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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】学習済みモデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/38 20180101AFI20241217BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
F24F11/38
F25B49/02 570Z
F25B49/02 510F
F25B49/02 510A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019220682
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021089116
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和 1年 9月 4日に、令和元年度空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集DVD-ROM、講演番号E-3、E-4にて公開 令和 1年 9月18日に、令和元年度空気調和・衛生工学会大会にて公開
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩行
(72)【発明者】
【氏名】久保井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】井口 雅登
(72)【発明者】
【氏名】蜂巣 浩生
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-172567(JP,A)
【文献】国際公開第01/069338(WO,A1)
【文献】特開2005-149137(JP,A)
【文献】特開2002-081809(JP,A)
【文献】特開2018-128148(JP,A)
【文献】特開2019-138499(JP,A)
【文献】特開2018-045483(JP,A)
【文献】特開2012-089057(JP,A)
【文献】特開2002-092206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F25B 49/02
G05B 23/02
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷熱システムから計測した計測値に対し、該計測値を計測時の前記冷熱システムの状態、及び該冷熱システムの状態が異常状態である場合は該異常状態の種類を表す情報が付与された教師データを取得し、
前記教師データに基づき、前記計測値を入力とし、前記冷熱システムの状態を出力とする学習済みモデルであって、前記異常状態の種類毎に異なる複数の前記学習済みモデルを生成し、
生成した各前記学習済みモデルに、他の種類の前記異常状態における前記計測値を入力して前記異常状態であるか否かを推定し、
他の種類の前記異常状態における前記計測値から推定した推定結果に基づき、各前記学習済みモデルの間の相関性を表す指標値を算出し、
算出した前記指標値に基づき、複数種類の前記異常状態を一又は複数のグループに分類し、
分類したグループ毎に前記教師データを学習して、各グループに対応する前記学習済みモデルを再生成する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする学習済みモデルの生成方法。
【請求項2】
前記教師データから、各前記学習済みモデルに対応する種類の前記異常状態における前記計測値と、前記異常状態以外の正常状態における前記計測値とを同数ずつ抽出して各前記学習済みモデルを生成する
ことを特徴とする請求項に記載の学習済みモデルの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習済みモデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調システムのように、熱交換を行う冷熱システムの異常を検知する技術がある。例えば特許文献1では、空調機から計測した電流値等の検出情報を所定の時間間隔毎に区切ったフレーム画像を生成し、フレーム画像の特徴を機械学習で学習したモデルを構築して、空調機の異常を検知する状態監視装置等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6298562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る発明では空調機で発生するあらゆる種類の異常を同じモデルで学習しており、異常検知の精度を損ねる恐れがある。
【0005】
一つの側面では、冷熱システムの異常を好適に検出することができる学習済みモデルの生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面に係る学習済みモデルの生成方法は、冷熱システムから計測した計測値に対し、該計測値を計測時の前記冷熱システムの状態、及び該冷熱システムの状態が異常状態である場合は該異常状態の種類を表す情報が付与された教師データを取得し、前記教師データに基づき、前記計測値を入力とし、前記冷熱システムの状態を出力とする学習済みモデルであって、前記異常状態の種類毎に異なる複数の前記学習済みモデルを生成し、生成した各前記学習済みモデルに、他の種類の前記異常状態における前記計測値を入力して前記異常状態であるか否かを推定し、他の種類の前記異常状態における前記計測値から推定した推定結果に基づき、各前記学習済みモデルの間の相関性を表す指標値を算出し、算出した前記指標値に基づき、複数種類の前記異常状態を一又は複数のグループに分類し、分類したグループ毎に前記教師データを学習して、各グループに対応する前記学習済みモデルを再生成する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面では、冷熱システムの異常を好適に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】異常検出システムの構成例を示す模式図である。
図2】サーバの構成例を示すブロック図である。
図3】計測値DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
図4】推定モデルに関する説明図である。
図5】推定モデルの生成処理に関する説明図である。
図6】推定結果の通知画面の一例を示す説明図である。
図7】推定モデルの生成処理の手順を示すフローチャートである。
図8】状態推定処理の手順を示すフローチャートである。
図9】推定モデルによる推定結果を表す散布図である。
図10】実施の形態2に係る推定モデルの生成処理の手順を示すフローチャートである。
図11】実施の形態2に係る状態推定処理の手順を示すフローチャートである。
図12】モデル間の相互評価処理に関する説明図である。
図13】相互評価結果を表す説明図である。
図14】実施の形態3に係る推定モデルの生成処理の手順を示すフローチャートである。
図15】実施の形態3に係る状態推定処理の手順を示すフローチャートである。
図16】実施の形態4の概要を示す説明図である。
図17】実施の形態4に係る状態推定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、異常検出システムの構成例を示す模式図である。本実施の形態では、空調システム3の異常を検出する異常検出システムについて説明する。異常検出システムは、情報処理装置1、端末2、空調システム3を含む。情報処理装置1及び端末2は、インターネット等のネットワークNを介して通信接続されている。
【0010】
空調システム3は、例えば建築物に設置された空調システムであり、空調機31との間で熱交換を行う熱源機器として、冷凍機32を備えた空調システムである。冷凍機32は所謂チラーであり、冷媒(例えば水)を介して空調機31との間で熱交換を行う。なお、冷凍機32は空冷式チラーであってもよい。
【0011】
なお、本実施の形態では冷熱システムの一例として空調システム3を挙げるが、推定対象とする冷熱システムは空調システム3に限定されず、例えば冷凍機32を用いて産業用機械、計測機器などを冷却するシステムであってもよい。すなわち、冷熱システムは熱交換を行うシステムであればよく、その用途は空調に限定されない。
【0012】
また、本実施の形態では空調システム3が冷凍機32を備える空調システムであるものとして説明するが、空調システム3は室外機及び室内機のみの空調システムであってもよく、冷凍機32のような熱源機器を備える構成は必須ではない。
【0013】
情報処理装置1は、種々の情報処理、情報の送受信が可能な情報処理装置であり、例えばサーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ等である。本実施の形態では情報処理装置1がサーバコンピュータであるものとし、以下ではサーバ1と読み替える。サーバ1は、空調システム3から計測した所定の計測値に基づき、空調システム3の状態を推定する。具体的には後述のように、サーバ1は、教師用の計測値と、当該計測値を計測時の冷凍機32の状態とを、冷凍機32で発生する異常状態の種類毎に学習する機械学習を行って複数の推定モデル141(図4参照)を生成しておく。そしてサーバ1は、複数の推定モデル141を用いて、冷凍機32が異常状態であるか否か、及び異常状態である場合はその異常状態の種類を推定する。
【0014】
端末2は、例えば空調システム3の保守点検を行う点検業者、あるいは空調システム3のエンドユーザ(例えば建築物のオーナー)などの端末装置であり、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等である。本実施の形態でサーバ1は、端末2から空調システム3の計測値を取得して推定を行う。例えばサーバ1は、冷凍機32から計測した計測値、及び保守点検作業の内容(例えば冷凍機32の修理、交換等)などが記載された管理日報のデータを端末2から定期的に取得し、データベースに蓄積してある。サーバ1は、データベースに蓄積された管理日報のデータを教師データとして学習を行い、推定モデル141を生成する。また、空調システム3の状態を推定する場合、サーバ1は、端末2から定期的に取得する空調システム3の計測値に基づき、空調システム3の状態を推定する。
【0015】
なお、本実施の形態では管理日報という形で、人手で記録されたデータに基づき処理を行うものとするが、例えばBEMS(Building Energy Management System)のように、空調システム3から計測値を自動的に取得する構成であってもよい。
【0016】
また、本実施の形態ではクラウド上のサーバ1で処理を行うものとするが、ローカルの端末2に推定モデル141をインストールし、空調システム3の状態推定に関わる処理を行ってもよい。
【0017】
図2は、サーバ1の構成例を示すブロック図である。サーバ1は、制御部11、主記憶部12、通信部13、及び補助記憶部14を備える。
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を有し、補助記憶部14に記憶されたプログラムPを読み出して実行することにより、種々の情報処理、制御処理等を行う。主記憶部12は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の一時記憶領域であり、制御部11が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。通信部13は、通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、外部と情報の送受信を行う。
【0018】
補助記憶部14は、大容量メモリ、ハードディスク等の不揮発性記憶領域であり、制御部11が処理を実行するために必要なプログラムP、その他のデータを記憶している。また、補助記憶部14は、推定モデル141、計測値DB142を記憶している。推定モデル141は、機械学習によって生成された学習済みモデルであり、例えばニューラルネットワークに係るモデルである。推定モデル141は、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとしての利用が想定される。計測値DB142は、冷凍機32から計測した計測値等を格納するデータベースである。
【0019】
なお、補助記憶部14はサーバ1に接続された外部記憶装置であってもよい。また、サーバ1は複数のコンピュータからなるマルチコンピュータであっても良く、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。
【0020】
また、本実施の形態においてサーバ1は上記の構成に限られず、例えば操作入力を受け付ける入力部、画像を表示する表示部等を含んでもよい。また、サーバ1は、CD(Compact Disk)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の可搬型記憶媒体1aを読み取る読取部を備え、可搬型記憶媒体1aからプログラムPを読み取って実行するようにしても良い。あるいはサーバ1は、半導体メモリ1bからプログラムPを読み込んでも良い。
【0021】
図3は、計測値DB142のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。計測値DB142は、冷凍機ID列、日時列、計測値列、状態列、作業列を含む。冷凍機ID列は、空調システム3の冷凍機32の識別子である冷凍機IDを記憶している。日時列、計測値列、状態列、及び作業列はそれぞれ、冷凍機IDと対応付けて、冷凍機32から計測値を計測した日時、計測値、当該日時における冷凍機32の状態、及び異常があった場合に行った保守点検作業の内容を記憶している。計測値列には、冷凍機32から計測した計測値であって、冷凍機32に供給された電流値、圧縮機の高圧側及び低圧側それぞれの圧力値、外気温、圧縮機の高圧側及び低圧側それぞれの圧力値の差分である圧力差、及び冷凍機32の出入口の温度差が記憶されている。状態列には、冷凍機32の状態(異常状態であるか、異常状態以外の正常状態であるか)、及び異常状態である場合はその異常状態の種類を表すラベルが記憶されている。作業列には、例えば冷凍機32の修理や交換など、作業者が行った作業内容が記憶されている。
【0022】
図4は、推定モデル141に関する説明図である。図4に基づき、推定モデル141の概要を説明する。
推定モデル141は、空調システム3から計測した計測値を入力として、空調システム3の状態を推定した推定結果を出力するモデルである。具体的には図4に図示するように、推定モデル141はニューラルネットワークであり、計測値の入力を受け付ける入力層と、計測値から特徴量を抽出する中間層と、中間層で抽出した特徴量に基づき推定結果を出力する出力層とを備える。各層は、一又は複数のニューロンで構成される。
【0023】
本実施の形態では、推定モデル141には、空調システム3の冷凍機32から計測した複数種類の計測値が入力され、冷凍機32の状態を推定した推定結果が出力される。推定モデル141に入力する計測値は特に限定されないが、本実施の形態では、冷凍機32に供給された電流値A、圧縮機の高圧側及び低圧側それぞれの圧力差dP、低圧側の圧力値P、高圧側の圧力値P、冷凍機32の出入口の温度差dT、及び外気温Tの6種類の計測値が入力される。なお、これらの計測値は例示であって、計測値は5種類以下であってもよく、7種類以上であってもよい。各種類の計測値は、入力値x~xとして入力層の各ニューロンに入力される。なお、入力層に計測値を入力する場合、各計測値は標準化した値が入力される。
【0024】
推定モデル141の出力層は、冷凍機32が異常状態である確率を表す出力値yと、正常状態である確率を表す出力値yとを出力する2つのニューロンを備える。サーバ1は、各計測値を入力層に入力して中間層での演算を行い、出力層から出力値y、yを取得する。例えばサーバ1は、y<yである場合は異常状態であると判定し、y≧yである場合は正常状態であると判定する。
【0025】
学習時においてサーバ1は、計測値DB142に記憶されている各計測時点の計測値と、各計測時点における冷凍機32の状態とを教師データとして学習を行い、推定モデル141を生成する。具体的には、サーバ1は、上記の6種類の計測値を計測値DB142から読み出し、入力値x~xとして入力層に入力して、出力層から出力値y、yを取得する。サーバ1は、計測時点の冷凍機32の状態が異常状態である場合はc=0.0及びc=1.0とし、正常状態である場合はc=1.0及びc=0.0として、正解値c、cと出力値y、yとを比較する。サーバ1は、両者が近似するように誤差逆伝播法でニューロン間の重みwを更新する。サーバ1は、教師データに含まれる各計測時点での計測値を順次入力して重みwを最適化し、推定モデル141を生成する。
【0026】
なお、図4に示す推定モデル141は中間層が一層のみであるが、中間層を多層とした深層学習を行うようにしてもよい。また、推定モデル141はニューラルネットワークに限定されず、例えばSVM(Support Vector Machine)、ランダムフォレスト、決定木等の他の学習アルゴリズムに基づくモデルであってもよい。
【0027】
また、本実施の形態では一の計測時点の計測値から異常推定を行うが、例えばRNN(Recurrent Neural Network)のように、推定モデル141を時系列データを取り扱うことが可能なモデルとして、複数時点の計測値から冷凍機32の状態を推定してもよい。
【0028】
図5は、推定モデル141の生成処理に関する説明図である。図5では、冷凍機32で発生する異常状態の種類毎に、別々の推定モデル141を生成する様子を概念的に図示している。図5に基づき、推定モデル141を生成する機械学習の処理内容を説明する。
【0029】
サーバ1は、複数の計測時点それぞれにおける冷凍機32の計測値と、各計測時の冷凍機32の状態を表すラベルとを含む教師データを学習する機械学習を行い、推定モデル141を生成する。具体的には図5に示すように、教師データは、複数の計測時点それぞれの計測値に対して、冷凍機32が異常状態又は正常状態であるか、及び異常状態である場合はその異常状態の種類を表すラベルが付与されたデータである。正常状態である場合はNF(Not Failure)のラベルが付与され、異常状態である場合は異常の種類を表すFx(x=1、2、3…)のラベルが付与されている。
【0030】
本実施の形態では、異常状態の種類として11種類のラベルF1~F11が用意されている。各ラベルについて詳細な説明及び図示は省略するが、例えばラベルF1は送風ファンの不調を、ラベルF2は温水の異常を表す。なお、異常状態の種類の数やその内容は特に限定されず、任意に設定され得る。
【0031】
サーバ1は、異常状態における計測値と、正常状態における計測値とを計測値DB142から読み出し、推定モデル141に与えて学習を行う。この場合にサーバ1は、各種類の異常状態推定用の推定モデル141を別々に生成するため、一の推定モデル141に対して一種類の異常状態時の計測値及び正常状態時の計測値のみを与え、他の種類の異常状態時の計測値を与えずに学習を行う。
【0032】
図5では、「空調機A」で示す空調システム3のデータから、ラベルF1、F2それぞれに対応する推定モデル141を生成する様子を図示してある。図5に示す教師データにはF1、F2の2つのラベルが含まれているが、ラベルF1推定用の推定モデル141を生成する場合、サーバ1は、ラベルF2が付与された計測値を除外し、ラベルF1及びNFが付与された計測値のみを推定モデル141に与えて学習を行う。F2ラベル推定用の推定モデル141の学習を行う場合、サーバ1は、F1ラベルが付与された計測値を除外し、F2及びNFのラベルが付与された計測値のみを与えて学習を行う。
【0033】
このように、サーバ1は、一の推定モデル141に対して一種類の異常状態のデータのみを与え、F1、F2、F3…それぞれのラベル推定用の推定モデル141を生成する。教師データに複数種類のラベルFxが含まれる場合、これを同一の推定モデル141で学習すると、学習精度を低下させてしまう恐れがある。そこで本実施の形態では異常状態の種類毎に別々に推定モデル141を生成することで、学習精度の低下を防止する。
【0034】
上記のように、ラベルFxが付与された計測値とラベルNFが付与された計測値とを推定モデル141に与えて学習を行う。この場合にサーバ1は、異常状態を表すラベルFxが付与された計測値と、正常状態を表すラベルNFが付与された計測値とを1つずつ交互にランダムに抽出して学習を行う。例えばラベルF1推定用の推定モデル141の学習を行う場合、サーバ1は、まずラベルF1が付与された計測値を教師データからランダムに抽出して学習し、次に、ラベルNFが付与された計測値をランダムに抽出して学習する。サーバ1は、学習回数が予め定めた所定回数に達するまで、ラベルF1及びNFが付与された計測値を交互に抽出し、推定モデル141に与えて学習する。
【0035】
このように、サーバ1は、異常状態及び正常状態の学習回数が同数となるようにデータを抽出し、学習を行う。一般的に空調システム3が異常状態である場合は正常状態である場合よりも稀であるため、教師データには、異常状態時のデータよりも正常状態時のデータの方が圧倒的に多くなる。そこで両者の学習回数を同数とし、交互に学習することで、推定精度を向上させることができる。
【0036】
なお、上記では異常状態及び正常状態のデータを1つずつ交互に学習したが、例えば両者を2つずつ交互に学習してもよい。すなわち、サーバ1は両者が同数となるように学習を行うことが可能であればよく、その学習順序は特に限定されない。
【0037】
上述の如くサーバ1は、異常状態の種類毎に、異常状態及び正常状態の学習回数が同数となるよう交互に学習を行い、各種類の異常状態推定用の推定モデル141、141、141…を生成する。実際に推定対象の空調システム3の状態を推定する場合、サーバ1は端末2から空調システム3の計測値を取得し、生成済み(学習済み)の推定モデル141、141、141…を用いて推定を行う。
【0038】
すなわち、サーバ1は、推定対象の空調システム3の冷凍機32から計測した各計測値を、ラベルF1、F2、F3…推定用の各推定モデル141に入力し、各推定モデル141から、異常状態又は正常状態である確率を表す出力値y、yを取得する。そしてサーバ1は、各推定モデル141からの出力に基づき、異常状態であるか否か、及び異常状態である場合はその異常状態の種類を推定する。例えばサーバ1は、推定モデル141毎にy<yであるか否かを判定し、y<yである場合はその推定モデル141に対応するラベルFxの異常状態が発生しているものとして、各推定モデル141での推定結果を並列的に出力する
【0039】
なお、例えばサーバ1は、出力値yが最も高い推定モデル141の結果を採用し、当該推定モデル141に対応するラベルFxを冷凍機32で発生している異常状態の種類と判定して、複数の推定モデル141、141、141…の推定結果を統合してもよい。各推定モデル141からの出力をどのように処理するかは、種々の変更が考えられる。
【0040】
サーバ1は、上記の推定結果を端末2に通知する。具体的には、冷凍機32が正常状態であると推定された場合、サーバ1は冷凍機32が正常である旨を端末2に通知する。一方、冷凍機32が異常状態であると推定された場合、サーバ1は、冷凍機32で異常が発生した旨、及び推定された異常状態の種類を通知する。
【0041】
図6は、推定結果の通知画面の一例を示す説明図である。端末2は、サーバ1からの出力を受けて、図6に例示する画面を表示する。例えば図6に示すように、端末2は異常状態の種類毎に確率値(y2)を表示し、異常状態であるか否かを推定した推定結果を表示する。
【0042】
この場合にサーバ1は、冷凍機32の異常を通知するだけでなく、推定された種類の異常状態に対する対応策を併せて通知すると好適である。対応策は、例えば冷凍機32の修理や交換などの方法であるが、その内容は特に限定されない。
【0043】
例えばサーバ1は、計測値DB142に、冷凍機32における異常発生時に行われた保守点検作業の内容を、冷凍機32で発生した異常状態の種類と対応付けて記憶してある。サーバ1は、上記で推定した異常状態の種類に応じて、対応する過去の作業内容を計測値DB142から読み出し、端末2に通知する。これにより、空調システム3の点検業者、エンドユーザなどは、空調システム3の故障等に対して迅速に対応することができる。
【0044】
また、サーバ1は、図6の通知画面において、推定モデル141による推定結果が正しいか否か、推定結果の修正入力を受け付けるようにすると好適である。例えば図6に示すように、端末2は推定結果を修正するためのタブ61を表示し、タブ61への操作入力を受け付ける。これにより、サーバ1は推定結果(推定モデル141)を修正することができる。例えばサーバ1は、修正された推定結果をラベルとして計測値と対応付けて計測値DB142に格納し、再学習用の教師データに用いて推定モデル141の再学習を行う。これにより、推定モデル141による推定精度を向上させていくことができる。
【0045】
以上より、本実施の形態1によれば、空調システム3で発生する異常状態の種類毎に異なる複数の推定モデル141を用いることで、空調システム3の異常を好適に検出することができる。
【0046】
図7は、推定モデル141の生成処理の手順を示すフローチャートである。図7に基づき、推定モデル141を生成する機械学習の処理内容を説明する。
サーバ1の制御部11は、空調システム3から計測した計測値に対して、計測時における空調システム3の状態、及び空調システム3の状態が異常状態である場合はその異常状態の種類を示す情報が付与された教師データを取得する(ステップS11)。計測値は、空調システム3の冷凍機32に関する計測値であって、冷凍機32に供給された電流値、圧縮機の高圧側及び低圧側の圧力値、圧力差、冷凍機32の出入口の温度差、外気温などを含む。制御部11は、当該計測値に対し、計測時において空調システム3が異常状態であるか正常状態であるか、及び異常状態である場合はその異常状態の種類を表すラベルが付与された教師データを取得する。
【0047】
制御部11は、学習対象とする異常状態の種類を一種類選択する(ステップS12)。制御部11は、選択した種類の異常状態のラベルが付与された計測値を教師データからランダムに抽出する(ステップS13)。制御部11は、抽出した計測値を推定モデル141に与え、学習を行う(ステップS14)。具体的には、制御部11は、計測値を推定モデル141に入力して空調システム3の状態を推定し、推定結果を正解のラベルと比較し、推定モデル141の重みを更新する。
【0048】
次に制御部11は、正常状態のラベルが付与された計測値を教師データからランダムに抽出する(ステップS15)。制御部11は、抽出した計測値を推定モデル141に与え、学習を行う(ステップS16)。
【0049】
制御部11は、ステップS12で選択した種類の異常状態のラベルが付与された計測値を、予め定めた所定回数学習したか否かを判定する(ステップS17)。所定回数学習していないと判定した場合(S17:NO)、制御部11は処理をステップS13に戻す。この場合、制御部11は異なる計測時点の計測値を教師データから抽出し(ステップS13)、学習を行う(ステップS14)。制御部11は当該処理を繰り返し、ステップS12で選択した種類の異常状態に対応する推定モデル141を生成する。
【0050】
計測値を所定回数学習したと判定した場合(S17:YES)、制御部11は、全種類の異常状態について学習が完了したか否かを判定する(ステップ18)。学習が完了していないと判定した場合(S18:NO)、制御部11は処理をステップS12に戻す。この場合、制御部11は異なる異常状態の種類を選択し(ステップS12)、異常状態及び正常状態の計測値を交互に学習して推定モデル141を生成する。全種類の異常状態について学習が完了したと判定した場合(S18:YES)、制御部11は一連の処理を終了する。
【0051】
図8は、状態推定処理の手順を示すフローチャートである。図8に基づき、推定モデル141を用いて空調システム3の状態を推定する処理内容について説明する。
サーバ1の制御部11は、推定対象とする空調システム3の計測値を取得する(ステップS31)。制御部11は、取得した計測値を、異常状態の種類に応じて用意された複数の推定モデル141それぞれに入力して、異常状態であるか否か、及び異常状態である場合はその異常状態の種類を推定する(ステップS32)。
【0052】
制御部11は、ステップS32の推定結果に基づき、空調システム3が異常状態であるか否かを判定する(ステップS33)。異常状態でないと判定した場合(S33:NO)、制御部11は、空調システム3が正常である旨を端末2に通知し(ステップS34)、一連の処理を終了する。
【0053】
異常状態であると判定した場合(S33:YES)、制御部11は、空調システム3に異常が発生した旨、及び推定された異常状態の種類を端末2に通知する(ステップS35)。例えば制御部11は、推定された種類の異常が発生した旨を通知すると共に、当該種類の異常状態に対する対応策を通知する。対応策は、例えば空調システム3(冷凍機32)の修理、交換などの方法である。例えば制御部11は、計測値DB142を参照して、推定された種類の異常状態時に行われた過去の保守点検作業の内容を通知する。制御部11は一連の処理を終了する。
【0054】
以上より、本実施の形態1によれば、異常状態の種類に応じて用意された複数の学習済みモデル(推定モデル141)を用いることで、冷熱システム(空調システム3)の異常検出を好適に行うことができる。
【0055】
また、本実施の形態1によれば、推定された冷熱システムの異常に対する対応策を提示することもできる。
【0056】
(実施の形態2)
本実施の形態では、推定する異常状態の種類に応じて、推定モデル141に入力する計測値の種類を変更する形態について説明する。なお、実施の形態1と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
本願の発明者の研究によれば、各種類の異常状態推定用の推定モデル141に応じて、複数の入力値(計測値)x~xの内、出力値y、yに対して相関が高いものと低いものがあることが分かっている。図9は、推定モデル141による推定結果を表す散布図である。図9では、ラベルF1推定用の推定モデル141に対し、計測値を模擬した乱数を入力してラベルF1又はNFの推定を行った場合の散布図を図示している。
【0058】
図9の各散布図では、6種類の計測値A、dP、P、P、dT、T(x~x)の内、任意の2種類の計測値を縦軸及び横軸として、F1又はNFのラベルと推定された結果をプロットしている。図9に示すように、dP、P、P、dT、Tを縦軸又は横軸とした散布図(図9の2段目以降)ではF1及びNFのラベルが分散している。一方で、電流値Aを横軸とする散布図(図9の1段目)では、同様の値を境として識別境界面が表れており、ラベルF1に対して電流値Aの相関性が高いことが分かる。
【0059】
このように、推定モデル141によっては、推定結果との相関性が高い計測値と相関性が低い計測値とがあり得る。そこで、相関性が高い計測値のみを入力として他の計測値を除外することで、推定精度を高めてもよい。
【0060】
例えばサーバ1は、教師データから各種類の異常状態推定用の推定モデル141、141、141…を生成する場合に、各種類の異常状態と相関性が高いと予測される計測値の種類を選択する変数選択(特徴量選択、Feature Selection)を行い、選択した種類の計測値を学習して各推定モデル141を生成する。
【0061】
変数選択の具体的な手法は特に限定されないが、例えばカイ二乗検定等を用いたフィルタ法(Filter Method)が考えられる。あるいはサーバ1は、ラッパー法(Wrapper Method)、組み込み法(Embedded Method)のように、教師データの学習と変数選択とを同時並行で行う手法を用いてもよい。
【0062】
例えばサーバ1は、教師データを学習する前に、教師データにおいて各種類の異常状態を表すラベルFxが付与された計測値を統計処理し、ラベルFxと相関性が高い計測値の種類を選択する。図9の例に則して説明すれば、サーバ1は、計測値A、dP、P、P、dT、TとラベルF1との統計検定量を算出し、算出した検定量に応じて、相関性が高い計測値として電流値Aを選択する。
【0063】
サーバ1は、同様にラベルF2、F3、F4…についても相関性が高い計測値の種類を選択する。サーバ1は、選択した種類の計測値と、当該計測値に対して付与されたラベルFx及びNFとからラベルFx推定用の推定モデル141を生成する。上記の例では、サーバ1は、電流値Aを入力として、ラベルNF又はF1である確率を表す出力値y、yを出力とする推定モデル141を生成する。
【0064】
このように、各推定モデル141で推定する異常状態の種類に応じて、推定に用いる計測値を選択してもよい。これにより、推定精度の向上を期待することができると共に、例えば一部の計測値が欠損している場合であっても、推定モデル141によっては問題なく推定を行うことができ、空調システム3の状態推定が全く行えなくなることを回避することができる。
【0065】
図10は、実施の形態2に係る推定モデル141の生成処理の手順を示すフローチャートである。教師データを取得した後(ステップS11)、サーバ1は以下の処理を実行する。
サーバ1の制御部11は、異常状態の種類毎に、各種類の異常状態推定用の推定モデル141の入力とする計測値の種類を選択する(ステップS201)。例えば制御部11は、上述の如く、フィルタ法等による変数選択を行い、推定モデル141の入力とする計測値の種類を選択する。制御部11は処理をステップS12に移行し、推定する異常状態の種類に応じて、入力とする計測値の種類が異なる複数の推定モデル141、141、141…を生成する。
【0066】
図11は、実施の形態2に係る状態推定処理の手順を示すフローチャートである。推定対象の空調システム3の計測値を取得した後(ステップS31)、サーバ1は以下の処理を実行する。
サーバ1の制御部11は、各種類の異常状態推定用の推定モデル141、141、141…に応じて、異なる種類の計測値を選択する(ステップS221)。制御部11は、選択した種類の計測値を、対応する各推定モデル141に入力して、推定モデル141毎に異なる種類の計測値から空調システム3の状態を推定する(ステップS222)。制御部11は処理をステップS33に移行する。
【0067】
以上より、本実施の形態2によれば、各推定モデル141に応じて入力する計測値の種類を変更することで、各種類の異常状態の推定をより好適に行うことができる。
【0068】
(実施の形態3)
実施の形態1では、異常状態の種類毎に推定モデル141を用意(生成)する形態について説明した。本実施の形態では、異常状態の種類毎に生成した推定モデル141同士の相互評価を行い、複数種類の異常状態をグルーピングして、より一般化した推定モデル141を生成する形態について述べる。
【0069】
図12は、モデル間の相互評価処理に関する説明図である。図12では、ラベルF1推定用の推定モデル141に対してラベルF2が付与された教師用の計測値を入力し、ラベルF2の推定を行う様子を図示している。図12に基づき、本実施の形態の概要を説明する。
【0070】
実施の形態1では、推定モデル141はラベルF1、F2、F3…毎に生成した。一方で、異常状態の種類が異なっていても、同様な不具合(異常)であれば推定モデル141を一般化し、同じ推定モデル141で異常状態を推定することが期待できる。そこでサーバ1は、ラベルFx毎に生成された推定モデル141同士の相関性を評価し、複数種類の異常状態をまとめて推定する推定モデル141を生成する。
【0071】
具体的には、サーバ1は、ラベルFx推定用の推定モデル141に対し、異なる種類のラベルFy(x≠y)が付与された教師用の計測値を入力する。そしてサーバ1は出力層から、空調システム3の状態に関する出力値y、yを取得する。図12の例では、サーバ1はラベルF1推定用の推定モデル141にラベルF2が付与された計測値を入力して、出力値y、yを取得する様子を図示している。サーバ1は同様に、ラベルF3、F4、F5…についても計測値を入力して推定を行う。
【0072】
このように、サーバ1は、ラベルFx推定用の推定モデル141に、異なるラベルFyの計測値を入力して出力値を取得する。そしてサーバ1は、各推定モデル141から出力された出力値に基づき、推定モデル141同士の相関性を表す所定の指標値を算出する。指標値は、例えば推定モデル141同士の再現率、及び出力値の相関係数である。なお、再現率は、ラベルFyが付与された計測値が正解通りに異常状態と推定された割合であり、正解通りに異常状態と推定された回数をTP、異常状態と推定されるべきデータが誤って正常状態と推定された回数をFNとして、再現率=TP/(TP+FN)として計算される。相関係数は、例えばピアソン相関係数であり、出力値の共分散及び標準偏差から算出される。
【0073】
図13は、相互評価結果を表す説明図である。図13Aでは推定モデル141同士の再現率を示す表を、図13Bでは出力値の相関係数を示す表をそれぞれ図示する。なお、説明の便宜上、表中の値に応じてハッチングを付してある。
【0074】
図13A、Bから分かるように、ラベルF1、F2は相互に再現率及び相関係数が高く、また、ラベルF6~F9の再現率及び相関係数も高くなっている。同様に見ていくと、およそF1~F4及びF6~F9のグループと、F5、F10及びF11のグループとに分類できる。
【0075】
サーバ1は、図13A、Bに示す再現率及び相関係数に応じて、各推定モデル141に対応する複数種類の異常状態を、一又は複数のグループに分類する。例えばサーバ1は、推定モデル141同士の再現率及び/又は相関係数が一定値以上の異常状態を同じグループに分類する。あるいはサーバ1は、図13A、Bに示す再現率及び相関係数を表示し、人手によるグルーピングの設定入力を受け付けるようにしてもよい。
【0076】
例えばサーバ1は、上記で分類されたグループ毎に再学習を行い、複数の推定モデル141、141、141…をまとめた推定モデル141を再生成する。例えばラベルF1~F4及びF6~F9が同じグループに分類された場合、サーバ1は、当該グループに属する各ラベルFxが付与された計測値と、正常状態時のラベルNFが付与された計測値とをランダムに抽出して学習を行い、ラベルF1~F4及びF6~F9推定用の推定モデル141を生成する。
【0077】
この場合、例えばサーバ1は、ラベルF1~F4及びF6~F9を一つのラベル(一種類の異常状態)と見なして、ラベルF1~F4及びF6~F9から成るラベル群に該当するか否かを推定する推定モデル141を生成するようにしてもよい。あるいはサーバ1は、出力層にラベルF1~F4、F6~F9、及びNFの確率を演算するための9つのニューロンを設け、各ラベルに該当する確率を個別に推定可能な推定モデル141を生成してもよい。このように、再生成した推定モデル141は、対応する異常状態のグループ(種類群)に該当するか否かを推定するモデルであってもよく、個々の異常状態の種類に該当するか否かを推定するモデルであってもよい。
【0078】
実際に空調システム3の状態を推定する場合、サーバ1は、グループ毎に生成した各推定モデル141に計測値を入力して、グループ毎に推定結果を出力する。このように、複数種類の異常状態をグルーピングして、より一般化した推定モデル141を構築することもできる。
【0079】
図14は、実施の形態3に係る推定モデル141の生成処理の手順を示すフローチャートである。ステップS18でYESと判定した後、サーバ1は以下の処理を実行する。
サーバ1の制御部11は、異常状態の種類に応じて生成した複数の推定モデル141、141、141…毎に、他の推定モデル141との相関性を表す指標値を算出する(ステップS301)。具体的には上述の如く、制御部11は、ラベルFx推定用の推定モデル141に対してラベルFy(x≠y)の計測値を入力し、出力値から推定モデル141同士の再現率及び相関係数を算出する。
【0080】
制御部11は、算出した指標値に基づき、複数種類の異常状態を一又は複数のグループに分類する(ステップS302)。そして制御部11は、分類したグループ毎に推定モデル141を再生成し(ステップS303)、一連の処理を終了する。
【0081】
図15は、実施の形態3に係る状態推定処理の手順を示すフローチャートである。推定対象の空調システム3の計測値を取得した後(ステップS31)、サーバ1は以下の処理を実行する。
サーバ1の制御部11は、取得した計測値を各推定モデル141に入力して、空調システム3が異常状態であるか否か、及び異常状態である場合はその異常状態の種類を推定する(ステップS321)。ここで制御部11は、ステップS302で分類したグループ毎に推定を行う。すなわち制御部11は、上述の如く、グループ毎に再生成された各推定モデル141に計測値を入力して、グループ毎に推定を行う。制御部11は処理をステップS33に移行する。
【0082】
以上より、本実施の形態3によれば、複数種類の異常状態を統合して、より一般化した推定モデル141を構築することができる。これにより、教師データとなる計測値や故障履歴が蓄積されていない、例えば運用を開始したばかりの空調システム3に対しても推定モデル141を適用可能となることが期待できる。
【0083】
(実施の形態4)
実施の形態1では、空調システム3に異常が現に発生している状態を推定する形態について説明した。本実施の形態では、空調システム3に異常が発生する兆候が現れている状態を推定する形態について説明する。
【0084】
図16は、実施の形態4の概要を示す説明図である。図16に基づき、本実施の形態の概要を説明する。
本実施の形態でサーバ1は、推定モデル141からの出力に基づき、空調システム3に現に異常が発生しているか否かだけでなく、異常が発生する兆候があるか否かを推定する。例えばサーバ1は、教師用の計測値に対して、正常状態であることを示すNF、及び現に異常が発生していることを表すラベルFxのほかに、異常発生前の兆候状態を表すラベルFxsが付与された教師データを学習して、各ラベルに対応する出力値y、y、yを出力する推定モデル141を生成する。
【0085】
サーバ1は、上記で生成した推定モデル141に対して計測値を入力し、空調システム3の状態を推定する。例えばサーバ1は、ラベルFx、Fxs、及びNFの内、最も値が大きいラベルを採用し、推定結果とする。すなわち、ラベルFxが最も高い場合は異常が現に発生しているものと推定し、ラベルFxsが最も高い場合は兆候状態であるものと推定する。サーバ1は、推定結果を端末2に出力し、兆候状態である場合は異常の兆候がある旨を提示する。
【0086】
なお、兆候状態であると推定して場合、サーバ1は、兆候状態である点だけでなく、異常が発生すると予測される時点を併せて提示すると好適である。例えばサーバ1は、教師データにおいて兆候状態を表すラベルFxsが初めて出現する時点と、異常が現に発生している状態を表すFxが初めて出現する時点との間の期間を記憶しておき、当該期間を異常が発生するまでの参考値として端末2に出力する。あるいはサーバ1は、兆候状態の時点から異常が発生する時点までの期間を推定モデル141に学習させてもよい。これにより、点検業者やエンドユーザは対策を取る時間を知ることができ、利便性を向上させることができる。
【0087】
なお、上記では教師データに兆候状態を表すラベルを付与することで異常の兆候を推定するものとしたが、本実施の形態はこれに限定されるものではない。例えばサーバ1は、実施の形態1と同様に出力値がy、yのみの推定モデル141を利用し、異常状態の確率を表す出力値y2の高低に応じて兆候段階であるか否かを推定してもよい。例えばサーバ1は、y2>0.9(90%)の場合は現に異常が発生していると推定し、y2≦0.9の場合は兆候状態であると推定する。このように、兆候状態を表すラベルが付与された教師データを学習する構成は必須ではなく、推定モデル141の出力値の大小で兆候状態であるか否かを推定してもよい。
【0088】
図17は、実施の形態4に係る状態推定処理の手順を示すフローチャートである。推定対象の空調システム3の計測値を取得した後(ステップS31)、サーバ1は以下の処理を実行する。
サーバ1の制御部11は、取得した計測値を各推定モデル141に入力して、異常が現に発生している状態であるか、及び異常が発生する兆候状態であるか否かを、異常状態の種類と共に推定する(ステップS401)。制御部11は処理をステップS33に移行する。
【0089】
空調システム3に異常が現に発生している状態でないと判定した場合(S33:NO)、制御部11は、ステップS401での推定結果に基づき、異常が発生する兆候状態であるか否かを判定する(ステップS402)。兆候状態でないと判定した場合(S402:NO)、制御部11は処理をステップS34に移行する。兆候状態であると判定した場合(S402:YES)、制御部11は、異常の兆候がある旨を端末2に通知する(ステップS403)。例えば制御部11は、兆候があると推定された異常の種類と、異常が発生すると予測される異常発生時点とを端末2に通知する。制御部11は一連の処理を終了する。
【0090】
以上より、本実施の形態4によれば、空調システム3の異常発生の予測を行うこともできる。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
1 サーバ(情報処理装置)
11 制御部
12 主記憶部
13 通信部
14 補助記憶部
P プログラム
2 端末
3 空調システム
31 空調機
32 冷凍機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17