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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】画像読取装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20241217BHJP
   H04N 1/10 20060101ALI20241217BHJP
   G03B 27/50 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H04N1/04 105
H04N1/10
G03B27/50 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020201760
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089391
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】堀口 靖之
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-182069(JP,A)
【文献】特開2009-135730(JP,A)
【文献】特開2013-093806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00 - 1/64
G03B 27/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が置かれる透明な原稿台と、
前記原稿台の縁部に沿って設けられた黒色又は黒色に近い暗色を呈しているフレームと、
主走査方向に前記原稿を読み取る読取ユニットと、
前記主走査方向と交差する副走査方向に前記読取ユニットを移動させる移動機構と、
前記副走査方向に前記原稿台と隣り合うように前記フレームに設けられ、前記主走査方向の長さが前記原稿台よりも長い白色の基準部材と、
前記移動機構を制御する制御部と、を備え、
前記読取ユニットは、前記原稿台に対応する領域を読み取る第1読取部と、前記フレームに対応する領域を読み取る第2読取部と、を含み、
前記制御部は、前記移動機構により前記読取ユニットを移動させながら、前記第2読取部の読取値により前記フレームと前記基準部材との境界を検知し、前記境界から所定距離だけ離間したホームポジションに前記読取ユニットを位置決めすることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記ホームポジションは、前記基準部材側に設定されており、
前記制御部は、
前記第2読取部が前記フレームに対向する位置で前記読取ユニットが停止していることを前記第2読取部の読取値が示している場合に、前記読取ユニットを前記基準部材の方向に移動させながら前記境界を検知し、
前記第2読取部が前記基準部材に対向する位置で前記読取ユニットが停止していることを前記第2読取部の読取値が示している場合に、前記読取ユニットを前記フレームの方向に移動させながら前記境界を検知することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記第2読取部は、前記主走査方向に並ぶ複数の光電変換素子を備え、
前記制御部は、前記複数の光電変換素子の読取値の最小値を用いて前記境界を検知することを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の光電変換素子の組毎の読取値の平均値の最小値を用いて前記境界を検知することを特徴とする請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記複数の光電変換素子の組は、想定される異物よりも広い範囲を読み取り可能であることを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像読取装置と、
前記第1読取部により読み取られた前記原稿の画像をシートに形成する画像形成装置と、を備えることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像読取装置は、原稿に光を照射し、原稿からの反射光を光電変換素子に導く読取ユニットを備えている。また、画像読取装置は、原稿台に置かれた原稿を読み取るために、読取ユニットを所定の方向に移動させる機構を備えている。読取ユニットには、ホームポジションが定められており、読取ジョブが入力されると、画像読取装置は、ホームポジションを始点として読取ユニットを移動させながら白色の基準部材を読み取ることで白色基準データを取得した後、原稿の読み取りを行う。そのため、読取ユニットをホームポジションに位置決めする仕組みが必要となる。
【0003】
読取ユニットを位置決めする手法として、フォトインタラプタ―等のセンサーを用いて所定位置で読取ユニットを検知する構成が考えられる。しかし、この構成では、装置の大型化やコストの上昇を招くという問題がある。そこで、従来、ホームポジションを示すマークを読取ユニットで読み取ることで読取ユニットを位置決めする技術が検討されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-5119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、読取ジョブの実行中に電源の電圧低下等により読取ユニットがホームポジション以外の場所で停止することが考えられる。その場合、ホームポジション検知用のマークが単純な形状であると、原稿台に置かれた原稿との区別が困難になる。これを回避するためには、マークの形状を複雑化することが考えられるが、マークを検知する処理のアルゴリズムも複雑化し、検知に時間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮し、簡潔な構成により短時間で読取ユニットをホームポジションに位置決めすることのできる画像読取装置及び画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る画像読取装置は、原稿が置かれる透明な原稿台と、前記原稿台の縁部に沿って設けられたフレームと、主走査方向に前記原稿を読み取る読取ユニットと、前記主走査方向と交差する副走査方向に前記読取ユニットを移動させる移動機構と、前記副走査方向に前記原稿台と隣り合うように前記フレームに設けられ、前記主走査方向の長さが前記原稿台よりも長い白色の基準部材と、前記移動機構を制御する制御部と、を備え、前記読取ユニットは、前記原稿台に対応する領域を読み取る第1読取部と、前記フレームに対応する領域を読み取る第2読取部と、を含み、前記制御部は、前記移動機構により前記読取ユニットを移動させながら、前記第2読取部の読取値により前記フレームと前記基準部材との境界を検知し、前記境界から所定距離だけ離間したホームポジションに前記読取ユニットを位置決めすることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る画像読取装置において、前記ホームポジションは、前記基準部材側に設定されており、前記制御部は、前記第2読取部が前記フレームに対向する位置で前記読取ユニットが停止していることを前記第2読取部の読取値が示している場合に、前記読取ユニットを前記基準部材の方向に移動させながら前記境界を検知し、前記第2読取部が前記基準部材に対向する位置で前記読取ユニットが停止していることを前記第2読取部の読取値が示している場合に、前記読取ユニットを前記フレームの方向に移動させながら前記境界を検知してもよい。
【0009】
本発明に係る画像読取装置において、前記第2読取部は、前記主走査方向に並ぶ複数の光電変換素子を備え、前記制御部は、前記複数の光電変換素子の読取値の最小値を用いて前記境界を検知してもよい。
【0010】
本発明に係る画像読取装置において、前記制御部は、前記複数の光電変換素子の組毎の読取値の平均値の最小値を用いて前記境界を検知してもよい。
【0011】
本発明に係る画像読取装置において、前記複数の光電変換素子の組は、想定される異物よりも広い範囲を読み取り可能であってもよい。
【0012】
また、本発明に係る画像形成システムは、前記のいずれかの画像読取装置と、前記第1読取部により読み取られた前記原稿の画像をシートに形成する画像形成装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡潔な構成により短時間で読取ユニットをホームポジションに位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る複合機の外観を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る複合機の内部構成を模式的に示す正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るスキャナーの斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るスキャナーの内部構成を模式的に示す正面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るスキャナーの天板部の下面を示す平面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るスキャナーの内部構成を模式的に示す平面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る基準部材と第1読取部と第2読取部と原稿台の位置関係を示す平面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るスキャナーの電気的構成を示すブロック図である。
図9】本発明の一実施形態に係るスキャナーの動作の流れ図である。
図10】白色の異物が天板部に付着している例である。
図11】黒色の異物が基準部材に付着している例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る複合機100(画像形成システムの一例)について説明する。複合機100は、プリンター1(画像形成装置の一例)とスキャナー110(画像読取装置の一例)を備える。
【0016】
最初に、プリンター1の構成の概要について説明する。図1は、複合機100の外観を示す斜視図である。図2は、複合機100の内部構成を模式的に示す正面図である。以下、図2における紙面手前側を複合機100の正面側(前側)とし、左右の向きは複合機100を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0017】
プリンター1は、直方体状の本体ハウジング3を備える。本体ハウジング3の下部には、シートSが収容される給紙カセット4と、給紙カセット4からシートSを送り出す給紙ローラー5が設けられている。給紙カセット4の上方には、電子写真方式にてトナー像を形成する作像装置6と、トナー像をシートSに定着する定着装置7が設けられている。本体ハウジング3の上部には、トナー像が定着されたシートSを排出する排出ローラー対8と、排出されたシートSが積載される排出トレイ9が設けられている。
【0018】
本体ハウジング3の内部には、給紙ローラー5から作像装置6、定着装置7を経て排出ローラー対8に至る搬送路10が設けられている。搬送路10には、シートSを搬送する複数の搬送ローラー対17が設けられている。作像装置6よりも搬送方向上流側には、レジストローラー対18が設けられている。
【0019】
プリンター1の各部は、制御部2によって制御される。プリンター1の上方には、スキャナー110が設けられている。スキャナー110の前側には、操作パネル19が設けられている。操作パネル19は、表示パネルと、表示パネルの表示面に重ねて設けられたタッチパネルと、表示パネルに隣接するキーパッドと、を備える。制御部2は、プリンター1及びスキャナー110の操作メニューを表す画面を表示パネルに表示させ、タッチパネル及びキーパッドで検知された操作に応じてプリンター1及びスキャナー110の各部を制御する。
【0020】
次に、プリンター1の画像形成動作の概要について説明する。外部のコンピューター等からプリンター1に印刷ジョブが入力されると、給紙ローラー5が給紙カセット4から搬送路10にシートSを送り出し、回転が停止されたレジストローラー対18がシートSの斜行を補正し、レジストローラー対18が所定のタイミングで作像装置6にシートSを送り出す。作像装置6は、印刷ジョブに応じたトナー像を形成し、シートSに転写する。続いて、定着装置7がトナー像をシートSに定着させ、排出ローラー対8が排出トレイ9にシートSを排出する。クリーニング装置16は、感光体ドラム11に残留したトナーを除去する。
【0021】
次に、スキャナー110の構成について説明する。図3は、スキャナー110の斜視図である。図4は、スキャナー110の内部構成を模式的に示す正面図である。図5は、スキャナー110の天板部32Tの下面を示す平面図である。図6は、スキャナー110の内部構成を模式的に示す平面図である。図7は、基準部材60と第1読取部41と第2読取部42と原稿台31の位置関係を示す平面図である。図8は、スキャナー110の電気的構成を示すブロック図である。
【0022】
スキャナー110は、原稿が置かれる透明な原稿台31と、原稿台31の縁部に沿って設けられたフレーム32と、主走査方向に原稿を読み取る読取ユニット40と、主走査方向と交差する副走査方向に読取ユニット40を移動させる移動機構50と、副走査方向に原稿台31と隣り合うようにフレーム32に設けられ、主走査方向の長さが原稿台31よりも長い白色の基準部材60と、移動機構50を制御する制御部30と、を備え、読取ユニット40は、原稿台31に対応する領域を読み取る第1読取部41と、フレーム32に対応する領域を読み取る第2読取部42と、を含み、制御部30は、移動機構50により読取ユニット40を移動させながら、第2読取部42の読取値によりフレーム32と基準部材60との境界Bを検知し、境界Bから所定距離Dだけ離間したホームポジションHに読取ユニット40を位置決めする。本実施形態では、主走査方向、副走査方向は、それぞれ前後方向、左右方向である。
【0023】
[原稿台]
原稿台31(図3乃至6参照)は、A4サイズのシートSよりもやや大きい長方形の板ガラスで形成されている。原稿台31の長辺は副走査方向に対して平行であり、短辺は主走査方向に対して平行である。
【0024】
[フレーム]
フレーム32は、概ね直方体の箱状に形成されており、長方形の底板部32B及び天板部32Tと、底板部32Bの四辺と天板部32Tの四辺との間に設けられた側板部32Sと、を備える。天板部32Tには、原稿台31に対応する大きさの開口部32Aが設けられている。天板部32Tの上方には、開口部32Aよりもやや大きいサイズの押え板33が設けられている。押え板33は、開口部32Aの後方に設けられたヒンジ33Hを支点として開閉可能である。フレーム32の内面は、黒色又は黒色に近い暗色を呈し、且つ、反射が少ない材質が望ましい。
【0025】
[読取ユニット]
読取ユニット40(図4、7参照)は、CIS(Contact Image Sensor)であり、光源44と、レンズ45と、第1読取部41と、第2読取部42と、筐体46と、を備える。光源44は、例えば、主走査方向の端部に設けられたLED(Light Emitting Diode)と、LEDの光を原稿に導くライトガイドと、を備えたサイドライト方式である。レンズ45は、例えば、主走査方向に並ぶ複数のロッドレンズを備えるロッドレンズアレイである。第1読取部41及び第2読取部42は、主走査方向に並ぶ複数の光電変換素子43を備えるイメージセンサーアレイである。光電変換素子43は、例えば、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor field-effect transistor)イメージセンサーである。
【0026】
筐体46は、光源44、レンズ45、第1読取部41、第2読取部42を収容する。筐体46は、主走査方向を長手方向とする概ね直方体の箱状に形成されており、上部に主走査方向を長手方向とする長方形の開口部46Aが設けられている。筐体46の底部に第1読取部41及び第2読取部42が設けられている。第1読取部41は、原稿台31に対応する範囲に設けられ、第2読取部42は、原稿台31よりも後方の天板部32Tに対応する範囲に設けられている。第1読取部41及び第2読取部42の上方にレンズ45が設けられ、レンズ45の左右又は左右の一方に光源44が設けられている。
【0027】
原稿台31の下方では、光源44が発した光が原稿台31に置かれた原稿又は押え板33によって反射される。反射光は、レンズ45で集光され、第1読取部41に入射する。原稿台31よりも後方の天板部32Tの下方では、光源44が発した光が天板部32Tによって反射される。反射光は、レンズ45で集光され、第2読取部42に入射する。第1読取部41及ぶ第2読取部42は、反射光を電荷に変換することで生成した電気信号を制御部30に送信する。
【0028】
[移動機構]
移動機構50(図4、6参照)は、レール51と、スライダー52と、ベルト駆動部53と、を備える。レール51は、底板部32Bの上面に主走査方向に沿って設けられている。スライダー52は、読取ユニット40の筐体46の底部に設けられている。スライダー52は、例えば、レール51を跨ぐ形状を有し、レール51に沿って摺動可能である。レール51の左端部では、読取ユニット40が基準部材60よりも左方に逸脱しないように、スライダー52の左方への移動が規制されている。ベルト駆動部53は、底板部32Bの副走査方向の一端部に設けられたモーター53Mと、モーター53Mの軸に設けられた駆動プーリー53Dと、底板部32Bの副走査方向の他端部に設けられた従動プーリー53Nと、駆動プーリー53Dと従動プーリー53Nとに巻き掛けられたベルト53Bと、を備え、ベルト53Bに筐体46が連結されている。なお、ベルト駆動部53に代えて、ラックアンドピニオン、ボールねじ、リニアモーター等が用いられてもよい。
【0029】
[基準部材]
基準部材60(図4乃至7参照)は、主走査方向を長手方向とする長方形の板であり、樹脂や金属、合成紙で形成され、下面が白色である。基準部材60は、天板部32Tのうち原稿台31よりも左側の部分の下面に設けられている。基準部材60の主走査方向の長さは原稿台31の短辺よりも長く、基準部材60の後端部は第2読取部42の後端部よりも後方に位置している。
【0030】
[制御部]
スキャナー110の各部は、制御部30によって制御される(図8参照)。制御部30は、演算部30Pと記憶部30Mと通信部30Cとを備える。演算部30Pは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。記憶部30Mは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶媒体を含む。演算部30Pは、記憶部30Mに記憶されている制御プログラムを読み出して実行することで各種処理を実行する。通信部30Cは、信号線を介してプリンター1の制御部2に接続された通信インターフェイスであり、プリンター1との間で通信を行う。なお、制御部30は、ソフトウェアを用いない集積回路によって実現されてもよい。
【0031】
例えば、プリンター1が256階調(0乃至255、0が黒、255が白)のモノクロームの画像データを用いて画像形成を行うとする。制御部30は、第1読取部41に基準部材60を読み取らせたときに第1読取部41から受信した電気信号が表す読取値を256階調の最大値に変換することで、第1読取部41の各光電変換素子43の読取値を補正する。また、制御部30は、第1読取部41に原稿を読み取らせたときに第1読取部41から受信した電気信号が表す読取値を256階調に変換して画像データを生成し、プリンター1に送信する。
【0032】
また、制御部30は、電源投入時に、読取ユニット40がフレーム32と基準部材60とのどちらに対向しているかを、第2読取部42の読取値を用いて判定する。具体的には、フレーム32の読取値と基準部材60の読取値との間に判定の閾値が設定されている。読取値が閾値未満である場合には、制御部30は、読取ユニット40がフレーム32に対向していると判定する。一方、読取値が閾値以上である場合には、制御部30は、読取ユニット40が基準部材60に対向していると判定する。
【0033】
ここで、仮に、1個の光電変換素子43で判定を行うとすると、フレーム32に白色の異物FWが付着している場合に、実際には読取ユニット40がフレーム32に対向していても、読取ユニット40が基準部材60に対向していると制御部30が誤判定するおそれがある。一方、基準部材60に黒色の異物FBが付着している場合には、実際には読取ユニット40が基準部材60に対向していても、読取ユニット40がフレーム32に対向していると制御部30が誤判定するおそれがある。
【0034】
そこで、本実施形態では、主走査方向に並ぶ複数の光電変換素子43を用いて判定を行う。具体的には、第2読取部42は、複数(この例では、16個)の光電変換素子43を備えている(図7参照)。制御部30は、第2読取部42の複数の光電変換素子43を、隣り合う複数個ずつの複数組(この例では、4個ずつの4組(第1組421、第2組422、第3組423、第4組424))に分け、組毎の読取値の平均値を求め、組毎の平均値の最小値を用いて判定を行う。組毎の平均値を求めるのは、電気ノイズによる読取値のばらつきの影響を軽減するためである。1組の光電変換素子43の数は、想定される黒色の異物FBの大きさよりも広い領域を読み取ることができる数である。本実施形態では、黒色の異物FBの大きさとして、最大で3個分の光電変換素子43に相当する大きさが想定されている。また、白色の異物FWの大きさは、黒色の異物FBよりも大きいものと仮定する。
【0035】
次に、スキャナー110の動作について説明する。本実施形態では、電源投入時に、読取ユニット40をホームポジションHに位置決めする。ホームポジションHは、基準部材60側に設定されており、読取ユニット40がホームポジションHに位置する場合に、第1読取部41及び第2読取部42は基準部材60に対向する。通常、電源投入時には、読取ユニット40がホームポジションH(図4、7参照)に停止しているが、読取ユニット40がホームポジションH以外の位置で停止している場合もある。読取ユニット40がホームポジションH以外の位置に停止する場合とは、読取ジョブの実行中に電源の電圧が低下した場合や、工場での組み立て後の電源投入前の場合や、移動中の振動等により読取ユニット40がホームポジションHからずれた場合などが想定される。
【0036】
図9は、スキャナー110の動作の流れ図である。スキャナー110に電源が投入されると、制御部30が、図9の流れ図に従って処理を実行する。以下、隣り合う4個ずつの4組に分けられた16個の光電変換素子43の組毎の読取値の平均値の最小値を最小平均値と呼ぶ。
【0037】
最初に、制御部30は、読取ユニット40が基準部材60に対向しているか否かを判定する(ステップS01)。具体的には、最小平均値が閾値(例えば、30)以上である場合には、制御部30は、読取ユニット40が基準部材60に対向していると判定し(ステップS01:YES)、読取ユニット40を微小距離だけ右方へ移動させ(ステップS02)、フレーム32と基準部材60との境界Bが検知されたか否かを判定する(ステップS03)。最小平均値が引き続き閾値以上である場合には、制御部30は、境界Bが検知されなかったと判定し(ステップS03:NO)、ステップS02以降の処理を繰り返す。一方、最小平均値が閾値以上から閾値未満に変化した場合には、制御部30は、境界Bが検知されたと判定し(ステップS03:YES)、ステップS06の処理に移行する。
【0038】
一方、ステップS01において、読取値が閾値未満である場合には、制御部30は、読取ユニット40が基準部材60に対向していない(フレーム32に対向している)と判定し(ステップS01:NO)、読取ユニット40を微小距離だけ左方へ移動させ(ステップS04)、フレーム32と基準部材60との境界Bが検知されたか否かを判定する(ステップS05)。最小平均値が引き続き閾値未満である場合には、制御部30は、境界Bが検知されなかったと判定し(ステップS05:NO)、ステップS04以降の処理を繰り返す。一方、最小平均値が閾値未満から閾値以上に変化した場合には、制御部30は、境界Bが検知されたと判定し(ステップS05:YES)、ステップS06の処理に移行する。
【0039】
ステップS06において、制御部30は、読取ユニット40を左方へ所定距離Dだけ移動させる。所定距離Dとは、フレーム32と基準部材60との境界BとホームポジションHとの距離であり、既知の値である。この処理によって、読取ユニット40がホームポジションHに位置決めされる。ホームポジションHにおいて、第1読取部41及び第2読取部42は基準部材60に対向する。
【0040】
次に、制御部30は、読取ジョブを受信したか否かを判定する(ステップS07)。具体的には、操作パネル19に対して読取の操作が行われた場合、プリンター1の制御部2は、操作の内容を表す読取ジョブを制御部30に送信する。制御部30は、読取ジョブを受信しなかったと判定した場合には(ステップS07:NO)、ステップS07の処理を繰り返し、読取ジョブを受信したと判定した場合には(ステップS07:YES)、ステップS08の処理に移行する。
【0041】
ステップ08において、制御部30は、読取ユニット40を左方へ移動させながら基準部材60を読み取って白色基準データを取得し、加速開始位置A(図4参照)で読取ユニット40を停止させる(ステップS08)。次に、制御部30は、読取ユニット40を右方へ移動させながら所定速度まで加速させ、原稿台31の左端部まで読取ユニット40を移動させたならば、第1読取部41に原稿の読取を開始させる(ステップS09)。制御部30は、所定速度を保って読取ユニット40を右方に移動させながら、第1読取部41に原稿を読み取らせ、画像データを生成する。画像データを生成する際、制御部30は、白色基準データを基準として画像データを補正する。制御部30は、画像データの生成と並行して原稿のサイズを推定し、原稿の右端部までの読取が完了したか否かを判定する(ステップS10)。制御部30は、読取が完了していないと判定した場合には(ステップS10:NO)、ステップS10の処理を繰り返し、読取が完了したと判定した場合には(ステップS10:YES)、ステップS04の処理に移行する。こうして、読取ユニット40が再びホームポジションHに位置決めされる。
【0042】
ここで、16個の光電変換素子43の読取値にばらつきがなく、且つ、フレーム32の内面が黒色であると仮定した場合の判定例を示す。
【0043】
図10は、白色の異物FWが天板部32Tに付着している例である。この例では、12個の光電変換素子43に相当する大きさ(300dpi(dots per inch)の場合、約1.0mm)の白色の異物FWが天板部32Tの第1組421から第3組423に対応する位置に付着している。また、この例では、前述した電圧低下等の原因により、読取ユニット40が異物FWよりも右方で停止している。この場合、第1組421から第4組424の読取値の平均値は全て0となるため、最小平均値も0となる。閾値を30とすると、最小平均値が閾値未満であるため、制御部30は、読取ユニット40が基準部材60に対向していないと判定し(ステップS01:NO)、ステップS04及びS05の処理を実行する。
【0044】
読取ユニット40が異物FWの位置に到達する前は、第1組421から第4組424の読取値の平均値はいずれも0となるため、最小平均値も0となる。最小平均値が引き続き閾値未満であるため、制御部30は、読取ユニット40が境界Bを検知していないと判定し(ステップS05:NO)、ステップS04及びS05の処理を繰り返す。
【0045】
読取ユニット40が異物FWの位置に到達すると、第1組421から第3組423の平均値はいずれも255となるが。第4組424の平均値は0となるため、最小平均値も0となる。最小平均値が引き続き閾値未満であるため、制御部30は、読取ユニット40が境界Bを検知していないと判定し(ステップS05:NO)、ステップS04及びS05の処理を繰り返す。
【0046】
読取ユニット40が異物FWの位置を通過すると、第1組421から第4組424の読取値の平均値はいずれも0となるため、最小平均値も0となる。最小平均値が引き続き閾値未満であるため、制御部30は、読取ユニット40が境界Bを検知していないと判定し(ステップS05:NO)、ステップS04及びS05の処理を繰り返す。
【0047】
読取ユニット40が境界Bに到達すると、第1組421から第4組424の読取値の平均値がいずれも0から255に変化するため、最小平均値も0から255に変化する。最小平均値が閾値未満から閾値以上に変化したため、制御部30は、読取ユニット40が境界Bを検知したと判定し(ステップS05:YES)、ステップS06の処理に移行する。
【0048】
一方、図11は、黒色の異物FBが基準部材60に付着している例である。この例では、3個の光電変換素子43に相当する大きさ(300dpiの場合、約0.25mm)の黒色の異物FBが基準部材60の第2組422に対応する位置に付着している。また、この例では、前述した電圧低下等の原因により、読取ユニット40が異物FBよりも左方で停止している。この場合、第1組421から第4組424の読取値の平均値は全て255となるため、最小平均値も255となる。最小平均値が閾値以上であるため、制御部30は、読取ユニット40が基準部材60に対向していると判定し(ステップS01:YES)、ステップS02及びS03の処理を実行する。
【0049】
読取ユニット40が異物FBの位置に到達する前は、第1組421から第4組424の読取値の平均値はいずれも255となるため、最小平均値も255となる。最小平均値が引き続き閾値以上であるため、制御部30は、読取ユニット40が境界Bを検知していないと判定し(ステップS03:NO)、ステップS02及びS03の処理を繰り返す。
【0050】
読取ユニット40が異物FBの位置に到達すると、第1組421、第3組423、第4組424の平均値はいずれも255となるが、第2組422の平均値は255×1÷4=63.75となるため、最小平均値は63.75となる。0と63.75の間に閾値を設定することで、最大で3個の光電変換素子に相当する大きさの黒色の異物FBの誤判定を防ぐことができる。そのため、本実施形態では、一例として、閾値を30に設定している。最小平均値が引き続き閾値以上であるため、制御部30は、読取ユニット40が境界Bを検知していないと判定し(ステップS03:NO)、ステップS02及びS03の処理を繰り返す。
【0051】
読取ユニット40が異物FBの位置を通過すると、第1組421から第4組424の読取値の平均値はいずれも255となるため、最小平均値も255となる。最小平均値が引き続き閾値以上であるため、制御部30は、読取ユニット40が境界Bを検知していないと判定し(ステップS03:NO)、ステップS02及びS03の処理を繰り返す。
【0052】
読取ユニット40が境界Bに到達すると、第1組421から第4組424の読取値の平均値がいずれも255から0に変化するため、最小平均値も255から0に変化する。最小平均値が閾値以上から閾値未満に変化したため、制御部30は、読取ユニット40が境界Bを検知したと判定し(ステップS03:YES)、ステップS06の処理に移行する。
【0053】
以上説明した本実施形態に係るスキャナー110によれば、読取ユニット40は、原稿台31に対応する領域を読み取る第1読取部41と、フレーム32に対応する領域を読み取る第2読取部42と、を含み、制御部30は、移動機構50により読取ユニット40を移動させながら、第2読取部42の読取値によりフレーム32と基準部材60との境界Bを検知し、境界Bから所定距離Dだけ離間したホームポジションHに読取ユニット40を位置決めするから、簡潔な構成により短時間で読取ユニット40をホームポジションHに位置決めすることができる。
【0054】
また、本実施形態に係るスキャナー110によれば、ホームポジションHは、基準部材60側に設定されており、制御部30は、第2読取部42がフレーム32に対向する位置で読取ユニット40が停止していることを第2読取部42の読取値が示している場合に、読取ユニット40を基準部材60の方向に移動させながら境界Bを検知し、第2読取部42が基準部材60に対向する位置で読取ユニット40が停止していることを第2読取部42の読取値が示している場合に、読取ユニット40をフレーム32の方向に移動させながら境界Bを検知するから、短時間で境界Bを検知することができる。
【0055】
また、本実施形態に係るスキャナー110によれば、第2読取部42は、主走査方向に並ぶ複数の光電変換素子43を備え、制御部30は、複数の光電変換素子43の読取値の最小値を用いて境界Bを検知するから、異物の付着による誤検知を防ぐことができる。
【0056】
また、本実施形態に係るスキャナー110によれば、制御部30は、複数の光電変換素子43の組毎の読取値の平均値の最小値を用いて境界Bを検知するから、電気ノイズによる読取値のばらつきの影響を軽減することができる。
【0057】
また、本実施形態に係るスキャナー110によれば、複数の光電変換素子43の組は、想定される異物よりも広い範囲を読み取り可能であるから、異物の付着による誤検知を防ぐことができる。
【0058】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0059】
上記実施形態では、複数の光電変換素子43の組毎の読取値の平均値の最小値(最小平均値)を用いて境界Bの検知を行う例が示されたが、第2読取部42の複数の光電変換素子43の読取値の最小値を用いて境界Bの検知を行うように構成されていてもよい。
【0060】
上記実施形態では、複数の光電変換素子43の組毎の読取値の平均値の最小値を用いて境界Bの検知を行う例が示されたが、複数の光電変換素子43の組毎の読取値の平均値の最大値を用いて境界Bの検知を行うように構成されていてもよい。この構成において、3個の光電変換素子43に相当する大きさの白色の異物FWが天板部32Tの第2組422に対応する位置に付着している場合、第1組421、第3組423、第4組424の平均値はいずれも0であるが、第2組422の平均値は255×3÷4=191.25となるため、組毎の読取値の平均値の最大値は、191.25となる。従って、閾値を191.25と255の間(例えば、230)に設定することで、この異物FWの誤判定を防ぐことができる。
【0061】
上記実施形態では、ホームポジションHが基準部材60側に設定されている例が示されたが、ホームポジションHがフレーム32側に設定されていてもよい。
【0062】
上記実施形態では、読取ユニット40がCISである例が示されたが、縮小光学系を用いたスキャナー110に本発明が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 プリンター(画像形成装置)
30 制御部
31 原稿台
32 フレーム
40 読取ユニット
41 第1読取部
42 第2読取部
43 光電変換素子
50 移動機構
60 基準部材
100 複合機(画像形成システム)
110 スキャナー(画像読取装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11