(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】画像形成装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20241217BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20241217BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20241217BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20241217BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G21/14
G03G15/01 113
G03G15/01 Y
B41J29/38 202
B41J29/393 101
(21)【出願番号】P 2020217932
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】入山 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中島 敬悟
(72)【発明者】
【氏名】古川 利郎
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-295533(JP,A)
【文献】特開2015-068953(JP,A)
【文献】特開2000-338742(JP,A)
【文献】特開2003-295532(JP,A)
【文献】特開2007-178928(JP,A)
【文献】特開2009-020411(JP,A)
【文献】特開2016-176978(JP,A)
【文献】特開2011-099940(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0253014(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 21/14
G03G 15/01
B41J 29/38
B41J 29/393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
前記感光体に現像剤を供給する現像ローラと、
前記感光体から現像剤像が転写されるベルトと、
前記ベルト上の現像剤像の濃度を読み取るセンサと、
画像形成装置の雰囲気温度を取得する温度センサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記現像ローラに印加する印刷用の現像バイアスを補正する現像バイアス補正処理を実行する場合に、
前記現像バイアス補正処理を実行する前の印刷用の現像バイアスである旧現像バイアスよりも全て小さい複数のテスト用の現像バイアスを設定する設定処理と、
前記設定処理で設定された前記複数のテスト用の現像バイアスを用いて、前記ベルト上に複数の現像剤像を形成する形成処理と、
前記形成処理で形成された前記複数の現像剤像の濃度を前記センサによって読み取る読み取り処理と、
前記読み取り処理で読み取られた前記複数の現像剤像の濃度に応じて印刷用の現像バイアスを算出する算出処理と、を実行
し、
前記設定処理において、前記複数のテスト用の現像バイアスとして、三値のテスト用の現像バイアスを設定し、前記三値のテスト用の現像バイアスを、小さい方から順に、第1値、第2値および第3値とした場合、前記旧現像バイアスと前記第3値との第3差分値の大きさを、前記温度センサよって取得した雰囲気温度が低い程、大きくする、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記設定処理におい
て、前記第1値と前記第2値との第1差分値が、前記第2値と前記第3値との第2差分値に等しくなるよう、前記第1値、前記第2値および前記第3値を設定する、請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記設定処理において、
前記第3差分値が、前記第1差分値および前記第2差分値よりも大きくなるよう、前記第1値、前記第2値および前記第3値を設定する、請求項
2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記算出処理において、ベタ画像に対応する前記感光体上の静電潜像を現像する場合における前記印刷用の現像バイアスを、前記現像ローラ上の現像剤の一部のみを前記静電潜像に移動させる値に設定する、請求項1から
3までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記形成処理において、前記複数のテスト用の現像バイアスを用いて、60%以上且つ100%未満の露光面積率に対応する現像剤像を前記ベルト上にそれぞれ形成する、請求項1から
4までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記感光体の表面を帯電させる帯電器を備え、
前記制御部は、
前記帯電器に印加する帯電バイアスの大きさを、前記テスト用の現像バイアスの大きさに応じて設定する帯電バイアス設定処理を実行する、請求項1から
5までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記現像バイアス補正処理を実行した後、前記現像バイアス補正処理において設定した印刷用の現像バイアスを用いて、互いに異なる複数の露光面積率に対応する現像剤像を前記ベルト上にそれぞれ形成し、入力画像の階調に対応する露光面積率を設定するガンマ補正処理を実行する、請求項1から
6までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前回の現像バイアス補正処理を実行した後、所定枚数分の印刷処理を実行した場合に、前記現像バイアス補正処理を実行する、請求項1から
6までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記画像形成装置の雰囲気温度を取得する温度センサを備え、
前記制御部は、
前回の現像バイアス補正処理を実行した後、前記温度センサよって取得した雰囲気温度が所定以上変化した場合に、前記現像バイアス補正処理を実行する、請求項1から
8までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記現像剤を収容する収容部を備え、
前記制御部は、
前記収容部を交換した場合に、前記旧現像バイアスとして所定値の現像バイアスを用いて、前記設定処理を実行する、請求項1から
9までの何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
感光体と、前記感光体に現像剤を供給する現像ローラと、前記感光体から現像剤像が転写されるベルトと、
画像形成装置の雰囲気温度を取得する温度センサと、を備えている画像形成装置の制御方法であって、
前記現像ローラに印加する印刷用の現像バイアスを補正する現像バイアス補正処理を実行する場合に、
前記現像バイアス補正処理を実行する前の印刷用の現像バイアスである旧現像バイアスよりも全て小さい複数のテスト用の現像バイアスを設定して、前記ベルト上に複数の現像剤像を形成する形成工程と、
前記ベルト上の前記複数の現像剤像の濃度に応じて印刷用の現像バイアスを算出する算出工程と、を含
み、
前記形成工程において、前記複数のテスト用の現像バイアスとして、三値のテスト用の現像バイアスを設定し、前記三値のテスト用の現像バイアスを、小さい方から順に、第1値、第2値および第3値とした場合、前記旧現像バイアスと前記第3値との第3差分値の大きさを、前記温度センサよって取得した雰囲気温度が低い程、大きくする、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタなどの画像形成装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
目標とする印刷濃度を維持するために、複数の現像バイアスのそれぞれに対応するトナーパッチを作成して読み取ることで、現像バイアスを補正する画像形成装置が従来技術として知られている。特許文献1に開示されている技術では、目標とする印刷濃度に近いと想定される直近の現像バイアスを基準として、その上下の電位の現像バイアスに対応するトナーパッチを生成して現像バイアスを補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術では、露光面積率が高い現像バイアス補正用のトナーパッチを用いた場合、現像バイアスの変化に対して反射光量の変化が小さいため、トナーパッチの正確な濃度を測定することが困難となる問題がある。本開示は、高い露光面積率においても、画像形成装置における正確な現像バイアスの補正を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像形成装置は、感光体と、前記感光体に現像剤を供給する現像ローラと、前記感光体から現像剤像が転写されるベルトと、前記ベルト上の現像剤像の濃度を読み取るセンサと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記現像ローラに印加する印刷用の現像バイアスを補正する現像バイアス補正処理を実行する場合に、前記現像バイアス補正処理を実行する前の印刷用の現像バイアスである旧現像バイアスよりも全て小さい複数のテスト用の現像バイアスを設定する設定処理と、前記設定処理で設定された前記複数のテスト用の現像バイアスを用いて、前記ベルト上に複数の現像剤像を形成する形成処理と、前記形成処理で形成された前記複数の現像剤像の濃度を前記センサによって読み取る読み取り処理と、前記読み取り処理で読み取られた前記複数の現像剤像の濃度に応じて印刷用の現像バイアスを算出する算出処理と、を実行する。
【0006】
前記の構成によれば、目標となる現像バイアスに対応する濃度よりも小さい濃度の現像剤像をセンサによる読み取りの対象とするため、読み取りの精度が改善する。これにより、高い露光面積率においても、画像形成装置における正確な現像バイアスの補正が可能となる。
【0007】
前記制御部は、前記設定処理において、前記複数のテスト用の現像バイアスとして、三値のテスト用の現像バイアスを設定してもよい。
【0008】
前記の構成によれば、現像バイアスと、対応する印刷濃度とによって規定される座標値を曲線補間することによって、より正確な現像バイアスの補正が可能となる。
【0009】
前記制御部は、前記設定処理において、前記三値のテスト用の現像バイアスを、小さい方から順に、第1値、第2値および第3値とした場合、前記第1値と前記第2値との第1差分値が、前記第2値と前記第3値との第2差分値に等しくなるよう、前記第1値、前記第2値および前記第3値を設定してもよい。
【0010】
前記の構成によれば、テスト用の現像バイアスを簡易に設定できる。
【0011】
前記制御部は、前記設定処理において、前記旧現像バイアスと、前記第3値との第3差分値が、前記第1差分値および前記第2差分値よりも大きくなるよう、前記第1値、前記第2値および前記第3値を設定してもよい。
【0012】
前記の構成によれば、前回の現像バイアス補正処理において設定した印刷用の現像バイアスとの差分が大きい複数のテスト用の現像バイアスが用いられるため、画像形成装置におけるより正確な現像バイアスの補正が可能となる。
【0013】
前記画像形成装置の雰囲気温度を取得する温度センサを備え、前記制御部は、前記設定処理において、前記第3差分値の大きさを、前記温度センサよって取得した雰囲気温度に応じて変更してもよい。
【0014】
前記の構成によれば、例えば雰囲気温度が低い程、第3差分値を大きく設定することにより、雰囲気温度に応じた好適な現像バイアスを用いて現像剤像を形成することができる。
【0015】
前記制御部は、前記算出処理において、ベタ画像に対応する前記感光体上の静電潜像を現像する場合における前記印刷用の現像バイアスを、前記現像ローラ上の現像剤の一部のみを前記静電潜像に移動させる値に設定してもよい。
【0016】
前記の構成によれば、印刷に使用される現像剤量を、現像ローラの周速に依存させずに制御することが可能となるため、現像ローラの周速の変動による印刷濃度変化を抑制することができる。
【0017】
前記制御部は、前記形成処理において、前記複数のテスト用の現像バイアスを用いて、60%以上且つ100%未満の露光面積率に対応する現像剤像を前記ベルト上にそれぞれ形成してもよい。
【0018】
前記の構成によれば、高濃度の現像剤像を基準とすることによって高濃度領域における階調性を好適に取得することができる。
【0019】
前記感光体の表面を帯電させる帯電器を備え、前記制御部は、前記帯電器に印加する帯電バイアスの大きさを、前記テスト用の現像バイアスの大きさに応じて設定する帯電バイアス設定処理を実行してもよい。
【0020】
前記の構成によれば、適切な帯電バイアスを用いてベルト上の現像剤像を形成できる。
【0021】
前記制御部は、前記現像バイアス補正処理を実行した後、前記現像バイアス補正処理において設定した印刷用の現像バイアスを用いて、互いに異なる複数の露光面積率に対応する現像剤像を前記ベルト上にそれぞれ形成し、入力画像の階調に対応する露光面積率を設定するガンマ補正処理を実行してもよい。
【0022】
前記の構成によれば、現像バイアス補正処理のときに基準として用いたものとは異なる露光面積率に対応する印刷濃度についても補正を行うことができる。
【0023】
前記制御部は、前回の現像バイアス補正処理を実行した後、所定枚数分の印刷処理を実行した場合に、前記現像バイアス補正処理を実行してもよい。
【0024】
前記の構成によれば、印刷を続けることによって現像剤の帯電量等の特性が変化したことに起因して印刷濃度が変化した場合に、現像バイアス補正処理を実行させることができる。
【0025】
前記画像形成装置の雰囲気温度を取得する温度センサを備え、前記制御部は、前回の現像バイアス補正処理を実行した後、前記温度センサよって取得した雰囲気温度が所定以上変化した場合に、前記現像バイアス補正処理を実行してもよい。
【0026】
前記の構成によれば、雰囲気温度が変化したことによって現像剤の帯電量等の特性が変化したことに伴い印刷濃度が変化した場合に、現像バイアス補正処理を実行させることができる。
【0027】
前記現像剤を収容する収容部を備え、前記制御部は、前記収容部を交換した場合に、前記旧現像バイアスとして所定値の現像バイアスを用いて、前記設定処理を実行してもよい。
【0028】
前記の構成によれば、特性の異なる現像剤を収容する収容部に交換されたことに伴い印刷濃度が変化した場合に、現像バイアス補正処理を実行させることができる。
【0029】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像形成装置の制御方法は、感光体と、前記感光体に現像剤を供給する現像ローラと、前記感光体から現像剤像が転写されるベルトと、を備えている画像形成装置の制御方法であって、前記現像ローラに印加する印刷用の現像バイアスを補正する現像バイアス補正処理を実行する場合に、前記現像バイアス補正処理を実行する前の印刷用の現像バイアスである旧現像バイアスよりも全て小さい複数のテスト用の現像バイアスを設定して、前記ベルト上に複数の現像剤像を形成する形成工程と、前記ベルト上の前記複数の現像剤像の濃度に応じて印刷用の現像バイアスを算出する算出工程と、を含む。
【0030】
前記の構成によれば、本発明の一態様に係る画像形成装置と同様な効果を奏する。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様によれば、高い露光面積率においても、画像形成装置における正確な現像バイアスの補正が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】カラープリンタの概略構成を示す図面である。
【
図2】カラープリンタの機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】カラープリンタの制御方法であって、現像バイアス補正処理及びガンマ補正処理を実行する場合における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】各露光面積率に対応する現像剤像について、現像バイアスと濃度との関係を示す図、及び各露光面積率に対応する現像剤像の濃度が変化する範囲を示す図である。
【
図5】ベルト上に形成されたトナーパッチの一例を示す図である。
【
図6】読み取り処理において読み取られた各トナーパッチの濃度と、各濃度に対応する現像バイアスとの関係を示す図である。
【
図7】現像バイアスと現像剤像の濃度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。なお、説明の便宜上、同一の部材には同一の符号を付し、それらの名称や機能も同一である。したがって、それらの詳細な説明は繰り返さない。
【0034】
(カラープリンタ1の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るカラープリンタ1の概略構成を示す図面である。
図1に示すように、画像形成装置の一例としてのカラープリンタ1は、筐体10、シート供給部20、および画像形成部30を備えている。
図1では、カラープリンタ1の方向について、
図1における左側を「前」、右側を「後」とし、上側を「上」、下側を「下」とする。
【0035】
筐体10は、開口10Aと、開口10Aを開閉可能なカバー11とを備えている。カバー11は、上下方向において、露光ヘッド40の感光体51が配置された側とは反対側、具体的には、筐体10の上方に配置されている。カバー11は、筐体10の後方に設けられた回動軸11Aを中心として回動可能に支持されており、筐体10に形成された開口10Aを開閉する。カバー11は、開口10Aを閉鎖する閉鎖位置(
図1の位置)と、開口10Aを開放する開放位置との間で回動可能となっている。カバーセンサ12は、カバー11が開かれたこと、および、閉じられたことを検出するセンサである。カバーセンサ12は、カバー11が開かれると、カバー11が閉じられるまでオン信号を出力する。
【0036】
また、筐体10には、図示しない吸気口の内側付近に、カラープリンタ1の雰囲気温度を取得する温度センサ92が設けられている。
【0037】
シート供給部20は、筐体10内の下部に設けられる。シート供給部20は、シートトレイ21およびピックアップローラ22を備えている。シートトレイ21は、シートPを収容している。ピックアップローラ22は、シートトレイ21からシートPを画像形成部30に供給する。シートトレイ21内のシートPは、ピックアップローラ22によって1枚ずつ分離されて画像形成部30に供給される。
【0038】
画像形成部30は、筐体10内において、シートトレイ21の上部に配置されている。画像形成部30は、複数の露光ヘッド40、複数の感光体カートリッジの一例としての複数のプロセスカートリッジPC、転写ユニット70、および定着ユニット80を備えている。
図1では、露光ヘッド40およびプロセスカートリッジPCの数は、いずれも4つである。
【0039】
露光ヘッド40は、感光体51を露光する露光装置であり、カバー11から吊り下げられるようにカバー11に支持されている。露光ヘッド40は、カバー11を閉じた状態において、感光体51の上方に対向して配置されている。詳細には、露光ヘッド40は、カバー11の開閉によって、感光体51を露光する露光位置(
図1の位置)と、当該露光位置よりも感光体51から離れた退避位置との間を移動可能となっている。
【0040】
複数のプロセスカートリッジPCは、カバー11とシートトレイ21との間において、前後方向に沿って並列配置されている。複数のプロセスカートリッジPCは、カバー11が開かれた状態において、開口10Aを通して筐体10に対して着脱可能となっている。プロセスカートリッジPCは、ドラムユニット50、および収容部の一例としての現像カートリッジ60とを備えている。
【0041】
ドラムユニット50は、感光体51、帯電器52、押圧バネ53、クリーニングローラ54、ドラムフレーム55、メモリ56、およびカートリッジ側端子57を備えている。感光体51は、現像剤の一例としてのトナーが担持される円筒形のドラムである。帯電器52は、感光体51を帯電する。押圧バネ53は、プロセスカートリッジPCにおいて、現像カートリッジ60を感光体51に向けて付勢する。クリーニングローラ54は、感光体51上に残ったトナー等の異物を除去する。クリーニングローラ54は、感光体51に接触して回転可能となっている。ドラムフレーム55は、プロセスカートリッジPCにおいて、感光体51等を支持する。
【0042】
メモリ56は、プロセスカートリッジPCに関する情報を記憶する。カートリッジ側端子57は、メモリ56と導通している。複数の筐体側端子13のそれぞれは、プロセスカートリッジPCごとに、筐体10に設けられる。カートリッジ側端子57は、対応するプロセスカートリッジPCが筐体10に設けられているときに、当該プロセスカートリッジPCに対応するカートリッジ側端子57に接続されている。
【0043】
現像カートリッジ60は、ドラムユニット50に着脱可能なカートリッジである。現像カートリッジ60は、トナー収容部61および現像ローラ62を備えている。トナー収容部61は、現像剤の一例としての特定の色のトナーを、その内部に収容する。詳細には、各トナー収容部61は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、およびブラック(K)のいずれかの色のトナーを収容している。現像ローラ62は、対応するトナー収容部61内のトナーを、対応する感光体51に供給する。トナーは非磁性一成分の正帯電トナーである。
【0044】
プロセスカートリッジPCは、着脱可能な現像カートリッジ60がプロセスカートリッジPCに装着された状態で筐体10に着脱される。メモリ56は、現像カートリッジ60に設けられ、プロセスカートリッジPCのカートリッジ側端子57を介して筐体側端子13に接続されてもよい。これに限らず、現像カートリッジ60は、プロセスカートリッジPCとは別に、筐体10に着脱可能であってもよい。あるいは、プロセスカートリッジPCは、プロセスカートリッジPCと一体である収容部の一例としてのトナー収容部61および現像ローラ62を備えていてもよい。この例では、トナー収容部61および現像ローラ62は、プロセスカートリッジPCから着脱不可である。
【0045】
転写ユニット70は、シートトレイ21とプロセスカートリッジPCとの間に設けられている。転写ユニット70は、駆動ローラ71、従動ローラ72、ベルト73、複数の転写ローラ74、およびセンサ75を備えている。ベルト73は、駆動ローラ71と従動ローラ72の間に張設された無端状のベルトである。ベルト73の外側の面は、各感光体51に接している。ベルト73の外側の面には、各感光体51からトナーによるトナー像が転写される。ここで、前記トナー像は、本開示における現像剤像の一例である。各転写ローラ74は、各感光体51との間においてベルト73を挟持するように、ベルト73の内側に配置されている。センサ75は、後述する読み取り処理等を行うためのセンサであり、ベルト73の外側かつ駆動ローラ71の近辺に配置されている。センサ75は、ベルト73に光を照射し、ベルト73から反射光を受光することによって、ベルト73上に形成されたトナー像の濃度を読み取る光センサである。
【0046】
定着ユニット80は、プロセスカートリッジPCおよび転写ユニット70の後方に設けられている。定着ユニット80は、加熱ローラ81および加圧ローラ82を備えている。加圧ローラ82は、加熱ローラ81と対向して配置されており、加熱ローラ81を押圧する。
【0047】
カラープリンタ1は、次の手順に従って、シートP上に画像を形成する。画像形成部30は、まず、各感光体51の表面を、帯電器52によって一様に帯電させる。つぎに、露光ヘッド40によって感光体51を露光することによって、感光体51上に画像データに基づく静電潜像を形成する。そして、現像ローラ62に現像バイアスを印加することによって、感光体51に現像ローラ62からトナーを供給し、静電潜像を可視像化させる。また、現像バイアスは、トナーの極性と同極性であり、現像ローラ62に印可される電圧の偏倚量である。現像バイアスの印加により、感光体51上にトナー像を形成する。画像形成部30は、各感光体51上に形成されたトナー像を、駆動ローラ71及び従動ローラ72によってベルト73上を搬送されるシートP上に、順次重ね合わせて転写する。転写ユニット70は、トナー像が転写されたシートPを、加熱ローラ81と加圧ローラ82の間を搬送させる。定着ユニット80は、加熱ローラ81によってシートPを加熱することによって、トナー像をシートPに熱定着させる。その後、カラープリンタ1は、シートPを、搬送ローラ91によって筐体10内から外部に排出し、カバー11の上面に設けられる排シートトレイ11B上に載置させる。
【0048】
なお、画像形成部30は、中間転写方式によってシートPに画像を形成してもよい。中間転写方式によれば、画像形成部30は、ベルト73の外側の面上にトナー像をいったん形成し、それからベルト73上のトナー像をシートPに転写する。
【0049】
(カラープリンタ1の機能的構成)
図2は、本発明の一実施形態に係るカラープリンタ1の機能的構成を示すブロック図である。ただし、
図2においては、
図1に示すカラープリンタ1が備える部材の一部の図示を省略している。この図に示すように、カラープリンタ1は、制御部100、センサ75等を有する画像形成部30と、表示部110、操作部120、通信部130および温度センサ92を備えている。制御部100は、画像形成部30、表示部110、操作部120、および通信部130に電気的に接続されている。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、および記憶部の一例としてのNVM(Non-Volatile Memory)104を備えている。
【0050】
CPU101は、ROM102から読み出したプログラムにしたがって処理を行い、その処理の結果をRAM103またはNVM104に記憶させながら、カラープリンタ1の各部を制御する。ROM102には、各種のプログラムが記憶されており、各種のプログラムには、例えば、カラープリンタ1の各部を制御するためのプログラムが含まれる。RAM103は、CPU101が各種のプログラムを実行する際の作業領域およびデータの一時的な記憶領域として利用される。NVM104は、書き換え可能な不揮発性メモリである。
【0051】
表示部110は、液晶ディスプレイを有し、各種の設定画面およびカラープリンタ1の動作状態等を表示する。操作部120は、複数のボタンを有し、ユーザによる各種の入力指示を受け付ける。通信部130は、無線通信方式または有線通信方式により、PC(Personal Computer)等の外部機器200と通信を行い、データを受信する。通信部130は、LAN(Local Area Network)等のインターフェースである。なお、通信部130は、複数の外部機器200と通信を行ってもよい。
【0052】
(カラープリンタ1の制御方法)
図3は、本発明の一実施形態に係るカラープリンタ1の制御方法であって、現像ローラ62に印加する印刷用の現像バイアスを補正する現像バイアス補正処理、及びガンマ補正処理を実行する場合における処理の流れを示すフローチャートである。
図3のフローチャートに示す処理は、例えばカラープリンタ1が起動したとき、又はカバー11が閉じられたことをカバーセンサ12が検出したときに実行され得る。なお、
図3のフローチャートに示す処理の各工程が実行される順序は、以下の説明に示すものに限定されない。
【0053】
S101において、制御部100は、現像バイアス補正処理を開始するための条件が満たされたか否かを判定する。ここで、前記条件が満たされた場合とは、例えば以下の場合が挙げられる。
・前回の現像バイアス補正処理を実行した後、所定枚数分の印刷処理を実行した場合
・前回の現像バイアス補正処理を実行した後、温度センサ92によって取得した雰囲気温度が所定温度以上変化した場合
・トナーを収容する現像カートリッジ60が交換された場合
・操作部120または通信部130が現像バイアス補正を実行する指令を受けた場合
また、特に限定されないが、前記所定枚数は、例えば1000枚であってもよく、前記所定温度は、例えば摂氏6度であってもよい。
【0054】
S101において、制御部100は、前記条件が満たされたと判定した場合、続いてS102において、前記条件が現像カートリッジ60の交換によって満たされたか否かを判定する。また、制御部100が、前記条件が満たされていないと判定した場合、
図3のフローチャートに基づく処理が終了する。
【0055】
S102において、制御部100は、現像カートリッジ60の交換以外の要因によって前記条件が満たされたと判定した場合、S103において、前回の現像バイアス補正処理において設定した印刷用の現像バイアスを、今回の現像バイアス補正処理における補正の基準となる旧現像バイアスとして設定する。旧現像バイアスは、今回の現像バイアス補正処理を実行する前の印刷用の現像バイアスである。
【0056】
なお、制御部100は、前回の現像バイアス補正処理において印刷用の現像バイアスを設定した後、印刷枚数が増加するのに応じて印刷用の現像バイアスを変化させる処理を行ってもよい。この場合には、旧現像バイアスとして今回の現像バイアス補正処理を実行する直前の印刷用の現像バイアスを設定してもよい。
【0057】
S102において、制御部100は、現像カートリッジ60の交換によって前記条件が満たされたと判定した場合、S104において、旧現像バイアスとして所定値の現像バイアスを設定する。換言すると、現像カートリッジ60が交換された場合は、制御部100は、前回の現像バイアス補正処理において設定した印刷用の現像バイアスではなく、所定値の現像バイアスを旧現像バイアスとして用いる。また、所定値の現像バイアスは、新品の現像カートリッジ60に対して規定された固定値であってもよいし、現像カートリッジ60に搭載されたメモリ56に記録された情報に応じた値であってもよい。
【0058】
続いて制御部100は、旧現像バイアスよりも全て小さい複数のテスト用の現像バイアスを設定する設定処理を実行する。例えば制御部100は、設定処理において、複数のテスト用の現像バイアスとして、三値のテスト用の現像バイアスを、以下の工程S105~S107によって設定してもよい。
【0059】
以下、前記三値のテスト用の現像バイアスを、小さい方から順に、第1値であるVb1、第2値であるVb2、第3値であるVb3として説明する。また、Vb1とVb2との第1差分値をΔV1とし、Vb2とVb3との第2差分値をΔV2とし、且つ旧現像バイアスと、Vb3との第3差分値をΔV3とする。
【0060】
なお、負帯電のトナーを使用し、負極性の現像バイアスを印可する構成の場合、現像バイアスが小さいとは、現像バイアスの絶対値が小さいこと、即ち基準電位からの偏倚量が小さいことを意味する。
【0061】
S105において、温度センサ92は、カラープリンタ1の雰囲気温度を取得する。
【0062】
S106において、制御部100は、ΔV3を設定する。換言すると、制御部100は、Vb3を設定する。また、制御部100は、設定処理において、ΔV3の大きさを、温度センサ92によって取得した雰囲気温度に応じて変更してもよい。例えば雰囲気温度が低い程、ΔV3を大きく設定することにより、雰囲気温度に応じた好適な現像バイアスを用いてトナー像を形成することができる。通常、雰囲気温度が低い程、トナーの帯電量が高くなり、現像バイアスの変化に対してトナー像の濃度変化が小さくなる。そのため、雰囲気温度が低い環境下においては、トナー像の濃度を下げるためにΔV3を大きく設定することが望ましい。
【0063】
S107において、制御部100は、ΔV1及びΔV2を設定する。換言すると、制御部100は、Vb1及びVb2を設定する。
【0064】
また、制御部100は、前記設定処理において、ΔV1が、ΔV2に等しくなるよう、Vb1、Vb2およびVb3を設定してもよい。また、制御部100は、前記設定処理において、ΔV3が、ΔV1およびΔV2よりも大きくなるよう、Vb1、Vb2およびVb3を設定してもよい。これにより、旧現像バイアスとの差分が大きい複数のテスト用の現像バイアスが用いられるため、トナー像の濃度をより小さくし、カラープリンタ1におけるより正確な現像バイアスの補正が可能となる。一例として、制御部100は、ΔV1を40(V)、ΔV2を40(V)、ΔV3を100(V)に設定してもよい。
【0065】
なお、Vb1、Vb2およびVb3の値は、色毎に互いに異なっていてもよい。即ち、例えば第1色に対応するVb1と第2色に対応するVb1とは、必ずしも同一であることを要しない。
【0066】
S108において、制御部100は、帯電器52に印加する帯電バイアスの大きさを、テスト用の現像バイアス、即ちVb1、Vb2及びVb3の大きさに応じて設定する帯電バイアス設定処理を実行する。
【0067】
S109において、制御部100は、画像形成部30を制御して現像バイアスVb1を現像ローラ62に印加し、ベルト73の表面にトナー像の一例であるトナーパッチ「Patch1」を色毎に形成する。続いてS110において、制御部100は、現像バイアスVb1を用いて形成されたトナーパッチの濃度dens1を、センサ75によって読み取る。また、dens1、並びに後述するdens2及びdens3の値は、色毎に互いに異なり得る。
【0068】
S111において、制御部100は、画像形成部30を制御して現像バイアスVb2を現像ローラ62に印加し、ベルト73の表面に各色のトナーパッチ「Patch2」を形成する。続いてS112において、制御部100は、現像バイアスVb2を用いて形成されたトナーパッチの濃度dens2を、センサ75によって読み取る。
【0069】
S113において、制御部100は、画像形成部30を制御して現像バイアスVb3を現像ローラ62に印加し、ベルト73の表面に各色のトナーパッチ「Patch3」を形成する。続いてS114において制御部100は、現像バイアスVb3を用いて形成されたトナーパッチの濃度dens3を、センサ75によって読み取る。
【0070】
S109、S111及びS113の工程においてベルト73上に形成するトナーパッチについて補足する。
図4(A)は、100%、75%及び70%の各露光面積率に対応するトナーパッチについて、現像バイアスと濃度との関係を示す図である。また、
図4(B)は、上記の各露光面積率に対応するトナーパッチの濃度が変化する範囲を示す図である。
【0071】
前記各工程においてベルト73上のトナーパッチは、色毎に等しい露光面積率によって形成される。また、露光面積率とは、二値化された画像に対応する静電潜像を感光体51に形成する範囲において、感光体51を露光させる面積の割合を意味する。
【0072】
各色において、トナーパッチの濃度が変化する範囲に、目標とする濃度である目標濃度を含み、且つ、センサ75が適切な階調値を取得するために前記濃度が変化する範囲が大きい露光面積率によってトナーパッチが形成されることが望ましい。
図4に示す例においては、目標濃度が1.38であるので、75%の露光面積率に対応するトナーパッチが形成されることが望ましい。
【0073】
図5は、ベルト73上に形成されたトナーパッチの一例を示す図である。
図5において示される連続する「YMCK」は、それぞれS109、S111およびS113で形成された各色のトナーパッチである。また、
図5におけるダミーのトナーパッチ「d」は、異なるテスト用の現像バイアスで形成された各色YMCKのトナーパッチの間隔を空けていることを示している。
【0074】
上述したS109~S114の処理を換言すれば、制御部100は、以下の形成処理と読み取り処理とを実行する。即ち、制御部100は、前記形成処理として、S105~S107の設定処理で設定された複数のテスト用の現像バイアスVb1~Vb3を用いて、ベルト73上に複数のトナーパッチを形成する。制御部100は、前記読み取り処理として、前記形成処理で形成された前記複数のトナーパッチの濃度dens1~dens3をセンサ75によって読み取る。
【0075】
また、上述したように、制御部100は、形成処理において、複数のテスト用の現像バイアスを用いて、60%以上且つ100%未満の露光面積率に対応するトナーパッチをベルト73上にそれぞれ形成してもよい。高濃度のトナーパッチを現像バイアス補正処理の基準とすることによって、高濃度領域における濃度の階調性を好適に取得することができる。
【0076】
S115において、制御部100は、対象とする色に関して、テスト用の現像バイアスVb1~Vb3と、各現像バイアスを用いて形成されたトナーパッチの濃度であって、読み取り処理において読み取られた濃度と、によって規定される座標値を基に、例えば多項式近似によって曲線補間を行う。
図6は、前記濃度と、各濃度に対応する現像バイアスとの関係を示す図である。
【0077】
図6に関して、例えばx1=dens1、x2=dens2、x3=dens3、y1=Vb1、y2=Vb2、y3=Vb3としたとき、点(dens1, Vb1)、(dens2, Vb2)、(dens3, Vb3)を通る曲線y=ax
2+bx+cの係数a, b, cは、例えば以下の式によって色毎に導出されてよい。
a=(x2*y3-x1*y3-x3*y2+x1*y2+x3*y1-x2*y1)/((x2-x1)*(x3-x1)*(x3-x2))
b=-(x2^2*y3-x1^2*y3-x3^2*y2+x1^2*y2+x3^2*y1-x2^2*y1)/((x2-x1)*(x3-x1)*(x3-x2))
c=(x1*x2^2*y3-x1^2*x2*y3-x1*x3^2*y2+x1^2*x3*y2+x2*x3^2*y1-x2^2*x3*y1)/((x2-x1)*(x3-x1)*(x3-x2))
S116において、制御部100は、対象とする色に関して、読み取り処理で読み取られた複数のトナーパッチの濃度に応じて印刷用の現像バイアスV0を算出する算出処理を実行する。現像バイアスV0は、上述した曲線の式に、対象とする色の目標濃度を示す値であるdens[YMCK]を以下のように代入することによって導出される。
V0=a*(dens[YMCK])^2+b*(dens[YMCK])+c
また、制御部100は、算出処理において、ベタ画像に対応する感光体51上の静電潜像を現像する場合における印刷用の現像バイアスを、現像ローラ62上のトナーの一部のみを静電潜像に移動させる値に設定する構成であってもよい。換言すれば、制御部100は、ベタ画像に対応する感光体51上の静電潜像を現像する場合における印刷用の現像バイアスを、現像ローラ62上のトナーを全て静電潜像に移動させない値に設定する構成であってもよい。ここで、上述したベタ画像に対応する感光体51上の静電潜像の露光面積率は100%である。
【0078】
図7は、現像バイアスとトナー像の濃度との関係を示す図である。
図7の比較例に示す構成においては、ベタ画像に対応する感光体51上の静電潜像を現像する場合に、現像ローラ62上に担持された、電界によって移動可能なトナーが全て静電潜像に移動する。比較例の構成においては、例えば現像ローラ62の速度変動が生じた場合に、静電潜像へトナー供給量が変動し、現像ローラの周速の変動による印刷濃度変化が発生する虞がある。そのため、現像ローラの周速の変動による印刷濃度変化の発生を抑制できない。
【0079】
一方で
図7に示す本実施例、即ち本願の上述した構成においては、ベタ画像に対応する感光体51上の静電潜像を現像する場合においても、現像ローラ62上に担持されたトナーが残ることとなる。例えば
図7における「目標値」がベタ画像に対応する濃度であるとすると、印刷用の現像バイアスとしてV1が設定されるが、本実施例においては、現像バイアスがV2を超える分まで、現像ローラ62から供給可能なトナーが上限に達しない。これにより、現像ローラ62の速度変動が生じた場合であっても現像ローラ62から供給されるトナーの量は、電界に依存する量、すなわち印刷用の現像バイアスV1に依存する量となるため、印刷濃度変化の発生を抑制することが可能となる。
【0080】
S117において、制御部100は、対象となる色に関して、現像バイアス補正処理を実行した後、以下のガンマ補正処理を実行する。即ち、制御部100は、現像バイアス補正処理において設定した印刷用の現像バイアスを用いて、互いに異なる複数の露光面積率に対応するトナーパッチをベルト73上にそれぞれ形成し、入力画像の階調に対応する露光面積率を設定する。これにより、ベルト73上にトナーパッチを形成するときに用いた露光面積率とは異なる露光面積率に対応する印刷濃度についても補正を行うことができる。また、高い露光面積率に対応する印刷濃度を補正した上でガンマ補正処理を実行することにより、中間階調の近傍の露光面積率についても安定した出力階調となるように印刷濃度を補正することができる。
【0081】
S118において、制御部100は、現像バイアス補正処理及びガンマ補正処理が、処理すべき全ての各色について完了したか否かを判定する。制御部100が、各色について処理が完了したと判定した場合、
図3のフローチャートに基づく処理が終了する。制御部100が、或る色について処理が完了していないと判定した場合、前記の色についてS115以降の処理が実行される。
【0082】
なお、処理すべき全ての各色について現像バイアス補正処理が完了した後に、ガンマ補正処理が実行される構成であってもよい。
【0083】
以上のように、カラープリンタ1の制御方法は、現像バイアス補正処理を実行する場合に、少なくとも以下の形成工程及び算出工程を含む。即ち、形成工程では、S106およびS107に示すように、制御部100は、旧現像バイアスよりも全て小さい複数のテスト用の現像バイアスを設定する。そして、S109、S111及びS113に示すように、制御部100は、ベルト73上に複数のトナーパッチを形成する。また、算出工程では、S116に示すように、制御部100は、ベルト73上の複数のトナーパッチの濃度に応じて印刷用の現像バイアスを算出する。
【0084】
前記構成によれば、目標となる現像バイアスに対応する濃度よりも小さい濃度のトナーパッチをセンサ75による読み取りの対象とするため、現像バイアスの変化に対してベルト73からの反射光量の変化が比較的大きくなり、読み取りの精度が改善する。これにより、高い露光面積率においても、カラープリンタ1における正確な現像バイアスの補正が可能となる。
【0085】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御部100は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0086】
後者の場合、制御部100は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、前記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、前記コンピュータにおいて、前記プロセッサが前記プログラムを前記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。前記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。前記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、前記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、前記プログラムは、当該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して前記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、前記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0087】
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0088】
なお、本実施例では、カラープリンタ1が、感光体51を露光する露光装置として露光ヘッド40を備える構成としたが、これに限定されず、露光装置としてレーザスキャナを備える構成であってもよい。
【0089】
また、本実施例では、カラープリンタ1が正帯電のトナーを使用し、正極性の現像バイアスを印可する構成としたが、これに限定されず、負帯電のトナーを使用し、負極性の現像バイアスを印可する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 カラープリンタ(画像形成装置)
51 感光体
52 帯電器
62 現像ローラ
73 ベルト
75 センサ
92 温度センサ
100 制御部