(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】印刷制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20241217BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20241217BHJP
B41J 29/393 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
H04N1/00 912
G06F3/12 304
G06F3/12 305
G06F3/12 334
G06F3/12 344
G06F3/12 360
B41J29/393 105
(21)【出願番号】P 2020149523
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】別役 昂志
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-020396(JP,A)
【文献】特開2012-135958(JP,A)
【文献】特開2003-312106(JP,A)
【文献】特開2011-005671(JP,A)
【文献】特開2014-119676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
G06F 3/12
B41J 29/393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
ジョブを連続して実行する場合において、ジョブの実行結果として得られる印刷物に対する検査結果を取得し、
検査で不合格の印刷物が検出された場合、まだ実行していない複数のジョブの中から不合格の印刷物が得られた原因の影響を受けないジョ
ブを実行さ
せ、
前記原因の影響を受けるジョブそれぞれの納期に関する属性に応じて当該ジョブの実行を制御する、
ことを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前
記原因の影響を受けるジョブ
に短納期が要求されている場合には当該ジョブを実行させることを特徴とする請求項
1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは
、
ジョブを連続して実行する場合において、ジョブの実行結果として得られる印刷物に対する検査結果を取得し、
検査で不合格の印刷物が検出された場合、まだ実行していない複数のジョブの中から不合格の印刷物が得られた原因の影響を受けないジョブを実行させ、
前記原因を解消するのに要する予測時間長に応じて
、検査で不合格の印刷物が検出されたジョブの実行による印刷の継続又は停止を決定する、
ことを特徴とする印刷制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記予測時間長が所定の閾値未満の場合、印刷を停止させることを特徴とする請求項
3に記載の印刷制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記予測時間長が所定の閾値以上の場合、印刷を継続させることを特徴とする請求項3に記載の印刷制御装置。
【請求項6】
コンピュータに、
ジョブを連続して実行する場合において、ジョブの実行結果として得られる印刷物に対する検査結果を取得する機能、
検査で不合格の印刷物が検出された場合、まだ実行していない複数のジョブの中から不合格の印刷物が得られた原因の影響を受けないジョ
ブを実行させる機能、
前記原因の影響を受けるジョブそれぞれの納期に関する属性に応じて当該ジョブの実行を制御する機能、
を実現させるためのプログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
ジョブを連続して実行する場合において、ジョブの実行結果として得られる印刷物に対する検査結果を取得する機能、
検査で不合格の印刷物が検出された場合、まだ実行していない複数のジョブの中から不合格の印刷物が得られた原因の影響を受けないジョブを実行させる機能、
前記原因を解消するのに要する予測時間長に応じて、検査で不合格の印刷物が検出されたジョブの実行による印刷の継続又は停止を決定する機能、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル印刷市場では、印刷物の品質を担保するために、印刷結果の検証機能を活用している。ロール紙等の連続紙に印刷を行う連帳系のデジタル印刷機は、各ページに対する検査結果を示す情報を、対応するページの余白部分に埋め込むなどして記録する。
【0003】
検査に不合格の印刷物は、再印刷されることで検査に合格した印刷物と後加工で差し替えられるのが公知な手法となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ジョブを連続して実行させる場合、ジョブの実行中において、いずれかのジョブの実行結果である印刷物に対する検査で不合格の印刷物が検出された場合、印刷物が検査により不合格となった原因の、後続するジョブに対する影響を考慮することなく、デジタル印刷機をその時点で一旦停止し、その原因を解消した後にデジタル印刷機を再起動してジョブの実行を再開するのが一般的である。
【0006】
本発明は、実行結果として印刷物が得られるジョブを連続して実行する場合において、印刷物に対する検査で不合格の印刷物が検出された場合でも、印刷を一律的に停止して対処する場合に比して印刷を効率的に実施することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る印刷制御装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、ジョブを連続して実行する場合において、ジョブの実行結果として得られる印刷物に対する検査結果を取得し、検査で不合格の印刷物が検出された場合、まだ実行していない複数のジョブの中から不合格の印刷物が得られた原因の影響を受けないジョブを実行させ、前記原因の影響を受けるジョブそれぞれの納期に関する属性に応じて当該ジョブの実行を制御する、ことを特徴とする。
【0011】
また、前記プロセッサは、前記原因の影響を受けるジョブに短納期が要求されている場合には当該ジョブを実行させることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る印刷制御装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、ジョブを連続して実行する場合において、ジョブの実行結果として得られる印刷物に対する検査結果を取得し、検査で不合格の印刷物が検出された場合、まだ実行していない複数のジョブの中から不合格の印刷物が得られた原因の影響を受けないジョブを実行させ、前記原因を解消するのに要する予測時間長に応じて、検査で不合格の印刷物が検出されたジョブの実行による印刷の継続又は停止を決定する、ことを特徴とする。
【0014】
また、前記プロセッサは、前記予測時間長が所定の閾値未満の場合、印刷を停止させることを特徴とする。
また、前記プロセッサは、前記予測時間長が所定の閾値以上の場合、当該ジョブの実行を継続させることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るプログラムは、コンピュータに、ジョブを連続して実行する場合において、ジョブの実行結果として得られる印刷物に対する検査結果を取得する機能、検査で不合格の印刷物が検出された場合、まだ実行していない複数のジョブの中から不合格の印刷物が得られた原因の影響を受けないジョブを実行させる機能、前記原因の影響を受けるジョブそれぞれの納期に関する属性に応じて当該ジョブの実行を制御する機能、を実現させる。
本発明に係るプログラムは、コンピュータに、ジョブを連続して実行する場合において、ジョブの実行結果として得られる印刷物に対する検査結果を取得する機能、検査で不合格の印刷物が検出された場合、まだ実行していない複数のジョブの中から不合格の印刷物が得られた原因の影響を受けないジョブを実行させる機能、前記原因を解消するのに要する予測時間長に応じて、検査で不合格の印刷物が検出されたジョブの実行による印刷の継続又は停止を決定する機能、を実現させる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、6に記載の発明によれば、実行結果として印刷物が得られるジョブを連続して実行する場合において、印刷物に対する検査で不合格の印刷物が検出された場合でも、印刷を一律的に停止して対処する場合に比して印刷を効率的に実施することができる。また、検査では印刷物が不合格となることが予想されるジョブに関しては、納期に関する属性に応じて当該ジョブの実行を制御することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、検査では印刷物が不合格となることが予想されるものの、短納期が要求されているジョブであれば、実行させることができる。
【0022】
請求項3、7に記載の発明によれば、不合格の印刷物が得られた原因の種類によってジョブの実行を制御することができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、不合格の印刷物が得られた原因を短時間で解消できるのであれば、印刷を停止してその原因を解消するための処置を取らせることができる。
請求項5記載の発明によれば、印刷物の納期を品質より優先させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施の形態における印刷システムのブロック構成図である。
【
図2】本実施の形態における印刷制御処理の基本的な処理を示すフローチャートである。
【
図3A】本実施の形態において連続して実行されるジョブのうちまだ実行されていないジョブの実行順を示す図である。
【
図3B】
図3Aに示すジョブをスケジューリングし直した後の並び順を示す図である。
【
図4A】本実施の形態において連続して実行されるジョブのうちまだ実行されていないジョブの実行順を示す図である。
【
図4B】
図4Aに示すジョブをスケジューリングし直した後の並び順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態における印刷システムのブロック構成図である。
図1には、印刷を実行する印刷装置20と、印刷装置20における印刷の実行を制御する印刷制御装置10と、が示されている。
【0028】
本実施の形態における印刷装置20は、ロール紙等の連続紙に印刷を行う連帳系のデジタル印刷機である。印刷装置20は、印刷を行う印刷実行部21と、印刷実行部21が出力する印刷物の検査を行う印刷検査部22と、を有する。
【0029】
印刷実行部21は、印刷制御装置10からの指示に従い1又は複数のジョブを実行することで連続紙上に印刷する。印刷実行部21は、基本的には、ジョブを実行することで連続紙上に複数のページを形成するので、印刷実行部21が形成する印刷物というのは、ページに相当する。印刷検査部22は、検査をページ単位に行う。印刷物の品質を合否判定するための基準が予め設定されており、印刷検査部22は、その基準を満たすかどうかによって各印刷物の合否を判定する。
【0030】
本実施の形態における印刷制御装置10は、前述したように印刷装置20における印刷の実行を制御する。印刷制御装置10は、従前から存在する汎用的なコンピュータのハードウェア構成で実現できる。すなわち、印刷制御装置10は、CPU、ROM、RAM、記憶手段としてのハードディスクドライブ(HDD)、通信手段として設けられたネットワークインタフェース(IF)、また入力手段及び表示手段を含むユーザインタフェースを内部バスに接続して構成される。
【0031】
本実施の形態における印刷制御装置10は、
図1に示すように、ジョブ管理部11、印刷実行制御部12、印刷監視部13、原因特定部14、制御部15及びジョブ記憶部16を有している。なお、本実施の形態において説明に用いない構成要素については、図から省略している。
【0032】
ジョブ管理部11は、印刷要求としてジョブを受け付け、ジョブ記憶部16に登録する。また、ジョブ管理部11は、ジョブの登録、削除等のジョブ管理、また登録されたジョブの実行順を決定するなどスケジュール管理等を行う。特に、ジョブ管理部11は、スケジュール管理において、ジョブの実行結果として得られる印刷物に対する検査結果を印刷監視部13から取得し、検査で不合格の印刷物が検出された場合、まだ実行されていない複数のジョブの中から不合格の印刷物が得られた原因の影響を受けないジョブのみを実行させるなどの再スケジュールを行う。
【0033】
印刷実行制御部12は、ジョブ記憶部16に登録されているジョブを、スケジュールに従い実行するよう制御する。印刷監視部13は、印刷装置20における印刷状況、検査状況等を監視する。本実施の形態の場合、
図1に示すように、印刷検査部22から各印刷物の検査結果を取得する。原因特定部14は、印刷物が検査で不合格となった原因を特定する。制御部15は、各構成要素11~14の動作制御を行う。
【0034】
ジョブ記憶部16には、ジョブID等のジョブの識別情報に、ジョブの受付日時、ジョブサイズ、印刷物の量(ページのサイズ及び各サイズの枚数、使用する連続紙の容量等)等のジョブに対する属性情報及び当該ジョブの実行により生成される印刷物に対する属性情報等を含むジョブ情報が保存される。ジョブ情報には、後述する印刷物の納期や要求される品質に関する情報も含まれる。また、ジョブ情報の並び順等によってジョブの実行順、つまり、スケジュール情報が設定される。
【0035】
印刷制御装置10における各構成要素11~15は、印刷制御装置10を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPUで動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、ジョブ記憶部16は、印刷制御装置10に搭載されたHDDにて実現される。あるいは、RAM又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。
【0036】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD-ROMやUSBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPUがプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0037】
印刷システムによりジョブが実行されると、実行結果として印刷物が連続紙上に形成される。印刷物は、属性情報等の指定通りに印刷され生成されるが、例えばインクを出力するノズルの汚れ等によって希望通りの品質で生成されない場合がある。印刷検査部22は、生成された各印刷物の品質を検査し、上記の通り所定の基準に達していない印刷物を不合格と判定する。複数のジョブを連続して実行している途中で、検査により不合格となった印刷物が検出された場合、通常であれば、不合格となる印刷物を検出した時点で印刷装置20を一旦停止し、印刷物が不合格となった原因を解消する処置をした後に印刷装置20を再起動する。そして、後続するジョブの実行を再開させる。
【0038】
ところで、印刷物が検査により不合格となるのには、何らかの原因がある。原因の一例として、例えば特定の色のインクを出力するノズルの破損等がある。この場合、印刷装置20を停止し、ノズルの交換などして印刷物が不合格となった原因を解消し、その後に印刷装置20を再起動する。これにより、後続するジョブにおいて上記特定の色のインクを使用する印刷物は、同じ原因によって検査に不合格とならなくなると考えられる。しかしながら、その一方では、後続するジョブのうち上記特定の色のインクを使用しない印刷物を生成するジョブは、実行可能であるのにもかかわらず、印刷装置20の停止により実行が一時中止されてしまうことになる。
【0039】
そこで、本実施の形態においては、ジョブを連続して実行する場合において、検査で不合格となった印刷物が検出された場合、まだ実行していない複数のジョブの中から不合格となった印刷物が得られた原因の影響を受けないジョブのみを実行させるようジョブの実行を制御することを特徴としている。以下、本実施の形態におけるジョブ実行制御処理の基本的な処理について、
図2に示すフローチャートを用いて説明する。
図2では、ジョブを連続して実行することによって連続紙上に印刷物を形成する場合の処理を示している。
【0040】
印刷実行制御部12は、連続して実行するジョブのうち最初に実行すべきジョブをジョブ記憶部16から取り出し、印刷装置20へ送ることでジョブを実行させる(ステップ101)。本実施の形態においては、ジョブを連続して実行するが、各ジョブの実行の開始は、その都度制御できるものとする。つまり、連続して実行される複数のジョブは、スケジュールに従って無条件に続けて実行される場合に限らず、直前のジョブの実行が終了しても、次に実行すべきジョブの開始タイミングは、印刷実行制御部12によって制御される場合もある。本実施の形態の場合、後者を想定している。
【0041】
印刷装置20における印刷実行部21は、送られてきたジョブの実行を開始する。また、印刷検査部22は、印刷実行部21が印刷物を生成する度に、当該印刷物の検査を行う。印刷監視部13は、ジョブの実行が終了すると、印刷検査部22から全ての印刷物の検査結果を取得する(ステップ102)。ここで、全ての印刷物が検査に合格し、検査に不合格になった印刷物が検出されなかった場合(ステップ103でN)、当該ジョブに関連する処理は終了する。そして、次に実行すべきジョブが存在する場合(ステップ107でY)、次に実行すべきジョブに処理対象を移行する(ステップ101)。
【0042】
一方、検査に不合格になった印刷物が1つでも検出された場合(ステップ103でY)、制御部15は、原因特定部14を起動する。原因特定部14は、起動されると、検査に不合格になった印刷物が生成された原因を特定(以下、「不合格原因」ともいう)する(ステップ104)。ここでは、Y色のインクを出力するヘッド部分に異常が発生したことにより、印刷物が検査に不合格になった場合を例にして説明する。また、説明の便宜上、Y色を使用する印刷物のみが不合格になるものとする。
【0043】
なお、本実施の形態では、ステップ102において、1つのジョブにおいて生成される全ての印刷物の検査結果をまとめて取得するようにしたので、複数の不合格原因にて検査により不合格となった印刷物が検出される場合があり得る。従って、不合格原因を1つに絞り込むために、1つのジョブの実行中に、検査により不合格となった印刷物が最初に検出された段階で、ステップ104における処理を実行するようにしてもよい。
【0044】
不合格原因が特定されると、ジョブ管理部11は、その特定された不合格原因を原因特定部14から取得する。そして、ジョブ管理部11は、連続して実行されるジョブのうちまだ実行されていないジョブ(「未実行のジョブ」ともいう)の中から不合格原因の影響を受けないジョブ、すなわち、Y色を使用しないジョブを抽出する(ステップ105)。Y色の使用の有無は、ジョブ情報を参照することによって判断できる。
【0045】
続いて、ジョブ管理部11は、未実行のジョブのうち、抽出したジョブのみを実行させるようスケジュールし直し(ステップ106)、再スケジュールした内容でジョブ記憶部16を更新する。印刷実行制御部12は、このスケジュールされた順番にて未実行のジョブを実行させる(ステップ107でY,101)。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態においては、不合格の印刷物が得られた場合、まだ実行していない複数のジョブの中から不合格の印刷物が得られた原因の影響を受けないジョブのみを抽出して優先的に実行させるようにした。これにより、印刷装置20を停止させることなく、不合格原因の影響を受けないジョブに関しては実行させることができるので、印刷を効率的に実施させることができる。
【0047】
なお、まだ実行していない複数のジョブの中のうち不合格の印刷物が得られた原因の影響を受けるジョブに関しては、実行を保留する。基本的には、不合格原因の影響を受けないジョブの実行終了後に、ユーザは、印刷装置20を停止し、不合格原因を解消し、印刷装置20の再起動後に、保留していたジョブの実行を再開させる。
【0048】
なお、ジョブの実行が終了したときに全ての印刷物の検査結果を取得する場合、複数の不合格原因が特定される場合もあることは前述したとおりである。本実施の形態では、このような場合にも、いずれの不合格原因にも影響を受けないジョブを抽出して実行させると共に、少なくとも1つの不合格原因の影響を受けるジョブを保留させることで対応可能である。
【0049】
以下、前述したジョブ実行制御処理について、具体例をあげて説明する。
【0050】
図3Aは、連続して実行されるジョブのうちまだ実行されていないジョブ、すなわち未実行ジョブの実行順を示す図である。すなわち、
図3Aにおいて先頭のジョブAの直前に実行されたジョブにおいて、Y色のインクを出力するヘッド部分における異常が原因で、検査により不合格となった印刷物が検出されたことになる。各ジョブA~Iには、当該ジョブ情報から特定されるY色を使用するかしないかの情報が対応付けして示されている。
図3Aにおいて、Y色の項目に対応する「使用」は使用し、「不要」は、使用しないことを示している。
【0051】
前述したように、不合格原因が特定されると(ステップ104)、ジョブ管理部11は、不合格原因の影響を受けないジョブを抽出する(ステップ105)。すなわち、Y色を使用しないジョブB,E,F,Hを抽出する。そして、ジョブ管理部11は、
図3Bに示すように、印刷装置20を停止させることなくジョブB,E,F,Hを実行させるようにスケジュールし直す(ステップ106)。そして、ジョブ管理部11は、不合格原因の影響を受けるジョブA,C,D,G,Iの実行を保留する。
【0052】
ところで、ジョブには、当然ながら印刷工数が相対的に長いジョブと短いジョブとが存在する。本実施の形態において、印刷工数が長いということは、生成される印刷物の数量は多く、また印刷時間が長くなることに等しい。本実施の形態では、印刷工数が相対的に長いか短いは、各ジョブの実行により生成される印刷物の量によって判別する。すなわち、ジョブの実行により得られる印刷物の予測量が所定の閾値以上となるジョブは、印刷工数が相対的に長いジョブ(以下、「ロングジョブ」)と判別する。一方、ジョブの実行により得られる印刷物の予測量が所定の閾値未満となるジョブは、印刷工数が相対的に短いジョブ(以下、「ショートジョブ」)と判別する。ロングジョブは、ショートジョブより多くの印刷時間を要する。従って、ロングジョブの方が、連続して実行されるジョブ全体における印刷効率に、より多くの影響を与えることになる。そこで、本実施の形態では、ロングジョブとショートジョブとで取り扱いを異ならせることができるようにした。以下、
図4A,Bを用いてロングジョブとショートジョブの実行制御の異同について説明する。
【0053】
図4Aは、
図3Aに示した各ジョブに、当該ジョブの印刷工数の長短を示すジョブの種類を対応付けして示す図である。前述したロングジョブには「ロング」が、ショートジョブには「ショート」が、それぞれ設定される。
【0054】
前述したように、不合格原因が特定されると(ステップ104)、ジョブ管理部11は、不合格原因の影響を受けないジョブを抽出する(ステップ105)。すなわち、ジョブの種類に関係なくY色を使用しないジョブB,E,F,Hを抽出する。そして、ジョブ管理部11は、
図4Bに示すように、印刷装置20を停止させることなくジョブB,E,F,Hを実行させるようにスケジュールし直す(ステップ106)。
【0055】
一方、ジョブ管理部11は、不合格原因の影響を受けるジョブに対しては、以降に説明する取り扱いをする。
【0056】
まず、その1つとして、
図4Bに示すように、ジョブの種類に応じて二分化する。すなわち、ショートジョブに相当するジョブC,G,Iと、ロングジョブに相当するジョブA,Dと、に分ける。そして、ジョブ管理部11は、ショートジョブに関しては、当該ジョブの実行により生成される印刷物が検査により不合格となることが予想できるのにもかかわらず、印刷装置20を停止することなく実行させるようスケジュールする。これに該当するジョブC,G,Iは、不合格原因の影響を受けないジョブB,E,F,Hに続けて実行させてもよいし、混在して、すなわち
図4Aに示す実行順に従ってジョブB,C,E,F,G,H,Iの順番で実行させてもよい。
【0057】
本実施の形態では、不合格原因の影響を受けるショートジョブを次の理由により実行させるようにしている。
【0058】
ジョブには、それぞれ属性を有する。属性としては、前述した生成される印刷物の数量、すなわちロングジョブやショートジョブがある。その他にも、印刷物に要求されている品質、納期などもジョブの属性と考えられる。本実施の形態では、ジョブそれぞれの属性に応じて当該ジョブの実行を制御可能とする。なお、ジョブの属性情報は、上記のようにジョブの実行により生成される印刷物に対する属性を含む。属性情報は、ジョブ情報に含まれている。
【0059】
なお、納期に関しては、日数で設定可能であるため、閾値との比較で短納期か否かを容易に判定できる。品質に関しては、高低、高中低等、閾値との比較ができる属性値で属性情報に設定されているものとする。
【0060】
属性がショートジョブであるジョブの場合、仮に印刷物が検査で不合格となることが想定されていても、
図4Bに示すようにジョブを実行させることで印刷物を印刷装置20に生成させる。これは、印刷物が、印刷検査部22における合否の判定基準では不合格となったとしても、実際には印刷検査部22で合格と判定されなければならないほど高品質が要求されていない場合もある。例えば、検査員による視認の結果、不合格としなくてもよい仕上がりであるかもしれないからである。つまり、検査員による目視による検査では、一定の品質は確保されていると判断されるかもしれない。この場合、印刷検査部22による検査では不合格となった印刷物をそのまま製品として使用できることになる。仮に、検査員が印刷検査部22と同様に不合格と判定しても、ショートジョブの場合、ロングジョブと比較して印刷時間が短いので、再印刷しても時間的ロスは少ないと考えられる。また、ロングジョブと比較して印刷物の数量が相対的に少ないので、コストの面での損失も少ないと考えられる。このように、印刷物が不合格となることは予想されるショートジョブを実行させても、印刷の効率をロングジョブほど低下させないと考えられるからである。従って、ショートジョブの場合、不合格原因の影響を受けるジョブであっても不合格が予想される中でジョブの実行を行うようにした。
【0061】
また、ジョブの属性である納期を参照すると、納品期限が切迫している、いわゆる緊急度の高いジョブの場合など短納期が要求されている場合、納期を品質に優先させるためにショートジョブを実行させてもよい。
【0062】
また、上記説明では、不合格原因の影響を受けるジョブの属性に応じて実行又は保留というジョブの実行を制御するようにしたが、ジョブの実行か中止かをユーザに選択させるようにしてもよい。ユーザは、ジョブ情報に設定される属性情報では表現できない属性をも考慮することができるからである。具体的には、未実行ジョブのうち不合格原因の影響を受けるショートジョブの名称や印刷物を特定できる情報等をユーザインタフェースにリスト表示させて、ユーザに実行させるか中止させるかを選択させる。
【0063】
以上は、不合格原因の影響を受けるジョブのうちショートジョブに適用する場合を説明した。ただ、ロングジョブに対しても同様に取り扱うようにすることを否定するものではない。ロングジョブの場合、不合格となることが予想される中で印刷を実行させた結果、やはり不合格となり、再印刷を行う場合の時間的ロスやコスト上のロスが多大となるので、本実施の形態においては、ショートジョブに限って実行させるようにしている。
【0064】
上記説明では、ジョブの属性に応じて当該ジョブの実行を制御するようにした。そして、保留とされた場合、該当するジョブは、印刷装置20による印刷を停止した後、不合格原因が解消され、印刷装置20が再起動されてから当該ジョブの実行が開始されると説明した。ただ、不合格原因を解消するのに要する予測時間長に応じて印刷の継続又は停止を決定するようにしてもよい。
【0065】
すなわち、不合格原因の種類によって、その原因の解消に要する時間が異なってくると考えられる。例えば、印刷装置20の一部機能を発揮する部品を修理して動作確認を行うなど、不合格原因を解消する処置に要する時間が相対的に長く、所定の閾値以上かかると予測される場合、ジョブの実行を長い時間中止しなければならなくなる。従って、ジョブの実行を優先させるために印刷を継続させてもよい。不合格原因の影響を受けるショートジョブは、生成される印刷物が検査により不合格となるであろうが、納期、印刷効率優先で実行される。
【0066】
一方、単なる部品の交換程度の作業など、不合格原因を解消する処置に要する時間が相対的に短く、所定の閾値に満たないと予測される場合、印刷を停止させてもよい。この印刷を停止している間に不合格原因を解消する処置をさせ、印刷装置20の再起動後、一時中止させていた未実行ジョブの実行を開始させる。このように、印刷物の品質を優先させるようにすることで、例えば
図4Aに示すジョブA~Iは、この順番で実行されることになり、各ジョブの実行により生成される印刷物の品質は、維持される。
【0067】
上記実施の形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
【0068】
また上記実施の形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記各実施の形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 印刷制御装置、11 ジョブ管理部、12 印刷実行制御部、13 印刷監視部、14 原因特定部、15 制御部、16 ジョブ記憶部、20 印刷装置、21 印刷実行部、22 印刷検査部。