(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】テープカートリッジ及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 16/02 20060101AFI20241217BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20241217BHJP
B41J 15/16 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B65H16/02
B41J15/04
B41J15/16
(21)【出願番号】P 2020157846
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】武田 基宏
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-061095(JP,A)
【文献】特開2013-043764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 15/04-15/16
B65H 16/02-16/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状の被印刷媒体を収容する収容部と、
前記ロール状の被印刷媒体からほどかれた被印刷媒体を外部に繰り出す繰り出し口と、
を備え、
前記収容部
は、
前記ロール状の被印刷媒体の巻き軸に沿う方向が法線方向に設定された板面と、
前記ロール状の被印刷媒体を回転可能に支持し、前記ロール状の被印刷媒体を拡径する方向に外力を印加するように構成された支持部
と、
前記支持部が前記ロール状の被印刷媒体を拡径させる際の前記支持部の移動方向をガイドするガイド機構と、
を備え、
前記ガイド機構は、
長手方向が前記拡径する方向に沿うように前記板面に形成された長孔と、
前記長孔に挿入可能に前記支持部に形成された突起部と、
を備えることを特徴とするテープカートリッジ。
【請求項2】
前記支持部は、前記ロール状の被印刷媒体における被印刷媒体同士の摩擦力の総和が特定の値以下となる場合に、前記ロール状の被印刷媒体を拡径する
、
ことを特徴とする請求項1に記載のテープカートリッジ。
【請求項3】
前記支持部は、圧縮コイルばねの復元力を前記外力として印加するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のテープカートリッジ。
【請求項4】
前記ロール状の被印刷媒体は、前記ロール状の被印刷媒体の側面が前記板面に対向するように配置され、
前記板面の面積は、前記側面の面積よりも広く形成されている、
ことを特徴とする
請求項1から3のいずれか一項に記載のテープカートリッジ。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載のテープカートリッジと、
前記テープカートリッジから繰り出された被印刷媒体を印刷装置の外部に排出する排出口を有する装置筐体と、
前記テープカートリッジから繰り出された前記被印刷媒体を前記装置筐体の前記排出口に向けて搬送する搬送部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、テープカートリッジ及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被印刷媒体に印刷を行う印刷装置には、長尺の被印刷媒体が収容されたテープカートリッジを印刷装置に装着し、そのテープカートリッジにより供給される被印刷媒体に印刷を行うものがある。この種の印刷装置で用いられるテープカートリッジには、ロール状に巻き取られた状態の被印刷媒体が収容されており、ロール状の被印刷媒体における最外周の部分から順に、印刷装置による印刷に使用される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のテープカートリッジでは、収容された被印刷媒体を印刷等で消費する毎に、ロール状の被印刷媒体における最外周までの半径が減少していく。このため、従来のテープカートリッジにより供給される被印刷媒体は、次第に、ロール状の被印刷媒体における曲率半径の大きい部分から曲率半径の小さい部分へと変化していく。
【0005】
ロール状の被印刷媒体における曲率半径の小さい部分(すなわち曲率の大きい部分)は、曲率半径の大きい部分(すなわち曲率の小さい部分)と比べて、曲がり癖が生じやすく、生じる曲がり癖も大きい。このため、従来のテープカートリッジを使用する印刷装置では、テープカートリッジ内の被印刷媒体の残量が少なくなると、被印刷媒体に生じた曲がり癖により、テープカートリッジから繰り出されて印刷装置の装置筐体に設けられた排出口に向かって搬送される被印刷媒体が排出口に進入せずに印刷装置内に詰まってしまうことがある。
【0006】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、ロール状の被印刷媒体に生じる曲がり癖による印刷装置内での被印刷媒体の詰まりを防ぐことが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るテープカートリッジは、ロール状の被印刷媒体を収容する収容部と、前記ロール状の被印刷媒体からほどかれた被印刷媒体を外部に繰り出す繰り出し口と、を備え、前記収容部は、前記ロール状の被印刷媒体の巻き軸に沿う方向が法線方向に設定された板面と、前記ロール状の被印刷媒体を回転可能に支持し、前記ロール状の被印刷媒体を拡径する方向に外力を印加するように構成された支持部と、前記支持部が前記ロール状の被印刷媒体を拡径させる際の前記支持部の移動方向をガイドするガイド機構と、を備え、前記ガイド機構は、長手方向が前記拡径する方向に沿うように前記板面に形成された長孔と、前記長孔に挿入可能に前記支持部に形成された突起部と、を備えることを特徴とするテープカートリッジである。
【0008】
本発明の一態様に係る印刷装置は、上述の一態様に係るテープカートリッジと、前記テープカートリッジから繰り出された被印刷媒体を印刷装置の外部に排出する排出口を有する装置筐体と、前記テープカートリッジから繰り出された前記被印刷媒体を前記装置筐体の前記排出口に向けて搬送する搬送部と、を備えることを特徴とする印刷装置である。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、ロール状の被印刷媒体に生じる曲がり癖による印刷装置内での被印刷媒体の詰まりを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る印刷装置の外観の一例を説明する平面図である。
【
図2】
図1に例示した印刷装置の蓋を開けた状態の部分平面図である。
【
図3】一実施形態に係る印刷装置における被印刷媒体の搬送経路の一例を説明する図である。
【
図4】印刷装置で起こり得るテープ詰まりを説明する図である。
【
図5】一実施形態に係るテープアダプタの第1の構成例を説明する図である。
【
図6】テープロール支持部の構成例を説明する部分断面斜視図である。
【
図7】
図6のA-A線の位置におけるテープアダプタの部分断面側面図である。
【
図8】テープロール支持部の動作を説明する図である。
【
図9】一実施形態に係るテープアダプタの第2の構成例を説明する図である。
【
図10】一実施形態に係るテープアダプタの第3の構成例を説明する図である。
【
図11】一実施形態に係るテープアダプタに利用可能な渦巻きばねの一例を説明する図である。
【
図12】印刷装置の機能構成の一例を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明で例示する印刷装置における周知の機能、機構、及び動作等についての詳細な説明は省略する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る印刷装置の外観の一例を説明する平面図である。
図2は、
図1に例示した印刷装置の蓋を開けた状態の部分平面図である。
【0013】
図1及び
図2に例示した印刷装置1は、感熱層を有するテープ状の被印刷媒体11に印刷を行うサーマルプリンタである。印刷装置1は、アダプタ収容部201及びキーボード部203を有する装置筐体2と、装置筐体2に取り付けられた装置筐体2のアダプタ収容部201を開閉可能な蓋4とを含む。装置筐体2のキーボード部203には、印刷装置1に対する各種の操作入力を行うための複数のキーが配置されている。キーボード部203に配置された複数のキーは、被印刷媒体13に印刷する文字列を入力するキーを含む。また、本実施形態で例示する印刷装置1の蓋4には、液晶ディスプレイ等の表示装置5が配置されている。表示装置5には、キーボード部203のキーを操作して入力された文字列、印刷装置1の設定情報等が表示される。
【0014】
装置筐体2のアダプタ収容部201には、被印刷媒体11を供給するテープアダプタ12が着脱自在に収容される。テープアダプタ12は、ロール状の被印刷媒体11R(以下「テープロール11R」という)を収容する収容部(図示せず)と、収容部に収容されたテープロール11Rからほどかれた被印刷媒体11をテープアダプタ12の外部に繰り出す開口(繰り出し口1200)を有する容器である。
図2に例示したテープアダプタ12における、下線が引かれた「9」という数字は、テープアダプタ12に収容された被印刷媒体11の幅が9mmであることを示す。本実施形態で例示する印刷装置1は、アダプタ収容部201に収容するテープアダプタ12を交換することにより、印刷を行う被印刷媒体11の幅を変更することができる。
【0015】
図1及び
図2には示していないが、テープアダプタ12の収容部には、テープロール11Rを回転可能に支持するテープロール支持部が設けられている。テープロール11Rは、ロールの中心軸に沿ってテープロール支持部を挿通可能であり、かつテープロール支持部からのロールの径外方向への押圧荷重を受けた場合に拡径可能な状態で、テープアダプタ12の収容部に収容される。例えば、テープロール11Rは、被印刷媒体11を巻き付ける芯部材が無い状態で、テープアダプタ12の収容部に収容される。また、本実施形態で例示するテープアダプタ12は、例えば、収容部を開閉自在な蓋が設けられており、テープロール11Rの交換、補充等ができる。本実施形態で例示するテープアダプタ12は、被印刷媒体11に印刷を行う印刷装置1に着脱自在であり、ロール状の被印刷媒体11Rを収容する収容部と、ロール状の被印刷媒体11Rからほどかれた被印刷媒体11をテープアダプタ12の外部に繰り出す繰り出し口1200とを有するテープカートリッジの一例である。
【0016】
装置筐体2には、装置筐体2のアダプタ収容部201に収容されたテープアダプタ12の繰り出し口1200から装置筐体2の側面部に設けられた排出口202までの被印刷媒体11の搬送経路に沿って、プラテンローラ6、印刷ユニット7、カットユニット8が配置されている。本実施形態の印刷装置1では、プラテンローラ6と印刷ユニット7のサーマルヘッド(印刷ヘッド)701とで被印刷媒体11を挟持した状態でプラテンローラ6を回転させることにより、被印刷媒体11が搬送経路に沿って搬送される。印刷ユニット7は、サーマルヘッド701により被印刷媒体11に熱を印加することにより、被印刷媒体11の感熱層を変色又は発色させて印刷を行う。カットユニット8は、被印刷媒体11をカットする。
【0017】
図3は、一実施形態に係る印刷装置における被印刷媒体の搬送経路の一例を説明する図である。
図3には、印刷装置1内に設けられる被印刷媒体11の搬送経路を直線状に簡略化して示している。
図3には、被印刷媒体11の搬送経路上の代表的な位置として、テープ繰出位置、印刷位置、排出口進入位置、及び排出口進出位置を示している。テープ繰出位置はテープアダプタ12の繰り出し口1200の位置であり、印刷位置は、サーマルヘッド701による被印刷媒体11への印刷が行われる位置である。排出口進入位置は、テープ繰出位置から排出口進入位置に向かう方向(排出方向)に搬送される被印刷媒体11が装置筐体2の排出口202に進入する位置であり、排出口進出位置は、排出方向に搬送される被印刷媒体11が装置筐体2の排出口202から装置筐体2の外部に進出する位置である。
【0018】
テープアダプタ12の繰り出し口1200からテープアダプタ12の外部に繰り出された被印刷媒体11は、搬送経路におけるテープ繰出位置と排出口進入位置との間にある印刷位置において、プラテンローラ6とサーマルヘッド701との間を通る。サーマルヘッド701は、例えば、蓋4の開閉と連動してプラテンローラ6からの位置が変化する。例えば、蓋4を開けるとサーマルヘッド701がプラテンローラ6から離隔する方向に移動してサーマルヘッド701とプラテンローラ6との間に被印刷媒体11の厚さ以上の隙間が生じ、蓋4を閉じるとサーマルヘッド701がプラテンローラ6に近接する方向に移動してサーマルヘッド701とプラテンローラ6とにより被印刷媒体11が挟持される。被印刷媒体11に印刷を行うときには、サーマルヘッド701とプラテンローラ6とにより被印刷媒体11を挟持した状態で、被印刷媒体11が排出方向に搬送される回転方向にプラテンローラ6を回転(正転)させながら、サーマルヘッド701により被印刷媒体11に熱を印加する。
【0019】
搬送経路における印刷位置と排出口進入位置との間には、被印刷媒体11をカットするカットユニット8が配置されている。カットユニット8は、第1のカッター801及び第2のカッター802を含む。第1のカッター801は被印刷媒体11の全体をカットするカッター(フルカッター)であり、第2のカッター802は被印刷媒体11の一部分をカットするカッター(ハーフカッター)である。例えば、被印刷媒体11が感熱層及び粘着層を有するテープ層と、そのテープ層の粘着層を保護する保護層(例えば、剥離紙)とを含む多層構造の媒体である場合、第1のカッター801は全ての層をカットして被印刷媒体11全体を2つに分離し、第2のカッター802はテープ層のみをカットする。第2のカッター802は、例えば、被印刷媒体11にミシン目を入れるカッターであってもよい。
【0020】
搬送経路に沿って排出方向に搬送される被印刷媒体11は、排出口進入位置において装置筐体2の排出口202に進入し、排出口進出位置において装置筐体2の排出口202から装置筐体2の外部に進出する。
【0021】
印刷装置1の装置筐体2にこのような搬送経路を設ける場合、被印刷媒体11の印刷面と装置筐体2との摩擦による印刷品質の低下や搬送不良等を防ぐために、又は装置筐体2の軽量化等のために、例えば、装置筐体2の形状を、搬送経路上の被印刷媒体11の印刷面やその裏面と可能な限り接触しないような形状にすることがある。また、排出口202の開口寸法は、例えば、排出口202から装置筐体2の内部に異物が入り込むことを防ぐために、可能な限り小さくすることが望まれる。このため、印刷装置1における被印刷媒体11の搬送経路は、
図3に例示したように、被印刷媒体11の厚さ方向に変位可能な量が排出口進入位置において不連続に変化し、かつ排出口進入位置よりも排出口進出位置側での変位可能な量のほうが小さくなることがある。ここで、変位可能な量の不連続な変化は、被印刷媒体11を排出方向に搬送する際に無視することのできない段差(例えば、排出方向に搬送される被印刷媒体11の先端が当接した場合にその先端の排出方向への移動を阻止する段差)が生じる変化である。例えば、
図3に例示した搬送経路では、排出口進入位置を境として右側に位置する排出口202内での被印刷媒体11の厚さ方向の寸法は数mm程度である。一方、排出口進入位置を境として左側に位置する装置筐体2の内部空間での被印刷媒体11の厚さ方向の寸法は数cm程度になる。このような搬送経路では、装置筐体2の側面部(排出口202を囲む部分)が、排出口進入位置において被印刷媒体11の厚さ方向に変位可能な量を数cmから数mmに変化させる段差となる。
【0022】
このような印刷装置1において従来のテープアダプタ12から繰り出された被印刷媒体11を搬送して排出する場合、排出する被印刷媒体11の始端がテープロール11Rにおける最内周に位置する被印刷媒体11の部分(被印刷媒体11の終了端)に近づくと、被印刷媒体11が装置筐体2の排出口202から排出されない事象(テープ詰まり)が起こりやすい。
【0023】
図4は、印刷装置で起こり得るテープ詰まりを説明する図である。
【0024】
図4の(a)には、従来のテープアダプタ12に収容された被印刷媒体11の使用開始直後におけるテープロール11R及び排出される被印刷媒体11の始端部分の状態を模式的に示している。本明細書における使用開始直後のテープロール11Rは、テープアダプタ12に収容された状態、又は単独で印刷装置1に利用者に提供され、印刷装置1での印刷等で消費された被印刷媒体11の量が0(ゼロ)、又は非常に少ない状態のテープロール11Rである。使用開始直後のテープロール11Rにおける最外周に近い被印刷媒体11の部分(例えば、軸心Pからの距離がRaに近い部分1103及び部分1104等)は、最内周に位置する被印刷媒体11の終了端1102に近い部分(例えば、軸心Pからの距離がRb(<Ra)に近い部分1105及び部分1106等)と比べて、曲率半径が大きい(すなわち、曲率が小さい)。このため、使用開始直後のテープロール11Rにおける最外周に近い被印刷媒体11の部分は、テープロール部11Rの曲率に起因する曲がり癖が他の部分と比べて相対的に小さいか、または生じていないとみなすことができる。したがって、厚さ方向に変位可能な状態で搬送経路に沿って排出方向に搬送される被印刷媒体11の始端1101は、
図4の(a)に例示したように、排出口202に進入し、装置筐体2の外部へと排出される。
【0025】
これに対し、
図4の(b)には、従来のテープアダプタ12に収容された被印刷媒体11が終了間近(テープ切れ間近)である場合の、テープロール11R及び排出される被印刷媒体11の始端1110及びその始端近傍の部分1111の状態を模式的に示している。被印刷媒体11は、テープロール11Rの最外周の部分から順次ほどけて繰り出し口1200からテープアダプタ12の外部に繰り出される。このため、被印刷媒体11の消費が進むと、繰出される被印刷媒体11は、テープロール11Rにおける曲率半径が小さい(すなわち、曲率が大きい)部分に変化していく。ロール状の被印刷媒体11のうちの曲率が大きい部分(例えば、
図4の(b)における被印刷媒体11の始端1110と終了端1102との間の部分1105、部分1107、及び部分1111等)は、曲率が小さい部分(例えば、
図4の(a)における部分1103及び部分1104等)と比べて曲がり癖が生じやすく、曲がり具合も大きくなる。このため、排出される被印刷媒体11の始端1110がテープロール11Rの最内周に近い部分になると、
図4の(b)に例示したように、被印刷媒体11の始端近傍の部分1111に生じた曲がり癖により、被印刷媒体11の始端1110の搬送経路における被印刷媒体11の厚さ方向の位置が、装置筐体2における排出口202の位置から逸れてしまうことがある。このような場合、被印刷媒体11の始端1110は、排出口進入位置において装置筐体2に当接し、装置筐体2により排出方向への移動が阻止されて排出口202に進入しないことがある。被印刷媒体11の始端が排出口202に進入しない場合、被印刷媒体11が排出口202から装置筐体2の外部に排出されない事象(テープ詰まり)が発生する。
【0026】
本実施形態に係るテープアダプタは、上述したテープロール11Rにおける被印刷媒体11の曲率に起因する被印刷媒体11の曲がり癖によるテープ詰まりを防ぐことを可能にする。本実施形態に係るテープアダプタの幾つかの構成例を、
図5~
図11を参照して以下に説明する。
【0027】
図5は、一実施形態に係るテープアダプタの第1の構成例を説明する図である。
図6は、テープロール支持部の構成例を説明する部分断面斜視図である。
図7は、
図6のA-A線の位置におけるテープアダプタの部分断面側面図である。
図8は、テープロール支持部の動作を説明する図である。
図6及び
図8のU方向及びV方向は、それぞれ、
図5のU方向及びV方向と一致する。
図7のV方向及びW方向は、それぞれ、
図6のV方向及びW方向と一致する。
【0028】
図5に例示したテープアダプタ12Aは、テープロール11Rを収容する収容部(図示せず)を有する第1のアダプタ部材1210と、第1のアダプタ部材1210の収容部の開口端を覆う第2のアダプタ部材1250とを有する。第1のアダプタ部材1210の収容部は、底面1212及び壁面1213を有する略凹形状の部位であり、その角部の1つにテープ繰り出し口1200が設けられる。第2のアダプタ部材1250は、第1のアダプタ部材1210の収容部を開閉自在な態様で第1のアダプタ部材1250に取り付けられる(
図7参照)。
【0029】
第1のアダプタ部材1210の収容部には、テープロール11Rの軸心部分に設けられた中空領域に挿通することによりテープロール11Rを回転可能に支持するテープロール支持部13が設けられる。
図5に例示したテープロール支持部13は、一対のテープロール支持部材1310及び1320と、一対の圧縮コイルばね1391及び1392とを含む。
【0030】
第1のテープロール支持部材1310と第2のテープロール支持部材1320とは、円柱側面状の凸曲面を有する同一形状の部材である。第1のテープロール支持部材1310は、円柱側面状の凸曲面1311と、凸曲面1311における円弧方向の一端に接続した第1の平面1312及び他端に接続した第2の平面1313と、を有する。第2のテープロール支持部材1320は、円柱側面状の凸曲面1321と、凸曲面1321における円弧方向の一端に接続した第1の平面1322及び他端に接続した第2の平面1323とを有する。第1のテープロール支持部材1310の凸曲面1311及び第2のテープロール支持部材1320の凸曲面1321の曲率半径は、それぞれ、使用開始時のテープロール11Rにおける内周面の曲率半径(例えば、
図4の(a)及び(b)に例示した距離Rb)以下となるようにする。使用開始時のテープロール11Rは、テープアダプタ12に収容された状態、又は単独で印刷装置1に利用者に提供され、印刷装置1での印刷等で消費された被印刷媒体11の量が0(ゼロ)のテープロール11Rである。
【0031】
第1のテープロール支持部材1310と第2のテープロール支持部材1320とは、収容部に設定されたテープロール11Rの回転軸とする軸心Pを含む1つの平面を挟んで、それぞれの凸曲面1311及び1321が軸心Pの径外方向を向き、かつ、その平面を対称面とした面対称の位置関係になるように、収容部の底面1212に取り付けられる。
図5に例示したテープアダプタ12Aでは、軸心PはU方向及びV方向と直交する方向に延伸しており、軸心Pを含む1つの平面(対称面)はU方向と平行かつV方向と直交する平面としている。
【0032】
また、
図5に例示したテープアダプタ12Aでは、第1のテープロール支持部材1310と第2のテープロール支持部材1320とは、それぞれ、軸心Pに対する径方向の距離を変更可能に収容部の底面1212に取り付けられている。すなわち、第1のテープロール支持部材1310と第2のテープロール支持部材1320とは、軸心Pから遠ざかる方向への移動が互いに反対の方向になるように、収容部の底面1212に取り付けられている。例えば、第1のテープロール支持部材1310と第2のテープロール支持部材1320とは、それぞれ、収容部の底面1212に設けた長孔1221及び1222に沿って移動させることができる。第1のテープロール支持部材1310と第2のテープロール支持部材1320との距離は、それぞれの凸曲面1311及び1321の円弧を組み合わせた線分図形についての外接円の直径が、テープロール11Rの内径以下となる所定の最短距離から、使用開始時のテープロール11Rにおける外径以下となる所定の最長距離までの範囲内で変更可能とする。
【0033】
テープロール支持部13の一対の圧縮コイルばね1391及び1392は、上述した向きで収容部の底面1212に取り付けられた第1のテープロール支持部材1310及び第2のテープロール支持部材1320のそれぞれに対し、軸心Pの径外方向の外力を印加する。第1の圧縮コイルばね1391は、対向する第1のテープロール支持部材1310の第1の平面1312と第2のテープロール支持部材1320の第2の平面1323との間に、一端が第1の平面1312に当接し、他端が第2の平面1323に当接するように配置される。第2の圧縮コイルばね1392は、対向する第1のテープロール支持部材1310の第2の平面1313と第2のテープロール支持部材1320の第1の平面1322との間に、一端が第2の平面1313に当接し、他端が第1の平面1323に当接するように配置される。テープロール11Rの中心部分の中空領域に挿入された第1のテープロール支持部材1310及び第2のテープロール支持部材1320は、圧縮コイルばね1391及び1392の復元力により互いに遠ざかる方向へ移動し、テープロール11Rの最内周に位置する被印刷媒体11の部分に当接してテープロール11Rを回転可能に支持する。
【0034】
第1のテープロール支持部材1310及び第2のテープロール支持部材1320の収容部の底面1212上での移動は、例えば、各テープロール支持部材1310及び1320に設けられた突起部を底面1212に設けた長孔1221及び1222に挿入して係合させることにより規制する。
図6及び
図7には、第1のテープロール支持部材1310の移動を規制するために、収容部1211の底面1212に設ける長孔1221と、第1のテープロール支持部材1310に設ける突起部1315との例を示している。長孔1221は、その長さ方向が軸心Pの径方向になり、第1のテープロール支持部材1310と第2のテープロール支持部材1320(図示せず)との距離が上述した範囲内となるような長さで形成する。第1のテープロール支持部材1310は、収容部1211の底面1212と対向させる端面1314に、長孔1221の幅と対応した寸法の突起部1315を設ける。なお、
図6に例示した長孔1221は、長さ方向がV方向であり、幅方向がU方向である。第1のテープロール支持部1310に設けた突起部1315を収容部1211の底面1212に形成した長孔1221に挿入し、突起部1315と底面1212とを摺動可能に係合させることにより、第1のテープロール支持部材1310の移動方向及び移動範囲が規制される。突起部1315は、
図6及び
図7に示したように、第1のテープロール支持部材1310の端面1314と接する端部とは反対側の端部に、抜け止めのための鍔部(フランジ)を設けてもよい。
【0035】
図5~
図7に例示したテープアダプタ12Aに収容するテープロール11Rは、上述したように、中空領域にテープロール支持部13(一対のテープロール支持部材1310及び1320)を挿通可能である。テープロール11Rの中空領域に挿通されたテープロール支持部材1310及び1320は、それぞれ、圧縮コイルばね1391及び1392と当接する凹部1319(
図6参照)において圧縮コイルばね1391及び1392の復元力Fkを受ける。これにより、第1のテープロール支持部材1310及び第2のテープロール支持部材1320は、それぞれ、軸心Pの径外方向を向いた凸曲面1311及び1321がテープロール11Rの最内周に位置する被印刷媒体11の部分(例えば、被印刷媒体11の終了端1102に近い部分1105等)に当接し、テープロール11Rに対して径外方向への押圧荷重Fpを印加する。
【0036】
テープロール11Rは、上述したように、被印刷媒体11を巻き付ける芯部材が無い状態で、テープアダプタ12Aの収容部1211に収容される。テープロール11Rにおける被印刷媒体11の巻き数が多い場合、例えば、
図8の(a)に例示したような使用開始時のテープロール11Rの場合、径方向で隣接する被印刷媒体11の部分同士の摩擦力の総和が相対的に大きいため、テープロール11Rの最内周に位置する被印刷媒体11の部分に径外方向への押圧荷重Fpを印加してもテープロール11Rの形状に変化は生じにくい。しかしながら、テープロール11Rにおける最外周に位置する被印刷媒体11の部分(例えば、部分1103及び部分1104等)の曲率半径Ra1及びRa2は、被印刷媒体11の終了端1102に近い部分(例えば、部分1105及び部分1106等)の曲率半径Rbと比べて大きい。すなわち、使用開始時のテープロール11Rにおける最外周に位置する被印刷媒体11の部分は、曲率が小さく、被印刷媒体11に曲がり癖が生じにくい。そのため、
図4の(a)を参照して上述したように、使用開始直後のテープロール11Rからほどけて装置筐体2の排出口202に向けて搬送される被印刷媒体11は、始端1101が装置筐体2の排出口202内に進入し、その後排出口202から装置筐体2の外部に進出する。
【0037】
テープアダプタ12Aに収容した被印刷媒体11の消費が進み、テープロール11Rにおける被印刷媒体11の巻き数が減少すると、径方向で隣接する被印刷媒体11の部分同士の摩擦力の総和が相対的に小さくなる。このため、テープロール11Rの最内周に位置する被印刷媒体11の部分に径外方向への押圧荷重Fpが印加された状態で、テープロール11Rにおける被印刷媒体11の巻き数が減少し、被印刷媒体11同士の摩擦力の総和が特定の値以下になると、テープロール11Rにおける径方向で隣接する被印刷媒体11の部分同士の周方向への滑りが生じる。特定の値とは、例えば最大静止摩擦力から動摩擦力に変化した直後の摩擦力の値を指す。このため、本実施形態に係るテープアダプタ12Aでは、テープロール11Rにおける被印刷媒体11の巻き数の減少に伴い被印刷媒体11同士の摩擦力の総和が減少すると、圧縮コイルばね1391及び1392の復元力により第1のテープロール支持部1310及び第2のテープロール支持部1320が軸心Pの径外方向へ移動し、テープロール11Rが拡径する。この拡径により、被印刷媒体11の終了端1102に近い部分(例えば、部分1105及び部分1106等)の曲率半径Rc1及びRc2は、使用開始時のテープロール11Rにおける最内周の部分の曲率半径Rbよりも大きくなる。また、この拡径により、被印刷媒体11の巻き数が減少したテープロール11Rにおいて最外周に位置していた部分(例えば、部分1113等)も、例えば、使用開始時のテープロール11Rにおける最外周の部分の曲率半径R1a及びRa2と同程度の曲率半径に拡径する。
【0038】
このように、本実施形態に係るテープアダプタ12Aでは、テープロール11Rに対し拡径する方向に外力を印加するように構成されたテープロール支持部13により、テープロール11Rを回転可能に支持する。
図5~
図8を参照して説明したテープロール支持部13は、圧縮コイルばね1391及び1392の復元力を利用して、第1のテープロール支持部材1310及び第2のテープロール支持部材1320によりテープロール11Rに対して拡径する方向の外力を印加する。このようなテープアダプタ12Aでは、被印刷媒体11を消費してテープロール11Rにおける被印刷媒体11の巻き数が減少すると、テープロール11Rの回転中心に設定される軸心Pの径外方向への第1のテープロール支持部材1310及び第2のテープロール支持部材1320の移動が起こり、テープロール11Rが拡径する。テープロール11Rが拡径することにより、テープロール11Rにおける被印刷媒体11の各部分は、曲率半径が大きくなり(曲率が小さくなり)、曲率の大きさに起因した曲がり癖が緩和される。したがって、本実施形態に係るテープアダプタ12Aを利用することにより、
図4の(b)を参照して説明したような、テープロール11Rにおける被印刷媒体11の曲率に起因した被印刷媒体11の曲がり癖による、印刷装置1内での被印刷媒体11の詰まりを防ぐことができる。
【0039】
なお、本実施形態に係るテープアダプタ12Aにおけるテープロール支持部13の構成は、
図5~
図8を参照して説明した一対のテープロール支持部材1310及び1320を有する構成に限らず、他の構成であってもよい。
【0040】
図9は、一実施形態に係るテープアダプタの第2の構成例を説明する図である。なお、
図9には、第2の構成例のテープアダプタにおけるテープロール支持部と収容部の長孔のみを示している。
図9のU方向及びV方向は、それぞれ、
図5のU方向及びV方向と一致する。
【0041】
ここで説明する第2の構成例のテープアダプタ12Aは、
図9に示すように、4つのテープロール支持部材1310、1320、1330、及び1340を有し、各テープロール支持部材1310、1320、1330、及び1340の形状は、円筒を4等分したときの1つの形状と略同一形状である。各テープロール支持部材1310、1320、1330、及び1340は、それぞれ、円筒外周面状の凸曲面1311、1321、1331、及び1341と、円筒内周面状の凹曲面1317、1327、1337、及び1347とを有する。4つのテープロール支持部材1310、1320、1330、及び1340は、それぞれ、凸曲面が軸心Pの径外方向を向くように、収容部1211の底面1212に取り付けられる。また、4つのテープロール支持部材1310、1320、1330、及び1340は、それぞれ、軸心Pの径方向に延伸する長孔1221、1222、1223、及び1224に挿入された突起部(図示せず)を有し、収容部の底面1212上での移動方向及び移動量が規制されている。
【0042】
第2の構成例のテープアダプタでは、軸心Pを含む複数の平面を境として凹曲面同士が対向する一対のテープロール支持部材(言い換えると、軸心Pから遠ざかる方向が反対の方向となる一対のテープロール支持部材)の間に、その一対のテープロール支持部材のそれぞれに軸心Pの径外方向の外力を印加する圧縮コイルばねが設けられる。
図9には、U方向及びV方向をそれぞれUV平面内で45度回転させた方向をU’方向及びV’方向としたときに、V’方向に平行でU’方向と直交する平面を境とする一対のテープロール支持部1310及び1320と、U’方向に平行でV’方向と直交する平面を境とする一対のテープロール支持部1330及び1340とを例示している。例えば、軸心Pから遠ざかる方向が互いに反対の方向となる第1のテープロール支持部材1310と第2のテープロール支持部材1320との間には、これらの支持部材1310及び1320に軸心Pの径外方向の外力を印加する圧縮コイルばね1391が設けられる。また、軸心Pから遠ざかる方向が互いに反対の方向となる第3のテープロール支持部材1330と第4のテープロール支持部材1340との間には、これらの支持部材1330及び1340に軸心Pの径外方向の外力を印加する圧縮コイルばね1393が設けられる。圧縮コイルばね1391及び1393は、互いに干渉しないよう、W方向(
図6参照)にずらした位置等に設けられる。
【0043】
図9に例示したような4つのテープロール支持部材1310、1320、1330、及び1340を設けたテープアダプタ12Aにおいても、テープロール11Rにおける被印刷媒体11の巻き数の減少に伴い被印刷媒体11同士の摩擦力の総和が減少すると、圧縮コイルばね1391及び1393の復元力により4つのテープロール支持部1310、1320、1330、及び1340のそれぞれが軸心Pの径外方向へ移動し、テープロール11Rが拡径する。この拡径により、被印刷媒体11の終了端1102に近い部分(例えば、部分1105及び部分1106等)の曲率半径Rc3は、使用開始時のテープロール11Rにおける最内周の部分の曲率半径Rbよりも大きくなる。また、この拡径により、被印刷媒体11の巻き数が減少したテープロール11Rにおいて最外周に位置していた部分も、例えば、使用開始時のテープロール11Rにおける最外周の部分の曲率半径Ra1と同程度の曲率半径に拡径する。このため、
図9を参照して説明したテープアダプタ12Aの第2の構成例においても、テープロール11Rの被印刷媒体11の巻き数が減少したときの被印刷媒体11の終了端1102に近い部分の曲率半径を、使用開始時のテープロール11Rの最外周の部分の曲率半径に近い大きな値にすることができ、被印刷媒体11の終了端1102に近い部分の曲がり癖を緩和することができる。
【0044】
また、
図9に例示した第2の構成例のように、テープロール支持部材の数を周方向で等間隔になるように増やすことにより、テープロール11Rにおけるテープロール支持部材から押圧荷重を受ける部分の数が増え、テープロール11Rがより等方的に拡径される。このため、テープロール11Rにおけるテープロール支持部材から押圧荷重を受ける部分と、押圧荷重を受ける部分同士の中間に位置する部分との曲率の差を小さくすることができ、曲率の差による被印刷媒体11の意図しない曲がり癖の発生を防ぐことができる。
【0045】
図10は、一実施形態に係るテープアダプタの第3の構成例を説明する図である。なお、
図10には、第3の構成例のテープアダプタにおけるテープロール支持部と収容部の長孔のみを示している。
図10のU方向及びV方向は、それぞれ、
図5のU方向及びV方向と一致する。
【0046】
ここで説明する第3の構成例のテープアダプタ12Aは、
図10に示すように、3つのテープロール支持部材1310、1320、及び1330と、軸部材1350とを有し、各テープロール支持部材1310、1320、及び1330の形状は、円筒を3等分したときの1つの形状と略同一形状である。各テープロール支持部材1310、1320、及び1330は、それぞれ、円筒外周面状の凸曲面1311、1321、及び1331と、円筒内周面状の凹曲面1317、1327、及び1337とを有する。3つのテープロール支持部材1310、1320、及び1330は、それぞれ、凸曲面1311、1321、及び1331が軸心Pの径外方向を向くように、収容部1211の底面1212に取り付けられる。また、3つのテープロール支持部材1310、1320、及び1330は、それぞれ、軸心Pの径方向に延伸する長孔1221、1222、及び1223に挿入された突起部(図示せず)を有し、収容部の底面1212上での移動方向及び移動量が規制されている。
【0047】
また、第3の構成例のテープアダプタでは、収容部の底面1212における軸心Pが設定される位置に、軸部材1350を立設しており、軸部材1350と、各テープロール支持部材1310、1320、及び1330との間のそれぞれに、圧縮コイルばね1394、1395、及び1396を設ける。すなわち、第1の構成例及び第2の構成例では1つの圧縮コイルばねにより2つのテープロール支持部材に外力を印加しているのに対し、第3の構成例では、1つの圧縮コイルばねが1つのテープロール支持部材に外力を印加する。
【0048】
図10に例示したような3つのテープロール支持部材1310、1320、及び1330と、軸部材1350とを設けたテープアダプタ12Aにおいても、テープロール11Rの被印刷媒体11の巻き数が減少したときの被印刷媒体11の終了端1102に近い部分の曲率半径を、使用開始時のテープロール11Rの最外周の部分の曲率半径に近い大きな値にすることができ、被印刷媒体11の終了端1102に近い部分の曲がり癖を緩和することができる。
【0049】
また、
図10に例示した第3の構成例では、3つのテープロール支持部材1310、1320、及び1330は、それぞれ、一端が軸心Pに位置決めされた軸部材1350に当接した圧縮コイルばね1394、1395、及び1396により軸心Pの径外方向への外力を受ける。このため、第3の構成例では、各テープロール支持部材1310、1320、及び1330の凸曲面1311、1321、及び1331における軸心Pから最も遠い位置と、軸心Pとの距離のばらつきを軽減することができる。
【0050】
更に、本実施形態に係るテープアダプタ12Aにおいて被印刷媒体11の巻き数が減少したテープロール11Rの拡径に利用する外力は、上述した圧縮コイルばねに限らず、テープアダプタ12Aの収容部においてテープロール11Rの回転中心とする軸心Pについての径外方向への外力を印加することが可能な他の弾性材料であってもよい。例えば、テープロール11Rの拡径に利用する外力は、
図11に例示したような渦巻きばね(ぜんまいばね)14等の渦巻き状の部材による復元力であってもよい。
【0051】
図11は、一実施形態に係るテープアダプタに利用可能な渦巻きばねの一例を説明する図である。
図11のU方向及びV方向は、それぞれ、
図5のU方向及びV方向と一致する。
【0052】
図11の(a)~(c)には、変形させた渦巻きばね14が復元力により変形前の元の形状に戻る過程を、使用開始時のテープロール11Rにおける内径15とともに示している。本実施形態に係るテープアダプタ12Aにおいて、テープロール11Rの拡径に渦巻きばね14を利用する場合、復元力により渦巻きばね14の外径が軸心の径外方向に広がるようにテープアダプタ12Aの収容部に配置する。例えば、元の形状が
図11の(c)に例示したような使用開始時のテープロール11Rにおける内径15の半径Rbよりも大きい1巻きの渦巻きばね14を、
図11の(a)に例示したような半径Rb以下になるようにきつく巻き付けた状態にして使用開始直後のテープロール11Rの中空領域内に挿入し、テープロール11Rを回転可能に支持する。被印刷媒体11を印刷に使用してテープロール11Rの被印刷媒体11の巻き数が減少すると、渦巻きばね14は、自身の復元力により、
図11の(b)に例示したように拡径する。その後、テープロール11Rの被印刷媒体11の巻き数がさらに減少すると、渦巻きばね14は、更に拡径し、
図11の(c)に例示したようにもとの形状に戻る。
【0053】
このように、渦巻きばね14を用いた場合も、自身の復元力により渦巻きばね14が拡径することにより、渦巻きばね14の中心(軸心P)の径外方向への外力をテープロール11Rに印加することができる。
【0054】
なお、テープロール11Rの拡径に利用可能な弾性体は、上述した圧縮コイルばねや渦巻きばね等のばね形状の弾性体に限らず、ブロック状(例えば、柱状)のゴム等であってもよい。
【0055】
また、テープアダプタ12Aにおけるテープロール支持部材の移動方向及び移動量を規制するための構成は、上述した収容部の底面1212に形成した長孔とテープロール支持部材の突起部とを係合させる構成に限らず、別の構成であってもよい。
【0056】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るテープカートリッジ、及び印刷装置は、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0057】
例えば、テープロール11Rの拡径に用いるテープロール支持部材の数及び圧縮コイルばね等の外力印加部材の数は、上述した実施形態で例示した組み合わせに限らず、適宜変更可能である。
【0058】
例えば、テープロール11Rを拡径するテープロール支持部材の形状は、上述した実施形態で例示したような円柱側面状又は円筒外周側面状等の凸曲面をテープロール11Rにおける最内周に位置する被印刷媒体11に当接させる形状に限らず、適宜変更可能である。また、例えば、テープロール11Rを拡径するために設ける2つ以上のテープロール支持部材の形状は、それぞれが円柱形状等の柱状、又は円筒形状等の筒状であってもよい。更に、テープロール支持部材の移動方向及び移動量は、上述した実施形態で例示した長孔を用いる方法に限らず、他の方法で規制してもよい。
【0059】
また、例えば、本発明に係るテープカートリッジは、上述した実施形態で例示したような被印刷媒体11を交換可能なテープアダプタ12Aに限らず、使い切りタイプのテープカートリッジであってもよい。また、本発明に係るテープカートリッジは、感熱層を有する被印刷媒体11を収容するテープカートリッジに限らず、熱転写方式の印刷装置で利用可能な、被印刷媒体及びインクリボンが収容されたテープカートリッジであってもよい。
【0060】
また、テープカートリッジに収容されたテープロール11Rに径外方向の押圧荷重を印加する方法は、上述したような弾性材料の復元力を利用する方法に限らず、機械的にテープロール支持部材を軸心Pの径外方向に移動させて印加する方法であってもよい。言い換えると、テープロール支持部材は、上述した弾性材料のような外力印加部材に限らず、例えば、ギア等を使用して、テープカートリッジから繰り出された被印刷媒体11の量(長さ)に応じた移動量だけテープロール支持部材が移動するような移動機構を用いて軸心Pの径外方向に移動させてもよい。移動機構は、例えば、テープカートリッジ内の被印刷媒体11の残量(テープロール11Rにおける被印刷媒体11の巻き数)に基づいて導出される、被印刷媒体11の径方向で隣接する部分同士の摩擦力の総和が特定の値以下になった場合に作動するように構成されてもよい。移動機構を用いた場合、例えば、テープロール支持部材の軸心Pの径外方向への移動量によらず一定の外力をテープロール11Rに印加し続けることができ、大きな曲がり癖がついてしまった被印刷媒体11の曲がり癖を十分に緩和することができると考えられる。なお、移動機構は、例えば、テープカートリッジ(テープアダプタ12A)における被印刷媒体11の繰り出し動作と連動して作動する機構であってもよいし、テープカートリッジの利用者が任意のタイミングで手動で作動させることが可能な機構であってもよい。
【0061】
また、例えば、テープアダプタ12Aを装着した印刷装置1において、テープロール支持部材を移動させるタイミングや移動量を電気的に制御することが可能であってもよい。
【0062】
図12は、印刷装置の機能構成の一例を説明するブロック図である。
【0063】
上述した実施形態で例示したテープアダプタ12Aを装着し、そのテープアダプタから供給される被印刷媒体11に印刷を行う印刷装置1は、例えば、
図12に示すように、制御部20、記憶部21、入力部22、表示部23、アダプタ検知部24、搬送部25、印刷部26、及びカット部27を含む。制御部20は、印刷装置1の全体動作を制御する。記憶部21は、制御部20による動作の制御に用いられる各種プログラム、被印刷媒体13に印刷する文字列等のデータ等を記憶する。入力部22は、
図1に例示した装置筐体2のキーボード部203に配置された複数のキー等を利用した印刷装置1に対する操作入力を受け付ける。表示部23は、
図1に例示した蓋4のディスプレイ5等を利用した各種情報の表示を行う。アダプタ検知部24は、
図1に例示した装置筐体2のアダプタ収容部201にテープアダプタが収容されたこと、及びテープアダプタから供給される被印刷媒体11の幅等を検知する。搬送部25は、被印刷媒体11を搬送する。搬送部25は、プラテンローラ6を回転させるための動力(モータ)を駆動させる駆動部2501と、プラテンローラ6の回転量を計数するエンコーダ2502とを含む。印刷部26は、
図1に例示した印刷ヘッド701を有する印刷ユニット7による被印刷媒体11に印刷を行う。カット部27は、
図1に例示したカットユニット8による被印刷媒体11のカットを行う。
【0064】
また、図示は省略するが、印刷装置1においてテープロール支持部材を移動させるタイミングや移動量を電気的に制御する場合、例えば、印刷装置1内に、テープロール支持部材と係合してテープロール支持部材を軸心Pの径外方向へ移動させるように動作可能な部材を設ける。
【0065】
印刷装置1では、搬送部25により被印刷媒体11を搬送するときにエンコード2502によりプラテンローラ6の回転量を計数することにより、被印刷媒体11の搬送量を制御する。このため、例えば、制御部20において印刷装置1に装着されたテープアダプタから供給された被印刷媒体11の搬送量等に基づいてテープアダプタ内の被印刷媒体11の残量を検知又は予測することにより、被印刷媒体11の残量が所定の残量を下回った場合に、テープアダプタに設けられたテープロール支持部材を軸心Pの径外方向に移動させるように上述した部材を動作させる制御を印刷装置1の制御部20が電気的に行えるようにしてもよい。このような電気的な制御も、圧縮コイルばね等の弾性材料を用いた場合と比べ、テープロール支持部材の軸心Pの径外方向への移動量によらず一定の外力をテープロール11Rに印加し続けることができ、大きな曲がり癖がついてしまった被印刷媒体11の曲がり癖を十分に緩和することができると考えられる。
【0066】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
ロール状の被印刷媒体を収容する収容部と、
前記ロール状の被印刷媒体からほどかれた被印刷媒体を外部に繰り出す繰り出し口と、を備え、
前記収容部に、前記ロール状の被印刷媒体を回転可能に支持し、前記ロール状の被印刷媒体を拡径する方向に外力を印加するように構成された支持部を設けた
ことを特徴とするテープカートリッジ。
[付記2]
前記支持部は、前記ロール状の被印刷媒体における被印刷媒体同士の摩擦力の総和が特定の値以下となる場合に、前記ロール状の被印刷媒体を拡径する
ことを特徴とする付記1に記載のテープカートリッジ。
[付記3]
前記支持部は、
前記収容部に前記ロール状の被印刷媒体の回転中心として設定される軸心の径方向のうち、互いに異なる径方向に移動可能なように前記収容部に取り付けられた複数の支持部材と、
前記複数の支持部材のそれぞれに、前記軸心の径外方向の外力を印加する少なくとも1つの外力印加部材と、
を含むことを特徴とする付記1又は2に記載のテープカートリッジ。
[付記4]
前記支持部は、前記軸心を含む平面を境に、対向する一対の支持部材を含み、
前記支持部の前記外力印加部材は、前記一対の支持部材の間に配置され、前記一対の支持部材のそれぞれに対して、前記軸心の径外方向の前記外力を印加する弾性材料である
ことを特徴とする付記3に記載のテープカートリッジ。
[付記5]
前記支持部は、前記軸心を含む複数の平面を境に、それぞれ対向する前記一対の支持部材を含み、
前記支持部の前記外力印加部材は、前記一対の支持部材の間のそれぞれに配置され、前記一対の支持部材のそれぞれに前記軸心の径外方向の前記外力を印加する複数の前記弾性材料である
ことを特徴とする付記4に記載のテープカートリッジ。
[付記6]
前記支持部は、
前記収容部に、前記ロール状の被印刷媒体の回転中心として設定される軸心の位置に配置された軸部材と、
前記軸心の径方向のうち、互いに異なる径方向に移動可能なように前記収容部に取り付けられた複数の支持部材と、
前記複数の支持部材のそれぞれと前記軸部材との間に配置され、前記複数の支持部材のそれぞれに前記軸心の径外方向の外力を印加する複数の外力印加部材と、
を含むことを特徴とする付記1又は2に記載のテープカートリッジ。
[付記7]
前記支持部は、
前記収容部における、前記ロール状の被印刷媒体の回転中心として設定される軸心の周囲に配置され、前記軸心の径方向の寸法が変動して前記ロール状の被印刷媒体に前記軸心の径外方向の外力を印加する外力印加部材を含む
ことを特徴とする付記1又は2に記載のテープカートリッジ。
[付記8]
前記外力印加部材は、弾性材料を渦巻き状にしたものであり、復元力により前記弾性材料の渦の外径が前記軸心の径外方向に広がるように前記収容部に配置される
ことを特徴とする付記7に記載のテープカートリッジ。
[付記9]
前記支持部は、
前記収容部に、前記ロール状の被印刷媒体の回転中心として設定される軸心の径方向のうち、互いに異なる径方向に移動可能なように前記収容部に取り付けられた複数の支持部材と、
外部に繰り出された前記被印刷媒体の量に応じて、前記複数の支持部材のそれぞれを前記軸心の径外方向に移動させる移動機構と、
を含むことを特徴とする付記1又は2に記載のテープカートリッジ。
[付記10]
付記1から9のいずれか1つに記載のテープカートリッジと、
前記テープカートリッジから繰り出された被印刷媒体を印刷装置の外部に排出する排出口を有する装置筐体と、
前記テープカートリッジから繰り出された前記被印刷媒体を前記装置筐体の前記排出口に向けて搬送する搬送部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
[付記11]
前記装置筐体は、前記テープカートリッジから繰り出された前記被印刷媒体を、前記装置筐体の前記排出口に向けて搬送する搬送経路の途中に、搬送される前記被印刷媒体の厚さ方向の変位可能な量が不連続に小さくなる形状を有する
ことを特徴とする付記10に記載の印刷装置。
[付記12]
前記テープカートリッジ内のロール状の被印刷媒体の残量に基づいて、前記ロール状の被印刷媒体を回転可能に支持する支持部による前記ロール状の被印刷媒体を拡径する外力の印加を制御する制御部を更に備える
ことを特徴とする付記10又は11に記載の印刷装置。
【符号の説明】
【0067】
1 印刷装置
2 装置筐体
201 アダプタ収容部
202 排出口
203 キーボード部
4 蓋
5 ディスプレイ
6 プラテンローラ
7 印刷ユニット
701 サーマルヘッド
8 カットユニット
801、802 カッター
11 被印刷媒体
11R テープロール
1101、1110、1112 始端
1102 終了端
12 テープアダプタ
1200 繰り出し口
1211 収容部
1212 底面
1221、1222、1223、1224 長孔
1213 壁面
13 テープロール支持部
1310、1320、1330、1340 テープロール支持部材
1311、1321、1331、1341 凸曲面
1350 軸部材
1391、1392、1393、1394、1395、1396 圧縮コイルばね
14 渦巻きばね
20 制御部
21 記憶部
22 入力部
23 表示部
24 アダプタ検知部
25 搬送部
2501 駆動部
2502 エンコーダ
26 印刷部
27 カット部