(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】虚像表示装置及び虚像表示装置の調整方法
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20241217BHJP
G02B 17/08 20060101ALI20241217BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B17/08
H04N5/64 511A
(21)【出願番号】P 2020197885
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【氏名又は名称】大石 治仁
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 将行
(72)【発明者】
【氏名】野口 俊幸
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-115399(JP,A)
【文献】特開2000-010504(JP,A)
【文献】特表2020-513580(JP,A)
【文献】特開2013-090185(JP,A)
【文献】特開2014-186201(JP,A)
【文献】特開2014-013320(JP,A)
【文献】特開2011-085769(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0205877(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0228788(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110879469(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01,27/02
H04N 5/64
H04N 13/00-13/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
右眼用の第1表示装置と、
左眼用の第2表示装置と、
前記第1表示装置と前記第2表示装置とを組み付ける組付部材と、
前記組付部材により組み付けられた前記第1表示装置と前記第2表示装置とについて表示状態の調整をする組付後調整装置と
を備え、
前記第1表示装置及び前記第2表示装置は、パネル型の表示素子と、前記表示素子から射出された画像光を導く導光系とを含み、
前記表示素子の表示領域は、前記表示素子の表示有効領域よりも狭く、
前記表示素子は、前記表示有効領域において、前記表示領域を可変とするためのマージン領域を有し、
前記組付後調整装置は、前記表示素子における前記表示領域の調整のため入力される映像信号を変換して前記表示素子に対して出力する映像処理回路として、入力される映像信号を前記入力される映像信号よりも画素数の大きな映像信号に変換して前記表示素子に対して出力する拡大処理回路と、前記入力される映像信号を前記表示素子における前記表示有効領域の画素数よりも画素数の小さな映像信号に変換する縮小処理回路とのいずれかを含む、
虚像表示装置。
【請求項2】
前記組付部材による組付けに際しての調整可能量は、前記組付後調整装置における再度の調整での調整量よりも大きい、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記組付後調整装置は、前記拡大処理回路における変換で大きくなった映像信号の画素数の範囲内で、表示位置の平行移動及び表示位置の回転のいずれかを行う、請求項1及び2のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記組付後調整装置は、前記縮小処理回路における変換で小さくなった映像信号の画素数と前記表示素子における前記表示有効領域の画素数との差の範囲内で、表示位置の平行移動及び表示位置の回転のいずれかを行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
右眼用の第1表示装置と、
左眼用の第2表示装置と、
前記第1表示装置と前記第2表示装置とを組み付ける組付部材と、
前記組付部材により組み付けられた前記第1表示装置と前記第2表示装置とについて表示状態の調整をする組付後調整装置と
を備え、
前記第1表示装置及び前記第2表示装置は、パネル型の表示素子と、前記表示素子から射出された画像光を導く導光系とを含み、
前記表示素子の表示領域は、前記表示素子の表示有効領域よりも狭く、
前記表示素子は、前記表示有効領域において、前記表示領域を可変とするためのマージン領域を有し、
前記組付後調整装置は、前記表示素子における前記表示領域の調整のため、入力される映像信号を変換して前記表示素子に対して出力する映像処理回路を有し、
前記映像処理回路は、前記第1表示装置と前記第2表示装置とに応じて2つに分岐された前記映像信号について、分岐後の一方と他方とで異なる変換処理をする、
虚像表示装置。
【請求項6】
右眼用の第1表示装置と、
左眼用の第2表示装置と、
前記第1表示装置と前記第2表示装置とを組み付ける組付部材と、
前記組付部材により組み付けられた前記第1表示装置と前記第2表示装置とについて表示状態の調整をする組付後調整装置と
を備え、
前記第1表示装置及び前記第2表示装置は、パネル型の表示素子と、前記表示素子から射出された画像光を導く導光系とを含み、
前記表示素子の表示領域は、前記表示素子の表示有効領域よりも狭く、
前記表示素子は、前記表示有効領域において、前記表示領域を可変とするためのマージン領域を有し、
前記組付後調整装置は、前記表示素子における前記表示領域の調整のため、入力される映像信号を変換して前記表示素子に対して出力する映像処理回路を有し、
前記映像処理回路は、前記導光系によって形成される歪みを相殺する歪み補正をする歪み補正回路を含み、
前記歪み補正回路は、前記表示素子から射出すべき画像光の波長帯域に応じて異なる度合で補正する、
虚像表示装置。
【請求項7】
右眼用の第1表示装置と、
左眼用の第2表示装置と、
前記第1表示装置と前記第2表示装置とを組み付ける組付部材と、
前記組付部材により組み付けられた前記第1表示装置と前記第2表示装置とについて表示状態の調整をする組付後調整装置と
を備え、
前記第1表示装置及び前記第2表示装置は、パネル型の表示素子と、前記表示素子から射出された画像光を導く導光系とを含み、
前記組付後調整装置は、前記表示素子における表示領域の調整のため、入力される映像信号を変換して前記表示素子に対して出力する映像処理回路を有し、
前記導光系は、前記表示素子から射出された前記画像光を収束させる投射光学系と、前記投射光学系から射出された前記画像光を入射面に屈折させつつ入射させ、内反射面で全反射させ、射出面から屈折させつつ射出させるプリズムと、前記プリズムから射出された前記画像光を瞳位置に向けて反射するとともに外界光を透過させるシースルーミラーとを有する、
虚像表示装置。
【請求項8】
前記プリズムの前記内反射面での折返しと前記シースルーミラーでの折返しとの2段階での折返しにより、Z字状の光路が形成される、請求項7に記載の虚像表示装置。
【請求項9】
前記導光系は、軸外し光学系を形成する、請求項
7及び8のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項10】
右眼用の第1表示装置と左眼用の第2表示装置とを備える虚像表示装置の調整方法であって、
左右の姿勢を調整しつつ組み付けられた前記第1表示装置と前記第2表示装置とについて、表示状態の調整をする、虚像表示装置の調整方法であって、
前記第1表示装置及び前記第2表示装置は、パネル型の表示素子と、前記表示素子から射出された画像光を導く導光系とを含み、
前記表示素子の表示領域は、前記表示素子の表示有効領域よりも狭く、
前記表示素子は、前記表示有効領域において、前記表示領域を可変とするためのマージン領域を有し、
前記表示素子における前記表示領域の調整のため入力される映像信号を変換して前記表示素子に対して出力する映像処理回路により、入力される映像信号を前記入力される映像信号よりも画素数の大きな映像信号に変換して前記表示素子に対して出力し、或いは前記入力される映像信号を前記表示素子における前記表示有効領域の画素数よりも画素数の小さな映像信号に変換する、
虚像表示装置の調整方法。
【請求項11】
右眼用の第1表示装置と左眼用の第2表示装置とを備える虚像表示装置の調整方法であって、
左右の姿勢を調整しつつ組み付けられた前記第1表示装置と前記第2表示装置とについて、表示状態の調整をする、虚像表示装置の調整方法であって、
前記第1表示装置及び前記第2表示装置は、パネル型の表示素子と、前記表示素子から射出された画像光を導く導光系とを含み、
前記表示素子の表示領域は、前記表示素子の表示有効領域よりも狭く、
前記表示素子は、前記表示有効領域において、前記表示領域を可変とするためのマージン領域を有し、
前記表示素子における前記表示領域の調整のため入力される映像信号を変換して前記表示素子に対して出力する映像処理回路により、前記第1表示装置と前記第2表示装置とに応じて2つに分岐された前記映像信号について、分岐後の一方と他方とで異なる変換処理をする、
虚像表示装置の調整方法。
【請求項12】
右眼用の第1表示装置と左眼用の第2表示装置とを備える虚像表示装置の調整方法であって、
左右の姿勢を調整しつつ組み付けられた前記第1表示装置と前記第2表示装置とについて、表示状態の調整をする、虚像表示装置の調整方法であって、
前記第1表示装置及び前記第2表示装置は、パネル型の表示素子と、前記表示素子から射出された画像光を導く導光系とを含み、
前記表示素子の表示領域は、前記表示素子の表示有効領域よりも狭く、
前記表示素子は、前記表示有効領域において、前記表示領域を可変とするためのマージン領域を有し、
前記表示素子における前記表示領域の調整のため入力される映像信号を変換して前記表示素子に対して出力する映像処理回路により、前記導光系によって形成される歪みについて、前記表示素子から射出すべき画像光の波長帯域に応じて異なる度合で相殺する歪み補正を行う、
虚像表示装置の調整方法。
【請求項13】
右眼用の第1表示装置と左眼用の第2表示装置とを備える虚像表示装置の調整方法であって、
左右の姿勢を調整しつつ組み付けられた前記第1表示装置と前記第2表示装置とについて、表示状態の調整をする、虚像表示装置の調整方法であって、
前記第1表示装置及び前記第2表示装置は、パネル型の表示素子と、前記表示素子から射出された画像光を導く導光系とを含み、
前記導光系は、前記表示素子から射出された前記画像光を収束させる投射光学系と、前記投射光学系から射出された前記画像光を入射面に屈折させつつ入射させ、内反射面で全反射させ、射出面から屈折させつつ射出させるプリズムと、前記プリズムから射出された前記画像光を瞳位置に向けて反射するとともに外界光を透過させるシースルーミラーとを有し、
前記表示素子における表示領域の調整のため、映像処理回路により入力される映像信号を変換して前記表示素子に対して出力する、
虚像表示装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像の形成及び観察を可能にするヘッドマウントディスプレイ等である虚像表示装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイのように虚像の形成及び観察を可能にする両眼視の虚像表示装置において、左右光学系の光軸等について調整を行って左右の映像位置を合わせることが行われており、例えば、伸縮性の封止部材を設けて、光学系の位置調整等の作業の際に、異物を侵入させないようにするものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1等のような技術を用いて光学系の高精度な組立てがなされたとしても、光学系の組立て後における基板取付や外装組立等を経る間に、光学系における光軸のずれ等が新たに生じてしまう可能性がある。特に、左右間での映像位置のずれは、わずかなものであっても使用者(装着者)に多大な負荷を強いる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面における虚像表示装置は、右眼用の第1表示装置と、左眼用の第2表示装置と、第1表示装置と第2表示装置とを組み付ける組付部材と、組付部材により組み付けられた第1表示装置と第2表示装置とについて表示状態の調整をする組付後調整装置とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態の虚像表示装置について概要を説明する外観斜視図である。
【
図2】虚像表示装置を構成する光学系について一例を示す図である。
【
図3】光学系の各部及び光路について説明するための一部拡大図である。
【
図4】光学系の組付け時における位置合わせの様子について一例を説明するための斜視図である。
【
図5】光学系の組付け時における位置合わせについて概念的に示す平面図である。
【
図6】表示状態の位置ずれについて説明する概念図である。
【
図7】光学系の組付け後の状態について一例を概念的に示す平面図である。
【
図8】
図7に示す光学系の組付け後における表示状態の調整について概念的に示す平面図である。
【
図9】表示状態の調整のための画像処理の一例を説明するためのブロック図である。
【
図10】表示素子の表示面について一例を示す概念図である。
【
図11】虚像表示装置の一変形例について説明する外観斜視図である。
【
図12】第2実施形態の虚像表示装置について、表示状態の調整のための画像処理の一例を説明するブロック図である。
【
図13】第3実施形態の虚像表示装置について概要を説明する外観斜視図である。
【
図14】虚像表示装置の内部構造について一例を説明する側方断面図である。
【
図15】発生する歪みや回転の補正について説明するための概念図である。
【
図16】虚像表示装置の一変形例について説明する外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔第1実施形態〕
以下、
図1等を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る虚像表示装置及びこれに組み込まれる光学ユニットについて説明する。
図1は、本実施形態の虚像表示装置100について概要を説明する外観斜視図であり、
図2は、虚像表示装置100を構成する光学系について一例を示す図であり、
図3は、虚像表示装置100を構成する光学系の各部及び光路について説明するための一部拡大図である。また、
図4は、光学系の組付け時における位置合わせの様子について一例を説明するために光学系の一部について拡大して示した斜視図である。
【0008】
図1等に示すように、本実施形態の虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイ(HMD)であり、この虚像表示装置100を装着した観察者又は装着者USに虚像としての映像を認識させる。また、虚像表示装置100は、観察者又は装着者USに外界像をシースルーで視認又は観察させることができる。虚像表示装置100は、第1表示装置100Aと、第2表示装置100Bとを備える。
【0009】
なお、
図1等において、X、Y、及びZは、直交座標系であり、+X方向は、虚像表示装置100を装着した観察者又は装着者USの両眼EYの並ぶ横方向に対応し、+Y方向は、装着者USにとっての両眼EYの並ぶ横方向に直交する上方向に相当し、+Z方向は、装着者USにとっての前方向又は正面方向に相当する。±Y方向は、鉛直軸又は鉛直方向に平行になっている。
【0010】
図1及び
図2に示すように、第1表示装置100A及び第2表示装置100Bは、右眼用の虚像と左眼用の虚像とをそれぞれ形成する部分である。右眼用の第1表示装置100Aは、観察者の眼前を透視可能に覆う第1虚像形成光学部101aと、画像光MLを形成する第1像形成本体部105aとを備える。左眼用の第2表示装置100Bは、観察者の眼前を透視可能に覆う第2虚像形成光学部101bと、画像光MLを形成する第2像形成本体部105bとを備える。
【0011】
第1及び第2像形成本体部105a,105bについては、映像形成デバイスである表示素子(映像素子)80や、投射レンズ30等の像形成のための光学系や、さらに、
図4に例示するように、これらの光学系を収納するケース部材CSや鏡筒BR等でそれぞれ構成されている。なお、これらは、さらに、カバー状の外装部材105dにより覆われることで、支持され、かつ、収納されている。
【0012】
図2に例示するように、表示素子80は、パネル型の映像素子(画像光生成装置)であって、例えば有機EL(有機エレクトロルミネッセンス、Organic Electro-Luminescence)等の自発光型の表示デバイスであり、2次元の表示面SSaにカラーの静止画又は動画を形成する。また、表示素子80は、図示を省略する表示制御回路に駆動されて表示動作を行う。さらに、表示素子80は、有機ELに限らず、無機EL、LEDアレイ、有機LED、レーザーアレイ、量子ドット発光型素子等に置き換えることができる。表示素子80は、自発光型の画像光生成装置に限らず、LCDその他の光変調素子で構成され、当該光変調素子をバックライトのような光源によって照明することによって画像を形成するものであってもよい。表示素子80として、LCDに代えて、LCOS(Liquid crystal on silicon, LCoSは登録商標)や、デジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。
【0013】
投射レンズ30は、例えば
図2に示すように、光軸(入射側光軸)AXが延びる方向(光軸方向)に沿って並ぶ複数の光学素子(
図2等に示す例では、4つのレンズ)を備えて構成されている投射光学系である。また、例えば
図3の上欄α1及び下欄α2に比較して示すように、投射レンズ30を構成する複数のレンズは、例えば樹脂成形により一体成形された鏡筒BRによって収納され、かつ、支持されている。なお、投射レンズ30を構成する光学要素すなわち4つのレンズについては、例えば非軸対称な非球面と軸対称な非球面との双方を含む非球面レンズを含んで構成することができる。この際、後述する第1及び第2虚像形成光学部101a,101bの導光部材(導光部材10,10a,10b)の光学面又は反射面と協働して当該導光部材の内部に中間像を形成するものとすることができる。
【0014】
なお、以下において、例えば、右眼用と左眼用とで区別する場合には、右眼用の表示素子80は、表示素子80aと記載し、左眼用の表示素子80は、表示素子80bと記載することもある。同様に、投射レンズ30は、投射レンズ30a,30bと記載し、ケース部材CSは、ケース部材CSa,CSbと記載し、鏡筒BRは、鏡筒BRa,BRbと記載することもある。
【0015】
第1及び第2虚像形成光学部101a,101bは、第1及び第2像形成本体部105a,105bで形成される映像光である画像光MLを導光させるとともに外界光HLと画像光MLとを重複して視認させる。
図1等の例示では、第1及び第2虚像形成光学部101a,101bは、別体ではなく中央で連結されて一体的な部材である透視型導光ユニット100Cを形成している。透視型導光ユニット100Cは、導光によって観察者に両眼用の映像を提供する複合型の導光装置である。また、以上について見方を変えると、透視型導光ユニット100Cは、一対の導光部材10a,10bと光透過部材である中央部材50とを備えており、第1虚像形成光学部101aは、導光部材10aと中央部材50の右半分である光透過部50Aとによって形成されている。同様に、第2虚像形成光学部101bは、導光部材10bと中央部材50の左半分である光透過部50Bとによって形成されている。なお、導光部材10a,10bについて、まとめて導光部材10と記載することもある。
【0016】
なお、以上において、投射レンズ30(30a,30b)及び導光部材10(10a,10b)をまとめて、表示素子80(80a,80b)から射出された画像光MLを導く導光系90(90a,90b)と捉えることも可能である。
【0017】
以下、
図3等を参照して、虚像表示装置100による画像光MLの導光について、一例を概念的に説明する。虚像表示装置100は、既述のように、第1表示装置100A及び第2表示装置100Bで構成されるが、
図2等に示すように、第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとは、光学的に左右対称(鏡対称)で同等の構造を有するため、
図3では、第1表示装置100Aについてのみ示すとともに右眼側の構成についてのみ説明し、第2表示装置100Bについては説明を省略する。また、
図3等において、x、y、及びzは、直交座標系であり、z方向は、第1表示装置100Aを構成する光学系の光軸方向に相当し、x方向及びy方向は、z方向を法線方向とする表示素子80b(80)のパネル面内の面内方向に相当し、x方向が水平方向に相当し、y方向が鉛直方向に相当する。
【0018】
図3に例示するように、まず、第1虚像形成光学部101aのうち、導光部材10aは、光学的な機能を有する側面として、第1~第5面S11~S15を有している。これらのうち、第1面S11と第4面S14とが隣接し、第3面S13と第5面S15とが隣接する。また、第1面S11と第3面S13との間に第2面S12が配置されている。第2面S12の表面には、ハーフミラー層が付随して設けられている。このハーフミラー層は、光透過性を有する反射膜(半透過反射膜)であり、金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成され映像光に対する反射率が適宜設定されている。つまり、導光部材10aが、観察者の装着時において眼前を覆う透過型反射面を有している。
【0019】
第1虚像形成光学部101aのうち、光透過部50Aは、導光部材10aの透視機能を補助する部材(補助光学ブロック)であり、導光部材10aと一体的に固定され1つの第1虚像形成光学部101aとなっている。光透過部50Aは、光学的な機能を有する側面として、第1透過面S51と、第2透過面S52と、第3透過面S53とを有する。第2透過面S52は、第1透過面S51と第3透過面S53との間に配置されている。第1透過面S51は、導光部材10aの第1面S11を延長した面上にあり、第2透過面S52は、第2面S12に対して接合され一体化されている曲面であり、第3透過面S53は、導光部材10の第3面S13を延長した面上にある。言い換えると、第1面S11と第1透過面S51とが隣接し、同様に、第3面S13と第3透過面S53とが隣接しており、いずれも面一に位置合わせされた状態となった滑らかな面を形成している。
【0020】
以下、
図3等を参照して、画像光MLの光路について概略説明する。表示素子80aから画像光MLが射出されると、これに対して、導光部材10aは、投射レンズ30から画像光MLを入射させる。すなわち画像光MLを受けるとともに第1~第5面S11~S15での反射等により観察者又は装着者USの眼EYに向けて導光する。具体的には、投射レンズ30からの画像光MLは、まず、第4面S14に入射して第5面S15で反射され、第4面S14に内側から再度入射して全反射され、第3面S13に入射して全反射され、第1面S11に入射して全反射される。第1面S11で全反射された画像光MLは、第2面S12に入射し、第2面S12に設けたハーフミラー層を部分的に透過しつつも部分的に反射されて第1面S11に再度入射して通過する。第1面S11を通過した画像光MLは、装着者USの眼EY又はその等価位置である射出瞳EPの形成位置に略平行光束として入射する。つまり、装着者USは、虚像としての画像光MLにより画像を観察することになる。
【0021】
また、第1虚像形成光学部101aは、上述したように導光部材10aにより装着者USに映像光を視認させるとともに、導光部材10aと光透過部50Aとの協働により装着者USに歪みの少ない外界像を観察させるものとなっている。この際、第3面S13と第1面S11とが互いに略平行な平面(視度略0)となっていることで、外界光HLについて、収差等をほとんど生じない。また、同様に、第3透過面S53と第1透過面S51とが互いに略平行な平面となっている。さらに、第3透過面S53と第1面S11とが互いに略平行な平面となっていることで、収差等をほとんど生じない。以上により、装着者USは、光透過部材としての中央部材50越しに歪みのない外界像を観察することになる。
【0022】
なお、
図2等に示す第2表示装置100Bも、上述した第1表示装置100Aと同様の構成を有する。以上により、装着者USは、両眼視による虚像の観察を外界の観察とともに行える。
【0023】
以上のような構成とするに際して、左右での虚像表示位置が合致するように、位置合わせが行われる。具体的には、
図4に一例を示すように、表示素子80と投射レンズ30との位置調整が行われる。
【0024】
図示の例では、鏡筒BR(BRa,BRb)の側面に掘込み部DGが設けられ、ケース部材CSの側面に突起部PRが掘込み部DGに対応して設けられている。掘込み部DGと突起部PRとの間には、位置調整を可能とすべく若干の隙間が設けられている。鏡筒BRとケース部材CSとの接合に際しては、これらを嵌め合わせ、さらに、例えば掘込み部DGや突起部PR等に紫外線硬化性樹脂となるべき接着剤を塗布する(図示略)。以上により、鏡筒BRとケース部材CSとの相対的位置関係を調整可能としつつ、所望の位置で固定している。なお、鏡筒BRとケース部材CSとの接合に際して、鏡筒BRとケース部材CSとの間を封止部材で巻きつけることで、鏡筒BRとケース部材CSとの間を隙間なく密閉した状態にしてもよい。
【0025】
ここで、上記のような画像を形成する光学系を構成する製作工程(製造工程)に際して、各光学系の位置合わせが非常に重要となる。特に、上記構成の虚像表示装置100のように、第1表示装置100A及び第2表示装置100Bを有して左右の眼にそれぞれ画像を視認させる構成の場合、片眼のみでの位置合わせのみならず、右眼側と左眼側との間でのバランスを考慮した位置合わせが重要となる。より具体的には、左右用の投射レンズ30a,30bをそれぞれ収納した鏡筒BRa,BRbを、透視型導光ユニット100Cに組み付けた後の状態において、表示素子80a,80bを収納したケース部材CSa,CSbを、鏡筒BRa,BRbに取り付ける際(パネル調整工程)の位置決めを高精度に行う必要がある。さらに、各部の角度調整(光軸調整)について、高精度に行う必要がある。例えば左右の視認状態についてバランスを維持するには、角度誤差を±0.2°以内程度となるようにする必要がある。
【0026】
以上のような条件を満たすように左右の相対的な位置決めを高精度に行うべく、例えば、
図5として概念的に示す平面図のうち、上欄β1にあるように、一対の撮像素子(カメラ)FCa,FCbと、画像処理装置FIとで構成される調整装置FAを利用して、光学系の組付け時における位置合わせ(位置調整)をする態様が考えられる。
【0027】
上記位置合わせ(位置調整)について、より具体的に説明すると、まず、装着者USの左右の眼EYの位置(
図2等参照)として想定される射出瞳EPの形成位置に撮像素子FCa,FCbが設置され、その一方で、位置調整可能な状態で仮組みされた光学系からは、仮の映像を表示させる。撮像素子FCa,FCbは、当該仮の映像を撮像し、その撮像結果は、画像処理装置FIに送られる。画像処理装置FIは、左右の眼として想定される撮像素子FCaと撮像素子FCbとでの上記撮像結果(装着者USにおける視認の状態に相当)から、光学系の各部のずれを算出し、算出結果に応じて、調整可能に仮組みされた各光学系の相対的位置関係が変更される。なお、図示を省略しているが、投射レンズ30a,30bを収納する鏡筒BRa,BRbや、表示素子80a,80b(あるいは
図4に示す表示素子80a,80bを収納するケース部材CSa,CSb)には、治具が取り付けられており、上記のような算出結果に応じて、必要な物理的位置変更が可能になっている。
【0028】
以上のようにして、所望の精度を満たす状態で、光学系の組付けがなされる。上記の場合、例えば、
図4に示した鏡筒BRa,BRbや、ケース部材CSa,CSbは、位置調整がなされた状態の各光学系を組み付ける部材として、すなわち所望の位置関係となった第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとを組み付ける組付部材ASとして機能する。つまり、組付部材ASとしての鏡筒BRa,BRb等は、虚像表示装置100を構成する光学系における左右の相対的な姿勢を調整する。なお、以下において、鏡筒BRa,BRb等により、第1及び第2表示装置100A,100Bを構成する光学系が組み付けられた状態のユニットを、光学ユニットOUとする。上記のようにして組み付けられた光学ユニットOUに対して、さらに、下欄β2に例示するように、カバー状の外装部材105d等や、図示を省略するが、各種制御回路基板、カメラや配線部材、テンプル等、種々の部材の組付けやさらに各種装飾等がなされることで、虚像表示装置100は、エンドユーザー(消費者)に対して提供可能な製品となる。
【0029】
ここで、
図5の上欄β1を参照して説明したように、光学系についての高精度な組付けがなされた直後の状態の光学ユニットOUでは、左右の画像位置のずれ等が生じない状態での視認が可能となっている。つまり、
図6に例示した概念図を参照して説明すると、第1欄γ1に概念的に示す装着者USの右眼EYaと左眼EYbで視認される画像(虚像)のイメージIM1,IM2は、第2欄γ2に概念的に示すように、位置ずれが無く一致した状態のイメージIMAとして、装着者USに自然に認識される状態となっている。これは、
図2に例示した画像光MLの光路について、左右で同じ画像位置として射出された画像光MLが、眼EY(射出瞳EPの形成位置)に対して、同じ角度で入射することを意味する。
【0030】
これに対して、
図5の下欄β2等を参照して説明したように、光学ユニットOUの高精度な組付後に、他の部材を組み付けていく工程を経るうちに、光学ユニットOUに多少の歪みが生じて画像光MLの入射角度が左右で異なってしまい、その結果、例えば、
図6の第3欄γ3や第4欄γ4に概念的に示すように、イメージIM1,IM2で位置ずれが発生する可能性がある。第3欄γ3に示す例では、観察者の眼EYの並ぶ水平方向すなわちX方向(又はx方向)について画像のずれが発生してしまっている。一方、第4欄γ4に示す例では、観察者の眼EYの並ぶ水平方向に垂直な方向すなわちY方向(又はy方向)について画像のずれが発生してしまっている。これらのずれについては、ある程度の範囲内であれば、装着者USは、すなわち人間は、同じ画像と見做すべく脳内の処理を行うと考えられる。しかしながら、かかる状態は、装着者USに著しい負荷を負わせるものとなり、例えば長時間の視認をすると、装着者USに多大な疲労を与えてしまう可能性がある。特に、第4欄γ4に例示した上下方向(y方向、垂直方向)についてのずれについては、その影響が大きく、極力減らすことが望ましい。また、第4欄γ4に例示した左右方向(水平方向)についても、視認させる条件によっては、厳密に併せておくことが望ましく、例えば、輻輳をわざとずらして3D表示を行うといった場合には、合致した状態から意図した量のずれを左右で生じさせる必要がある。
【0031】
さらに、上記のような上下左右の画像ずれのほか、さらに画像の歪みや回転等が生じている可能性もあり、これらについても、併せて補正をする必要が生じる場合も考えられる。また、元々光学系において発生する歪曲収差や回転等まで加味して併せて補正を行う態様とすることも考えられる。
【0032】
そこで、本実施形態では、鏡筒BRa,BRbや、ケース部材CSa,CSb等の組付部材ASによって既に組み付けられた状態にある光学ユニットOUについて、組付後であっても、特に光学系以外の他の部材(例えばカバー状の外装部材105d等)が組付けられた後であっても、第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとについて表示状態の調整をする(補正をする)ことを可能とする態様としている。
【0033】
以下、
図7等を参照して、組付部材ASにより組み付けられた後での虚像表示装置100における表示状態の調整について説明する。
図7は、光学ユニットOUを構成する光学系の組付け後さらに他の部材が取り付けられた状態にある虚像表示装置100について一例を概念的に示す平面図であり、
図8は、
図7に示す虚像表示装置100における表示状態の調整について概念的に示す平面図である。また、
図9は、
図8の状況下での表示状態の調整のための画像処理の一例を説明するためのブロック図である。
【0034】
ここで、
図7等に示す一例では、上記光学系の組付け後における光学的な調整として、表示素子80の表示面SSaにおけるパネル表示位置調整(表示領域の調整)を、デジタル調整(補正)を行うことで、表示状態の調整を可能する場合について説明する。
【0035】
まず、
図7では、光学ユニットOUの組付後、さらに制御装置(コントローラー)CT等の各部を取り付けた状態の虚像表示装置100の一例を示している。すなわち、エンドユーザー(消費者、購入者)に対して引渡し可能な一応の完成品としての虚像表示装置100の一例を示している。ただし、ここでは、光学ユニットOUの組付後の各部の取付工程等を経た結果、光学ユニットOUを構成する光学系において歪み等のずれが発生しており、この補正が必要となった状態にあるものとする。つまり、虚像表示装置100は、完成品へ組み立てた後に、光学ユニットOUの組付後の組立てによって生じた左右の映像位置のずれを補正することになる。
【0036】
また、
図7に示す一例の虚像表示装置100では、既述のように、表示させる画像情報の制御及び出力や、装着者USによる各種操作指令の受付け等、各種制御を行うための制御装置CTが設けられており、第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとは、ケーブルCB(CBa,CBb)を介して、制御装置CTに接続されている。制御装置CTには、CPU等で構成される主制御部MPのほか、映像分岐部VBが設けられており、右眼用の第1表示装置100Aに対して画像データを出力する第1出力部GOaと、左眼用の第2表示装置100Bに対して画像データを出力する第2出力部GObとが設けられている。
【0037】
さらに、図示の一例では、表示状態の調整をするための補正回路部として、第1表示装置100Aには、第1補正部COaが設けられており、第2表示装置100Bには、第2補正部CObが設けられている。第1補正部COaは、第1補正量メモリーCMaと、第1補正回路CCaとを備える。同様に、第2補正部CObは、第2補正量メモリーCMbと、第2補正回路CCbとを備える。なお、第1表示装置100Aや第2表示装置100Bに加え、第1補正部COa及び第2補正部CObまで含めたものを、光学ユニットOUとして捉えてもよいものとする。すなわち、光学ユニットOUには、光学部材に加え、回路基板等まで含まれることもあるものとする。また、第1補正部COa等を構成する回路基板等までを含めた光学ユニットOUも、商取引の対象たる製品となり得る。
【0038】
第1及び第2補正量メモリーCMa,CMbには、必要な補正量に関する情報が書き込み可能となっており、第1及び第2補正回路CCa,CCbは、第1及び第2補正量メモリーCMa,CMbに記録された内容に基づき画像の修正すなわちパネル表示位置調整(表示領域の調整)を行う。すなわち、第1及び第2補正量メモリーCMa,CMbに必要な補正量(調整量)がインプットされることで、第1及び第2補正部COa,CObは、光学ユニットOUの組付後の工程を経た第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとについて表示状態の調整をする組付後調整装置AAとして機能する。なお、組付後調整装置AAとしての第1及び第2補正部COa,CObは、第1表示装置100Aと、第2表示装置100Bとに応じて2つに分岐された映像信号について、分岐後の一方と他方とで異なる変換処理をする。すなわち、第1補正部COaと第2補正部CObとは、別個独立に変換処理をする。
【0039】
以下、
図8及び
図9を参照して、
図7に例示した虚像表示装置100における表示状態の調整すなわち表示領域の調整(調整方法)について説明する。
【0040】
まず、
図8に示すように、
図7に例示した虚像表示装置100に対して、一対の撮像素子(カメラ)NCa,NCbと、画像処理装置NIとで構成される調整装置NAを利用して、光学系の組付け後における表示状態の調整が行われる。すなわち、調整装置NAにより、第1及び第2補正量メモリーCMa,CMbに記録されるべき補正量の測定が行われる。
【0041】
上記補正量の測定(表示領域の調整量測定)について、より具体的に説明すると、まず、装着者USの左右の眼EYの位置(
図2等参照)として想定される射出瞳EPの形成位置に撮像素子NCa,NCbが設置され、その一方で、すでに組付け固定された光学系からは、仮の映像を表示させる。撮像素子NCa,NCbは、当該仮の映像を撮像し、その撮像結果が、画像処理装置NIに送られる。画像処理装置NIは、左右の眼として想定される撮像素子NCaと撮像素子NCbとでの上記撮像結果(装着者USにおける視認の状態に相当)から、光学系の各部のずれを算出する。さらに、算出結果に応じて、画像処理装置NIは、第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとにおいてそれぞれ必要な補正量の測定(表示領域の調整量測定)を行い、その測定結果が第1及び第2補正部COa,CObに出力される。すなわち、必要な補正量(表示領域の調整量)に関する情報が、第1及び第2補正部COa,CObの第1及び第2補正量メモリーCMa,CMbに入力(インプット)される。
【0042】
図9は、以上のような第1補正部COa及び第2補正部CObに関して、より具体的な一例を説明するためのブロック図である。図示の例では、第1補正部COaのうち、第1補正回路CCaは、右眼用歪み補正部DCaと、右眼用画素変換位置調整部PAaと、右眼用回転補正部RCaとで構成されている。右眼用歪み補正部DCaは、右眼用として表示すべき画像全体に対して光学系に起因して発生する歪みを補正するための補正回路(歪み補正回路)である。右眼用画素変換位置調整部PAaは、表示位置の画素単位での上下左右についての変換位置調整(ずれ補正)を行う調整回路(変換位置調整回路)である。右眼用回転補正部RCaは、右眼用として表示すべき画像全体に対して光学系に起因して発生する回転を補正するための補正回路(回転補正回路)である。これらは、必要に応じて、補正量メモリーCMすなわち第1補正量メモリーCMaから適宜情報を取得する。なお、補正量メモリーCM(第1補正量メモリーCMa)については、
図8に例示した調整装置NAを利用した態様のように、予め外部入力として、補正量がインプットされている。
【0043】
なお、同様に、第2補正部CObについては、第2補正回路CCbが、左眼用歪み補正部DCbと、左眼用画素変換位置調整部PAbと、左眼用回転補正部RCbとで構成されており、これらは、必要に応じて、補正量メモリーCMすなわち第2補正量メモリーCMbから適宜情報を取得する。
【0044】
以下、簡単に各種信号処理さらにはこれに基づく画像形成について説明する。例えば、制御装置(コントローラー)CTに映像信号が入力されて、これに応じた左右用の画像データ(映像信号)が映像分岐部VBから出力されると、右眼用の第1補正部COaでは、まず、右眼用歪み補正部DCaにおいて、画像全体についての歪み補正がなされた後、右眼用画素変換位置調整部PAaで画素位置が調整され、最後に、右眼用回転補正部RCaにおいて、画像全体についての回転補正がなされる。以上のような処理を経た画像データ(映像信号)が、表示素子80aを構成する右眼用ディスプレイドライバDDaに出力され、同じく表示素子80aを構成する右眼用OLEDパネルOPaから当該画像データ(映像信号)に対応した画像光MLが射出される。
【0045】
なお、左眼用の第2補正部CObや、表示素子80bを構成する左眼用OLEDパネルOPb、左眼用OLEDパネルOPbについても、左眼用の画像形成に関して、同様に機能する。
【0046】
また、上記では、説明の都合上、例えば第1補正回路CCaを右眼用歪み補正部DCaと、右眼用画素変換位置調整部PAaと、右眼用回転補正部RCaとの3つの要素で構成されるものとしているが、実際には、これらに相当する処理を行う1つのチップ(回路)で第1補正回路CCaを構成できる。第2補正部CObの第2補正回路CCbについても同様である。
【0047】
以下、
図10に例示する表示素子80の表示面SSaについての概念図を参照して、映像信号の調整処理に関して具体的一態様を説明する。ここでは、一例として、入力される映像信号(画面解像度)は、1920×1080(FHD)であるものとし、これに対応する表示素子80の表示面SSa上での表示領域を表示領域IMとする。これに対して、表示素子80の表示面SSaにおけるパネルの有効画素数は、1960×1120=(1920+40)×(1080+40)となっている。すなわち、図中において、表示素子80の表示面SSaとしての最大領域を示す表示有効領域IMEは、入力される映像信号に対応する表示素子80の表示領域IMと比較して広く、上下左右について、±20画素分の調整用のマージン領域MDが設けられている。さらに言い換えると、表示素子80の表示領域IMは、表示素子80の表示有効領域IMEよりも狭く、表示素子80は、表示有効領域IMEにおいて、表示領域IMを可変とするためのマージン領域MDを有している。以上のような構成の場合、組付後調整装置AAとしての第1及び第2補正部COa,CObは、例えば右眼用及び左眼用画素変換位置調整部PAa,PAbにおいて、視認させる虚像の位置調整として、第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとが並ぶ第1方向であるX方向(左右方向、水平方向)についての調整のみならず、これに交差する第2方向であるY方向(上下方向、垂直方向)についての調整を行うことが可能になっている。
【0048】
なお、図示の一例では、表示有効領域IMEは、元の映像信号が標準位置にある場合の表示領域IMに対して、上に10画素、下に30画素、左に5画素、右に35画素付加して表示位置をずらすことが可能となるように、各方向についてのマージン領域MDが設定されている。また、本実施形態では、
図4等を参照して説明したように、ケース部材CSa,CSbを鏡筒BRa,BRbに取り付けるパネル調整工程等において位置決めがされており、この位置決めの時点において、表示領域IMが上記標準位置に合わせられているものとする。上記のような処理を可能とするため、組付後調整装置AAとしての第1及び第2補正部COa,CObは、入力される映像信号を変換して表示素子80に対して出力する映像処理回路を有し、特に、入力される映像信号よりも画素数の大きな映像信号、すなわち表示素子80における表示有効領域IMEに対応する映像信号に変換する(解像度変換をする)拡大処理回路を含む。
【0049】
また、本実施形態では、上記各マージンを利用した上下左右方向についてのずれ補正に加え、回転調整等も実施され、この際、回転等によって画像の端部の情報が切れる場合は、切れた状態で表示するようにしてもよい。あるいは、例えば位置ずらし量(ずれ補正量)によっては、回転等に制限を設けるようにしてもよい。つまり、組付後調整装置AAとしての第1及び第2補正部COa,CObは、上記拡大処理回路における変換で大きくなった映像信号の画素数の範囲内で、表示位置の平行移動及び表示位置の回転のうち少なくともいずれか、あるいはその両方を行う態様としてもよい。
【0050】
また、以上の場合のずれ補正として対応できる調整量(±20画素分)は、光軸のずれ(角度のずれ)に換算すると、上下左右±0.3°程度に相当する。一方、
図4や
図5等を参照して説明したパネル調整工程等の光学系の組付け時の各工程における位置決めに際しての調整量は、例えば光軸角度で上下左右±3°程度の調整が可能であるようにしておくことが考えられる。すなわち、鏡筒BRa,BRb等の組付部材ASによる組付けに際しての調整量が、組付後調整装置AAとしての第1及び第2補正部COa,CObにおける再度の調整での調整量よりも大きいものとなっている。
【0051】
また、以上において、組付部材ASとしての鏡筒BRa,BRb等は、表示素子80a,80bと導光系90a,90bとの相対的な位置調整をしつつ組付けをする物理的な位置調整であり、組付後調整装置AAとしての第1及び第2補正部COa,CObは、表示素子80a,80bにおける表示領域の調整をするデジタル処理(画像処理)による電子的な位置調整をするものとなっている。なお、虚像表示装置100は、組付後調整装置AAにおける調整における調整の有無を問わず、商取引の対象となる製品となり得、虚像表示装置100の製造工程(製造方法における一工程)としては、組付後調整装置AAによる調整を含む場合も含まない場合も考えられる。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る虚像表示装置100は、右眼用の第1表示装置100Aと、左眼用の第2表示装置100Bと、第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとを組み付ける組付部材ASとしての鏡筒BRa,BRb等と、組付部材ASにより組み付けられた第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとについて表示状態の調整をする組付後調整装置AAとしての第1及び第2補正部COa,CObとを備える。上記虚像表示装置100では、第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとを、鏡筒BRa,BRb等の組付部材ASにより組み付けた後において、新たに左右間での映像位置のずれが発生していても、組付後調整装置AAとしての第1及び第2補正部COa,CObによって第1表示装置100Aや第2表示装置100Bの表示状態の調整をすることで、そのずれを補正できる。
【0053】
以下、
図11として示す外観斜視図を参照して、本実施形態に係る虚像表示装置100の一変形例について説明する。本変形例では、第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとが、分離独立しており、第1表示装置100Aと第2表示装置100Bとがフレーム102を介して接続されている。この点において、すなわちフレーム102が、第1表示装置100Aを構成する光学系と第2表示装置100Bを構成する光学系とを組み付ける組付部材ASとして機能している点において、透視型導光ユニット100Cにより連結されて一体的な部材となっている
図1等に例示した態様と異なっている。この場合においても、光学系(光学ユニットOU)の組付けを高精度に行うことが可能であり、かつ、光学系(光学ユニットOU)の組付後において、新たに左右間での映像位置のずれが発生していても、そのずれを補正できる。
【0054】
〔第2実施形態〕
以下、
図12を参照して、第2実施形態に係る虚像表示装置等について説明する。なお、本実施形態では、光学系の組付後における表示状態の調整のための画像処理の内容の一部を除いて、第1実施形態に示した場合と同様であり、全体外観等については、第1実施形態において
図1等を参照して説明したものと同様であるので図示等を省略し、必要に応じて、上述した各図を適宜参照するものとする。
【0055】
図12は、本実施形態の虚像表示装置について、表示状態の調整のための画像処理の一例を説明するブロック図であり、
図9に対応する図である。
【0056】
図9と比較すると明らかなように、
図12に示す一例では、第1補正部COa及び第2補正部CObのうち、第1補正回路CCa及び第2補正回路CCbにおいて、右眼用縮小補正部SRa及び左眼用縮小補正部SRbが設けられている点において、第1実施形態の場合と異なっている。
【0057】
例えば、第1実施形態に例示した一態様では、
図10を参照して説明したように、入力される映像信号に対応する表示領域IMが、表示面SSaの表示有効領域IMEよりも狭く、表示領域IMを可変とするためのマージン領域MDが設けられた構成となっていた。見方を変えると、入力される映像信号が、1920×1080(FHD)に相当するものであったのに対して、表示素子80における有効画素数は、これよりも大きい1960×1120となっていることで、マージン領域MDを設けることを可能としていた。
【0058】
しかしながら、表示素子80として使用されるものが、例えば入力される映像信号と同じく1920×1080(FHD)に相当するものである場合も考えられる。このような場合には、
図10のマージン領域MDに相当する領域の確保が十分にできず、補正として位置調整や回転調整を実施すると、画面端部の情報が大きく欠けててしまう可能性がある。
【0059】
これに対して、本実施形態では、映像処理回路としての第1補正部COa及び第2補正部CObにおいて、右眼用縮小補正部SRa及び左眼用縮小補正部SRbを設けて、予め縮小処理をして周辺にマージンをもたせることによって、情報欠けを生じさせることなく、位置調整や回転調整が可能とすることで、かかる情報欠けを防ぐことを可能にしている。すなわち、本実施形態では、組付後調整装置AAとしての第1及び第2補正部COa,CObは、映像処理回路として、入力される映像信号を、表示素子80における表示有効領域IMEの画素数よりも画素数の小さな映像信号に変換する(解像度変換をする)縮小処理回路としての右眼用及び左眼用縮小補正部SRa,SRbを含む構成となっている。
【0060】
図12の一例では、例えば第1補正部COaを構成する各部のうち、まず、右眼用歪み補正部DCaにおいて、画像全体についての歪み補正がなされた後、右眼用縮小補正部SRaで縮小処理をしてから右眼用画素変換位置調整部PAaで画素位置が調整され、最後に、右眼用回転補正部RCaにおいて、画像全体についての回転補正がなされる、という手順となっている。なお、左眼用縮小補正部SRbが設けられている第2補正部CObにおいても、同様の処理がなされる。
【0061】
なお、上記態様において、例えば組付後調整装置AAとしての第1及び第2補正部COa,CObは、縮小処理回路である右眼用及び左眼用縮小補正部SRa,SRbにおける変換で小さくなった映像信号の画素数と表示素子80における表示有効領域IMEの画素数との差の範囲内で、表示位置の平行移動及び表示位置の回転のうち少なくともいずれか、あるいはその両方を行う態様としてもよい。
【0062】
本実施形態においても、光学系(光学ユニットOU)の組付後において、新たに左右間での映像位置のずれが発生していても、組付後調整装置AAとしての第1及び第2補正部COa,CObによって第1表示装置100Aや第2表示装置100Bの表示状態の調整をすることで、そのずれを補正できる。
【0063】
〔第3実施形態〕
以下、
図13等を参照して、第3実施形態に係る虚像表示装置等について説明する。
図13は、本実施形態の虚像表示装置300について概要を説明する外観斜視図であり、
図14は、虚像表示装置300の内部構造について一例を説明する側方断面図である。また、
図15は、虚像表示装置300において発生する歪みや回転の補正について説明するための概念図である。
【0064】
図13及び
図14に示すように、本実施形態では、縦方向(Y方向、垂直方向)の導光を行う点において、横方向(X方向、水平方向)に導光する第1実施形態等に例示したものと異なっている。一方、本実施形態における組付後調整装置AAについては、第1実施形態等に例示した第1及び第2補正部COa,COb(
図8等参照)と同様であるので、詳しい説明を省略する。
【0065】
図13に示すように、本実施形態における虚像表示装置300は、右眼用の第1表示装置300Aと、左眼用の第2表示装置300Bと、これらを中央で繋ぐ指示部材としてのブリッジ部302とを有している。すなわち、ブリッジ部302は、第1表示装置300Aを構成する光学系と第2表示装置300Bを構成する光学系とを組み付ける組付部材ASとして機能する。
【0066】
なお、第1表示装置300Aと第2表示装置300Bとは、光学的に左右対称(鏡対称)で同等の構造を有するため、
図14では、第1表示装置300Aについてのみ示し、第2表示装置100Bについては図示や説明を省略する。
【0067】
図14に示すように、本実施形態の虚像表示装置300において、右眼用の第1表示装置300Aは、光学的な要素として、表示素子380と導光系390とを備える。導光系390は、表示素子380からの画像光MLを射出瞳EPの形成位置に導く。
【0068】
表示素子380については、第1実施形態等の表示素子80等と同様であるので、ここでは説明を省略し、形状的な事項については、後述する。
【0069】
導光系390は、投射光学系321と、プリズム322と、シースルーミラー323とを備える。投射光学系321は、表示素子380から射出された画像光MLを平行光束に近い状態に集光する。投射光学系321は、図示の例では単レンズであり、入射面と、射出面とを有する。プリズム322は、入射面と、内反射面と、射出面とを有し、投射光学系321から射出された画像光MLを入射面に屈折させつつ入射させ、内反射面で全反射させ、射出面から屈折させつつ射出させる。シースルーミラー323は、プリズム322から射出された画像光MLを射出瞳EPに向けて反射する。射出瞳EPは、表示面SSa上の各点からの画像光が所定の発散状態又は平行状態で表示面SSa上の各点の位置に対応する角度方向から重畳するように入射する位置となっている。図示の導光系390は、FOV(field of view)が44°となっている。導光系390による虚像の表示領域は矩形であり、上記44°は対角方向となる。
【0070】
投射光学系321とプリズム322とは、表示素子380とともにケース51に収納されている。ケース51は、遮光性の材料で形成され、表示素子380を動作させる不図示の駆動回路を内蔵している。ケース51の開口は、プリズム322からシースルーミラー323に向かう画像光MLを妨げないサイズを有する。ケース51の開口については、単なる開口としないで光透過性を有する保護カバーで覆うことができる。ケース51に対しては、支持板54を介してシースルーミラー323が支持されている。ケース51又は支持板54は、ブリッジ部302(
図13参照)に支持されていて、支持板54とシースルーミラー323とによって外観部材303が構成される。なお、シースルーミラー323の奥にインナーレンズ331が配置される。
【0071】
導光系390は、軸外し光学系である。つまり、導光系390を構成する投射光学系321、プリズム322、及びシースルーミラー323は、軸外し光学系を形成するように配置されている。なお、導光系390が軸外し光学系であるとは、導光系390を構成する光学素子321,322,323において、少なくとも1つの反射面又は屈折面への光線の入射の前後で光路が全体として折れ曲がることを意味する。また、上記のような軸外し光学系である導光系390の光軸AXは、横断面で見た場合、Z字状の配置となっている。つまり、図示において、投射光学系321から内反射面までの光路と、内反射面からシースルーミラー323までの光路と、シースルーミラー323から射出瞳EPまでの光路とが、Z字状に2段階で折り返される配置となっている。
【0072】
なお、図示において、中間像MMは、プリズム322とシースルーミラー323との間に形成されている。
【0073】
射出瞳EPには、シースルーミラー323を通過した外界光HLも入射する。つまり、虚像表示装置300を装着した装着者USは、外界像に重ねて、画像光MLによる虚像を観察することができる。
【0074】
特に、以上のような虚像表示装置300では、軸外し光学系で構成される導光系390に起因して、歪曲収差が発生する。本実施形態では、組付後調整装置AAの第1及び第2補正部COa,COb(
図8等参照)において、このような導光系390において発生している歪曲収差まで併せて加味した補正がなされる。具体的には、
図15において概念的に示すように、発生する収差(歪み)を相殺するように逆の歪みを生じさせる補正をするために、一連の処理が行われる。言い換えると、歪み補正回路としての第1及び第2補正部COa,CObは、導光系390によって形成される歪みを相殺する歪み補正をする。まず、
図15のうち、第1欄δ1に示す第1状態M1に示す表示領域IMにおける画像を元画像とした場合に、これに対して、歪み補正がなされ、表示有効領域IME内における表示領域IMが、第2欄δ2に示す第2状態M2となる。なお、第2状態M2では、光学系での反転等を考慮して、第1状態M1の元画像に対して画像の上下や左右が反転している。第2状態M2から、さらに解像度変換(例えば縮小変換等)が行われ、第3欄δ3に示す第3状態M3となる。さらに、回転補正が行われて、第4欄δ4に示す第4状態M4となり、最後に第5欄δ5において破線で示す第5状態M5にあるように平行移動が行われる。
【0075】
また、上記の一変形例として、導光系390によって形成される歪みを相殺する歪み補正回路としての右眼用及び左眼用歪み補正部DCa,DCbによる補正に際して、表示素子80から射出すべき画像光HLの波長帯域に応じて異なる度合で補正するものとしてもよい。すなわち、
図15のうち、第2欄δ2に示す第2状態M2に対応するものとして、第6欄δ6に示す第6状態M6のように、、画像光HL赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各波長帯域によって、これらにそれぞれ対応する表示領域IMa,IMb,IMcの歪み補正の程度が異なっていてもよい。
【0076】
以上のように、本実施形態では、組付部材ASとしてのブリッジ部302により光学系を高精度に組付後において、新たに左右間での映像位置のずれが発生していても、組付後調整装置AAによって第1表示装置300Aや第2表示装置300Bの表示状態の調整をすることで、そのずれを補正できる。
【0077】
〔変形例及びその他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0078】
上記各実施形態では、組付部材ASによる組付け後において表示状態の調整をする組付後調整装置AAとして、第1及び第2補正部COa,CObのような補正回路による画像処理(電子的処理)により行うものを示したが、虚像表示装置100,300等を構成する組付後調整装置AAは、上記に限らず、種々の態様とすることが考えられる。例えば第1及び第2補正部COa,CObと併用して、あるいはこれに代えて、例えば
図16に例示するような治具JGのように、調芯可能な機構を設けることで、組付後調整としての補正を物理的な機構を用いて行うものとしてもよい。なお、
図16は、
図14に対応する図であり、
図16の一例では、
図14に示す状態において、治具JGは、投射光学系321のうち光学的機能を有しない側面に当接して、投射光学系321の調芯を可能としている。
【0079】
さらに、上記において、組付後調整装置AAとしての第1及び第2補正部COa,COb等を構成する第1及び第2補正量メモリーCMa,CMbや、第1及び第2補正回路CCa,CCb等についても、種々の態様とすることができる。例えば、上記一例では、これらが左右にそれぞれ分かれて設けられているが、左右に分けずに1つのメモリー内に記憶されていてもよい。また、例えば虚像表示装置100等に設けられる他の各種メモリーと共用するメモリーや回路等によって第1及び第2補正量メモリーCMa,CMbや、第1及び第2補正回路CCa,CCb等が構成されてもよい。また、これらは、虚像表示装置100の各表示装置100A,100Bの内部等に設ける場合のほか、種々の箇所に設ける態様が考えられ、例えば、
図7等に例示した制御装置(コントローラー)CT内に設ける構成とすることも考えられる。
【0080】
また、上記では、組付部材ASの一例として、鏡筒BRやケース部材CS、フレーム102やブリッジ部302を示したが、組付部材ASについては、第1表示装置100A等と第2表示装置100B等とについて組付けを可能とする種々のものを採用できる。例えば、鏡筒等を有さず、プリズムで光学系が構成されるようなものの場合であっても、当該プリズムを位置決めするための固定部材や接着部材等は、組付部材ASに該当すると言える。また、例えば複数のプリズム等を接合する場合における接合部分等も、組付部材ASに該当し得る。
【0081】
また、上記では、例えば調整マージンMDについて、上下左右について、±20画素分としているが、調整用のマージンについては、これに限らず種々の態様が可能であり、例えば上下方向(y方向、垂直方向)と左右方向(x方向、水平方向)とで、マージン数が異なっている、すなわち可能な調整量が異なっているものとしてもよい。例えば、
図1等に示した透視型導光ユニット100Cを有する一体的な部材で光学系が形成される場合や、
図13に示したブリッジ部302により光学系を組み付ける場合には、光学系の組付け後の各工程において、例えばねじり応力等が発生すると、左右方向(x方向)よりも上下方向(y方向)について大きなずれが発生する可能性がある。一方、
図6を参照して説明したように、上下方向(y方向)すなわち縦方向についてのずれは、その影響がより大きく、極力減らしたい妖精が強い場合がある。そこで、例えば、上下方向(y方向、垂直方向)についての補正量を、左右方向(x方向、水平方向)についての補正量よりも大きくする態様とすることが考えられる。
【0082】
また、第3実施形態では、非回転対称軸の光学系について説明したが、例えばいわゆるバードバスタイプのものであって回転対称軸の光学系において、本願を適用することも可能である。
【0083】
また、第1及び第2虚像形成光学部101a,101bやシースルーミラー323の外界側には、透過光を制限することで調光を行う調光デバイスを取り付けることができる。調光デバイスは、例えば電動で透過率を調整する。調光デバイスとして、ミラー液晶、電子シェード等を用いることができる。調光デバイスは、外光照度に応じて透過率を調整するものであってもよい。調光デバイスによって外界光を遮断する場合、外界像の作用を受けていない虚像のみを観察することができる。また、本願発明の虚像表示装置は、外光を遮断し画像光のみを視認させるいわゆるクローズ型の頭部搭載型表示装置(HMD)に適用できる。この場合、虚像表示装置と撮像装置とで構成されるいわゆるビデオシースルーの製品に対応させたりするものとしてもよい。
【0084】
以上では、虚像表示装置100,300が頭部に装着されて使用されることを前提としたが、上記虚像表示装置100,300は、頭部に装着せず双眼鏡のようにのぞき込むハンドヘルドディスプレイとしても用いることができる。つまり、本発明において、ヘッドマウントディスプレイには、ハンドヘルドディスプレイも含まれる。
【0085】
また、以上のうち、例えば、光軸(射出光軸)AXを、前方の+Z方向に対して10°程度下向きに傾いて延びるように構成することも考えられる。光軸AXを水平軸であるZ軸に対して前方側で10°程度下向きにすることにより、虚像を観察する装着者USの眼EYの疲れを低減することができる。この場合、パネル側で補正に関して、必要に応じて、表示素子80の形状を適宜変更することができる。
【0086】
具体的な一態様における虚像表示装置は、右眼用の第1表示装置と、左眼用の第2表示装置と、第1表示装置と第2表示装置とを組み付ける組付部材と、組付部材により組み付けられた第1表示装置と第2表示装置とについて表示状態の調整をする組付後調整装置とを備える。
【0087】
上記虚像表示装置では、第1表示装置と第2表示装置とを組付部材により組み付けた後において、新たに左右間での映像位置のずれが発生していても、組付後調整装置によって第1表示装置や第2表示装置の表示状態の調整をすることで、そのずれを補正できる。
【0088】
具体的な側面において、組付部材は、第1表示装置と第2表示装置との組付けに際して、左右の相対的な姿勢を調整する。この場合、組付部材において、左右の相対的なずれを調整して左右でのバランスが取れた視認が可能な状態にできる。
【0089】
別の側面において、組付部材による組付けに際しての調整量は、組付後調整装置における再度の調整での調整量よりも大きい。この場合、組付部材において、大きなずれを含めた調整を行って精度の高い調整をした上で、組付後調整装置における再度の調整では、いわば微調整的な調整がなされる。
【0090】
さらに別の側面において、第1表示装置及び第2表示装置は、パネル型の表示素子と、表示素子から射出された画像光を導く導光系とを含み、組付部材は、表示素子と導光系との相対的な位置調整をしつつ組付けをし、組付後調整装置は、表示素子における表示領域の調整をする。この場合、パネル型の表示素子に対する導光系の相対的な位置調整が組付部材によりなされた後に、他の製造過程において当該位置調整にずれが生じても、組付後調整装置においてパネル型の表示素子での表示領域の調整を行うことで、そのずれを補正できる。
【0091】
さらに別の側面において、表示素子の表示領域は、表示素子の表示有効領域よりも狭く、表示素子は、表示有効領域において、表示領域を可変とするためのマージン領域を有し、組付後調整装置は、入力される映像信号を変換して表示素子に対して出力する映像処理回路を有する。この場合、表示有効領域と表示領域との差から形成されるマージン領域を利用した画像処理が可能になる。
【0092】
さらに別の側面において、組付後調整装置は、映像処理回路として、入力される映像信号よりも画素数の大きな映像信号に変換する拡大処理回路を含む。この場合、入力される映像信号を、表示素子の表示有効領域に対応した映像信号に変換できる。
【0093】
さらに別の側面において、組付後調整装置は、拡大処理回路における変換で大きくなった映像信号の画素数の範囲内で、表示位置の平行移動及び表示位置の回転のいずれかを行う。この場合、例えば組付後調整装置における画像処理に伴う画像欠け等を抑制または回避できる。
【0094】
さらに別の側面において、組付後調整装置は、映像処理回路として、入力される映像信号を、表示素子における表示有効領域の画素数よりも画素数の小さな映像信号に変換する縮小処理回路を含む。この場合、組付後調整装置における画像処理のためのマージン領域を確保できる。
【0095】
さらに別の側面において、組付後調整装置は、縮小処理回路における変換で小さくなった映像信号の画素数と表示素子における表示有効領域の画素数との差の範囲内で、表示位置の平行移動及び表示位置の回転のいずれかを行う。この場合、例えば組付後調整装置における画像処理に伴う画像欠け等を抑制または回避できる。
【0096】
さらに別の側面において、組付後調整装置は、第1表示装置と第2表示装置とに応じて2つに分岐された映像信号について、分岐後の一方と他方とで異なる変換処理をする。この場合、第1表示装置と第2表示装置とのそれぞれに適応した変換処理がなされる。
【0097】
さらに別の側面において、映像処理回路は、導光系によって形成される歪みを相殺する歪み補正をする歪み補正回路を含み、歪み補正回路は、表示素子から射出すべき画像光の波長帯域に応じて異なる度合で補正する。この場合、色収差に対応した補正が可能になる。
【0098】
さらに別の側面において、導光系は、表示素子から射出された画像光を収束させる投射光学系と、投射光学系から射出された画像光を入射面に屈折させつつ入射させ、内反射面で全反射させ、射出面から屈折させつつ射出させるプリズムと、プリズムから射出された画像光を瞳位置に向けて反射するとともに外界光を透過させるシースルーミラーとを有する。この場合、シースルーミラーと投射光学系とプリズムとによりさらなる光学性能の向上を図りつつ、装置の小型化ができる。
【0099】
さらに別の側面において、プリズムの内反射面での折返しとシースルーミラーでの折返しとの2段階での折返しにより、Z字状の光路が形成される。この場合、Z字状に光路を折り曲げることで、装置の小型化を図れる。
【0100】
さらに別の側面において、導光系は、軸外し光学系を形成する。この場合、解像度を維持しつつ、光学系の小型化、ひいては装置全体の小型化を達成することができる。
【0101】
さらに別の側面において、組付後調整装置は、視認させる虚像の位置調整として、第1表示装置と第2表示装置とが並ぶ第1方向に交差する第2方向についての調整を行う。この場合、第1表示装置と第2表示装置とが並ぶ方向すなわち観察者の眼の並ぶ横方向に対して縦方向となる方向について虚像の表示位置を調整できる。
【0102】
具体的な一態様における光学ユニットは、右眼用の第1表示装置と、左眼用の第2表示装置と、第1表示装置と第2表示装置とを組み付ける組付部材と、組付部材により組み付けられた第1表示装置と第2表示装置とについて表示状態の調整をする組付後調整装置とを備える。
【0103】
上記光学ユニットでは、第1表示装置と第2表示装置とを組付部材により組み付けた後において、新たに左右間での映像位置のずれが発生していても、組付後調整装置によって第1表示装置や第2表示装置の表示状態の調整をすることで、そのずれを補正できる。
【0104】
具体的な一態様における虚像表示装置の調整方法は、右眼用の第1表示装置と左眼用の第2表示装置とを備える虚像表示装置の調整方法であって、左右の姿勢を調整しつつ組み付けられた第1表示装置と第2表示装置とについて、表示状態の調整をする。
【0105】
上記調整方法では、左右の姿勢を調整しつつ組み付けられた第1表示装置と第2表示装置とについて、組み付けた後において、新たに左右間での映像位置のずれが発生していても、第1表示装置や第2表示装置の表示状態の調整をすることで、そのずれを補正できる。
【0106】
具体的な一態様における虚像表示装置の製造方法は、右眼用の第1表示装置と左眼用の第2表示装置とを備える虚像表示装置の製造方法であって、第1表示装置と第2表示装置とについて、左右の姿勢を調整しつつ組み付け、組み付けられた第1表示装置と第2表示装置とについて、表示状態の調整をする。
【0107】
上記製造方法では、左右の姿勢を調整しつつ組み付けられた第1表示装置と第2表示装置とについて、組み付けた後において、新たに左右間での映像位置のずれが発生していても、第1表示装置や第2表示装置の表示状態の調整をすることで、そのずれを補正できる虚像表示装置の製造が可能となる。
【符号の説明】
【0108】
10,10a,10b…導光部材、13…表示制御回路、30,30a,30b…投射レンズ、50…中央部材、50A,50B…光透過部、51…ケース、51a…開口、52…保護カバー、54…支持板、80,80a,80b…表示素子、90,90a,90b…導光系、100…虚像表示装置、100A…第1表示装置、100B…第2表示装置、100C…透視型導光ユニット、101a…第1虚像形成光学部、101b…第2虚像形成光学部、102…フレーム、105a…第1像形成本体部、105b…第2像形成本体部、105d…外装部材、300…虚像表示装置、302…ブリッジ部、303…外観部材、321…投射光学系、321,322,323…光学素子、322…プリズム、323…シースルーミラー、331…インナーレンズ、380…表示素子、390…導光系、AA…組付後調整装置、AS…組付部材、AX…光軸、BR,BRa,BRb…鏡筒、CB,CBa,CBb…ケーブル、CCa…第1補正回路、CCb…第2補正回路、CM…補正量メモリー、CMa…第1補正量メモリー、CMb…第2補正量メモリー、COa…第1補正部、COb…第2補正部、CS,CSa,CSb…ケース部材、CT…制御装置、DCa,DCb…歪み補正部、DDa,DDb…ディスプレイドライバ、DG…掘込み部、EP…射出瞳、EY…眼、EYa…右眼、EYb…左眼、FA…調整装置、FCa,FCb…撮像素子、FI…画像処理装置、HL…外界光、HL…画像光、IM…表示領域、IM1,IM2…イメージ、IMA…イメージ、IME…表示有効領域、IMa,IMb,IMc…表示領域、JG…治具、M1~M4…状態、MD…マージン領域、ML…画像光、MM…中間像、MP…主制御部、NA…調整装置、NCa,NCb…撮像素子、NI…画像処理装置、OPa,OPb…OLEDパネル、OU…光学ユニット、PAa,PAb…画素変換位置調整部、PR…突起部、RCa,RCb…回転補正部、SRa,SRb…縮小補正部、SSa…表示面、US…装着者、VB…映像分岐部、α1…上欄、α2…下欄、β1…上欄、β2…下欄、γ1~γ4…第1欄~第4欄、δ1~δ6…第1欄~第6欄