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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20241217BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20241217BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20241217BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/39
A61K8/67
A61K8/92
A61Q11/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020042638
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021143151
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 和晃
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康彦
(72)【発明者】
【氏名】吉永 江里加
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-015704(JP,A)
【文献】特開2014-062074(JP,A)
【文献】特許第5765225(JP,B2)
【文献】特開平03-014512(JP,A)
【文献】特開平05-058865(JP,A)
【文献】特開平06-271438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アラントイン又はその誘導体、
(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が5~10モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及び
(C)ビタミンE又はその誘導体
を含有してなり、
(A)/(B)が質量比として0.01~5、かつ(A)/(C)が質量比として0.03~2、(A)成分の含有量が0.01~0.2質量%であり、組成物の25℃におけるpHが4~6.4である口腔用組成物。
【請求項2】
(A)/(B)が質量比として0.05~5である請求項1記載の口腔用組成物。
【請求項3】
(B)/(C)が質量比として0.2~60である請求項1又は2記載の口腔用組成物。
【請求項4】
(B)成分の含有量が0.1~3質量%、(C)成分の含有量が0.01~3質量%である、請求項1~3のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【請求項5】
歯磨剤組成物である請求項1~4のいずれか1項記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アラントイン又はその誘導体の歯肉等の口腔粘膜への吸収が促進されて吸収性が優れ、味も良く、歯肉炎等の歯周疾患の予防又は抑制用として好適な口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔用組成物に配合される水溶性有効成分として、例えばアラントイン又はその誘導体は、細胞の機能を活性化し組織修復作用を有し、歯肉炎等の歯周病の予防又は抑制に有用であることが知られている。この水溶性有効成分を効率的に作用させるには、歯肉等の口腔粘膜への吸収、浸透が重要である。
しかしながら、口腔内は常に唾液が供給され濡れた状態である点で皮膚とは異なり、また、口腔用組成物は口腔内に適用後に水で漱ぐ場合が多く、濡れた歯肉の粘膜表面やその内部への水溶性成分の吸収、浸透が困難な環境にある。このため、水溶性有効成分の歯肉等の口腔粘膜表面やその内部への吸収を十分に促進させることは難しく、特に不安定で分解され易いアラントイン又はその誘導体の口腔粘膜への吸収促進効果の向上が課題であった。
【0003】
口腔用組成物に配合された水溶性有効成分の口腔内組織への吸収性向上に、特定の脂肪酸又はエステルが配合されることが特許文献1(特開2015-205826号公報)に提案されているが、使用感に課題があり、サッパリ感不足の解消のために特定香料成分の添加が有効であることが提案されている(特許文献2;特開2016-222582号公報)。
歯肉炎等の歯周病の予防又は抑制の有効成分として、歯肉組織の末梢循環促進作用(血行促進作用)を有する難水溶性のビタミンE又はその誘導体も歯磨剤組成物等の口腔用組成物に広く用いられ、これらの安定配合にはノニオン性界面活性剤が寄与し、使用感の良さからポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油等が広く使用されている。特許文献3(特開2017-214297号公報)では、水溶性有効成分の口腔内吸収促進のために油溶性の特定脂肪酸又はエステルを配合し、更に難水溶性のトコフェロール又はその誘導体と共にポリオキシエチレンアルキルエーテル、無機酸や有機酸のアルカリ金属塩を配合することで、トコフェロール又はその誘導体をその保存安定性を確保して同時配合し、かつ特定脂肪酸又はエステルによる油臭さを抑えて使用感を改善している。
このように上記特定脂肪酸又はエステルは配合組成によって使用感に課題が生じることがあり、水溶性有効成分の口腔粘膜への吸収を促進する新たな技術の開発が望まれた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-205826号公報
【文献】特開2016-222582号公報
【文献】特開2017-214297号公報
【文献】特開2009-149537号公報
【文献】特開2018-43933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、アラントイン又はその誘導体の口腔粘膜への吸収性に優れ、味が良く使用感も良好な口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、アラントイン又はその誘導体を含有する口腔用組成物に、エチレンオキサイドの平均付加モル数が特定値以下のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とビタミンE又はその誘導体とを併用して配合すると、(A)成分の口腔粘膜への吸収が促進され、かつ、苦味が抑えられ味の良い使用感となり、また、(A)成分を保存後も安定に配合することもできることを知見した。即ち、本発明によれば、(A)アラントイン又はその誘導体、(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が5~10モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及び(C)ビタミンE又はその誘導体を含有する口腔用組成物が、(A)成分の口腔粘膜への吸収性に優れ、味が良く使用感も良好であり、また、(A)成分の保存安定性も良いことを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
本発明では、(A)成分に、(B)成分を併用して配合することで、(A)成分の口腔粘膜への吸収が促進され、効果的に吸収、浸透させることができた。この吸収性の促進作用は、(B)成分に代えてエチレンオキサイドの平均付加モル数が20モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を使用した場合には得ることができず、(B)成分に特異な作用であった。そして、更に(C)成分を添加すると、意外にも、(A)及び(B)成分の併用による苦味が、(C)成分によって抑制されて軽減し、これにより、味の良さを保ちながら、(A)成分の口腔粘膜への吸収性を高めることができた。
したがって、本発明の口腔用組成物は、味のよい使用感を確保して(A)成分の口腔粘膜への吸収を促進し、(A)成分を口腔粘膜に高率で吸収させることができる。また、(A)成分の保存安定性を確保し、高温(50℃)保存後も安定に配合することもでき、組成物のpHを(A)成分が比較的安定なpH6.4以下に設定することもできる。
なお、特許文献4、5(特開2009-149537号公報、特開2018-43933号公報)は、エチレンオキサイドの平均付加モル数5~10のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油による、アスコルビン酸リン酸エステル塩の口腔粘膜浸透性の向上であり、口腔用組成物のpHは6.5以上で効果がある。これに対して、本発明は、特に塩基性領域で不安定で分解され易いアラントイン又はその誘導体に関する技術であり、(B)及び(C)成分による、(A)成分の口腔粘膜吸収性の向上及び苦味の抑制であり、口腔用組成物のpHが6.4以下に設定されても上記作用効果に優れ、むしろ前記pH値以下で顕著である。
【0008】
従って、本発明は、下記の口腔用組成物を提供する。
(A)アラントイン又はその誘導体、
(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が5~10モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
及び
(C)ビタミンE又はその誘導体
を含有してなることを特徴とする口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、(A)成分の口腔粘膜への吸収性に優れ、味も良く、(A)成分の保存安定性も有する口腔用組成物を提供できる。本発明の口腔用組成物は、(A)成分を歯肉等の口腔粘膜に吸収、浸透させてその薬効を効率的に発現させることができ、歯肉炎等の歯周疾患の予防又は抑制用として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の口腔用組成物は、(A)アラントイン又はその誘導体、(B)特定のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及び(C)ビタミンE又はその誘導体を含有する。
【0011】
(A)アラントイン又はその誘導体は、歯茎組織の修復作用を有し、歯周疾患の予防又は抑制のための有効成分である。
アラントイン又はその誘導体は、例えば、アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0012】
(A)アラントイン又はその誘導体の配合量は、組成物全体の0.01~0.5%(質量%、以下同様)が好ましく、より好ましくは0.05~0.2%である。配合量が上記範囲において、(A)成分の口腔粘膜への吸収性が十分に促進されて優れ、また、苦味が十分に抑制される。また、(A)成分の保存安定性を十分に得ることができる。
【0013】
(B)成分は、エチレンオキサイドの平均付加モル数(以下、EOと略記することもある)が5~10モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、(A)成分の口腔粘膜への吸収促進剤として作用する。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のEOは5~10モルであり、好ましくは5~7モルである。EOが上記範囲であることが、(A)成分の口腔粘膜への吸収促進に重要であり、EOが10モルを超えると、(A)成分の口腔粘膜への吸収促進効果が劣る。
【0014】
(B)成分の配合量は、組成物全体の0.1~3%が好ましく、より好ましくは0.2~2%である。配合量が0.1%以上であると、(A)成分の口腔粘膜への吸収が促進され、吸収性が十分に優れる。3%以下であると、吸収性が十分に優れ、苦味が強くなりすぎず、苦味を十分に抑制することができる。
【0015】
(C)ビタミンE又はその誘導体は、(A)及び(B)成分の併用系で、苦味の抑制剤として作用する。
ビタミンE又はその誘導体は、例えば、d-α-トコフェロール、dl-α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール等のトコフェロール、これらのエステル、例えば酢酸、ニコチン酸、コハク酸、リノレン酸等の有機酸、特に炭素数1~20の有機酸とのエステル及びこれらの塩を使用することができる。ビタミンEの誘導体としては、具体的には、酢酸d-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール等の酢酸トコフェロール、ニコチン酸d-α-トコフェロール、ニコチン酸dl-α-トコフェロール等のニコチン酸トコフェロール、コハク酸d-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロール等のコハク酸トコフェロール、リノレン酸d-α-トコフェロール、リノレン酸dl-α-トコフェロール等のリノレン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウムが挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
(C)ビタミンE又はその誘導体の配合量は、組成物全体の0.01~3%が好ましく、より好ましくは0.05~2%である。配合量が0.01%以上であると、苦味が十分に抑制され、味が良い。3%以下であると、(B)成分の作用が維持され、(A)成分の口腔粘膜への吸収促進効果が十分に優れる。
【0017】
更に、(A)成分と(B)成分との量比を示す(A)/(B)は、質量比として0.005~5が好ましく、より好ましくは0.05~1である。(A)/(B)の質量比が0.005以上であると、(A)成分の口腔粘膜への吸収が更に促進され、吸収性がより優れ、5以下であると、苦味が十分に抑制される。
【0018】
(A)成分と(C)成分との量比を示す(A)/(C)は、質量比として0.01~10が好ましく、より好ましくは0.05~2である。(A)/(C)の質量比が上記範囲内であると、(A)成分の口腔粘膜への吸収性が十分に優れ、苦味がより抑制されて低減する。0.01未満であると、(A)成分の口腔粘膜への吸収性が低下する場合があり、10を超えると苦味が十分に抑制されない場合がある。
【0019】
また、(B)成分と(C)成分との量比を示す(B)/(C)は、特に苦味の抑制の点から、質量比として0.2~60が好ましく、より好ましくは0.2~40、特に好ましくは0.4~20である。(B)/(C)の質量比が60以下であると、苦味が十分に抑制される。
【0020】
本発明の口腔用組成物は、本作用効果、特に苦味の抑制及び(A)成分の保存安定性の点から、pH(25℃)が好ましくは4~6.4であり、より好ましくは5~6である。pH6.4以下であると、(A)成分の経時保存安定性が十分に確保され、pH4以上であると、苦味が十分に抑制される。
なお、pH調整剤を添加することもでき、pH調整剤は、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム等のクエン酸又はその塩、リンゴ酸又はその塩、リン酸又はその塩や、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸水素塩等が挙げられる。
【0021】
本発明の口腔用組成物は、ペースト状、液体等の形態で、練歯磨、液体歯磨、潤製歯磨等の歯磨剤組成物や洗口剤組成物、更にはマウススプレー剤に調製することができ、特に歯磨剤組成物又は洗口剤組成物、とりわけ歯磨剤組成物として好適である。
【0022】
本発明の口腔用組成物には、上記各成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲において、口腔用組成物に使用し得る公知の添加成分(薬理学的に許容される担体)、有効成分を配合することができる。かかる添加成分としては、例えば、研磨剤、粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、着色剤、香料、溶剤等が挙げられる。これら成分と水とを混合し調製することができる。なお、以下に示す配合量は組成物全体に対する量である。
【0023】
研磨剤は、無水ケイ酸、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウムの無水和物又は2水和物、第3リン酸カルシウム等のリン酸カルシウム系研磨剤、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。研磨剤の配合量は2~50%、特に10~40%がよい。
【0024】
粘稠剤は、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、還元でんぷん糖化物等の糖アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。粘稠剤の配合量は、通常、5~50%である。
【0025】
粘結剤は、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸又はその誘導体、キサンタンガム等のガム類、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の有機粘結剤、増粘性シリカ等の無機粘結剤が挙げられる。粘結剤の配合量は、通常、0.1~10%である。
【0026】
任意の界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、(B)成分以外のノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を配合できる。
アニオン性界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等のアシルタウリン塩、アシルサルコシン酸塩、アシルアミノ酸塩が挙げられる。なお、アニオン性界面活性剤、特にラウリル硫酸ナトリウムの配合量は、本発明の効果発現の点で、0.001~10%が好ましく、0.01~5%がより好ましい。
ノニオン性界面活性剤は、(B)成分以外に配合しなくてもよい(配合量0%)が、本発明の効果を妨げない範囲で配合することもでき、この場合、配合量は、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.2%以下である。任意のノニオン性界面活性剤は、例えば糖脂肪酸エステル、糖アルコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテルが挙げられる。
カチオン性界面活性剤は、アルキルアンモニウム型、アルキルベンジルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩系が挙げられ、両性界面活性剤は、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン等のベタイン型、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン等のアルキルイミダゾール型が挙げられる。
任意の界面活性剤の配合量は、0.01~10%、特に0.1~5%である。
【0027】
甘味剤は、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド等が挙げられる。
防腐剤は、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸又はその塩が挙げられる。
着色剤は、青色1号、黄色4号、二酸化チタン等が挙げられる。
【0028】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料や、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができ、実施例記載の香料に限定されない。
香料の配合量は特に限定されないが、上記の香料素材は、組成物中に0.000001~1%使用するのが好ましく、上記香料素材を使用した賦香用香料は、組成物中に0.1~2%使用するのが好ましい。
【0029】
有効成分は、(A)成分、更には(C)成分以外のもの、例えば非イオン性殺菌剤、カチオン性殺菌剤、デキストラナーゼ等の酵素、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ素含有化合物、水溶性リン酸化合物、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、乳酸アルミニウム、植物抽出物、歯石防止剤、歯垢防止剤が挙げられる。有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量である。
【実施例
【0030】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0031】
[実施例、比較例]
表1~5に示す組成の口腔用組成物(練歯磨)を常法によって調製し、下記方法で評価した。結果を表に併記した。なお、表中、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の( )内の数値はエチレンオキサイドの平均付加モル数である。
【0032】
(1)アラントイン又はその誘導体の吸収性の評価方法
ヒト3次元表皮モデル(LabCyte EPI-MODEL 24、(株)J-TEC製)を、付属の培地で1晩培養した。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)を加えた24wellプレートに、表皮モデルが培養されたカップを移し、口腔用組成物を人工唾液で3倍希釈した液を50μLずつ表皮モデル表面に注入し、3分間静置した。静置後の表皮モデル表面に水50μLを添加し、ピペッティングにて洗浄することを2回繰り返し行った。洗浄液を捨て、表皮モデル表面に水50μLを添加し、6時間(37℃、5%CO2)培養後、表皮モデルを取り出して除去した。PBSに透過したアラントイン又はその誘導体を下記の試験条件でHPLCにより、絶対検量線法にて定量し、表皮モデルへの吸収量を求めた。
(使用機器)
・ポンプ:(株)島津製作所 LC-20AD
・試料導入部:(株)島津製作所 SIL-20AC
・検出器:(株)島津製作所 SPD-20A
・カラム恒温槽:(株)島津製作所 CTO-20AC
・溶離液流量:1mL/min
(試験条件)
・検出器:紫外吸光光度計(測定波長:210nm)
・カラム:Inertsil NH2(直径4.6mm×長さ250mm,粒子径5μm)
・カラム温度:35℃
・溶離液:アセトニトリル/リン酸塩緩衝溶液混液(4:1)
比較例1の口腔用組成物のアラントイン又はその誘導体の吸収量を100%とした際の吸収率(%)を算出し、得られた吸収率から、下記の評価基準でアラントイン又はその誘導体の吸収性((A)成分の吸収性)を判定し、口腔粘膜への吸収性について評価した。
評価基準
◎:150%超
○:100%超150%以下
×:100%以下
【0033】
(2)使用感(苦味のなさ)の評価方法
9名の被験者モニタが、一般的なラミネートチューブ容器に充填された口腔用組成物1gを前記容器から押し出して歯ブラシにのせ、通常の方法で口腔内を洗浄した際の味(苦味)を下記の評点基準で判定した。
評点基準
4点:苦味を感じない
3点:苦味をほとんど感じない
2点:苦味を感じるが許容できる程度である
1点:許容できないほどの苦味を感じる
9名の評点の平均値を求め、下記の評価基準で使用感(苦味のなさ)を評価した。
評価基準:
◎:3.5点以上
○:3.0点以上3.5点未満
●:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0034】
(3)アラントイン又はその誘導体の経時保存安定性の評価方法
一般的なラミネートチューブ容器に充填された口腔用組成物を、50℃又は-5℃の恒温槽中で2週間保存した。これらを常温になるまで放置した後、前記容器から口腔用組成物1.5gを押し出して分取し、80%エタノール20mLを加えて15分間振とうし、遠心(3,000rpm、10分間)後、上清中のアラントイン又はその誘導体を下記の試験条件でHPLCにより、絶対検量線法にて定量し、50℃保存品と-5℃保存品のアラントイン又はその誘導体の含有量を算出した。
(使用機器)
・ポンプ:(株)島津製作所 LC-20AD
・試料導入部:(株)島津製作所 SIL-20AC
・検出器:(株)島津製作所 SPD-20A
・カラム恒温槽:(株)島津製作所 CTO-20AC
・溶離液流量:1mL/min
(試験条件)
・検出器:紫外吸光光度計(測定波長:273nm)
・カラム:Inertsil NH2(直径4.6mm×長さ250mm,粒子径5μm)
・カラム温度:35℃
・溶離液:アセトニトリル/リン酸塩緩衝溶液混液(4:1)
-5℃保存品のアラントイン又はその誘導体の含有量を100%とした際の50℃保存品の含有量の割合から、アラントイン又はその誘導体の残存率(%)を算出し、下記の評価基準でアラントイン又はその誘導体の経時保存安定性((A)成分の保存安定性)を評価した。
評価基準
◎:アラントイン又はその誘導体の残存率が95%以上
○:アラントイン又はその誘導体の残存率が90%以上95%未満
×:アラントイン又はその誘導体の残存率が90%未満
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
【表5】

*;(B)成分を含まない比較例1は、苦味が発現しなかった。