(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 21/00 20060101AFI20241217BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241217BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B41J21/00 Z
B41J2/01 451
B41J2/01 401
H04N1/387 110
(21)【出願番号】P 2020197951
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【氏名又は名称】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】萱原 直樹
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-501000(JP,A)
【文献】特開平11-315484(JP,A)
【文献】特開2012-075088(JP,A)
【文献】国際公開第2019/046740(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 21/00
B41J 2/01
H04N 1/387
D06P 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1模様が
搬送方向と、該搬送方向と交差する方向と、のそれぞれに沿って繰り返し形成された生地を
前記搬送方向へ搬送する搬送部と、
前記搬送部が搬送する前記生地を撮像する撮像部と、
前記搬送部が搬送する前記生地へ印刷を行う印刷部と、
前記第1模様を表現する第1画像データを分割した複数の分割第1画像データの相互の位置関係を変更して、前記第1画像データの四隅が中心となる補正第1画像データを生成する模様補正部と、
前記補正第1画像データと、前記撮像部による前記生地の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、前記補正第1画像データが表現する第2模様に対応する模様領域を前記第2画像データから抽出する模様抽出部と、
前記第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された前記模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成部と、
前記印刷画像データの前記生地への印刷を前記印刷部に実行させる印刷制御部と、を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
第1模様が
搬送方向と、該搬送方向と交差する方向と、のそれぞれに沿って繰り返し形成された生地を
前記搬送方向へ搬送する搬送部と、
前記搬送部が搬送する前記生地を撮像する撮像部と、
前記搬送部が搬送する前記生地へ印刷を行う印刷部と、
前記第1模様を表現する第1画像データと、前記撮像部による前記生地の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、前記第1模様に対応する模様領域を前記第2画像データから抽出する模様抽出部と、
前記第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを分割した複数の分割第3画像データの相互の位置関係を変更して、前記第3画像データの四隅が中心となる補正第3画像データを生成する画像補正部と、
前記補正第3画像データを、抽出された前記模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成部と、
前記印刷画像データの前記生地への印刷を前記印刷部に実行させる印刷制御部と、を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
第1模様が形成された生地を搬送方向へ搬送する搬送部と、
前記搬送部が搬送する前記生地を撮像する撮像部と、
前記搬送部が搬送する前記生地へ印刷を行う印刷部と、
前記第1模様を表現する第1画像データの周囲に余白領域を追加した補正第1画像データを分割することにより、前記第1画像データの四隅のそれぞれを中心とする複数の分割補正第1画像データを生成する模様補正部と、
複数の前記分割補正第1画像データと、前記撮像部による前記生地の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、複数の前記分割補正第1画像データがそれぞれに表現する模様に対応する複数の模様領域を前記第2画像データから抽出する模様抽出部と、
前記第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された前記模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成部と、
前記印刷画像データの前記生地への印刷を前記印刷部に実行させる印刷制御部と、を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
第1模様が
搬送方向と、該搬送方向と交差する方向と、のそれぞれに沿って繰り返し形成された生地を
前記搬送方向へ搬送する搬送工程と、
搬送される前記生地を撮像する撮像工程と、
前記第1模様を表現する第1画像データを分割した複数の分割第1画像データの相互の位置関係を変更して、前記第1画像データの四隅が中心となる補正第1画像データを生成する模様補正工程と、
前記補正第1画像データと、前記生地の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、前記補正第1画像データが表現する第2模様に対応する模様領域を前記第2画像データから抽出する模様抽出工程と、
前記第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された前記模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成工程と、
搬送される前記生地への前記印刷画像データの印刷を行う印刷工程と、を
含むことを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
第1模様が
搬送方向と、該搬送方向と交差する方向と、のそれぞれに沿って繰り返し形成された生地を
前記搬送方向へ搬送する搬送工程と、
搬送される前記生地を撮像する撮像工程と、
前記第1模様を表現する第1画像データと、前記生地の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、前記第1模様に対応する模様領域を前記第2画像データから抽出する模様抽出工程と、
前記第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを分割した複数の分割第3画像データの相互の位置関係を変更して、前記第3画像データの四隅が中心となる補正第3画像データを生成する画像補正工程と、
前記補正第3画像データを、抽出された前記模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成工程と、
搬送される前記生地への前記印刷画像データの印刷を行う印刷工程と、を
含むことを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
第1模様が形成された生地を搬送方向へ搬送する搬送工程と、
搬送される前記生地を撮像する撮像工程と、
前記第1模様を表現する第1画像データの周囲に余白領域を追加した補正第1画像データを分割することにより、前記第1画像データの四隅のそれぞれを中心とする複数の分割補正第1画像データを生成する模様補正工程と、
複数の前記分割補正第1画像データと、前記生地の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、複数の前記分割補正第1画像データがそれぞれに表現する模様に対応する複数の模様領域を前記第2画像データから抽出する模様抽出工程と、
前記第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された前記模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成工程と、
搬送される前記生地への前記印刷画像データの印刷を行う印刷工程と、を
含むことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の規範となる良品を撮影して得られた規範画像の特徴と類似した候補を、検査対象画像内で探索する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、模様が形成された生地を印刷媒体に用いる場合に、搬送される生地を撮像して得られた撮像画像から、模様を抽出することを想定する。このような抽出は、模様の位置や形状に合わせて絵柄を着色する印刷用データの生成のために行う。しかしながら、撮像画像からの模様の抽出結果として得られる情報は、模様の中心座標のみであったりする等、限られた情報であることが多い。そのため、印刷用データを生成するには、模様の抽出結果として得られた情報に基づいて、更に模様領域の四隅を補間演算等により求めたりする必要があり、演算負担が大きかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
印刷装置は、第1模様が搬送方向と、該搬送方向と交差する方向と、のそれぞれに沿って繰り返し形成された生地を前記搬送方向へ搬送する搬送部と、前記搬送部が搬送する前記生地を撮像する撮像部と、前記搬送部が搬送する前記生地へ印刷を行う印刷部と、前記第1模様を表現する第1画像データを分割した複数の分割第1画像データの相互の位置関係を変更して、前記第1画像データの四隅が中心となる補正第1画像データを生成する模様補正部と、前記補正第1画像データと、前記撮像部による前記生地の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、前記補正第1画像データが表現する第2模様に対応する模様領域を前記第2画像データから抽出する模様抽出部と、前記第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された前記模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成部と、前記印刷画像データの前記生地への印刷を前記印刷部に実行させる印刷制御部と、を備える。
【0006】
印刷装置は、第1模様が搬送方向と、該搬送方向と交差する方向と、のそれぞれに沿って繰り返し形成された生地を前記搬送方向へ搬送する搬送部と、前記搬送部が搬送する前記生地を撮像する撮像部と、前記搬送部が搬送する前記生地へ印刷を行う印刷部と、前記第1模様を表現する第1画像データと、前記撮像部による前記生地の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、前記第1模様に対応する模様領域を前記第2画像データから抽出する模様抽出部と、前記第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを分割した複数の分割第3画像データの相互の位置関係を変更して、前記第3画像データの四隅が中心となる補正第3画像データを生成する画像補正部と、前記補正第3画像データを、抽出された前記模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成部と、前記印刷画像データの前記生地への印刷を前記印刷部に実行させる印刷制御部と、を備える。
【0007】
印刷装置は、第1模様が形成された生地を搬送方向へ搬送する搬送部と、前記搬送部が搬送する前記生地を撮像する撮像部と、前記搬送部が搬送する前記生地へ印刷を行う印刷部と、前記第1模様を表現する第1画像データの周囲に余白領域を追加した補正第1画像データを分割することにより、前記第1画像データの四隅のそれぞれを中心とする複数の分割補正第1画像データを生成する模様補正部と、複数の前記分割補正第1画像データと、前記撮像部による前記生地の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、複数の前記分割補正第1画像データがそれぞれに表現する模様に対応する複数の模様領域を前記第2画像データから抽出する模様抽出部と、前記第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された前記模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成部と、前記印刷画像データの前記生地への印刷を前記印刷部に実行させる印刷制御部と、を備える。
【0008】
印刷方法は、第1模様が搬送方向と、該搬送方向と交差する方向と、のそれぞれに沿って繰り返し形成された生地を前記搬送方向へ搬送する搬送工程と、搬送される前記生地を撮像する撮像工程と、前記第1模様を表現する第1画像データを分割した複数の分割第1画像データの相互の位置関係を変更して、前記第1画像データの四隅が中心となる補正第1画像データを生成する模様補正工程と、前記補正第1画像データと、前記生地の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、前記補正第1画像データが表現する第2模様に対応する模様領域を前記第2画像データから抽出する模様抽出工程と、前記第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された前記模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成工程と、搬送される前記生地への前記印刷画像データの印刷を行う印刷工程と、を含む。
【0009】
印刷方法は、第1模様が搬送方向と、該搬送方向と交差する方向と、のそれぞれに沿って繰り返し形成された生地を前記搬送方向へ搬送する搬送工程と、搬送される前記生地を撮像する撮像工程と、前記第1模様を表現する第1画像データと、前記生地の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、前記第1模様に対応する模様領域を前記第2画像データから抽出する模様抽出工程と、前記第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを分割した複数の分割第3画像データの相互の位置関係を変更して、前記第3画像データの四隅が中心となる補正第3画像データを生成する画像補正工程と、前記補正第3画像データを、抽出された前記模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成工程と、搬送される前記生地への前記印刷画像データの印刷を行う印刷工程と、を含む。
【0010】
印刷方法は、第1模様が形成された生地を搬送方向へ搬送する搬送工程と、搬送される前記生地を撮像する撮像工程と、前記第1模様を表現する第1画像データの周囲に余白領域を追加した補正第1画像データを分割することにより、前記第1画像データの四隅のそれぞれを中心とする複数の分割補正第1画像データを生成する模様補正工程と、複数の前記分割補正第1画像データと、前記生地の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、複数の前記分割補正第1画像データがそれぞれに表現する模様に対応する複数の模様領域を前記第2画像データから抽出する模様抽出工程と、前記第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された前記模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成工程と、搬送される前記生地への前記印刷画像データの印刷を行う印刷工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図2Aは搬送される生地とその近傍の構成を上方から下方を向く視点により示す図、
図2Bは
図2Aに示す構成の一部を上流から下流を向く視点により示す図。
【
図3】第1実施形態の印刷処理を示すフローチャート。
【
図4】ステップS100の詳細を示すフローチャート。
【
図5】模様画像データに対する分割データシフトの手順を説明するための図。
【
図6】第1実施形態のステップS130を具体例により説明するための図。
【
図7】第1実施形態のステップS140,S150を具体例により説明するための図。
【
図8】第2実施形態の印刷処理を示すフローチャート。
【
図9】第2実施形態のステップS130を具体例により説明するための図。
【
図10】第2実施形態のステップS145,S150を具体例により説明するための図。
【
図11】第3実施形態の印刷処理を示すフローチャート。
【
図12】第3実施形態を具体例により説明するための図。
【
図13】第2変形例の分割データシフトを説明するための図。
【
図14】第2変形例のステップS130を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお各図は、本実施形態を説明するための例示に過ぎない。各図は例示であるため、比率や形状が正確でなかったり、互いに整合していなかったり、一部が省略されていたりする場合がある。
【0013】
1.装置構成:
図1は、本実施形態にかかる印刷装置10の構成を簡易的に示している。
印刷装置10は、印刷方法を実行する。印刷装置10は、制御部11、表示部13、操作受付部14、撮像部15、搬送部16、印刷部17、記憶部18等を備える。制御部11は、プロセッサーとしてのCPU11a、ROM11b、RAM11c等を有する一つ又は複数のICや、その他の不揮発性メモリー等を含んで構成される。
【0014】
制御部11では、プロセッサーつまりCPU11aが、ROM11bや、その他のメモリー等に保存された一つ以上のプログラム12に従った演算処理を、RAM11c等をワークエリアとして用いて実行することにより、印刷装置10を制御する。制御部11は、プログラム12に従うことにより、模様登録部12a、模様補正部12b、模様抽出部12c、画像補正部12d、印刷画像生成部12e、印刷制御部12f等として機能する。なお、プロセッサーは、一つのCPUに限られることなく、複数のCPUや、ASIC等のハードウェア回路により処理を行う構成であってもよいし、CPUとハードウェア回路とが協働して処理を行う構成であってもよい。
【0015】
表示部13は、視覚情報を表示するための手段であり、例えば、液晶ディスプレイや、有機ELディスプレイ等により構成される。表示部13は、ディスプレイと、ディスプレイを駆動するための駆動回路とを含む構成であってもよい。操作受付部14は、ユーザーによる操作を受け付けるための手段であり、例えば、物理的なボタンや、タッチパネルや、マウスや、キーボード等によって実現される。むろん、タッチパネルは、表示部13の一機能として実現されるとしてもよい。表示部13や操作受付部14は、印刷装置10の構成の一部であってもよいが、印刷装置10に対して外付けされた周辺機器であってもよい。
【0016】
搬送部16は、制御部11による制御下で印刷媒体を搬送する機構である。本実施形態では、印刷媒体として、ジャカード織りされた生地やレース生地のような、糸や繊維の織り方を工夫することにより立体感の有る模様が形成された生地を想定する。生地には、一つあるいは一まとまりの何らかの模様が、繰り返し並ぶように形成されている。以下では、一つあるいは一まとまりの模様を、一つの模様として扱う。
【0017】
搬送部16は、例えば、ロール状に巻かれた印刷前の生地を搬送の下流へ繰り出す繰り出しローラー、繰り出された生地をさらに搬送するためのベルトやローラー、印刷が終了した生地を再びロール状に巻いて回収する巻き取りローラー、各ローラーやベルトを回転させるためのモーター等の構成を有する。以下では、搬送部16による搬送方向の上流、下流を、単に、上流、下流とも記載する。
【0018】
撮像部15は、制御部11による制御下で、搬送部16が搬送する生地を撮像する。撮像部15は、生地を照射する光源、生地からの反射光を受光して撮像結果としての画像データを生成し出力する撮像素子等の構成を有する。
【0019】
印刷部17は、制御部11による制御下で、搬送部16が搬送する生地へ印刷を行う。印刷部17は、撮像部15よりも下流に設けられている。印刷部17は、制御部11から送信される印刷画像データに基づいて生地への印刷を行う。印刷部17は、例えば、インクジェット方式によりシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等といった複数の色のインクを吐出して印刷を実行可能である。インクジェット方式によれば、印刷部17は、画素毎に各インクのドットオンまたはドットオフを規定した印刷画像データに基づいてインクのドットを不図示のノズルから吐出することにより、生地への印刷を行う。
【0020】
記憶部18は、不揮発性メモリーやハードディスクドライブ等といった記憶手段である。記憶部18を制御部11の一部と解してもよい。また、RAM11cを記憶部18の一部と解してもよい。
【0021】
印刷装置10を、記録装置、画像形成装置、プリンター等と呼んでもよい。印刷装置10は、独立した一つの装置によって実現されるだけでなく、通信インターフェイスやネットワークを介して互いに通信可能に接続した複数の装置によって実現されてもよい。複数の装置により構成される印刷装置10を、印刷システム10と呼んでもよい。
【0022】
印刷システム10は、例えば、撮像部15、搬送部16および印刷部17を含んだプリンターと、制御部11として機能する一台以上の情報処理装置と、を含んで構成される。情報処理装置は、例えば、パーソナルコンピューター(PC)、サーバー、スマートフォン、タブレット型端末、或いはそれらと同程度の処理能力を有する装置である。印刷システム10において、制御部11を担う装置を、画像処理装置、印刷制御装置等と呼んでもよい。むろん、印刷システム10を構成する一部の装置を発明として捉えることも可能である。
【0023】
図2Aは、搬送される生地30と生地30近傍の構成とを、上方から下方を向く視点により示している。
図2Aでは、生地30に予め形成されている模様については描写を省いている。
図2Aでは、搬送部16による生地30の搬送方向を、符号D1により示している。符号22は、搬送部16の一部としての無端ベルト22である。無端ベルト22に乗せられた状態の生地30は、無端ベルト22が回転することにより上流から下流へ搬送される。
【0024】
図2Aに示すように、無端ベルト22の上方には、キャリッジ20が配設されている。キャリッジ20は、搬送方向D1と交差する方向D2に沿って往復移動可能である。ここで言う交差とは直交であるが、直交には、厳密な直交だけでなく、製品の製造上生じる誤差が含まれると解してよい。キャリッジ20は、方向D2へ長尺なガイド部材21に沿って移動する。方向D2を、キャリッジ20や印刷ヘッド19の主走査方向とも言う。また、方向D2を、生地30の幅方向とも言う。
【0025】
キャリッジ20は、印刷ヘッド19を搭載している。つまり、印刷ヘッド19は、キャリッジ20と共に幅方向D2に沿って往復移動する。このようなキャリッジ20や印刷ヘッド19は、印刷部17を構成する。図示はしていないが、印刷ヘッド19は、無端ベルト22と相対する下面において複数のノズルを開口させている。印刷ヘッド19は、キャリッジ20と共に幅方向D2に沿って移動しながら、印刷画像データに基づいてノズルからインクを吐出する。
【0026】
図2Aに示すように、無端ベルト22の上方であって、キャリッジ20および印刷ヘッド19よりも上流の所定位置に、撮像部15が配設されている。
図2Bは、
図2Aに示した構成の一部を、上流から下流を向く視点により示している。撮像部15は、無端ベルト22と相対する下面を撮像面15aとしており、撮像面15aを介して無端ベルト22上の生地30を撮像する。撮像部15は、例えば、内部において幅方向D2に沿って複数の撮像素子を並べたラインスキャン型のカメラである。撮像部15は、撮像面15aに設けた不図示のレンズ及び撮像素子を介して、ライン単位の撮像を繰り返す。
図2Bでは、撮像部15による幅方向D2の撮像範囲を破線により例示している。撮像部15は、レンズの機能により、幅方向D2において無端ベルト22のほぼ全範囲を撮像可能である。
【0027】
撮像部15の構成は、
図2A,2Bの例に限定されない。例えば、複数の撮像部15が無端ベルト22の上方において幅方向D2に沿って並び、複数の撮像部15の各々が幅方向D2における無端ベルト22の全範囲のうちの一部範囲を分担して撮像する構成であってもよい。あるいは、撮像部15は、複数の撮像素子を幅方向D2における無端ベルト22のほぼ全範囲に亘って並べて構成されたラインセンサーであってもよい。あるいは、撮像部15は、印刷ヘッド19がキャリッジ20に搭載されているのと同様に、幅方向D2に沿って移動可能なキャリッジに搭載され、キャリッジにより幅方向D2へ移動しながら無端ベルト22上を撮像する構成であってもよい。
以下に、印刷方法について幾つかの実施形態を説明する。
【0028】
2.第1実施形態:
図3は、制御部11がプログラム12に従って実行する第1実施形態にかかる印刷処理を、フローチャートにより示している。
ステップS100では、制御部11の模様登録部12aは、生地30に形成された模様を表現する模様画像データを記憶部18へ登録する。模様画像データは「第1画像データ」に該当し、ステップS100は、登録工程に該当する。
【0029】
図4は、ステップS100の詳細を、フローチャートにより示している。
ステップS102では、模様登録部12aは、生地30の模様を表現する基本画像データを取得する。生地30は、例えば、デザイナーによってデザインされた一つの模様が繰り返し織り込まれた織物である。そのため、基本画像データは、デザインや製図のための所定のソフトウェアを用いて予め生成された、前記一つの模様を表現する画像データであるとする。模様登録部12aは、ユーザーの操作に従って、例えば印刷装置10の外部のPCから、PCに保存されている基本画像データを入力し、入力した基本画像データを記憶部18に保存する。
【0030】
ステップS104では、模様登録部12aは、生地30のプレスキャンにより生成された画像データであるプレスキャンデータを取得する。プレスキャンとは、後述のステップS110で開始する生地30の撮像に先駆けて行う読取や撮像を意味する。例えば、ユーザーは印刷装置10の外部のスキャナーに生地30を予めスキャンさせる。そして、模様登録部12aは、このスキャンによって生成された画像データを、前記スキャナーから入力してプレスキャンデータとして記憶部18に保存する。
【0031】
あるいは、プレスキャンは撮像部15が実行するとしてもよい。例えば、制御部11は、搬送部16に生地30の搬送を開始させ、生地30の先端を、撮像部15よりも所定距離だけ下流の位置まで到達させたタイミングで、生地30の搬送を停止させる。生地30の先端とは、生地30の下流を向く端部である。撮像部15は、搬送により撮像部15の下を通過する生地30を撮像し、模様登録部12aは、この撮像によって生成された画像データを、撮像部15から入力してプレスキャンデータとして記憶部18に保存する。
【0032】
ステップS106では、模様登録部12aは、ステップS102で取得した基本画像データと、ステップS104で取得したプレスキャンデータとを対比して、プレスキャンデータにおいて、生地30の一つの模様に対応する模様領域を抽出する。このとき、模様登録部12aは、画像認識技術を用いて、基本画像データとの類似度がより高い画像領域をプレスキャンデータ内で抽出し、この画像領域を模様領域とする。
【0033】
そして、ステップS108では、模様登録部12aは、ステップS106で抽出した模様領域に該当する画像データを、模様画像データとして記憶部18に保存する。以上により、模様画像データの登録が完了する。
図4に従った説明によれば、模様画像データは、プレスキャンデータの少なくとも一部と言える。
ただし、模様登録部12aは、基本画像データそのものを模様画像データとして記憶部18に登録することにより、ステップS100を簡易化してもよい。
【0034】
ステップS110では、模様補正部12bは、ステップS100で登録された模様画像データに対し、複数の分割模様画像データの相互の位置関係を変更して模様画像データの四隅が中心となる補正模様画像データに変換する処理を行う。ステップ110における模様画像データに対する処理を「分割データシフト」と称する。分割模様画像データは「分割第1画像データ」に該当し、補正模様画像データは「補正第1画像データ」に該当する。ステップS110は「模様補正工程」に該当する。
【0035】
図5を参照して、模様画像データに対する分割データシフトの手順を説明する。
図5には、ステップS100で登録された模様画像データ40を例示している。模様画像データ40が表現する模様は「第1模様」に該当する。模様画像データ40の形状は矩形と解してよい。
図5の例では、模様画像データ40は、花びらの形をモチーフにしてデザインされた第1模様を表現している。むろん、このような模様は、より複雑であってもよい。なお、生地30には、模様画像データ40と同様の第1模様が、搬送方向D1と幅方向D2とのそれぞれに沿って繰り返し形成されている。本実施形態では、制御部11が扱う模様画像データや、撮像画像データや、印刷画像データといった各画像データの向きについても、搬送方向D1および幅方向D2に対応させて説明する。また、簡単に搬送方向D1を縦方向、幅方向D2を横方向とも言う。
【0036】
模様補正部12bは、模様画像データ40を縦方向および横方向のそれぞれにおいて2等分することにより、4つの分割模様画像データ40a,40b,40c,40dに分ける。分割模様画像データ40a,40b,40c,40dはそれぞれが、模様画像データ40の四隅の頂点41a,41b,41c,41dを一つずつ有する。
図5の例では、分割模様画像データ40aは頂点41aを有し、分割模様画像データ40bは頂点41bを有し、分割模様画像データ40cは頂点41cを有し、分割模様画像データ40dは頂点41dを有する。
【0037】
模様補正部12bは、頂点41a,41b,41c,41dが一点で重なるように、分割模様画像データ40a,40b,40c,40dの相互の位置関係を変更する。位置の変更順序は必ずしも固定する必要は無いが、
図5によれば、模様補正部12bは、先ず、分割模様画像データ40a,40b,40c,40dの位置関係の中で、幅方向D2の正の向きにおいて最も端に在る分割模様画像データ40b,40dの組を、幅方向D2の負の向きの端の位置へ移動させる。つまり、分割模様画像データ40a,40cの組と、分割模様画像データ40b,40dの組との位置を入れ替える。この時点で、頂点41aと頂点41bとが重なり、かつ、頂点41cと頂点41dとが重なる。
【0038】
このような入れ替えをした状態で、模様補正部12bは、更に、搬送方向D1の上流の向きにおいて最も端に在る分割模様画像データ40d,40cの組を、搬送方向D1の下流の向きの端の位置へ移動させる。つまり、分割模様画像データ40b,40aの組と、分割模様画像データ40d,40cの組との位置を入れ替える。この結果、頂点41a,41b,41c,41dが重なった点49を中心とする補正模様画像データ42が生成される。上述したように模様画像データ40が矩形であれば、補正模様画像データ42も同様に矩形である。補正模様画像データ42が表現する模様は「第2模様」に該当する。なお、
図5で模様画像データ40内や補正模様画像データ42内に示した、分割模様画像データ40a,40b,40c,40dを区画するための実線や破線は、実際には無く、第1模様や第2模様を構成しないことは言うまでもない。
【0039】
ステップS120では、制御部11は、搬送部16が所定の速度で搬送する生地30を対象とした撮像を撮像部15に開始させる。つまり、ステップS120では、生地30の「搬送工程」が開始される。また、ステップS120により「撮像工程」が開始される。撮像部15が生地30の撮像により生成したライン単位の画像データが、順次、制御部11へ出力される。制御部11は、撮像部15からのライン単位の画像データを順次保存することにより、2次元状の撮像画像データを取得する。撮像画像データは「第2画像データ」に該当する。
【0040】
ステップS130では、模様抽出部12cは、ステップS110の分割データシフトにより模様画像データから変換された補正模様画像データと、ステップS120の撮像により生成された撮像画像データとを対比することにより、補正模様画像データが表現する第2模様に対応する模様領域を撮影画像データから抽出する。生地30の撮像により生成された撮像画像データ内には、当然に、第1模様が複数並んで表現されている。ステップS130は「模様抽出工程」に該当する。
【0041】
模様抽出部12cは、画像認識技術を用いて、補正模様画像データとの類似度が所定以上に高い画像領域を模様領域として抽出すればよい。具体的には、模様抽出部12cは、補正模様画像データにおける画像のエッジを抽出し、同様に、撮像画像データにおける画像のエッジを抽出する。そして、補正模様画像データにおけるエッジの分布を、撮像画像データにおけるエッジの分布に対して位置をずらしながら、また補正模様画像データを変形させながら、繰り返し比較し、エッジの分布同士の一致度合が所定以上に高評価である領域を、一つの模様領域として抽出する。なお、ステップS130の処理と同様に、上述のステップS106において、模様登録部12aは、対比する画像同士のエッジの分布の一致度合に応じてプレスキャンデータ内の模様領域を抽出することができる。
【0042】
ここで、幅方向D2をX軸、搬送方向D1をY軸と捉えると、撮像画像データは、直交するX・Y軸による2次元平面において座標が定義される。従って、撮像画像データから模様領域を抽出する処理は、撮像画像データ内における模様領域の座標を特定する処理である。より具体的には、模様抽出部12cは、上述したようなエッジ分布の一致度合に応じて一つの模様領域と評価できる撮像画像データ内の領域の中心座標を、一つの模様領域の抽出結果として取得する。模様抽出部12cは、抽出結果として取得した、模様領域の中心座標の情報を、ステップS140,S150の処理のために印刷画像生成部12eへ出力する。
【0043】
図6を参照して、ステップS130の具体例を説明する。
図6では、撮像画像データ50の一部を例示している。また、参考までに、
図6にも補正模様画像データ42を示している。撮像画像データ50内には、模様画像データ40と同様の第1模様が、搬送方向D1と幅方向D2とのそれぞれに沿って繰り返し表現されている。撮像画像データ50内に破線で示す各矩形は、このような第1模様に対応する模様領域51である。一方、撮像画像データ50内に実線で示す各矩形は、補正模様画像データ42が表現する第2模様に対応する模様領域52である。つまり、模様抽出部12cは、補正模様画像データ42に基づく抽出を行うことにより、撮像画像データ50内の複数箇所から、各模様領域52の中心座標の情報を取得する。
図6では、各模様領域52の中心座標を、黒丸にて示している。
図6から解るように、各模様領域52の中心座標は、各模様領域51の四隅に該当する。
【0044】
ステップS140では、印刷画像生成部12eは、第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する着色画像データを、ステップS130で抽出された模様領域の中心座標を四隅とする領域の形状に合うように変形する。着色画像データは「第3画像データ」に該当する。着色画像データは、一つの第1模様に着色すべき色や色の印刷範囲を表現した、予め生成されたカラー画像データである。着色画像データは、例えば、記憶部18に予め保存されている。あるいは、制御部11は、ユーザーの操作に従って、例えば印刷装置10の外部のPCから、PCに保存されている着色画像データを入力し、入力した着色画像データを記憶部18に保存する。
【0045】
撮像画像データにおいて、各模様領域の中心座標は、理想的には搬送方向D1、幅方向D2のそれぞれに沿って一定の間隔で存在する。また、模様領域は、理想的には縦横の長さがそれぞれ所定値の矩形である。しかしながら、搬送される生地30には、歪みや伸び縮み(以下、歪み等)が発生している可能性がある。
図6や、後述の
図7,9,10,12,14では特に描写していないが、ステップS130等で撮像画像データから抽出された複数の模様領域の中心座標の間隔や並び方向等も、このような歪み等の影響を受けた配置となっていることがある。
【0046】
そのため、印刷画像生成部12eは、ステップS130で抽出された中心座標を四隅とする領域個々の形状に合わせて、着色画像データの形状を変形する。変形方法としては、例えば、画像の拡大、縮小、回転、せん断等を含むアフィン変換や、その他の変形方法を用いる。ステップS130で抽出された中心座標を四隅とする領域の形状次第では、結果的にステップS140の変形処理が不要な場合もある。
【0047】
ステップS150では、印刷画像生成部12eは、ステップS140を経た複数の着色画像データを、撮像画像データにおけるステップS130で抽出された中心座標を四隅とする領域の並びに対応させて配置することにより、印刷画像データを生成する。印刷画像データは、ステップS140を経た複数の着色画像データを結合した画像データであり、撮像の対象となった生地30の領域に対して印刷する画像である。このようなステップS140,S150は、第3画像データを、抽出された模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する「印刷画像生成工程」に該当する。
【0048】
ステップS140,S150の具体例を、
図7を参照して説明する。符号60は、着色画像データ60を示している。
図7では、着色画像データ60は、花びらをモチーフにしてデザインされた第1模様に重ねて着色すべき色を表現したカラー画像データである。着色画像データ60は、縦横が模様画像データ40および補正模様画像データ42と同一或いはほぼ同一のサイズの画像と解してよい。また
図7では、
図6と同様に、ステップS130で抽出した中心座標を黒丸にて示している。符号61aは、ステップS130で抽出された中心座標を四隅とする一つの領域(第1領域)の形状に合わせて、着色画像データ60を変形した後の着色画像データ61aを示している。同様に、符号61bは、第1領域に対して幅方向D2に隣接する、ステップS130で抽出された中心座標を四隅とする一つの領域(第2領域)の形状に合わせて、着色画像データ60を変形した後の着色画像データ61bを示している。
【0049】
符号61cは、第2領域に対して幅方向D2に隣接する、ステップS130で抽出された中心座標を四隅とする一つの領域(第3領域)の形状に合わせて、着色画像データ60を変形した後の着色画像データ61cを示している。そして、このような着色画像データ61a,61b,61c…を、撮像画像データ50における第1領域、第2領域、第3領域…の位置関係の通りに結合したものが、印刷画像データ61である。
図7では、着色画像データ61a,61b,61c…の境界を一部破線で示している。第1領域、第2領域、第3領域…は、それぞれが模様領域51に相当する。つまり、印刷画像生成部12eは、ステップS130で抽出された中心座標を四隅とする領域に合わせて着色画像データ60を配置することにより、結果的に、第1模様を表現する模様領域51に合わせて着色画像データ60を配置することができる。
【0050】
図3の破線の矢印で示すように、制御部11は、ステップS120で生地30の撮像を開始して以降、撮像部15から順次得られる撮像画像データに応じて、ステップS130~S150を繰り返す。つまり、制御部11は、撮像部15から順次得られる所定サイズ分の撮像画像データを対象としてステップS130を実行し、ステップS130の結果を受けてステップS140,S150を実行する。
図7に示す印刷画像データ61は、このようなステップS130~S150の一サイクルの結果得られる印刷画像データの例と解してよい。
【0051】
ステップS160では、印刷制御部12fは、ステップS150で生成された印刷画像データの生地30への印刷を開始する。つまり、ステップS160により「印刷工程」が開始される。印刷画像生成部12eは、ステップS140,S150を繰り返すことにより印刷画像データを順次生成し、生成した順に印刷画像データを印刷制御部12fへ出力する。印刷制御部12fは、印刷画像生成部12eから取得した印刷画像データに対して、いわゆる色変換処理やハーフトーン処理といった必要な各処理を適宜施して、印刷部17が印刷に使用する形式の印刷画像データに変換する。印刷制御部12fは、このような変換後の印刷画像データを、一時的にバッファに蓄積してもよい。
【0052】
そして、印刷制御部12fは、前記変換後の印刷画像データを印刷部17に転送し、ステップS120により撮像を開始した生地30の位置が印刷ヘッド19の下に到達した所定のタイミングで、キャリッジ20の移動と印刷画像データに基づく印刷ヘッド19からのインク吐出と、による印刷を印刷部17に開始させる。これにより、印刷画像データを構成する個々の着色画像データが表現するカラー画像が、生地30における個々の模様に合った形で模様に重なって印刷される。
【0053】
搬送部16には、搬送のために回転するローラーやベルトの回転量を検出するエンコーダーが設けられている。印刷制御部12fは、エンコーダーからの検出信号に従って生地30の搬送距離を演算する。従って、印刷制御部12fは、ステップS120により撮像を開始した生地30の位置の、搬送方向D1における現在位置を把握し、当該位置が印刷ヘッド19の下に到達したタイミングで、印刷部17に、生地30への印刷を開始させることができる。
【0054】
ステップS160で印刷を開始した後、制御部11は、印刷を終了するか否かを判定する(ステップS170)。制御部11は、印刷を終了する場合は、“Yes”と判定し、ステップS180の終了処理へ進む。制御部11は、例えば、ユーザーから印刷終了の指示を受けた場合や、予定されていた長さ分の生地30の搬送を終えた場合に、印刷の終了と判定する。
【0055】
ステップS180の終了処理では、制御部11は、撮像部15による生地30の撮像を停止させる。また、制御部11は、最後のステップS130~S150の一サイクルで生成された印刷画像データに基づく印刷を印刷部17に実行させた後、搬送部16や印刷部17の駆動を停止し、
図3のフローチャートを終了する。むろん、制御部11は、巻き取りローラーによる生地30の回収等の必要な処理を制御した上で、搬送部16を停止させるとしてもよい。
【0056】
3.第2実施形態:
次に、第2実施形態を説明する。
図8は、制御部11がプログラム12に従って実行する第2実施形態にかかる印刷処理を、フローチャートにより示している。第2実施形態は、概略、分割データシフトを、模様画像データに対してではなく、着色画像データに対して実行する点が第1実施形態と異なる。
図8のフローチャートは、
図3と比較すると、ステップS110の替わりにステップS115を有し、ステップS140の替わりにステップS145を有する。第2実施形態では、第1実施形態と共通する内容については説明を省略する。
【0057】
ステップS115では、画像補正部12dは、着色画像データに対する分割データシフトを実行する。つまり、着色画像データを複数の分割着色画像データに分け、分割着色画像データの相互の位置関係を変更して、着色画像データの四隅が中心となる補正着色画像データに変換する。分割着色画像データは「分割第3画像データ」に該当し、補正着色画像データは「補正第3画像データ」に該当する。ステップS115は「画像補正工程」に該当する。着色画像データを補正着色画像データに変換する手順は、
図5に示した、模様補正部12bによる模様画像データ40を補正模様画像データ42に変換する手順を準用すればよいため、ここでは説明を省略する。
【0058】
第2実施形態では、模様画像データを分割データシフトしない。そのため、ステップS130では、模様抽出部12cは、ステップS100で登録された模様画像データと、ステップS120の撮像により生成された撮像画像データとを対比して、模様画像データが表現する第1模様に対応する模様領域を撮影画像データから抽出する。つまり、模様抽出部12cは、模様画像データのエッジ分布との一致度合に応じて一つの模様領域と評価できる撮像画像データ内の領域の中心座標を、一つの模様領域の抽出結果として取得する。模様抽出部12cは、抽出結果として取得した、模様領域の中心座標の情報を、ステップS145,S150の処理のために印刷画像生成部12eへ出力する。
【0059】
図9を参照して、第2実施形態のステップS130の具体例を説明する。
図9では、
図6と同様に撮像画像データ50の一部を例示している。また、参考までに、模様画像データ40も
図9に示している。
図9の撮像画像データ50内に実線で示す各矩形は、模様画像データ40が表現する第1模様に対応する模様領域51である。模様抽出部12cは、模様画像データ40に基づく抽出を行うことにより、撮像画像データ50内の複数箇所から、各模様領域51の中心座標の情報を取得する。
図9では、各模様領域51の中心座標を、黒丸にて示している。
図9を
図6と併せて参照すれば解るように、各模様領域51の中心座標は、各模様領域52の四隅に該当する。第2実施形態のステップS130は、第1模様に対応する模様領域を第2画像データから抽出する「模様抽出工程」に該当する。
【0060】
ステップS145では、印刷画像生成部12eは、ステップS115の分割データシフトにより得られた補正着色画像データを、ステップS130で抽出された模様領域の中心座標を四隅とする領域の形状に合うように変形する。補正着色画像データは、第2模様に重ねて印刷すべき画像を表現したカラー画像データと言える。ステップS145については、適宜、ステップS140の説明を準用のこと。ステップS150では、印刷画像生成部12eは、ステップS145を経た複数の補正着色画像データを、撮像画像データにおけるステップS130で抽出された中心座標を四隅とする領域の並びに対応させて配置することにより、印刷画像データを生成する。ステップS145,S150は、補正第3画像データを、抽出された模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する「印刷画像生成工程」に該当する。
【0061】
第2実施形態のステップS145,S150の具体例を、
図10を参照して説明する。符号62は、ステップS115の分割データシフトにより得られた補正着色画像データ62を示している。補正着色画像データ62は、着色画像データ60と同様に、縦横が模様画像データ40および補正模様画像データ42と同一或いはほぼ同一のサイズの画像である。
図10では、
図9と同様に、ステップS130で抽出した中心座標を黒丸にて示している。符号63aは、ステップS130で抽出された中心座標を四隅とする一つの領域(第4領域)の形状に合わせて、補正着色画像データ62を変形した後の補正着色画像データ63aを示している。同様に、符号63bは、第4領域に対して幅方向D2に隣接する、ステップS130で抽出された中心座標を四隅とする一つの領域(第5領域)の形状に合わせて、補正着色画像データ62を変形した後の補正着色画像データ63bを示している。
【0062】
符号63cは、第5領域に対して幅方向D2に隣接する、ステップS130で抽出された中心座標を四隅とする一つの領域(第6領域)の形状に合わせて、補正着色画像データ62を変形した後の補正着色画像データ63cを示している。そして、このような補正着色画像データ63a,63b,63c…を、撮像画像データ50における第4領域、第5領域、第6領域…の位置関係の通りに結合したものが、印刷画像データ63である。
図10では、補正着色画像データ63a,63b,63c…の境界を一部破線で示している。第4領域、第5領域、第6領域…は、それぞれが模様領域52に相当する。つまり、印刷画像生成部12eは、ステップS130で抽出された中心座標を四隅とする領域に合わせて補正着色画像データ62を配置することにより、第2模様を表現する模様領域52に合わせて補正着色画像データ62を配置することができる。第2模様を表現する模様領域52に合わせて補正着色画像データ62を配置した結果は、第1模様を表現する模様領域51に合わせて着色画像データ60を配置した結果と実質的に同じである。
【0063】
4.第1および第2実施形態のまとめ:
このように第1実施形態によれば、印刷装置10は、第1模様が形成された生地30を搬送方向D1へ搬送する搬送部16と、搬送部16が搬送する生地30を撮像する撮像部15と、搬送部16が搬送する生地30へ印刷を行う印刷部17と、を備える。さらに、印刷装置10は、第1模様を表現する第1画像データを分割した複数の分割第1画像データの相互の位置関係を変更して、第1画像データの四隅が中心となる補正第1画像データを生成する模様補正部12bと、補正第1画像データと、撮像部15による生地30の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、補正第1画像データが表現する第2模様に対応する模様領域を第2画像データから抽出する模様抽出部12cと、第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成部12eと、印刷画像データの生地30への印刷を印刷部17に実行させる印刷制御部12fと、を備える。
【0064】
生地30の撮像画像データからの模様領域の抽出結果としては、模様領域の中心座標といった、限られた情報のみ得られる。そのため、従来は、模様画像データに基づく抽出結果としての中心座標を参照して、更に模様領域の四隅の頂点を補間演算等により求めることで模様領域の形状を確定し、その上で、模様領域の形状に合わせて着色画像データを配置する必要があった。
この課題に対し、模様補正部12bは、分割データシフトにより、第1画像データを、その四隅が中心となる補正第1画像データに変換し、模様抽出部12cが、補正第1画像データに基づいて、第2画像データから、補正第1画像データが表現する第2模様に対応する模様領域を抽出する。これにより、印刷画像生成部12eは、抽出結果としての模様領域の中心座標を四隅とする領域に合わせて第3画像データを配置するだけで、生地30の第1模様に第3画像データが正確に重なる印刷画像データを生成することができる。つまり、第3画像データを配置するために、上述したような補間演算等を実行する必要が無くなり、プロセッサーの演算負担が軽減される。これにより、印刷画像データ生成の処理速度が向上する。
【0065】
また、第2実施形態によれば、印刷装置10は、第1模様が形成された生地30を搬送方向D1へ搬送する搬送部16と、搬送部16が搬送する生地30を撮像する撮像部15と、搬送部16が搬送する生地30へ印刷を行う印刷部17と、を備える。さらに、印刷装置10は、第1模様を表現する第1画像データと、撮像部15による生地30の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、第1模様に対応する模様領域を第2画像データから抽出する模様抽出部12cと、第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを分割した複数の分割第3画像データの相互の位置関係を変更して、第3画像データの四隅が中心となる補正第3画像データを生成する画像補正部12dと、補正第3画像データを、抽出された模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成部12eと、印刷画像データの生地30への印刷を印刷部17に実行させる印刷制御部12fと、を備える。
【0066】
つまり上述の課題に対し、模様抽出部12cは、第1画像データに基づいて、第2画像データから、第1画像データが表現する第1模様に対応する模様領域を抽出し、画像補正部12dは、分割データシフトにより、第3画像データを、その四隅が中心となる補正第3画像データに変換する。これにより、印刷画像生成部12eは、抽出結果としての模様領域の中心座標を四隅とする領域に合わせて補正第3画像データを配置するだけで、生地30の第1模様に第3画像データが正確に重なる印刷画像データを生成することができる。すなわち、第2実施形態も第1実施形態と同様に、上述したような補間演算等を実行する必要が無くなり、プロセッサーの演算負担が軽減される。これにより、印刷画像データ生成の処理速度が向上する。
【0067】
本実施形態は、印刷装置10以外にも、システム、プログラム、方法といった各種カテゴリーの発明を開示する。
第1実施形態による印刷方法は、第1模様が形成された生地30を搬送方向D1へ搬送する搬送工程と、搬送される生地30を撮像する撮像工程と、第1模様を表現する第1画像データを分割した複数の分割第1画像データの相互の位置関係を変更して、第1画像データの四隅が中心となる補正第1画像データを生成する模様補正工程と、補正第1画像データと、生地30の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、補正第1画像データが表現する第2模様に対応する模様領域を第2画像データから抽出する模様抽出工程と、第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成工程と、搬送される生地30への印刷画像データの印刷を行う印刷工程と、を備える。
【0068】
第2実施形態による印刷方法は、第1模様が形成された生地30を搬送方向D1へ搬送する搬送工程と、搬送される生地30を撮像する撮像工程と、第1模様を表現する第1画像データと、生地30の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、第1模様に対応する模様領域を第2画像データから抽出する模様抽出工程と、第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを分割した複数の分割第3画像データの相互の位置関係を変更して、第3画像データの四隅が中心となる補正第3画像データを生成する画像補正工程と、補正第3画像データを、抽出された模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成工程と、搬送される生地30への印刷画像データの印刷を行う印刷工程と、を備える。
【0069】
5.第3実施形態:
次に、第3実施形態を説明する。
図11は、制御部11がプログラム12に従って実行する第3実施形態にかかる印刷処理を、フローチャートにより示している。
図11のフローチャートは、
図3と比較すると、ステップS110の替わりにステップS117を有し、ステップS130の替わりにステップS135を有する。第3実施形態では、第1実施形態または第2実施形態と共通する内容については説明を省略する。
【0070】
第1実施形態や第2実施形態では、生地30に第1模様が繰り返し形成されている場合を想定して説明を行った。これに対して、第3実施形態では、比較的大きいサイズの第1模様が一つ形成されている生地30、例えば、スカーフ用等の生地30に、第1模様を着色するための着色画像データを合わせて印刷する場面を想定する。第3実施形態では、分割データシフトは行わない。
【0071】
ステップS117では、模様補正部12bは、模様画像データの周囲に余白領域を追加し、余白領域を追加した補正模様画像データを分割することにより、模様画像データの四隅のそれぞれを中心とする複数の分割補正模様画像データを生成する。分割補正模様画像データは「分割補正第1画像データ」に該当する。ステップS117は「模様補正工程」に該当する。
【0072】
ステップS135では、模様抽出部12cは、ステップS117で生成した複数の分割補正模様画像データと、ステップS120の撮像により生成された撮像画像データとを対比して、複数の分割補正模様画像データがそれぞれに表現する模様に対応する複数の模様領域を、撮像画像データから抽出する。模様抽出部12cは、抽出結果として取得した、模様領域の中心座標の情報を、ステップS140,S150の処理のために印刷画像生成部12eへ出力する。ステップS135は「模様抽出工程」に該当する。
【0073】
図12を参照して、第3実施形態のステップS117,S135,S140,150の流れを具体的に説明する。符号43は、生地30に形成された第1模様を表現する、模様画像データ43を例示している。符号53は、生地30の撮像画像データ53を例示し、符号64は、第1模様に対応する着色画像データ64を例示している。
ステップS117では、模様補正部12bは、先ず、模様画像データ43の周囲に余白領域45を追加して補正模様画像データ46を生成する。模様画像データ43の縦の長さがH、横の長さがWであるとき、模様補正部12bは、余白領域45を含んだ補正模様画像データ46の縦の長さを2×H、横の長さを2×Wとする。補正模様画像データ46において、模様画像データ43は中央に配置されている。
【0074】
ステップS117では、模様補正部12bは、さらに、補正模様画像データ46を縦方向、横方向のそれぞれにおいて2等分することにより、4つの分割補正模様画像データ46a,46b,46c,46dに分ける。
図12によれば、分割補正模様画像データ46aは、模様画像データ43の四隅の頂点の一つである頂点44aを中心としている。同様に、分割補正模様画像データ46bは、模様画像データ43の四隅の頂点の一つである頂点44bを中心としている。分割補正模様画像データ46cは、模様画像データ43の四隅の頂点の一つである頂点44cを中心としている。分割補正模様画像データ46dは、模様画像データ43の四隅の頂点の一つである頂点44dを中心としている。
【0075】
ステップS135では、模様抽出部12cは、分割補正模様画像データ46a,46b,46c,46dのそれぞれを撮像画像データ53と対比することにより、分割補正模様画像データ46a,46b,46c,46dがそれぞれ表現する模様に対応する複数の模様領域53a,53b,53c,53dを撮像画像データ53から抽出する。なお、模様抽出部12cは、分割補正模様画像データ46a,46b,46c,46dを撮像画像データ53と対比するために、必要に応じて撮像画像データ53の周囲にも空白領域を追加し、撮像画像データ53のサイズを、補正模様画像データ46のサイズ以上とすればよい。
【0076】
図12によれば、模様領域53aが分割補正模様画像データ46aに対応する模様領域である。また、模様領域53bが分割補正模様画像データ46bに対応し、模様領域53cが分割補正模様画像データ46cに対応し、模様領域53dが分割補正模様画像データ46dに対応している。
図12では、模様領域53a,53b,53c,53dそれぞれの中心座標を黒丸で示している。つまり、ステップS135では、模様抽出部12cは、模様領域53a,53b,53c,53dそれぞれの中心座標の情報を、抽出結果として取得し、印刷画像生成部12eへ出力する。
【0077】
ステップS140,S150では、印刷画像生成部12eは、着色画像データ64を、ステップS135で抽出された模様領域53a,53b,53c,53dの中心座標を四隅とする領域に合うように必要に応じて変形しつつ配置した、印刷画像データ65を生成する。このように、印刷画像生成部12eは、ステップS135で抽出された中心座標を四隅とする領域に合わせて着色画像データ64を配置することにより、撮像画像データ53における第1模様を表現する領域に合わせて着色画像データ64を配置することができる。
【0078】
このように第3実施形態によれば、印刷装置10は、第1模様が形成された生地30を搬送方向D1へ搬送する搬送部16と、搬送部16が搬送する生地30を撮像する撮像部15と、搬送部16が搬送する生地30へ印刷を行う印刷部17と、を備える。さらに、印刷装置10は、第1模様を表現する第1画像データの周囲に余白領域を追加した補正第1画像データを分割することにより、第1画像データの四隅のそれぞれを中心とする複数の分割補正第1画像データを生成する模様補正部12bと、複数の分割補正第1画像データと、撮像部15による生地30の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、複数の分割補正第1画像データがそれぞれに表現する模様に対応する複数の模様領域を第2画像データから抽出する模様抽出部12cと、第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成部12eと、印刷画像データの生地30への印刷を印刷部17に実行させる印刷制御部12fと、を備える。
【0079】
前記構成によれば、印刷画像生成部12eは、抽出結果としての模様領域の中心座標を四隅とする領域に合わせて第3画像データを配置するだけで、生地30の第1模様に第3画像データが正確に重なる印刷画像データを生成することができる。すなわち、撮像画像データから抽出された模様領域の中心座標に基づいて、模様領域の形状を確定するための上述したような補間演算等を実行する必要が無い。そのため、プロセッサーの演算負担が軽減され、印刷画像データ生成の処理速度が向上する。
【0080】
第3実施形態による印刷方法は、第1模様が形成された生地30を搬送方向D1へ搬送する搬送工程と、搬送される生地30を撮像する撮像工程と、第1模様を表現する第1画像データの周囲に余白領域を追加した補正第1画像データを分割することにより、第1画像データの四隅のそれぞれを中心とする複数の分割補正第1画像データを生成する模様補正工程と、複数の分割補正第1画像データと、生地30の撮像により生成された第2画像データとを対比することにより、複数の分割補正第1画像データがそれぞれに表現する模様に対応する複数の模様領域を第2画像データから抽出する模様抽出工程と、第1模様に重ねて印刷すべき画像を表現する第3画像データを、抽出された模様領域の中心を四隅とする領域に合うように配置することにより印刷画像データを生成する印刷画像生成工程と、搬送される生地30への印刷画像データの印刷を行う印刷工程と、を備える。
【0081】
6.変形例:
本実施形態に含まれる幾つかの変形例を説明する。
第1変形例:
制御部11は、生地30に形成されている模様のタイプに応じて、第1実施形態または第3実施形態のどちらかを選択して実行するとしてもよい。ユーザーは、印刷に使用する生地30に、ある模様、つまり第1模様が繰り返し形成されているか、そのような繰り返しが無く全体として一つの模様が形成されているかを判定し、その判定結果を、操作受付部14を通じて制御部11へ入力する。
【0082】
制御部11は、ユーザーから、生地30に第1模様が繰り返し形成されている旨の判定結果を入力した場合は、分割データシフト有りの第1実施形態を実行する。一方、制御部11は、ユーザーから、生地30に第1模様が繰り返しの態様ではなく一つ形成されている旨の判定結果を入力した場合は、分割データシフト無しの第3実施形態を実行する。制御部11は、第1実施形態を実行する替わりに、第2実施形態を実行してもよい。
【0083】
第2変形例:
分割データシフトによる模様画像データの分割数は、
図5で説明したような4分割に限られない。
図13は、第2変形例における
図3のステップS110による分割データシフトを説明するための図であり、
図5とは異なる例を示している。
図13には、模様画像データ47を示している。
図13では、模様画像データ47が表現する第1模様の各部分である部分模様を、便宜的に“A”、“B”、“C”、“D”といったアルファベットにより示している。なお、各部分模様が実際に“A”、“B”、“C”、“D”というアルファベットであるという訳ではない。生地30には、模様画像データ47と同様の第1模様が、搬送方向D1と幅方向D2とのそれぞれに沿って繰り返し形成されている。
【0084】
模様補正部12bは、模様画像データ47を縦方向および横方向のそれぞれにおいて2等分することにより、4つの領域47a,47b,47c,47dに分ける。
図13から解るように、領域47aは部分模様“A”に対応している。同様に、領域47bは部分模様“B”に対応し、領域47cは部分模様“C”に対応し、領域47dは部分模様“D”に対応している。第2変形例では、模様補正部12bは、さらに領域47a,47b,47c,47dの各々を縦方向および横方向のそれぞれにおいて2等分することにより、模様画像データ47を、4×4の計16個の分割模様画像データに分ける。
図13内の上から2段目には、16分割された状態の模様画像データ47を示している。
【0085】
このような模様画像データ47について、模様補正部12bは、各分割模様画像データの位置関係の中で、幅方向D2の正の向きにおいて最も端に在る分割模様画像データの列を、幅方向D2の負の向きの端の位置へ移動させて、模様画像データ47´とする。模様補正部12bは、さらに、模様画像データ47´について、搬送方向D1の上流の向きにおいて最も端に在る分割模様画像データの行を、搬送方向D1の下流の向きの端の位置へ移動させて、補正模様画像データ48とする。
【0086】
補正模様画像データ48において、補正模様画像データ48を縦方向と横方向とのそれぞれで2分割したときの領域48a,48b,48c,48dを実線で区切って示している。つまり、領域48a,48b,48c,48dのそれぞれは、4つの分割模様画像データの集合である。このような
図13が示す分割データシフトによれば、補正模様画像データ48の領域48a,48b,48c,48dそれぞれの中心で、模様画像データ47の領域47a,47b,47c,47dそれぞれの四隅の頂点のいずれかが重なっていることが解る。例えば、領域47aの四隅の頂点は、領域48a,48b,48c,48dそれぞれの中心となっている。また、領域47bの四隅の頂点も、領域48a,48b,48c,48dそれぞれの中心となっている。
【0087】
第2変形例では、部分模様“A”、“B”、“C”、“D”のそれぞれについても、第1模様と捉え、領域48a,48b,48c,48dが表現する模様のそれぞれを、第2模様と捉えて、第1実施形態のステップS130以降を行えばよい。つまり、ステップS130では、模様抽出部12cは、補正模様画像データ48を構成する領域48a,48b,48c,48dのそれぞれと、撮像画像データとを対比することにより、領域48a,48b,48c,48dが表現する各第2模様に対応する各模様領域を撮影画像データから抽出する。
【0088】
図13の内容を前提とし、
図14を参照して第2変形例におけるステップS130を説明する。
図14では、撮像画像データ54の一部を例示している。撮像画像データ54内には、模様画像データ47と同様の第1模様が、搬送方向D1と幅方向D2とのそれぞれに沿って繰り返し表現されている。撮像画像データ54内に実線で示す各矩形は、領域48a,48b,48c,48dが表現する各第2模様に対応する各模様領域55である。つまり、模様抽出部12cは、補正模様画像データ48を構成する領域48a,48b,48c,48dのそれぞれに基づく抽出を行うことにより、撮像画像データ54内の複数箇所から、各模様領域55の中心座標の情報を取得する。
図14では、各模様領域55の中心座標を、黒丸にて示している。
図14から解るように、各模様領域55の中心座標は、部分模様“A”、“B”、“C”、“D”それぞれの四隅に該当する。
【0089】
従って、第2変形例におけるステップS140,S150では、印刷画像生成部12eは、模様画像データ47に重ねて印刷すべき不図示の着色画像データを、模様画像データ47を領域47a,47b,47c,47dに分割した態様と同じ態様で分割する。そして、着色画像データを分割した各領域の画像データを、ステップS130で抽出された模様領域55の中心座標を四隅とする領域の形状に合うように変形しつつ配置することにより、印刷画像データを生成すればよい。
【0090】
第2変形例による模様画像データの分割数は、
図13で説明したような16分割に限られない。模様補正部12bは、例えば、模様画像データ47を縦方向および横方向のそれぞれにおいて3等分することにより、9つの領域に分け、これら各領域を更に縦方向および横方向のそれぞれに2等分することにより、模様画像データ47を、6×6の計36個の分割模様画像データに分けてもよい。この場合も、模様補正部12bは、
図13の説明と同様に、分割データシフトを実行して補正模様画像データを生成し、補正模様画像データを構成する、4つの分割模様画像データが集合してなる9個の四角領域のそれぞれを第1模様と見なして、ステップS130以下を実行すればよい。
【0091】
また、第1実施形態と第2実施形態との関係性に倣えば、第2変形例の分割データシフトは、当然、模様画像データではなく、着色画像データに対して実行してもよい。つまり、模様抽出部12cは、模様画像データ47を構成する領域47a,47b,47c,47dのそれぞれと、撮像画像データとを対比することにより、領域47a,47b,47c,47dが表現する各第1模様に対応する各模様領域の中心座標を撮影画像データから抽出する。そして、画像補正部12dは、第2変形例の分割データシフトを着色画像データに対して実行して補正着色画像データを生成する。印刷画像生成部12eは、補正着色画像データを構成する各領域の画像データを、抽出された模様領域の中心座標を四隅とする領域の形状に合うように変形しつつ配置することにより、印刷画像データを生成すればよい。
【0092】
その他の説明:
図2Aの例では、印刷ヘッド19がキャリッジ20に搭載されて移動する、いわゆるシリアルプリンターの構成を開示したが、印刷ヘッド19は、いわゆるライン型のヘッドであってもよい。つまり、印刷ヘッド19は、キャリッジ20に搭載されず、幅方向D2に沿って生地30の幅をカバー可能な長尺のプリントヘッドであってもよい。
【0093】
図2A,2Bにおいて、符号22で示す構成は、無端ベルトではなく、生地30を下方から支持する台としてのプラテンであってもよい。つまり、不図示のローラーによって搬送される生地30がプラテン上を移動すると解してもよい。
本実施形態において、画像データや画像データ内のある領域に関して、その“中心”と言った場合、厳密な中心のみを指すのではなく、いくらかの誤差を含んだほぼ中心の位置を指してもよいし、重心であってもよい。
本実施形態は、生地30以外の素材、例えば、紙による印刷媒体であって模様が形成された印刷媒体を印刷に使用する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
10…印刷装置、11…制御部、12…プログラム、12a…模様登録部、12b…模様補正部、12c…模様抽出部、12d…画像補正部、12e…印刷画像生成部、12f…印刷制御部、13…表示部、14…操作受付部、15…撮像部、16…搬送部、17…印刷部、18…記憶部、19…印刷ヘッド、20…キャリッジ、22…無端ベルト、30…生地、40,43,47…模様画像データ、42,46,48…補正模様画像データ、45…余白領域、46a,46b,46c,46d…分割補正模様画像データ、50,53,54…撮像画像データ、51,52,53a,53b,53c,53d,55…模様領域、60,61a,61b,61c,63a,63b,63c,64…着色画像データ、62…補正着色画像データ、61,63,65…印刷画像データ