(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ケア情報処理プログラム、ケア情報処理装置、およびケア情報処理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20240101AFI20241217BHJP
【FI】
G06Q50/22
(21)【出願番号】P 2020103180
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】韓 浩
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-219957(JP,A)
【文献】国際公開第2020/003715(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/130732(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケアを要するイベント、前記イベントの発生時刻、前記イベントによって前記ケアの対象者に行われたケアの内容を含む、ケア情報を記憶部から取得するステップ(a)と、
前記ケア情報に基づいて、前記イベントまたは前記ケアが発生した時刻、発生した前記イベントまたは前記ケアの内容を、前記対象者の生活パターンとして抽出するステップ(b)と、
抽出された前記イベントまたは前記ケアが発生した時刻と、当該時刻に発生した前記イベントまたは前記ケアの内容から、前記イベントまたは前記ケアの発生した時間帯ごとに、同じ前記イベントまたは同じ内容の前記ケアが行われた前記対象者をまとめるように、前記対象者を分類するステップ(c)と、
表示部を備えた端末へ、前記分類の結果に関する情報を出力するステップ(d)と、
を有する処理をコンピューターに実行させるためのケア情報処理プログラム。
【請求項2】
前記記憶部は、さらに、施設における、前記対象者が所在する居室、倉庫、前記ケアを行うスタッフの待機室、キッチン、ホール、浴室、脱衣所、汚物処理室、および通路の座標を含むマップの情報が記憶されており、
前記ステップ(a)は、さらに、前記記憶部から前記マップの情報を取得し、
前記ステップ(c)は、前記待機室の座標、前記居室の座標、および前記対象者の分類に基づいて、前記マップの情報を参照することで、前記待機室から、
同一のグループに分類された前記対象者の前記居室までの移動距離が一番短くなる前記待機室を指定して、前記スタッフの配置を決定し、
前記ステップ(d)は、前記分類の結果とともに前記決定の結果に関する情報を出力する請求項1に記載のケア情報処理プログラム。
【請求項3】
前記記憶部は、さらに、施設における、前記対象者が所在する居室、倉庫、前記ケアを行うスタッフの待機室、キッチン、ホール、浴室、脱衣所、汚物処理室、および通路の座標を含むマップの情報が記憶されており、
前記ステップ(a)は、さらに、前記記憶部から前記マップの情報を取得し、
前記ステップ(c)は、前記待機室の座標、前記居室の座標、および前記対象者の分類に基づいて、前記マップの情報を参照することで、前記待機室から、
同一のグループに分類された前記対象者の在所する前記居室までの移動距離が一番短い居室となるように
当該同一のグループに分類された前記対象者の配置を決定し、
前記ステップ(d)は、前記分類の結果とともに前記決定の結果に関する情報を出力する請求項1に記載のケア情報処理プログラム。
【請求項4】
前記イベントは、前記ケアを行うスタッフへの発報が行われることによって前記スタッフが対応すべき事象、決まった時間に前記スタッフが対応すべき事象、および前記スタッフが気付いた際に対応すべき事象のうち、少なくとも一つであり、
前記ケアの内容は、前記対象者の食事、入浴、起床、排泄、および水分摂取のうちの少なくとも一つに関する情報を含む請求項1~3のいずれかに記載のケア情報処理プログラム。
【請求項5】
前記端末は、
前記ケアを行うスタッフに使用されるスタッフ端末、または前記スタッフを統括する管理者が使用する管理者端末である請求項1~4のいずれかに記載のケア情報処理プログラム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のケア情報処理プログラムを実行するケア情報処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載のケア情報処理装置と、表示部を備えた端末とを有し、
前記ケア情報処理装置は、前記結果に関する情報を前記端末に送信し、
前記端末は、前記結果に関する情報を前記表示部に表示するケア情報処理システム。
【請求項8】
前記端末は、
前記ケアを行うスタッフに使用されるスタッフ端末、および/または、前記スタッフを統括する管理者が使用する管理者端末である請求項7に記載のケア情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケア情報処理プログラムに関する。特に、本発明は、介護等の対象者に対するケアに関する情報を分析するケア情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国は、戦後の高度経済成長に伴う生活水準の向上、衛生環境の改善、および医療水準の向上等により、長寿命化が顕著となっている。このため、出生率の低下と相まって、高齢化率が高い高齢化社会になっている。このような高齢化社会では、病気、怪我、および加齢などにより、介護等の対応を必要とする要介護者等の増加が想定される。
【0003】
老人福祉施設や病院等の施設においては、要介護者等の対象者に対応するスタッフの業務を支援するために、ナースコールシステムや介護記録システム等の様々なシステムが導入されている。さらに近年では、スタッフの業務状況を分析して改善するための技術も各種提案されている。例えば下記特許文献1には、入居者からの呼び出しの内容や頻度、時刻情報等を記録しておき、呼び出しがあった際に、時間帯ごとに頻度が高い呼び出しの内容をスタッフの端末に出力して、呼び出しの内容を予測可能とする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された技術は、過去の呼び出しの内容、頻度、および時間帯のみに基づいて呼び出しの内容を予測させるものであるため、予測の精度が低いという問題がある。このため、対象者からの呼び出しがあった場合には、対象者のもとに駆け付けて内容を確認する必要があり、対象者からの呼び出しへの対応を効率化できないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものである。すなわち、対象者からの呼び出しに対する対応を効率化するためのケア情報処理プログラム、ケア情報処理装置、およびケア情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、以下の手段によって解決される。
【0011】
(1)ケアを要するイベント、前記イベントの発生時刻、前記イベントによって前記ケアの対象者に行われたケアの内容を含む、ケア情報を記憶部から取得するステップ(a)と、
前記ケア情報に基づいて、前記イベントまたは前記ケアが発生した時刻、発生した前記イベントまたは前記ケアの内容を、前記対象者の生活パターンとして抽出するステップ(b)と、
抽出された前記イベントまたは前記ケアが発生した時刻と、当該時刻に発生した前記イベントまたは前記ケアの内容から、前記イベントまたは前記ケアの発生した時間帯ごとに、同じ前記イベントまたは同じ内容の前記ケアが行われた前記対象者をまとめるように、前記対象者を分類するステップ(c)と、
表示部を備えた端末へ、前記分類の結果に関する情報を出力するステップ(d)と、
を有する処理をコンピューターに実行させるためのケア情報処理プログラム。
【0012】
(2)前記記憶部は、さらに、施設における、前記対象者が所在する居室、倉庫、前記ケアを行うスタッフの待機室、キッチン、ホール、浴室、脱衣所、汚物処理室、および通路の座標を含むマップの情報が記憶されており、
前記ステップ(a)は、さらに、前記記憶部から前記マップの情報を取得し、
前記ステップ(c)は、前記待機室の座標、前記居室の座標、および前記対象者の分類に基づいて、前記マップの情報を参照することで、前記待機室から、同一のグループに分類された前記対象者の前記居室までの移動距離が一番短くなる前記待機室を指定して、前記スタッフの配置を決定し、
前記ステップ(d)は、前記分類の結果とともに前記決定の結果に関する情報を出力する上記(1)に記載のケア情報処理プログラム。
【0013】
(3)前記記憶部は、さらに、施設における、前記対象者が所在する居室、倉庫、前記ケアを行うスタッフの待機室、キッチン、ホール、浴室、脱衣所、汚物処理室、および通路の座標を含むマップの情報が記憶されており、
前記ステップ(a)は、さらに、前記記憶部から前記マップの情報を取得し、
前記ステップ(c)は、前記待機室の座標、前記居室の座標、および前記対象者の分類に基づいて、前記マップの情報を参照することで、前記待機室から、同一のグループに分類された前記対象者の在所する前記居室までの移動距離が一番短い居室となるように当該同一のグループに分類された前記対象者の配置を決定し、
前記ステップ(d)は、前記分類の結果とともに前記決定の結果に関する情報を出力する上記(1)に記載のケア情報処理プログラム。
【0014】
(4)前記イベントは、前記ケアを行うスタッフへの発報が行われることによって前記スタッフが対応すべき事象、決まった時間に前記スタッフが対応すべき事象、および前記スタッフが気付いた際に対応すべき事象のうち、少なくとも一つであり、
前記ケアの内容は、前記対象者の食事、入浴、起床、排泄、および水分摂取のうちの少なくとも一つに関する情報を含む上記(1)~(3)のいずれかに記載のケア情報処理プログラム。
【0015】
(5)前記端末は、
前記ケアを行うスタッフに使用されるスタッフ端末、または前記スタッフを統括する管理者が使用する管理者端末である上記(1)~(4)のいずれかに記載のケア情報処理プログラム。
【0016】
(6)上記(1)~(5)のいずれかに記載のケア情報処理プログラムを実行するケア情報処理装置。
【0017】
(7)上記(6)に記載のケア情報処理装置と、表示部を備えた端末とを有し、
前記ケア情報処理装置は、前記結果に関する情報を前記端末に送信し、
前記端末は、前記結果に関する情報を前記表示部に表示するケア情報処理システム。
(8)前記端末は、
前記ケアを行うスタッフに使用されるスタッフ端末、および/または、前記スタッフを統括する管理者が使用する管理者端末である上記(7)に記載のケア情報処理システム。
【発明の効果】
【0018】
ケアを要するイベントおよび時間を含むケア情報を取得し、ケア情報に基づいてケアの対象者の生活パターンを抽出する。抽出された生活パターンに基づいて、イベントが発生する時間、イベントの内容、および複数のイベント間の相関関係のうちの少なくとも一つの分析を実行し、分析の結果に関する情報を出力する。これにより、対象者の生活パターンに基づいて、必要な対応を推定または予測したり対象者を分類したりすることができるため、対象者からの呼び出しに対する対応を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】対象者の部屋に設置された検出部の例を示す図である。
【
図3】検出部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】サーバーのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】管理者端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】スタッフ端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図7】サーバーに蓄積されるケア情報の例を示す図である。
【
図8】サーバーに記憶されるマップ情報の例を示す図である。
【
図9】サーバーの動作を示すフローチャートである。
【
図10】スタッフ端末に表示される画面の例を示す図である。
【
図11】管理者端末に表示される画面の例を示す図である。
【
図12】見守りシステムにおいて実行される処理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0021】
(全体構成)
図1は見守りシステムの全体構成を示す図であり、
図2は対象者の部屋に設置された検出部の例を示す図である。
【0022】
図1に示すように、見守りシステム1は、複数の検出部10、サーバー20、管理者端末30、および1つ以上のスタッフ端末40を備える。これらは、有線や無線によって、LAN(Local Area Network)、電話網またはデータ通信網等のネットワーク50を介して、相互に通信可能に接続される。ネットワーク50は、通信信号を中継するリピーター、ブリッジ、ルーターまたはクロスコネクト等の中継機を備えてもよい。
図1に示す例では、スタッフ端末40は、検出部10、サーバー20、および管理者端末30と、アクセスポイント51を含む無線LAN等(例えばIEEE802.11規格に従ったLAN)のネットワーク50によって、相互に通信可能に接続されている。
【0023】
見守りシステム1は、対象者70に応じて適宜な場所に配設される。対象者70(見守り対象者)は、例えば、病気や怪我等によって看護を必要とする患者、高齢による身体能力の低下等によって介護を必要とする被介護者、一人暮らしの独居者、または病院施設に入院している患者等である。特に、早期発見および早期対処を可能にする観点から、対象者70は、例えば異常状態等の所定の不都合な事象がその者に生じた場合に、その発見を必要としている者であり得る。このため、見守りシステム1は、対象者70の種類に応じて、老人福祉施設、病院、および住戸等の建物に好適に配設される。
図1に示す例では、見守りシステム1は、複数の対象者70が入居する複数の部屋(居室)やナースステーションを含む複数の部屋を備える施設の建物に配置されている。
【0024】
検出部10は、対象者70の観察領域であるそれぞれの居室に配置される。
図1に示す例では、4つの検出部10が対象者70であるAさん、Bさん、CさんおよびDさんの居室にそれぞれ配置されている。検出部10の観察領域にはベッド60が含まれている。対象者70に対して介護または看護等の対応(例えば、ケア)を行うスタッフ80は、それぞれ携帯端末であるスタッフ端末40を持ち歩いている。ただし、見守りシステム1が備える各構成の位置や個数等は、
図1に示す例に限定されない。例えば、サーバー20は、ナースステーションに配置されなくてもよく、ネットワーク50に接続されている外部のサーバーユニットであってもよい。
【0025】
(検出部10)
図3は、検出部のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3に示すように、検出部10は、制御部11、通信部12、カメラ13、ナースコール部14、および音声入出力部15を備え、これらはバスによって、相互に接続されている。
【0026】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、およびRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリにより構成され、プログラムに従って検出部10の各部の制御および演算処理を行う。なお、制御部11は、メモリとして、さらにHDD(Hard Disk Drive)を備えてもよい。
【0027】
通信部12は、ネットワーク50を介して、例えば、サーバー20、管理者端末30またはスタッフ端末40等の、他の装置と通信するためのインターフェース回路(例えばLANカード等)である。
【0028】
カメラ13は、例えば居室の天井、または壁の上部に配置され、観察領域として対象者70のベッド60を含む領域を撮影し、撮影画像(画像データ)を出力する。以下、カメラ13により撮影された画像を、単に「撮影画像」とも称する。撮影画像には対象者70を含む画像が含まれる。撮影画像は、静止画および動画を含む。カメラ13は近赤外線カメラであるが、これに換えて可視光カメラを用いてもよく、これらを併用してもよい。
【0029】
制御部11は、カメラ13が撮影した撮影画像から、対象者70の行動を認識する。この認識する行動には、ベッド60から起き上がる「起床」、ベッド60から離れる「離床」、ベッド60から転落する「転落」、および床面等に転倒する「転倒」が含まれる。
【0030】
制御部11は、複数の撮影画像(動画像)から画像のシルエット(以下、「人シルエット」と称する)を検出する。人シルエットは、例えば、撮影時刻が前後する画像の差分を抽出する時間差分法により差分が相対的に大きい画素の範囲を抽出することによって検出され得る。人シルエットは、撮影画像と背景画像との差分を抽出する背景差分法により検出されてもよい。起床、離床、転倒、転落の別は、検出した人シルエットから対象者70の姿勢(例えば立位、座位および横臥等)、およびベッド60等の居室内の設置物との相対的な位置から認識される。これらの認識は、制御部11のCPUが処理するプログラムにより行ってもよく、組み込み型の処理回路により行うようにしてもよい。また、これに限られずサーバー20側でこれらの認識の全部またはほとんどの処理を行うようにし、制御部11ではサーバー20への撮影画像の送信のみを行うようにしてもよい。制御部11は、いずれかの行動を認識した場合、イベントが発生した旨の通知をサーバー20等に送信する。
【0031】
スタッフ80は、業務に応じた、対象者70への各種の対応を行う者である。業務には、医療業務、介護業務を含み得る。ここで、スタッフ80の業務が、対象者70に対する介護業務である場合に、各イベントに関する対応内容について説明する。イベントとして「起床」を判定し、その判定が所定時間内(施設で設定された起床時間(例えば午前7~8時))であれば、モーニングケアを行う。このモーニングケアには、洗顔、歯磨き介助、義歯装着、着替え介助等が含まれる。また、「離床」のイベントであれば、車椅子移乗、歩行介助が必要となる場合がある。また、検出部10が判定したイベント以外の定期的(定時)なイベントとして、水分摂取、および食事介助、排泄介助、車椅子移乗、歩行介助、体位変換(褥瘡予防)がある。これらの定期的イベントは、ナースコール部14等により、定時になるとアラートを発生させるようにしてもよい。
【0032】
ナースコール部14は、押しボタン式のスイッチを含み、スイッチが対象者70によって押されることによってナースコールを検出する。ナースコールにはケアコール等が含まれる。押しボタン式のスイッチに換えて、音声マイクによりナースコールを検出してもよい。ナースコール部14のスイッチが押された場合、すなわち、ナースコールを検出した場合、制御部11は、通信部12およびネットワーク50を介して、ナースコールがあった旨の通知(ナースコール通知)をサーバー20等に送信する。
【0033】
音声入出力部15は、例えばスピーカーとマイクであり、通信部12を介してスタッフ端末40等との間で音声信号を送受信することによって音声通話を可能とする。なお、音声入出力部15は検出部10の外部装置として、通信部12を介して検出部10に接続されてもよい。
【0034】
また、検出部10は、ベッド60の方向に向けてマイクロ波を送受信して対象者70の体動(例えば呼吸動)によって生じたマイクロ波のドップラシフトを検出するドップラシフト方式の体動センサーを、さらに備えてもよい。この体動センサーにより、対象者70の呼吸動作に伴う胸部の体動(胸部の上下動)を検出し、その胸部の体動における周期の乱れや予め設定された閾値以下である胸部の体動における振幅を検知すると、微体動異常であると認識する。
【0035】
本実施形態においては、イベントには、スタッフ80により対象者70への対応が行われるべき事象が広く含まれる。例えば、イベントには、スタッフ80への発報(報知)が行われることによってスタッフ80が対応すべき事象(第1事象と称する)、決まった時間にスタッフ80が対応すべき事象(第2事象と称する)、およびスタッフ80が気付いた際に対応すべき事象(第3事象と称する)等が含まれる。第1事象には、例えば、ナースコール、ならびに、起床、離床、転倒、転落、および微体動異常が含まれる。第2事象には、例えば、食事、入浴、着替え、および散策等の際の車椅子への移乗が含まれる。第3事象には、例えば、対象者70の口頭での依頼による排泄ケア、発熱が疑われるときの体温測定、および嘔吐していたときの対応が含まれる。
【0036】
検出部10は、検出したイベントの情報(以下、単に「イベント情報」とも称する)および撮影画像をサーバー20へ送信(出力)する。
【0037】
(サーバー20)
図4は、サーバーのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0038】
サーバー20は、制御部21、通信部22、および記憶部23を備える。サーバー20は、本実施形態において、ケア情報処理装置を構成する。サーバー20は、対象者70用の居室と同じ建物内に設けられてもよく、遠隔地に設けられてネットワークを介して接続可能であってもよい。例えば、サーバー20は、インターネット等のネットワーク上に配置された複数のサーバーによって仮想的に構築されるクラウドサーバーであってもよい。各構成は、バスによって、相互に通信可能に接続されている。制御部21、および通信部22は、それぞれ検出部10の制御部11、および通信部22と同様の機能を有するため、詳細な説明を省略する。
【0039】
記憶部23は、本実施形態に係るプログラムを記憶する。サーバー20の上記構成要素は、プログラムに従い、制御部21により制御される。また、記憶部23は、対象者70やスタッフ80に関する各種情報を記録し蓄積する。さらに、記憶部23は、対象者70の各イベントに関する情報や、各イベントに対するスタッフ80の対応に関する情報を、ケア情報として記録する。ケア情報は、ケアを要するイベントおよび時間に関する情報を含む。ケア情報には、ケアの実施時間や内容を示す情報である介護記録(ケア記録)と、ナースコールの実施履歴や内容を示す情報であるナースコール記録とが含まれる。記憶部23に記録される情報について、詳細は後述する。
【0040】
サーバー20は、検出部10から受信したイベント情報および撮影画像を単独で、または検出部10と協働することによって、検出部10が認識した、起床、離床、転倒、ナースコール等のイベントが、どの対象者70に関するものであるかを判定(識別)する。この判定は、イベントを認識した検出部10が設置されている居室番号から、これに対応付けられている対象者70(すなわち、居室の入居者)を判定することによって行う。なお、対象者70の判定は、対象者70がICタグを携帯している場合には、このICタグを各居室に設けたRFIDリーダーで読み取ることにより、判定してもよい。なお、相部屋等で、1つの居室に複数の対象者70が存在する場合には、ベッド60ごとに検出部10を配置することによって、対象者70を判定してもよい。
【0041】
サーバー20は、検出部10からイベント情報を受信したときは、イベントを発生させた対象者70の氏名、居室番号、およびイベントの内容を含むイベント通知をスタッフ端末40へ送信することによって、スタッフ80にイベントの発生を報知するとともに、イベントへの対応を指示する。
【0042】
サーバー20は、ケア情報を取得し、ケア情報に基づいて対象者の生活パターンを抽出する。また、サーバー20は、抽出された生活パターンに基づいて、イベントが発生する時間、イベントの内容、および複数のイベント間の相関関係のうちの少なくとも一つの分析を実行し、分析の結果に関する情報を出力する。
【0043】
(管理者端末30)
図5は、管理者端末のハードウェア構成を示すブロック図である。管理者端末30は、いわゆるPC(Personal Computer)であり、制御部31、通信部32、表示部33、および入力部34を備え、これらはバスにより相互に接続される。
【0044】
制御部31は、検出部10の制御部11と同様の構成として、CPU、RAM、ROM等を備える。
【0045】
通信部32は、イーサネット(登録商標)等の規格による有線通信のネットワークインターフェースや、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11等の規格による無線通信のインターフェース等の各種ローカル接続向けのインターフェースであり、ネットワーク50に接続した各端末との通信を行う。
【0046】
表示部33は、例えば液晶ディスプレイであり、各種情報を表示する。
【0047】
入力部34は、キーボード、テンキー、マウス等を備えており、各種情報の入力を行う。
【0048】
本実施形態では、管理者端末30は、管理者90用の端末として用いられる。管理者90は、例えば、スタッフ80を統括するマネージャーである。
【0049】
管理者端末30は、管理者90等からケア情報の分析や出力に関する指示を受け付けて、受け付けた指示をサーバー20へ送信する。
【0050】
(スタッフ端末40)
図6は、スタッフ端末のハードウェア構成を示すブロック図である。スタッフ端末40は、制御部41、無線通信部42、表示部43、入力部44、音声入出力部45、および位置取得部46を備え、これらはバスにより相互に接続される。スタッフ端末40は、本実施形態において、サーバー20とともに、ケア情報処理システムを構成する。
【0051】
制御部41は、検出部10の制御部11と同様の構成であり、CPU、RAM、ROM等を備える。
【0052】
無線通信部42は、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)等の規格を用いた無線通信が可能であり、アクセスポイント51を経由して、または直接的に各装置と無線通信する。
【0053】
表示部43、および入力部44は、例えばタッチパネル式のディスプレイであり、液晶等で構成される表示部43の表示面に、入力部44としてのタッチセンサーを重畳させたものである。表示部43、入力部44によって、スタッフ80に対する各種指示が通知される。また、表示部43、入力部44によって、イベント通知を表示した操作画面を表示したり、操作画面を通じてイベントへの対応の受諾の応答の入力や、介護記録の入力等の各種の操作を受け付けたりする。
【0054】
音声入出力部45は、例えばスピーカーとマイクであり、無線通信部42を介して他のスタッフ端末40との間でスタッフ80による音声通話を可能にする。スタッフ端末40は、例えば、タブレット型コンピューター、スマートフォンまたは携帯電話等の、持ち運び可能な通信端末機器によって構成できる。
【0055】
位置取得部46は、例えば、GPSやWi-Fi、施設内の任意の場所に設置されたビーコン等から受信する信号や、加速度センサー等の各種センサーの検知情報に基づいて、スタッフ端末40が所在する位置に関する情報を取得する。位置取得部46によって取得された情報は、当該スタッフ端末40を所持するスタッフ80の位置を特定するための情報(位置情報)として用いられる。位置取得部46によって取得された位置情報は、例えば位置情報が取得された日時の情報と対応付けられて、サーバー20に送信される。
【0056】
次に、サーバー20の記憶部23に記憶される情報について説明する。
【0057】
図7は、サーバーに蓄積されるケア情報の例を示す図である。
【0058】
図7に示すように、ケア情報には、各対象者70に対して行われたケアの内容(種類)、発生時刻、対応時刻、対応したスタッフ80に関する情報、およびケアの際に使用した物品等の情報が含まれる。ケアの内容には、例えば食事介助、入浴介助、起床介助、排泄介助、水分摂取介助、車椅子移乗、歩行介助、体位変換(褥瘡予防)等が含まれる。ケア情報には、ケアコール(ナースコール)の実施状況や実施履歴を示すケアコール記録も含まれる。各ケアの対応に応じて、さらに詳細な内容が記録されてもよい。たとえば、食事の場合は、食事時間、食事摂取量、食事内容等が時系列で記録されてもよい。あるいは、入浴の場合は、入浴時間、入浴タイプ(機械浴、シャワー、通常の入浴等)が記録されてもよい。発生時刻としては、例えば検出部10によってイベントが検出された時刻、定期的なケアの場合に予め設定される予定時刻、スタッフ80によって入力される時刻等が記録される。また、ケアの際に使用した物品に関する情報としては、例えば排泄介助の場合にはおむつ等が記録される。
【0059】
図8は、サーバーに記憶されるマップ情報の例を示す図である。
【0060】
図8に示すように、サーバー20の記憶部23には、マップ情報としてスタッフ80の活動領域である、居室(居室1~居室8)、倉庫、待機室、キッチン、ホール、浴室、脱衣所、汚物処理室、通路等のマップを示す情報が記憶される。マップ上の座標は、スタッフ端末40において位置情報として検出される、スタッフ80の位置を示す座標と予め対応付けられている。
【0061】
図8に例示されるマップにおいて、居室1~居室8は、対象者70が所在する部屋である。マップ情報には、各居室に所在する対象者70に関する情報が対応付けられて記憶されてもよい。倉庫は、各イベントへの対応に必要な資材が保管されている部屋である。マップ情報には、倉庫に保管されている資材に関する情報や、各資材が必要となるイベントに関する情報が対応付けられて記憶されてもよい。例えば、倉庫に保管されている資材としておむつが記憶され、おむつは特定の対象者70の排泄ケア(おむつ交換が必要な排泄ケア)において必要となることがマップ情報に関連付けられて記憶されてもよい。待機室は、イベントが発生していない時等にスタッフ80が待機するための部屋である。ホール、浴室、脱衣所、汚物処理室等は、各種イベントにおいて目的に応じて使用される部屋である。マップ情報には、各部屋が各イベントに関する情報と対応付けられて記憶されてもよい。通路は、スタッフ80が各部屋間を移動するために通行可能な領域である。
【0062】
なお、マップ情報により示されるマップは、
図8に示すような施設の平面図を示す2次元マップに限定されず、例えば施設の構造を立体的に示す3次元マップであってもよい。また、施設が複数の建物や複数のフロアを有する場合、マップ情報には、各建物、各フロアに関する情報が含まれる。
【0063】
また、記憶部23には、上記のような情報に加えて、他の情報が記録されてもよい。例えば、記憶部23には、イベントに関する情報として、イベント発生時または対応時に検出部10によって取得された静止画や動画等、イベントに関する各種情報が記録されてもよい。また、記憶部23には、スタッフ端末40等で取得される各スタッフ80のイベント発生の通知に対する応答時間、イベント対応時の移動歩数、移動階数等、スタッフ80の動きに関する各種情報が記録されてもよい。
【0064】
また、上記の各情報は、サーバー20の記憶部23以外において蓄積されてもよく、例えばネットワークを介してサーバー20と接続されるクラウドサーバー等の各種ストレージに蓄積されていてもよい。また、上記の各情報は、一つデータベースとして構築される形態に限定されず、イベントID等のキー情報によって相互に関連付けられた複数のデータベースに分散されて蓄積されてもよい。
【0065】
なお、検出部10、サーバー20、管理者端末30、およびスタッフ端末40は、上記の構成要素以外の構成要素を含んでもよく、あるいは、上記の構成要素のうちの一部を含まなくてもよい。
【0066】
次に、見守りシステム1におけるサーバー20の動作について説明する。
【0067】
図9は、サーバーの動作を示すフローチャートである。本フローチャートは、サーバー20の記憶部23に記憶されたプログラムに従い、制御部21により実行され得る。
【0068】
図9に示すように、制御部21は、ケア情報を取得する(ステップS101)。たとえば、制御部21は、記憶部23に記憶されているケア情報を読み出して取得する。
【0069】
続いて、制御部21は、ステップS101の処理において取得されたケア情報に基づいて、対象者70の生活パターンを抽出する(ステップS102)。対象者70の生活パターンは、対象者70に関するイベントまたは対象者70に対するケアの発生の状況や傾向を示す情報であり、各イベントまたはケアが発生するタイミング、時間的サイクル、各イベントまたはケア間の間隔、発生順序等に関する情報が含まれる。たとえば、制御部21は、対象者70の複数日のケア情報を取得し、発生したケアの項目と、各項目の発生時刻の相関関係を解析することによって、対象者70の生活パターンを抽出する。たとえば、制御部21は、複数日における「入浴」の発生時刻に基づいて、「16時に入浴が発生する」という生活パターンを抽出することができる。また、制御部21は、複数日における「排泄」の発生時刻に基づいて、「深夜に2回排泄が発生する」という生活パターンを抽出してもよい。また、制御部21は、複数日における「食事」の発生時刻と、「排泄」の発生時刻との関係に基づいて、「食事の30分後に排泄が発生する」という生活パターンを抽出してもよい。また、制御部21は、複数日における「水分摂取」の発生時刻と、「排泄」の発生時刻との関係に基づいて、「水分摂取の30分後に排泄が発生する」という生活パターンを抽出してもよい。制御部21は、上記のような解析を、教師データを用いて予め機械学習された学習済みモデルを用いて実行してもよく、公知の統計的手法を用いて実行してもよい。
【0070】
続いて、制御部21は、ステップS102の処理において抽出された生活パターンに基づいて、イベントが発生する時間、イベントの内容、および対象者70に関する複数のイベント間の相関関係のうちの少なくとも一つの分析を実行する(ステップS103)。
【0071】
たとえば、制御部21は、ステップS102の処理において「食事の30分後に排泄が発生する」という生活パターンが抽出されている場合、対象者70に「食事介助」のケアが実行された30分後に、「排泄」のイベントが発生することや、「排泄介助」のケアについて対象者70から呼ばれることを分析することができる。さらに、制御部21は、「食事」および「排泄」という二つのイベント間に相関関係があることを分析することができる。また、制御部21は、ステップS102の処理において「深夜に2回排泄が発生する」という生活パターンが抽出されている場合、深夜時間帯に2回、「排泄介助」のケアについて対象者70から呼ばれることを分析することができる。さらに、制御部21は、「水分摂取」および「排泄」という二つのイベント間に相関関係があることを分析することができる。なお、このような相関関係の分析は、公知の相関分析の手法を用いて実行され得る。たとえば、「排泄」と「水分摂取」に関して分析する場合、ケア情報において「排泄」の30分前に水分摂取したか否かを確認し、水分摂取していれば「1」として、水分摂取していなければ「0」として相関関係を分析したり、あるいは統計を取得したりすることによって分析が実行され得る。
【0072】
続いて、制御部21は、ステップS103の処理における分析の結果に関する情報を出力する(ステップS104)。
【0073】
なお、上述したステップS102~S104の処理は、たとえば、以下のパターン1~パターン3のような方法で実行され得る。
【0074】
<パターン1>
対象者70によってケアコール(ナースコール)が行われ、スタッフ80が対象者70に呼ばれた際に、制御部21は、対象者70に対して必要となるケアの内容を推定する。
【0075】
たとえば、16時に対象者70からケアコールがあった場合、スタッフ80は、現場に到着するまで必要となるケアの内容を把握することができない。そこで、制御部21は、当該対象者70のケア情報を参照して、16時に実行されているケアの内容を分析することによって、必要となるケアの内容を推定する。たとえば、対象者に対して16時に実行されているケアとして、入浴介助の回数が排泄介助等の他のケアの回数よりも多い場合、制御部21は、入浴介助のケアが必要となると推測することができる。さらに、制御部21は、日付や曜日の情報を考慮してもよい。たとえば、月曜、水曜、金曜の16時に入浴介助のケアが行われていることが多い場合において、月曜、水曜、金曜の16時にケアコールがあった場合、制御部21は、入浴介助のケアが必要となると推測することができる。推測された内容は、たとえばスタッフ端末40の表示部43において表示するための情報としてサーバー20から出力される。
【0076】
図10は、スタッフ端末に表示される画面の例を示す図である。
【0077】
図10に示すように、スタッフ端末40の表示部43には、イベントリストが一覧表示される操作画面431が表示される。操作画面431において、イベントリストa11は、ケアコールの発生を示している。そして、イベントリストa11の領域a12には、サーバー20によって推測されたケアコールの内容が、「入浴介助」であることが示されている。
【0078】
<パターン2>
対象者70によってケアコールが行われた場合に限らず、制御部21は、対象者70に対するケアが必要となる時間およびケアの内容の少なくとも一方を予測する。
【0079】
たとえば、「16時に入浴が発生する」という生活パターンや「深夜に2回排泄が発生する」という生活パターンが抽出されている対象者70の場合、制御部21は、対象者70に対して、入浴介助や排泄介助のケアが必要となる時間を予測することができる。これにより、介護計画や人員計画を効率的に策定することができる。
【0080】
<パターン3>
制御部21は、抽出した生活パターンに基づいて対象者70を分類する。さらに、制御部21は、対象者70を分類した結果と、記憶部23に記憶されている対象者70の配置に関する情報(
図8参照)に基づいて、スタッフ80のケアに伴う移動距離が小さくなるようにスタッフ80の配置を決定してもよい。あるいは、制御部21は、記憶部23に記憶されている対象者70の配置に関する情報に基づいて、スタッフ80のケアに伴う移動距離が小さくなるように対象者70の配置を決定してもよい。
【0081】
たとえば、制御部21は、ある時間帯においてケアコールを鳴らす可能性が高いAさん、Bさん、Cさんと、そうではないDさん、Eさん、Fさんを、分類することができる。また、制御部21は、ある時間帯において検知されるケアの内容によって対象者70を分類することができる。たとえば、深夜2~3時の間にトイレに行くためにケアコールを鳴らす対象者として、Aさん、Bさん、Cさんを、他の対象者70と区別して分類することができる。
【0082】
そして、上記のように深夜2~3時の間にトイレに行くためにケアコールを鳴らすグループにAさん、Bさん、Cさんが分類された場合、たとえば、制御部21は、深夜2~3時の時間帯におけるスタッフの休憩場所または待機場所として、Aさん、Bさん、Cさんの居室から近い場所を指定することができる。ここで、施設が3階建てであり、各階に待機場所(ナースステーション等)がある場合を例に挙げて説明する。たとえば、Aさん、Bさんの居室が1階にあり、Cさんの居室が2階にある場合、制御部21は、待機場所からAさん、Bさん、Cさんそれぞれの居室までの移動距離の合計が一番短い待機場所を指定(推奨)することができる。さらに、たとえば、排泄(トイレ)の介助においては、おむつの取り換えも発生するため、制御部21は、
図8のようなレイアウト情報を参照して、おむつの保管場所および廃棄場所までの移動距離も考慮して、移動距離の合計が一番短い待機場所を指定してもよい。また、制御部21は、上記の移動距離を算出する際に、階段の昇降等の高さ方向の移動を考慮して算出してもよい。この場合、高さ方向の移動には、昇降にかかる時間や負荷を考慮して所定の重み付けが行われてもよい。上記のような分析結果は、たとえば管理者端末30の表示部33において表示するための情報としてサーバー20から出力される。
【0083】
図11は、管理者端末に表示される画面の例を示す図である。
【0084】
図11に示すように、管理者端末30の表示部33には、生活パターンに基づいて対象者70を分類した結果を示す画面331が表示されている。画面331においては、Aさん、Bさん、Cさんが、深夜2~3時の間にトイレに行くためにケアコールを鳴らすグループに分類されている様子が示されている。
【0085】
また、画面331には、対象者70を分類した結果と、対象者70の配置に関する情報に基づいて、スタッフ80のケアに伴う移動距離が小さくなるように考慮されたスタッフ80の配置に関する情報も表示されている。画面331においては、制御部21によって決定されたスタッフ80の配置に関する情報として、深夜2~3時のスタッフ80の待機場所を「1階おむつ置き場近くの待機場所」とすることが表示されている。なお、制御部21が、スタッフ80のケアに伴う移動距離が小さくなるように対象者70の配置を決定する場合、対象者70の配置の変更に関する情報が画面331に表示される。たとえば、
図11の例では、Cさんを、AさんおよびBさんと同じ1階の居室に変更することが画面331に表示され得る。
【0086】
図12は、見守りシステムにおいて実行される処理を説明するための説明図である。
【0087】
図12に示すように、見守りシステムは、ケア記録およびケアコール記録を含むケア情報を取得し、ケア情報に基づいて、ケアコールの時間分布を含む対象者70の生活パターンを抽出する。見守りシステムは、抽出した生活パターンに基づいて、対象者70からスタッフ80が呼ばれた際に、内容を予測してスタッフ80に提示したり、対象者70からスタッフ80が呼ばれ時間や内容を予測したりする。さらに、見守りシステムは、抽出した生活パターンまたは生活パターンをさらに分析した内容に基づいて、スタッフ80の動線(移動距離・移動経路等)を最適化するように、対象者70の配置やスタッフ80の配置等の施設レイアウトを決定する。
【0088】
以下、具体的な実施例について説明する。
【0089】
<実施例1>
たとえば、制御部21によって、昼食の30分後にトイレに行くという生活パターンが抽出されている状況において、昼食の30分後にケアコールが行われた場合、制御部21は、トイレに関する内容であると予測することができる。さらに、昼食後に対象者70がベッドに横になり、30分後に対象者70が離床したことが検知された場合、制御部21は、対象者70がトイレに行くと予測することができる。ここで、ケアコールの履歴情報のみに基づいて、ケアコールの内容を予測する場合、予測の精度が低いことが問題となる。本実施形態では、生活パターンを抽出して考慮した上でケアコールの内容を予測するため、予測の精度を向上させることができる。
【0090】
<実施例2>
たとえば、制御部は、「対象者70は、トイレに行った後ベッドで横になる」という生活パターンを抽出し、イベント間の相関関係の分析結果として取得することができる。また、制御部21によって、深夜に2回トイレに行くという生活パターンが抽出されている場合、時系列に記録されているケアコールの記録に基づいてケアコールの時間分布を抽出して利用することによって、トイレに行く時間まで予測することができる。
【0091】
<実施例3>
制御部21は、対象者70が入眠前に多量の水分を摂取している場合、睡眠中である夜間帯に、トイレに行くためにケアコールを鳴らす可能性が高くなることを予測することができる。この場合、制御部21は、ケア情報に基づいて抽出された生活パターンから、イベント間の相関関係を分析する。具体的には、制御部21は、ケア情報から食事、水分摂取、排泄、入浴等の各イベントの時間および内容を取得し、たとえば各イベントの頻度について統計を算出することによって、各イベント間の相関度を計算する。その結果として、制御部21は、たとえば、水分摂取と排泄という2つのイベント間の相関が高いと分析することができる。
【0092】
<実施例4>
制御部21は、Aさんからのケアコールを検出した場合、ケア情報から、Aさんの生活パターンを取得する。具体的には、制御部21は、Aさんからのケアコールの時間および内容の傾向を分析し、Aさんが失禁していることを予測する。制御部21は、予測結果をスタッフ80に通知する。これにより、通知を受けたスタッフ80は、Aさんの居室に向かう前に、おむつ置き場に寄って交換用のおむつを取ってから、Aさんの居室に移動して即座におむつ交換することができる。これにより、スタッフ80の効率的な移動および迅速かつスムーズなケアが実現される。
【0093】
たとえば深夜2時にAさんからのケアコールがあった場合、水分摂取介助と排泄介助の両方の内容が考えられ、どちらのケアが必要か判断できない場合がある。この場合、制御部21は、ケア情報から当日の水分摂取量を取得し、所定の基準よりも少なかったら、水分摂取介助の可能性が高く、所定の基準よりも多かったら排泄介助の可能性が高いと判断することができる。
【0094】
<実施例5>
制御部21は、Bさんからのケアコールを検出した場合、ケア情報から、Bさんの生活パターンを取得する。具体的には、制御部21は、Bさんからのケアコールの時間および内容の傾向を分析し、Bさんに必要なケアが入浴介助であることを予測する。制御部21は、予測結果をスタッフ80に通知する。これにより、通知を受けたスタッフ80は、Bさんの居室に向かう前に、お風呂場に寄って空いているか確認してから、Bさんの居室に移動してBさんをお風呂場に連れて行くことができる。これにより、スタッフ80の効率的な移動および迅速かつスムーズなケアが実現される。
【0095】
たとえば16時にBさんからのケアコールがあった場合、入浴介助のケアが必要か、それ以外のケアが必要か判断できない場合がある。この場合、制御部21は、ケア情報から16時にBさんに対して行われているケアの頻度を取得し、取得した頻度に基づいて必要なケアの内容を予測することができる。たとえば、16時にBさんに対して行われたケアとして、入浴介助の回数が、排泄介助等の他の介助の回数よりも多い場合、制御部21は、入浴介助のケアが必要であると予測することができる。また、制御部21は、曜日に関する情報も考慮して必要なケアを予測してもよい。たとえば、制御部21は、ケア情報からBさんが月曜、水曜、金曜に入浴しているという生活パターンを抽出し、ケアコールが行われた曜日と抽出した生活パターンを考慮して、入浴介助のケアが必要であるか否かを予測することができる。
【0096】
<実施例6>
制御部21は、ケア情報から、入居している対象者70全員の生活パターンを取得する。たとえば、制御部21は、Aさん、Bさん、Cさんについて、20時~6時に失禁およびおむつ交換が発生する可能性が高いことを分析する。この場合、制御部21は、Aさん、Bさん、Cさんの配置と施設のレイアウトに応じて、20時~6時におけるスタッフ80の動線が最適化されるようにスタッフ80の配置を決定することができる。
【0097】
たとえば、制御部21は、ある時間帯においてケアコールを鳴らす可能性が高い対象者70であるAさん、Bさん、Cさんとそれ以外とを分類する。あるいは、制御部21は、ケアコールの内容に応じて対象者70を分類してもよい。制御部21は、スタッフ80の待機場所、休憩場所、おむつの保管場所、入浴の場所、食事の場所、各対象者70の居室の場所の配置(建物および階数に関する情報を含む)等の施設のレイアウトに関する情報を考慮して、ケアが効率的に行われるようなスタッフ80または対象者70の配置を提案することができる。
【0098】
以上のように、本実施形態において制御部21は、ケアを要するイベントおよび時間を含むケア情報を取得し、ケア情報に基づいて対象者の生活パターンを抽出する。抽出された生活パターンに基づいて、イベントが発生する時間、イベントの内容、および複数のイベント間の相関関係のうちの少なくとも一つの分析を実行し、分析の結果に関する情報を出力する。これにより、対象者の生活パターンに基づいて、必要な対応を推定または予測したり対象者を分類したりすることができるため、対象者からの呼び出しに対する対応を効率化することができる。
【0099】
また、制御部21は、スタッフ80が対象者70に呼ばれた際に、対象者70に対して必要となるケアの内容を推定する。これにより、必要な対応や物品等を事前に準備してから対象者70のもとに向かうことができるため、スタッフ80の効率的な移動や迅速かつスムーズなケアを実現することができる。
【0100】
また、制御部21は、対象者70に対するケアが必要となる時間およびケアの内容の少なくとも一方を予測する。これにより、スタッフ80の管理者等は、予測に基づいて介護計画や人員計画を効率的に策定することができる。
【0101】
また、制御部21は、生活パターンに基づいて対象者70を分類する。これにより、生活パターンが共通する対象者70をグループ化してまとめることができ、グループごとに効率的なケアを実行することができる。
【0102】
また、制御部21は、対象者70の配置に関する情報および分析された対象者70の分類に基づいて、スタッフ80のケアに伴う移動距離が小さくなるようにスタッフ80の配置を決定する。これにより、スタッフ80の移動距離を極小化して、効率的なケアを実現することができる。
【0103】
また、制御部21は、対象者70の配置に関する情報および分析された対象者70の分類に基づいて、スタッフ80のケアに伴う移動距離が小さくなるように対象者70の配置を決定する。これにより、スタッフ80の移動距離を極小化して、効率的なケアを実現することができる。
【0104】
また、制御部21は、分析の結果に関する情報をスタッフ80のスタッフ端末40に通知する。これにより、スタッフ80は、分析結果を即時に把握することができ、分析結果に基づいて効率的なケアを実行することができる。
【0105】
以上に説明した見守りシステム1の構成は、上述の実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上述の構成に限られず、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。また、一般的な見守りシステムが備える構成を排除するものではない。
【0106】
例えば、サーバー20が有する機能の一部または全部を、管理者端末30、スタッフ端末40または検出部10が備えるようにしてもよい。
【0107】
また、検出部10、サーバー20、管理者端末30およびスタッフ端末40は、それぞれ複数の装置により構成されてもよく、あるいはいずれかの装置が他の装置に含まれて単一の装置として構成されてもよい。
【0108】
また、上述したフローチャートは、一部のステップを省略してもよく、他のステップが追加されてもよい。また各ステップの一部は同時に実行されてもよく、一つのステップが複数のステップに分割されて実行されてもよい。また各ステップの実行順序が変更されてもよい。
【0109】
また、上記において説明した処理のパターンや実施例は、互いに組み合わせられて実施されてもよく、あるいは、それぞれについて、他の内容が追加されて実施されたり、一部の内容が省略されて実施されたりしてもよい。
【0110】
また、上述した実施形態に係る見守りシステム1における各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、例えば、USBメモリやDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、一機能としてその検出部等の装置のソフトウエアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 見守りシステム、
10 検出部、
11 制御部、
12 通信部、
13 カメラ、
14 ナースコール部、
15 音声入出力部、
20 サーバー、
21 制御部、
22 通信部、
23 記憶部、
30 管理者端末、
31 制御部、
32 通信部、
33 表示部、
34 入力部、
40 スタッフ端末、
41 制御部、
42 無線通信部、
43 表示部、
44 入力部、
45 音声入出力部、
46 位置取得部、
50 ネットワーク、
51 アクセスポイント、
60 ベッド、
70 対象者、
80 スタッフ、
90 管理者。