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特許7604841アドレノメデュリン遺伝子発現増強用組成物
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  • 特許-アドレノメデュリン遺伝子発現増強用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】アドレノメデュリン遺伝子発現増強用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/9068 20060101AFI20241217BHJP
   A61K 36/758 20060101ALI20241217BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241217BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20241217BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
A61K36/9068
A61K36/758
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A23L33/105
C12N15/12 ZNA
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020181241
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072041
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】306019030
【氏名又は名称】ハウスウェルネスフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅田 和希
(72)【発明者】
【氏名】井出 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】小原 達矢
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/104248(WO,A1)
【文献】Gastroenterol Res Pract,384057,2013年
【文献】Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol,304:G428-G436,2013年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショウガの水抽出物及び山椒の水抽出物を有効成分として含有し、高麗人参及び高麗人参に由来する成分から選択される1以上を含有しない、アドレノメデュリン遺伝子発現増強用組成物。
【請求項2】
ショウガが乾姜である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アドレノメデュリン遺伝子発現増強用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アドレノメデュリンは血管拡張作用を有する循環調節ペプチドである。アドレノメデュリンは、循環器系や消化器系などの様々な臓器から産生され、血管拡張、血管新生、抗菌作用、抗腸炎、胃粘膜保護、血栓形成抑制など重要な生理活性を有することが報告されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、人参(=高麗人参)由来の化合物と、乾姜由来の化合物及び/又は山椒由来の化合物とを有効成分として含有するアドレノメデュリン産生増強剤が記載されている。特許文献1の実施例2には、ラットに人参(=高麗人参)エキスと乾姜エキスとの組み合わせ、人参エキスと山椒エキスとの組み合わせ、乾姜エキスと山椒エキスとの組み合わせ、人参エキス単独、乾姜エキス単独、及び、山椒エキス単独をそれぞれラットに投与して血流の指標であるVC(vascular conductance)を測定し増加率を求めたところ、人参エキスと乾姜エキスとの組み合わせ、及び、人参エキスと山椒エキスとの組み合わせは、それぞれの単独投与よりも明らかに高いVCの増加を示したが、乾姜エキスと山椒エキスとの組み合わせではVCの増加率の変化は観察されなかったことが記載されている。
【0004】
非特許文献1では、漢方薬の一種である大建中湯(山椒、乾姜、高麗人参を含む)が腸上皮細胞からアドレノメデュリンの放出を促進し、それによって腸での血流を促進する作用を有すること、並びに、大建中湯及びその成分の1つである6-ショウガオールが、腸上皮細胞からアドレノメデュリンの放出を促進する作用を有し、この作用はTRPチャネルの1つのTRPA1のアンタゴニストにより阻害されることが記載されている。
【0005】
特許文献2では、山椒、乾姜、人参(=高麗人参)および膠飴を含有する抗炎症性組成物が記載されている。特許文献2では、この抗炎症性組成物は、消化器系器官での炎症症状を治療、緩和できることが記載されている。
【0006】
特許文献3では、山椒又はその抽出物を有効成分として含有する消化管粘膜保護剤が記載されている。特許文献3では、前記消化管粘膜保護剤に、乾姜又はその抽出物等の他の医薬用活性成分を配合してもよいことが記載されている。
【0007】
特許文献4では、サンシヨウ、サンザシ、トウキ、トウガラシ、シヨウキヨウの5種の生薬抽出物を含有することを特徴とする養毛剤が記載されている。特許文献4では、前記養毛剤における前記5種の生薬抽出物は、脱毛部の局所末梢血管拡張による末梢血流の増加を図り、これにより毛根の活性を促進することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開WO2009/104248
【文献】特開2002-145791号公報
【文献】特開2007-291008号公報
【文献】特開平2-17117号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 304:G428-G436,2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、植物成分を有効成分として含み、アドレノメデュリンの遺伝子発現を増強する作用を有する組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ショウガの水抽出物及び山椒の水抽出物を有効成分として含有する組成物は、特許文献1での記載と異なり、高麗人参と併用されなくとも、アドレノメデュリン遺伝子の発現を相乗的に増強する作用を有することを見出し、以下の本発明を完成するに至った。
(1)ショウガの水抽出物及び山椒の水抽出物を有効成分として含有し、高麗人参及び高麗人参に由来する成分から選択される1以上を含有しない、アドレノメデュリン遺伝子発現増強用組成物。
(2)ショウガが乾姜である、(1)に記載の組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、植物成分を有効成分とし、アドレノメデュリン遺伝子の発現を増強する作用を有する組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、異なる希釈倍率の乾姜水抽出物及び/又は山椒水抽出物を添加した条件で培養したラット由来小腸細胞株での、アドレノメデュリンのβアクチンに対する相対的なmRNA発現量を、対照条件での発現量を1とした値で示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ショウガの水抽出物>
水抽出物の調製に用いるショウガの部位は特に限定されないが好ましくは根茎を用いることができる。
【0015】
ショウガは生薬である乾姜又は生姜(ショウキョウ)であってよく、乾姜であることが特に好ましい。
【0016】
ショウガの水抽出物は、ショウガの熱水による抽出物であることが好ましい。
【0017】
ショウガの水抽出物の調製方法は特に限定されない。例えば、ショウガを適量の水(例えばショウガに対して重量基準で0.5~20倍量)中に浸漬し、適宜撹拌又は静置して水中に水可溶性成分を溶出させる。抽出時間は特に限定されないが、5分間~120分間、例えば、15分間~30分間とすることができる。抽出温度は特に限定されないが、60℃~125℃、例えば85℃~100℃とすることができる。抽出後、水可溶性成分を含む水溶液画分と細胞壁等の固体画分とを固液分離手段(遠心分離、ろ過(珪藻土ろ過等))により分離し、水溶液画分を抽出液として取得する。得られた抽出液はそのまま水抽出物として用いてもよいし、必要に応じて抽出液を更に、濃縮、溶媒分画、クロマトグラフィー(カラムクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超臨界流体クロマトグラフィー等)及び/又は再結晶等のさらなる精製手段に付した処理物を水抽出物として用いてもよい。抽出に用いるショウガの形状は、原形のまま、あるいは適当な寸法又は形状にカットした形態、あるいは破砕、粉砕、又は摩砕した形態、あるいは搾汁の形態とすることができる。
ショウガの水抽出物は、粉末、顆粒等の所望の形態に製剤化されていてもよい。製剤化のためには適当な賦形剤を用いることができる。
【0018】
<山椒の水抽出物>
水抽出物の調製に用いる山椒の部位は特に限定されないが、果皮、果実、種子、葉、茎等を用いることができ、果皮が特に好ましい。
【0019】
山椒の水抽出物は、山椒の熱水による抽出物であることが好ましい。
【0020】
山椒の水抽出物の調製方法は特に限定されない。例えば、山椒を適量の水(例えば山椒に対して重量基準で0.5~20倍量)中に浸漬し、適宜撹拌又は静置して水中に水可溶性成分を溶出させる。抽出時間は特に限定されないが、5分間~120分間、例えば、15分間~30分間とすることができる。抽出温度は特に限定されないが、60℃~125℃、例えば85℃~100℃とすることができる。抽出後、水可溶性成分を含む水溶液画分と細胞壁等の固体画分とを前記固液分離手段により分離し、水溶液画分を抽出液として取得する。得られた抽出液はそのまま水抽出物として用いてもよいし、必要に応じて抽出液を更に、濃縮、溶媒分画、クロマトグラフィー(カラムクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超臨界流体クロマトグラフィー等)及び/又は再結晶等のさらなる精製手段に付した処理物を水抽出物として用いてもよい。抽出に用いる山椒の形状は、原形のまま、あるいは適当な寸法又は形状にカットした形態、あるいは破砕、粉砕、又は摩砕した形態、あるいは搾汁の形態とすることができる。
【0021】
山椒の水抽出物は、粉末、顆粒等の所望の形態に製剤化されていてもよい。製剤化のためには適当な賦形剤を用いることができる。
【0022】
<アドレノメデュリン遺伝子発現増強用組成物>
本発明の1以上の実施形態は、ショウガの水抽出物及び山椒の水抽出物を有効成分として含有し、高麗人参及び高麗人参に由来する成分から選択される1以上を含有しない、アドレノメデュリン遺伝子発現増強用組成物に関する。本実施形態に係る組成物は、好ましくは、サンザシ及び/又はサンザシに由来する成分、トウキ及び/又はトウキに由来する成分、並びに、トウガラシ及び/又はトウガラシに由来する成分を含有しない。
【0023】
本実施形態に係る組成物の対象は典型的にはヒトであるが、ヒトには限定されず他の非ヒト動物、例えばヒト以外の哺乳類であってもよい。
【0024】
アドレノメデュリンは、血管拡張、血管新生等の生理活性を有するペプチドである。アドレノメデュリンの遺伝子発現の増強により、血流増加を達成することができる。また、アドレノメデュリンの遺伝子発現の増強による血流増加により、抗菌作用、抗腸炎、胃粘膜保護、血栓形成抑制等の効果を達成することができる。
【0025】
特許文献1では、高麗人参由来の化合物と、乾姜由来の化合物及び/又は山椒由来の化合物との組み合わせが、アドレノメデュリン産生増強作用を有することが記載されている一方で、乾姜エキスと山椒エキスとを組み合わせた場合に相乗的な血流増加作用は無かったことが記載されている。非特許文献1では、大建中湯及びその成分の1つである6-ショウガオールが、腸上皮細胞からアドレノメデュリンの放出を促進する作用を有することが記載されている。特許文献2では、山椒、乾姜、高麗人参及び膠飴を含有する抗炎症性組成物が記載されているが、高麗人参を含まない組成物の効果は記載されていない。特許文献3では、山椒又はその抽出物が消化管粘膜保護作用を有することが記載されており、特許文献4では、サンシヨウ、サンザシ、トウキ、トウガラシ、シヨウキヨウの5種の生薬抽出物(実施例ではエタノール抽出物)の組み合わせが末梢血流を増加させることで育毛作用を有することが記載されている。特許文献1~4及び非特許文献1では、ショウガの水抽出物と山椒の水抽出物との組み合わせは具体的には記載されていない。
【0026】
本実施形態に係る組成物は、ショウガの水抽出物及び山椒の水抽出物を有効成分として含有することで、高麗人参と併用されなくとも、アドレノメデュリン遺伝子の発現を相乗的に増強することができるという、特許文献1~4及び非特許文献1に記載された事項からは予想できない効果を有するものである。
【0027】
ショウガの水抽出物及び山椒の水抽出物はそれぞれ辛味の強い成分である。両者を組み合わせることによりアドレノメデュリン遺伝子の発現を相乗的に増強することができるため、アドレノメデュリン遺伝子の発現を増強するために必要なショウガの水抽出物及び山椒の水抽出物の合計の使用量を、それぞれ単独で用いた場合と比較して低減することができる。このため、本実施形態に係るアドレノメデュリン遺伝子発現増強用組成物は、辛味の低減された飲食品としての利用に適している。
【0028】
アドレノメデュリンの遺伝子発現が増強されていることは、本実施形態に係る組成物を摂取又は投与した対象から採取した細胞、或いは、本実施形態に係る組成物の存在下で培養した細胞中のmRNAからcDNAを調製し、該cDNAを鋳型とし、アドレノメデュリンのcDNA塩基配列(5’非翻訳領域、コーディング領域及び/又は3’非翻訳領域、好ましくはコーディング領域)の少なくとも一部を特異的に増幅し得るプライマーセットを用いた核酸増幅反応を行い、該反応による増幅産物量を検出することで確認することができる。
【0029】
また、アドレノメデュリンの遺伝子発現が増強されていることは、本実施形態に係る組成物を摂取又は投与した対象から採取した細胞、或いは、本実施形態に係る組成物の存在下で培養した細胞において、アドレノメデュリンのペプチドの量を検出することで確認することができる。細胞中でアドレノメデュリンのペプチドの量が増加している場合に、アドレノメデュリンの遺伝子発現が増強されていると評価することができる。
【0030】
ヒト由来アドレノメデュリンの前駆体(プレプロアドレノメデユリン)のアミノ酸配列を配列番号3に、ヒト由来アドレノメデュリンのcDNA塩基配列を配列番号4に示す。配列番号4においてコーディング領域は第179位~第736位である。
【0031】
本実施形態に係る組成物の対象は、好ましくは、アドレノメデュリンの遺伝子発現の増強を必要とする或いは望む対象である。また、本実施形態に係る組成物は、健常な対象に対しても有効である。
【0032】
本実施形態に係る組成物は、医薬品、飲食品、化粧品等の各形態の組成物であってよい。飲食品は、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養補給のためのサプリメント等の形態のものも包含する。
【0033】
本実施形態に係る組成物は、好ましくは、経口又は経鼻により摂取又は投与される組成物であり、より好ましくは、経口により摂取又は投与される組成物である。
【0034】
本実施形態に係る組成物はまた、生体外の細胞と共存させることにより該細胞においてアドレノメデュリンの遺伝子発現を増強するための組成物であってもよい。この場合、本実施形態に係る組成物は、細胞を培養するための培地中に添加されて使用される。
【0035】
本明細書において「1日の使用量」とは、本実施形態に係る組成物の、一日間で摂取、投与又は使用される量の総量を意味し、好ましくは、ヒト一人、特に成人一人により、本実施形態に係る組成物が一日間で摂取、投与又は使用される量の総量を意味する。「1日の使用量」の具体例として、本実施形態に係る組成物の量として0.1g~500gが例示できる。
【0036】
本実施形態に係る組成物は、継続的に摂取、投与又は使用されてもよいし、必要時に摂取、投与又は使用されてもよい。
【0037】
本実施形態に係る組成物におけるショウガの水抽出物及び山椒の水抽出物の含有量は特に限定されず、例えば、組成物全量あたり合計で0.1~95質量%のショウガの水抽出物及び山椒の水抽出物を含むことができる。本実施形態に係る組成物中でのショウガの水抽出物と山椒の水抽出物との配合割合は特に限定されない。例えば、ショウガの水抽出物100質量部に対して、山椒の水抽出物が10~1000質量部とすることができる。
【0038】
本実施形態に係る組成物の形状は、特に限定されず、例えば、液体状、流動状、ゲル状、半固形状、又は固形状などの何れの形状であってもよい。
【0039】
本実施形態に係る組成物は、ショウガの水抽出物及び山椒の水抽出物に加えて、少なくとも1種の他の成分を更に含んでいてもよい。本実施形態に係る組成物が含み得る、少なくとも1種の他の成分としては、特に限定されないが、好ましくは、医薬品、飲食品、化粧品等の最終的な形態において許容される成分である。
【0040】
このような他の成分としては例えば、甘味料、酸味料、ビタミン類、ミネラル類、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、水等が挙げられる。また、必要により、色素、香料、保存料、防腐剤、防かび剤、更なる生理活性物質等を添加してもよい。
【0041】
甘味料としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、パラチノース、トレハロース、キシロース等の単糖や二糖、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、砂糖混合異性化糖等)、糖アルコール(エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、ソルビトール、還元水飴等)、はちみつ、高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、ステビア、アスパルテーム等)等が挙げられる。
【0042】
酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リン酸、又はこれらの塩等があり、これらのうちの1種又は2種以上を利用することができる。
【0043】
ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE、ナイアシン、イノシトール等が挙げられる。
【0044】
ミネラル類としては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄等が挙げられる。
【0045】
増粘剤としては、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、アラビアガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、寒天、ゼラチン、ペクチン、大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
【0046】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、植物性ステロール、サポニン等が挙げられる。
【0047】
酸化防止剤としては、ビタミンC、トコフェロール(ビタミンE)、酵素処理ルチン等が挙げられる。
【0048】
前記他の成分は、それぞれ当業者が飲食品、医薬品等の組成物に通常採用する範囲内の量で適宜配合することができる。
【0049】
本実施形態に係る組成物は、ショウガの水抽出物及び山椒の水抽出物のみを、アドレノメデュリンの遺伝子発現の増強に関与する活性成分として含んでいてもよい。この場合、本実施形態に係る組成物は、アドレノメデュリンの遺伝子発現の増強に関与しない、上記のような他の成分を含んでいてよい。
【実施例
【0050】
<乾姜水抽出物及び山椒水抽出物>
粉砕された乾姜に対して20倍量の熱水を加えて、95℃にて30分間、攪拌しながら抽出を行い、抽出液をBrix20°まで濃縮した。濃縮後の抽出液を遠心分離(10,000rpm、25℃、5分間)し、上清を、乾姜の水抽出物とした。
【0051】
同様に、粉砕された山椒に対して20倍量の熱水を加えて、95℃にて30分間、攪拌しながら抽出を行い、抽出液をBrix20°まで濃縮した。濃縮後の抽出液を遠心分離(10,000rpm、25℃、5分間)し、上清を、山椒の水抽出物とした。
【0052】
<アドレノメデュリン遺伝子発現増強>
ラット由来小腸上皮細胞株(理化学研究所)を、1ウェルあたり1×10細胞になるようにDMEM(1g/L glucose、5% FBS、4μg/mL insulin)培地に懸濁し、懸濁液を24ウェルプレートに播種し、37℃、5%CO条件下で培養した。
【0053】
培養開始から24時間後に、乾姜の水抽出物及び/又は山椒の水抽出物を含む下記の培地に交換し、更に6時間培養した。
乾姜の水抽出物及び/又は山椒の水抽出物を含む培地は、DMEM(1g/L glucose、3%非働化FBS)培地に、乾姜の水抽出物を400倍又は200倍、及び/又は、山椒の水抽出物を2000倍又は1000倍に希釈されるように添加して調製した。
【0054】
対照として乾姜の水抽出物及び山椒の水抽出物を含まないDMEM(1g/L glucose、3%非働化FBS)培地を用いた以外は同一の方法で小腸上皮細胞株の培養を行った。
【0055】
培養後の細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、細胞を回収して、細胞からRNAを抽出した。細胞の回収およびRNAの抽出にはRNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用い、付属の手順に従って行った。
【0056】
得られたRNAを使用し、リアルタイムPCRによってアドレノメデュリン及び内部標準βアクチンのmRNA発現量を測定した。One Step TB Green PrimeScript RT-PCR Kit II(タカラバイオ)を用い、付属のプロトコルに従って行った。プライマー配列は次表の通り。
【0057】
【表1】
【0058】
アドレノメデュリンのmRNA発現量を、βアクチンのmRNA発現量に対する相対値として算出した。更に、各条件でのアドレノメデュリンの算出したmRNA発現量を、対照条件でのアドレノメデュリンの算出したmRNA発現量に対する相対値として表した。
【0059】
各条件についてn=3で測定を行い、平均値及び標準偏差を求めた。また、one-way ANOVAによる多重比較及びTurkey-Kramerテストによる事後検定を行った。
【0060】
結果を図1に示す。p<0.05の有意差が認められる条件を異なる文字で表し、有意差が認められない条件を同じ文字で表した。
【0061】
乾姜水抽出物及び山椒水抽出物を添加しない対照条件と比較して、400倍希釈又は200倍希釈の乾姜水抽出物を単独で添加した条件、及び、2000倍希釈又は1000倍希釈の山椒水抽出物を単独で添加した条件では、アドレノメデュリンの発現が増強する傾向は認められたが有意差は確認されなかった。
【0062】
これに対して、400倍希釈又は200倍希釈の乾姜水抽出物と2000倍希釈又は1000倍希釈の山椒水抽出物とを組み合わせて添加した条件でのアドレノメデュリン発現量は、対照条件でのアドレノメデュリン発現量よりも有意に高かった。また、400倍希釈又は200倍希釈の乾姜水抽出物と2000倍希釈又は1000倍希釈の山椒水抽出物とを組み合わせて添加した条件でのアドレノメデュリン発現量の、対照条件でのアドレノメデュリン発現量からの増加幅は、各希釈倍率の抽出物を単独で添加した条件でのアドレノメデュリン発現量の、対照条件でのアドレノメデュリン発現量からの増加幅の合計を上回った。このことは、乾姜水抽出物と山椒水抽出物とを組み合わせて添加することにより、アドレノメデュリンの発現が相乗的に増強されたことを示す。
図1
【配列表】
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