方側に挟持部60の第2凹部81a,82aが係合し、本体部20と挟持部60とで吊りボルトBの周面を両側から強固に狭着する。この時の保持力は、円錐コイルバネ95の弾性力によるものであり、吊りボルト用支持具10が自重により吊りボルトBから脱落しない程度の力になるように締結ボルト90は仮締めされている。そのため、図10で説明するように、作業者は吊りボルト用支持具10の高さ調整を簡単な操作で行うことができる。なお、上記における保持力は締結ボルト90を締める程度によって調整できる。そのため、吊りボルト用支持具10を吊りボルトBに仮止めする力を強くしたいのであれば、締結ボルト90を少し締めれば良く、また、吊りボルト用支持具10を吊りボルトBに仮止めする力を弱くしたいのであれば、締結ボルト90を少し緩めればよい。この仮止めする力を調整できることも、様々な太さ、重さに対応できる重要な1つの要素である。
【0029】
なお、挿入孔30aが長円形であり、且つ本体部20の内空幅に対して挟持部60の外形幅が狭いため、挟持部60を矢印M1に沿ってスライド移動させることができる。このスライド移動は、円錐コイルバネ95によって挟持部60が本体部20に対して付勢される方向に対して直交する向きであり、大きな力は必要ない。また、挿入孔30aが長円形であるため、本体部20に対して挟持部60を傾斜させることができる。挟持ベース部70において締結ボルト90が螺合する位置が中央から吊りボルトBによって押し込まれる向きの反対側にオフセットしているため、吊りボルトBをフック片81,82に押し当てると、てこの原理が働き、少ない力で挟持部60を矢印R1の向きに回転させることができる。
【0030】
このように、作業者は、吊りボルトBに対して吊りボルト用支持具10を押し込み、スライドさせるだけの簡単な操作で、しかも少ない力で吊りボルトBに対して吊りボルト用支持具10を仮止めすることができる。上記の操作は、片手でもできる簡単な操作であり、作業者の作業性の向上に寄与する。
【0031】
吊りボルトBに対して吊りボルト用支持具10を仮止めした状態は次の操作で解除することができる。すなわち、図10に示すように、締結ボルト90のヘッド91を円錐コイルバネ95の付勢力に抗する力Fで押圧することによって、挟持部60を本体部20に対して離間させ、本体部20と挟持部60とによって形成される中空部Hを広げることができる。それにより、吊りボルトBに対して吊りボルト用支持具10を仮止めした状態を解除することができる。もちろん、吊りボルト用支持具10を吊りボルトBに仮止めする際に、上記の操作をするようにしてもよい。つまり、吊りボルトBに対して吊りボルト用支持具10を押し付けるのではなく、上記の締結ボルト90のヘッド91の押し込み操作をしながら、中空部Hを広げた状態で、中空部Hに吊りボルトBを導入するようにしてもよい。作業者は、吊りボルトBに仮止めした吊りボルト用支持具10の位置を調整したいとき、作業者は締結ボルト90のヘッド91を押圧して仮止めを解除した後、吊りボルト用支持具10を所望の位置まで移動させ、ヘッド91から手を離して吊りボルト用支持具10を吊りボルトBに仮止めできる。
【0032】
また、吊りボルト用支持具10の微調整であれば、作業者は次のような操作をしてもよい。吊りボルト用支持具10は、吊りボルトBから脱落しない程度の狭着力で吊りボルトBに仮止めされ、また、第1凹部31a、32a及び第2凹部81a、82aは、その板厚が吊りボルトBのネジ溝よりも厚く、吊りボルトBのネジ溝に完全に嵌り込んでいない。したがって、仮止めの状態では、作業者は、上記の締結ボルト90の押圧操作なしでも、上記の狭着力に抗する力で吊りボルト用支持具10を吊りボルトBの軸方向に動かすだけで、吊りボルト用支持具10の位置を調整することができる。なお、第1凹部31a、32a及び第2凹部81a、82aが吊りボルトBのネジ溝に完全に嵌り込むように、第1凹部31a、32a及び第2凹部81a、82aの板厚を吊りボルトBのネジ溝よりも薄く構成することで、吊りボルト用支持具10を吊りボルトBからさらに脱落しにくくすることができる。
【0033】
図11に示すように、吊りボルト用支持具10の取付位置が決まったら、締結ボルト90を仮締めした状態から締め込み、本締めする。このとき、吊りボルト用支持具10は吊りボルトBに仮止めされていて、本体部20と挟持部60とも円錐コイルバネ95の弾性力により固定されているため、作業者は本体部20を手で押さえることなく締結ボルト90を締めることができる。これは作業性向上に寄与する。本締めすることにより、締結ボルト90のヘッド91を押圧しても動かないため、本体部20と挟持部60とは、仮止めした状態の位置関係で固定される(本止めされる)。本体部20と挟持部60とは、それらの間に吊りボルトBを挟み込んだ状態で、締結ボルト90により強固に締結される。この時の締結力は、円錐コイルバネ95の付勢力よりも強く、非常に強力である。したがって、十分な力で吊りボルト用支持具10を吊りボルトBに固定することができる。
【0034】
なお、円錐コイルバネ95が吊りボルト用支持具10の表面に露出しているため、吊りボルト用支持具10が吊りボルトBに対して本止めされた状態なのか、仮止めされた状態なのかを円錐コイルバネ95を見るだけで確認することができる。
【0035】
以上説明した第1実施形態に係る吊りボルト用支持具10によれば、作業者は片手で吊りボルトBへの仮止め、高さ調整を簡単に行うことができ、高さ位置が決まった段階で締結ボルト90の本締めを行えば、強力に固定することができる。したがって、作業の効率化を図ることができる。また、部品点数が少なく、本体部20及び挟持部60はそれぞれ一枚の板金から形成することができることから、製造コストを低減することができる。
【0036】
なお、本体ベース部30と締結ボルト90のヘッド91とを離間させる方向に付勢する弾性部材として、作業者の押圧操作の安定性の観点から円錐コイルバネ95を例示したが、板バネ等の他の弾性部材でも良い。また、例えば、本体ベース部30もしくは挟持ベース部70の一部を切欠し、それを曲折して締結ボルト90を付勢するようにしてもよい。
【0037】
第1実施形態に係る吊りボルト用支持具10では、本体部20と締結ボルト90のヘッド91との間に円錐コイルバネ95を配置し、本体部20に対して挟持部60を引き付ける力を利用して、本体部20と挟持部60との間に配置された吊りボルトBを挟着していたが、本体ベース部30と挟持ベース部70との間に円錐コイルバネ95を配置し、本体部20に対して挟持部60が離れる力を利用して、本体部20と挟持部60との間に配置された吊りボルトBを挟着できるように、本体部20及び挟持部60の形状を構成するようにしてもよい。
【0038】
第1実施形態に係る吊りボルト用支持具10は、吊りボルトBに対して仮止めするために、吊りボルトBを本体部20と挟持部60とで挟着していた。したがって、吊りボルト用支持具10は、ネジ溝が形成されていない丸鋼、角鋼等の棒状材に対して仮止めすることができる棒状材用支持具として使用することができる。この場合、本体部20及び挟持部60と棒状材との間の接触面積を増やし、これらの間に生じる摩擦力を大きくすることで、挟着力を強くすることができる。また、本体部20及び挟持部60の、棒状材に接触する部分に、棒状材との間に生じる摩擦力を大きくするパッドを取り付けることでも同様の効果を奏する。
【0039】
第1実施形態に係る吊りボルト用支持具10は、本体部20と挟持部60との両方に、吊りボルトBの周面を受容する凹部を設けて構成される。それにより、本体部20の第1凹部31a、32aと挟持部60の第2凹部81a、82aとの間に案内された吊りボルトBを留まらせ、安定して挟着することができる。また、挟着した吊りボルトBの横方向への移動を規制し、吊りボルト用支持具10が吊りボルトBから脱落してしまう可能性を低減することができる。この効果は、本体部20と挟持部60とのうち少なくとも一方に凹部を設けることで発揮され得る。また、本体部20と挟持部60との間で吊りボルトBを挟着するという観点であれば、本体部20と挟持部60との両方に凹部が設けられなくてもよい。
【0040】
(第2実施形態)
図12は、本発明の第2実施形態に係る吊りボルト用支持具100を示す分解斜視図である。吊りボルト用支持具100は上述した吊りボルト用支持具10と同様に、吊りボルトBの任意の高さ位置に取り付けることができる。第2実施形態に係る吊りボルト用支持具100と第1実施形態に係る吊りボルト用支持具10との大きな差異は、挟持部のフック片の形状が異なる点にある。以下、第2実施形態に係る吊りボルト用支持具100の挟持部150を中心に説明する。なお、第2実施形態に係る吊りボルト用支持具100の本体部110は必要な部分のみ符号を付し説明する。
【0041】
挟持部150は、矩形板状の挟持ベース部160と、挟持ベース部160の長辺側の縁部に形成された板状の係合部170とを備えている。挟持ベース部160の中央にはネジ孔161が設けられている。係合部170は係合板171を有し、係合板171には孔部171aが形成されている。係合板171の先端側には一対のフック片172が形成される。一対のフック片172は内側下方に向かって湾曲しており、それぞれの内面は緩やかな円弧状のフック部(第2凹部)172aを構成し、外面は緩やかに湾曲する案内縁172bを構成する。フック部172aの円弧の直径は吊りボルトBの直径より大きい。
【0042】
上述した挟持部150のフック部172aと、本体部110の第1凹部121a,122aによって、吊りボルトBを保持あるいは通すための中空部Hが形成される。
【0043】
第2実施形態に係る吊りボルト用支持具100は、第1実施形態に係る吊りボルト用支持具10と同様の原理で、吊りボルトBに対して押し込むだけで吊りボルトBに仮止めすることができる。また、吊りボルトBに仮止めした吊りボルト用支持具100の位置を簡単な操作で調整することができる。また、最終的に締結ボルト190を本締めすることで、吊りボルト用支持具100を吊りボルトBに本止めすることができる。このように、第2実施形態に係る吊りボルト用支持具100は、第1実施形態に係る吊りボルト用支持具10と同様の効果を発揮する。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0045】
10…吊りボルト用支持具、20…本体部、30…本体ベース部、30a…挿入孔、31…支持部、31a…凹部(第1凹部)、32…支持部、32a…凹部(第1凹部)、40…ブラケット取付部、40a…ブラケット取付孔、41…案内部、41a…案内縁、42…案内部、42a…案内縁、50…ブラケット取付部、50a…ブラケット取付孔、51…案内部、51a…外側凹部、52…案内部、52a…外側凹部、60…挟持部、70…挟持ベース部、71…ネジ孔、80…係合部、81…フック片、81a…フック部(第2凹部)、81b…案内縁、82…フック片、82a…フック部(第2凹部)、82b…案内縁、90…締結ボルト、91…ヘッド、95…円錐コイルバネ(弾性部材)、100…吊りボルト用支持具、110…本体部、120…本体ベース部、121a…凹部(第1凹部)、122a…凹部(第1凹部)150…挟持部、160…挟持ベース部、161…ネジ孔、170…係合部、171…係合板、171a…孔部、172…フック片、172a…フック部(第2凹部)、172b…案内縁、190…締結ボルト、191…ヘッド、195…円錐コイルバネ(弾性部材)、B…吊りボルト、H…中空部、P…電線用配管、Q…パイラッククリップ、S…ケーブル支持金具、C…ケーブル。
図1
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図12