(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/81 20240101AFI20241217BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20241217BHJP
G06F 1/30 20060101ALI20241217BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20241217BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20241217BHJP
【FI】
B60K35/81
G09G5/00 510G
G09G5/00 550C
G06F1/30
G08B21/00 C
G08B21/00 U
B60K35/23
(21)【出願番号】P 2020198271
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石田 兼太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮部 博之
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-154373(JP,A)
【文献】特開2008-197403(JP,A)
【文献】国際公開第2020/235683(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/181987(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/20
G09G 5/00
G06F 1/30
G08B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、車両情報を表示する車両用表示装置であって、
前記車両情報を表示するディスプレイと、
前記ディスプレイを制御するプロセッサと、
外部から印加される電源電圧を第1電圧へ変圧し、前記プロセッサへ電力を供給する第1電源と、
前記電源電圧を第2電圧へ変圧する第2電源と、
前記第2電圧に基づいて動作し、
前記第1電圧が第1閾値電圧未満である場合に、前記第1電源を通常動作させ、
前記第1電圧が第1閾値電圧以上である場合に、前記第1電源を停止させる電圧判定部と
を備え
、
前記プロセッサは、前記第1電圧が前記第1閾値電圧未満かつ第2閾値電圧以上の場合、外部の装置へ電圧異常発生信号を出力する
車両用表示装置。
【請求項2】
前記車両用表示装置はヘッドアップディスプレイであり、
前記装置はメータである
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記電圧判定部は、リセットICである
請求項1に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用表示装置として、例えば特許文献1に記載された構成が知られている。特許文献1が示す車両用表示装置は、ヘッドアップディスプレイ(1)であり、バッテリ(45)から電力を供給されることで動作する。電源部(22)は変圧器であり、ヘッドアップディスプレイ(1)に対してバッテリ(45)から印加される電圧を変圧してからヘッドアップディスプレイ(1)を構成する各部品へ電力を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、ヘッドアップディスプレイへ電圧を印加する外部電源が異常を起こした場合、異常な電圧がヘッドアップディスプレイを構成する各部品にまで印加されてしまい、装置の不良につながる虞があった。
【0005】
そこで本発明の目的とするところは、上述課題に着目し、電源異常に対する耐力を向上した車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用表示装置は、
車両に搭載され、車両情報を表示する車両用表示装置であって、
前記車両情報を表示するディスプレイと、
前記ディスプレイを制御するプロセッサと、
外部から印加される電源電圧を第1電圧へ変圧し、前記プロセッサへ電力を供給する第1電源と、
前記電源電圧を第2電圧へ変圧する第2電源と、
前記第2電圧に基づいて動作し、
前記第1電圧が第1閾値電圧未満である場合に、前記第1電源を通常動作させ、
前記第1電圧が第1閾値電圧以上である場合に、前記第1電源を停止させる電圧判定部と
を備え
前記プロセッサは、前記第1電圧が前記第1閾値電圧未満かつ第2閾値電圧以上の場合、外部の装置へ電圧異常発生信号を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態におけるヘッドアップディスプレイ1の構成を示す図。
【
図2】HUD1とメータ2の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の車両用表示装置の一例として、ヘッドアップディスプレイ(HUD)1を車両Cに搭載された実施形態及び変形例として例にあげ、添付図面を用いて次の順序で説明する。なお図面に示される方向F,B,L,R,U,Dはそれぞれ車両Cにおける前,後,左,右,上,下方向にそれぞれ対応する。また左右方向は方向X、上下方向は方向Y、前後方向は方向Zと呼称される場合がある。
【0009】
[第1実施形態]
1-1.構成の説明
1-2.挙動の説明
[変形例]
【0010】
[第1実施形態]
<1-1.構成の説明>
図1に示される通り、ヘッドアップディスプレイ(HUD)2は、車両Cに設けられたウインドシールドWSの下方に搭載可能である。
【0011】
HUD1は、車両の前側の端が低くなるように傾斜した自由曲面形状を為すウインドシールドWS(反射透過部材)に車両情報を表す表示光Liを投影することで虚像Vを映し出す。HUD1は、車両後ろ方向斜め上に向けて表示光Liを出射する。HUD1に出射された表示光Liは、ウインドシールドWSに反射される。ウインドシールドWSに反射された表示光Liを視点EPで視認する利用者(例えば車両Cの乗員)は、映し出された虚像VをウインドシールドWSの奥に浮遊した表示像として視認できる。
【0012】
虚像Vには例えば速度やエンジン回転数と言った車体情報や、ターンバイターンや地図などの経路案内表示、ブラインドスポットモニターや制限速度超過警告などの警告表示など、乗員(利用者、ユーザ)へ注意喚起する必要性が高い車両情報が表示される。これにより視点移動及び眼の焦点距離調整が低減された運転環境が提供される。虚像Vにはこれら情報を示す文字やアイコンの他、背景部分も含まれており、乗員からの平面視ではこれは例えば矩形状を為している。
【0013】
また、HUD1は主に2つのモードで動作する。1つは
図1に示すような、HUD1がウインドシールドWSに表示光Liを投影することで、視点EPから虚像Vを視認することができるディスプレイモードである。もう1つは、HUD1がウインドシールドWSに表示光Liを投影せず、視点EPからは虚像Vを視認することができない、休止モード(パーキングモード)である。ウインドシールドWSに表示光Liを投影しないパーキングモードのHUD1は、光線の逆進の原理に基づいて、ウインドシールドWS方向からHUD1に入射する外光(主に太陽光)を表示光Liが入射する方向(光学的に表示部が存在する方向)へ反射することが無い位置にあることになる。これにより、車両Cが停車している状態であると考えられるHUD1がパーキングモードであるときに、表示部が外光に照らされて高温状態となることを防止することとなる。
HUD1は、これらのモードを切り替えるために、後述の構成に依って反射部30を回転させる。
【0014】
ディスプレイモードのHUD1は、虚像Vを視認できる視点EPの高さを調節するために、表示光Liの光路を後述する構成により変更することができる。本開示では図面に示す通り、ショーター表示光Ls、センター表示光Lc、トーラー表示光Ltの3種類に変更が可能である。ショーター表示光Lsは、ディスプレイモードでは、HUD1はウインドシールドWSの比較的下部へ表示光Liを投影し、虚像Vを映し出す。トーラー表示光Ltでは、HUD1はウインドシールドWSの比較的上部へ表示光Liを投影し、虚像Vを映し出す。センター表示光Lcでは、前述2つの表示光路の間を通り、虚像Vを映し出す。
HUD1は、表示部Diと、反射部Miとを備える。
【0015】
ディスプレイの一例である表示部Diは表示光Liを出射する部材である。本開示では方向Fへ向かって出射している。表示光Liを出射する部材としては、例えばTFT液晶モジュールを用いる構成や、有機ELを用いた構成、DMD(Digital Micro-mirror Device)を用いたプロジェクタなどを適用できる。TFT液晶モジュールを用いた構成では、例えば表示部Diはそれぞれ制御部に接続されたバックライトユニットと液晶表示素子を固定された状態で設ける構成で、制御部の制御により情報を表示する液晶表示素子が制御部の制御により点滅を制御されるバックライトユニットから出る照明光に照らされることで表示光Liを出射する。しかしながら、例示したもの以外でも、表示光を出射できる構成であれば本開示の構成の効果を発揮できることは言うまでもない。
【0016】
反射部Miは、表示光Liを反射する。反射部Miは例えば、表示光Liを反射する面が凹状自由曲面形状の鏡であり、蒸着やスパッタリングなどの手法により鏡面が形成されている。反射部Miは、表示光Liを拡大しつつ反射を行う。反射部Miは、基材に硬質合成樹脂や無機ガラスを適用できる。また、反射部Miは自由曲面形状によってウインドシールドWSで生じることが想定される虚像Vの歪みを相殺する形状であることが望ましい。
【0017】
反射部Miは、ホルダを備えていても良い。ホルダは、反射部Miを回転軸A中心に回転可能に保持される。ホルダの素材は、マグネシウムや鉄などの硬質金属や、ABS樹脂などの硬質合成樹脂を適用できる。
【0018】
車両Cに搭載されるHUD1とメータ2とバッテリ3の構成を
図2を用いて示す。なお、説明で言及される3つの電圧の大小関係は以下の通りである。なお、電圧値は一例に過ぎない。
第1電圧のティピカル値=3.3V<第2閾値電圧=3.5V<第1閾値電圧=3.8V
【0019】
HUD1は、マイコン(制御部の一例)10と、第1電源11と、第2電源12と、電圧判定部13とを更に備える。
【0020】
プロセッサの一例であるマイコン10は、所定プログラムや各種データの格納、演算時の記憶領域などに用いる図示しないROMやRAM等の記憶部と、前記所定プログラムに従って演算処理するためのCPUと、入出力インターフェース等を設けたマイクロコンピュータを適用できる。制御部は表示部Di及び動力部、HUD1の外部の電子機器と電気的に接続されている。制御部は、HUD1の外部の車載機器から受信した車両情報に基づき、表示部Diに表示する画像を生成したり、表示部Diの表示を制御したり、表示部Diの照度を制御したり、反射部Miの回転を制御する。
【0021】
マイコン10は、第1電源11から第1電圧V1を印加されることで、電力を供給される。また、マイコン10は、電源モニタピン10aへ印加された電圧を基準に、第1電圧V1が第2閾値電圧以上であるかそうでないかを判定できる。例えば、本開示では、電源モニタピン10aへ印加される第2電圧V2は5V、第1電圧V1は3.3Vをティピカル値としている。マイコン10は、この第2電圧V2の5V電位を基準に、第1電圧V1が第2閾値電圧以上であるか未満であるかを判定できる。
【0022】
第2閾値電圧は、マイコン10が推奨動作範囲電圧(例えば、3.3V±0.2V)よりも大きな値が設定され、内部に異常をきたす程度の電圧(第1閾値電圧、絶対最大定格電圧、例えば、3.8V)未満であるときに、マイコン10が動作しながらも第1電圧V1に異常が発生していることを報知する基準となる電圧である。
【0023】
マイコン10は、後述のメータ2に搭載されるマイコン20と電気的に接続される。マイコン10は、マイコン20との間で種々の電気信号を通信可能であり、例えば第1電圧V1の異常(第2閾値電圧以上)を報知する電圧異常発生信号ERを送信可能である。
【0024】
第1電源11及び第2電源12は、外部(バッテリ3など)から印加される電源電圧VBを変圧する変圧器である。第1電源11は、変圧後の第1電圧V1をマイコン10及び電圧判定部13へ印加し、電力を供給する。第2電源12は、変圧後の第2電圧V2を電圧判定部13及びマイコン10の電源モニタピン10aへと印加し、電力を供給する。
【0025】
第1電源11及び第2電源12は、種々の方式の変圧器を適用可能であって、例えばリニアレギュレータや、スイッチング・レギュレータなどのDC/DCコンバータなどを適用することが可能である。
【0026】
電圧判定部13は、第1電圧V1の電位を閾値以上であるか閾値未満であるかを判定する。具体的には、第1電圧V1が第1閾値電圧以上である場合、イネーブル信号ENをオフ状態にし、第1電源11の動作を停止させる。また、電圧判定部13は、第1電圧V1が第1閾値電圧未満である場合、イネーブル信号ENをオン状態にし、第1電源11を通常動作させる。
【0027】
電圧判定部13は、第1電圧V1の大小を判定できる構成であれば良いが、例えばリセットICや、コンパレータを適用することが可能である。また電圧判定部13は、第2電圧V2が印加され電力を供給されることで動作する。第1電圧V1を監視する素子であるので、第1電圧とは別の電源を経由する系統であることが望ましい。
【0028】
メータ2は、車両情報を利用者へ表示する表示装置である。例えば、TFTまたは有機ELを用いるなどした画像表示可能な電子ディスプレイや、指針と指標で構成された指針式計器、警告灯などで構成できる。メータ2は、マイコン20と電源21を備える。マイコン20は、マイコン10と同様の構成を適用可能である。電源21は、外部の電源であるバッテリ3とHUD1と電気的に接続されており、バッテリ3から供給される電力をHUD1やマイコン20へ供給する。電源21は、HUD1へバッテリ3が出力する電圧(例えば12V)をそのまま電源電圧VBとして出力する。電源21は、マイコン20へ電源電圧VBを降圧した電圧(例えば3.3V)を印加する。メータ2は、マイコン20から入力された電圧異常発生信号ERが入力された場合、警告灯や電子ディスプレイを用いて利用者へ報知する。
【0029】
バッテリ3は、二次電池などで構成された電源装置である。例えば、バッテリ3としては鉛蓄電池で構成された12V電源などが適用可能である。
【0030】
<1-2.挙動の説明>
HUD1は、下記の挙動に基づいて動作する。
【0031】
(第1電圧が推奨動作範囲電圧である場合)
HUD1は、通常動作を行い、利用者へ車両情報を表示する。
【0032】
(第1電圧が第1閾値電圧以上である場合)
第1電源11に異常が生じた場合などに、第1電圧が第1閾値電圧以上となる場合がある。この場合は、絶対最大定格電圧以上の電圧がマイコン10へ印加されることになり、マイコン10が内部を破壊される可能性のある状態に晒される。このような場合では、マイコン10は外部へのエラー信号の送信などをする間もなくシャットダウンされることが望ましい。
【0033】
そこで本実施形態では、第1電圧V1が第1閾値電圧以上であることをマイコン10ではなく電圧判定部13が判定を行う。電圧判定部13は、第1電圧V1が第1閾値電圧以上であることを判定すると、イネーブル信号ENをオフ状態にし、第1電源11の動作を停止させる。
【0034】
これにより、マイコン10へ絶対最大定格電圧以上の電圧が印加される状態をいち早く解消することができ、ひいては電源異常に対する耐力を向上した車両用表示装置となる。具体的な故障ケースとして、絶対最大定格電圧を超える電圧が印加された場合にマイコン10の内部が何らかの形で破壊され、表示部Diの表示が白画像かつ最大光量で固定されてしまうケースがある。このケースでは、虚像Vが利用者の視界を阻害してしまう。本開示の構成であれば、マイコン10の内部が破壊された場合であっても、第1電源11の動作を停止することで、HUD1全体の動作を停止できる。また、この構成であれば、マイコン10が何らかの故障でループに入ってしまいマイコン10の動作を変更できないような状態になる前に、マイコン10をシャットダウンすることができる。
【0035】
(第1電圧が第2閾値電圧以上第1閾値電圧未満である場合)
第1電源11に異常が生じた場合などに、第1電圧V1が第2閾値電圧以上かつ第1閾値電圧未満となる場合がある。換言すると、第1電圧V1は絶対最大定格電圧は超えないものの、推奨動作範囲電圧を逸脱する状態である。この場合、マイコン10はいち早く動作を停止する必要は無いものの、利用者へ異常を報知するなど動作することが望ましい。
【0036】
利用者へ異常を報知する態様として、例えばマイコン10はメータ2のマイコン20へ電圧異常発生信号ERを出力し、これを受けてマイコン20はメータ2の表示機能を駆使して利用者へ機器の異常(第1電圧V1の異常)が発生したことを報知するとよい。
【0037】
この構成に依れば、電圧異常によって装置が破壊されることを防ぎながらも、程度が小さい電圧異常であれば動作を維持し利用者へ異常を報知することができる。ひいては、電源異常に対する耐力を向上した車両用表示装置となる。
【0038】
[変形例]
なお、本発明の車両用表示装置を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに表示の変更が可能なことは勿論である。
【0039】
例えば、電圧判定部13はリセットICである構成が示されたが、この構成に限られるものでは無い。例えば、前述の通りコンパレータなどの電圧の大小に応じて電気的に出力が変化する素子であればよい。しかしながら、本開示では、安価で簡易な構成であることからリセットICが適用されることが望ましい。
【符号の説明】
【0040】
C 車両
WS ウインドシールド
EP 視点
V 虚像
A 回転軸
Di 表示部(ディスプレイの一例)
Mi 反射部
Li,Lt,Lc,Ls 表示光
VB バッテリ電圧
V1 第1電圧
V2 第2電圧
1 ヘッドアップディスプレイ(HUD,車両用表示装置の一例)
10 マイコン(プロセッサの一例)
11 第1電源
12 第2電源
13 電圧判定部
2 メータ
20 マイコン
21 電源