(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】被覆電線用接続具
(51)【国際特許分類】
G01R 11/00 20060101AFI20241217BHJP
H01R 4/2408 20180101ALI20241217BHJP
H01R 4/2406 20180101ALI20241217BHJP
【FI】
G01R11/00 H
H01R4/2408
H01R4/2406
(21)【出願番号】P 2020204036
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】有村 貴志
(72)【発明者】
【氏名】倉増 辰也
(72)【発明者】
【氏名】徳本 昌弘
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-134233(JP,A)
【文献】特開2015-008077(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1730009(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0006309(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 11/00
H01R 4/2408
H01R 4/2406
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線の芯線と電気的に接続して、被覆電線の電気量を測定するための被覆電線用接続具であって、
被覆電線を外周方向から導入可能に外周の一部を開口し
開口部を形成し、対向する一対の湾曲部を形成したC形チャンネル状の絶縁部材と、
ネジ部が一方の前記湾曲部の頂部と螺合し、頭部を回動すると前記ネジ部の先端部が他方の前記湾曲部の内壁に向かって進退
し、被覆電線を他方の前記湾曲部の内壁に固定する導電性を有するネジ部材と、を備え、
前記ネジ部材は、他方の前記湾曲部の内部に導入された被覆電線の絶縁被覆を突き破って芯線と導通可能な尖鋭部を前記ネジ部の先端部に形成し、
電気測定器に接続した測定ケーブルの端末に設けたワニ口クリップを一方の前記湾曲部から延出した前記ネジ部に挟持でき
、
前記開口部の幅は、被覆電線の直径より小さい、被覆電線用接続具。
【請求項2】
前記ワニ口クリップを前記ネジ部材に接続した状態で、前記絶縁部材及び前記ネジ部材を覆う引込線カバーを更に備えている、請求項1記載の被覆電線用接続具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆電線用接続具に関する。特に、電柱などから需要先に配設した引込線などの被覆電線の芯線と電気的に接続して、引込線の電気量を測定するのに好適な被覆電線用接続具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高圧の架空配電線は、電柱などの上部に架設している。この架空配電線は、電柱に設置した変圧器で降圧されている。変圧器に接続した低圧の配電線は、複数の分岐線に分岐している。そして、分岐線の端末は、C型圧縮スリーブを用いて、引込線と電気的に接続している。なお、C型圧縮スリーブは、開閉自在な絶縁性を有するスリーブカバーで覆われている。
【0003】
ところで、引込線の電圧を測定することがある。この場合、電柱の上部に電圧計を設置している。複数の分岐線と引込線を接続した引込分岐端子箱を電柱に設置してある場合は、電圧計に接続した測定ケーブルの端末に設けたワニ口クリップを引込分岐端子箱に設けた端子に接続することで、引込線の電圧を測定できる。
【0004】
引込分岐端子箱を電柱に設置していない場合は、引込線の端末を覆うC型スリーブカバーを取り外し、更に、引込線の芯線を圧縮したC型スリーブの周囲を巻き回した絶縁テープを剥離した後に、芯線となる撚り線の一部にワニ口クリップを挟んで電気的に接続することで、引込線の電圧を測定していた。
【0005】
このように、従来の引込線と電圧計の接続工事は、C型スリーブカバーの取り外し及び絶縁テープの剥離を必要としていたので、多くの作業時間を要していた。又、撚り線の直径が太い場合は、ワニ口クリップが外れ易いという不具合があった。
【0006】
従来の引込線と電圧計の接続工事の不具合に対して、無停電状態で被覆電線の芯線と直接的に電気的に接続できる無停電工具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。又、無停電状態で被覆電線との取り付け及び取り外しが容易な無停電工具が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-217155号公報
【文献】特開2002-184482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1による無停電工具は、被覆電線を外周方向から導入できるフック部を有するクランプ本体と、被覆を突き破り可能な環状刃部を先端部に形成し、クランプ本体と螺合したクランプネジと、を備え、クランプ本体は、バイパスケーブルを電気的に接続可能に固定できる固定ネジを有している。
【0009】
特許文献1による無停電工具は、被覆電線とバイパスケーブルを電気的に接続することは容易であるが、クランプ本体を導電部材で構成しているので、短絡の心配から引込線に無停電工具を取り付けることが容易でない、という問題がある。
【0010】
特許文献2による無停電工具は、被覆電線を外周方向から導入できるフック部を有するクランプ本体と、被覆を突き破り可能な先鋭部を先端部に形成し、クランプ本体と螺合したクランプネジと、を備え、クランプ本体は、クランプネジと螺合するナット部材を内部に保持し、ナット部材は、バイパスケーブルの端末に取り付けた圧着端子と電気的に接続可能なネジ部を有している。
【0011】
特許文献2による無停電工具は、クランプ本体を絶縁部材で構成しているで、短絡の心配がなく引込線に取り付けることが容易であるが、ナット部材を介して、クランプネジとワニ口クリップを着脱自在に接続することが容易でない、という問題がある。
【0012】
引込線などの被覆電線の芯線と電気的に接続して、被覆電線の電気量を測定するのに好適な被覆電線用接続具であって、電柱に配置した充電物と短絡する心配が無く、かつ、被覆電線の芯線とワニ口クリップとの接続が容易な被覆電線用接続具が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0013】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、引込線などの被覆電線の電気量を測定するのに好適な被覆電線用接続具であって、充電物と短絡する心配が無く、かつ、被覆電線の芯線とワニ口クリップとの接続が容易な被覆電線用接続具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、被覆電線を外周方向から導入可能に外周の一部を開口したC形チャンネル状の絶縁部材と、被覆を突き破り可能な尖鋭部を先端部に形成し、絶縁部材と螺合した導電性を有するネジ部材で被覆電線用接続具を構成し、被覆電線を絶縁部材の内部に導入した状態で、ネジ部材を螺進することで、尖鋭部が被覆を突き破って芯線と電気的に接続でき、ネジ部材の軸部にワニ口クリップを着脱自在に接続できると考え、これに基づいて、以下のような新たな被覆電線用接続具を発明するに至った。
【0015】
(1)本発明による被覆電線用接続具は、被覆電線の芯線と電気的に接続して、被覆電線の電気量を測定するための被覆電線用接続具であって、被覆電線を外周方向から導入可能に外周の一部を開口し、対向する一対の湾曲部を形成したC形チャンネル状の絶縁部材と、ネジ部が一方の前記湾曲部の頂部と螺合し、頭部を回動すると前記ネジ部の先端部が他方の前記湾曲部の内壁に向かって進退する導電性を有するネジ部材と、を備え、前記ネジ部材は、他方の前記湾曲部の内部に導入された被覆電線の絶縁被覆を突き破って芯線と導通可能な尖鋭部を前記ネジ部の先端部に形成し、電気測定器に接続した測定ケーブルの端末に設けたワニ口クリップを一方の前記湾曲部から延出した前記ネジ部に挟持できる。
【0016】
(2)本発明による被覆電線用接続具は、前記ワニ口クリップを前記ネジ部材に接続した状態で、前記絶縁部材及び前記ネジ部材を覆う絶縁性を有する引込線カバーを更に備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明による被覆電線用接続具は、引込線などの被覆電線の芯線と電気的に接続して、被覆電線の電気量を測定するのに好適であり、電柱に配置した充電物と短絡する心配が無く、かつ、被覆電線の芯線とワニ口クリップとの接続が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態による被覆電線用接続具の構成を示す斜視図である。
【
図2】前記実施形態による被覆電線用接続具の構成を示す斜視分解組立図である。
【
図3】前記実施形態による被覆電線用接続具の構成を示す縦断面図であり、ネジ部材の先端部を被覆電線の芯線に接続した状態図である。
【
図5】前記実施形態による被覆電線用接続具の構成を示す平面図であり、被覆電線用接続具を引込線カバーで覆った状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
[被覆電線用接続具の構成]
最初に、本発明の一実施形態による被覆電線用接続具の構成を説明する。
【0021】
(全体構成)
図1又は
図2を参照すると、本発明の一実施形態による被覆電線用接続具(以下、接続具と略称する)10は、引込線などの被覆電線Wの芯線Wcと電気的に接続して、被覆電線Wの電圧を測定できる。被覆電線Wは、撚り線からなる芯線Wcを絶縁被覆Wiで覆っている。接続具10は、C形チャンネル状の絶縁部材1と導電性を有するネジ部材2を備えている。
【0022】
図1から
図3を参照すると、絶縁部材1は、外周の一部を開口した開口部1sを有している。開口部1sは、被覆電線Wを外周方向から導入できる。又、絶縁部材1は、対向する一対の湾曲部11・12を形成している。一対の湾曲部11・12は、側壁部13で結合されている。側壁部13は、開口部1sと対向配置されている(
図3参照)。
【0023】
図2を参照すると、絶縁部材1は、一方の湾曲部11の頂部にネジ穴11hを設けている。ネジ穴11hには、ネジ部材2のネジ部2sと螺合できる。ネジ穴11hは、他方の湾曲部12の底面に向かって貫通している。他方の湾曲部12には、その底面に被覆電線Wを載置した状態で収容できる(
図3参照)。
【0024】
図1から
図4を参照すると、ネジ部材2は、頭部2hとネジ部2sを有している。頭部2hには、ネジ部材2をドライバなどの工具で回すための十字穴を形成している。ネジ部2sの先端部には、尖鋭部2aを形成している。
【0025】
図3又は
図4を参照して、ネジ部材2のネジ部2sが一方の湾曲部11の頂部と螺合した状態で、ドライバなどの工具を用いて、頭部2hを回動するとネジ部2sの先端部が他方の湾曲部12の内壁に向かって進退できる。
【0026】
図3又は
図4を参照すると、ネジ部材2の尖鋭部2aは、他方の湾曲部12の内部に導入された被覆電線Wの絶縁被覆Wiを突き破って芯線Wcと電気的に導通できる。
【0027】
図1を参照すると、一方の湾曲部11から延出したネジ部2sには、ワニ口クリップCaを挟持できる。ワニ口クリップCaは、図示しない電気測定器に接続した測定ケーブルCbの端末に設けている。これにより、被覆電線Wの電圧を測定できる。
【0028】
図1を参照して、被覆電線Wから接続具10を取り外した後は、ピンホール状の被覆はがれが絶縁被覆Wiにできるため、絶縁テープを被覆電線Wの外周に巻き回することで、絶縁処理を行うことが好ましい。
【0029】
図5を参照すると、接続具10は、絶縁性を有する開閉式の引込線カバー3で覆っておくことが好ましい。引込線カバー3は、市販の開閉式のスリーブカバーを用いることができる。引込線カバー3は、ワニ口クリップCaをネジ部材2に接続した状態で、接続具10を本体部30の内部に収容できる。
【0030】
又、
図5を参照すると、引込線カバー3は、一方の導出部31から被覆電線Wを導出でき、他方の導出部32から被覆電線W及び測定ケーブルCbを導出できる。引込線カバー3は、ネジ部材2及びワニ口クリップCaが電柱に設置した充電物と接触することを防止できる。
【0031】
(絶縁部材の構成)
次に、実施形態による絶縁部材1の構成を説明する。
図1から
図4を参照すると、絶縁部材1は、絶縁性を有する合成樹脂で形成している。絶縁性を有するプラスチックパイプを所望の形状に加工することもでき、絶縁性を有する合成樹脂を所望の形状に成形することもできる。
【0032】
図3を参照して、絶縁部材1の開口部1sの幅gは、被覆電線Wの直径dより僅かに小さいことが好ましい。絶縁部材1の弾力を利用して、被覆電線Wを絶縁部材1の内部に導入できる。絶縁部材1が弾性復帰することで、絶縁部材1が被覆電線Wから脱落することを防止できる。
【0033】
又、
図3を参照して、絶縁部材1をプラスチックなどの弾性体で構成することにより、接続対象となる被覆電線Wの直径dより大きい被覆電線Wを絶縁部材1の内部に導入できる。例えば、実施形態による絶縁部材1は、60sq(直径約9mm)の被覆電線Wを絶縁部材1の内部に導入できるが、80sq(直径約10mm)の被覆電線Wを絶縁部材1の内部に導入できる。
【0034】
(ネジ部材の構成)
次に、実施形態によるネジ部材2の構成を説明する。
図1から
図4を参照すると、ネジ部材2は、先端を尖鋭に形成したタッピンねじを用いることができ、又は、先端を尖鋭に形成した木ねじを用いることができる。タッピンねじ又は木ねじを用いることで、被締結部材には、雌ねじを形成することなく、下穴を空けておくだけで、ネジ部材2を回動することで、雌ねじを形成できる。頭部2hには、十字穴を設けてよく、すり割り溝を設けてもよい。ネジ部材2は、市販品を使用できる。
【0035】
(被覆電線用接続具の作用)
次に、実施形態による接続具10の作用及び効果を説明する。
【0036】
図1から
図4を参照すると、実施形態による接続具10は、被覆電線Wを外周方向から内部に導入可能な絶縁部材1と、ネジ部2sが一方の湾曲部11の頂部と螺合し、ネジ部2sの先端部が他方の湾曲部12の内壁に向かって進退する導電性を有するネジ部材2を備えている。そして、ネジ部材2を回動すると、尖鋭部2aが被覆電線Wの絶縁被覆Wiを突き破って芯線Wcと導通できる。ワニ口クリップCaを一方の湾曲部11から延出したネジ部2sに挟持することで、被覆電線Wの電圧を測定できる。
【0037】
実施形態による接続具10は、C型スリーブカバーを取り外し、更に、C型スリーブの周囲を巻き回した絶縁テープを剥離することなく、被覆電線Wの途上で、ネジ部材2が芯線Wcと電気的に接続できる。そして、ネジ部材2をワニ口クリップCaで挟持することで、被覆電線Wの電圧を測定できる。
【0038】
更に、
図5を参照して、ワニ口クリップCaをネジ部材2に接続した状態で、接続具10を引込線カバー3の内部に収容することで、ネジ部材2及びワニ口クリップCaが電柱に設置した充電物と接触することを防止できる。
【0039】
本発明による被覆電線用接続具は、以下の効果がある。
(1)C型スリーブカバーを取り外し、更に、C型スリーブの周囲を巻き回した絶縁テープを剥離する必要が無いので、引込線との接続工事の作業時間を短縮できる。
(2)ねじ部材の径が細く、ねじ山を形成しているで、ねじ部材をワニ口クリップで確実に挟持できる。
(3)絶縁部材から導電性を有するネジ部材が僅かに突出しているので、充電物との接触を抑制できる。
(4)絶縁テープを剥離するためのナイフを使用することがないので、安全である。
【符号の説明】
【0040】
1 絶縁部材
1c 供給部
2 ネジ部材
2a 尖鋭部
2h 頭部
2s ネジ部
10 接続具(被覆電線用接続具)
11・12 一対の湾曲部
W 被覆電線
Ca ワニ口クリップ
Cb 測定ケーブル
Wi 芯線
Wc 絶縁被覆