(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】紙キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 25/20 20060101AFI20241217BHJP
B65D 3/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B65D25/20 A
B65D3/00 B
(21)【出願番号】P 2023504363
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2021064175
(87)【国際公開番号】W WO2022017668
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】102020119510.9
(32)【優先日】2020-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519051322
【氏名又は名称】トゥーナップ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン、アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ハウプトマン、マレク
(72)【発明者】
【氏名】グルナート、ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】ヘロルド、ステファン
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-123105(JP,A)
【文献】実開昭53-012449(JP,U)
【文献】特開2003-054537(JP,A)
【文献】特表2012-520805(JP,A)
【文献】実公昭45-011029(JP,Y1)
【文献】実開平03-035014(JP,U)
【文献】特開昭62-168848(JP,A)
【文献】実開昭55-148008(JP,U)
【文献】米国特許第05007579(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/20
B65D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開口と第2の開口
とを含む螺旋状に巻かれたスリーブであって、前記第1の開口と前記第2の開口
とが向かい合う、スリーブと、
前記スリーブの前記第1の開口を閉じるように配置されたヘッドディスクと、を備え
る容器を閉じるためのキャップであって、
前記スリーブが紙から製造され、
前記スリーブの前記第2の開口が強化要素を有し、
前記強化要素が前記スリーブの内部へ延びる構造物であ
り、
前記スリーブは、螺旋状に巻かれた少なくとも1つの内側層と1つの外側層
とを含み、
前記強化要素が前記スリーブの前記第2の開口に厚肉領域を有し、
前記厚肉領域は、前記外側層を前記スリーブの前記内部へ折り畳むことによって
設けられ、それにより前記外側層が、前記少なくとも1つの内側層を少なくとも部分的に覆
い、
前記外側層が前記内側層を前記内側層の軸方向の切り口において覆うことにより、前記内側層の前記軸方向の切り口が保護される、キャップ。
【請求項2】
前記第1の開口が膨らみを有し、
前記膨らみが前記スリーブの前記内部へ延び、
前記ヘッドディスクが、前記スリーブの前記内部へ延びる前記膨らみの部分に結合される、
請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記スリーブの外側表面及び/又は前記スリーブの内側表面に、合成又はバイオベースのコーティングが設けられる、
請求項1又は2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記強化要素は、前記スリーブの端領域を前記スリーブの前記内部へフランジ加工することによって提供される厚肉領域を前記スリーブの前記第2の開口に有し、前記スリーブの前記フランジ加工された前記端領域が半径方向に圧縮される、
請求項1から3のいずれか1項に記載のキャップ。
【請求項5】
前記強化要素は、接着剤を塗布することによって提供される厚肉領域を前記スリーブの前記第2の開口に有する、
請求項1に記載のキャップ。
【請求項6】
互いに向かい合う第1の開口と第2の開口
とを有する、
紙から製造されるスリーブを螺旋状に巻く
段階と、
前記スリーブの前記第1の開口を閉じるようにヘッドディスクを配置する
段階と、
前記スリーブの前記第2の開口に、
前記スリーブの内部へ延びる構造物である強化要素を設ける
段階と、を
備える容器を閉じるためのキャップを製造する方法であって、
前記スリーブは、螺旋状に巻かれた少なくとも1つの内側層と1つの外側層
とを含み、
前記強化要素が前記スリーブの前記第2の開口に厚肉領域を有し、
前記厚肉領域は、前記外側層を前記スリーブの前記内部へ折り畳むことによって設けられ、それにより前記外側層が、前記少なくとも1つの内側層を少なくとも部分的に覆
い、
前記外側層が前記内側層を前記内側層の軸方向の切り口において覆うことにより、前記内側層の前記軸方向の切り口が保護される、方法。
【請求項7】
前記ヘッドディスクを配置する
前記段階が、
前記スリーブの前記第1の開口をフランジ加工する
段階と、
前記ヘッドディスクを供給する
段階と、
前記スリーブの前記内部へ延びるフランジに前記ヘッドディスクを結合する
段階と、を
含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記厚肉領域は、前記第2の開口をフランジ加工すること、続いて、結果として生じるフランジを半径方向に圧縮すること、
接着剤を前記第2の開口に配置すること、
のうちの1つによって
設けられる、請求項6又は7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器、特にエアゾール缶を閉じるための紙キャップに関する。さらに、本発明は、容器を閉じるためのキャップを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学プラスチック(特にポリプロピレン又はポリエチレン)から製造されるキャップ、特にエアゾール缶用のキャップが知られている。このような従来のエアゾール缶のキャップは、典型的には、例えば射出成形などの製造方法で製造される。
【0003】
一般に、従来のキャップのリユース性又はリサイクル性はどちらかといえば低く、非常にエネルギー集約的及びコスト集約的であり、その結果、従来のキャップの大部分が残余ごみとして廃棄物処分場で、又は燃料としてごみ焼却施設で処理される。そのため、従来のエアゾール缶のキャップのCO2収支及び環境適合性はよくない。CO2収支とは、決まった用途、及び決まった利用単位での製品のライフサイクル全体を通じた温室効果ガス排出量の収支である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、力結合的及び形状結合的に取り付けることができ、かつリサイクル性がよく、再使用可能又は堆肥化可能である容器、特にエアゾール缶用のサステナブルなキャップを提供するという課題に基づいている。
【0005】
上記課題は、独立請求項の主題により解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、容器を閉じるためのキャップが記載される。キャップは、第1の開口及び第2の開口を含む螺旋状に巻かれたスリーブを有する。第1の開口と第2の開口は向かい合わせに配置されている。キャップはヘッドディスクをさらに有し、ヘッドディスクは、スリーブの第1の開口を閉じるように配置されている。スリーブは紙から製造されている。スリーブの第2の開口は強化要素を有し、強化要素はスリーブの内部へ延びる構造物である。
【0007】
本発明の別の態様によれば、容器を閉じるためのキャップを製造する方法が記載される。この方法は、(i)第1の開口と第2の開口を有するスリーブを螺旋状に巻回する段階であって、第1の開口と第2の開口が向かい合う、段階と、(ii)ヘッドディスクがスリーブの第1の開口を閉じるようにヘッドディスクを配置する段階であって、スリーブが紙から製造される、段階と、(iii)スリーブの第2の開口に強化要素を提供する段階であって、強化要素は、スリーブの内部へ延びる構造物である、段階とを包含する。
【0008】
スリーブは、管状で細長い円筒形の堅固なスリーブであり得る。例示的な実施形態では、管状で細長い円筒形のスリーブは、これが2つの開口を有することを特徴とし、2つの開口は長手方向に沿って向かい合い、例えば円筒の上面をなす。スリーブは、特に回転対称体を形成することができ、その対称軸(中心軸)は長手方向と平行に延びる。円筒の側面に相当するスリーブは均一であり得、すなわち側面には他の開口若しくは空所が設けられない。これに代えて、向かい合い、円筒の上面をなし得る2つの開口の他に、少なくとももう1つ別の開口若しくは空所があってもよい。スリーブは、30mm(ミリメートル)~74mm、特に35mm~65mmの直径を有することができる。
【0009】
本発明の文脈において、「スリーブの内部」は、スリーブの側面の延在方向に取り囲まれる内部容積を表す。スリーブの長手方向若しくは中心軸は、スリーブの半径方向と直交する。
【0010】
本出願の文脈において、「強化要素」という用語は、スリーブの側面からスリーブの内部若しくは内部容積へ延び、スリーブの補強、機械的強度、及び形状安定性に寄与する、完全に若しくは部分的に周回する膨らみ(Wulst)を表すことができる。さらに、強化要素は内部容積へ延び、したがって、例えば缶の収容溝と解離可能に接続することから、強化要素は互換性のある缶、特にエアゾール缶へのキャップの取り付け装置として用いられる。強化要素は、スリーブの一体領域を形成することができるか、又はスリーブとは異なる材料の別個の要素からなることができる。
【0011】
強化要素は、スリーブの内部へ延びる膨らみの、完全には周回しない複数の膨らみ区分であってもよい。この場合、強化要素は、スリーブの直径の1%~10%で、半径方向で内向きに延びる。これに加えて、強化要素は、スリーブの直径の1%~10%で、半径方向で内向きに延びる他に、スリーブの長さの5%~20%の延在で、長さ方向で内向きにも延びる。
【0012】
本出願の文脈において、「紙」という用語は、例えば、特に植物由来の繊維素材(例えばセルロース、木材パルプ及び古紙材料)からなる平らな材料を表す。「紙」の例示的な実施形態は、DIN6730による単位面積当たりの質量をもとにして区別される紙のみならず厚紙及び板紙も含む。DIN6730は、紙は単位面積当たりの質量が7g/m2~225g/m2、厚紙は単位面積当たりの質量が150g/m2~600g/m2、板紙は単位面積当たりの質量が225g/m2であると定義する。さらに、「紙」の例示的な実施形態は、紙と類似の厚さを有する薄い木材シート又はコルクシートをも表すことができる。さらに、紙は5%までの異物を含有することができる。
【0013】
本発明によるスリーブは、使用目的、及びこれと結びついた強度要求に応じて、少なくとも1つのサイジングされた紙ウェブが、固定のマンドレルに部分的に重ね合わせるか、又は互いに突き合わせて巻き付けられる螺旋巻き法で製造される。この場合、サイジングされた各紙ウェブは巻回体の層である。螺旋巻き法の間、個々の層、複数の個々の層を上に重ねて、又は複数の個々の層を内側に重ねて巻くことができる。層を提供するために、紙ウェブの縁がスリーブの長さ方向に重なることができ、紙ウェブの重なり合う領域は互いに固定、特に貼着される。
【0014】
ヘッドディスクは、紙から1層又は複数層に形成することができる。
【0015】
容器を閉じるための本発明によるキャップは、良好なCO2収支及び環境適合性を有し、したがって再利用不可能な廃棄物を減らすために用いられる。これは、キャップが完全に、すなわちスリーブとヘッドディスクの両方が紙から製造されていることによって可能になる。紙ウェブを螺旋状に巻くことによる紙キャップの製造は、エアロゾル又は他の流体に対して缶を密に保ちもする堅牢で耐久性のあるキャップをもたらす。さらに、紙からのキャップの製造は、多大な手間やコストなしに高さ、直径、及び材料厚さに関してキャップを適合させることができ、例えば多色といった視覚的デザイン、又は、例えばエンボス加工などの触覚的デザインで形成できることを可能にする。それにより、キャップの少量生産も経済的に実現することができる。さらに、螺旋巻き技術によって、製造設備への複雑な適合作業の必要がないため、キャップの高さ、直径、及び材料厚さを簡単に適合させることができる。それによって、キャップの少量生産も経済的に実現することができる。さらに、特定の視覚的又は触覚的効果を達成するために、ヘッドプレートをエンボス加工によって変形加工する可能性もある。その他に、キャップをより良く嵌め込み、及び取り外しできるようにするために、特殊な加工により、円筒形の部分が視覚的、触覚的、又は特定用途向け変形加工部、例えばグリップ溝などを有することができる。
【0016】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、第1の開口が(例えば、丸い断面を有する)膨らみ、特にフランジ(Boerdel)を有する。膨らみはスリーブの内部へ延び、ヘッドディスクは、スリーブの内部へ延びる膨らみの部分に結合若しくは固定される。
【0017】
膨らみは、スリーブの(内側の)側面からスリーブの内部若しくは内部容積へ延びる完全に又は部分的に周回する膨らみであり得る。フランジは、フランジ加工(Boerdeln)によって、すなわちスリーブの縁を内部へ折り曲げることによってスリーブの折り曲げられた縁端の補強をもたらす肉厚部若しくは膨らみである。
【0018】
ヘッドディスクとフランジは、例えば材料的な結合(接着)及び/又は圧着が提供されることにより結合若しくは互いに固定される。例示的な接続は、ヘッドディスク及び/又はフランジに接着剤を塗布することによって実現することができる。この場合、貼着は完全に、すなわちフランジ上のヘッドディスクの載置面全体に沿って、又は点状に、好ましくは3つの接着点によって実現できる。さらに、ヘッドディスクとフランジとの間の接続は、プレス嵌め(Presspassung)によって実現することもできる。
【0019】
この例示的な実施形態は、フランジへのヘッドディスクの安定した取り付けを提供できるという利点を有する。それにより、ヘッドディスクの脱落又は位置ずれを確実に防止でき、それによってキャップの耐性と長寿命性が向上し、さらにスリーブの内部へ延びるフランジの部分へのヘッドディスクの結合若しくは配置は、ヘッドディスクの取り付け部がスリーブ内、すなわちスリーブの円筒容積に相当するスリーブの領域にあるという利点を有する。その結果、ヘッドディスクの取り付け部を環境の影響から保護することができ、そのこともキャップの耐性と長寿命性の向上につながる。
【0020】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、スリーブの外側表面及び/又はスリーブの内側表面に合成又はバイオベースのコーティングが設けられる。
【0021】
本出願の文脈において、「外側表面」という用語は、スリーブの周囲領域に直接接触し、したがって環境の影響にさらされるスリーブの表面を表す。「内側表面」という用語は、スリーブの内部にあるスリーブの表面を表す。別の実施形態では、スリーブの内部にあるヘッドディスクの「内側表面」、及び/又は周囲環境と直接接触するヘッドディスクの「外側表面」にも、合成又はバイオベースのコーティングを設けることができる。
【0022】
外側表面又は内側表面に合成又はバイオベースのコーティングを設けることができる。これらのコーティングは不透過性を有し、それにより紙からなるスリーブの層が絶縁、封止、又は封入される。合成又は金属ベースのコーティングの例示的な実施形態は、例えばPE又はPPからなる薄肉のプラスチック層、あるいは例えばアルミ箔などの金属層である。
【0023】
この場合、コーティングに着色することもできる。バイオベースのコーティングの例示的な実施形態は、以下の材料、すなわちコルク、木材、蝋、又はバイオベースのプラスチック、例えばPLAである。この場合、例示的な実施形態は上述の材料に限定されない。コーティングは、キャップのリサイクル性を保証するために、キャップの総重量の20%以下、好ましくはキャップの総重量の5%未満の厚さ/厚みを有する。
【0024】
この例示的な実施形態は、例えばグリース、油及び水に対するスリーブの耐性を改善できるという利点を有する。したがって、キャップの長寿命性を向上させることができる。
【0025】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、スリーブは、少なくとも1つの内側層と1つの外側層を備える。どちらの層も螺旋状に巻かれる。
【0026】
外側層は、半径方向で最も外側の紙層であり、外側表面を有する。内側層は、内側表面を有する紙層である。内側層と外側層との間に多数の他の層を配置することができる。
【0027】
相応の数の層を用いて、スリーブを任意の厚みに調整することができる。それによって、スリーブの強度と形状安定性を高めることができる。
【0028】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、スリーブの第2の開口における強化要素は肉厚領域若しくは膨らみを有する。肉厚領域は、スリーブの端領域をフランジ加工することによってスリーブの内部に提供することができ、スリーブのフランジ加工された端領域は半径方向に圧縮される。
【0029】
スリーブの第2の開口における端領域は、スリーブの第2の開口に直接接し、かつスリーブの末端縁を有する端領域である。フランジ加工の後、若しくはスリーブの端領域を内向きに折り畳んだ後、折り畳み後に当接する層間に空洞が存在する可能性があるか、若しくは層同士が緩く当接する可能性がある。より良い強化効果を得るために、当接する層を互いに押し付けて圧縮するべく半径方向に加圧力を加えることができる。
【0030】
この例示的な実施形態は、一方ではスリーブ若しくはキャップの形状安定性を高め、他方ではスリーブの第2の開口の近くのキャップの直径を内向きに縮小する肉厚領域が提供されるという利点を有する。スリーブの第2の開口の内径を縮小することにより、互換性のある缶、特にエアゾール缶へのキャップの堅固で位置ずれしない着座を保証することができる。より良い取り付けのために、缶は、肉厚領域若しくは膨らみのための対応する収容溝を有することができる。膨らみの内径は、互換性のある缶からキャップを取り外すことなしに、充填された缶をキャップだけで持ち上げることができるように構成及び調整することができる。
【0031】
スリーブの端領域若しくは末端縁は、スリーブの軸方向の端を示す。
【0032】
スリーブの切断縁は、層の開放部を示す。層が軸方向に、端領域において開放切断縁で終わる場合、紙層間に湿気が浸入し、紙層の接続が外れるか、又は膨張が起きる危険がある。スリーブの端領域をスリーブの内部へフランジ加工する、若しくは折り畳むことにより、外側層がスリーブの軸方向の端を取り囲み、それによりスリーブの層の間に浸入する湿気を少なくすることができる。その場合、切断縁はスリーブの内部にある。したがって、キャップの耐性と長寿命性を向上させることができる。
【0033】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、スリーブの第2の開口における強化要素は肉厚領域を有する。肉厚領域は、接着剤、特にリサイクル可能な接着剤を塗布することによって提供される。
【0034】
リサイクル可能な接着剤は、リサイクル性であり、及び/又は環境にわずかしか負荷をかけない接着剤である。リサイクル可能な接着剤の例示的な実施形態は、以下の材料、すなわち、天然ゴム、ホルムアルデヒドを含まない分散接着剤(PVAC糖接着剤)及びリグニンベースのポリマー接着剤(LignoGlue)である。
【0035】
この例示的な実施形態は、同様に、一方ではスリーブ若しくはキャップの形状安定性を高め、他方ではスリーブの第2の開口の近くのキャップの直径を内向きに縮小する肉厚領域が提供されるという利点を有する。それによって、互換性のある缶、特にエアゾール缶へのキャップの堅固で位置ずれしない着座を保証することができる。さらに、接着剤を塗布することによって、第2の開口におけるスリーブの開放切断縁が封止され、それにより、例えば空気中の湿気などの環境の影響に対する保護を提供することができる。したがって、キャップの耐性と長寿命性を向上させることができる。
【0036】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、スリーブの第2の開口における強化要素は肉厚領域を有する。肉厚領域は、外側層をスリーブの内部へ折り畳むことによって提供され、それにより外側層は、少なくとも1つの内側層を(その軸方向の端において)少なくとも部分的に覆う。
【0037】
この例示的な実施形態は、同様に、一方ではスリーブ若しくはキャップの形状安定性を高め、他方ではスリーブの第2の開口の近くのスリーブの直径を縮小する肉厚領域が提供されるという利点を有する。それによって、互換性のある缶、特にエアゾール缶へのキャップの堅固で位置ずれしない着座を保証することができる。さらに、外側層が少なくとも1つの内側層を少なくとも部分的に覆っているとき、外側層をスリーブの内部へ折り畳むことによって、スリーブの開口の近くの内側層の下切断縁が保護され、それにより、例えば空気中の湿気の侵入などの環境の影響に対する保護を提供することができる。したがって、キャップの耐性と長寿命性を向上させることができる。
【0038】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、ヘッドディスクの配置は、以下の方法段階:(I)スリーブの第1の開口をフランジ加工、特に丸い断面でフランジ加工する段階、(II)ヘッドディスクを供給する段階、及び(III)ヘッドディスクを、スリーブの内部へ延びるフランジ、特にスリーブの内に配置されたフランジの部分に結合する段階、を包含する。
【0039】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、スリーブの第2の開口に強化要素を提供することは、肉厚領域を有する。肉厚領域は(a)第2の開口をフランジ加工、特に丸い断面でフランジ加工し、続いて、結果として生じたフランジを半径方向に圧縮すること、(b)接着剤、特にリサイクル可能な接着剤を第2の開口に配置すること、及び(c)スリーブが少なくとも1つの内側層と1つの外側層を含む場合、スリーブの外側層を折り畳み、それにより外側層が少なくとも1つの内側層を少なくとも部分的に覆うこと、のうちの1つによって提供される。
【0040】
ここに記載された実施形態は、本発明の可能な変形実施形態の限られた選択を示すにすぎないことに言及しておく。したがって、個々の実施形態の特徴を適切な仕方で互いに組み合わせることが可能であり、それによりここでの明示的な変形実施形態により多数の異なった実施形態が当業者に明らかに開示されているとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】キャップの本発明による実施形態の断面の図である。
【
図2】
図1のキャップの本発明による実施形態の側面図である。
【
図3】
図1のキャップの強化要素の本発明による実施形態の詳細図の断面の図である。
【
図4】
図1のキャップの強化要素の本発明による別の実施形態の詳細図の断面の図である。
【
図5】
図1のキャップの強化要素の本発明による別の実施形態による詳細図の断面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の詳細な説明において、別の実施形態の対応する特徴若しくは構成要素と同じか、又は少なくとも機能的に同等である種々異なる実施形態の特徴若しくは構成要素には、同じ参照符号、あるいは最後の2つの数字が対応する同じか、又は少なくとも機能的に同等である特徴若しくは構成要素の参照符号と同一である参照符号が付されていることに言及しておく。不必要な繰り返しを避けるために、前述の実施形態を基にしてすでに説明された特徴若しくは構成要素について、後の箇所で詳細に説明されることはない。
【0043】
さらに、図示は模式的であり、縮尺通りではないことに言及しておく。
【0044】
さらに、例えば「前」と「後」、「上」と「下」、「左」と「右」などの空間に関する用語は、図に示されるように、ある要素と別の1つの要素、又は別の複数の要素との関係を記述するために使用されることに言及しておく。したがって、空間に関する用語を、図に示されている向きとは異なる向きに対して適用することができる。しかしながら、それぞれ示された装置、構成要素等々は、これらの使用時に、図面に示される向きとは異なり得る向きをとることができるため、そのような空間に関する用語はすべて、説明を簡単にするために、図面に示された向きを指し、かつ必ずしも限定的でないことは自明である。
【0045】
図1は、容器、特にエアゾール缶を閉じるためのキャップ100を示す。キャップ100は、第1の開口105と第2の開口104を含む螺旋状に巻かれたスリーブ101を備える。第1の開口部105と第2の開口部104は向かい合う。さらに、キャップ100はヘッドディスク102を有し、
ヘッドディスク102は、これがスリーブ101の第1の開口105を閉じるように配置される。スリーブ101とヘッドディスク102は紙から製造されている。スリーブ101の第2の開口104は強化要素106を有し、強化要素106は、スリーブ101の内部へ延びる構造物である。
【0046】
キャップ100は、細長い円筒形で管状のスリーブ101を有する。
【0047】
スリーブ101は、長さa、厚み若しくは材料厚さb、及び幅cを有する。幅cは、スリーブ101の第1の開口105の近くの、半径方向RRのスリーブ101の外面107間の距離とし定義される。スリーブ100は、特に、対称軸(中心軸)が長手方向LRと平行に延びる回転対称体である。半径方向RRは、中心軸に対して垂直に延び、中心軸と交差する。長さaは、第1の開口105と第2の開口104との間の距離として定義される。厚み若しくは材料厚さbは、半径方向内側表面108と半径方向外側表面107との間の距離として定義される。この場合、スリーブ101の厚み若しくは材料厚さbは、紙層の数と紙層の厚さによって決まる。スリーブ101とヘッドディスク102は、同じ又は異なる数の紙層からなることができる。
図1に示されるこの実施形態では、キャップ100、すなわちスリーブ101とヘッドディスク102は、3つの層、すなわち螺旋状に巻かれた紙ウェブを有する。
【0048】
スリーブ101は、第1の開口105と第2の開口104をさらに有する。フランジ103は、第1の開口105に直接配置される。フランジは、一般に、構造物の折り曲げられた端縁を補強するために用いられ、構造物の縁を折り曲げることによって形成される。このフランジ103は周回し、半径方向RRで内向きと、長さ方向LRで外向きにも延びる丸い断面形状を有する。換言すれば、フランジ103は、スリーブの円筒容積に相当する領域へ延びる。第2の開口104は、第1の開口105の向かい側に位置し、第1の開口105と第2の開口104はそれぞれ、円筒若しくはスリーブ101の上面である。フランジ加工の後、若しくはスリーブの端領域を内向きに折り畳んだ後、
図1のように、折り畳み後に当接する層の間に空洞が存在し得るか、若しくは層が緩く当接し得る。
【0049】
スリーブ101は均一であり、すなわち、スリーブ101の側面において第1の開口105及び第2の開口104の他には、他の開口若しくは空所が存在しない。別の例示的な実施形態では、スリーブにおいて、例えば側面又はヘッドディスクに少なくとも1つの別の開口を提供することができる。これには、この別の開口を通って水が流出できるので、例えばシャワーに置かれたままの可能性のある缶の頭部領域を乾燥させることができ、キャップによって覆われた弁支持体の水による腐食が防がれるという利点がある。これにより、長期の作用によるキャップへの水の攻撃も防がれる。
【0050】
フランジ103にはヘッドディスク102が結合されている。ヘッドディスク102は、接着剤、特にリサイクル可能な接着剤若しくは接着材料によってフランジ103に完全に又は点状に接着することができる。さらに、ヘッドディスク102をプレス嵌めによってフランジ103に取り付けることもできる。
【0051】
ヘッドディスク102は、多層の厚紙から製造することができる。スリーブ101は、記載に従って加工することができる螺旋状に巻かれた紙、厚紙、板紙、薄い木材シート、又は他の薄肉材料から製造することができる。
【0052】
スリーブ101の補強、高強度、及び形状安定性をもたらす強化要素106が第2の開口104に直接配置される。強化要素106の別の実施形態は、
図3~
図5に詳細
図Bで示されている。強化要素106は、スリーブ101の内部へ延びる構造物、特に周回する膨らみである。この場合、強化要素106は、半径方向RRで内向きに、殊にスリーブ101の幅cの1%~10%で、及び長さ方向LRで内向きに、殊にスリーブ101の長さaの5%~20%で延び、したがってスリーブ101の円筒容積に相当する領域にある。
図1に示される実施形態では、強化要素106はスリーブ101の内側表面108上にある領域において、キャップ100の直径より大きく、そのことも、互換性のある缶、特にエアゾール缶への堅固で位置ずれしない着座を保証する。この領域内で、第2の開口104の近くのスリーブ101の幅dは、第2の開口104の幅eよりも大きく、第1の開口105の近くのスリーブ101の幅cは、幅dと幅eの間である。
【0053】
この場合、キャップの広がりは、第1の開口105でのスリーブ101の幅cの0.5%~2%延びる。
【0054】
図2は、
図1によるキャップ100の本発明による実施形態の側面図を示す。キャップ100は、長さ方向LRと半径方向RRを有し、半径方向RRは長さ方向LRに直交する。
図2における長さ方向LRは中心軸に沿って延びる。
【0055】
図3は、強化要素106の本発明による実施形態の詳細
図Bの断面を示す。強化要素301は肉厚領域Aを有する。肉厚領域Aは、スリーブ101の内部へ延びる。肉厚領域Aは、端領域、すなわちスリーブ101の開口に直接配置され、かつスリーブ101の切断縁を有する領域をスリーブ101の内部へフランジ加工する、若しくは折り畳むことによって提供される。スリーブ101の内部への端領域のフランジ加工に加えて、フランジ加工された端領域が半径方向RRに圧縮される。この場合、フランジ加工された端部領域の圧縮は、半径方向RRで外向きに圧縮力を加えることによって達成される。さらに、熱的及び機械的圧縮とカウンターガイドとの組み合わせによる圧縮、いわゆる「熱機械的圧縮」を提供することができる。
【0056】
図4は、キャップ100の強化要素106の本発明による別の実施形態の詳細
図Bの断面を示す。強化要素401は肉厚領域Aを有する。肉厚領域Aは、スリーブ101の内部へ延びる。これは、接着剤ノズルを用いて接着剤を的確に塗布することにより達成できる。さらに、肉厚領域Aは、スリーブの内部と、外向きの両方に延びることができる。肉厚領域Aは、スリーブ101の内部へ延びる接着剤、特にリサイクル可能な接着剤を塗布することによって提供される。良好にリサイクル可能な接着剤、この場合、リサイクル性の良い接着剤である。
【0057】
図5は、キャップ100の強化要素106の別の発明による実施形態の詳細
図Bの断面を示す。強化要素501は、スリーブ101の第2の開口104に領域Aを有する。領域Aは、外側層503を内側層502の自由端の周りでスリーブ101の内部へ折り畳むことによって提供される。この場合、外側層503は、内側層502を少なくとも部分的に内面で覆い、すなわち外側層503は、スリーブ101の内側層502の端領域を完全に覆い隠す。この変形形態では、キャップとエアゾール缶との間の摩擦により誘起される(reibungsinduziert)結合力によってキャップを保持することができる。
【0058】
「有する」という用語は他の要素を除外するものではなく、かつ「単数」は複数を除外するものではないことを付言しておく。種々異なる実施例との関連で説明される要素を組み合わせることもできる。請求項における参照符号は、請求項の保護範囲として限定するものと解釈されるべきではないことを付言しておく。
【符号の説明】
【0059】
100 キャップ
101 スリーブ
102 ヘッドディスク
103 フランジ
104 第2の開口
105 第1の開口
106 強化要素
107 外側表面
108 内側表面
301 強化要素
401 強化要素
501 強化要素
502 内側層
503 外側層
a スリーブの長さ
b スリーブの厚み/材料厚さ
c 第1の開口dの近くのスリーブの幅
d 第2の開口eの近くのスリーブの幅
e 第2の開口の幅
A 肉厚領域
B 詳細図
LR 長さ方向
RR 半径方向