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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】原稿搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20241217BHJP
   B65H 1/14 20060101ALI20241217BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20241217BHJP
   B65H 3/52 20060101ALI20241217BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20241217BHJP
   B65H 11/00 20060101ALI20241217BHJP
   G03B 27/62 20060101ALI20241217BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H04N1/00 567Q
B65H1/14 310B
B65H3/06 340E
B65H3/52 330B
B65H7/14
B65H11/00 G
G03B27/62
G03G15/00 107
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020153145
(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公開番号】P2021061581
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2019186083
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 浩次
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 太朗
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-263464(JP,A)
【文献】特開2016-060569(JP,A)
【文献】特開2016-210533(JP,A)
【文献】特開平10-279099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B65H 1/14
B65H 3/06
B65H 3/52
B65H 7/14
B65H 11/00
G03B 27/62
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿がセットされるリフト板と、
揺動可能に支持され、前記リフト板にセットされた前記原稿のうちの最上位原稿と接し、回転して前記原稿の搬送方向に前記原稿を送るピックアップローラーと、
前記リフト板を昇降させ、給紙を開始するとき、前記最上位原稿と前記ピックアップローラーが接するまで前記リフト板を上昇させるリフトモーターと、
前記ピックアップローラーよりも前記原稿の搬送方向の下流側に設けられ、前記ピックアップローラーによって送り出された前記原稿と接するリタードローラーと、
通常モードが選ばれているとき、前記原稿の搬送方向と逆方向に前記原稿を送る方向に前記リタードローラーを回転させ、
手差しモードが選ばれているとき、前記原稿の搬送方向に前記原稿を送る方向に前記リタードローラーを回転させ、
前記手差しモードが選ばれているとき、前記ピックアップローラーの回転開始後、前記ピックアップローラーが前記原稿を送っている間に前記リフト板の下降を前記リフトモーターに開始させる制御部と、を含むことを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ピックアップローラーの回転開始から前記ピックアップローラーから前記リタードローラーまでの距離を前記原稿の理想的な搬送速度で除して得られる時間が経過した時点以降に、前記リフト板の下降を前記リフトモーターに開始させることを特徴とする請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項3】
前記リタードローラーよりも前記原稿の搬送方向の下流側に設けられたフィードセンサーを含み、
前記制御部は、
前記フィードセンサーの出力に基づき、前記原稿の先端が前記フィードセンサーに到
達したことを認識し、
前記フィードセンサーへの前記原稿の先端の到達を認識すると、前記リフト板の下降を前記リフトモーターに開始させることを特徴とする請求項1又は2に記載の原稿搬送装置。
【請求項4】
前記ピックアップローラーを回転させる給紙モーターを含み、
前記給紙モーターはステッピングモーターであり、
前記制御部は、前記ピックアップローラーの回転開始から予め定められた下降開始パルス数だけパルスを前記給紙モーターに入力し、入力後、前記下降開始パルス数に相当する時間の経過後、前記リフト板の下降を前記リフトモーターに開始させ、
前記下降開始パルス数は、前記ピックアップローラーから前記リタードローラーまでの距離を、1パルスあたりの前記原稿の移動量で除して得られる値であることを特徴とする請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項5】
前記リタードローラーよりも前記原稿の搬送方向の下流側に設けられたフィードセンサーを含み、
前記制御部は、
前記フィードセンサーの出力に基づき、前記原稿の後端が前記フィードセンサーを通過したことを認識し、
前記原稿の後端が前記フィードセンサーを通過したことを認識したとき、前記ピックアップローラーと前記リタードローラーの回転を停止させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の原稿搬送装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記フィードセンサーに前記原稿の先端が到達したことを認識してから、前記原稿の後端が前記フィードセンサーを通過したことを認識するまでの通過所要時間を測り、
前記通過所要時間の長さに基づき、前記原稿の連なり給紙エラーが生じたことを検知し、
前記連なり給紙エラーの発生を検知したとき、前記ピックアップローラーと前記リタードローラーの回転を停止させることを特徴とする請求項3又は5に記載の原稿搬送装置。
【請求項7】
前記ピックアップローラーの回転開始後、前記ピックアップローラーが原稿を送っている間に前記リフト板を下降するとき、前記制御部は、予め定められた下降量だけ前記リフト板を下降させることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の原稿搬送装置。
【請求項8】
前記下降量は、
前記ピックアップローラーの周面の下端部から前記最上位原稿の1つ下の前記原稿までの距離が予め定められた離間距離以上となり、
かつ、前記リフト板上の原稿が予め定められた下限高さよりも下にならない範囲の値であることを特徴とする請求項に記載の原稿搬送装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記手差しモードでは、前記通常モードよりも前記原稿の搬送速度を遅くすることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の原稿搬送装置。
【請求項10】
前記ピックアップローラーと前記リタードローラーを回転させる給紙モーターと、
前記給紙モーターを第1方向に回転するとき、前記原稿の搬送方向に前記原稿を送る方向に前記ピックアップローラーを回転させる第1駆動機構と、
前記給紙モーターを前記第1方向と逆方向の第2方向に回転するとき、前記原稿を前記原稿の搬送方向に送る方向に前記ピックアップローラーを回転させる第2駆動機構と、
前記給紙モーターを前記第1方向に回転するとき、前記原稿を前記原稿の搬送方向と逆方向に送る方向に前記リタードローラーを回転させ、前記給紙モーターを前記第2方向に回転するとき、前記原稿を前記原稿の前記搬送方向に送る方向に前記リタードローラーを回転させる第3駆動機構と、を含むことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の原稿搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セットされた原稿を給紙、搬送する原稿搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿搬送装置を備えた画像読取装置がある(例えば、複合機)。原稿搬送装置はセットされた原稿を1枚ずつ送り出す。送り出された原稿を読み取ることにより、画像データが生成される。原稿搬送装置では、複数枚の原稿が重なって給紙、搬送されることがある。原稿の大部分が重なって搬送される場合もあれば、前方の原稿と後続の原稿の一部が重なって搬送される場合もある。重なり解消のため、分離機構が設けられることがある。分離機構は、例えば、分離ローラーを含む。分離ローラーは原稿の搬送方向と逆方向(上流方向)に原稿を送る方向に回転する。分離ローラーは、重送された原稿を捌き、不要な原稿を送り返す。分離ローラーは重送の解消に役立つ。
【0003】
分離ローラーを含む分離機構を備えた装置の一例が特許文献1に記載されている。具体的に、特許文献1には、複数枚のシート束からシートを1枚ずつ分離給送する分離モード、及び、シートの分離給送を行わない非分離モードをそれぞれ有し、非分離モードでの給送動作の終了後、非分離モードから分離モードに切り替わるシート給送装置が記載されている。給送モードの切り替えを自動で行い、ユーザの負担を軽減しようとする(特許文献1:請求項1、段落[0006])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-041118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数枚のシートが重ねられた原稿がある。このような原稿には、例えば、荷物の配送用(宅配用)の伝票がある。配送用の伝票には、複写用のカーボン紙が重ねられていることが多い。また、はがせるシート(例えば、付箋、シール)が貼り付けられた原稿や、写真が貼り付けられた原稿もある。このような原稿で、原稿の搬送方向に対して逆方向に搬送する方向に分離ローラーを回転させると、原稿に貼り付けられ、かつ、はがれて欲しくないシートが剥がれてしまうことがある。つまり、重送解消のための動作を分離ローラーに行わせると、原稿が破損する場合がある。
【0006】
そこで、分離ローラーに分離動作を行わせないモード(特許文献1での非分離モード)を原稿搬送装置で利用できるようにすることがある。非分離モードでは、分離ローラーが搬送方向に原稿を送る方向に回転する。つまり、非分離モードと分離モードで分離ローラーの回転方向が逆になる。
【0007】
しかし、非分離モードでは、原稿の重なりを解消する機能が働かない。複数枚の原稿がセットされた場合、非分離モードでは、原稿が重なった状態、あるいは、連なった状態で給紙、搬送されやすくなるという問題がある。言い換えると、非分離モードでは、連なり給紙が生じやすいという問題がある。
【0008】
特許文献1では、非分離モードのとき、単に、原稿を原稿の搬送方向に送る方向に分離ローラーを回転させるだけである。特許文献1記載の装置では、原稿が連なって搬送されやすい。連なり給紙に起因するエラーを解消する処理(例えば、ジャム処理)を頻繁に行う必要がある。なお、特許文献1記載の装置では、非分離モードの場合、重送検知を無効とする(行わないようにする)(特許文献1:段落[0054]、[0055])。そのため、非分離モードで、連なり給紙が生じても搬送を止めないので、エラー発生時、原稿の破損の程度が大きくなる可能性がある。特許文献1記載の技術は、上記の問題の解消には役立たない。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、原稿を原稿の搬送方向に送る方向にリタードローラーを回転させる手差しモードにおいて、複数枚の原稿をセットしても、連なり給紙(重送)が生じないようにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る原稿搬送装置は、リフト板、ピックアップローラー、リフトモーター、リタードローラー、制御部を含む。前記リフト板は、原稿がセットされる。前記ピックアップローラーは、前記リフト板にセットされた前記原稿のうちの最上位原稿と接する。前記ピックアップローラーは、回転して原稿の搬送方向に前記原稿を送る。前記リフトモーターは前記リフト板を昇降させる。原稿の給紙を開始するとき、前記リフトモーターは前記最上位原稿と前記ピックアップローラーが接するまで前記リフト板を上昇させる。前記リタードローラーは前記ピックアップローラーよりも前記原稿の搬送方向の下流側に設けられる。前記リタードローラーは前記ピックアップローラーによって送り出された前記原稿と接する。通常モードが選ばれているとき、前記制御部は、前記搬送方向と逆方向に前記原稿を送る方向に前記リタードローラーを回転させる。手差しモードが選ばれているとき、前記制御部は、前記搬送方向に前記原稿を送る方向に前記リタードローラーを回転させる。前記手差しモードが選ばれているとき、前記制御部は、前記ピックアップローラーの回転開始後、前記ピックアップローラーが前記原稿を送っている間に前記リフト板の下降を前記リフトモーターに開始させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、原稿を原稿の搬送方向に送る方向にリタードローラーを回転させる手差しモードにおいて、複数枚の原稿をセットしても、連なり給紙の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る複合機の一例を示す図である。
図2】実施形態に係る原稿搬送装置と画像読取部の一例を示す図である。
図3】実施形態に係る原稿搬送装置と画像読取部の一例を示す図である。
図4】実施形態に係る原稿搬送装置の内部を上方から見た図の一例を示す。
図5】実施形態に係る給紙モーターの駆動の伝達の一例を示す図である。
図6】実施形態に係る給紙モーターの駆動の伝達の一例を示す図である。
図7】実施形態に係る通常モードでの搬送読み取りの流れの一例を示す図である。
図8】実施形態に係る単枚読み込みモードでの搬送読み取りの流れの一例を示す図である。
図9】実施形態に係る連続読み込みモードでの搬送読み取りの流れの一例を示す図である。
図10】実施形態に係る手差しモードの動作の一例を示すタイミングチャートである。
図11】実施形態に係るモード選択画面の一例を示す図である。
図12】実施形態に係る連続読み込みモードから単枚読み込みモードへの自動変更の流れの一例を示す図である。
図13】実施形態に係る単枚読み込みモードから連続読み込みモードへの自動変更の流れの一例を示す図である。
図14】モードの自動変更を許可しない場合の動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1図14を用い、実施形態に係る原稿搬送装置1の一例を説明する。以下の説明では、原稿搬送装置1を備えた複合機100を例に挙げて説明する。但し、各実施の形態に記載される構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定せず単なる説明例にすぎない。
【0014】
(複合機100)
図1に基づき、実施形態に係る複合機100の一例を説明する。図1は、実施形態に係る複合機100の一例を示す図である。
【0015】
図1に示すように、複合機100は、原稿搬送装置1のほか、主制御部2、記憶部3、画像読取装置4、操作パネル5、印刷部6を含む。
【0016】
主制御部2は複合機100の動作を制御する。主制御部2は、コピーや送信のようなジョブでの複合機100の各部の動作を制御する。主制御部2は、制御回路20、画像データ生成回路21、画像処理回路22、通信部23を含む基板である。制御回路20は、例えば、CPUである。制御回路20は、ジョブに関する処理、演算を行う。
【0017】
画像データ生成回路21は、画像読取装置4が原稿を読み取って出力したアナログ画像信号に基づき、読取画像データを生成する。画像データ生成回路21は、アナログ画像信号を処理する回路として、例えば、増幅回路、オフセット回路、A/D変換回路を含む。A/D変換回路は、増幅回路、オフセット回路が調整したアナログ画像信号をディジタルデータ(画像データ)に変換する。画像処理回路22は画像処理を行う。画像処理回路22は、読取画像データを処理し、印刷又は送信用の画像データを生成する。画像処理回路22は、例えば、ASIC(画像処理用に設計、開発された集積回路)である。
【0018】
通信部23は通信回路、通信メモリーを含む。通信部23はコンピューター200やFAX装置300と通信する。コンピューター200は、例えば、PCやサーバーである。操作パネル5は宛先の設定を受け付ける。設定された宛先に向けて、主制御部2は原稿の読み取りに基づく画像データを通信部23に送信させる(スキャン送信、FAX送信)。また、通信部23は、コンピューター200やFAX装置300からの印刷用データを受信する。主制御部2は、受信した印刷用データに基づき印刷部6に印刷させる(プリントジョブ、FAX受信印刷)。
【0019】
記憶部3は複数種の記憶装置を含む。記憶部3は、例えば、記憶装置として、RAM31、ROM32、ストレージ33(HDD又はSSD)を含む。主制御部2は、記憶部3のプログラムやデータに基づき、各部を制御する。
【0020】
操作パネル5は使用者の設定を受け付ける。操作パネル5は、表示パネル51、タッチパネル52、ハードキー53を含む。主制御部2は、メッセージや、設定画面を表示パネル51に表示させる。また。主制御部2は、操作用画像を表示パネル51に表示させる。操作用画像は、例えば、ボタン、キー、タブである。タッチパネル52の出力に基づき、主制御部2は、操作された操作用画像を認識する。ハードキー53は、スタートキーやテンキーを含む。タッチパネル52、ハードキー53は使用者の設定操作(ジョブに関する操作)を受け付ける。例えば、操作パネル5は、原稿の読取モードの選択を受け付ける。主制御部2は操作パネル5の出力に基づき、設定内容を認識する。
【0021】
印刷部6は、給紙部61、用紙搬送部62、画像形成部63、定着部64を含む。給紙部61は給紙カセット、ピックアップローラーを含む。給紙カセットは用紙を収容する。ピックアップローラーは用紙を送り出す。印刷ジョブのとき、主制御部2は用紙を給紙部61に供給させる。用紙搬送部62は、用紙搬送用の用紙搬送ローラー対、用紙搬送モーターを含む。用紙搬送ローラー対は用紙を搬送する。用紙搬送モーターは用紙搬送ローラー対を回転させる。主制御部2は用紙を用紙搬送部62に搬送させる。
【0022】
画像形成部63は、例えば、感光体ドラム、帯電装置、露光装置、現像装置、転写ローラーを含む。主制御部2は画像データに基づくトナー像を画像形成部63に形成させる。主制御部2は搬送用紙へのトナー像の転写を画像形成部63に行わせる。定着部64は、ヒーター、定着用回転体、定着用モーターを含む。ヒーターは定着用回転体を熱する。定着用モーターは定着用回転体を回転させる。用紙は定着用回転体と接しつつ搬送される。これにより、トナー像が用紙に定着する。主制御部2は転写されたトナー像の用紙への定着を定着部64に行わせる。用紙搬送部62は印刷済み用紙を機外に排出する。
【0023】
(原稿搬送装置1、画像読取装置4)
図2~図を用いて、実施形態に係る原稿搬送装置1と画像読取装置4を説明する。図2図3は、実施形態に係る原稿搬送装置1と画像読取装置4の一例を示す図である。
【0024】
画像読取装置4は搬送読取用コンタクトガラス41と原稿台42(テーブル読取用コンタクトガラス)を含む。搬送読取用コンタクトガラス41と原稿台42は画像読取装置4の上面に配される。搬送読取を行うとき、使用者は、1又は複数枚の原稿をリフト板8(原稿トレイ11)にセットする。原稿搬送装置1(リフト板8)に原稿がセットされているとき、主制御部2は、搬送読取を画像読取装置4に行わせる。搬送読取は、原稿搬送装置1が搬送する原稿の読み取りである。
【0025】
リフト板8(原稿トレイ11)に原稿がセットされていないとき、主制御部2は、テーブル読取を画像読取装置4に行わせる。テーブル読取は、原稿台42にセットされた原稿の読み取りである。テーブル読取を行うとき、使用者は原稿台42の一面(上側の面)に原稿をセットする。
【0026】
画像読取装置4は、キャリッジ43、移動用ベルト44、第1読取プーリー45、第2読取プーリー46、キャリッジモーター47(図3参照)を含む。キャリッジ43はCIS方式のスキャンユニットである。画像読取装置4はCCD方式の読取ユニットを含んでもよい。
【0027】
移動用ベルト44は無端状である。移動用ベルト44は各プーリーにかけ回される。移動用ベルト44とキャリッジ43は接続される。キャリッジ43を移動させるとき、主制御部2はキャリッジモーター47を回転させる。キャリッジモーター47は第1読取プーリー45又は第2読取プーリー46を回転させる。これにより、移動用ベルト44が周回する。キャリッジモーター47は正逆回転可能である。移動用ベルト44の周回にあわせ、キャリッジ43は水平方向(副走査方向、主走査方向と垂直な方向、図2の左右方向)に移動する。キャリッジ43は、各コンタクトガラスの他面側(下側)に移動する。
【0028】
キャリッジ43は光源48、レンズ、イメージセンサー49を含む(図3参照)。原稿を読み取るとき、主制御部2は光源48を点灯させる。光源48は搬送読取用コンタクトガラス41又は原稿台42を通して、原稿に光を照射する。光源48は、例えば、LEDである。レンズは原稿の反射光をイメージセンサー49の各受光素子に導く。イメージセンサー49は原稿台42に置かれた原稿、又は、搬送読取用コンタクトガラス41上を搬送される原稿を読み取る。イメージセンサー49は、ラインセンサーである。イメージセンサー49は複数の受光素子(光電変換素子、画素)を含む。
【0029】
受光素子は、原稿で反射された光を受光する。各受光素子は、受光量(反射光量)に応じたアナログ画像信号を出力する。アナログ画像信号は主制御部2に入力される。主制御部2の画像データ生成回路21は、入力されたアナログ画像信号に基づき、読取画像データを生成する。
【0030】
搬送読取のとき、主制御部2は、キャリッジ43(イメージセンサー49の読取ラインの位置)を搬送読取用コンタクトガラス41の下方に移動させる。キャリッジ43は、搬送読取用コンタクトガラス41の上を通過する原稿を読み取る。テーブル読取のとき、主制御部2は、原稿台42の下方において、キャリッジ43を副走査方向に所定の速度で移動させる。移動中に、キャリッジ43は、原稿台42にセットされた原稿を読み取る。
【0031】
原稿搬送装置1は画像読取装置4の上方に設けられる。原稿搬送装置1は、読取位置(搬送読取用コンタクトガラス41)に向けてセットされた原稿を搬送する。原稿搬送装置1は、1枚ずつ原稿を搬送する。原稿搬送装置1は、図2の紙面奥側を支点として上下方向に開閉する。原稿搬送装置1は、画像読取装置4の各コンタクトガラスを上方から押さえるカバーとしても機能する。
【0032】
図2に示すように、原稿搬送装置1は、原稿の搬送方向の上流側から順に、原稿トレイ11、ピックアップローラー12、分離搬送部7、レジストローラー対13、複数の搬送ローラー14a、14b、14c、排出ローラー対14d、原稿排出トレイ15を含む。
【0033】
原稿トレイ11は、原稿をセットする部分である。ピックアップローラー12(給紙回転体に相当)、分離搬送部7が含む回転体、レジストローラー対13、複数の搬送ローラー14a、14b、14c、及び、排出ローラー対14dは原稿を送る回転体である。送り出された原稿は、最終的に原稿排出トレイ15に排出される。
【0034】
図3に示すように、原稿搬送装置1は、搬送制御部10(制御部に相当)、原稿セットセンサー16、給紙モーター17、原稿搬送モーター18、リフトモーター81、上限検知センサー82を含む。給紙モーター17、原稿搬送モーター18は、原稿を搬送する回転体を回転させるためのモーターである。給紙モーター17、原稿搬送モーター18、リフトモーター81には、例えば、ステッピングモーターを用いることができる。
【0035】
搬送制御部10と主制御部2は、信号線で接続され、通信可能である。搬送制御部10は、例えば、基板である。例えば、搬送制御部10は、搬送制御回路10a(CPU)、メモリー10b(RAM、ROM)、モーター制御回路10cを含む。モーター制御回路10cは、例えば、モータードライバーICである。モーター制御回路10cは、原稿搬送装置1内の各モーターの回転、停止、回転速度を制御する。
【0036】
原稿トレイ11には、原稿を規制する規制カーソル対11aが設けられる。規制カーソル対11aは原稿搬送方向と垂直な方向に移動できる。規制カーソル対11aは連動する。規制カーソル対11aをスライド移動させて、規制カーソル対11aで原稿を挟む。これにより、原稿の搬送方向と垂直な方向の位置がずれない。
【0037】
原稿トレイ11の原稿の搬送方向下流側部分は、リフト板8となっている。リフト板8は原稿トレイ11の一部である。原稿トレイ11に原稿をセットすることは、リフト板8に原稿をセットすることでもある。
【0038】
原稿トレイ11のうち、リフト板8には、原稿セットセンサー16が設けられる。原稿セットセンサー16は、例えば、光センサーである。原稿セットセンサー16は、原稿がセットされているときとセットされていないときで、出力レベルが異なる。原稿セットセンサー16の出力は、後述の搬送制御部10(搬送制御回路10a)に入力される。搬送制御部10(搬送制御回路10a)は、原稿トレイ11(リフト板8)にセットされた原稿があるか否かを認識する。原稿がセットされたことを認識したとき、搬送制御部10は、主制御部2にその旨を通知する。また、原稿が原稿トレイ11からなくなったことを認識したときも、搬送制御部10は、主制御部2にその旨を通知する。
【0039】
原稿トレイ11に原稿がセットされている状態で読み取りを行うとき(搬送読取のとき)、主制御部2は、搬送制御部10に原稿の搬送指示を与える。この指示に基づき、搬送制御部10は、原稿搬送装置1の動作を制御する。
【0040】
リフト板8の原稿の搬送方向の上流側端部に回転軸80が設けられる。原稿搬送装置1は、リフトモーター81を含む。リフトモーター81は、リフト板8を昇降させるためのモーターである。リフトモーター81は回転軸80を回転させる。リフトモーター81の回転に応じて、リフト板8の原稿の搬送方向下流側端部が上昇、又は、下降する。あるいは、リフト板8の下方に、持ち上げ部材が設けられてもよい。持ち上げ部材は、シャフトと、シャフトに取り付けられた持ち上げ板を含む。シャフトは回転可能に支持される。シャフトの軸線方向は、原稿搬送方向と垂直な方向とされる。リフトモーター81は、このシャフトを回転させてもよい。リフトモーター81を一方側に回転させると、シャフトは、持ち上げ板がリフト板8を下から持ち上げる方向に回転する。リフトモーター81を他方側に回転させると、シャフトは、持ち上げ板がリフト板8を下降させる方向に回転する。このように、持ち上げ部材を用いて、リフト板8を昇降させてもよい。
【0041】
上限検知センサー82は、リフト板8が上限位置まで上昇したことを検知するためセンサーである。ピックアップローラー12は、リフト板8の上方に設けられる。ピックアップローラー12は上下方向に揺動可能となっている。ピックアップローラー12を揺動可能に支持する支持部材12aが設けられる。例えば、支持部材12aは、第2給紙ローラー72の回転軸に引っかけられる。
【0042】
上限検知センサー82は、例えば、透過型の光センサーである。リフト板8が上昇するとセットされた原稿とピックアップローラー12が接する。さらにリフト板8が上昇を続けると、原稿とともにピックアップローラー12も持ち上げられる。上限までピックアップローラー12が持ち上げられると、支持部材12aに設けられた突起が上限検知センサー82の光路を遮光する。上限検知センサー82は、リフト板8(ピックアップローラー12)が上限位置にあるときとないときとで出力レベルが変化する。上限検知センサー82の出力は、搬送制御部10に入力される。上限検知センサー82の出力に基づき、搬送制御部10は、リフト板8(ピックアップローラー12)が上限位置にあるか否かを認識する。
【0043】
分離搬送部7は、第1給紙ローラー71、第2給紙ローラー72、給紙ベルト73、リタードローラー70を含む。給紙ベルト73は、第1給紙ローラー71と第2給紙ローラー72にかけ回される。搬送制御部10は給紙モーター17を回転させる。これにより、第1給紙ローラー71が回転し、給紙ベルト73が周回する。給紙ベルト73は、ピックアップローラー12から送られた原稿を、原稿の搬送方向下流側に送る。
【0044】
給紙モーター17がステッピングモーターの場合、搬送制御部10は、給紙モーター17にパルスを入力する。1パルスあたりの給紙モーター17の回転角度は決まっている。従って、1パルスごとに、ピックアップローラー12は、所定量ずつ原稿を送り出す。1パルスごとに、第1給紙ローラー71、第2給紙ローラー72、給紙ベルト73は、所定量ずつ原稿を搬送する。
【0045】
リタードローラー70は、給紙ベルト73の下側に設けられる。また、リタードローラー70は、給紙ベルト73と接する。給紙モーター17は、リタードローラー70も回転させる。リタードローラー70の回転方向は、モードにより異なる(詳細は後述)。
【0046】
原稿搬送路110に沿ってレジストローラー対13、搬送ローラー14a、14b、14c、排出ローラー対14dが設けられる。これらは原稿を搬送する。原稿は、最終的に原稿排出トレイ15に排出される。原稿搬送モーター18は、レジストローラー対13、搬送ローラー14a、14b、14cと排出ローラー対14dを回転させる。原稿搬送時、搬送制御部10は、原稿搬送モーター18を回転させる。
【0047】
レジストローラー対13は給紙ベルト73の原稿の搬送方向下流側に設けられる。給紙ベルト73(第1給紙ローラー71、リタードローラー70、ピックアップローラー12)とレジストローラー対13の間に、フィードセンサー19が設けられる。フィードセンサー19は、例えば、光センサーである。フィードセンサー19は、原稿を検知しているときと、原稿を検知していないときとで、出力レベルが異なる。
【0048】
フィードセンサー19の出力は、搬送制御部10に入力される。フィードセンサー19の出力に基づき、搬送制御部10は、原稿の先端がフィードセンサー19(フィードセンサー19の設置位置、フィードセンサー19の検知エリア)に到達したこと、通過中であること、後端がフィードセンサー19を通過したことを認識する。
【0049】
フィードセンサー19の出力に基づき、搬送制御部10は、レジストローラー対13の回転を制御してもよい。例えば、原稿先端のフィードセンサー19への到達を認識してから、予め定められた撓み作成時間が経過するまで、搬送制御部10は、レジストローラー対13を停止した状態とする。原稿の先端は停止状態のレジストローラー対13に突き当たる。停止状態のまま、搬送制御部10は、第1給紙ローラー71(給紙ベルト73)とピックアップローラー12による搬送を続ける。これにより、原稿が撓む。撓まされた原稿の弾性によって、原稿の先端がレジストローラー対13のニップに沿う。これにより、原稿の斜行が改善される。
【0050】
また、レジストローラー対13の原稿の搬送方向下流側近傍(レジストローラー対13と搬送ローラー14a)の間に、重送検知センサー111が設けられる。重送検知センサー111は、例えば、超音波センサーである。重送検知センサー111は発信部と受信部を含む。搬送される原稿を上下方向で挟むように、発信部と受信部が設けられる。発信部は、原稿搬送時、超音波を発する。重送が生じたとき、受信部が受信する超音波のレベルは、搬送される原稿が1枚だけのときよりも低くなる。受信部の出力は搬送制御部10に入力される。搬送制御部10は、受信部の出力の大きさに基づき、重送が生じたか否かを判定できる。
【0051】
レジストローラー対13、搬送ローラー14a、14b、14c、排出ローラー対14dは、原稿を原稿搬送路110に沿って搬送する。原稿は、最終的に原稿排出トレイ15に排出される。原稿搬送モーター18は、レジストローラー対13、搬送ローラー14a、14b、14cと排出ローラー対14dを回転させる。原稿搬送時、搬送制御部10は、原稿搬送モーター18を回転させる。
【0052】
(各ローラーの駆動)
次に、図4図6を用いて、実施形態に係る原稿搬送装置1での各ローラーの駆動の一例を説明する。図4は実施形態に係る原稿搬送装置1の内部を上方から見た図の一例を示す。図5図6は実施形態に係る給紙モーター17の駆動の伝達の一例を示す図である。
【0053】
図4の矢印Dは、原稿の搬送方向を示す。図4に示すように、ピックアップローラー12の原稿と接する部分、及び、給紙ベルト73は、原稿搬送装置1と垂直な方向において、略中央に位置する。図4では、ピックアップローラー12の原稿と接する部分、及び、給紙ベルト73は、カバー74によって、ほぼ見えない。図4において、第1給紙ローラー71は、原稿の搬送方向と垂直な方向に延びる回転軸71aを含む。回転軸71aは回転可能に支持される。給紙モーター17は、回転軸71aを回転させる。
【0054】
また、回転軸71aには、第1プーリー71pが取り付けられる。ピックアップローラー12には、第2プーリー12pが取り付けられる。これらのプーリーには、連動用ベルト75が張架される。回転軸71a(第1給紙ローラー71)が回転すると、連動用ベルト75が回転する。ピックアップローラー12も連動して回転する。
【0055】
原稿搬送装置1では、給紙モーター17は、ピックアップローラー12、第1給紙ローラー71、第2給紙ローラー72、給紙ベルト73、リタードローラー70を回転させる。給紙モーター17は、第1方向(正方向)と第2方向(逆方向)の両方に回転できる。ピックアップローラー12、第1給紙ローラー71、第2給紙ローラー72、給紙ベルト73、リタードローラー70を回転させるため、原稿搬送装置1は、駆動機構9を含む。
【0056】
駆動機構9は、第1駆動機構9a、第2駆動機構9b、第3駆動機構9cを含む。第1駆動機構9a、第2駆動機構9b、第3駆動機構9cは、給紙モーター17の駆動を伝達する。
【0057】
図5図6は、各駆動機構9が含むギアの一例を示す図である。図5図6のうち、左上隅の矩形は、給紙モーター17を示す。給紙モーター17の回転軸17aには、モーターギアが取り付けられる。基本ギア90の端部とモーターギアには伝達ベルト90aが架け回される。モーターギア(給紙モーター17)が回転すると、基本ギア90が回転する。図5図6では、基本ギア90は、便宜上、大きく図示している。基本ギア90に第1駆動機構9a、第2駆動機構9b、第3駆動機構9cが接続される。
【0058】
具体的に、第1駆動機構9aは、第1給紙ローラー71とピックアップローラー12を回転させるための機構である。第1駆動機構9aは、第1ギア91を含む。第1ギア91は、第1給紙ローラー71の回転軸71aに取り付けられる。第1ギア91は基本ギア90と噛み合う。そのため、給紙モーター17が回転すると、第1駆動機構9aは第1給紙ローラー71を回転させる。
【0059】
上述のように、第1給紙ローラー71の回転軸71aには、第1プーリー71pが設けられる。ピックアップローラー12の回転軸12aには、第2プーリー12pが設けられる。第1プーリー71pと第2プーリー12pに巻かれた連動用ベルト75により、第1給紙ローラー71にあわせてピックアップローラー12が回転する。
【0060】
また、第2駆動機構9bも、第1給紙ローラー71とピックアップローラー12を回転させるための機構である。第2駆動機構9bは、第2ギア92と第3ギア93を含む。第2ギア92は、基本ギア90と噛み合う。第3ギア93は第2ギア92と噛み合う。第3ギア93は、第1給紙ローラー71の回転軸71aに取り付けられる。給紙モーター17が回転すると、第2駆動機構9bは第1給紙ローラー71を回転させる。
【0061】
また、第3駆動機構9cは、リタードローラー70を回転させるための機構である。第3駆動機構9cは、第4ギア94、第5ギア95、第6ギア96を含む。基本ギア90と第4ギア94が噛み合う。第4ギア94と第5ギア95が噛み合う。第5ギア95と第6ギア96が噛み合う。第6ギア96は、リタードローラー70の回転軸70aに取り付けられる。給紙モーター17が回転すると、第3駆動機構9cは、リタードローラー70を回転させる。
【0062】
第1駆動機構9aと第2駆動機構9bは、何れも、原稿を原稿の搬送方向に送る方向に、第1給紙ローラー71とピックアップローラー12を回転させるための機構である。第3駆動機構9cは、給紙モーター17の回転方向にあわせて、リタードローラー70の回転方向も切り替わる機構である。
【0063】
1.給紙モーター17を正方向に回転させる場合
図5を用いて、給紙モーター17を第1方向(正方向)で回転させたときの駆動の伝達例を説明する。図5において、左が原稿の搬送方向を示す。図5の下側は、原稿搬送装置1の正面側と対応し、上側は原稿搬送装置1の奥側と対応する。
【0064】
図5の例では、反時計方向(CCW)が第1方向である。給紙モーター17を第1方向に回転させると、基本ギア90も反時計方向(CCW)に回転する。
【0065】
基本ギア90が反時計方向(CCW)に回転すると、第1駆動機構9aの第1ギア91は、時計方向(CW)に回転する。その結果、第1給紙ローラー71とピックアップローラー12も時計方向(CW)に回転する。時計方向は、原稿の搬送方向下流側に向けて原稿を送るように、第1給紙ローラー71、第2給紙ローラー72、給紙ベルト73、ピックアップローラー12が回転する方向である。この場合、第1ギア91は、第1給紙ローラー71の回転軸71aを時計方向(CW)に回す。
【0066】
基本ギア90が反時計方向(CCW)に回転すると、第2駆動機構9bの第2ギア92は、時計方向(CW)に回転する。これと噛み合う第2駆動機構9bの第3ギア93は、反時計方向(CW)に回転する。第3ギア93は、第1給紙ローラー71の回転軸71aを反時計方向(CCW)に回そうとする。
【0067】
ここで、第3ギア93は、第1ワンウェイクラッチ97を内蔵する。第1ワンウェイクラッチ97は、第3ギア93が反時計方向(CCW)に回転しようとする場合、回転軸71aにトルクを伝達しない。給紙モーター17を第1方向(正方向)で回転させた場合、第2駆動機構9bでの駆動力の伝達は、第1ワンウェイクラッチ97で切断される。
【0068】
基本ギア90が反時計方向(CCW)に回転すると、第3駆動機構9cの第4ギア94は、時計方向(CW)に回転する。第4ギア94と噛み合う第3駆動機構9cの第5ギア95は、反時計方向(CCW)に回転する。第5ギア95と噛み合う第3駆動機構9cの第6ギア96は、時計方向(CW)に回転する。第6ギア96は、リタードローラー70の回転軸70aを時計方向(CW)に回す。
【0069】
リタードローラー70は、給紙ベルト73と向かい合う(図2参照)。そのため、この場合、リタードローラー70は、原稿を原稿の搬送方向と逆方向(上流側)に送り返すように回転する。つまり、給紙モーター17を第1方向に回転させたとき、第3駆動機構9cは、原稿を原稿の搬送方向上流側に送る方向にリタードローラー70を回転させる。
【0070】
2.給紙モーター17を逆方向に回転させる場合
図6を用いて、給紙モーター17を第2方向(逆方向)に回転させたときの駆動の伝達例を説明する。図6において、左方向が原稿の搬送方向を示す。図5の下側は、原稿搬送装置1の正面側と対応し、上側は原稿搬送装置1の奥側と対応する。
【0071】
図6の例では、時計方向(CW)が第2方向である。給紙モーター17を第2方向に回転させると、基本ギア90も時計方向(CW)に回転する。基本ギア90が時計方向(CW)に回転すると、第1駆動機構9aの第1ギア91は、反時計方向(CCW)に回転する。第1ギア91は、第1給紙ローラー71の回転軸71aを反時計方向(CCW)に回そうとする。
【0072】
ここで、第1ギア91は、第2ワンウェイクラッチ98を内蔵する。第2ワンウェイクラッチ98は、第1ギア91(第1給紙ローラー71の回転軸71a)が反時計方向(CCW)に回転しようとする場合、回転軸71aにトルクを伝達しない。給紙モーター17を第2方向(逆方向)で回転させた場合、第1駆動機構9aでの駆動力の伝達は、第2ワンウェイクラッチ98で切断される。
【0073】
基本ギア90が時計方向(CW)に回転すると、第2駆動機構9bの第2ギア92は、反時計方向(CCW)に回転する。これと噛み合う第2駆動機構9bの第3ギア93は、時計方向(CW)に回転する。第3ギア93は、第1給紙ローラー71の回転軸71aを時計方向(CW)に回そうとする。この場合、第3ギア93の第1ワンウェイクラッチ97は、回転軸71aにトルクを伝達する。給紙モーター17を第2方向(逆方向)で回転させた場合、第2駆動機構9bの第3ギア93は、第1給紙ローラー71の回転軸71aを時計方向(CW)に回転させる。
【0074】
その結果、第1給紙ローラー71とピックアップローラー12も時計方向(CW)に回転する。時計方向は、原稿を原稿の搬送方向に送る方向に第1給紙ローラー71、第2給紙ローラー72、給紙ベルト73、ピックアップローラー12が回転する方向である。
【0075】
基本ギア90が時計方向(CW)に回転すると、第3駆動機構9cの第4ギア94は、反時計方向(CCW)に回転する。第4ギア94と噛み合う第3駆動機構9cの第5ギア95は、時計方向(CW)に回転する。第5ギア95と噛み合う第3駆動機構9cの第6ギア96は、反時計方向(CCW)に回転する。第6ギア96は、リタードローラー70の回転軸80を反時計方向(CCW)に回す。
【0076】
リタードローラー70は、給紙ベルト73と向かい合う(図2参照)。反時計方向は、原稿を原稿の搬送方向に送る方向にリタードローラー70が回転する方向である。つまり、給紙モーター17を第2方向に回転させたとき、リタードローラー70は、原稿を原稿の搬送方向に送る方向に回転する。
【0077】
給紙モーター17の原稿を送る方向をまとめると以下のとおりである。
(1)給紙モーター17が第1方向(正方向)に回転するとき
・ピックアップローラー12、第1給紙ローラー71、第2給紙ローラー72、給紙ベルト73→原稿を原稿の搬送方向(下流方向)に送る方向に回転
・リタードローラー70→原稿を原稿の搬送方向における上流方向(原稿の搬送方向と逆方向)に送り返す方向に回転
(2)給紙モーター17が第2方向(逆方向)で回転するとき
・ピックアップローラー12、第1給紙ローラー71、第2給紙ローラー72、給紙ベルト73→原稿を原稿の搬送方向(下流方向)に送る方向に回転
・リタードローラー70→原稿を原稿の搬送方向下流側に送る方向に回転
【0078】
このように、原稿搬送装置1では、給紙モーター17の回転方向によらず、ピックアップローラー12、第1給紙ローラー71、第2給紙ローラー72、給紙ベルト73は、原稿を原稿の搬送方向下流側に送る方向に回転する。リタードローラー70は、給紙モーター17の回転方向に応じて、回転方向が変わる。
【0079】
(読み取りのモードの選択)
次に、読み取りのモードの選択の概要を説明する。複合機100(原稿搬送装置1)では、原稿を搬送して読み取るとき(搬送読取)に用いるモードとして、通常モードと手差しモードの何れかを選択することができる。例えば、操作パネル5でモードを選択することができる。
【0080】
通常モードは、リタードローラー70を、原稿を原稿の搬送方向と逆方向に送る方向(送り返す方向)で回転させるモードである。つまり、通常モードは、重なる原稿を分離しつつ(捌きつつ)、原稿を搬送するモードである。手差しモードは、リタードローラー70を、原稿を原稿の搬送方向下流側に送る方向(原稿の搬送方向に送る方向)に回転させるモードである。手差しモードは、原稿の捌きを行わないで原稿を搬送するモードである。
【0081】
複数枚のシートが重ねあわせられた1枚の原稿がある。例えば、宅急便(登録商標)用の伝票は、台紙に転写用のカーボン紙が貼り付けられている。また、付箋のようなはがせる紙が貼り付けられた原稿を読み取りたい場合もある。リタードローラー70は、その表面と原稿との摩擦で重なった原稿を分離する。伝票や付箋が貼られた原稿をリタードローラー70で擦ると、原稿に力が加わる。その結果、貼り付けられたシート(紙)が剥がれることがある。また、切り取りのためのミシン線入りの原稿も、リタードローラー70で擦らない方が好ましい場合がある。原稿の分離動作をリタードローラー70に行わせたくない場合、使用者は手差しモードを利用できる。
【0082】
(通常モードでの搬送読取)
次に、図7を用いて、実施形態に係る通常モードでの搬送読み取りの流れの一例を説明する。図7は実施形態に係る通常モードでの搬送読み取りの流れの一例を示す図である。
【0083】
図7のスタートは、操作パネル5が通常モードの選択を受け付け、かつ、読み取りを伴うジョブの開始指示を受け付けた時点である。例えば、操作パネル5は、スタートボタンの操作を開始指示として受け付ける。なお、コピー、スキャン送信のようなジョブが読み取りを伴うジョブである。搬送読取なので、使用者は、開始指示の前に、原稿を原稿トレイ11にセットしておく。原稿セットセンサー16の出力に基づき、搬送制御部10と主制御部2は、原稿セットを認識する。
【0084】
まず、主制御部2は、搬送制御部10に通常モードでの搬送読取の開始を指示する(ステップ♯11)。この指示を受け、搬送制御部10は、リフト板8を上限までリフトモーター81に上昇させる(ステップ♯12)。リフト板8の上昇開始後、上限検知センサー82の出力に基づき、リフト板8(ピックアップローラー12)の上限到達を認識したとき、搬送制御部10は、リフトモーター81を停止させる。
【0085】
なお、原稿搬送装置1は、リフト板8が下限に位置することを検知する下限検知センサー112を含む。例えば、下限検知センサー112はリフト板8の底面と接するスイッチである。下限検知センサー112の出力は搬送制御部10に入力される。下限検知センサー112の出力に基づき、搬送制御部10は、リフト板8が下限まで下がったことを認識する。ジョブの開始前、搬送制御部10は、リフト板8を下限まで下降させておく。例えば、リフト板8が下限ではない状態で、セットされた原稿が無いことを認識したとき、搬送制御部10は、リフトモーター81を回転させ、リフト板8を下限まで下降をさせる。
【0086】
リフト板8の上昇開始後、搬送制御部10は、第1方向(正方向)での給紙モーター17の回転を開始する(ステップ♯13)。これにより、ピックアップローラー12、第1給紙ローラー71、第2給紙ローラー72、給紙ベルト73は、原稿を原稿の搬送方向に送る方向に回転する。原稿の給紙が開始される。リタードローラー70は、原稿を原稿の搬送方向と逆方向に送り返す方向に回転する。
【0087】
なお、リタードローラー70はトルクリミッターを内蔵する。送られた原稿が1枚だけの場合、回転負荷がトルクリミッターの設定トルクを上回る。その結果、リタードローラー70は、給紙ベルト73に従動する。つまり、リタードローラー70の回転方向は、原稿を原稿の搬送方向に送る方向となる。
【0088】
フィードセンサー19の出力に基づき、搬送制御部10は、フィードセンサー19への原稿の先端到達を認識する(ステップ♯14)。そして、搬送制御部10は通過所要時間T9の計時を開始する(ステップ♯15)。具体的に、通過所要時間T9は、原稿先端がフィードセンサー19に到達したことを認識してから、原稿後端がフィードセンサー19を通過したことを認識するまでの時間である。
【0089】
搬送制御部10は、原稿の後端がフィードセンサー19を通過したか否かを確認する(ステップ♯16)。通過していない場合(ステップ♯16のNo)、搬送制御部10は、計っている通過所要時間T9が予め定められた許容時間を超えたか否かを確認する(ステップ♯17)。許容時間は、原稿サイズに応じて予め定められる。許容時間は、連なり給紙エラーが発生したか否かを判定するための時間である。
【0090】
許容時間は、1枚の原稿の搬送方向の長さを理想的な(仕様上の)原稿の搬送速度で除して得られる時間に、所定のマージンを加算した時間である。連なり給紙が発生した場合、先の原稿の後端部分と後の原稿の先端部分が、重なった状態で搬送される。この場合、フィードセンサー19は、先の原稿が通過しても、その通過を検知できない。
【0091】
なお、操作パネル5は原稿のサイズの設定を受け付ける。この設定に基づき、搬送制御部10は、1枚の原稿の搬送方向の長さを認識してもよい。また、原稿トレイ11に原稿の搬送方向の長さを検知するための原稿サイズセンサーを設けてもよい。この場合、搬送制御部10は、原稿サイズセンサーの出力に基づき、原稿の搬送方向の長さを認識する。
【0092】
許容時間を超えていないとき(ステップ♯17のNo)、搬送制御部10は、ステップ♯16を実行する(ステップ♯16に戻る)。許容時間を超えたとき(ステップ♯17のYes)、搬送制御部10は、連なり給紙エラーが発生したと判定する(ステップ♯18)。後端通過検知までの時間が長すぎる場合、搬送制御部10は、連なり給紙エラーが発生したと判定する。そして、搬送制御部10は、原稿の搬送を全て停止する(ステップ♯19)。言い換えると、搬送制御部10は、原稿搬送装置1内の全ての原稿搬送用のモーターを停止させる。そして、搬送制御部10は、連なり給紙エラーの発生のメッセージを表示パネル51に表示させる(ステップ♯110)。その後、搬送制御部10は、本フローチャートを終了する(エンド)。やり直したい場合、使用者は、原稿のセットからやり直す。
【0093】
一方、後端通過を認識した場合(ステップ♯16のYes)、搬送制御部10は、給紙モーター17を停止させる(ステップ♯111)。つまり、ピックアップローラー12、第1給紙ローラー71、第2給紙ローラー72、給紙ベルト73、リタードローラー70を停止させる。
【0094】
搬送制御部10は、フィードセンサー19を通過した原稿を排出トレイまで搬送する。画像読取装置4は、搬送される原稿を読み取る。そして、搬送制御部10は、原稿トレイ11(リフト板8)に原稿が残っているか否かを確認する(ステップ♯112)。残っていない場合(ステップ♯112のNo)、搬送制御部10は、本フローチャートを終了する(エンド)。残っている場合、搬送制御部10は、所定の紙間時間が経過した後、ステップ♯13を開始する(ステップ♯13に戻る)。
【0095】
(単枚読み込みモードでの搬送読取)
次に、図8を用いて、実施形態に係る手差しモードのうちの単枚読み込みモードでの搬送読取の流れの一例を説明する。図8は、実施形態に係る単枚読み込みモードでの搬送読み取りの流れの一例を示す図である。
【0096】
複合機100(原稿搬送装置1)では、手差しモードとして、2つのモードを用いることができる。手差しモードのうち、1つは単枚読み込みモードである。もう1つは、連続読み込みモードである。単枚読み込みモードは、1枚ずつ原稿を読み取るためのモードである。連続読み込みモードは、連続的、自動的に複数枚の原稿を手差しモードで読み取るためのモードである。
【0097】
以下の説明では、図8を用いて、単枚読み込みモードでの搬送読取の流れの一例を説明する。単枚読み込みモードの説明の後、連続読み込みモードでの搬送読取の流れの一例を説明する。
【0098】
図8のスタートは、単枚読み込みモードが選択された状態で、操作パネル5が読み取りを伴うジョブの開始指示を受け付けた時点である。例えば、操作パネル5は、スタートボタンの操作を開始指示として受け付ける。使用者は、開始指示の前に、原稿を原稿トレイ11にセットしておく。原稿トレイ11にセットする原稿は複数枚でもよい。原稿セットセンサー16の出力に基づき、搬送制御部10と主制御部2は、原稿セットを認識する。
【0099】
まず、手差しモードの単枚読み込みモードでの搬送読取を開始するとき、搬送制御部10は、リフト板8を上限までリフトモーター81に上昇させる(ステップ♯21)。この点は、通常モードと同様である。リフト板8の上昇開始後、搬送制御部10は、第2方向(逆方向)での給紙モーター17の回転を開始する(ステップ♯22)。これにより、ピックアップローラー12、第1給紙ローラー71、第2給紙ローラー72、給紙ベルト73は、原稿を原稿の搬送方向下流側に送る方向に回転する。リタードローラー70も、原稿を原稿の搬送方向下流側に送る方向に回転する。
【0100】
手差しモードでは、搬送制御部10は、通常モードよりも原稿の搬送速度を遅くする(単枚読み込みモードと連続読み込みモードの両方とも)。例えば、搬送制御部10は、手差しモードでの搬送速度を、通常モードの搬送速度のおよそ1/2とする。搬送制御部10は、給紙モーター17の回転速度を通常モードと手差しモードで変えてもよい。
【0101】
また、搬送制御部10は、手差しモードと通常モードで給紙モーター17を同じ速度で回転させてもよい。この場合、手差しモードでの搬送速度が通常モードでの搬送速度のおよそ1/2となるように、第1駆動機構9aが含むギアの歯数と、第2駆動機構9bが含むギアの歯数が設定される。
【0102】
フィードセンサー19の出力に基づき、搬送制御部10は、フィードセンサー19への原稿の先端到達を認識する(ステップ♯23)。そして、搬送制御部10は、リフト板8を予め定められた下降量だけ、リフトモーター81に下降させる(ステップ♯24)。
【0103】
つまり、ピックアップローラー12が原稿を送っている間に、搬送制御部10はリフト板8の下降をリフトモーター81に開始させる。下降開始後、ピックアップローラー12と原稿が接しなくなる。さらに、給紙した原稿がピックアップローラー12を抜けた直後に、ピックアップローラー12が停止しなくても、次の原稿は送り出されない。つまり、リタードローラー70が原稿を原稿の搬送方向に送っても、連なり給紙エラーが生じ難くなる。
【0104】
給紙モーター17(ピックアップローラー12)の回転開始後、フィードセンサー19が原稿の先端到達を認識する前に、搬送制御部10は、リフト板8の下降を開始してもよい。リタードローラー70と給紙ベルト73のニップが原稿を掴めば、ピックアップローラー12と原稿が接しなくても、原稿は搬送される。そこで、搬送制御部10は、ピックアップローラー12の回転開始から予め定められた待ち時間が経過した時点以降に、リフト板8の下降をリフトモーター81に開始させてもよい。この場合、待ち時間は、ピックアップローラー12(ピックアップローラー12の原稿と接する部分)からリタードローラー70(リタードローラー70と給紙ベルト73のニップ)までの距離を原稿の理想的な搬送速度で除して得られる時間である。
【0105】
また、給紙モーター17はピックアップローラー12を回転させる。給紙モーター17にはステッピングモーターを用いることができる。ステッピングモーターを用いる場合、1パルスあたりの給紙モーター17とピックアップローラー12の回転量は、決まっている。そこで、搬送制御部10は、ピックアップローラー12の回転開始から予め定められた下降開始パルス数だけパルスを給紙モーター17に入力すると、リフト板8の下降をリフトモーター81に開始させてもよい。この場合、下降開始パルス数は、ピックアップローラーからリタードローラーまでの距離を、1パルスあたりの原稿の移動量で除して得られる値である。求められた値が整数でない場合、小数点以下の値は繰り上げるようにしてもよい。
【0106】
1パルスあたりの原稿の移動量は予め定められる。1パルスあたりの原稿の移動量は、1パルスを給紙モーター17に入力したときのピックアップローラー12の周面の移動量としてもよい。多少のスリップを考慮し、1パルスあたりの原稿の移動量は、1パルスを給紙モーター17に入力したときのピックアップローラー12の周面の移動量からマージンを減じた値でもよい。
【0107】
所定の下降量だけリフト板8を下降させると、搬送制御部10はリフトモーター81を停止する。所定の下降量は、例えば、10mm~20mmの範囲内の長さとできる。例えば、下降量は、15mm程度とすることができる。例えば、リフトモーター81がステッピングモーターの場合、搬送制御部10は、所定数のパルスをリフトモーター81に入力する。所定数のパルスは、所定の下降量だけリフト板8が下がるパルス数である。下降量は、リフト板8の上面のうち原稿の搬送方向下流側端辺の高さの変化量である。
【0108】
下降量は、ピックアップローラー12の周面の下端部から最上位原稿の1つ下の原稿までの距離が予め定められた離間距離以上となるように設定できる。つまり、原稿と、ピックアップローラー12の周面の下端部と、をしっかり離す。かつ、下降量は、前記リフト板8上の原稿が予め定められた下限高さよりも下にならない値とする。原稿が垂れ下がりすぎにないようにする。
【0109】
また、フィードセンサー19への原稿の先端到達を認識した時点で、搬送制御部10は通過所要時間T9の計時を開始する(ステップ♯25)。通過所要時間T9は、原稿先端がフィードセンサー19に到達したことを認識してから、原稿後端がフィードセンサー19を通過したことを認識するまでの時間である。
【0110】
搬送制御部10は、原稿の後端がフィードセンサー19を通過したか否かを確認する(ステップ♯26)。通過していない場合(ステップ♯26のNo)、搬送制御部10は、計っている通過所要時間T9が許容時間を超えたか否かを確認する(ステップ♯27)ただし、搬送速度が約1/2なので、手差しモードの許容時間は、通常モードに比べ、およそ2倍となる。
【0111】
許容時間を超えていないとき(ステップ♯27のNo)、搬送制御部10は、ステップ♯26を実行する(ステップ♯26に戻る)。許容時間を超えたとき(ステップ♯27のYes)、搬送制御部10は、連なり給紙エラーが発生したと判定する(ステップ♯28)。後端通過検知が遅れているとき、搬送制御部10は、連なり給紙エラーが発生したと判定する。そして、搬送制御部10は、原稿の搬送を全て停止する(ステップ♯29)。言い換えると、搬送制御部10は、原稿搬送装置1内の全ての原稿搬送用のモーターを停止させる。そして、搬送制御部10は、連なり給紙エラーの発生のメッセージを表示パネル51に表示させる(ステップ♯210)。その後、搬送制御部10は、本フローチャートを終了する(エンド)。やり直したい場合、使用者は、原稿のセットからやり直す。
【0112】
一方、後端通過を認識した場合(ステップ♯26のYes)、搬送制御部10は、給紙モーター17を停止させる(ステップ♯211)。つまり、ピックアップローラー12、第1給紙ローラー71、第2給紙ローラー72、給紙ベルト73、リタードローラー70を停止させる。搬送制御部10は、フィードセンサー19を通過した原稿を排出トレイまで搬送する。画像読取装置4は、搬送される原稿を読み取る。そして、搬送制御部10は、本フローチャートを終了する(エンド)。
【0113】
単枚読み込みモードは、原稿1枚ごとにジョブの開始を指示し(スタートボタンを操作し)、1枚ずつ原稿を読み取ることを考慮したモードである。なお、単枚読み込みモードでも複数枚の原稿を原稿トレイ11にセットしてもよい。続けて単枚読み込みモードで読み取りたい場合、使用者は、再びジョブの開始指示を行う。これにより、図8のフローチャートが再び始まる。
【0114】
(連続読み込みモードでの動作の流れ)
次に、図9を用いて、実施形態に係る連続読み込みモードでの搬送読取の流れの一例を説明する。図9は、実施形態に係る連続読み込みモードでの搬送読み取りの流れの一例を示す図である。
【0115】
図9のスタートは、連続読み込みモードが選択された状態で、操作パネル5が読み取りを伴うジョブの開始指示(スタートボタンの操作)を受け付けた時点である。使用者は、開始指示の前に、原稿を原稿トレイ11にセットしておく。連続読み込みモードの場合、セットされる原稿は複数枚となる。原稿セットセンサー16の出力に基づき、搬送制御部10と主制御部2は、原稿セットを認識する。
【0116】
まず、手差しモードの連続読み込みモードでの搬送読取を開始するとき、搬送制御部10は、リフト板8を上限までリフトモーター81に上昇させる(ステップ♯31)。この点は、通常モード及び、単枚読み込みモードと同様である。
【0117】
連続読み込みモード(図9)のステップ♯32~ステップ♯311は、単枚読み込みモード(図8)のステップ♯22~ステップ♯211と同様である。そこで、ステップ♯32~ステップ♯311については、ステップ♯22~ステップ♯211の説明を援用し、説明を省略する。
【0118】
原稿後端のフィードセンサー19の通過を認識して(ステップ♯36のYes)、給紙モーター17を停止させたとき(ステップ♯311)。搬送制御部10は、リフト板8(原稿トレイ11)にセットされた原稿があるか否かを確認する(ステップ♯312)。具体的に、搬送制御部10は、原稿セットセンサー16の出力を確認する。
【0119】
セット原稿がない場合(ステップ♯312のNo)、搬送制御部10は、本フローチャートを終了する(エンド)。セット原稿がある場合(ステップ♯312のYes)、搬送制御部10は、ステップ♯31を実行する(ステップ♯31に戻る)。
【0120】
つまり、搬送制御部10は、下降量だけ下げたリフト板8を再上昇させる。搬送制御部10は、リフトモーター81を回転させる。搬送制御部10は、最上位原稿とピックアップローラー12が接するまで(ピックアップローラー12及びリフト板8を上限まで)、リフト板8を再上昇させる。再上昇後、搬送制御部10はステップ♯32を行い、給紙を開始する。つまり、搬送制御部10は、ピックアップローラー12、第1給紙ローラー71、第2給紙ローラー72、給紙ベルト73、リタードローラー70を回転させる。搬送制御部10は、原稿を原稿の搬送方向に送る方向にこれらの回転体を回転させる。
【0121】
(手差しモードでの動作)
次に、図10を用いて、実施形態に係る手差しモードでの動作の一例を説明する。図10は、実施形態に係る手差しモードでの動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0122】
図10のタイミングチャートのうち、最上段のチャートは、リフトモーター81の動作を示すチャートである。中段のチャートは、給紙モーター17の動作を示すチャートである。最下段のチャートは、フィードセンサー19の出力レベルの一例を示す図である。図10の例でのフィードセンサー19は、原稿を検知しているときHighレベルを出力し、原稿を検知していないときLowレベルを出力する。
【0123】
図10の時点T1は、リフト板8の上昇を開始する時点である。搬送制御部10は、リフト板8が上昇する方向にリフトモーター81を回転させる。搬送制御部10は、リフトモーター81を加速させ、所定の速度で回転させる。時点T2は、搬送制御部10がリフト板8の上限到達を認識した時点である。搬送制御部10は、リフトモーター81の停止を開始する。
【0124】
時点T3は、搬送制御部10が給紙モーター17の回転を開始する時点である。搬送制御部10は、給紙モーター17を第2方向(逆方向)で回転させる。そのため、図10では、給紙モーター17が回転する状態をLowレベルで図示している。
【0125】
時点T4は、フィードセンサー19の出力に基づいて搬送制御部10がフィードセンサー19への原稿の先端到達を認識した時点である。このとき、搬送制御部10は、リフトモーター81を回転させる。搬送制御部10は、リフト板8が下がる方向にリフトモーター81を回転させる。
【0126】
時点T5は、搬送制御部10によるリフトモーター81の回転停止が完了した時点である。この下降によって、リフト板8が予め定められた下降量だけ下りる。時点T6は、搬送制御部10がいったん給紙モーター17の回転を停止させる時点である。フィードセンサー19への原稿の先端到達の認識後、搬送制御部10は、給紙モーター17を回転させ続ける。給紙モーター17の回転継続により、原稿の先端は停止状態のレジストローラー対13に突き当たり、原稿が撓む。撓みすぎも好ましくない。そこで、搬送制御部10は、フィードセンサー19への原稿の先端到達の認識後、撓み作成時間が経過した時点T6で給紙モーター17を停止させる。
【0127】
時点T7は、搬送制御部10が給紙モーター17の回転を再開する時点である。このときも、搬送制御部10は、給紙モーター17を第2方向に回転させる。時点T7では、搬送制御部10は、レジストローラー対13の回転も開始する。
【0128】
時点T8は、フィードセンサー19が原稿の後端通過を検知した時点である。フィードセンサー19の出力に基づき、搬送制御部10は、原稿の後端がフィードセンサー19を通過したことを認識する。この認識に基づき、搬送制御部10は、給紙モーター17を停止させる。
【0129】
(モードの選択)
次に、図11を用いて、実施形態に係るモード選択画面54の一例を説明する。図11は、実施形態に係るモード選択画面54の一例を示す図である。
【0130】
通常モード、単枚読み込みモード、連続読み込みモードのうち、何れのモードを用いるかを選択することができる。図11は、読み取りに関するモード選択画面54の一例を示す。操作パネル5がモード選択画面54を表示させるための操作を受け付けると、制御部は、モード選択画面54を表示パネル51に表示させる。使用者は、原稿を読み取るジョブの開始前に、モードを選択する。
【0131】
なお、モード選択がなされないでジョブの実行開始指示がなされたとき、主制御部2は、デフォルトのモードでの搬送読取を搬送制御部10に指示する。この指示に基づき、搬送制御部10は、デフォルトのモードで原稿の給紙、搬送を行う。デフォルトのモードは予め定められる。操作パネル5は、デフォルトのモードの選択を受け付けてもよい。例えば、通常モードがデフォルトのモードとされる。
【0132】
モード選択画面54には、通常モード選択ボタンB1、単枚読み込みモード選択ボタンB2、連続読み込みモード選択ボタンB3、自動変更許可用チェックボックスC1が設けられる。
【0133】
通常モードで原稿を搬送したいとき、使用者は、通常モード選択ボタンB1を操作する。単枚読み込みモードで原稿を搬送したいとき、使用者は、単枚読み込みモード選択ボタンB2を操作する。連続読み込みモードで原稿を搬送したいとき、使用者は、連続読み込みモード選択ボタンB3を操作する。操作パネル5の出力に基づき、主制御部2は選択されたモードを認識する。原稿の読み取りを開始するとき、主制御部2は、選択されたモードを搬送制御部10に通知する。
【0134】
このように、操作パネル5は、通常モードと手差しモードの何れを用いるかの選択を受け付ける。搬送制御部10は、選択されたモードで原稿の読み取りを行わせる。
【0135】
自動変更許可用チェックボックスC1は、手差しモード中に、モードの自動変更を許可するか否かを選択するためのチェックボックスである。自動変更を許可する場合、使用者は、自動変更許可用チェックボックスC1を操作し、チェックを入れる。自動変更を許可しない場合、使用者は、自動変更許可用チェックボックスC1を操作し、チェックを外す。操作パネル5の出力に基づき、主制御部2はチェックの有無を認識する。
【0136】
原稿の読み取りを開始するとき、主制御部2は、モードの自動変更の可否を搬送制御部10に通知する。自動変更を許可する旨の通知を受けた場合、搬送読取、かつ、手差しモードのとき、搬送制御部10は、モードを自動的に変更する(選ぶ)。自動変更を許可しない旨の通知を受けたときには、搬送制御部10は、モード選択画面54で選択されたモードを維持する。
【0137】
なお、通常モードが選択されたとき(通常モード選択ボタンB1が操作されたとき)、かつ、複数枚の原稿がリフト板8にセットされたとき、搬送制御部10は、全ての原稿について、原稿を原稿の搬送方向と逆方向に送る方向にリタードローラー70を回転させる。
【0138】
(連続読み込みモード中の単枚読み込みモードへの自動変更)
次に、図12を用いて、実施形態に係る連続読み込みモード中の単枚読み込みモードへの自動変更の流れの一例を説明する。図12は、実施形態に係る連続読み込みモードから単枚読み込みモードへの自動変更の流れの一例を示す図である。
【0139】
図12のスタートが始まる場合は、2つある。1つ目は、自動変更が許可された状態で、手差しモードの連続読み込みモードでの搬送読取を開始する時点である。つまり、自動変更許可状態で、連続読み込みモードで1枚目の原稿の給紙を開始する時点である。2つ目は、自動変更によって連続読み込みモードへの自動変更(自動選択)がなされた後、最初に原稿の給紙を開始する時点である。
【0140】
搬送制御部10は、リフト板8に原稿があるか否か(残っているか否か)を確認する(ステップ♯41)。リフト板8に原稿が残っていないとき(ステップ♯41のNo)、搬送制御部10は、本フローチャートの処理を終了する(エンド)。
【0141】
次に、搬送制御部10は、給紙中の原稿で連なり給紙エラーが生じたか否かを確認する(ステップ♯42)。言い換えると、搬送制御部10は、現在給紙している原稿について、許容時間内に、その後端がフィードセンサー19を通過したか否かを確認する。
【0142】
連なり給紙エラーが生じなかった場合(ステップ♯42のNo)、搬送制御部10は、連続読み込みモードを維持する(ステップ♯43)。そして、搬送制御部10は、連続読み込みモードで次の原稿の給紙を自動的に開始する(ステップ♯44)。具体的に、搬送制御部10は、リフト板8の上昇と、給紙モーター17の回転再開を自動的に行う。そして、搬送制御部10は、ステップ♯41を実行する(ステップ♯41に戻る)。
【0143】
連なり給紙エラーが生じた場合(ステップ♯42のYes)、連続読み込みモードでの原稿の給紙は好ましくない可能性がある。そこで、搬送制御部10は、自動的にモードを単枚読み込みモードに変更する(単枚読み込みモードを自動的に選ぶ)(ステップ♯45)。単枚読み込みモードを自動的に選択したので、搬送制御部10は、連続読み込みモードを前提とする本フローチャートの処理を終了する(エンド)。
【0144】
(単枚読み込みモード中の連続読み込みモードへの自動変更)
次に、図13を用いて、実施形態に係る単枚読み込みモード中の連続読み込みモードへの自動変更の流れの一例を説明する。図13は、実施形態に係る単枚読み込みモードから連続読み込みモードへの自動変更の流れの一例を示す図である。
【0145】
図13のスタートが始まる場合は、2つある。1つ目は、モードの自動変更が許可された状態で、手差しモードの単枚読み込みモードでの搬送読取を開始する時点である。つまり、自動変更許可状態で、単枚読み込みモードで原稿の給紙を開始した時点である。2つ目は、自動変更によって単枚読み込みモードへの自動変更がなされた後、原稿の給紙を開始する時点である。
【0146】
搬送制御部10は、リフト板8に原稿があるか否か(残っているか否か)を確認する(ステップ♯51)。リフト板8に原稿が残っていないとき(ステップ♯51のNo)、搬送制御部10は、本フローチャートの処理を終了する(エンド)。
【0147】
次に、搬送制御部10は、給紙中の原稿で連なり給紙エラーが生じたか否かを確認する(ステップ♯52)。言い換えると、搬送制御部10、現在給紙している原稿について、許容時間内に、その後端がフィードセンサー19を通過したか否かを確認する。
【0148】
連なり給紙エラーが生じた場合(ステップ♯52のYes)、連続読み込みモードでの原稿の給紙は好ましくない可能性がある。そこで、搬送制御部10は、単枚読み込みモードを維持する(ステップ♯53)。
【0149】
連なり給紙エラーの解消作業後、操作パネル5が読み取り開始指示を受け付けると、搬送制御部10は、単枚読み込みモードで次の原稿の給紙を開始する(ステップ♯54)。具体的に、スタートボタンが操作されたとき、搬送制御部10は、リフト板8の上昇と、給紙モーター17の回転開始を行う。そして、搬送制御部10は、ステップ♯51を実行する(ステップ♯51に戻る)。
【0150】
連なり給紙エラーが生じなかった場合(ステップ♯52のNo)、搬送制御部10は、給紙成功回数値に1を加算する(ステップ♯55)。給紙成功回数値は、例えば、搬送制御部10のRAM31に記憶される。なお、リフト板8に原稿が無くなったとき、あるいは、前回の原稿の給紙から予め定められたリセット時間が経過したとき、搬送制御部10は給紙成功回数値をリセットする(ゼロにする)。
【0151】
搬送制御部10は、給紙成功回数値が所定回数に到達したか否かを確認する(ステップ♯56)。言い換えると、単枚読み込みモードで原稿を複数枚セットした状態において、搬送制御部10は、所定回数連続して問題なく原稿を給紙できたか否かを確認する。
【0152】
給紙成功回数値が所定回数に到達していないとき(ステップ♯56のNo)、操作パネル5が読み取り開始指示を受け付けると、搬送制御部10は、単枚読み込みモードで次の原稿の給紙を開始する(ステップ♯57)。つまり、給紙成功回数値が所定回数に到達していないとき(ステップ♯56のNo)、搬送制御部10は、単枚読み込みモードを維持する。ステップ♯57の後、搬送制御部10はステップ♯51を実行する(ステップ♯51に戻る)。
【0153】
給紙成功回数値が所定回数に到達したとき(ステップ♯56のYes)、連続読み込みモードに切り替えても問題はないと認められる。そこで、搬送制御部10は、自動的にモードを連続読み込みモードに変更(自動選択)する(ステップ♯57)。連続読み込みモードを選択したので、搬送制御部10は、単枚読み込みモードを前提とする本フローチャートの処理を終了する(エンド)。
【0154】
(モードの自動変更を許可しない場合)
次に、図14を用いて、モードの自動変更を許可しない場合の動作の一例を説明する。図14は、モードの自動変更を許可しない場合の動作の一例を示す図である。
【0155】
操作パネル5は、通常モードと手差しモードの何れを用いるかの選択を受け付ける。つまり、操作パネル5は、通常モードのみを用いる選択を受け付ける。通常モードが選択された場合、搬送制御部10は、原稿の1枚目から最後まで、通常モードの給紙、搬送を維持する。
【0156】
また、操作パネル5は、連続読み込みモードのみを用いる選択を受け付ける。言い換えると、操作パネル5は、自動変更許可用チェックボックスC1にチェックが入っていない状態での、連続読み込みモード選択ボタンB3の操作を、連続読み込みモードのみを用いる選択として受け付ける。この場合、搬送制御部10は、連続読み込みモードの間、単枚読み込みモードへの自動的な変更を行わない。
【0157】
また、操作パネル5は、単枚読み込みモードのみを用いる選択を受け付ける。言い換えると、操作パネル5は、自動変更許可用チェックボックスC1にチェックが入っていない状態での、単枚読み込みモード選択ボタンB2の操作を、単枚読み込みモードのみを用いる選択として受け付ける。この場合、搬送制御部10は、単枚読み込みモードの間、連続読み込みモードへの自動的な変更を行わない。
【0158】
このようにして、実施形態に係る原稿搬送装置1は、リフト板8、ピックアップローラー12、リフトモーター81、リタードローラー70、制御部(搬送制御部10)を含む。リフト板8は原稿がセットされる。ピックアップローラー12は、リフト板8にセットされた原稿のうちの最上位原稿と接する。ピックアップローラー12は、回転して原稿の搬送方向に原稿を送る。リフトモーター81はリフト板8を昇降させる。給紙を開始するとき、リフトモーター81は最上位原稿とピックアップローラー12が接するまでリフト板8を上昇させる。リタードローラー70はピックアップローラー12よりも原稿の搬送方向の下流側に設けられる。リタードローラー70はピックアップローラー12によって送り出された原稿と接する。通常モードが選ばれているとき、制御部は、原稿を原稿の搬送方向と逆方向に送る方向にリタードローラー70を回転させる。手差しモードが選ばれているとき、制御部は、原稿を原稿の搬送方向に送る方向にリタードローラー70を回転させる。手差しモードが選ばれているとき、制御部は、ピックアップローラー12の回転開始後、ピックアップローラー12が原稿を送っている間にリフト板8の下降をリフトモーター81に開始させる。
【0159】
原稿を送っている途中で、リフト板8を下げることができる。リフト板8を下げることにより、原稿とピックアップローラー12が接しなくなる。給紙した原稿がピックアップローラー12を抜けた直後に、ピックアップローラー12が停止しなくても、次の原稿は送り出されない。
【0160】
また、搬送中の原稿(最上位原稿)と、上から2枚目の原稿との間に隙間を作ることができる。上から2枚目以下の原稿が搬送中の原稿(最上位原稿)に引きずられないようにすることができる。最上位原稿の搬送中に、上から2枚目以下の原稿がリタードローラー70に送り込まれることを減らすことができる。手差しモードでは、リタードローラー70は原稿を原稿の搬送方向に送る方向に回転する。リタードローラー70が連なり給紙、重送を防ぐ機能を果たさなくても、原稿の連なり給紙、重送の発生を抑えることができる。
【0161】
また、ピックアップローラー12は、セットされた原稿を押さえなくなる。ピックアップローラー12が最上位原稿を押さえていると、最上位原稿よりも下の原稿が最上位原稿に引きずられてしまう場合がある。リフト板8を下げることにより、ピックアップローラー12が原稿束を押さえる力を弱くすることができる。
【0162】
制御部は、ピックアップローラー12の回転開始からピックアップローラー12からリタードローラー70までの距離を原稿の理想的な搬送速度で除して得られる時間が経過した時点以降に、リフト板8の下降をリフトモーター81に開始させる。リタードローラー70が原稿の先端をつかまえた時点から、リフト板8を下げることができる。言い換えると、ピックアップローラー12と最上位原稿が離れても、最上位原稿が送り続けられる状態となってからリフト板8を下げることができる。リフト板8を下げても問題がない時点で直ちにリフト板8を下げ始めることができる。
【0163】
原稿搬送装置1はフィードセンサー19を含む。フィードセンサー19は、リタードローラー70よりも原稿の搬送方向の下流側に設けられる。フィードセンサー19の出力に基づき、制御部は、原稿の先端がフィードセンサー19に到達したことを認識する。フィードセンサー19への原稿の先端の到達を認識すると、制御部は、リフト板8の下降をリフトモーター81に開始させる。リフト板8を下げても原稿の搬送が続けられる時点で、リフト板8を下げ始めることができる。リフト板8を下げても、原稿を原稿の搬送方向下流側に問題なく送ることができる。
【0164】
あるいは、給紙モーター17がステッピングモーターの場合、制御部は、ピックアップローラー12の回転開始から予め定められた下降開始パルス数だけパルスを給紙モーター17に入力すると、リフト板8の下降をリフトモーター81に開始させてもよい。この場合、下降開始パルス数は、ピックアップローラー12からリタードローラー70までの距離を、1パルスあたりの原稿の移動量で除して得られる値である。このようにしても、リフト板8を下げても原稿の搬送が続けられる時点で、リフト板8を下げ始めることができる。リフト板8を下げても、原稿を原稿の搬送方向下流側に問題なく送ることができる。
【0165】
フィードセンサー19の出力に基づき、制御部は、原稿の後端がフィードセンサー19を通過したことを認識する。原稿の後端がフィードセンサー19を通過したことを認識したとき、制御部は、ピックアップローラー12とリタードローラー70の回転を停止させる。きちんとリフト板8から1枚の原稿を送り出されれば、フィードセンサー19は後端通過を認識する。きちんと1枚の原稿を送り出せたと判断できる時点で、ピックアップローラー12とリタードローラー70の回転を止めることができる。リフト板8は下がっているので、原稿がピックアップローラー12を通過してからピックアップローラー12が回転を続けても、次の原稿は原稿の搬送方向に送られない。過不足なくピックアップローラー12とリタードローラー70を回転させることができる。
【0166】
制御部は、フィードセンサー19に原稿の先端が到達したことを認識してから、原稿の後端がフィードセンサー19を通過したことを認識するまでの通過所要時間T9を測る。通過所要時間T9の長さに基づき、制御部は、原稿の連なり給紙エラーが生じたことを検知する。連なり給紙エラーの発生を検知したとき、制御部は、ピックアップローラー12とリタードローラー70の回転を停止させる。発生してしまった連なり給紙エラーを検知することができる。連なり給紙が生じたとき、原稿がジャムする(詰まる)ことがある。ジャムによって原稿が傷つかないように、原稿の搬送を停止することができる。
【0167】
ピックアップローラー12の回転開始後、ピックアップローラー12が原稿を送っている間にリフト板8を下降するとき、制御部は、予め定められた下降量だけリフト板8を下降させる。リフト板8を過不足なく下げることができる。連なり給紙が生じないようにしつつ、リフト板8の下げすぎを防ぐことができる。
【0168】
下降量は、ピックアップローラー12の周面の下端部から最上位原稿の1つ下の原稿までの距離が予め定められた離間距離以上となり、かつ、リフト板8上の原稿が予め定められた下限高さよりも下にならない範囲の値である。ピックアップローラー12と原稿を十分に引き離すことができる。最上位原稿が大きく垂れ下がると、引っ張り上げつつ原稿を搬送しなくてはならない。大きく垂れ下がると、読み込みで得られる画像データの画質が低下する可能性がある。リフト板8を下げすぎないようにするので、最上位原稿(搬送中の原稿)が垂れ下がりすぎないようにすることができる。
【0169】
制御部は、手差しモードでは、通常モードよりも原稿の搬送速度を遅くする。手差しモードでは原稿の搬送速度を抑えるので、エラーが生じたときの原稿のダメージをゼロにする又は軽くすることができる。
【0170】
原稿搬送装置1は、給紙モーター17、第1駆動機構9a、第2駆動機構9b、第3駆動機構9cを含む。給紙モーター17は、ピックアップローラー12とリタードローラー70を回転させる。給紙モーター17を第1方向に回転するとき、第1駆動機構9aは、原稿を原稿の搬送方向に送る方向にピックアップローラー12を回転させる。給紙モーター17を第1方向と逆方向の第2方向に回転するとき、第2駆動機構9bは、原稿を原稿の搬送方向に送る方向にピックアップローラー12を回転させる。給紙モーター17を第1方向に回転するとき、第3駆動機構9cは、原稿を原稿の搬送方向と逆方向に送る方向にリタードローラー70を回転させる。給紙モーター17を第2方向に回転するとき、第3駆動機構9cは、原稿を原稿の搬送方向に送る方向にリタードローラー70を回転させる。各モードで正しい方向にピックアップローラー12とリタードローラー70を回転させることができる。第1駆動機構9a、第2駆動機構9b、第3駆動機構9cを用いることにより、ピックアップローラー12とリタードローラー70を回転させるモーターは、給紙モーター17の1つですむ。
【0171】
また、原稿搬送装置1は、原稿セットセンサー16、操作パネル5も含む。原稿セットセンサー16は、リフト板8に原稿がセットされているか否かを検知する。操作パネル5はモードの選択を受け付ける。通常モードが選択されている場合、制御部は、原稿を原稿の搬送方向に送る方向にピックアップローラー12を回転させるとともに、原稿を原稿の搬送方向と逆方向に送る方向にリタードローラー70を回転させる。手差しモードが選択されている場合、制御部は、原稿を原稿の搬送方向に送る方向にピックアップローラー12とリタードローラー70を回転させる。ピックアップローラー12の回転開始後、制御部は、ピックアップローラー12が原稿を送っている間にリフト板8の下降をリフトモーター81に開始させる。制御部は、原稿の後端がリタードローラー70を抜けてから、ピックアップローラー12及びリタードローラー70を停止させる。さらに、手差しモードのうちの連続読み込みモードが選択されている場合には、制御部は、原稿セットセンサー16の出力に基づき、リフト板8にセットされた原稿があるか否かを認識する。ピックアップローラー12及びリタードローラー70を停止した時点で、リフト板8にセットされた原稿があるとき、制御部は、最上位原稿とピックアップローラー12が接するまでリフト板8を再上昇させる。再上昇の完了後、制御部は、原稿を原稿の搬送方向に送る方向にピックアップローラー12とリタードローラー70を回転させて、手差しモードでの給紙を自動的に再開する。
【0172】
原稿を送っている途中で、リフト板8を下げることができる。リフト板8を下げることにより、搬送中の原稿とピックアップローラー12が接しなくなる。また、搬送中の原稿(最上位原稿)と、上から2枚目の原稿との間に隙間を作ることができる。上から2枚目以下の原稿が搬送中の原稿に引きずられることを無くすことができる。連なり給紙の発生を抑えることができる。
【0173】
また、連続読み込みモードのとき、複数枚の原稿を、1枚ずつ連続で、かつ、手差しモードで送り出すことができる。1枚ずつ原稿を送り出す過程では、リフト板8の上昇、下降、各ローラーの回転が自動的に行われる。1枚の原稿を搬送するごとに、リフト板8の再上昇指示や、原稿搬送(読み込み)の開始指示を行わなくてもよい。重送や連なり給紙が生ずることなく、複数の原稿を自動的に手差しモードで読み取ることができる。
【0174】
制御部は、フィードセンサー19に原稿の先端の到達したことを認識してから、原稿の後端がフィードセンサー19を通過したことを認識するまでの通過所要時間T9を測る。通過所要時間T9の長さに基づき、制御部は、原稿の連なり給紙エラーが生じたことを検知する。連続読み込みモードで連なり給紙エラーが生じたことを検知したとき、制御部は、単枚読み込みモードを自動的に選択する。単枚読み込みモードは、手差しモードのうちの1つのモードである。単枚読み込みモードでは、制御部は、操作パネル5が単枚読み込み開始指示を受け付けてから、リフト板8の上昇と、手差しモードでの1枚の原稿の給紙を行う。
【0175】
連なり給紙エラーの発生数を完全にゼロにすることは難しい。そこで、連続読み込みモードでの読み取り中に連なり給紙エラーの発生を検知したとき、手差しモードを、連続読み込みモードから単枚読み込みモードに自動的に変更することができる。単枚読み込みモードは、1枚単位で原稿を読み取るモードである。連なり給紙エラーが生じないように、1枚ずつ確認しながら読み込みを行えるモードに自動的に切り替えることができる。
【0176】
単枚読み込みモードで連なり給紙エラーが生ずることなく所定枚数の原稿を搬送したとき、制御部は、連続読み込みモードを自動的に選択する。連続読み込みモードで連なり給紙エラーが生じる可能性が低いと認められる場合、単枚読み込みモードから連続読み込みモードに自動的に切り替えることができる。
【0177】
操作パネル5は、連続読み込みモードのみを用いる選択を受け付ける。連続読み込みモードのみを用いる選択がなされたとき、制御部は、連続読み込みモードの間、単枚読み込みモードへの自動的な変更を行わない。単枚読み込みモードへの自動的なモードの切り替えを希望しない使用者もいる。自動切り替えを希望しない使用者については、希望するモードのみ(連続読み込みモードのみ)を継続して用いることができる。
【0178】
操作パネル5は、単枚読み込みモードのみを用いる選択を受け付ける。単枚読み込みモードのみを用いる選択がなされたとき、制御部は、単枚読み込みモードの間、連続読み込みモードの自動的な選択を行わない。連続読み込みモードへの自動的なモードの切り替えを希望しない使用者もいる。自動切り替えを希望しない使用者については、希望するモードのみ(単枚読み込みモードのみ)を継続して用いることができる。
【0179】
操作パネル5は、通常モードと手差しモードの何れを用いるかの選択を受け付ける。制御部は、選択されたモードで原稿の読み取りを行わせる。使用者は、通常モードを用いるか、手差しモードを用いるかを選択することができる。選択したモードで原稿の読み込みを行うことができる。
【0180】
原稿の重送を検知するための重送検知センサー111を含む。制御部は、重送検知センサー111の出力が入力される。通常モードで給紙するとき、制御部は、重送検知センサー111の出力に基づいて、重送が生じたか否かを判定する。手差しモードで給紙するとき、制御部は、重送検知センサー111の出力に基づいて重送が生じたか否かを判定しない。手差しモードは、伝票のような複数枚のシートが重ねられた原稿の給紙、搬送を想定している。手差しモードで、複数枚のシートが重ねられた1枚の原稿を給紙、搬送しても、重送と誤検知することがない。
【0181】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲は、これに限定されるものでは、なく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明は、リフト板を用いてピックアップローラーと原稿を接触させる原稿搬送装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0183】
1 原稿搬送装置 10 搬送制御部(制御部)
12 ピックアップローラー 16 原稿セットセンサー
17 給紙モーター 19 フィードセンサー
111 重送検知センサー 5 操作パネル
70 リタードローラー 8 リフト板
81 リフトモーター 9a 第1駆動機構
9b 第2駆動機構 9c 第3駆動機構
T9 通過所要時間
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