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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】アンテナ装置、およびレーダ装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/08 20060101AFI20241217BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20241217BHJP
   H01P 3/12 20060101ALI20241217BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H01P5/08 Z
H01Q13/08
H01P3/12 100
G01S7/03 230
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020175397
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066837
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青木 一浩
(72)【発明者】
【氏名】田井中 佑介
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/189622(WO,A1)
【文献】特開2011-223203(JP,A)
【文献】特開2017-073672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/08
H01Q 13/08
H01P 3/12
G01S 7/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲導体層(L8)と、
乙導体層(L7)と、
前記甲導体層および前記乙導体層に挟まれた誘電体層(P7)と、を備え、
前記甲導体層には、第1アンテナ(66a)と、第2アンテナ(66b)と、前記第1アンテナおよび第2アンテナの双方に接続される接続導体(60,62,64)と、が形成されており、
前記誘電体層には、ガード用導体(48)が設けられており、
前記ガード用導体は、前記接続導体のうち前記第1アンテナとの接続箇所である第1接続箇所および前記第2アンテナとの接続箇所である第2接続箇所を少なくとも除きつつ前記接続導体の外周に沿って配置されており、
前記ガード用導体(48c)は、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナの敷設方向に平行であって且つ前記第1接続箇所と前記第2接続箇所とに挟まれた位置にも配置されるアンテナ装置(18)。
【請求項2】
甲導体層(L8)と、
乙導体層(L7)と、
前記甲導体層および前記乙導体層に挟まれた誘電体層(P7)と、を備え、
前記甲導体層には、第1アンテナ(66a)と、第2アンテナ(66b)と、前記第1アンテナおよび第2アンテナの双方に接続される接続導体(60,62,64)と、が形成されており、
前記誘電体層には、ガード用導体(48)が設けられており、
前記ガード用導体は、前記接続導体のうち前記第1アンテナとの接続箇所である第1接続箇所および前記第2アンテナとの接続箇所である第2接続箇所を少なくとも除きつつ前記接続導体の外周に沿って配置されており、
前記接続導体は、前記第1接続箇所および前記第2接続箇所の2つの接続箇所を挟むようにして、前記第1アンテナおよび前記第2アンテナの敷設方向に突出したサイド突起部(63a)を備え、
前記ガード用導体は、前記サイド突起部に沿った位置にも配置されているアンテナ装置(18)。
【請求項3】
甲導体層(L8)と、
乙導体層(L7)と、
前記甲導体層および前記乙導体層に挟まれた誘電体層(P7)と、を備え、
前記甲導体層には、第1アンテナ(66a)と、第2アンテナ(66b)と、前記第1アンテナおよび第2アンテナの双方に接続される接続導体(60,62,64)と、が形成されており、
前記誘電体層には、ガード用導体(48)が設けられており、
前記ガード用導体は、前記接続導体のうち前記第1アンテナとの接続箇所である第1接続箇所および前記第2アンテナとの接続箇所である第2接続箇所を少なくとも除きつつ前記接続導体の外周に沿って配置されており、
前記接続導体は、前記第1接続箇所および前記第2接続箇所の2つの接続箇所に挟まれるようにして、前記第1アンテナおよび第2アンテナの敷設方向に突出した間突起部(63b)を備え、
前記ガード用導体は、前記間突起部に沿った位置にも配置されているアンテナ装置(18)。
【請求項4】
甲導体層(L8)と、
乙導体層(L7)と、
前記甲導体層および前記乙導体層に挟まれた誘電体層(P7)と、を備え、
前記甲導体層には、第1アンテナ(66a)と、第2アンテナ(66b)と、前記第1アンテナおよび第2アンテナの双方に接続される接続導体(60,62,64)と、が形成されており、
前記誘電体層には、ガード用導体(48)が設けられており、
前記接続導体に対し、前記甲導体層から前記乙導体層へと進む方向に導波管(36)が設けられており、
前記乙導体層、前記誘電体層、および前記甲導体層の積層方向に直交して且つ前記甲導体層を含む平面に前記導波管を当該導波管の軸線方向に平行な光線によって投影した図形は、前記接続導体に包含されており、
前記第1アンテナおよび第2アンテナは同一方向に延びるようにして構成され、
前記ガード用導体は、前記接続導体のうち前記第1アンテナとの接続箇所である第1接続箇所および前記第2アンテナとの接続箇所である第2接続箇所を少なくとも除きつつ、前記図形を包含する領域よりも前記第1アンテナおよび前記第2アンテナが延びる方向における前記接続導体の外周に沿って配置されているアンテナ装置(18)。
【請求項5】
前記接続導体に対し、前記甲導体層から前記乙導体層へと進む方向に導波管(36)が設けられており、
前記乙導体層、前記誘電体層、および前記甲導体層の積層方向に直交して且つ前記甲導体層を含む平面に前記導波管を当該導波管の軸線方向に平行な光線によって投影した図形は、前記接続導体に包含されて且つ、当該平面に前記ガード用導体を垂直投影した図形に、前記第1接続箇所側および前記第2接続箇所側を少なくとも除きつつ囲まれている請求項1~4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1接続箇所は、前記第1アンテナの敷設方向に直交する方向の長さが、当該敷設方向のうち前記第1アンテナが延びる方向へと進むにつれて短くなる部分(64)を有する請求項1~のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記ガード用導体は、複数のビアによって構成されている請求項1~6のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のアンテナ装置と、
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナを用いた高周波信号の送信処理および受信処理の2つの処理のうちの少なくとも1つの処理を実行する処理回路(54,56)と、を備えるレーダ装置。
【請求項9】
前記アンテナ装置は、前記乙導体層に対し前記甲導体層から前記乙導体層に進む方向に丙導体層を備えており、
前記処理回路は、前記丙導体層(L1)に接続されている請求項8記載のレーダ装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置、およびレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば下記特許文献1には、一対のマイクロストリップアンテナが接続されたアンテナ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6365494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように一対のマイクロストリップアンテナを接続する場合、接続部分からの不要放射によりアンテナの指向性が意図したものからずれるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく、アンテナ装置は、甲導体層(L8)と、乙導体層(L7)と、前記甲導体層および前記乙導体層に挟まれた誘電体層(P7)と、を備え、前記甲導体層には、第1アンテナ(66a)と、第2アンテナ(66b)と、前記第1アンテナおよび第2アンテナの双方に接続される接続導体(60,62,64)と、が形成されており、前記誘電体層には、ガード用導体(48)が設けられており、前記ガード用導体は、前記接続導体のうち前記第1アンテナとの接続箇所である第1接続箇所および前記第2アンテナとの接続箇所である第2接続箇所を少なくとも除きつつ前記接続導体の外周に沿って配置される。
【0006】
上記構成によれば、甲導体層、乙導体層、およびガード用導体によって、アンテナ接続部と第1アンテナおよび第2アンテナとの間の信号を伝搬させる基板内導波路を構成することができることから、アンテナ接続部からの不要放射を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態にかかるレーダ装置の構成を示す分解斜視図。
図2】同実施形態にかかるレーダ装置の配置を例示する図。
図3】同実施形態にかかるアンテナ装置の断面構成を示す断面図。
図4】同実施形態にかかるアンテナ装置の構成を示す分解斜視図。
図5】同実施形態にかかる第1側変換部に接続される部材を示す図。
図6】同実施形態にかかる第8側変換部、アンテナ接続部およびアンテナを示す平面図。
図7】同実施形態にかかる第8側変換部およびアンテナ接続部に接続されるビアの配置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、レーダ装置にかかる一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかるレーダ装置10の構成を示す。レーダ装置10は、レドーム12とロアケース20とによって区画される空間内にアンテナ装置18が収容され、ロアケース20にコネクタ22が取り付けられた装置である。
【0009】
図2に、レーダ装置10の配置を例示する。図2には、車両VCの前部中央に1つ、後部左右に各1つずつレーダ装置10を配置する例を記載している。
図3に、アンテナ装置18の断面構成を示す。アンテナ装置18は、第1導体層L1、第1誘電体層P1、第2導体層L2、第2誘電体層P2、第3導体層L3、第3誘電体層P3、第4導体層L4、第4誘電体層P4、第5導体層L5、第5誘電体層P5、第6導体層L6、第6誘電体層P6、第7導体層L7、第7誘電体層P7および第8導体層L8が順次積層された基板である。なお、図3に示すように、以下では、積層方向をz方向とする。特に、第1導体層L1から第8導体層L8へと進む方向を正のz方向とする。
【0010】
以下では、便宜上、アンテナ装置18を、第1外層部30、内層部32および第2外層部34に分類する。第1外層部30は、第1導体層L1、第1誘電体層P1、第2導体層L2および第2誘電体層P2を備える。内層部32は、第3導体層L3、第3誘電体層P3、第4導体層L4、第4誘電体層P4、第5導体層L5、第5誘電体層P5、および第6導体層L6を備える。第2外層部34は、第6誘電体層P6、第7導体層L7、第7誘電体層P7および第8導体層L8を備える。
【0011】
内層部32には、内層部32を貫通するようにして導波管36が設けられている。また、内層部32を構成する第3導体層L3、第4導体層L4、第5導体層L5および第6導体層L6は、いずれも接地されており、グランドプレーンを構成している。
【0012】
図4に、アンテナ装置18の分解斜視図を示す。
図4に示すように、第1導体層L1には、マイクロストリップ線路52と、導波管36およびマイクロストリップ線路52のいずれか一方から他方へと伝送される信号を変換する第1側変換部50とが形成されている。
【0013】
図5に示すように、第1側変換部50には、マイクロストリップ線路52を介してモノリシック・マイクロ波集積回路(MMIC54)が接続されている。
本実施形態にかかるMMIC54は、送信用の2チャンネルの端子と、受信用の3チャンネルの端子とを備えている。そのため、第1導体層L1には、実際には、それら各チャンネルごとに、各別の第1側変換部50が形成されている。なお、送信用の第1側変換部50は、MMIC54からの高周波信号を電磁波に変換して導波管36に出力するための部材となる。また、受信用の第1側変換部50は、導波管36からの電磁波をマイクロストリップ線路52に出力される高周波信号に変換する部材となる。
【0014】
MMIC54は、76~77GHzの高周波信号を生成してマイクロストリップ線路52に送信する送信処理と、マイクロストリップ線路52を介して入力される76~77GHzの高周波信号を受信する受信処理とを実行する。また、MMIC54は、送信処理によって送信する高周波信号と、受信処理によって受信する高周波信号とを合成するミキサ等を備えている。
【0015】
導波管36は、金属製であり、管構造を有する。導波管36の軸方向であるz方向における一対の端部は、それぞれ第3導体層L3および第6導体層L6に接続されている。
本実施形態では、導波管36による伝送対象とする信号を、TEモードのうちの単一の基底モードの信号とする。これは、複数のモードの信号を伝送対象とする場合と比較して、信号処理がしやすいことなどを理由とするものである。具体的には、導波管36として矩形導波管に相当するものを採用し、各モードの遮断周波数のうち、76~77GHzの周波数帯よりも低くなるのが、単一のモードであるTEモードのうちの基底モードの信号とする。本実施形態の導波管36は、矩形波導波管に準ずるものであり、長手方向の両端において電場がゼロであるとした境界条件を満たすようにしてTEモードが規定されるものと推察される。
【0016】
MMIC54は、マイクロコンピュータ(マイコン56)に接続されている。マイコン56は、CPU56aおよびメモリ56bを備えており、メモリ56bに記憶されたプログラムをCPU56aが実行する。ここで、CPU56aが実行する処理には、MMIC54による高周波信号の送信処理および受信処理を制御する処理が含まれる。また、CPU56aが実行する処理には、上記ミキサによって合成された信号に基づき、レーダ装置10から送信された高周波信号を反射する物体とレーダ装置10との相対距離や相対速度を算出する処理や、算出結果をコネクタ22を介してレーダ装置10の外部に送信する処理が含まれる。
【0017】
図4に戻り、第8導体層L8には、アンテナ66と、アンテナ66および導波管36のいずれか一方から他方へと伝送される信号を変換する第8側変換部60とが形成されている。
【0018】
図3および図4に示すように、第2導体層L2には、第2側スリット38が形成されている。また、第2誘電体層P2には、ビア42が設けられている。詳しくは、第2導体層L2を含んで且つz方向に直交する平面にビア42を垂直投影した図形は、第2側スリット38を囲む図形となる。なお、複数のビア42は、それぞれ、z方向に延びることによって第2導体層L2と第3導体層L3とを接続している。これにより、第2導体層L2も接地され、グランドプレーンを構成する。
【0019】
また、第1誘電体層P1には、ビア44が形成されている。詳しくは、第1導体層L1を含んで且つz方向に直交する平面にビア44を垂直投影した図形は、マイクロストリップ線路52との接続箇所付近を除いて第1側変換部50の外周に沿って形成されている。また、第1導体層L1を含んで且つz方向に直交する平面にビア44を垂直投影した図形は、上記接続箇所付近を除き、同平面に第2側スリット38を垂直投影した図形を囲む図形となる。これは、マイクロストリップ線路52および第1側変換部50間の信号の伝送損失を低減するための設定である。なお、複数のビア44は、それぞれ、z方向に延びることによって第2導体層L2と第1導体層L1とを接続している。
【0020】
第7導体層L7には、第7側スリット40が形成されている。また、第6誘電体層P6には、ビア46が設けられている。詳しくは、第7導体層L7を含んで且つz方向に直交する平面にビア46を垂直投影した図形は、第7側スリット40を囲む図形となる。なお、複数のビア46は、それぞれ、z方向に延びることによって、第7導体層L7および第6導体層L6を接続している。これにより、第7導体層L7も接地され、グランドプレーンを構成する。
【0021】
また、第7誘電体層P7には、ビア48が設けられている。ビア48は、z方向に延びることによって第7導体層L7および第8導体層L8を接続している。
図6に、第8導体層L8の一部を示す。
【0022】
図6に示す破線は、第8導体層L8を含んで且つz方向に直交する平面に導波管36を垂直投影した図形である。図6に示すように、この図形は、第8側変換部60に包含されている。なお、この図形は、第8導体層L8を含んで且つz方向に直交する平面に第7側スリット40を垂直投影した図形とほぼ重なる。また、この図形は、第8導体層L8を含んで且つz方向に直交する平面にビア46を垂直投影した図形に囲まれている。
【0023】
第8側変換部60には、y方向の長さが徐々に拡大したアンテナ接続部62が接続されている。アンテナ接続部62には、インピーダンス変換回路64を介して、アンテナ66が接続されている。詳しくは、一対のインピーダンス変換回路64のそれぞれを介して第1アンテナ66aおよび第2アンテナ66bが接続されている。ここで、インピーダンス変換回路64は、アンテナ接続部62との接続箇所におけるy方向の長さLn1よりもアンテナ66との接続箇所におけるy方向の長さLn2の方が短い。そして、インピーダンス変換回路64は、アンテナ接続部62からアンテナ66へと進むにつれて、y方向の長さが漸減する形状を有する。これは、アンテナ接続部62と第1アンテナ66aおよび第2アンテナ66bとの一方から他方への経路におけるインピーダンスの急変を抑制するための設定である。
【0024】
第1アンテナ66aおよび第2アンテナ66bは、x方向に沿って敷設されている。図6には、第1アンテナ66aおよび第2アンテナ66bが延びる方向を正のx方向としている。
【0025】
アンテナ接続部62の正のx方向の端部のうち、y方向の両端には、一対のインピーダンス変換回路64を挟むサイド突起部63aが設けられている。サイド突起部63aは、アンテナ接続部62に対して、正のx方向に突出した矩形状の導体である。
【0026】
アンテナ接続部62の正のx方向の端部のうち、一対のインピーダンス変換回路64のそれぞれとの接続箇所の間には、間突起部63bが設けられている。間突起部63bは、アンテナ接続部62に対して、正のx方向に突出した矩形状の導体である。
【0027】
図7に、第8側変換部60、アンテナ接続部62、インピーダンス変換回路64、サイド突起部63aおよび間突起部63bを、負のz方向側から見た図を示す。
図7に示すように、ビア48は、第8側変換部60およびアンテナ接続部62のy方向の両端部のそれぞれの外周に沿って各一列に形成された複数のサイドビア48aを含む。また、サイドビア48aは、サイド突起部63aに接続されるものを有する。換言すれば、サイドビア48aは、サイド突起部63aに沿った位置に配置されているものを含む。具体的には、それらサイドビア48aは、第8導体層L8を含んで且つz方向に直交する平面に垂直投影された図形が、第8側変換部60、アンテナ接続部62、およびサイド突起部63aに包含されている。
【0028】
ビア48は、第8側変換部60の負のx方向の端部側の外周に沿って一列に形成された複数の裏側ビア48bを有する。具体的には、それら裏側ビア48bは、第8導体層L8を含んで且つz方向に直交する平面に垂直投影された図形が、第8側変換部60に包含されている。
【0029】
また、ビア48は、アンテナ接続部62のうちのy方向の中央部に、x方向に沿って1列で形成された複数の間ビア48cを含む。また、間ビア48cは、間突起部63bに接続されるものを含む。換言すれば、間ビア48cは、間突起部63bに沿った位置に配置されているものを含む。具体的には、それら間ビア48cは、第8導体層L8を含んで且つz方向に直交する平面に垂直投影された図形が、アンテナ接続部62および間突起部63bに包含されている。
【0030】
なお、こうした構成によれば、第8導体層L8を含んで且つz方向に直交する平面に導波管36を垂直投影した図形は、一対のインピーダンス変換回路64付近を除き、同平面にビア48を垂直投影した図形によって囲われたものとなる。
【0031】
ここで、本実施形態の作用および効果について説明する。
第1アンテナ66aおよび第2アンテナ66bをアンテナ接続部62を介して第8側変換部60に接続し、アンテナ接続部62のy方向の両端部のそれぞれの外周に沿ってサイドビア48aを接続した。これにより、第7導体層L7、第8導体層L8とサイドビア48aとによって、基板内導波路が形成される。したがって、サイドビア48aを備えない場合と比較して、アンテナ接続部62から不要な放射が生じることを抑制でき、ひいては、第1アンテナ66aおよび第2アンテナ66bによって実現される指向性が意図したものに対して歪むことを抑制できる。
【0032】
以上説明した本実施形態によれば、さらに以下に記載する作用および効果が得られる。
(1)アンテナ接続部62に間ビア48cを接続した。これにより、第8側変換部60から第1アンテナ66aおよび第2アンテナ66bへと信号を分配する分配器や、第1アンテナ66aおよび第2アンテナ66bから第8側変換部60へと信号を合流させる結合器を、基板内導波路にて形成することができる。そのため、アンテナ接続部62からの不要な放射を抑制することができる。
【0033】
(2)アンテナ接続部62に第8側変換部60を接続し、第8側変換部60によって、導波管36とアンテナ接続部62との間で授受される信号を変換した。その場合、第8側変換部60と第1アンテナ66aおよび第2アンテナ66bとの間に形成される分配器または結合器を、アンテナ接続部62およびビア48にて構成される基板内導波路によって簡素な設計にて構成できる。さらに、基板内導波路によれば、導波管36を伝播した信号と同一モードの信号を伝播させることができることから、たとえば、MMIC54から第8導体層L8に同軸線路にて信号を伝送する場合と比較すると、信号伝送ロスを容易に低減できる。
【0034】
(3)アンテナ接続部62に、インピーダンス変換回路64を介して第1アンテナ66aや第2アンテナ66bを接続した。これにより、アンテナ接続部62と第1アンテナ66aや第2アンテナ66bとのいずれか一方から他方への信号の伝送に際して、インピーダンスが急変する事態を抑制できる。
【0035】
(4)ビア48によって第7導体層L7に接続されたサイド突起部63aを備えた。これにより、インピーダンス変換回路64を介して不要な電波が放射されることを抑制できる。
【0036】
(5)ビア48によって第7導体層L7に接続された間突起部63bを備えた。これにより、インピーダンス変換回路64を介して不要な電波が放射されることを抑制できる。
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0037】
「サイド突起部について」
・サイド突起部63aがx方向に延びる長さがインピーダンス変換回路64のx方向の長さよりも短いことは必須ではなく、たとえば、インピーダンス変換回路64のx方向の長さと等しくてもよく、またたとえば、インピーダンス変換回路64のx方向の長さよりも長くてもよい。
【0038】
なお、サイド突起部63aを備えることは、インピーダンス変換回路64を備えることを前提としない。すなわち、インピーダンス変換回路64を備えない場合であっても、アンテナ接続部62と第1アンテナ66aや第2アンテナ66bとの接続箇所を挟むようにしてサイド突起部63aを備えることは、電界漏洩を抑制するうえで有効である。
【0039】
「間突起部について」
・間突起部63bがx方向に延びる長さがインピーダンス変換回路64のx方向の長さよりも短いことは必須ではなく、たとえば、インピーダンス変換回路64のx方向の長さと等しくてもよく、またたとえば、インピーダンス変換回路64のx方向の長さよりも長くてもよい。
【0040】
なお、間突起部63bを備えることは、インピーダンス変換回路64を備えることを前提としない。すなわち、インピーダンス変換回路64を備えない場合であっても、アンテナ接続部62と第1アンテナ66aや第2アンテナ66bとの接続箇所の間に間突起部63bを備えることは、電界漏洩を抑制するうえで有効である。
【0041】
「アンテナ接続部に接続されるアンテナの数について」
・アンテナ接続部62に接続されるアンテナの数としては、第1アンテナ66aおよび第2アンテナ66bの2個に限らず、3個以上であってもよい。また、個々のアンテナは、異なる形状、放射指向性を有してもよい。なお、アンテナ装置18に形成される複数のアンテナ接続部62の全てが、それぞれ、複数のアンテナに接続されることは必須ではなく、1個のアンテナのみと接続されるアンテナ接続部を含んでもよい。
【0042】
「接続導体について」
・アンテナ接続部62と第1アンテナ66aや第2アンテナ66bとの間に、アンテナ接続部62のインピーダンスと第1アンテナ66aや第2アンテナ66bのインピーダンスとの一対のインピーダンスの一方の値から他方の値へとインピーダンスを緩やかに変化させるインピーダンス変換回路64を備えることも必須ではない。
【0043】
・第8側変換部60に対してy方向の長さを拡大してアンテナ接続部62を形成することは必須ではない。たとえば第8側変換部60とアンテナ接続部62とでy方向の長さを同一としてもよい。この際、たとえば「ガード用導体について」の欄に記載したように間ビア48cを備えない場合等においては、第8側変換部60とアンテナ接続部62とを区分することも必須ではない。たとえば、導波管36をz軸の正方向に投影した図形が第8側変換部60およびアンテナ接続部62のx軸方向の両端部の中央あたりに位置するようにして、第8側変換部60およびアンテナ接続部62を一体不可分としてもよい。
【0044】
・下記「導波管について」の欄に記載したように、導波管の軸方向である導波管の延びる方向がz方向からずれている場合であっても、軸方向に平行な光線によって、z方向に直交して且つ第8導体層L8を含む平面に導波管36を投影した図形が第8側変換部60に包含されることが望ましい。
【0045】
・サイド突起部63aを備えることは必須ではない。
・間突起部63bを備えることは必須ではない。
「ガード用導体について」
・上記実施形態では、複数のサイドビア48aの全てを、z方向に直交して且つ第8導体層L8を含む平面に垂直投影した図形が第8側変換部、アンテナ接続部62、およびサイド突起部63aに包含されるように配置したが、これに限らない。たとえば、サイドビア48aの1つを同平面に垂直投影した図形の一部が第8側変換部、アンテナ接続部62、またはサイド突起部63aのy方向の端部からはみ出すようにして配置してもよい。
【0046】
・上記実施形態では、複数のサイドビア48aを、第8側変換部、およびアンテナ接続部62のy方向の両端部にそれぞれ1列ずつ配置したが、これに限らない。たとえば2列ずつ等、複数列ずつ配置してもよい。その場合、たとえば第1列と第2列とで、サイドビア48aのx方向における位置を互いに異ならせてもよい。また、z方向に直交して且つ第8導体層L8を含む平面にサイドビア48aを垂直投影した図形のうちサイド突起部63aに投影される部分についても複数列としてもよい。
【0047】
こうした場合において、たとえば、第1列のサイドビア48aについては、z軸に直交して且つ第8導体層L8を含む平面に垂直投影した図形が第8側変換部60、アンテナ接続部62、およびサイド突起部63aのいずれとも重なる部分を有することが無くてもよい。ただしその場合、第2列のサイドビア48aについては、同平面に垂直投影した図形が第8側変換部、アンテナ接続部62、およびサイド突起部63aに包含されることが望ましい。
【0048】
・z方向に直交して且つ第8導体層L8を含む平面にサイドビア48aを垂直投影した図形が、第8側変換部、アンテナ接続部62、およびサイド突起部63aに重なる部分があることも必須ではない。たとえば、同平面にサイドビア48aを垂直投影した図形が、アンテナ接続部62等と隣接して配置されるようにしてもよい。
【0049】
・上記実施形態では、複数の裏側ビア48bの全てを、z方向に直交して且つ第8導体層L8を含む平面に垂直投影した図形が第8側変換部に包含されるように配置したが、これに限らない。たとえば、裏側ビア48bの1つを同平面に垂直投影した図形の一部が第8側変換部のx方向の端部からはみ出すようにして配置してもよい。
【0050】
・上記実施形態では、複数の裏側ビア48bを、第8側変換部60のx方向の端部に1列配置したが、これに限らない。たとえば2列等、複数列配置してもよい。その場合、たとえば第1列と第2列とで、裏側ビア48bのy方向における位置を互いに異ならせてもよい。
【0051】
こうした場合において、たとえば、第1列の裏側ビア48bについては、z方向に直交して且つ第8導体層L8を含む平面に垂直投影された図形が第8側変換部60と重なる部分を有することが無くてもよい。ただしその場合、第2列の裏側ビア48bについては、同平面に垂直投影した図形が第8側変換部60に包含されることが望ましい。
【0052】
・z方向に直交して且つ第8導体層L8を含む平面に裏側ビア48bを垂直投影した図形が、第8側変換部に重なる部分があることも必須ではない。たとえば、同平面に裏側ビア48bを垂直投影した図形が、第8側変換部60に隣接して配置されるようにしてもよい。
【0053】
・上記実施形態では、複数の間ビア48cの全てを、z方向に直交して且つ第8導体層L8を含む平面に垂直投影した図形がアンテナ接続部62および間突起部63bに包含されるように配置したが、これに限らない。たとえば、間ビア48cの1つをz方向に直交して且つ第8導体層L8を含む平面に垂直投影した図形の一部が間突起部63bのx方向の端部からはみ出すようにして配置してもよい。
【0054】
・上記実施形態では、複数の間ビア48cを、x方向に平行な線に沿って1列配置したが、これに限らない。たとえば2列等、複数列配置してもよい。その場合、たとえば第1列と第2列とで、間ビア48cのy方向における位置を互いに異ならせてもよい。
【0055】
・ガード用導体として、サイドビア48a、裏側ビア48b、および間ビア48cを備えることは必須ではない。たとえば、サイドビア48aおよび裏側ビア48bを備えるものの、間ビア48cを備えない構成であってもよい。この場合、アンテナ接続部62の間ビア48cが配置されていた箇所にスリットを形成することが望ましい。またたとえば、間ビア48cを備えるものの、サイドビア48aを備えない構成であってもよい。
【0056】
・ガード用導体としては、複数のビアによって構成されるものに限らない。たとえば、ガード用導体を構成する複数のサイドビア48aおよび複数の裏側ビア48bの部分を、U字型の単一の導体によって構成してもよい。
【0057】
・ガード用導体が、第8側変換部60、アンテナ接続部62、サイド突起部63aおよび間突起部63bと接続されていることは必須ではない。たとえば、ガード用導体と、第8側変換部60、アンテナ接続部62、サイド突起部63aおよび間突起部63bとの間に誘電体層が介在する構成であってもよい。
【0058】
・ガード用導体が、第7導体層L7と接続されていることは必須ではない。たとえば、ガード用導体と、第7導体層との間に誘電体層が介在する構成であってもよい。
「アンテナ装置について」
・たとえば内層部32から、第5導体層L5を削除し、3つの導体層および2つの誘電体層によって内層部32を構成してもよい。またたとえば、内層部32から、第4導体層L4および第5導体層L5を削除し、2つの導体層および1つの誘電体層によって内層部32を構成してもよい。さらにたとえば、内層部32から、第3導体層L3、第4導体層L4、第5導体層L5および第6導体層L6を削除し、誘電体層に導波管36が埋め込まれた構成としてもよい。
【0059】
・第1外層部30から、第2導体層L2を削除し、1つの導体層と1つの誘電体層とによって第1外層部30を構成してもよい。
・第2外層部34から、第7導体層L7を削除し、1つの導体層と1つの誘電体層とによって第2外層部34を構成してもよい。
【0060】
・導波管36の内部に誘電体が充填されていることは必須ではない。
・第1側変換部50とMMIC54とを接続するマイクロストリップ線路52が第1導体層L1に形成されていることは必須ではない。たとえば、第1側変換部50に、MMIC54を直接接続してもよい。
【0061】
・z方向に沿って信号を伝送させる伝送路としは、導波管36を利用するものに限らない。
・MMIC54が、第1導体層L1のみに接続される構成に限らない。たとえば、送信用のMMIC54を第1導体層L1に接続しつつも、受信用のMMIC54については、第8導体層L8に接続してもよい。換言すれば、受信用のMMIC54をアンテナ接続部62に接続することによって、第1アンテナ66aや第2アンテナ66bにより受信された信号を導波管36を介すことなくMMIC54に送信してもよい。
【0062】
・MMIC54が第1導体層L1に接続されていなくてもよい。すなわち、送信処理および受信処理を実行するMMIC54をアンテナ接続部62に直接接続してもよい。その場合、第1外層部30および内層部32を設けなくてよい。
【0063】
「導波管について」
・上記実施形態では、伝送対象となる高周波信号がTEモードの基底モードのみとなる導波管を例示したが、これに限らない。
【0064】
・導波管の断面形状としては、上記実施形態において例示したものに限らない。たとえば、長手方向の両端部において中央部よりも短手方向の長さが長い形状であってもよい。
・上記実施形態では、送信用の導波管と受信用の導波管とを別としたが、これに限らない。
【0065】
・導波管の軸方向である導波管の延びる方向が、積層方向であるz方向に平行であることも必須ではなく、それら一対の方向にずれがあってもよい。
「処理回路について」
・上記実施形態では、MMIC54が、複数のチャンネルを有するものとしたが、これに限らない。たとえば複数のチャンネルのそれぞれに1つずつMMICを設けてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、MMIC54と、MMIC54による送受信処理の制御およびMMIC54の出力する信号の解析処理を実行するマイコン56とを各別の部材としたが、それらが一体となっていてもよい。
【0067】
「レーダ装置について」
・送信用のアンテナの数や受信用のアンテナの数は、上記実施形態で例示したものに限らない。たとえばフェーズドアレイ処理を行わない場合等にあっては、送信用のアンテナについては1つのみ備えるようにしてもよい。
【0068】
・単一のアンテナ装置18に、MMIC54およびマイコン56が実装されたものに限らない。たとえば、MMIC54が実装された基板と、マイコン56が実装された基板とを各別の基板としてもよい。
【0069】
・レーダ装置としては、出力信号が、車両の外部の物体との相対速度および距離の検出結果信号を含むものに限らない。たとえば、レーダ装置の外部において車両の外部の物体との相対速度および距離を算出するために用いられる信号を出力信号としてもよい。
【0070】
・車両用のレーダ装置としては、76~77GHzのレーダを送受信する装置に限らない。たとえば、76~80GHzのレーダを送受信する装置であってもよく、またたとえば、24GHz帯のレーダを送受信する装置であってもよい。もっとも、ミリ波のレーダを送受信する装置にも限らない。
【0071】
「そのほか」
・誘電体層の材質としては、上記実施形態において例示したものに限らない。
・導体層の材質としては、上記実施形態において例示したものに限らない。
【符号の説明】
【0072】
10…レーダ装置
18…アンテナ装置
48…ビア
60…第8側変換部
62…アンテナ接続部
63a…サイド突起部
63b…間突起部
64…インピーダンス変換回路
66a…第1アンテナ
66b…第2アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7