(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】レジスト材料、レジスト膜及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/039 20060101AFI20241217BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20241217BHJP
G03F 7/38 20060101ALI20241217BHJP
C08F 220/12 20060101ALI20241217BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G03F7/039 501
G03F7/32
G03F7/38
C08F220/12
G03F7/20 521
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2020174042
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】服部 貴美子
(72)【発明者】
【氏名】森田 和代
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/067398(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/039
G03F 7/32
G03F 7/38
C08F 220/12
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(101)で表される構造に由来する単位と、下記一般式(104)で表される構造に由来する単位とを含むポリマーを含有する
、主鎖切断型レジスト材料;
【化1】
【化2】
一般式(101)中、R
1は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアリル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルシリル基を表し、複数あるR
1は同一であっても異なっていてよい;R
11は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す;R
2は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Y
1は、単結合又は連結基を表す;
一般式(104)中、X
3は、
炭素数が1~5のハロゲン化アルキル基を表し、R
5は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Y
4は、単結合又は
アルキレン基を表す。
【請求項2】
前記ポリマーは、下記一般式(102)で表される構造に由来する単位をさらに含む請求項1に記載の
主鎖切断型レジスト材料;
【化3】
一般式(102)中、X
1は、置換基を有していてもよいアルキル基(但し、置換基にハロゲン原子を含むものを除く)、置換基を有していてもよいアシル基又は置換基を有していてもよいアリル基を表す;R
3は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Y
2は、単結合又は連結基を表す。
【請求項3】
前記ポリマーは、下記一般式(103)で表される構造に由来する単位をさらに含む請求項1又は2に記載の
主鎖切断型レジスト材料;
【化4】
一般式(103)中、X
2は、置換基を有していてもよいアリール基を表す;R
4は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Y
3は、単結合又は連結基を表す。
【請求項4】
前記ポリマーにおける前記一般式(104)で表される構造に由来する単位の含有量は、1~40モル%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の
主鎖切断型レジスト材料。
【請求項5】
前記一般式(101)において、R
2はフッ素原子、塩素原子又は臭素原子である請求項1~4のいずれか1項に記載の
主鎖切断型レジスト材料。
【請求項6】
前記一般式(101)において、R
11は水素原子である請求項1~5のいずれか1項に記載の
主鎖切断型レジスト材料。
【請求項7】
前記一般式(102)において、R
3はフッ素原子、塩素原子又は臭素原子である請求項2~6のいずれか1項に記載の
主鎖切断型レジスト材料。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の
主鎖切断型レジスト材料から形成されるレジスト膜。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の
主鎖切断型レジスト材料を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する工程と、
露光工程と、
現像工程と、を含むパターン形成方法。
【請求項10】
前記現像工程の前に金属導入工程をさらに含む、請求項9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記露光工程では、波長が15nm以下の電磁波を前記レジスト膜に照射する、請求項9又は10に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記現像工程で使用される現像液は、エステル系化合物、ケトン系化合物及びアルコール系化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項9~11のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト材料、レジスト膜及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体等の電子デバイスは微細化による高精細化が要求されている。また、半導体デバイスのパターンについては、形状の多様化も検討されている。このようなパターンの形成方法としては、例えば、フォトレジストを用いたリソグラフィ法が知られている。フォトレジストを用いたリソグラフィ法では、シリコンウエハー等の半導体基板上にレジスト膜を形成し、半導体デバイスのパターンが描かれたフォトマスクを介して紫外線などの電磁波を照射し、現像することで得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板に、上記パターンに対応する微細凹凸を形成することができる。
【0003】
レジスト膜を構成するレジスト材料としては、その用途や求められる物性に応じて種々の構造を有するポリマーが用いられている。例えば、レジスト材料に用いられるポリマーとしては、(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むポリマーが知られている。特許文献1~3では、α-メチルスチレンと、メタクリル酸もしくはメタクリル酸エステルを共重合させてなるポリマーをレジスト材料として用いることが検討されている。
【0004】
また、特許文献4では、メタクリル酸アダマンチルモノマーとアクリル酸t-ブチルモノマーを重合させることで得られるポリマーを放射線感光材料に用いることが検討されている。このように、特定の2種のモノマー成分を共重合させてレジスト材料とし、レジスト膜を形成している。特許文献5には、エステル側鎖中にフッ素化アルキル基を含むアクリル酸エステル樹脂をベースポリマーとして用いたレジスト材料が開示されている。なお、特許文献5におけるレジスト材料は光酸発生剤および塩基性化合物とともに使用される化学増幅型レジスト材料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭60-117243号公報
【文献】特開昭63-137227号公報
【文献】国際公開WO99/62964号
【文献】特開平07-234511号公報
【文献】特開2002-155118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、フォトレジストを用いたリソグラフィ法においては、微細なパターンを形成することが検討されている。微細なパターンを形成するためには、レジスト膜を高精細にパターニングする必要があり、そのために高感度の高いレジスト材料の開発が求められている。
【0007】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、高感度なレジスト膜を形成し得るレジスト材料を提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、レジスト材料を構成するポリマーの重合成分に所定構造を有するモノマーを用いることにより、高感度なレジスト膜が形成されることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1] 下記一般式(101)で表される構造に由来する単位と、下記一般式(104)で表される構造に由来する単位とを含むポリマーを含有するレジスト材料;
【化1】
【化2】
一般式(101)中、R
1は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアリル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルシリル基を表し、複数あるR
1は同一であっても異なっていてよい;R
11は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す;R
2は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Y
1は、単結合又は連結基を表す;
一般式(104)中、X
3は、ハロゲン化アルキル基を表し、R
5は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Y
4は、単結合又は連結基を表す。
[2] ポリマーは、下記一般式(102)で表される構造に由来する単位をさらに含む[1]に記載のレジスト材料;
【化3】
一般式(102)中、X
1は、置換基を有していてもよいアルキル基(但し、置換基にハロゲン原子を含むものを除く)、置換基を有していてもよいアシル基又は置換基を有していてもよいアリル基を表す;R
3は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Y
2は、単結合又は連結基を表す。
[3] ポリマーは、下記一般式(103)で表される構造に由来する単位をさらに含む[1]又は[2]に記載のレジスト材料;
【化4】
一般式(103)中、X
2は、置換基を有していてもよいアリール基を表す;R
4は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Y
3は、単結合又は連結基を表す。
[4] ポリマーにおける一般式(104)で表される構造に由来する単位の含有量は、1~40モル%である、[1]~[3]のいずれかに記載のレジスト材料。
[5] 一般式(101)において、R
2はフッ素原子、塩素原子又は臭素原子である[1]~[4]のいずれかに記載のレジスト材料。
[6] 一般式(101)において、R
11は水素原子である[1]~[5]のいずれかに記載のレジスト材料。
[7] 一般式(102)において、R
3はフッ素原子、塩素原子又は臭素原子である[2]~[6]のいずれかに記載のレジスト材料。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載のレジスト材料から形成されるレジスト膜。
[9] [1]~[7]のいずれかに記載のレジスト材料を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する工程と、
露光工程と、
現像工程と、を含むパターン形成方法。
[10] 現像工程の前に金属導入工程をさらに含む、[9]に記載のパターン形成方法。
[11] 露光工程では、波長が15nm以下の電磁波をレジスト膜に照射する、[9]又は[10]に記載のパターン形成方法。
[12] 現像工程で使用される現像液は、エステル系化合物、ケトン系化合物及びアルコール系化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[9]~[11]のいずれかに記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高感度なレジスト膜を形成し得るレジスト材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、基板とレジスト膜の構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
(レジスト材料)
本発明は、下記一般式(101)で表される構造に由来する単位と、下記一般式(104)で表される構造に由来する単位とを含むポリマーを含有するレジスト材料に関する。
【化5】
【化6】
【0014】
一般式(101)中、R1は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアリル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルシリル基を表し、複数あるR1は同一であっても異なっていてよい。R11は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R2は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Y1は、単結合又は連結基を表す。
【0015】
また、一般式(104)中、X3は、ハロゲン化アルキル基を表し、R5は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Y4は、単結合又は連結基を表す。
【0016】
本発明のレジスト材料は、上記構造に由来する単位を含むポリマーを含有することにより、高感度なレジスト膜を形成することができる。具体的には、レジスト材料から形成したレジスト膜に照射する単位面積あたりの電磁線の照射量(ドーズ量)が小さい場合であっても所望形状のパターンを形成することができる。例えば、本実施形態のレジスト材料においては、例えば電子線照射時のドーズ量が160μC/cm2以下である場合や、さらにはドーズ量が60μC/cm2以下や45μC/cm2以下である場合であっても微細形状のパターンを形成することができる。高感度なレジスト膜においては、電子線の照射強度を弱くすることができ、さらに、照射時間を短縮することができるため、パターニング工程の効率を高めることができる。
【0017】
さらに、本実施形態のレジスト材料は、上記構造に由来する単位を含むポリマーを含有することにより、高精細なパターニングが可能なレジスト膜を形成することができる。すなわち、本実施形態のレジスト材料から形成されるレジスト膜は解像度が高い。例えば、ライン幅の狭いラインアンドスペースのラインパターンであっても、ラインが直線状であり、かつスペース部にレジスト膜由来の残留物がない場合に、レジスト膜の解像度が高いと評価できる。すなわち、レジスト膜の解像度が高い場合、高精細であり、かつ所望形状のパターンを形成することができる。
【0018】
ポリマーの含有量は、レジスト材料の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、ポリマーの含有量は、レジスト材料の全量に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
本実施形態のレジスト材料から形成されるレジスト膜は、例えば、シリコンウエハー等の基板にパターンを形成するために、基板上に設けられる膜(保護膜)である。レジスト膜は、基板上に直接接するように設けられる膜であってもよく、基板上に他の層を介して積層される膜であってもよい。レジスト膜は、基板に形成したいパターン形状に加工され、パターン形状として残された部分がその後のエッチング工程における保護膜となる。なお、基板にパターンが形成された後は、レジスト膜(保護膜)は基板上から除去されてもよい。このように、レジスト膜は、例えば、基板にパターンを形成する工程において用いられるものである。
【0020】
本実施形態のレジスト材料は、主鎖切断型のポジ型レジスト材料であることが好ましい。レジスト材料に含まれるポリマーは電磁線の照射により、主鎖が切断され、露光部のみが現像液に溶解することになる。これにより、より高精細なパターンを形成することが可能となる。
【0021】
<ポリマー>
本実施形態のレジスト材料は下記一般式(101)で表される構造に由来する単位と、下記一般式(104)で表される構造に由来する単位とを含むポリマーを含有する。すなわち、ポリマーは、少なくとも糖誘導体に由来する単位と、ハロゲン化アルキル基を有する単位を含むものであることが好ましい。なお、本明細書において、「単位」はポリマーの主鎖を構成する繰り返し単位(モノマー単位)である。但し、1つの糖誘導体に由来する単位の側鎖にさらに糖誘導体に由来する単位を含む場合もあり、この場合、側鎖のポリマーを構成する繰り返し単位(モノマー単位)も本明細書でいう「単位」に相当する。
【化7】
【化8】
【0022】
一般式(101)中、R1は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアリル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルシリル基を表し、複数あるR1は同一であっても異なっていてよい。R11は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R2は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Y1は、単結合又は連結基を表す。
【0023】
また、一般式(104)中、X3は、ハロゲン化アルキル基を表し、R5は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Y4は、単結合又は連結基を表す。
【0024】
一般式(101)中、R1はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアリル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアルキルシリル基を表す。ここで、置換基を有していてもよいアルキル基には、糖誘導体基が含まれ、R1が直鎖または分岐鎖の糖誘導体に由来する単位であってもよい。直鎖または分岐鎖の糖誘導体に由来する単位は、結合する糖誘導体と同じ構造の糖誘導体であることが好ましい。なお、R1が直鎖または分岐鎖の糖誘導体に由来する単位である場合、糖誘導体基の連結数(糖誘導体の平均重合度)は20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
【0025】
中でも、R1はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアシル基であることが好ましく、R1はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよいアシル基であることがより好ましく、置換基を有していてもよいアシル基であることがさらに好ましい。R1が置換基を有していてもよいアシル基である場合、レジスト材料の感度をより効果的に高めることができる。
【0026】
R1がアルキル基又はアシル基である場合、その炭素数は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、炭素数は1以上であることが好ましく、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、4以下であることが特に好ましい。
【0027】
R1の具体例としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、クロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、シクロペンタンカルボニル基、シクロヘキサンカルボニル基、ベンゾイル基、メトキシベンゾイル基、トリフルメトキシベンゾイル基、クロロベンゾイル基等のアシル基;メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基等のアルキル基などが挙げられる。これらの中でも、R1は、メチル基、エチル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、プロパノイル基、n-ブチリル基、イソブチリル基、ベンゾイル基又はトリメチルシリル基であることが好ましく、アセチル基、プロパノイル基又はトリフルオロアセチル基であることが特に好ましい。
【0028】
一般式(101)中、R11は、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。R11が置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等を挙げることができる。中でも、アルキル基はメチル基であることが好ましく、このようなアルキル基はさらに置換基を有することが好ましい。アルキル基が有する置換基としては、例えば、水酸基、アシル基、アリル基、アルコキシ基等を挙げることができ、中でも置換基は水酸基またはアシル基であることが好ましい。より具体的には、R11が置換基を有していてもよいアルキル基を表す場合、R11は、-CH2OR1であることが好ましく、R1としては上述した基を挙げることができる。但し、一般式(101)において、R11は水素原子であることが特に好ましい。R11を水素原子とすることで、より微細なパターン構造の形成が容易となる。
【0029】
一般式(101)中、R2は水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表す。中でも、R2は水素原子、炭素数が1以上3以下のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが特に好ましい。R2に、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子を導入することにより、形成されるレジスト膜をより高感度にすることができる。
【0030】
一般式(101)中、Y
1はそれぞれ独立に単結合または連結基を表す。Y
1が連結基である場合、Y
1としては、糖単位を含まない連結基を挙げることができ、例えば、アルキレン基、フェニレン基、-O-、-C(=O)O-などを含む基が挙げられる。Y
1はこれらの基を組み合わせた連結基であってもよい。中でもY
1は下記構造式で表される連結基であることが好ましい。
【化9】
【0031】
上記構造式中、※印は主鎖側との結合部位を表し、*印は、側鎖の糖単位との結合部位を表す。
【0032】
なお、上記一般式(101)では、糖誘導体の構造を環状構造として記載しているが、糖誘導体の構造は環状構造だけでなくアルドースやケトースと呼ばれる開環した構造(鎖状構造)であってもよい。
【0033】
本実施形態のレジスト材料は、上記一般式(101)で表される糖誘導体の構造を含むため、主鎖切断型のポジ型レジスト材料として有用である。一般的に、主鎖切断型レジストにおいては、照射された光エネルギーによりポリマー中にラジカルが発生し、主鎖を切断すると言われている。しかしながら、従来の主鎖切断型レジストにおいてはラジカルが発生しても、その後、ラジカルが消失するため主鎖切断の効率が悪く、ゆえに感度が低いものであった。一方、本実施形態のレジスト材料においてはC-O結合の多い糖鎖を有することでラジカルの発生部位が増加しており、単位面積当たりの光エネルギーが低くてもラジカルの発生頻度が増加するため、主鎖切断をより促進することができる。これにより、レジスト材料の感度が向上したものと考えられる。
【0034】
一般式(104)中、X3は、ハロゲン化アルキル基を表す。X3が表すハロゲン化アルキル基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~3であることがさらに好ましい。また、ハロゲン化アルキル基は、フルオロアルキル基、クロロアルキル基又はブロモアルキル基であることが好ましく、フルオロアルキル基又はクロロアルキル基であることがより好ましく、フルオロアルキル基であることが特に好ましい。ハロゲン化アルキル基としては、例えば、ジフルオロアルキル基、トリクロロアルキル基、パーフルオロアルキル基、トリフルオロアルキル基、テトラフルオロアルキル基、ヘプタフルオロアルキル基、ヘキサフルオロアルキル基、ヘキサクロロアルキル基を挙げることができる。
【0035】
一般式(104)中、R5は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表す。中でも、R5は水素原子、炭素数が1以上3以下のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、水素原子又は炭素数が1以上3以下のアルキル基であることが特に好ましい。
【0036】
一般式(104)中、Y4は、単結合又は連結基を表す。Y4が連結基である場合、Y4としては、糖単位を含まない連結基を挙げることができ、例えば、アルキレン基、フェニレン基、-O-、-C(=O)O-などを含む基が挙げられる。Y4はこれらの基を組み合わせた連結基であってもよい。Y4としては、一般式(101)におけるY1が取り得る基と同様の構造を例示することができる。
【0037】
一般式(101)で表される構造に由来する単位の含有率(モル%)は、ポリマーの全質量に対して、0.5モル%以上95モル%以下であることが好ましく、1モル%以上90モル%以下であることがより好ましく、2モル%以上85モル%以下であることがさらに好ましく、5モル%以上75モル%以下であることが特に好ましい。一般式(101)で表される構造に由来する単位の含有率を上記範囲内とすることにより、レジスト材料から形成されるレジスト膜の感度をより効果的に高めることができる。
【0038】
また、一般式(104)で表される構造に由来する単位の含有率(質量%)は、ポリマーの全質量に対して、0.3モル%以上40モル%以下であることが好ましく、0.5モル%以上30モル%以下であることがより好ましく、0.7モル%以上20モル%以下であることがさらに好ましく、1モル%以上10モル%以下であることが特に好ましい。一般式(104)で表される構造に由来する単位の含有率を上記範囲内とすることにより、レジスト材料から形成されるレジスト膜の感度をより効果的に高めることができる。
【0039】
一般式(101)で表される構造に由来する単位の含有率及び一般式(104)で表される構造に由来する単位の含有率は、例えば1H-NMRのシグナル積分比からモル組成比を求めることができる。
【0040】
本実施形態のレジスト材料に含まれるポリマーは、下記一般式(102)で表される構造に由来する単位をさらに含むことが好ましい。
【化10】
一般式(102)
【0041】
一般式(102)中、X1は、置換基を有していてもよいアルキル基(但し、置換基にハロゲン原子を含むものを除く)、置換基を有していてもよいアシル基又は置換基を有していてもよいアリル基を表す。R3は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Y2は、単結合又は連結基を表す。
【0042】
一般式(102)中、X1は、置換基を有していてもよいアルキル基(但し、置換基にハロゲン原子を含むものを除く)、置換基を有していてもよいアシル基又は置換基を有していてもよいアリル基を表す。中でも、X1は、置換基を有していてもよいアルキル基(但し、置換基にハロゲン原子を含むものを除く)であることが好ましく、置換基を有さないアルキル基であることが特に好ましい。アルキル基の炭素数は1以上8以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましく、1以上3以下であることがさらに好ましい。なお、上記炭素数は置換基を除く炭素数である。なお、置換基を有するアルキル基としては、例えば、-CH2-OH、-CH2-O-メチル、-CH2-O-エチル、-CH2-O-n-プロピル、-CH2-O-イソプロピル、-CH2-O-n-ブチル、-CH2-O-イソブチル、-CH2-O-t-ブチル、-CH2-O-(C=O)-メチル、-CH2-O-(C=O)-エチル、-CH2-O-(C=O)-プロピル、-CH2-O-(C=O)-イソプロピル、-CH2-O-(C=O)-n-ブチル、-CH2-O-(C=O)-イソブチル、-CH2-O-(C=O)-t-ブチル、-C2H4-OH、-C2H4-O-メチル、-C2H4-O-エチル、-C2H4-O-n-プロピル、-C2H4-O-イソプロピル、-C2H4-O-n-ブチル、-C2H4-O-イソブチル、-C2H4-O-t-ブチル、-C2H4-O-(C=O)-メチル、-C2H4-O-(C=O)-エチル、-C2H4-O-(C=O)-n-プロピル、-C2H4-O-(C=O)-イソプロピル、-C2H4-O-(C=O)-n-ブチル、-C2H4-O-(C=O)-イソブチル、-C2H4-O-(C=O)-t-ブチル、-C2H4-O-(C=O)-CH2-(C=O)-メチル等を挙げることができる。また、置換基を有するアルキル基はシクロアルキル基であってもよい。
【0043】
一般式(102)中、R3は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表す。中でも、R3は水素原子、炭素数が1以上3以下のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが特に好ましい。R3に、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子を導入することにより、形成されるレジスト膜をより高感度にすることができる。なお、レジスト材料に含まれるポリマーが一般式(102)で表される構造に由来する単位をさらに含む場合、一般式(101)におけるR2と一般式(102)におけるR3の少なくともいずれかがフッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましい。なお、一般式(101)におけるR2と一般式(102)におけるR3の両方がフッ素原子、塩素原子又は臭素原子であってもよい。
【0044】
一般式(102)中、Y
2は、単結合又は連結基を表す。Y
2が連結基である場合、Y
2としては、アルキレン基、フェニレン基、-O-、-C(=O)O-などを含む基が挙げられる。Y
2はこれらの基を組み合わせた連結基であってもよい。中でもY
2は下記構造式で表される連結基であることが好ましい。
【化11】
【0045】
上記構造式中、※印は主鎖側との結合部位を表し、*印は、X1との結合部位を表す。
【0046】
ポリマーが一般式(102)で表される構造に由来する単位を含むものである場合、一般式(102)で表される構造に由来する単位の含有率(モル%)は、ポリマーの全質量に対して、0.5モル%以上99モル%以下であることが好ましく、3モル%以上98モル%以下であることがより好ましく、10モル%以上95モル%以下であることが特に好ましい。なお、一般式(102)で表される構造に由来する単位の含有率(モル%)は、上述した一般式(101)で表される構造に由来する単位の含有率の算出と同様の方法で算出することができる。
【0047】
本実施形態のレジスト材料に含まれるポリマーは、下記一般式(103)で表される構造に由来する単位をさらに含むことが好ましい。ポリマーが一般式(103)で表される構造に由来する単位をさらに含むことにより、有機溶剤への溶解性を向上させることができる。
【化12】
【0048】
一般式(103)中、X2は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。R4は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表し、Y3は、単結合又は連結基を表す。
【0049】
一般式(103)中、X2は、置換基を有していてもよいアリール基を表す。中でも、X2は、フェニル基であることが好ましい。
【0050】
一般式(103)中、R4は、水素原子、アルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はハロゲン化アルキル基を表す。中でも、R4は水素原子、炭素数が1以上3以下のアルキル基、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが特に好ましい。R4に、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子を導入することにより、形成されるレジスト膜をより高感度にすることができる。
【0051】
一般式(103)中、Y3は、単結合又は連結基を表す。Y2が連結基である場合、Y3としては、アルキレン基、フェニレン基、-O-、-C(=O)O-などを含む基が挙げられる。Y3はこれらの基を組み合わせた連結基であってもよい。但し、Y3は、単結合であることが特に好ましい。
【0052】
一般式(103)で表される構造に由来する単位は、スチレン化合物に由来する単位であることが好ましい。スチレン化合物としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、エチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、トリメチルシリルスチレン、ヒドロキシスチレン、3,4,5-メトキシスチレン、ペンタメチルジシリルスチレン、t-ブトキシカルボニルスチレン、テトラヒドロピラニルスチレン、フェノキシエチルスチレン、t-ブトキシカルボニルメチルスチレン等が挙げられる。
【0053】
ポリマーが一般式(103)で表される構造に由来する単位を含むものである場合、一般式(103)で表される構造に由来する単位の含有率(モル%)は、ポリマーの全質量に対して、0.5モル%以上98モル%以下であることが好ましく、2モル%以上97モル%以下であることがより好ましく、10モル%以上95モル%以下であることが特に好ましい。なお、一般式(103)で表される構造に由来する単位の含有率(質量%)は、上述した一般式(101)で表される構造に由来する単位の含有率の算出と同様の方法で算出することができる。
【0054】
本実施形態のレジスト材料に含まれるポリマーは、上述した一般式(101)及び一般式(104)で表される構造に由来する単位を含むものであり、さらに、一般式(102)及び/又は(103)で表される構造に由来する単位を含むものであることが好ましい。このように、本実施形態のレジスト材料に含まれるポリマーはコポリマーであり、コポリマーは、ブロックコポリマーであっても、ランダムコポリマーであってもよい。また、コポリマーは、一部がランダムコポリマー、一部がブロックコポリマーである構造であってもよい。このように、用途や要求物性により適宜適切な構造を選択することができる。但し、ラジカル発生部位がポリマー中に分散して存在することでレジストが高い解像度を有し、微細なパターンを形成させることができるため、コポリマーは、ランダムコポリマーであることが好ましい。
【0055】
ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5000以上であることが好ましく、8000以上であることがより好ましく、10000以上であることがさらに好ましい。また、ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、200万以下であることが好ましく、150万以下であることがより好ましく、100万以下であることがさらに好ましく、70万以下であることが一層好ましい。なお、ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPCによるポリスチレン換算で測定された値である。
【0056】
ポリマーの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、1以上であることが好ましい。また、Mw/Mnは、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましく、15以下であることが一層好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0057】
PGMEA、PGME、THF、酢酸ブチル、アニソール、シクロヘキサノン、乳酸エチル、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトンおよびDMFから選択される少なくとも1種へのポリマーの溶解度は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが特に好ましく、4質量%以上であることがより特に好ましい。上記有機溶剤へのポリマーの溶解度の上限値は特に制限されるものではないが、例えば40質量%とすることができる。なお、上記溶解度は、PGMEA、PGME、THF、酢酸ブチル、アニソール、シクロヘキサノン、乳酸エチル、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン及びDMFから選択される少なくともいずれかへの溶解度である。
【0058】
ポリマーの溶解度の測定方法は、所定量のポリマーにPGMEA、PGME、THF、酢酸ブチル、アニソール、シクロヘキサノン、乳酸エチル、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン又はDMFを徐々に加えながら撹拌し、溶解したときの添加した有機溶剤量を記録する。撹拌には、マグネチックスターラーなどを使用してもよい。そして、下記式から溶解度を算出する。
溶解度(質量%)=ポリマーの質量/(ポリマーの質量+有機溶剤の質量)×100
【0059】
<ポリマーの合成方法>
ポリマーの合成は、リビングラジカル重合やリビングアニオン重合、原子移動ラジカル重合といった公知の重合法で行うことができる。例えばリビングラジカル重合の場合、AIBN(α、α’-アゾビスイソブチロニトリル)といった重合開始剤を用い、モノマーと反応させることによってコポリマーを得ることができる。リビングアニオン重合の場合、塩化リチウムの存在下でブチルリチウムとモノマーを反応させることによってポリマーを得ることができる。なお、本実施例において、ポリマーの合成例を示しているが、本実施形態はそれに限られるものではなく、上記各合成法や公知の合成法によって適宜合成することができる。例えば、国際公開WO99/062964等に記載されている方法を利用することができる。
【0060】
また、ポリマーを合成する際には、木本性植物、あるいは草本性植物由来のリグノセルロース等から抽出する工程を組み合わせて行ってもよい。例えば、木本性植物、あるいは草本性植物由来のリグノセルロース等から抽出する方法を採用する場合は、特開2012-100546号公報等に記載の抽出方法を利用することができる。
【0061】
キシランについては、例えば特開2012-180424号公報に開示されている方法で抽出することができる。
【0062】
そして、ポリマーを合成する際には、上記抽出方法で得た糖部のOH基をエステル化などして修飾して用いることが好ましい。例えばアセチル基を導入する場合、無水酢酸と反応させることによりアセチル化した糖誘導体部を得ることができる。
【0063】
コポリマーを合成する際は、Macromolecules Vol.36,No.6, 2003を参考にして合成をすることもできる。具体的には、DMF、水、アセトニトリル等を含む溶媒に各化合物を入れ、還元剤を添加する。還元剤としては、NaCNBH3等を挙げることができる。その後、30℃以上100℃以下で1日以上20日以下撹拌し、必要に応じて還元剤を適宜追加する。水を添加することで沈殿物を得て、固形分を真空乾燥することでコポリマーを得ることができる。
【0064】
コポリマーの合成方法としては、上記の方法の他に、ラジカル重合、RAFT重合、ATRP重合、クリック反応、NMP重合を用いた合成方法を挙げることができる。
ラジカル重合は開始剤を添加して熱反応や光反応で2個のフリーラジカルを生じさせることで起こる重合反応である。モノマー(例えばスチレンモノマーとキシロオリゴ糖の末端のβ-1位にメタクリル酸を付加した糖メタクリレート化合物)と開始剤(例えばアゾビスブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物)を150℃で加熱することでポリスチレン-ポリ糖メタクリレートランダムコポリマーを合成することができる。
RAFT重合は、チオカルボニルチオ基を利用した交換連鎖反応を伴う、ラジカル開始重合反応である。例えばキシロオリゴ糖の末端1位についたOH基をチオカルボニルチオ基に変換し、その後スチレンモノマーを30℃以上100℃以下で反応させてコポリマーを合成する、という手法を取ることができる(Material Matters vol.5, No.1 最新高分子合成 シグマアルドリッチジャパン株式会社)。
ATRP重合は、糖の末端OH基をハロゲン化し、金属錯体[(CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2もしくはCuI等)+TPMA(tris(2-pyridylmethyl)amine)]、MeTREN(tris[2-(dimethylamino)ethyl]amine)など)、モノマー(例えばスチレンモノマー)、及び、重合開始剤(2,2,5-トリメチル-3-(1-フェニルエトキシ)-4-フェニル-3-アザヘキサン)を反応させることにより、糖コポリマー(例えば糖-スチレンブロックコポリマー)を合成することができる。
NMP重合は、アルコキシアミン誘導体を開始剤として加熱することで、モノマー分子とカップリングと反応を起こしニトロキシドを生じさせる。その後、熱解離によりラジカルが生じることでポリマー化反応が進む。このようなNMP重合は、リビングラジカル重合反応の一種である。モノマー(例えばスチレンモノマーとキシロオリゴ糖の末端のβ-1位にメタクリル酸を付加した糖メタクリレート化合物)とを混合し、2,2,6,6-tetramethylpiperidine 1-oxyl(TEMPO)を開始剤とし、140℃で加熱することでポリスチレン-ポリ糖メタクリレートランダムコポリマーを合成することができる。
クリック反応は、プロパルギル基をもつ糖とCu触媒を用いた1,3-双極アジド/アルキン環化付加反応である。
【0065】
<有機溶剤>
本実施形態のレジスト材料は、さらに有機溶剤を含むものであってもよい。但し、レジスト材料は、有機溶剤に加えて、さらに水や各種水溶液などの水系溶媒を含んでいてもよい。有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、含硫黄系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等;エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1H,1H-トリフルオロエタノール、1H,1H-ペンタフルオロプロパノール、6-(パーフルオロエチル)ヘキサノール等;を挙げることができる。
【0067】
また、多価アルコール部分エーテル系溶媒として、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
【0068】
エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。
【0069】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、メチル-i-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-i-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、フルフラール等が挙げられる。
【0070】
含硫黄系溶媒としては、例えばジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0071】
アミド系溶媒としては、例えば、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0072】
エステル系溶媒としては、例えば、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEA)、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸i-アミル、3-メトキシプロピオン酸メチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0073】
炭化水素系溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶媒として、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、2,2,4-トリメチルペンタン、n-オクタン、i-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等;芳香族炭化水素系溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、i-プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、i-ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ-i-プロピルベンゼン、n-アミルナフタレン、アニソール等が挙げられる。
【0074】
これらの中でも、有機溶剤は、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGMEA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、アニソール、エタノール、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1H,1H-トリフルオロエタノール、1H,1H-ペンタフルオロプロパノール、6-(パーフルオロエチル)ヘキサノール、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、フルフラール、N-メチルピロリドン又はγ-ブチロラクトンであることがより好ましく、PGMEA、PGME、THF、酢酸ブチル、アニソール、シクロヘキサノン、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン又はDMFであることがさらに好ましく、アニソール、PGME又はPGMEAであることが一層好ましい。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
有機溶剤の含有量は、レジスト材料の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、有機溶剤の含有量は、99.9質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましい。有機溶剤の含有量を上記範囲内とすることにより、レジスト材料の塗布性を向上させることができる。
【0076】
<任意成分>
本実施形態のレジスト材料は、後述するような任意成分を含むものであってもよい。
【0077】
<<モノマー成分>>
本実施形態のレジスト材料は、ポリマーに加えてさらにポリマーを構成するモノマー成分を含んでいてもよい。モノマー成分としては、例えば、上述した、一般式(101)又は一般式(104)で表される化合物や、一般式(102)又は(103)で表される化合物が挙げられる。
【0078】
<<架橋性化合物>>
本実施形態のレジスト材料はさらに架橋性化合物を含んでもよい。この架橋反応により、形成されたレジスト膜は強固になり、エッチング耐性を高めることができる。また、架橋性化合物が添加された場合、電磁波を照射することで、露光部のポリマーの架橋反応を促進させ、不溶化させることもできる。この場合、適切な現像液で処理することで、未露光部分のレジスト膜(レジスト材料)が除去されることになる。
【0079】
架橋性化合物としては、特に制限はないが、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋性化合物が好ましく用いられる。イソシアネート基、エポキシ基、ヒドロキシメチルアミノ基、及びアルコキシメチルアミノ基から選択される少なくとも1種の架橋形成置換基を2つ以上、例えば2~6個有する化合物を架橋性化合物として使用することができる。架橋性化合物は、一種の化合物のみを使用することができ、また、二種以上の化合物を組み合わせて用いることもできる。
【0080】
これら架橋性化合物は自己縮合による架橋反応を起こすことができる。また、ポリマーに含まれる構成単位と架橋反応を起こすこともできる。
【0081】
<<触媒>>
レジスト材料には架橋反応を促進するための触媒として、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム-p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ヒドロキシ安息香酸等の酸化合物を添加することができる。また、触媒として、2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシラート、2-ニトロベンジルトシラート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、N-ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホネート等の酸発生剤を添加することができる。
【0082】
<<光反射防止剤>>
本実施形態のレジスト材料はさらに光反射防止剤を含んでもよい。光反射防止剤としては、例えば、吸光性を有する化合物を挙げることができる。吸光性を有する化合物としては、光反射防止膜の上に設けられるフォトレジスト中の感光成分の感光特性波長領域における光に対して高い吸収能を有するものを挙げることができ、例えば、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アゾ化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、アントラキノン化合物、トリアジン化合物等が挙げられる。ポリマーとしては、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ノボラック樹脂、ポリアセタール、アクリルポリマー等を挙げることができる。化学結合により連結した吸光性基を有するポリマーとしては、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環といった吸光性芳香環構造を有するポリマー等を挙げることができる。
【0083】
<<他の成分>>
レジスト材料は、イオン液体や界面活性剤等をさらに含んでもよい。レジスト材料にイオン液体を含有させることで、ポリマーと有機溶剤との相溶性を高めることができる。
レジスト材料に界面活性剤を含有させることで、レジスト材料の基板への塗布性を向上させることができる。好ましい界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びシリコン系界面活性剤が挙げられる。
その他、既知のレオロジー調整剤や、接着補助剤、酸発生剤や、増感剤、消光剤など任意の材料をレジスト材料に含めてもよい。
【0084】
なお、上述したような任意成分の含有量は、レジスト材料の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0085】
(レジスト膜)
本発明は、上述したレジスト材料から形成されたレジスト膜に関するものであってもよい。レジスト膜は、基板等にパターンを形成する際に使用されるものであって、基板にエッチング処理を施す際の保護膜として機能し得る膜である。なお、レジスト膜には、パターンを形成する前の層状の膜も、パターン形成後の間欠膜も含まれる。
【0086】
図1(a)には、基板10の上にレジスト膜40が形成された積層体が示されている。なお、図示していないが基板10とレジスト膜40の間には他の層が設けられていてもよい。
【0087】
図1(b)に示されるように、レジスト膜40の一部は、基板10に形成したいパターン形状となるように少なくとも一部が除去される。例えば、レジスト膜40に対し、露光及び現像処理を行うことで、
図1(b)に示されるようなパターン形状を形成することができる。
【0088】
露光工程では、回路パターンが描画されたマスクを通して電磁波をレジスト膜40に照射し、光が当たった部分のレジスト膜を変質させてパターンを転写する。この際、光が当たった部分では、レジスト膜に含まれるポリマーの主鎖が切断されることが好ましい。これにより、ポリマーの分子量が低下し、露光された部分を現像液で溶解及び除去することができ、レジスト膜の間欠部が形成されることになる。このようにして形成されたレジスト膜の間欠部では基板10が露出する。露出した基板10に対して、塩素ガスや、三塩化ホウ素、四フッ化メタンガス、三フッ化メタンガス、六フッ化エタンガス、八フッ化プロパンガス、八フッ化ブタンガス、六フッ化硫黄ガス、アルゴンガス、酸素ガス、ヘリウムガスなどを用いて、誘導結合プラズマなどの反応性イオンエッチング等を行うことでパターン形成を行い、
図1(c)に示されるようなパターンを基板10に形成する。また、露光工程では、マスクレス露光機や電子線描画装置のようなマスクを用いない露光を行うこともできる。その場合、微細なビームを用いて光エネルギーをレジスト膜40に照射し直接レジストに潜像を描画することができる。
【0089】
レジスト膜の膜厚は用途によって適宜調整することができるが、例えば、1nm以上20000nm以下であることが好ましく、1nm以上10000nm以下であることがより好ましく、1nm以上5000nm以下であることがさらに好ましく、1nm以上3000nm以下であることが特に好ましい。
【0090】
レジスト膜は金属導入用の膜であってもよく、金属が導入された膜であってもよい。なお、レジスト膜は金属を含むものであってもよい。この場合、レジスト膜の金属含有率は、3at%以上であることが好ましく、5at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることがさらに好ましく、10at%以上であることが特に好ましい。金属含有率は、例えば、以下の方法で算出できる。金属導入後のレジスト膜について、電子顕微鏡JSM7800F(日本電子製)を用いてEDX分析(エネルギー分散型X線分析)を行い、金属成分の比率(金属含有率)を算出し、これを金属含有率とする。
【0091】
(パターン形成方法)
本発明は、上述したレジスト材料を用いたパターン形成方法に関するものでもある。具体的には、パターン形成方法は、上述したレジスト材料を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する工程と、露光工程と、現像工程と、を含むことが好ましい。
【0092】
パターン形成方法に用いる基板としては、例えば、ガラス、シリコン、SiN、GaN、AlN、SiO2、石英、サファイア等の基板を挙げることができる。また、PET、PE、PEO、PS、シクロオレフィンポリマー、ポリ乳酸、セルロースナノファイバーのような有機材料からなる基板を用いてもよい。
【0093】
基板にレジスト材料を塗布する前には、基板を洗浄する工程を設けることが好ましい。基板表面を洗浄することによりレジスト材料の塗布性が向上する。洗浄処理方法としては、従来公知の方法を利用でき、例えば酸素プラズマ処理、オゾン酸化処理、酸アルカリ処理、化学修飾処理等が挙げられる。
【0094】
レジスト材料の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、レジスト材料を基板上にスピンコート法等の公知の方法により塗布することができる。また、レジスト材料を塗布した後には、加熱することによりレジスト材料を硬化させてレジスト膜を形成してもよい。塗膜を加熱する際の温度は、特に限定されないが、60以上550℃以下が好ましい。また、加熱処理は、大気下でかつ比較的低温での加熱処理であることが好ましい。
【0095】
基板とレジスト膜は、この順で隣り合う層同士が直接接するように積層されることが好ましいが、各層の間には他の層が設けられていてもよい。例えば、基板とレジスト膜の間にはアンカー層や光反射防止膜が設けられてもよい。アンカー層は、基板の濡れ性をコントロールする層であり、基板とレジスト膜の密着性を高める層である。光反射防止膜は使用する電磁波を吸収する層である。また、基板とレジスト膜の間には、異なる材料からなる層が複数層挟まれていてもよい。これらの材料としては、特に特定されるものではないが、例えばSiO2、SiN,Al2O3、AlN、GaN、GaAs、W、Cr、Ru、TaN、SOG、アモルファスカーボンなどの無機材料や、市販されているSOCや接着剤のような有機材料を挙げることができる。基板とレジスト膜の間に光反射防止膜が設けられる場合、光反射防止膜の形成に使用される光反射防止膜用組成物としては特に制限はなく、リソグラフィープロセスにおいて慣用されているものの中から任意に選択して使用することができる。
【0096】
レジスト膜にパターンを形成する際は、回路パターンが描画されたマスクを通して露光を行う工程(露光工程)、もしくは、マスクを使用せず微細な電磁波を使用して露光を行う工程(露光工程)を含むことが好ましい。露光に使用する電磁波は、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)及びF2エキシマレーザー(波長157nm)、電子線、EUV(極端紫外線、波長13.5nmまたはそれ以下)等を使用することができる。露光は微細なパターンの描画を行うため、電子線、EUVを使用することが好ましい。露光後、必要に応じて露光後加熱(post exposure bake)を行なうこともできる。露光後加熱は、加熱温度70℃~150℃、加熱時間0.3~10分間の条件で行うことが好ましい。
【0097】
露光工程では、電磁波を照射することで、光が当たった部分のレジスト膜を変質させてマスクのパターンを転写する。この際、光が当たった部分では、レジスト膜に含まれるポリマーの主鎖が切断されることが好ましい。ポリマーの主鎖が切断された部分では、後工程の現像工程において、露光された部分のレジスト膜(レジスト材料)が除去されることになる。
【0098】
露光工程においてレジスト膜に電磁波を照射する場合、電磁波の波長は15nm以下であることが好ましい、また、電磁波の波長は0.0001nm以上であることが好ましい。露光工程において波長が15nm以下の電磁波を照射することにより、微細パターンを精度よく形成することができる。
【0099】
なお、レジスト材料に架橋性基を有するポリマーが含有されているか、もしくは架橋性化合物が添加されている場合には、光エネルギーを照射することで、露光部のポリマーの架橋反応を促進させ、不溶化させることもできる。この場合、適切な現像液で処理することで、未露光部分のレジスト膜(レジスト材料)が除去されることになる。
【0100】
現像工程で用いる現像液としては、特に限定されないが、既知の現像液を使用することができる。例えば、キシレン、トルエン、アニソール等の芳香族系、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘプチル、酢酸オクチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n-ブチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、γブチロラクトン等のエステル、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、無水酢酸、酢酸等の有機酸や、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液を例として挙げることができる。現像液としては、これらをそれぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件は、温度-70~50℃、時間10~300秒から適宜選択される。
【0101】
中でも、現像工程で用いる現像液は、エステル系化合物、ケトン系化合物及びアルコール系化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。このような現像液を用いることで、高感度であり、かつ高精細なパターニングが容易となる。なお、現像液には、上述した化合物を2種類以上組み合わせて用いてもよい。例えば、上述した化合物を混合する場合は、現像液としては、酢酸ブチル等のエステル系化合物2種以上の混合液、エステル系化合物とイソプロピルアルコール等のアルコール系化合物の混合液、エステル系化合物とシクロヘキサノン等のケトン系化合物の混合液、エステル系化合物とジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系化合物の混合液、ケトン系化合物2種以上の混合液、ケトン系化合物とアルコール系化合物の混合液、ケトン系化合物とエーテル系化合物の混合液、アルコール系化合物2種以上の混合液、アルコール系化合物と無水酢酸等の有機酸の混合液、アルコール系化合物と水酸化テトラメチルアンモニウム等のアミン系化合物の混合液等を用いることができる。
【0102】
また、現像工程の後にリンス液を用いたリンス工程を設けてもよい。リンス液としては、特に限定されないが、既知のリンス液を使用することができる。例えば、キシレンや酢酸ブチル、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、純水等を用いることができる。リンス液としては、これらをそれぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、これらリンス液に界面活性剤などを加えて用いてもよい。リンス工程の条件は、温度-70~50℃、時間10~100秒から適宜選択される。
【0103】
本発明のパターン形成方法は、現像工程の前に、金属導入工程をさらに含んでもよい。すなわち、本発明のパターン形成方法は、レジスト膜を形成する工程と露光工程の間、もしくは現像工程の後に金属導入工程をさらに含んでもよい。この場合、金属導入工程としては、SIS法(Sequencial Infiltration Synthesis;逐次浸透合成)のような、レジスト膜へ金属を導入する工程を挙げることができる。導入する金属としては、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Po、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどが挙げられる。このようなプロセスは、例えばJornal of Photopolymer Science and Technology Volume29, Number5(2016)653-657に記載されている方法により行うことができる。また、金属を導入する工程では、金属錯体ガスを使用する方法、金属を含む溶液を塗布する方法、あるいは、イオンインプラント法により金属をレジストに導入する方法を採用することができる。
【0104】
本実施形態のパターン形成方法は、レジスト材料から形成されたレジスト膜にパターンを形成する方法であるが、レジスト膜に形成されたパターンを保護膜として、半導体基板等を加工する工程をさらに含むものであってもよい。このような工程をエッチング工程と呼ぶ。この場合、現像工程の後工程としてエッチング工程が設けられる。
【0105】
エッチング工程において半導体基板を加工する方法としては、例えば、ケミカルドライエッチング等の反応性イオンエッチング(RIE)、ケミカルウェットエッチング(湿式現像)、スパッタエッチング、イオンビームエッチング等の物理的エッチング等の公知の方法が挙げられる。半導体基板の加工は、例えば、テトラフルオロメタン、パーフルオロシクロブタン(C4F8)、パーフルオロプロパン(C3F8)、トリフルオロメタン、一酸化炭素、アルゴン、酸素、窒素、塩素、六フッ化硫黄、ジフルオロメタン、三フッ化窒素及び三フッ化塩素等のガスを用いたドライエッチングによって行われることが好ましい。
【実施例】
【0106】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、以下、実施例中の構造式におけるn、m、l、sは、それぞれポリマー中の各構成単位の繰り返し数である。
【0107】
[実施例1:コポリマー1の合成]
(アセチル糖メタクリレート1の合成)
キシロース20gを、無水酢酸(富士フイルム和光純薬社製)250gと酢酸(富士フイルム和光純薬社製)320gの混合溶液へ添加し、30℃で2時間撹拌した。溶液のおよそ5倍量の冷水を撹拌しながらゆっくりと加え、2時間撹拌したのちに1晩静置し、結晶を析出させた。フラスコ中テトラヒドロフラン(THF、富士フイルム和光純薬社製)400mLにエチレンジアミン(富士フイルム和光純薬社製)1.2gと酢酸0.14gを加えて0℃にした溶液に、析出した結晶10gを加え、4時間撹拌した。これを冷水1Lに注入し、ジクロロメタン(富士フイルム和光純薬社製)で2回抽出した。この抽出物20g、ジクロロメタン300mL及びトリエチルアミン(東京化成工業社製)4.8gをフラスコに入れ、-30℃に冷却した。塩化メタクリロイル(富士フイルム和光純薬社製)2.8gを加えて2時間撹拌した。これを冷水300mLに注入し、ジクロロメタンで2回抽出し、溶媒を濃縮することにより、アセチル糖メタクリレート1を16.1g得た。得られたアセチル糖メタクリレート1の構造は以下のとおりである。
【化13】
【0108】
(アセチル糖メタクリレート1-トリフルオロエチルメタクリレートランダムコポリマーの合成)
フラスコにアセチル糖メタクリレート1 19.5gと2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(東京化成工業社製)0.5gを入れた後、溶媒としてTHF100g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(東京化成工業社製)0.8gを入れ、フラスコを密閉し窒素置換した。窒素雰囲気下、78℃に昇温し6時間撹拌した。その後、室温に戻し、フラスコを大気下とした。得られた溶液にメタノール(富士フイルム和光純薬社製)300gを滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液を吸引ろ過し、白色のコポリマー1 11gを得た。得られたコポリマー1の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化14】
【0109】
[実施例2:コポリマー2の合成]
(アセチル糖メタクリレート1-クロロアクリル酸メチル-トリフルオロエチルメタクリレートランダムコポリマーの合成)
フラスコにアセチル糖メタクリレート1 14.7g、2-クロロアクリル酸メチル(東京化成社製)4.6g及び2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート0.7gを入れた後、溶媒としてTHF100g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.8gを入れた後、フラスコを密閉し、窒素置換した。窒素雰囲気下、78℃に昇温し6時間撹拌した。その後、室温に戻し、フラスコを大気下とし、得られた溶液にメタノール300gを滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液を吸引ろ過し、白色のコポリマー2 12.1gを得た。得られたコポリマー2の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化15】
【0110】
[実施例3:コポリマー3の合成]
(アセチル糖メタクリレート1-メタクリル酸メチル-スチレン-トリフルオロエチルメタクリレートランダムコポリマーの合成)
フラスコにアセチル糖メタクリレート1 11.6gとメタクリル酸メチル(東京化成工業社製)3.4g、スチレン(東京化成工業社製) 4.2g、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート0.9gを入れた後、溶媒としてTHF100g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.8gをフラスコに入れ、フラスコを密閉し窒素置換した。窒素雰囲気下、78℃に昇温し6時間撹拌した。その後、室温に戻し、フラスコを大気下とし、得られた溶液にメタノール310gを滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液を吸引ろ過し、白色のコポリマー3 10.2gを得た。得られたコポリマー3の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化16】
【0111】
[実施例4:コポリマー4の合成]
(アセチル糖クロロアクリレートの合成)
アセチル糖メタクリレート1の合成にて、塩化メタクリロイルを2-クロロアクリル酸クロリド(1Click Chemistry Stock Products社製)に変更して合成を行い、アセチル糖クロロアクリレート20gを得た。得られたアセチル糖クロロアクリレートの構造は以下のとおりである。
【化17】
【0112】
(アセチル糖クロロアクリレート-クロロアクリル酸メチル-メチルスチレン-トリフルオロエチルメタクリレートランダムコポリマーの合成)
コポリマー3の合成にて、アセチル糖メタクリレート1 11.6gをアセチル糖クロロアクリレート 9.8gに変更し、メタクリル酸メチル3.4gを2-クロロアクリル酸メチル3.9gに変更し、さらにスチレン 4.2gをα-メチルスチレン(東京化成工業社製)4.6gに変更し、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートの添加量を0.9gから1.8gに変更した以外は同様の方法にてコポリマー4 9.7gを得た。得られたコポリマー4の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化18】
【0113】
[実施例5:コポリマー5の合成]
(プロピル糖メタクリレートの合成)
アセチル糖メタクリレート1の合成にて、無水酢酸250gと酢酸320gの混合溶液を無水プロピオン酸(東京化成工業社製)300gとプロピオン酸(富士フイルム和光純薬社製)400gに変更して合成を行い、プロピル糖メタクリレート22.1gを得た。得られたプロピル糖メタクリレートの構造は以下のとおりである。
【化19】
【0114】
(プロピル糖メタクリレート-クロロアクリル酸メチル-メチルスチレン-トリフルオロエチルメタクリレートランダムコポリマーの合成)
コポリマー3の合成にて、アセチル糖メタクリレート1 11.6gをプロピル糖メタクリレート 8.1gに変更し、メタクリル酸メチル3.4gを2-クロロアクリル酸メチル2.5gに変更し、さらにスチレン4.2gをα-メチルスチレン3.6gに変更し、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートの添加量を0.9gから6.2gに変更した以外は同様の方法にてコポリマー5 10.0gを得た。得られたコポリマー5の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化20】
【0115】
[実施例6:コポリマー6の合成]
(トリフルオロアセチル糖メタクリレートの合成)
アセチル糖メタクリレート1の合成にて、無水酢酸250gと酢酸320gの混合溶液を無水トリフルオロ酢酸(東京化成工業社製)400gとトリフルオロ酢酸(東京化成工業社製)500gに変更して合成を行い、トリフルオロアセチル糖メタクリレート20.0gを得た。得られたトリフルオロアセチル糖メタクリレートの構造は以下のとおりである。
【化21】
【0116】
(トリフルオロアセチル糖メタクリレート-クロロアクリル酸メチル-メチルスチレン-トリフルオロエチルメタクリレートランダムコポリマーの合成)
コポリマー3の合成にて、アセチル糖メタクリレート1 11.6gをトリフルオロアセチル糖メタクリレート 11.9gに変更し、メタクリル酸メチル3.4gを2-クロロアクリル酸メチルの添加量3.4gに変更し、さらにスチレン4.2gをα-メチルスチレンの添加量4.0gに変更し、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートの添加量を0.9gから0.8gに変更した以外は同様の方法にてコポリマー6 13.0gを得た。得られたコポリマー6の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化22】
【0117】
[実施例7:コポリマー7の合成]
(糖メタクリレートの合成)
キシロース33gを水150mLに溶かし、炭酸水素アンモニウム(富士フイルム和光純薬社製)を28.5gずつ24時間ごとに4回加え、37℃で96時間撹拌した。その後、蒸留水200mLを加え、20mLになるまで水を留去した後、150mLの水を加え、10mLになるまで濃縮した。これをアンモニア臭が消失するまで繰り返し、凍結乾燥後、白色固体を得た。この物質を1x10
-3MのKOH(富士フイルム和光純薬社製)水溶液50mLに溶解させ、2-イソシアネートエチルメタクリレート(富士フイルム和光純薬社製)を10.4g加え、3℃に保ったまま12時間激しく撹拌した。析出した白色固体を除去したのち、ろ液を50mLのジエチルエーテル(富士フイルム和光純薬社製)を用いて4回洗浄し、凍結乾燥を行った。この後、得られた白色固体を水2mL、メタノール10mLの混合溶液に溶解させ、アセトン(富士フイルム和光純薬社製)200mLの混合溶液に滴下し冷却した。その後、フィルター濾過し減圧乾燥することにより、糖メタクリレート 25gを得た。糖メタクリレートの構造は以下のとおりである。
【化23】
【0118】
(糖メタクリレート-クロロアクリル酸メチル-メチルスチレン-トリフルオロエチルメタクリレートランダムコポリマーの合成)
コポリマー3の合成にて、アセチル糖メタクリレート1 11.6gを糖メタクリレート 14.2gに変更し、メタクリル酸メチル3.4gを2-クロロアクリル酸メチル2.2gに変更し、さらにスチレン4.2gをα-メチルスチレン2.8gに変更し、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートの添加量を0.9gから0.8gに変更した以外は同様の方法にてコポリマー7 11.3gを得た。得られたコポリマー7の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化24】
【0119】
[実施例8:コポリマー8の合成]
(アセチルキシロオリゴ糖メタクリレートの合成)
アセチル糖メタクリレート1の合成にて、キシロース20gをキシロオリゴ糖(平均糖鎖長3)55gに変更した以外は同様の方法にて合成を行い、アセチルキシロオリゴ糖メタクリレート 30.0gを得た。得られたアセチルキシロオリゴ糖メタクリレートの構造は以下のとおりである。
【化25】
【0120】
(アセチルキシロオリゴ糖メタクリレート-クロロアクリル酸メチル-メチルスチレン-ブロモエチルアクリレートランダムコポリマーの合成)
コポリマー3の合成にて、アセチル糖メタクリレート1 11.6gをアセチルキシロオリゴ糖メタクリレート 14.6gに変更し、メタクリル酸メチル3.4gを2-クロロアクリル酸メチル2.3gに変更し、さらにスチレン4.2gをα-メチルスチレン2.6gに変更し、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート0.9gを2-ブロモエチルアクリレート(Alfa Aesar社製)0.6gに変更した以外は同様の方法にてコポリマー8 8.1gを得た。得られたコポリマー8の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化26】
【0121】
[実施例9:コポリマー9の合成]
(アセチル糖メタクリレート2の合成)
糖メタクリレート10gに、無水酢酸120gを添加し2時間撹拌した。その後、33質量%の酢酸マグネシウム(富士フイルム和光純薬社製)溶液で反応を停止させ、純水を加えて結晶を析出させることにより、アセチル糖メタクリレート2 11gを得た。得られたアセチル糖メタクリレート2の構造は以下のとおりである。
【化27】
【0122】
(アセチル糖メタクリレート2-クロロアクリル酸メチル-メチルスチレン-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリラートランダムコポリマーの合成)
コポリマー3の合成にて、アセチル糖メタクリレート1 11.6gをアセチル糖メタクリレート2 11.9gに変更し、メチルメタクリレート3.4gを2-クロロアクリル酸メチル3.3gに変更し、さらにスチレン4.2gをα-メチルスチレン3.9gに変更し、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート 0.9gを2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリラート(シグマアルドリッチ社製)1.0gに変更した以外は同様の方法にてコポリマー9 10.5gを得た。得られたコポリマー9の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化28】
【0123】
[実施例10:コポリマー10の合成]
(アセチル糖メタクリレート1-クロロアクリル酸メチル-メチルスチレン-トリフルオロエチルメタクリレートランダムコポリマーの合成)
コポリマー3の合成にて、アセチル糖メタクリレート1の添加量を11.6gから10.9gに変更し、メタクリル酸メチル3.4gを2-クロロアクリル酸メチル3.8gに変更し、さらにスチレン4.2gをα-メチルスチレン4.5gに変更した以外は同様の方法にてコポリマー10 10.7gを得た。得られたコポリマー10の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化29】
【0124】
[実施例11:コポリマー11の合成]
(アセチル糖メタクリレート1-クロロアクリル酸メチル-メチルスチレン-トリクロロエチルアクリレートランダムコポリマーの合成)
コポリマー3の合成にて、アセチル糖メタクリレート1の添加量を11.6gから11.1gに変更し、メタクリル酸メチル3.4gを2-クロロアクリル酸メチル3.9gに変更し、さらにスチレン4.2gをα-メチルスチレン4.0gに変更し、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート 0.9gを2,2,2-トリクロロエチルアクリレート(富士フイルム和光純薬社製)1.1gに変更した以外は同様の方法にてコポリマー11 6.1gを得た。得られたコポリマー11の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化30】
【0125】
[実施例12:コポリマー12の合成]
(アセチル糖メタクリレート1-フルオロアクリル酸メチル-メチルスチレン-トリフルオロエチルメタクリレートランダムコポリマーの合成)
コポリマー3の合成にて、アセチル糖メタクリレート1の添加量を11.6gから11.2gに変更し、メチルメタクリレート3.4gを2-フルオロアクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬社製)を3.4gに変更し、さらにスチレン4.2gをα-メチルスチレン4.6gに変更した以外は同様の方法にてコポリマー12 11.0gを得た。得られたコポリマー12の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化31】
【0126】
[実施例13:コポリマー13の合成]
(アセチル糖スチレンの合成)
キシロース20gを、無水酢酸(富士フイルム和光純薬社製)250gと酢酸(富士フイルム和光純薬社製)320gの混合溶液へ添加し、30℃で2時間撹拌した。溶液のおよそ5倍量の冷水を撹拌しながらゆっくりと加え、2時間撹拌したのちに1晩静置し、結晶を析出させ、結晶をろ過することでアセチル糖を30g合成した。アセチル糖4-ビニルフェノール(富士フイルム和光純薬社製)10.8g(90mmol)、アセチル糖32.2g(32mmol)及び塩化亜鉛(富士フイルム和光純薬社製)0.5gをかきまぜながらシリコン油浴中で160℃で、30分加熱した。融解混合物を約60℃に冷却し、ベンゼン(富士フイルム和光純薬社製)200mLに溶かした。この溶液を水で2回洗浄し、次いで水相がほぼ無色になるまで1M水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製)で洗浄した。続いて水で2回洗った後乾燥し、減圧濃縮することにより、アセチル糖スチレン26.5gを得た。得られたアセチル糖スチレンの構造は以下のとおりである。
【化32】
【0127】
(アセチル糖スチレン-クロロアクリル酸メチル-メチルスチレン-トリフルオロエチルメタクリレートランダムコポリマーの合成)
コポリマー3の合成にて、アセチル糖メタクリレート1 11.6gをアセチル糖スチレン 11.2gに変更し、メタクリル酸メチル3.4gを2-クロロアクリル酸メチル3.7gに変更し、さらにスチレン4.2gをα-メチルスチレン4.3gに変更した以外は同様の方法にてコポリマー13 10.8gを得た。得られたコポリマー13の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化33】
【0128】
[比較例1:コポリマー14の合成]
(クロロアクリル酸メチル-メチルスチレン-トリフルオロメチルメタクリレートランダムコポリマーの合成)
フラスコにα-メチルスチレン10.0g、2-クロロアクリル酸メチル8.9g及び2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート1.4gを入れた後、溶媒としてTHF100g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.8gを入れた後、フラスコを密閉し、窒素置換した。窒素雰囲気下、78℃に昇温し6時間撹拌した。その後、室温に戻し、フラスコを大気下とし、得られた溶液にメタノール300gを滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液を吸引ろ過し、白色のコポリマー14 14.0gを得た。得られたコポリマー14の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化34】
【0129】
[比較例2:コポリマー15の合成]
(アセチル糖メタクリレート1-クロロアクリル酸メチル-メチルスチレンランダムコポリマーの合成)
コポリマー2の合成にて、アセチル糖メタクリレート1 の添加量を14.7gから11.1gに変更し、2-クロロアクリル酸メチルの添加量を4.6gから4.5gに変更し、さらに2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートを添加せずに、α-メチルスチレン4.4gを添加した以外は同様の方法にてコポリマー15 12.0gを得た。得られたコポリマー15の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化35】
【0130】
[比較例3:コポリマー16の合成]
(アセチル糖メタクリレート-クロロアクリル酸メチルランダムコポリマーの合成)
コポリマー1の合成にて、アセチル糖メタクリレート1の添加量を19.5gから14.8gに変更し、さらに2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート0.5gを添加せずに、2-クロロアクリル酸メチル5.2gを添加した以外は同様の方法にてコポリマー16 10.5gを得た。得られたコポリマー16の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化36】
【0131】
[比較例4:コポリマー17の合成]
(メタクリル酸アダマンチル-クロロアクリル酸メチル-メチルスチレン-トリフルオロエチルメタクリレートランダムコポリマーの合成)
コポリマー3の合成にて、アセチル糖メタクリレート1 11.6gをメタクリル酸1-アダマンチル(東京化成工業社製)8.7gに変更し、メタクリル酸メチル3.4gを2-クロロアクリル酸メチル4.7gに変更し、さらにスチレン4.2gをα-メチルスチレンの5.6gに変更し、さらに2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートの添加量を0.9gから1.1gに変更した以外は同様の方法にてコポリマー17 8.4gを得た。得られたコポリマー17の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化37】
【0132】
[比較例5:コポリマー18の合成]
(アセチル糖メタクリレート-メタクリル酸メチル-メチルスチレンランダムコポリマーの合成)
コポリマー2の合成にて、アセチル糖メタクリレート1の添加量を14.7gから11.5gに変更し、2-クロロアクリル酸メチル4.6gをメタクリル酸メチル3.9gに変更し、さらに,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート0.7gを添加せずに、α-メチルスチレン4.6gを添加した以外は同様の方法にてコポリマー18 9.8gを得た。得られたコポリマー18の各構成単位の構造は以下のとおりである。
【化38】
【0133】
[コポリマーの分析]
<重量平均分子量>
コポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)法にて測定した。
GPCカラム:Shodex K-806M/K-802連結カラム(昭和電工社製)
カラム温度:40℃
移動層:クロロホルム
検出器:RI
すべて重合が終了してから、GPC法で重合度を確認することにより、狙いの重合度、平均分子量のランダムコポリマーができていることを確認した。なお、各コポリマーの数平均分子量Mnは50,000であった。
【0134】
<単位(a):単位(b):単位(c):単位(d)の比率>
コポリマーの各単位の比率はJNM-ECS-400(日本電子社製)を用いて、ポリマーの1H-NMRを測定することで算出した。各単位由来のピーク面積からコポリマーの単位(a)と単位(b):単位(c):単位(d)の比率(モル比)を求めて、算出した。モル比とは、コポリマー中に存在する各単位の個数の比率を示す。
【0135】
【0136】
[コポリマーの溶解性の評価]
合成したコポリマーを秤量し、23℃の酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学社製)に3.0質量%になるように溶解させ、目視で溶解性を確認し、以下基準で評価した。
○:溶液が透明であり、白濁や沈殿はない
△:溶液が白濁しているが、沈殿はない
×:溶液中に沈殿がみられる
【0137】
[レジスト評価用サンプルの作製]
合成したコポリマーを秤量し、23℃の酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル(関東化学社製)に3.0質量%になるように溶解させた。この溶液を、シリコンウエハー上に膜厚100nmになるようにスピンコートし、ホットプレートにて180℃で2分間加熱し、焼成した。焼成後のシリコンウエハーに電子ビーム描画装置ELS-F125(エリオニクス社製)を用いて加速電圧50kV、電流500pA(波長0.0053nm)の条件で電子線照射をし、潜像を描画した。その後、下記に示した工程を行い感度、解像度評価用サンプルを作製し、感度の評価を行った。
【0138】
[感度評価]
ドーズ量をそれぞれ15μC/cm2、30μC/cm2、45μC/cm2、60μC/cm2、160μC/cm2とし、レジスト膜上に線幅100nmであり、ライン:スペース比が1:1のラインアンドスペースの潜像を描画した。描画後のシリコンウエハーを23℃の酢酸ペンチル(東京化成社製)に浸漬し現像を行った。現像後、窒素ブローにて乾燥させることで、感度評価用サンプルを作製した。
ラインアンドスペース部の表面及び断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)JSM7800F(日本電子製)を用いて、加速電圧5kV、エミッション電流86.0μA、倍率100,000倍の条件で観察し、感度を確認した。状態については、下記の評価基準で評価を行った。なお、45μC/cm2以下のドーズ量にてラインアンドスペースのパターンが現像されていた場合を感度が良好であると評価した。
○:ラインアンドスペースのパターンが現像されている
×:ラインアンドスペースのパターンが現像されていない
【0139】
【0140】
実施例で得られたコポリマーを用いてレジスト膜を形成した場合、レジスト膜の感度が高かった。
【符号の説明】
【0141】
10 基板
40 レジスト膜