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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ヒートポンプ給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/02 20220101AFI20241217BHJP
   F24H 15/176 20220101ALI20241217BHJP
   F24H 15/212 20220101ALI20241217BHJP
   F24H 15/281 20220101ALI20241217BHJP
   F24H 15/375 20220101ALI20241217BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20241217BHJP
【FI】
F24H4/02 C
F24H15/176
F24H15/212
F24H15/281
F24H15/375
F24H1/18 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020213494
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099628
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】西岡 大智
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-133267(JP,A)
【文献】特開2003-269788(JP,A)
【文献】特開2013-224764(JP,A)
【文献】特開2017-194258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/00 - 15/493
F24H 4/02
F24H 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプ熱源機と、貯湯タンクユニットと、太陽光発電装置を備えたヒートポンプ給湯システムにおいて、
太陽光発電装置から供給される電力と商用電源から供給される電力の一方又は両方を用いて湯水を加熱する通常運転モードと、緊急時に通常運転モードから移行して太陽光発電装置から供給される電力だけで運転を行うPV自立運転モードとを備え、
前記PV自立運転モードにおいては、給湯及び注湯優先の要否情報に基づき、給湯及び注湯優先が必要とされているときには、ヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転を一時禁止するように構成され、
前記給湯及び注湯優先の要否は、前記PV自立運転モードが設定されたときにユーザによって選択可能に構成されたことを特徴とするヒートポンプ給湯システム。
【請求項2】
前記太陽光発電装置から供給されるPV発電量とヒートポンプ給湯システムの最大消費電力を比較し、PV発電量の方が多い場合にはヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転を許可することを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ給湯システム。
【請求項3】
前記ヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転が一時禁止されているときに、前記太陽光発電装置から供給されるPV発電量とヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転の予測消費電力を比較し、PV発電量の方が多い場合であって、凍結予防運転又は貯湯タンクの湯温が設定値以下の場合には、前記ヒートポンプ熱源機による運転を許可することを特徴とする請求項1又は2に記載のヒートポンプ給湯システム。
【請求項4】
前記ヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転が一時禁止されているときに、前記太陽光発電装置から供給されるPV発電量とヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転の予測消費電力を比較し、PV発電量の方が多く、貯湯タンクの湯温が設定値を上回っている場合は、給湯又は注湯中でなく、設定された給湯使用時刻外であり、給湯予測使用時刻外である場合に限り、ヒートポンプ熱源機の運転を許可することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のヒートポンプ給湯システム。
【請求項5】
出湯する湯水を加熱可能な燃焼式の補助熱源機を有することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のヒートポンプ給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒートポンプ給湯システムに関し、特に太陽光発電装置が併設されたヒートポンプ給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートポンプ熱源機と貯湯タンクと燃焼式の補助熱源機とを有するヒートポンプ給湯装置(所謂、ハイブリッドヒートポンプ)と、太陽光を利用して発電する複数の太陽電池パネルを有する太陽電池発電装置と、この太陽光発電装置による発電電力及び家庭内の使用電力を測定する電力測定装置等を備えたヒートポンプ給湯システムが実用化されている。
【0003】
この種のヒートポンプ給湯システムは、一般的に、電力測定装置とヒートポンプ給湯装置とを通信接続してヒートポンプ給湯装置が発電状態データを受信することが可能に構成されているため、太陽光発電装置の発電状態に応じてヒートポンプ給湯装置の運転を適宜制御することができる。このようなヒートポンプ給湯システムのヒートポンプ給湯装置の制御方法に関しては、種々の文献に開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のヒートポンプ給湯システムにおいては、太陽光発電装置による発電量と運転コストによりヒートポンプ熱源機による給湯運転を禁止又は制限する。
【0005】
特許文献2に記載の太陽光発電装置付きのヒートポンプ貯湯給湯システムにおいては、発電余剰電力がヒートポンプ熱源機の消費電力より少ないときにはヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転を停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6036016号公報
【文献】特開2016-44849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、台風や地震のような自然災害の多い日本では、日常において有用であるだけでなく、緊急時にも有効活用できるヒートポンプ貯湯給湯システムが求められている。自然災害が発生した緊急時に、停電しかつガス停止した時に、太陽光発電装置の非常用電源から電力を供給して、ヒートポンプ貯湯給湯システムの運転を可能にしている。
【0008】
このようなPV自立運転モードにおいても、ユーザーが給湯や注湯を要求したときにヒートポンプ熱源機が作動していると、ヒートポンプ熱源機の消費電力が多いため、太陽光発電装置の発電量が不足し、ヒートポンプ貯湯給湯システムの電源が落ちてしまうという問題がある。
【0009】
給湯や注湯を行う電力はあり、湯も十分にあるが、ヒートポンプ熱源機が作動することで、給湯や注湯を行えないケースが発生する。これでは、緊急時の対応として不十分であり、ユーザーの満足が得られない。
【0010】
特許文献1の技術では、発電量と運転コストに基づいて給湯運転を禁止又は制限するだけであるため、ユーザーの必要に応じた給湯や出湯が難しい。
また、特許文献2の技術では、発電余剰電力がヒートポンプ熱源機の消費電力より少ないときにはヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転を停止するため、貯湯タンクへの貯湯を優先するのみで、ユーザーからの給湯や出湯の要請に応えることが難しい。
【0011】
本発明の目的は、ヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転よりも給湯や出湯の要請を優先させたり、PV発電量が多い場合で貯湯タンク内貯湯の湯温を高める必要がある場合にはヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転を許可したりすることのできるヒートポンプ給湯システムを提供すること、などである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1のヒートポンプ給湯システムは、ヒートポンプ熱源機と、貯湯タンクユニットと、太陽光発電装置を備えたヒートポンプ給湯システムにおいて、太陽光発電装置から供給される電力と商用電源から供給される電力の一方又は両方を用いて湯水を加熱する通常運転モードと、緊急時に通常運転モードから移行して太陽光発電装置から供給される電力だけで運転を行うPV自立運転モードとを備え、前記PV自立運転モードにおいては、給湯及び注湯優先の要否情報に基づき、給湯及び注湯優先が必要とされているときには、ヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転を一時禁止するように構成され、前記給湯及び注湯優先の要否は、前記PV自立運転モードが設定されたときにユーザによって選択可能に構成されたことを特徴としている。
【0013】
【0014】
請求項2のヒートポンプ給湯システムは、請求項の発明において、前記太陽光発電装置から供給されるPV発電量とヒートポンプ給湯システムの最大消費電力を比較し、PV発電量の方が多い場合にはヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転を許可することを特徴としている。
【0015】
請求項3のヒートポンプ給湯システムは、請求項1又は2の発明において、前記ヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転が一時禁止されているときに、前記太陽光発電装置から供給されるPV発電量とヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転の予測消費電力を比較し、PV発電量の方が多い場合であって、凍結予防運転又は貯湯タンクの湯温が設定値以下の場合には、前記ヒートポンプ熱源機による運転を許可することを特徴としている。
【0016】
請求項4のヒートポンプ給湯システムは、請求項1~3の何れか1項の発明において、前記ヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転が一時禁止されているときに、前記太陽光発電装置から供給されるPV発電量とヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転の予測消費電力を比較し、PV発電量の方が多く、貯湯タンクの湯温が設定値を上回っている場合は、給湯及び注湯中でなく、設定された給湯使用時刻外であり、給湯予測使用時刻外である場合に限り、ヒートポンプ熱源機の運転を許可することを特徴としている。
【0017】
請求項5のヒートポンプ給湯システムは、請求項1~4の何れか1項の発明において、出湯する湯水を加熱可能な燃焼式の補助熱源機を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、PV自立運転モードにおいては、給湯及び注湯優先の要否情報に基づき、給湯及び注湯優先が必要とされているときには、ヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転を一時禁止するため、消費電力の大きなヒートポンプ熱源機を停止状態にしてヒートポンプ給湯システムの電源が落ちるのを防止しながら、ユーザーの給湯及び注湯の要請に確実に応えることができる。
【0019】
そして、前記給湯・注湯優先の要否は、前記PV自立運転モードが設定されたときにユーザによって選択可能に構成されているため、ユーザーの給湯・注湯優先の要請に確実に応えることができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、PV発電量とヒートポンプ給湯システムの最大消費電力を比較し、PV発電量の方が多い場合には、ヒートポンプ給湯システムの電源が落ちる虞がないため、ヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転を許可する。
【0021】
請求項3の発明によれば、ヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転が一時禁止されているとき、PV発電量とヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転の予測消費電力を比較し、PV発電量の方が多い場合であって設定値以上の湯温の湯が必要となる場合(例えば、凍結予防運転の要求がある場合)、前記ヒートポンプ熱源機による運転を許可することで、ヒートポンプ給湯システムの電源が落ちるのを防止しながら、凍結予防運転の要請に応えることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、PV発電量とヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転の予測消費電力を比較し、PV発電量の方が多く、貯湯タンクの湯温が設定値を上回っている場合は、当面は給湯又は出湯の必要性がないことを条件として、ヒートポンプ熱源機の運転を許可するため、ヒートポンプ給湯システムの電源が落ちるのを防止しながら、貯湯タンクに貯湯することができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、出湯する湯水を加熱可能な燃焼式の補助熱源機を有するため、ガス供給が停止していない限り、給湯・出湯の要請に応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るヒートポンプ給湯システムの概略構成図である。
図2】ヒートポンプ給湯装置のヒートポンプ熱源機による沸き上げ運転可否制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0026】
先ずは、ヒートポンプ給湯システムSの全体構造について簡単に説明する。
図1に示すように、ヒートポンプ給湯システムSは、貯湯タンクユニット2とヒートポンプ熱源機3(HP熱源機)とからなるヒートポンプ給湯装置1と、太陽光を利用して発電する太陽光発電装置40(PV発電装置)と、この太陽光発電装置40による発電電力及び家庭内の使用電力を測定する電力測定装置45とを備え、電力測定装置45とヒートポンプ給湯装置1とを通信接続してヒートポンプ給湯装置1が発電状態データを受信することが可能に構成されている。
【0027】
次に、ヒートポンプ給湯装置1について説明する。
図1に示すように、ヒートポンプ給湯装置1は、温水を貯留する大容量の貯湯タンク12とガス燃焼式の補助熱源機13とを備えた貯湯タンクユニット2、ヒートポンプ回路を有するヒートポンプ熱源機3、貯湯タンクユニット2とヒートポンプ熱源機3との間に湯水を循環させる温水循環用配管9から構成され、台所等での少量の給湯には貯湯タンク12内の湯水を供給し、風呂等への大量の給湯には貯湯タンク12内の湯水を用いて給湯するが、必要に応じて補助熱源機13を駆動して湯水を供給する。
【0028】
次に、貯湯タンクユニット2について説明する。
図1に示すように、貯湯タンクユニット2は、縦長筒状の外周面を有する貯湯タンク12、各種の配管6,7,8,9,10、主制御ユニット11、補助熱源機13、外装ケース14などを備えている。貯湯タンク12は、ヒートポンプ熱源機3で加熱された高温の温水を貯留するものであり、耐腐食性に優れたステンレス製の板材で構成されている。
【0029】
貯湯タンク12の下端部には、水道管などの給水用配管7と温水循環用配管9の上流側配管9aに接続される下部配管8が接続されている。給水用配管7には、貯湯タンク12へ水道水を供給する為の開閉弁15が設けられており、通常は開閉弁15が開弁されていて、水道水を貯湯タンク12内に供給するようになっている。
【0030】
温水循環用配管9は、上流側配管9aと下流側配管9bとを有し、貯湯タンク12から液送ポンプ16を介して温水(貯留水)が下部配管8、上流側配管9aを通りヒートポンプ熱源機3に送られる。ヒートポンプ熱源機3の温水加熱用熱交換器21で加熱された温水は下流側配管9bへ流れる。
【0031】
貯湯タンク12の上端部には、下流側配管9bと出湯用配管6に接続される上部配管10が接続されている。上部配管10には開閉弁17が設けられている。通常は開閉弁17が開弁されていて、下流側配管9bから上部配管10を通って戻された高温の温水(例えば、8090℃)を貯湯タンク12内に貯留することができ、給湯時には貯湯タンク12内の高温の温水を上部配管10に供給することができる。
【0032】
貯湯タンク12の外面側は、例えば、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレンなどの樹脂を発泡成形した発泡断熱材からなる保温材12aで覆われている。貯湯タンク12には、複数の温度センサ3134(#1~#4サーミスタ)が高さ方向所定間隔おきの位置に配置されている。温度センサ3134は主制御ユニット11に接続されており、温度センサ3134の温度検出信号が主制御ユニット11に供給される。
【0033】
出湯用配管6は、高温の湯水が流れる上流側配管6aと、水と高温の湯水が混合された混合湯水が流れる下流側配管6bとを有している。上流側配管6aの下流端が混合弁27に接続され、下流側配管6bの上流端が混合弁27に接続され、給水用配管7の途中部から分岐する分岐配管7aが混合弁27に接続されている。出湯用配管6の下流側配管6bの途中部分に補助熱源機13が設置されている。下流側配管6bの下流端に給湯栓4が接続されている。
【0034】
補助熱源機13は、都市ガスを燃料とするガス給湯器であり、ガスバーナーからなる燃焼部13aと、この燃焼部13aに燃焼用空気を供給する為の送風機13bと、前記燃焼部13aから発生する燃焼熱によって水を再加熱して湯水を生成する熱交換器13c等を備え、外部から延びるガス配管を介して燃焼部13aにガスが供給される。尚、補助熱源機13内を通過する下流側配管6bをバイパスするバイパス配管36が設けられ、切換弁37により下流側配管6bとバイパス配管36とを択一的に切替可能である。
【0035】
外装ケース14は、薄鋼板製の箱状に形成され、主制御ユニット11、貯湯タンク12、配管類6,7,8,10、温水循環用配管9の大部分、補助熱源機13、液送ポンプ16、開閉弁15,17、混合弁27、複数の温度センサ2830などを収容している。
【0036】
次に、ヒートポンプ熱源機3について説明する。
図1に示すように、ヒートポンプ熱源機3は、蒸発器としての外気熱吸収用熱交換器18と、圧縮機20と、凝縮器としての温水加熱用熱交換器21と、高圧の冷媒を急膨張させて温度と圧力を下げる膨張弁22とを有し、これら機器18,20,21,22が冷媒配管23を介して接続されヒートポンプ回路を構成し、冷媒配管23に収容された冷媒を利用して給湯加熱運転を行う。
【0037】
ヒートポンプ熱源機3は、さらに送風モータ19aで駆動される蒸発器用の送風ファン19と、主制御ユニット11に接続され且つヒートポンプ熱源機3を制御する補助制御ユニット24と、これらを収納する外装ケース25などを備えている。
【0038】
外気熱吸収用熱交換器18は、冷媒配管23に含まれる蒸発器通路部18aを有し、この蒸発器通路部18aは複数のフィンを有し、この外気熱吸収用熱交換器18において、蒸発器通路部18aを流れる冷媒と外気との間で熱交換され、冷媒は外気から吸熱して気化する。圧縮機20は、気相状態の冷媒を断熱圧縮して温度上昇させる公知の密閉型圧縮機である。
【0039】
温水加熱用熱交換器21は、熱交換器通路部21aと冷媒配管23の一部である内部通路21bとを有し、この内部通路21bは例えば16MPa以上の耐圧を有する銅管で形成されている。この温水加熱用熱交換器21において、内部通路21bを流れる冷媒と上流側配管9aから熱交換器通路部21aに供給される湯水との間で熱交換され、湯水は加熱され冷媒は冷却され液化する。
【0040】
膨張弁22は液相状態の冷媒を断熱膨張させ温度低下させる。この膨張弁22は絞り量が可変な制御弁からなる。尚、膨張弁22の代わりに絞り量が一定の膨張弁を採用してもよい。
【0041】
ヒートポンプ熱源機3において、圧縮機20により高圧に圧縮された加熱状態の冷媒は、温水加熱用熱交換器21に送られ、液送ポンプ16の駆動により貯湯タンク12の下端部から下部配管8と上流側配管9aを経て熱交換器通路部21aに流入した温水又は水と熱交換してその温水又は水を暖め、加熱された温水が下流側配管9b、上部配管10を通って貯湯タンクユニット2の貯湯タンク12に貯留され、ヒートポンプ熱源機3を経由する加熱動作を繰り返すことで貯湯タンク12に高温の温水が貯留される。
【0042】
次に、主制御ユニット11について説明する。
主制御ユニット11は、通信インターフェースを介して、ユーザーが操作可能な操作リモコン35、各種の電力を測定する電力測定装置45や補助制御ユニット24等の各種機器と通信接続可能に構成され、操作リモコン35、電力測定装置45、補助制御ユニット24との間でデータ通信可能である。
【0043】
ユーザーが給湯操作を行なうと、貯湯タンク12に貯留された温水が出湯用配管6に流れ、その温水と給水用配管7から供給される水道水とが混合弁27で混合され、所定の温度となって蛇口などの給湯栓4に給湯される。混合弁27の上流部、下流部、給水用配管7の途中部には、夫々、温水温度又は入水温度を検知するための温度センサ2830が設けられ、これら温度センサ2830の検出信号が主制御ユニット11に供給されている。主制御ユニット11は、これら温度センサ2830で検知された温度検知データに基づいて、混合弁27を制御して温水と水の混合比を調節することで給湯する温水の温度を調整して給湯する。
【0044】
また、主制御ユニット11は、湯水の温度が不足している場合には、補助熱源機13を駆動して、湯水を再加熱又は水道水を加熱して給湯可能である。さらに、主制御ユニット11は、給湯加熱運転時には、目標給湯温度データ及び温度センサ3134からの温度検知データに基づいて、ヒートポンプ熱源機3で温水を加熱する加熱温度を決定し、補助制御ユニット24にその加熱温度を指示する。
【0045】
補助制御ユニット24は、主制御ユニット11との間でデータ通信可能であり、主制御ユニット11からの指令に従ってヒートポンプ熱源機3の各種機器(送風モータ19a、圧縮機20など)の駆動制御を行う。温水加熱用熱交換器21の出口側部分において、下流側配管9bには温水温度を検知するための温度センサ26が設けられ、その検出信号が主制御ユニット11に供給され、補助制御ユニット24は、指令温度と温度検知データを主制御ユニット11から受けて、温水の加熱温度が指令された温度となるように、ヒートポンプ熱源機3を作動させる。
【0046】
次に、操作リモコン35について説明する。
図1に示すように、操作リモコン35は、マイコン(図示略)、ヒートポンプ給湯装置1の動作状況や操作状況などの各種情報を視認可能な表示部35a、ヒートポンプ給湯装置1の遠隔操作や操作リモコン35に対する各種設定操作などが可能な複数のスイッチ35b等を備えている。
【0047】
操作リモコン35の表示部35aには、各種センサから算出した都市ガス及び水道水の使用量の表示に加えて、電力測定装置40から送信されてくる電力会社から買電した電力及び電力会社に売電した電力や家庭内の使用電力の総量等も表示される。スイッチ操作により給湯設定温度(例えば、約40℃)が設定されると、その給湯設定温度データが操作リモコン35から主制御ユニット11に送信される。
【0048】
次に、太陽光発電装置40について説明する。
図1に示すように、太陽光発電装置40は、複数の太陽電池パネル41やパワーコンディショナ(図示略)等を有し、屋根等の設置面上に架台を介して設置され、電力線42を介して発電された電力が分電盤43に送電される。複数の太陽電池パネル41は、例えば、複数行複数列のマトリックス状に並べられて設置されている。太陽電池パネル41は、光を受光して発電可能な長方形状のパネル本体、このパネル本体の外周部に設けられてパネル本体を固定する為のフレーム枠等を有する一般的な構造のものである。尚、太陽電池パネル41の形状や数は上記のものに限定する必要はなく適宜変更可能である。
【0049】
次に、電力測定装置45について説明する。
図1に示すように、電力測定装置45は、商用電源と太陽光発電装置40の2系統連係に対応した分電盤43に又は分電盤43の近傍部に設けられている。即ち、電力測定装置45は、太陽光発電装置40の発電電力を測定する電力計、家庭内の使用電力を測定する電力計、電力会社から買電した電力及び電力会社に売電した電力を測定する電力計等から構成されている。
【0050】
電力測定装置45は、ヒートポンプ給湯装置1と信号線46を介して通信接続され、ヒートポンプ給湯装置1の主制御ユニット11へ発電状態データや各種の電力データを送信することができる。
【0051】
次に、太陽光発電装置40が発電している状態で、主制御ユニット11により行われる、HP熱源機3による沸き上げ運転可否制御について、図2のフローチャートに基づいて説明する。尚、沸き上げ運転とは、貯湯タンク12が貯湯タンク沸き上げ目標温度の湯水で満蓄状態になるまで貯湯する運転のことである。
また、図中の符号Si(i=1,2,・・)は各ステップを示す。このヒートポンプ熱源機3による沸き上げ運転可否制御の制御プログラムは、主制御ユニット11のコンピュータの記憶部(例えば、ROM)に予め格納されている。
【0052】
図2のフローチャートにおいて、この制御が開始されると、S1において通常運転モードが設定され、その通常運転モードを継続している間に、地震や津波や台風が発生して、停電し且つガスの供給も停止したような場合に、ユーザーが操作リモコン35を操作して、PV自立運転モードに切換えると、S2における判定がYesとなり、次のS3へ移行する。S2の判定がNoのうちはS1へ戻り、S1,S2が繰り返される。
【0053】
S3では、太陽光発電装置40からの発電電力のみで運転を行うPV自立運転モードが
される。尚、PVとは「Photovoltaic」の略で太陽光発電を意味するものである。
次に、操作リモコン35を操作して、給湯・注湯優先(給湯及び注湯優先)を設定したか否か判定される。給湯は給湯栓に湯水を供給すること、注湯は浴槽に湯張りすることを意味する。
【0054】
S4の判定がNoのときは、S5においてHP熱源機3による沸き上げ運転が許可され、S4の判定がYesのときは、給湯・注湯を優先するため、S6においてHP熱源機3による沸き上げ運転が禁止される。尚、S5からS4移行する。
【0055】
次に、S7においては、太陽光による現在のPV発電量>HP熱源機3の予測消費電力か否か判定される。HP熱源機3の予測消費電力は、貯湯タンク12内に貯湯されている湯水の平均温度と、貯湯タンク沸き上げ目標温度と、液送ポンプ16の吐出流量とを用いて所定の演算式により算出される。現在のPV発電量は、電力測定装置45が時々刻々検知している値である。尚、上記の貯湯タンク沸き上げ目標温度は55℃沸き上げとすることが望ましい。
【0056】
S7の判定がNoのときは、PV発電量によりHP熱源機3を沸き上げ運転する余裕はないため、S6へ戻ってHP熱源機3による沸き上げ運転が禁止される。S7の判定がYesのときはS8へ移行する。S8においては、凍結予防運転の要求が有るか否か判定される。
【0057】
ここで、凍結予防運転のとき、液送ポンプ16を駆動して温水循環用配管9に湯水を循環させる。
【0058】
S8の判定がYesのときは、貯湯タンク12内に湯水を貯湯しておかなければならないため、S14へ移行してHP熱源機による沸き上げ運転が許可される。
S8の判定がNoのときは、S9において、現在のPV発電量がHP給湯システムの最大消費電力より少ないか否か判定される。尚、HP給湯システムの最大消費電力は予め主制御ユニット11に記憶されている値を用いて判定を行う。
【0059】
S9の判定がNoのときは、現在のPV発電量に余裕があり、HP熱源機3による沸き上げ運転が可能であるため、S14へ移行してHP熱源機による沸き上げ運転が許可される。S9の判定がYesのときは、S10へ移行する。
S10においては、S7と同様に、現在のPV発電量>65℃沸き上げ時のHP熱源機3の予測消費電力か否か判定される。但し、予測消費電力を演算するのに用いる貯湯タンク沸き上げ目標温度は65℃沸き上げとすることが望ましい。
【0060】
S10の判定がNoのときは、HP熱源機3による沸き上げ運転を行なえる程PV発電量が多くないため、S10からS6へ移行し、HP熱源機3による沸き上げ運転が禁止される。S10の判定がYesのときは、S11において、リフレッシュ運転の要求あるか又は貯湯サーミスタ#1の検出温度が(給湯設定温度+3℃)を上回っているか否か判定され、その判定がNoのときは、貯湯タンク12内の湯水を沸き上げるため、S11からS14へ移行する。尚、リフレッシュ運転とは、貯湯タンク12内のレジオネラ菌の殺菌のため、貯湯タンク12内に65℃以上の湯水を満蓄状態にする運転である。
【0061】
S11の判定がYesのときはS12へ移行する。
S12においては、給湯・注湯中又は再出湯待機中か否か判定され、その判定がYesのときは、湯水を使用中か又は湯水の使用が予定されているため、S6へ移行してHP熱源機3による沸き上げ運転が禁止される。尚、「給湯・注湯中」とは、給湯中又は注湯中を意味する。
【0062】
S12の判定がNoのときは、湯水の使用が予定されていないためS13へ移行する。
S13では、予め設定された給湯使用時刻外又は給湯予測使用時刻外か否か判定される。
予め設定された給湯使用時刻は、予め設定される給湯使用時刻や自動湯張り時刻や暖房予約時刻等のことである。
給湯予測使用時刻は、学習制御により1時間おきの時刻帯別に給湯使用量と時刻帯とを予測し記憶して予め貯湯しておく給湯使用予測システムにおいて、給湯の使用が予測されている時刻のことである。
【0063】
S13の判定がNoのときは、給湯の使用に対処するためS6へ戻って、HP熱源機3による沸き上げ運転が禁止される。S13の判定がYesのときは、給湯の使用が発生しないと推定されるため、S14へ移行してHP熱源機3による沸き上げ運転が許可され、その後S4へ移行する。
【0064】
以上説明したHP熱源機3による沸き上げ運転可否制御を含むヒートポンプ給湯システムSの作用、効果について説明する。
PV自立運転モードにおいては、給湯・注湯優先の要否情報に基づき、給湯・注湯優先が必要とされているときには、HP熱源機3による沸き上げ運転を一時禁止するため、消費電力の大きなHP熱源機3を停止状態にしてヒートポンプ給湯システムSの電源が落ちるのを防止しながら、ユーザーの給湯・注湯の要請に確実に応えることができる。
【0065】
給湯・注湯優先の要否は、PV自立運転モードが設定されたときにユーザによって選択可能に構成されているため、ユーザーの給湯・注湯優先の要請に確実に応えることができる。
【0066】
PV発電量とヒートポンプ給湯システムSの最大消費電力を比較し、PV発電量の方が多い場合には、ヒートポンプ給湯システムSの電源が落ちる虞がないため、HP熱源機3による沸き上げ運転を許可する。
【0067】
HP熱源機3による沸き上げ運転が一時禁止されているとき、PV発電量とHP熱源機3による沸き上げ運転の予測消費電力を比較し、PV発電量の方が多い場合であって設定値以上の湯温の湯が必要となる場合(例えば、凍結予防運転又はリフレッシュ運転の要求がある場合)、HP熱源機3による沸き上げ運転を許可することで、ヒートポンプ給湯システムSの電源が落ちるのを防止しながら、凍結予防運転やリフレッシュ運転の要請に応えることができる。
【0068】
PV発電量とHP熱源機3による沸き上げ運転の予測消費電力を比較し、PV発電量の方が多く、貯湯タンクの湯温が設定値を上回っている場合は、当面は給湯や出湯の必要性がないことを条件として、HP熱源機3による沸き上げ運転を許可するため、ヒートポンプ給湯システムの電源が落ちるのを防止しながら、貯湯タンク12に貯湯することができる。出湯する湯水を加熱可能な燃焼式の補助熱源機を有するため、ガス供給が停止していない限り、給湯や出湯の要請に応えることができる。
【0069】
尚、前記実施例においては、HP予測消費電力判定を55℃沸き上げ(S7)と65℃沸き上げ(S10)と二段階で行ったが、65℃沸き上げ時のHP予測消費電力判定のみを行うことも可能である。そのときには、凍結予防運転の要求があるか、リフレッシュ運転の要求があるか、貯湯サーミスタ#1の検出温度が給湯設定温度を3℃上回っているかを一度に判定することが可能になる。
【0070】
また、前記実施形態は一例を示すものにすぎず、当業者ならば本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を不可して実施可能であり、本発明はそれらの変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0071】
S ヒートポンプ給湯システム
1 ヒートポンプ給湯装置
2 貯湯タンクユニット
3 ヒートポンプ熱源機
11 主制御ユニット
12 貯湯タンク
40 太陽光発電装置
45 電力測定装置
図1
図2