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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241217BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241217BHJP
   H01L 25/04 20230101ALI20241217BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L25/04 Z
H01L23/12 F
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020152406
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022046369
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 成実
(72)【発明者】
【氏名】日向 裕一朗
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-119618(JP,A)
【文献】特開2011-077267(JP,A)
【文献】特開2019-140236(JP,A)
【文献】特開2019-083294(JP,A)
【文献】特開2019-161174(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185050(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03499649(EP,A1)
【文献】特開平06-291230(JP,A)
【文献】特開2009-224550(JP,A)
【文献】特開2007-242703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 25/04
H01L 23/12-23/15
H01L 23/48-23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップを搭載した複数の絶縁基板と、
前記複数の絶縁基板に対向して設けられたプリント基板と、
前記複数の絶縁基板と前記プリント基板とを電気的に接続する導体部材と
を備え、
前記プリント基板は、前記複数の絶縁基板が配置される下治具の複数の柱状部材を貫通させるための第1貫通部および第2貫通部を有し、
前記第1貫通部は、上面視において、隣接する前記複数の絶縁基板の間に配置され、
前記第2貫通部は、上面視における形状が、前記第1貫通部と異なり、
前記第1貫通部および前記第2貫通部は、予め定められた配列方向に配列され、
前記第2貫通部は、前記配列方向において、前記第1貫通部の幅よりも大きな幅を含む
半導体装置。
【請求項2】
前記第2貫通部は、上面視において、前記第1貫通部から、前記プリント基板の短手方向にずれた位置に配置される
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2貫通部は、上面視において、隣接する前記複数の絶縁基板の間に配置される
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2貫通部の断面形状は、長軸および短軸を含み、
前記長軸は、前記第1貫通部の断面形状の最大幅よりも大きい
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記配列方向は、前記プリント基板の短手方向である
請求項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1貫通部は、円形の貫通孔であり、
前記第2貫通部は、上面視において、長軸および短軸を含む貫通孔である
請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1貫通部は、円形の貫通孔であり、
前記第2貫通部は、前記プリント基板の端部に設けられた切欠部である
請求項1から6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記複数の絶縁基板よりも前記プリント基板の外周側に設けられた前記第2貫通部および第3貫通部を備え、
前記第1貫通部は、円形の貫通孔であり、
前記第2貫通部および前記第3貫通部は、上面視において、長軸および短軸を含む貫通孔である
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項9】
複数の柱状部材を有する下治具に複数の絶縁基板を配置する段階と、
プリント基板の複数の貫通部に前記複数の柱状部材を貫通させる段階と、
前記複数の絶縁基板と前記プリント基板とを導体部材で電気的に接続する段階と、
前記複数の絶縁基板および前記プリント基板を熱処理する段階と
を備え、
前記複数の貫通部は、第1貫通部および第2貫通部を有し、
前記第1貫通部は、上面視において、隣接する前記複数の絶縁基板の間に設けられ、
前記第1貫通部および前記第2貫通部は、予め定められた配列方向に配列され、
前記第2貫通部は、前記配列方向において、前記第1貫通部の幅よりも大きな幅を含む
半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記下治具に前記複数の絶縁基板を配置する段階は、前記下治具に設けられた複数の凹部に前記複数の絶縁基板を配置する段階を含む
請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記複数の柱状部材は、同一の断面形状を有する
請求項9または10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記複数の柱状部材の断面形状は、円形である
請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと電気的に接続されたプリント基板を備える半導体装置が知られている(例えば、特許文献1~6参照)。
特許文献1 特開平4-97595号公報
特許文献2 特開平10-284639号公報
特許文献3 特開2012-148287号公報
特許文献4 特開平3-170379号公報
特許文献5 特許第6202094号公報
特許文献6 特許第5644440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
接触不良のない半導体装置を製造することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体チップと、半導体チップを搭載した複数の絶縁基板と、複数の絶縁基板に対向して設けられたプリント基板と、複数の絶縁基板とプリント基板とを電気的に接続する導体部材とを備え、プリント基板は、上面視において、隣接する複数の絶縁基板の間に配置された第1貫通部と、上面視における形状が、第1貫通部と異なる第2貫通部とを有する半導体装置を提供する。
【0005】
第2貫通部は、上面視において、隣接する複数の絶縁基板の間に配置されてよい。
【0006】
第2貫通部の断面形状は、長軸および短軸を含んでよい。長軸は、第1貫通部の断面形状の最大幅よりも大きくてよい。
【0007】
第1貫通部および第2貫通部は、予め定められた配列方向に配列されてよい。第2貫通部は、配列方向において、第1貫通部の幅よりも大きな幅を含んでよい。
【0008】
配列方向は、プリント基板の短手方向であってよい。
【0009】
第1貫通部は、円形の貫通孔であってよい。第2貫通部は、上面視において、長軸および短軸を含む貫通孔であってよい。
【0010】
第1貫通部は、円形の貫通孔であってよい。第2貫通部は、プリント基板の端部に設けられた切欠部であってよい。
【0011】
複数の絶縁基板よりもプリント基板の外周側に設けられた第2貫通部および第3貫通部を備えてよい。第1貫通部は、円形の貫通孔であってよい。第2貫通部および第3貫通部は、上面視において、長軸および短軸を含む貫通孔であってよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、複数の柱状部材を有する下治具に複数の絶縁基板を配置する段階と、プリント基板の複数の貫通部に複数の柱状部材を貫通させる段階と、複数の絶縁基板とプリント基板とを導体部材で電気的に接続する段階と、複数の絶縁基板およびプリント基板を熱処理する段階とを備える半導体装置の製造方法を提供する。複数の柱状部材の少なくとも1つは、上面視において、隣接する複数の絶縁基板の間に設けられてよい。
【0013】
下治具に複数の絶縁基板を配置する段階は、下治具に設けられた複数の凹部に複数の絶縁基板を配置する段階を含んでよい。
【0014】
複数の柱状部材は、同一の断面形状を有してよい。
【0015】
複数の柱状部材の断面形状は、円形であってよい。
【0016】
半導体装置の製造方法は、プリント基板に、上面視において、隣接する複数の絶縁基板の間に配置された第1貫通部を設ける段階を備えてよい。半導体装置の製造方法は、プリント基板に、第1貫通部と異なる断面形状を有する第2貫通部を設ける段階を備えてよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】半導体装置100の上面側の斜視図を示す。
図1B】半導体装置100の下面側の斜視図を示す。
図1C】半導体組立体50の断面図の一例を示す。
図2A】下冶具300の上面図と断面図を示す。
図2B】複数の絶縁基板10を下冶具300に配置する工程の一例を示す。
図2C】絶縁基板10にプリント基板30および導電部材40を配置する工程の一例を示す。
図2D】半導体組立体50を熱処理する工程の一例を示す。
図2E】熱処理工程における半導体組立体50の上面図を示す。
図2F】半導体装置100を製造するためのフローチャートの一例である。
図3A】プリント基板30および下冶具300の構成の一例を示す。
図3B】プリント基板30および下冶具300の変形例を示す。
図3C】プリント基板30および下冶具300の変形例を示す。
図3D】プリント基板30および下冶具300の変形例を示す。
図4】比較例に係る半導体装置500の製造方法の一例を示す。
図5】比較例に係る半導体装置500の製造方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
本明細書においては、半導体装置における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する場合がある。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する場合がある。「上」および「下」の方向は重力方向に限定されない。即ち、「上」および「下」の方向は、半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
【0021】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。一例において、半導体チップの上面と平行な面をXY面とし、半導体チップが有する半導体基板の深さ方向をZ軸とする。例えば、Z軸方向の正側の面を上面とし、Z軸方向の負側の面を下面とする。
【0022】
図1Aは、半導体装置100の上面側の斜視図を示す。本例の半導体装置100は、パワー半導体モジュールである。半導体装置100は、筐体110および導電端子ピン120を備える。
【0023】
筐体110は、半導体装置100の半導体チップ20を収容する。半導体チップ20については後述する。筐体110は、絶縁性の樹脂で成形されている。本例の筐体110は、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂を用いてモールド成形することで、直方体状に成形されたモールド成形体である。
【0024】
導電端子ピン120は、半導体装置100の内部回路と、半導体装置100の外部とを接続するためのピンである。半導体装置100は、複数の導電端子ピン120を備える。導電端子ピン120は、電流を半導体装置100の外部に入出力するための入出力用端子および半導体装置100の外部から半導体チップ20に制御信号を入力するための制御用端子を含んでよい。
【0025】
取付孔130は、半導体装置100の上面から下面まで貫通して設けられている。取付孔130にボルト等の固定具を挿入することで、半導体装置100を予め定められた位置に固定することができる。本例の半導体装置100は、X軸方向における両端に複数の取付孔130を備える。なお、本例の半導体装置100の構成は一例であり、これに限定されない。
【0026】
図1Bは、半導体装置100の下面側の斜視図を示す。半導体装置100は、複数の放熱部140を備える。
【0027】
複数の放熱部140は、半導体装置100の下面において、X軸方向に配列して設けられる。複数の放熱部140は、半導体装置100の内部の複数の絶縁基板10と対応して設けられる。複数の放熱部140は、半導体チップ20で発生する熱を半導体装置100の外部へと放熱する。絶縁基板10については後述する。
【0028】
図1Cは、半導体組立体50の断面図の一例を示す。半導体組立体50は、絶縁基板10と、半導体チップ20と、プリント基板30と、導電部材40とを備える。本例の半導体組立体50は、複数の絶縁基板10を備える。半導体組立体50は、半導体装置100の筐体110の内部に搭載される。
【0029】
絶縁基板10は、半導体チップ20を搭載している。絶縁基板10は、DCB(Direct Copper Bonding)基板またはAMB(Active Metal Brazing)基板であってよい。本例の半導体組立体50は、X軸方向に配列された2つの絶縁基板10aおよび絶縁基板10bを備える。絶縁基板10aおよび絶縁基板10bは、予め定められた絶縁距離よりも離れて設けられる。絶縁基板10は、回路パターン層11と、絶縁層12と、導電層13とを有する。
【0030】
回路パターン層11は、絶縁層12の上面に設けられる。導電層13は、絶縁層12の下面に設けられる。回路パターン層11および導電層13は、銅または銅合金などの金属材料を含む板で形成されてよい。回路パターン層11および導電層13は、ロウ材等の接合材によって絶縁層12の表面に固定されていてもよい。
【0031】
絶縁層12は、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)等のセラミックス等の絶縁材料で形成される板状部材である。例えば、絶縁層12の厚みは、0.2mm以上、1mm以下である。
【0032】
半導体チップ20は、シリコン基板等の半導体基板に設けられた半導体チップである。半導体チップ20は、SiCまたはGaNなどの化合物半導体基板に形成されてもよい。一例において、半導体チップ20は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)またはパワーMOSFETなどのスイッチング素子を含む。半導体チップ20は、フリーホイールダイオード(FWD)を含むRC-IGBT(Reverse-Conducting IGBT)を含んでよい。
【0033】
半導体チップ20には、上面電極および下面電極が形成されてよい。上部電極および下面電極はそれぞれ電源の負電位および正電位に電気的に接続されてよい。絶縁基板10は、複数の半導体チップ20を搭載してもよい。
【0034】
プリント基板30は、複数の絶縁基板10に対向して設けられる。本例のプリント基板30は、絶縁基板10aおよび絶縁基板10bに覆い被さるように設けられている。プリント基板30は、絶縁板と、絶縁板に設けられた回路パターン層を有する。
【0035】
例えば、プリント基板30の絶縁板は、ガラスエポキシ材で構成されるリジッド基板またはポリイミド材で構成されるフレキシブル基板である。プリント基板30の材料は、これに限定されない。
【0036】
プリント基板30の回路パターン層は、半導体チップ20の電極を外部端子に接続する。プリント基板30の回路パターン層は、銅、銅合金またはアルミニウムなどの導電性金属を用いて、絶縁板の表面に設けられている。プリント基板30は、絶縁基板10の上方において、絶縁基板10と離間して配置されている。絶縁基板10aおよび絶縁基板10bは、プリント基板30を介して電気的に接続されてよい。
【0037】
導電部材40は、複数の絶縁基板10とプリント基板30とを電気的に接続する。導電部材40は、銅またはアルミニウム等の導電性金属を用いて円柱等の柱状に成形されている。なお、導電部材40の下端は、はんだ部15等の接合材により絶縁基板10または半導体チップ20に固定される。また、導電部材40の上端は、はんだ、ロウ付け、またはカシメ等によって、プリント基板30に固定されてよい。
【0038】
本例の導電部材40は、導電部材40aと、導電部材40bと、導電部材40cとを有する。導電部材40aは、半導体チップ20とプリント基板30の回路パターン層とを電気的に接続する。導電部材40bは、回路パターン層11とプリント基板30の回路パターン層とを電気的に接続する。導電部材40cの一端は、回路パターン層11と電気的に接続され、導電部材40cの他端は、筐体110の外に突出している。
【0039】
図2Aは、下冶具300の上面図と断面図を示す。下冶具300は、半導体組立体50を搭載して、絶縁基板10およびプリント基板30を位置決めするために用いられる。下冶具300は、複数の柱状部材と、枠部304と、凹部306と、凸部308とを備える。
【0040】
下冶具300は、複数の柱状部材として、第1柱状部材301および第2柱状部材302を備える。下冶具300の複数の柱状部材は、同一の断面形状を有してよいし、互いに異なる断面形状を有してもよい。
【0041】
第1柱状部材301および第2柱状部材302は、プリント基板30を位置決めするための部材である。第1柱状部材301および第2柱状部材302は、それぞれプリント基板30の貫通部31と貫通部32に対応する位置に配置される。貫通部31および貫通部32については後述する。
【0042】
第1柱状部材301は、貫通部31の断面形状に応じた断面形状を有する。第2柱状部材302は、貫通部32の断面形状に応じた断面形状を有する。本例の第1柱状部材301および第2柱状部材302の断面形状は、円形である。円形とは、予め定められた半径を有する正円であってよい。第1柱状部材301および第2柱状部材302は、異なる断面形状を有していてもよい。
【0043】
枠部304は、半導体組立体50に応じた大きさおよび形状を有する。枠部304は、炉内での熱伝導が優れた材料で構成されてよい。例えば、枠部304の材料は、カーボンである。
【0044】
凹部306は、絶縁基板10を位置決めするために、枠部304に設けられた窪みである。下冶具300は、枠部304の内側に複数の凹部306を有し、複数の絶縁基板10をそれぞれ複数の凹部306と対応する位置に配置する。下冶具300は、X軸方向に配列された凹部306aおよび凹部306bを有する。本例の凹部306は、上面視において、矩形の形状を有するが、これに限定されない。上面視とは、Z軸に沿った視点を指す。
【0045】
凸部308は、凹部306aと凹部306bとの間に設けられる。即ち、凸部308は、複数の絶縁基板10が下冶具300に配置された場合に、複数の絶縁基板10の間に位置する。凸部308の上面には、第1柱状部材301および第2柱状部材302が設けられている。
【0046】
図2Bは、複数の絶縁基板10を下冶具300に配置する工程の一例を示す。複数の絶縁基板10の上面には、半導体チップ20がそれぞれ配置されている。また、絶縁基板10の上面および半導体チップ20の上面には、導電部材40と電気的に接続するためのはんだ部15が設けられている。第1柱状部材301は、複数の絶縁基板10の間に配置されている。
【0047】
絶縁基板10aは、凹部306aの内部に配置され、XY面内の位置が制限されている。絶縁基板10bは、凹部306bの内部に配置され、XY面内の位置が制限されている。これにより、絶縁基板10aおよび絶縁基板10bは、予め定められた絶縁距離よりも離れた位置に配置される。
【0048】
図2Cは、絶縁基板10にプリント基板30および導電部材40を配置する工程の一例を示す。プリント基板30は、複数の柱状部材によって位置決めされて、絶縁基板10と対向する位置に設けられる。プリント基板30は、導電部材40と連結された状態で位置決めされてよい。下冶具300がプリント基板30および導電部材40の位置を制限した状態で、はんだ接合のための炉に搬送される。下冶具300の下方には、熱板310が設けられている。
【0049】
図2Dは、半導体組立体50を熱処理する工程の一例を示す。半導体組立体50は、下冶具300によって位置決めされた状態で熱処理されている。半導体組立体50は、熱処理によって膨張する。本例のプリント基板30は、第1柱状部材301によってXY面内の位置が固定された状態で膨張している。
【0050】
図2Eは、熱処理工程における半導体組立体50の上面図を示す。プリント基板30の外周の破線は、プリント基板30が熱処理により膨張していることを示す。
【0051】
貫通部31は、第1柱状部材301によって下面から上面に貫通されている。貫通部31は、第1柱状部材301によって、XY面において、第1柱状部材301との相対的な位置が固定されている。貫通部31は、第1貫通部の一例である。貫通部31は、第1柱状部材301と略同一の断面形状を有する。本例の貫通部31は、円形の貫通孔である。貫通孔とは、貫通部31の外周がプリント基板30で覆われたものを指す。なお、貫通部31の形状は、矩形であってもその他の多角形であってよい。
【0052】
貫通部32は、第2柱状部材302によって下面から上面に貫通されている。貫通部32は、上面視において、貫通部31と異なる断面形状を有する。貫通部32の断面は、貫通部31の断面よりも大きな幅を含む。
【0053】
貫通部32の断面形状は、長軸および短軸を含む。長軸とは、上面視における貫通部32の断面形状の最大幅であってよい。短軸とは、上面視における貫通部32の断面形状の長軸よりも短い幅であってよい。貫通部32の断面形状は、長軸に対して線対象の形状であってもよいし、長軸に対して線対象の形状でなくてもよい。本例の貫通部32は、長円形の貫通孔であるが、楕円等の他の形状であってもよい。貫通部32の最大幅は、貫通部31の最大幅よりも大きい。貫通部32の長軸は、貫通部31の最大幅よりも大きくてよい。貫通部32は、第2貫通部の一例である。なお、本例では、貫通部32の長軸がX軸方向であり、貫通部32の短軸がY軸方向である。
【0054】
貫通部32は、X軸方向において、第2柱状部材302との相対的な位置が固定されている。本例の第2柱状部材302は、第1柱状部材301を中心としたXY面内におけるプリント基板30の回転を防止する。一方、貫通部32は、Y軸方向において、第2柱状部材302との相対的な位置が固定されていない。そのため、プリント基板30がY軸方向に伸縮する。このように、プリント基板30の膨張および収縮が阻害されない。貫通部32の形状は、プリント基板30の膨張および収縮を阻害しないものであれば、本例に限られない。
【0055】
貫通部31および貫通部32は、予め定められた配列方向に配列されている。本例の配列方向は、Y軸方向である。即ち、本例の配列方向は、プリント基板30の短手方向である。貫通部32は、配列方向において、貫通部31の幅よりも大きな幅を含む。これにより、プリント基板30は、配列方向において、貫通部31を起点として、第2柱状部材302に阻害されない限り、外側に伸縮することができる。貫通部31と貫通部32との距離は、プリント基板30の短手方向における幅の半分以上離れていてよい。
【0056】
貫通部31は、上面視において、隣接する複数の絶縁基板10の間に配置されている。同様に、貫通部32は、上面視において、隣接する複数の絶縁基板10の間に配置されてよい。貫通部31および貫通部32は、X軸方向の位置が複数の絶縁基板10の間であればよく、Y軸方向において、絶縁基板10よりも外側に設けられていてもよい。本例の貫通部31および貫通部32は、X軸方向における中央付近に設けられている。貫通部31および貫通部32をプリント基板30の短手方向に配列することにより、プリント基板30は、プリント基板30の長手方向において、貫通部31を起点として外側に伸縮することができる。
【0057】
本例では、半導体組立体50の膨張を阻害せず、複数の絶縁基板10とプリント基板30との相対的な位置関係を維持することができる。また、本例では、第1柱状部材301および第2柱状部材302が簡易な構成であり、治具の部品点数を少なくすることができる。また、下冶具300に対応した上治具を用意する必要がないので、熱処理後に半導体組立体50を上方に持ち上げることで容易に取り出すことができる。
【0058】
図2Fは、半導体装置100を製造するためのフローチャートの一例である。ステップS100において、複数の絶縁基板10を下冶具300に配置する。複数の絶縁基板10は、下冶具300の複数の凹部306に配置される。複数の絶縁基板10には、半導体チップ20が搭載され、はんだ部15が塗布されていてよい。
【0059】
ステップS102において、下冶具300により、プリント基板30を位置決めする。プリント基板30は、複数の柱状部材を複数の貫通部に貫通させることにより位置決めされる。ステップS104において、複数の絶縁基板10とプリント基板30を導電部材40で電気的に接続する。半導体組立体50の熱処理前の段階では、はんだ部15が凝固しておらず、はんだ部15の粘性によって導電部材40がはんだ部15に仮固定されている。
【0060】
ステップS106において、半導体組立体50を熱処理する。熱処理では、炉内において、温度上昇、温度維持および温度下降のプロセスが実行される。半導体組立体50は、温度変化に応じて膨張および収縮する。本例の半導体組立体50は、貫通部31および貫通部32を有するので、プリント基板30の膨張の影響を緩和することができる。そして、半導体組立体50のはんだ接合は、はんだ部15のセルフアライメント効果によって、バランスの取れる位置で固定される。
【0061】
ステップS108において、筐体110に半導体組立体50を搭載する。本例の製造方法では、上治具を使用しないので、熱処理後に半導体組立体50を取り出しやすく、自動生産を効率化できる。
【0062】
図3Aは、プリント基板30および下冶具300の構成の一例を示す。本例のプリント基板30は、図2Eのプリント基板30と同一の構造を有する。本例では、プリント基板30の熱処理前の状態を示す。
【0063】
幅W1は、XY面内の予め定められた方向における貫通部31の幅である。貫通部31の幅は、貫通部31が円形の場合、円の直径に相当する。本例の幅W1は、Y軸方向における貫通部31の幅である。幅W1は、0.5mm以上、1.5mm以下であってよい。幅W1は、一例において1mmである。
【0064】
幅W2は、XY面内の予め定められた方向における貫通部32の幅である。本例の幅W2は、貫通部32の長軸の長さである。本例の幅W2は、Y軸方向における貫通部32の幅である。幅W2は、貫通部32の幅の最大の幅であってよい。幅W2は、貫通部31の幅W1よりも大きくてよく、第2柱状部材302の直径よりも大きくてよい。幅W2は、1.5mm以上、2.5mm以下であってよい。幅W2は、一例において2mmである。
【0065】
幅Ws2は、貫通部32の短軸の長さである。幅Ws2は、幅W1と等しくてよい。幅Ws2は、第2柱状部材302の直径と略等しくてよい。幅Ws2は、0.5mm以上、1.5mm以下であってよい。幅W2は、幅Ws2の1.5倍以上、2.5以下であってよい。
【0066】
間隙Sは、第2柱状部材302とプリント基板30との間の領域である。間隙Sは、上面視において、貫通部31と貫通部32との間に位置する。
【0067】
間隙Sの幅Lsは、配列方向における、熱処理前のプリント基板30と貫通部32との間隔である。これにより、プリント基板30の膨張が生じた場合に、間隙Sの位置までプリント基板30が変位する余裕が生まれる。間隙Sの幅Lsは、一例において、0.5mm以上、1.5mm以下である。間隙Sの幅Lsは、プリント基板30の形状または材質等に応じて変更されてよい。
【0068】
図3Bは、プリント基板30および下冶具300の変形例を示す。本例のプリント基板30は、貫通部32として切欠部を有する。本例では、プリント基板30の熱処理前の状態を示す。図3Aの実施例と相違する点について、特に説明する。
【0069】
貫通部31は、図3Aの実施例と同様に、第1柱状部材301によって、XY面内の位置が固定されている。本例の貫通部31および第1柱状部材301は、円形の断面を有する。貫通部31および第1柱状部材301の形状は、XY面内の位置を固定できるものであれば、これに限定されない。
【0070】
貫通部32は、プリント基板30の端部に設けられた切欠部である。切欠部とは、プリント基板30の外周から内側に延伸した領域である。貫通部32は、長円形の一部のような形状を有する。このように、貫通部32は、第2柱状部材302の周囲を完全に覆う必要はなく、一部が開いた構造を有していてもよい。
【0071】
第2柱状部材302は、XY面で円形の断面を有する。貫通部32は、貫通部31と貫通部32との配列方向(本例ではY軸方向)に長手を有している。これにより、プリント基板30の膨張および収縮が阻害されない。貫通部32の形状は、プリント基板30の膨張および収縮を阻害しないものであれば、本例に限られない。即ち、第2柱状部材302は、第1柱状部材301を中心としたXY面内におけるプリント基板30の回転を防止するが、プリント基板30のY軸方向への膨張および収縮を阻害しない。
【0072】
図3Cは、プリント基板30および下冶具300の変形例を示す。本例の第2柱状部材302は、XY面で矩形の断面を有する点で図3Bの実施例と相違する。本例では、プリント基板30の熱処理前の状態を示す。図3Bの実施例と相違する点について、特に説明する。
【0073】
第2柱状部材302は、貫通部32を貫通して設けられる。第2柱状部材302は、上面視において、貫通部32からプリント基板30の外側に延伸して設けられてよい。また、第2柱状部材302は、上面視において、貫通部32の内側に収容されていてもよい。プリント基板30の熱処理前の状態において、第2柱状部材302とプリント基板30との間に間隙Sが設けられる。一方、第2柱状部材302は、X軸方向における貫通部32の移動を阻害する。これにより、第2柱状部材302は、第1柱状部材301を中心としたXY面内におけるプリント基板30の回転を防止するが、プリント基板30のY軸方向への膨張および収縮を阻害しない。
【0074】
図3Dは、プリント基板30および下冶具300の変形例を示す。本例のプリント基板30は、貫通部31と、貫通部32と、貫通部33とを備える。本例の第1柱状部材301は、図3Aの実施例と同様に、貫通部31のXY面内の位置を固定する。貫通部31は、円形の貫通孔である。
【0075】
貫通部32および貫通部33は、上面視において、複数の絶縁基板10よりもプリント基板30の外周側に設けられている。貫通部31と、貫通部32または貫通部33との距離は、貫通部31を中心としたXY面内におけるプリント基板30の回転を防止する程度に離れている。貫通部32および貫通部33は、長円形の貫通孔である。貫通部33は、第3貫通部の一例である。
【0076】
貫通部32は、貫通部31よりもY軸方向の正側であって、貫通部31よりもX軸方向の負側に設けられている。貫通部32は、貫通部31と貫通部32との配列方向において、長軸を有する。貫通部31と貫通部32との配列方向は、貫通部31と貫通部32とを結ぶ破線で示される。貫通部32の短軸は、XY面内において、貫通部32の長軸と垂直な方向に延伸する。
【0077】
貫通部33は、貫通部31よりもY軸方向の正側であって、貫通部31よりもX軸方向の正側に設けられている。貫通部33は、貫通部31と貫通部33との配列方向において、長軸を有する。貫通部31と貫通部33との配列方向は、貫通部31と貫通部33とを結ぶ破線で示される。貫通部33の短軸は、XY面内において、貫通部33の長軸と垂直な方向に延伸する。プリント基板30は、貫通部32または貫通部33のいずれか一方を備えていればよい。
【0078】
図4は、比較例に係る半導体装置500の製造方法の一例を示す。半導体装置500は、半導体チップ520を搭載した絶縁基板510を備える。半導体組立体550は、搬送部610によって熱処理用の炉の内部に搬送されている。搬送部610は、コンベアであり、下冶具600に搭載された半導体組立体550を自動搬送している。本例では、絶縁基板510とプリント基板530の相対的な位置関係が固定されておらず、搬送時の振動または衝撃等によって、導電部材540の接触不良が生じる場合がある。
【0079】
図5は、比較例に係る半導体装置500の製造方法の一例を示す。下冶具600および上治具620は、固定部625によってねじ締め固定されている。絶縁基板510およびプリント基板530は、下冶具600と上治具620とによって、相対的な位置関係が固定されている。しかしながら、熱処理による局所的な応力集中で発生した反りによって、不良品が発生する恐れがある。
【0080】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0081】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0082】
10・・・絶縁基板、11・・・回路パターン層、12・・・絶縁層、13・・・導電層、15・・・はんだ部、20・・・半導体チップ、30・・・プリント基板、31・・・貫通部、32・・・貫通部、33・・・貫通部、40・・・導電部材、50・・・半導体組立体、100・・・半導体装置、110・・・筐体、120・・・導電端子ピン、130・・・取付孔、140・・・放熱部、300・・・下冶具、301・・・第1柱状部材、302・・・第2柱状部材、304・・・枠部、306・・・凹部、308・・・凸部、310・・・熱板、500・・・半導体装置、510・・・絶縁基板、520・・・半導体チップ、530・・・プリント基板、540・・・導電部材、550・・・半導体組立体、600・・・下冶具、610・・・搬送部、620・・・上治具、625・・・固定部
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5