(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】コイル、送電装置及び受電装置並びに電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20241217BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241217BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H01F38/14
(21)【出願番号】P 2020111373
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】岡部 将人
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-110207(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172331(WO,A1)
【文献】特開2020-013810(JP,A)
【文献】特開2018-207060(JP,A)
【文献】特開2020-027881(JP,A)
【文献】特開2013-229401(JP,A)
【文献】特開2019-198219(JP,A)
【文献】特表2016-539516(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0363565(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0252768(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108270078(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02J 7/00
H01F 38/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触型電力伝送用のコイルにおいて、
当該コイルを構成する巻回線が、当該巻回線の巻回方向に並行し且つそれぞれが薄膜導体からなる複数の並行巻回線により構成されており、
一の前記巻回線を構成する前記並行巻回線の前記巻回方向に垂直な方向の間隔と、隣接する前記巻回線の当該垂直な方向の間隔と、の和が、少なくとも前記コイルによる電力伝送の周波数に対応した閾値長さより長いことを特徴とするコイル。
【請求項2】
非接触型電力伝送用のコイルにおいて、
当該コイルを構成する巻回線が、当該巻回線の巻回方向に並行し且つそれぞれが薄膜導体からなる複数の並行巻回線により構成されており、
一の前記巻回線を構成する前記並行巻回線の前記巻回方向に垂直な方向の間隔と、隣接する前記巻回線の当該垂直な方向の間隔と、の和が、少なくとも前記コイルによる電力伝送の周波数に対応した閾値長さより長く、
一の前記巻回線は二の前記並行巻回線により構成されており、
一の前記巻回線において、前記コイルの内周側の前記並行巻回線の幅が、当該コイルの外周側の前記並行巻回線の幅より広いことを特徴とするコイル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコイルにおいて、
前記巻回線は、当該コイルの外周側から内周側に向けて巻回された前記並行巻回線により構成される外内巻回線と、前記内周側から前記外周側に向けて巻回された前記並行巻回線により構成される内外巻回線と、により構成されていることを特徴とするコイル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコイルにおいて、
前記巻回線が積層構造とされていることを特徴とするコイル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコイルにおいて、
前記周波数が85キロヘルツである場合に、
前記巻回線の巻回における前記垂直な方向の前記閾値長さが4.5ミリメートルであることを特徴とするコイル。
【請求項6】
請求項5に記載のコイルにおいて、
隣接する前記巻回線の前記垂直な方向の間隔が2ミリメートル以上であることを特徴とするコイル。
【請求項7】
送電装置と、当該送電装置から離隔した受電装置と、により構成され、前記送電装置から非接触で前記受電装置に電力を伝送する電力伝送システムに含まれる前記送電装置において、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の前記コイルである送電コイルであって、前記受電装置に対向して配置される送電コイルと、
伝送すべき電力を前記送電コイルに出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする送電装置。
【請求項8】
送電装置と、当該送電装置から離隔した受電装置と、により構成され、前記送電装置から非接触で前記受電装置に電力を伝送する電力伝送システムに含まれる前記受電装置において、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の前記コイルである受電コイルであって、前記送電装置に対向して配置される受電コイルと、
当該受電コイルに接続された入力手段と、
を備えることを特徴とする受電装置。
【請求項9】
請求項7に記載の送電装置と、
当該送電装置から離隔し、且つ前記送電コイルに対向して配置される受電装置であって、前記送電装置から送信された電力を受電する受電装置と、
を備えることを特徴とする非接触型の電力伝送システム。
【請求項10】
送電装置と、
請求項8に記載の受電装置であって、前記送電装置から離隔し且つ前記受電コイルが当該送電装置に対向して配置され、前記送電装置から送信された電力を受電する受電装置と、
を備えることを特徴とする非接触型の電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル、送電装置及び受電装置並びに電力伝送システムの技術分野に属し、より詳細には、非接触型電力伝送用のコイル及び当該コイルを用いた非接触型の送電装置及び受電装置並びに電力伝送システムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばリチウムイオン電池等からなる蓄電池を搭載した電気自動車が普及しつつある。このような電気自動車では、蓄電池に蓄えた電力を使ってモータを駆動して移動することとなるため、蓄電池への効率のよい充電が求められる。そこで、電気自動車に対して充電用プラグ等を物理的に接続することなくそれに搭載されている蓄電池を充電する方法として、互いに離隔して対向された受電コイルと送電コイルを用いる、いわゆるワイヤレス電力伝送に関する研究が行われている。ワイヤレス電力伝送の方式としては、一般には、電界結合方式、電磁誘導方式及び磁界共鳴方式等がある。これらの方式を、例えば送受電される電力の周波数、水平及び垂直それぞれの方向の位置自由度並びに伝送効率等の観点から比較した場合、電気自動車に搭載されている蓄電池を充電するためのワイヤレス電力伝送の方式としては、コンデンサを使った電界結合方式又はコイルを使った磁界共鳴方式が有望視されており、これらに対する研究開発も活発に行われている。このような背景技術を開示した先行技術文献としては、例えば下記特許文献1が挙げられる。この特許文献1には、1回巻き(1ターン)のループコイルと、5.5回巻き(5.5ターン)のオープンコイルと、を用いて磁界共鳴方式により電力伝送を行うコイルが開示されている。
【0003】
一方、上記ワイヤレス電力伝送により送受電される電力の周波数は、それを担う機器ごとに例えば法律により予め定められており、上記電気自動車に対する電力伝送の場合には85キロヘルツの高周波とされている。ここで一般に、高周波の電流を導体に流すと、その電流密度は、導体の表面で高く、表面からその中心に向かうほど低くなることが知られている。またこの点については、電流の周波数が高くなるほど電流が表面へ集中することとなるので、この結果として、その導体の交流抵抗は高くなってしまう。この現象は、いわゆる「導体の表皮効果」として知られているところである。なお以下の説明において、高周波の電流を導体に流す際の当該導体における交流抵抗を、単に「インピーダンス」と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
他方、電気自動車用の上述したワイヤレス電力伝送(非接触給電)では、高周波(例えば上記85キロヘルツ)の電流を用いつつ最小でも3.7キロワットの高出力の電力を伝送すること(即ちコイルに流すこと)が必要とされる。よって、この様な高出力の電力(電流)を流す結果として上記表皮効果によって導体(コイル)の抵抗が高くなると、ジュール熱の発生によりコイルとしての損失が大きくなり、ワイヤレス電力伝送としての効率を低下させてしまうという問題点があった。
【0006】
また、上記表皮効果と同様にワイヤレス電力伝送としての効率を低下させてしまう電気的な現象としては、コイルとしての巻回において導体同士が近接することに起因する、いわゆる「導体の近接効果」が挙げられる。よって、この近接効果による抵抗の上昇についても、対策を講じる必要がある。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点及び要請に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、例えば85キロヘルツ等の高周波の電流を用いる場合でもワイヤレス電力伝送としての効率を向上させること等が可能なコイル及び当該コイルを用いた非接触型の送電装置及び受電装置並びに電力伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、非接触型電力伝送用のコイルにおいて、当該コイルを構成する巻回線が、当該巻回線の巻回方向に並行し且つそれぞれが薄膜導体からなる複数の並行巻回線により構成されており、一の前記巻回線を構成する前記並行巻回線の前記巻回方向に垂直な方向の間隔と、隣接する前記巻回線の当該垂直な方向の間隔と、の和が、少なくとも前記コイルによる電力伝送の周波数に対応した閾値長さより長いように構成されている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、その巻回方向に並行し且つ薄膜導体からなる複数の並行巻回線により巻回線を構成する場合に、一の巻回線を構成する並行巻回線の巻回方向に垂直な方向の間隔と、隣接する巻回線の当該垂直な方向の間隔と、の和が、少なくとも電力伝送の周波数に対応した長さより長くなっている。よって、軽量化及び低コスト化のために並行巻回線を薄膜導体により形成することに起因する、いわゆる表皮効果又は近接効果によるコイルとしてのインピーダンスを低減することができ、軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、を両立させることができる。
【0010】
上記の課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、非接触型電力伝送用のコイルにおいて、当該コイルを構成する巻回線が、当該巻回線の巻回方向に並行し且つそれぞれが薄膜導体からなる複数の並行巻回線により構成されており、一の前記巻回線を構成する前記並行巻回線の前記巻回方向に垂直な方向の間隔と、隣接する前記巻回線の当該垂直な方向の間隔と、の和が、少なくとも前記コイルによる電力伝送の周波数に対応した閾値長さより長く、一の前記巻回線は二の前記並行巻回線により構成されており、一の前記巻回線において、前記コイルの内周側の前記並行巻回線の幅が、当該コイルの外周側の前記並行巻回線の幅より広いように構成されている。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、その巻回方向に並行し且つ薄膜導体からなる複数の並行巻回線により巻回線を構成する場合に、一の巻回線を構成する並行巻回線の巻回方向に垂直な方向の間隔と、隣接する巻回線の当該垂直な方向の間隔と、の和が、少なくとも電力伝送の周波数に対応した長さより長くなっている。よって、軽量化及び低コスト化のために並行巻回線を薄膜導体により形成することに起因する、いわゆる表皮効果又は近接効果によるコイルとしてのインピーダンスを低減することができ、軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、を両立させることができる。また、一の巻回線が二の並行巻回線により構成されており、一の巻回線において、コイルの内周側の並行巻回線の幅が、コイルの外周側の並行巻回線の幅より広くなっているので、コイルとしてのインピーダンスを低減することができることで、軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、を両立させることができる。
【0012】
上記の課題を解決するために、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のコイルにおいて、前記巻回線は、当該コイルの外周側から内周側に向けて巻回された前記並行巻回線により構成される外内巻回線と、前記内周側から前記外周側に向けて巻回された前記並行巻回線により構成される内外巻回線と、により構成されている。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用に加えて、巻回線が外内巻回線と内外巻回線とにより構成されているので、コイルとしてのインピーダンスをより低減することができる。
【0014】
上記の課題を解決するために、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコイルにおいて、前記巻回線が積層構造とされている。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、巻回線が積層構造とされているので、コイルを構成する巻回線としての断面積を増やすことで、コイルとしてのインピーダンスを更に低減することができる。
【0016】
上記の課題を解決するために、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコイルにおいて、前記周波数が85キロヘルツである場合に、前記巻回線の巻回における前記垂直な方向の前記閾値長さが4.5ミリメートルであるように構成されている。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、電力伝送の周波数が85キロヘルツである場合に、一の巻回線を構成する並行巻回線の巻回方向に垂直な方向の間隔と、隣接する巻回線の当該垂直な方向の間隔と、の和が閾値長さとしての4.5ミリメートルより長いので、巻回線の構造を最適化してコイルとしてのインピーダンスをより低減することができる。
【0018】
上記の課題を解決するために、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のコイルにおいて、隣接する前記巻回線の前記垂直な方向の間隔が2ミリメートル以上であるように構成されている。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明の作用に加えて、隣接する巻回線のその巻回方向に垂直な方向の間隔が2ミリメートル以上であるので、巻回線の構造を最適化してコイルとしてのインピーダンスをより低減することができる。
【0020】
上記の課題を解決するために、請求項7に記載の発明は、送電装置と、当該送電装置から離隔した受電装置と、により構成され、前記送電装置から非接触で前記受電装置に電力を伝送する電力伝送システムに含まれる前記送電装置において、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の前記コイルである送電コイルであって、前記受電装置に対向して配置される送電コイルと、伝送すべき電力を前記送電コイルに出力する出力手段と、を備える。
【0021】
上記の課題を解決するために、請求項8に記載の発明は、送電装置と、当該送電装置から離隔した受電装置と、により構成され、前記送電装置から非接触で前記受電装置に電力を伝送する電力伝送システムに含まれる前記受電装置において、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の前記コイルである受電コイルであって、前記送電装置に対向して配置される受電コイルと、当該受電コイルに接続された入力手段と、を備える。
【0022】
上記の課題を解決するために、請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の送電装置と、当該送電装置から離隔し、且つ前記送電コイルに対向して配置される受電装置であって、前記送電装置から送信された電力を受電する受電装置と、を備える。
【0023】
上記の課題を解決するために、請求項10に記載の発明は、送電装置と、請求項8に記載の受電装置であって、前記送電装置から離隔し且つ前記受電コイルが当該送電装置に対向して配置され、前記送電装置から送信された電力を受電する受電装置と、を備える。
【0024】
請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の発明によれば、電力伝送システムを構成する送電装置に備えられた送電コイル又は受電装置に備えられた受電コイルの少なくともいずれか一方が請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のコイルであるので、当該送電コイル又は当該受電コイルを対向させて非接触型の電力伝送を行った場合に、上記表皮効果又は上記近接効果によるコイルとしてのインピーダンスを低減することができ、軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、を両立させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、その巻回方向に並行し且つ薄膜導体からなる複数の並行巻回線により巻回線を構成する場合に、一の巻回線を構成する並行巻回線の巻回方向に垂直な方向の間隔と、隣接する巻回線の当該垂直な方向の間隔と、の和が、少なくとも電力伝送の周波数に対応した長さより長くなっている。
【0026】
従って、軽量化及び低コスト化のために並行巻回線を薄膜導体により形成することに起因する、いわゆる表皮効果又は近接効果によるコイルとしてのインピーダンスを低減することができ、軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態の電力伝送システムの概要構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態の送電コイルの構造を示す平面図である。
【
図3】実施形態の送電コイル及び受電コイルの構造による効果としてのインピーダンスと周波数との関係を示す図である。
【
図4】実施形態の送電コイル及び受電コイルの構造と当該構造による効果としてのインピーダンスとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明を実施するための形態について、
図1乃至
図4を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態及び変形形態は、電気自動車に搭載されている蓄電池を充電するための電力を、当該蓄電池を備えた電気自動車に対して磁界共鳴方式により非接触で電送する電力伝送システムに対して、本発明を適用した場合の実施形態及び変形形態である。
【0029】
ここで、実施形態及び変形形態の磁界共鳴方式による電力伝送システムは、電力を送る後述の送電コイルと、当該送電コイルから離隔して向き合うように(即ち対向するように)配置され且つ送電コイルから送られた電力を受電する後述の受電コイルと、を備える。
【0030】
(I)
実施形態の電力伝送システムの全体構成及び動作について
先ず、実施形態の電力伝送システムの全体構成及び動作について、
図1を用いて説明する。なお
図1は、実施形態の電力伝送システムの概要構成を示すブロック図である。
【0031】
図1に示すように、実施形態の電力伝送システムSは、受電部RV及び上記受電コイルRCを備えた受電装置Rと、送電部TR及び上記送電コイルTCを備えた送電装置Tと、により構成されている。このとき受電装置Rは上記電気自動車に搭載され、且つ当該電気自動車に搭載されている図示しない蓄電池に接続されている。一方送電装置Tは、当該電気自動車が移動又は停車する位置の地面に設置されている。そして、当該蓄電池を充電する場合、受電装置Rの受電コイルRCと送電装置Tの送電コイルTCとが対向するように電気自動車が運転又は停車される。なお、実施形態の電力伝送システムSによる上記蓄電池の充電に際しては、停車している電気自動車に搭載されている受電装置Rに対して、その停車位置の下方の地面に設置された送電装置Tの送電コイルTCを介して、当該送電装置Tから電力を伝送するように構成することができる。またこの他、移動中の電気自動車に搭載されている受電装置Rに対して、その電気自動車が移動している道路の一定距離の区間に設置された複数の送電装置Tの送電コイルTCを介して、当該送電装置Tから連続的に電力を伝送するように構成してもよい。このとき、送電部TRが本発明の「出力手段」の一例に相当し、受電部RVが本発明の「入力手段」の一例に相当する。
【0032】
一方上記送電コイルTCには、送電すべき電力が送電部TRから入力される。そして受電コイルRCは、磁界共鳴方式により送電コイルTCから受電した電力を受電部RVに出力する。このとき、送電コイルTC又は受電コイルRCが本発明の「コイル」の一例にそれぞれ相当する。
【0033】
以上の構成において、送電装置Tの送電部TRは、例えば電力伝送システムSが用いられる国における電波法等の法規等に対応しつつ、受電装置Rに伝送すべき電力を送電コイルTCに出力する。このとき上記法規等は、例えば人体への影響を考慮して漏洩磁界が予め決められた所定のレベル以下になるように規制している。また、全ての送電装置Tと上記受電装置Rとの間における相互接続利用が可能となるためには、結果的に、両者が予め決められた所定範囲の周波数を利用する必要があり、このため上記所定範囲の周波数又は周波数帯域は、上記法規等としてのISO(International Organization for Standardization)又はIEC(International Electrotechnical Commission)等の国際機関の推奨に従う必要がある。また、送電コイルTCと受電コイルRCとの間の所定の位置ずれも考慮した伝送効率の下限値も上記国際機関又は上記法規等により規定されているため、電力伝送システムSとしても高い電力伝送効率が要求される。
【0034】
一方、上記磁界共鳴方式により送電コイルTCからの電力を受電した受電装置Rの受電コイルRCは、当該受電した電力を受電部RVに出力する。これにより受電部RVは、当該電力に対応した出力(例えば、上記85キロヘルツの高周波電力となる)を、例えば図示しない電力変換ユニットによりDC(直流)電流に変換し、電気自動車の蓄電池に出力する。これにより当該蓄電池には、必要量の電力が充電される。
【0035】
(II)
送電コイルTC(受電コイルRC)の構成について
次に、上述した実施形態の電力伝送システムSに用いられる、実施形態の送電コイルTC及び受電コイルRCの構成について、
図2を用いて説明する。なお、実施形態の送電コイルTCと受電コイルRCとは、基本的に同じ構成を備える。よって以下の説明では、送電コイルTCについて、その構造を説明する。また、
図2は実施形態の送電コイルTCの構造を示す平面図であり、送電装置Tにおいて、送電部TR側から送電コイルTCを見た場合(
図1参照)の平面図である。
【0036】
図2にその平面図を示すように、実施形態の送電コイルTCは、後述する並行する二本の例えば銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2が並行して巻回されてなる巻回線TLが、絶縁性のフィルムBF(詳細は後述する)上に積層されて構成される。この構成において、銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2のそれぞれが、本発明の「並行巻回線」の一例に相当する。ここで実施形態では、送電コイルTCの積層のためにフィルムBFを用いているが、これらの他に、ガラスエポキシ材料等の絶縁性の材料を用いることもできる。また、送電コイルTCとして発生した熱を効率良く放熱するため、例えばセラミック粒子等を分散した薄膜化材料を用いることもできる。更にまた、巻回線TLを構成する銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2の巻回の中心は、各巻回において相互に同一又は略同一とされている。
【0037】
図2に示すように、送電コイルTCは、同じ層内を相互に並行して巻回されている銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2からなる巻回線TLの巻回により構成されており、その最外周部の一辺に、銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2を接続すると共に巻回線TLを送電部TRに接続するための接続用端子O1及び接続用端子O2を有している。そして送電コイルTCは、並行する銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2からなる巻回線TLが六回転(6ターン)巻回されて構成されており、銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2それぞれ(即ち巻回線TL)の両端部(
図2に示す場合は右辺部の中央)が上記接続用端子O1及び上記接続用端子O2とされている。なお
図2に例示する場合の上記銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2のそれぞれは、巻回線TLの全周に渡って同一幅及び同一厚さとされている。更に巻回線TLとしては、
図2におけるその上辺部、下辺部、左辺部及び右辺部それぞれに直線部が設けられており、それぞれの直線部が、略同心円弧状の曲線部により接続されている。また、銅薄膜線TL1と銅薄膜線TL2との交差部分は、絶縁層を挟んだ積層構造(
図2参照)又はジャンパ線を用いる方法等により、当該銅薄膜線TL1と銅薄膜線TL2との間は絶縁されつつ、相互に交差されている。なお後述するように、実施形態の送電コイルTC又は受電コイルRCでは、
図2に示す銅薄膜線TL1の幅W1及び銅薄膜線TL2の幅W2、並びに巻回線TLの一巻回における銅薄膜線TL1と銅薄膜線TL2との間の間隔SPL及び相隣接する巻回線TL間の間隔SPTを様々に変更した場合において、送電コイルTC又は受電コイルRCとしてのインピーダンスを低くするように、上記幅W1及び上記幅W2並びに上記間隔SPL及び上記間隔SPTを最適化している。
【0038】
(III)送電コイルTC及び受電コイルRCの製造方法について
次に、実施形態の送電コイルTC及び受電コイルRCの製造方法について、その概要を説明する。
【0039】
当該製造方法としては、一般的なプリント基板の製造工程、即ち下記(1)乃至(5)の各工程を含む製造方法等を用いることができる。このとき、当該製造工程に用いられる材料としては、例えば、ガラスエポキシ基板の両面に銅が予め積層された銅張積層板を用いることができる。以下の説明では、当該銅張積層板を、単に「CCL(Copper Clad Laminate)」と称する。
(1)上記CCLにおける両面の銅を接合する(導通させる)箇所にドリルで穴を空け、無電解めっき→電界めっきの順に銅を積層して上記両面の銅を表と裏で電気的に接合する。(いわゆるThrough holeを形成する)
(2)上記(1)で形成された銅薄膜の一方の面上にレジストを塗布
(3)上記(2)で塗布したレジストを銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2(接続用端子O1及び接続用端子O2を含む)にパターニング
(4)上記(3)のパターニング後にエッチング処理を施し、巻回線TLとしての銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2を形成
(5)接続用端子O1及び接続用端子O2と、送電部TR(送電装置Tの場合)又は受電部RV(受電装置Rの場合)とを接続
【実施例】
【0040】
次に、
図2に示す構成を基本とする実施形態の送電コイルTC又は受電コイルRCにおいて、上記幅W1及び上記幅W2並びに上記間隔SPL及び上記間隔SPTを種々の値に変更してインピーダンスを計測した結果(シミュレーション結果)について、
図3及び
図4を用いて説明する。なお、
図3は実施形態の送電コイルTC又は受電コイルRCの構造による効果としてのインピーダンスと周波数との関係を示す図であり、
図4は当該送電コイルTC又は受電コイルRCの構造とその効果としてのインピーダンスとの関係を示す図である。
【0041】
このとき
図3は、その大きさ(
図2参照)が縦280ミリメートル×横280ミリメートルであり、巻回線TLの巻回方向に垂直な方向のピッチPT(
図2参照)が16ミリメートル(巻回線TLとしては六回転(6ターン))である送電コイルTC又は受電コイルRCにおいて、上記幅W1及び上記幅W2並びに上記間隔SPL及び上記間隔SPTを種々の値に変更した場合の、電力伝送の周波数と、上記幅W1と上記幅W2との和にインピーダンスを乗じた値との関係を示している。なお以下の説明において、上記幅W1と上記幅W2との和を、単に「幅(W1+W2)」と示す。そして例えば、
図3における連続する▲印は、上記幅W1及び上記幅W2が共に6ミリメートルであり且つ上記間隔SPL及び上記間隔SPTが共に2ミリメートルである送電コイルTC又は受電コイルRCにおける、当該周波数と、幅(W1+W2)にインピーダンスを乗じた値との関係を示している。また例えば、連続する*印は、上記幅W1が7ミリメートルであり上記幅W2が3ミリメートルであると共に上記間隔SPL及び上記間隔SPTが共に3ミリメートルである送電コイルTC又は受電コイルRCにおける、当該周波数と、幅(W1+W2)にインピーダンスを乗じた値との関係を示している。このとき、
図3の凡例では、「(▲印等)(幅W2(内周側)の値)_(間隔SPLの値)_(幅W1(外周側)の値)_(間隔SPTの値)」の形式で、各構造を示している。また、連続する「-」印で示される「12_4」は、巻回線が幅12ミリメートルの単線であり、当該巻回線の間隔が4ミリメートルである構造を示している。
【0042】
一方
図4は、
図3に示す送電コイルTCの各構造について、上記間隔SPLと上記間隔SPTの和(
図4における横軸)と、幅(W1+W2)にインピーダンスを乗じた値(
図4における縦軸)との関係を示している。
【0043】
ここで上述したように、実施形態の送電コイルTC又は受電コイルRCでは、電力伝送が85キロヘルツの伝送周波数で行われる。このとき、例えば10キロワットの電力を伝送する場合に、送電コイルTC又は受電コイルRCに40~50Arms(Ampere root mean square)程度の電流が流れることを想定する。この条件下において、伝送周波数が85キロヘルツの場合における上記インピーダンスが0.05オームであるとすると、送電コイルTC又は受電コイルRCにおける損失の割合は0.8%乃至1.25%となる。そして、送電コイルTC又は受電コイルRCにおける伝送効率を考慮すると、その損失は上記の値以下に抑えられるのが好ましい。更に、送電コイルTC又は受電コイルRC自体の軽量化と銅材料の有効利用の観点からは、上述した損失等に関する条件下では、上記インピーダンスと幅(W1+W2)との積が0.5オーム・ミリメートル以下であることが好ましい。そこで、
図3及び
図4に示される実験結果に基づき、伝送周波数が85キロヘルツである場合の幅(W1+W2)とインピーダンスとの積を、送電コイルTCの構造ごとに纏めると、以下の表1のようになる。なお、表1においては、送電コイルTC等のインピーダンスと幅(W1+W2)との積が0.5オーム・ミリメートル以上となる構造は、ハッチングで示されている。
【表1】
【0044】
以上の
図3及び
図4並びに上記表1に示される結果から、実施形態の送電コイルTC及び受電コイルRCの構造として適切(即ち、電力伝送の周波数が85キロヘルツの場合に、インピーダンスと幅(W1+W2)との積が0.5オーム・ミリメートル未満)な構造は、以下の(i)から(vii)の七通りであることが判る。
(i)幅W2:4ミリメートル、間隔SPL:4ミリメートル、幅W1:4ミリメートル、間隔 SPT:4ミリメートル
(ii)幅W2:6ミリメートル、間隔SPL:3ミリメートル、幅W1:4ミリメートル、間隔 SPT:3ミリメートル
(iii)幅W2:3ミリメートル、間隔SPL:3ミリメートル、幅W1:3ミリメートル、間 隔SPT:7ミリメートル
(iv)幅W2:8ミリメートル、間隔SPL:3ミリメートル、幅W1:2ミリメートル、間隔 SPT:3ミリメートル
(v)幅W2:9ミリメートル、間隔SPL:3ミリメートル、幅W1:1ミリメートル、間隔 SPT:3ミリメートル
(vi)幅W2:9.5ミリメートル、間隔SPL:3ミリメートル、幅W1:0.5ミリメート ル、間隔SPT:3ミリメートル
(vii)幅W2:8ミリメートル、間隔SPL:3ミリメートル、幅W1:3ミリメートル、間 隔SPT:2ミリメートル
【0045】
ここで上述したように、伝送周波数が大きく(高く)なった場合に、インピーダンスが増加する原因として上記表皮効果及び上記近接効果があるわけであるが、当該近接効果に注目し、上記間隔SPLと間隔SPTの和と、幅(W1+W2)とインピーダンスとの積と、の関係を
図4で確認すると、間隔SPLと間隔SPTの合計値が4.5ミリメートル付近未満で幅(W1+W2)とインピーダンスとの積が急激に上昇していることが判る。このことから、この伝送周波数(85キロヘルツ)では、間隔SPLと間隔SPTの合計値を4.5ミリメートル以下にすることが好ましいことが判る。なお、実施形態では、上記ピッチPTを16ミリメートルと統一したが、間隔SPL及びに間隔SPTによりインピーダンスが変動する原因は、主として近接効果によるものと推定されるため、上記ピッチPTが変化しても、同様の効果が得られると考えられる。
【0046】
一方、間隔SPLと間隔SPTの和を4.5ミリメートルとするとき、上記ピッチPTが狭すぎると、必要な電流を流すだけの銅薄膜線TL1の幅W1又は銅薄膜線TL2の幅W2が得られないため、巻回数の半分以上において必要な当該幅W1及び当該幅W2を確保するためには、上記ピッチPTを9ミリメートル以上とする必要がある。また、上記表1等において間隔SPLと間隔SPTとの関係を詳しく見てみると、間隔SPTは、間隔SPLと同じか、又は当該間隔SPL以上にすることが望ましい。即ち、間隔SPLと間隔SPTとの和の観点から見ると、
図4に例示されるように、当該和が4.5ミリメートルより長ければ、実施形態の送電コイルTC及び受電コイルRCの構造として適切であることになる。
【0047】
以上説明したように、実施形態の送電コイルTC及び受電コイルRCを含む実施形態の電力伝送システムSを用いた電力伝送によれば、その巻回方向に並行する銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2により巻回線TLを構成する場合に、一の巻回線TLを構成する銅薄膜線TL1と銅薄膜線TL2との巻回方向に垂直な方向の間隔SPLと、隣接する巻回線TLの当該垂直な方向の間隔SPTと、の和が、電力伝送の周波数たる85キロヘルツに対応した長さ4.5ミリメートルより長くなっている。よって、軽量化及び低コスト化のために並行する銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2により巻回線TLを構成することに起因する、いわゆる表皮効果又は近接効果による送電コイルTC又は受電コイルRCとしてのインピーダンスを低減することができ、電力伝送システムSとしての軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、を両立させることができる。
【0048】
ここで、一の巻回線TLが銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2により形成されており、一の巻回線TLにおいて、送電コイルTC又は受電コイルRCの内周側の銅薄膜線TL2の幅W2が、送電コイルTC又は受電コイルRCの外周側の銅薄膜線TL1の幅W1より広く形成してもよい(
図3における、「6_3_4_3」、「7_3_3_3」、「8_3_2_3」、「9_3_1_3」、「9.5_3_0.5_3」及び「8_3_3_2」それぞれの場合)。この場合でも、送電コイルTC又は受電コイルRCとしてのインピーダンスを低減することができることで、軽量化及び低コスト化と、伝送効率の向上及び動作温度の上昇の防止と、をより両立させることができる。
【0049】
また、巻回線TLが外側から内側に巻回する巻回線と内側から外側に巻回する巻回線とにより構成されているので、送電コイルTC又は受電コイルRCとしてのインピーダンスをより低減することができる。
【0050】
更に、電力伝送の周波数が85キロヘルツである場合に、上記間隔SPLと上記間隔SPTとの和が4.5ミリメートルより長いので、巻回線TLの構造を最適化して送電コイルTC又は受電コイルRCとしてのインピーダンスをより低減することができる。
【0051】
更にまた、上記間隔SPTが2ミリメートル以上である場合(
図3における、「6_3_4_3」、「7_3_3_3」、「8_3_2_3」、「9_3_1_3」及び「9.5_3_0.5_3」及び「8_3_3_2」それぞれの場合)には、巻回線TLの構造を最適化して送電コイルTC又は受電コイルRCとしてのインピーダンスをより低減することができる。
【0052】
なお、上述した実施形態の送電コイルTC又は受電コイルRCでは巻回線TLを一層構造としたが、これ以外に、相互に同様の構成を備える二以上の巻回線TLを、フィルムBF等の絶縁層を挟んで一方の面から見て同じ位置となるように二層以上積層した構造とし、それぞれの接続用端子O1及び接続用端子O2を送電部TR(送電装置Tの場合)又は受電部RV(受電装置Rの場合)に接続するように構成してもよい。この場合には、巻回線TLが積層構造とされているので、送電コイルTC又は受電コイルRCを構成する巻回線TLとしての断面積を増やすことで、送電コイルTC又は受電コイルRCとしてのインピーダンスを更に低減することができる。
【0053】
また、上述した実施形態の送電コイルTC又は受電コイルRCでは、巻回線TLを銅薄膜線TL1及び銅薄膜線TL2から構成したが、これ以外に、一の巻回線を三以上の銅薄膜線により構成し、それぞれの間隔及び巻回線同士の間隔を、電力伝送の周波数に対して最適化するように構成してもよい。この場合には、巻回線が三以上の銅薄膜線により構成されているので、送電コイル又は受電コイルを構成する巻回線としての断面積を更に増やすことで、送電コイル又は受電コイルとしてのインピーダンスを更に低減することができる。
【変形形態】
【0054】
次に、本発明の変形形態について説明する。上述した各実施形態の電力伝送システムの構成については、以下の(A)乃至(D)に示すような変形を加えてもよい。本発明では、当該各変形を加えても、上記電力伝送システムと同等の効果を奏し得る。
【0055】
(A)第1変形形態
先ず第1変形形態として、実施形態の送電コイルCL又は受電コイルRCでは、上記幅W1及び上記幅W2を巻回線TLの全周に渡って同じとしたが、これら以外に、送電コイルTC又は受電コイルRCの外周から内周にかけてこれらの幅を広くするように構成してもよい。この場合には、巻回線を構成する二本の銅薄膜線の幅を加算した幅も、送電コイルTC又は受電コイルRCの内周側ほど広くなることになる。
【0056】
(B)第2変形形態
次に第2変形形態として、上述した実施形態において送電コイルTC又は受電コイルRCを二層以上の巻回線TLにより構成する場合に、当該二層以上の巻回線TLの各巻回の送電コイルTC又は受電コイルRCの径方向の位置は、実施形態の場合のように当該二層以上の巻回線TL間で同一であってもよいし、異なっていてもよい。これらの場合のいずれでも、二層以上の巻回線TLが積層されていれば、上記電力伝送システムSと同等の効果を奏し得る。
【0057】
(C)
第3変形形態
次に第3変形形態として、上記実施形態における接続用端子O1及び接続用端子O2と送電コイルTC(又は受電コイルRC)との接続態様については、実施形態の構成、即ち、巻回線TLの両端部がその最外周部で接続用端子O1及び接続用端子O2にそれぞれ接続されている構成の他に、巻回線の巻回としては最外周部から最内周部に向けて一方向(例えば反時計方向)に巻回させ、最外周部にある端部を例えば接続用端子O1に接続すると共に、最内周部から絶縁層を挟んだ積層構造(
図2参照)又はジャンパ線等により最外周部に引き出した巻回線の端部を例えば接続用端子O2に接続するように構成してもよい。
【0058】
(D)第4変形形態
最後に第4変形形態として、電力伝送システムSでは、送電コイルTCと受電コイルRCとを同一の構造とする場合について説明したが、これ以外に、電力伝送システムを構成する送電コイル又は受電コイルのいずれか一方のみが、実施形態の送電コイルTC又は受電コイルRCと同一の構造を有するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上それぞれ説明したように、本発明は非接触の電力伝送の分野に利用することが可能であり、特に電気自動車に搭載された蓄電池を充電するための電力伝送の分野に適用すれば特に顕著な効果が得られる。
【符号の説明】
【0060】
S 電力伝送システム
R 受電装置
T 送電装置
RV 受電部
RC 受電コイル
TR 送電部
TC 送電コイル
TL 巻回線
TL1、TL2 銅薄膜線
O1、O2 接続用端子
BF フィルム