(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】皮膚外用組成物及びエアゾール剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/727 20060101AFI20241217BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20241217BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241217BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20241217BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241217BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20241217BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20241217BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20241217BHJP
A61K 31/4415 20060101ALI20241217BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241217BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20241217BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241217BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20241217BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241217BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241217BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241217BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
A61K31/727
A61K8/67
A61K8/73
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/12
A61K9/70 401
A61K31/4415
A61K47/02
A61K47/06
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/26
A61P17/00
A61P43/00 121
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020562483
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051382
(87)【国際公開番号】W WO2020138403
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2018244852
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮島 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】住吉谷 優奈
(72)【発明者】
【氏名】河原 弥生
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-143518(JP,A)
【文献】特開2004-315442(JP,A)
【文献】特開2015-221783(JP,A)
【文献】特開2013-095717(JP,A)
【文献】井黒ひとみ、富樫美津雄,血行促進・皮膚保湿剤ビーソフテン(登録商標)外用スプレー 0.3%,ファルマシア,2015年,Vol.51, No.4,pp.349-351
【文献】ヘパリン類似物質外用スプレー0.3%「ニットー」,医薬品インタビューフォーム,第3版,2017年,p.1-18
【文献】医薬品インタビューフォーム,ビタミンB6 製剤日本薬局方ピリドキシン塩酸塩注射液 ピリドキシン塩酸塩注射液10mg「日医工」,第7版,2017年,p.1-21
【文献】園部尭仁、吉山友二,保湿剤-ヘパリン類似物質外用剤についてー,薬局,2018年12月05日,Vol.69, No.13,pp.3492-3498
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/727
A61P 17/00
A61P 43/00
A61K 31/4415
A61K 9/12
A61K 9/06
A61K 9/08
A61K 9/107
A61K 9/70
A61K 47/12
A61K 47/02
A61K 8/73
A61K 8/67
A61Q 19/00
A61K 47/14
A61K 47/26
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヘパリン類似物質と、(B)ビタミンB
6と、(E
)リンゴ酸、ホウ酸、クエン酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上とを含有し、(B)/(A)で表される含有質量比が0.01~10であり、pHが4以上7以下である皮膚外用組成物。
【請求項2】
(B)成分が、ピリドキシン又はその薬学上許容される塩である請求項1記載の皮膚外用組成物。
【請求項3】
(E)成分の含有割合が0.01~5質量%である、請求項1又は2記載の皮膚外用組成物。
【請求項4】
クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、エアゾール剤、スプレー剤、乳液剤又はパック剤である、請求項1~
3のいずれか1項記載の皮膚外用組成物。
【請求項5】
(A)ヘパリン類似物質、(C)クエン酸及びそのナトリウム塩から選ばれる1種以上、(D)非イオン性界面活性剤1~5質量%、及び水を含有する皮膚外用組成物と、噴射剤とを含有し、泡沫状で噴出するエアゾール剤。
【請求項6】
噴射剤が、液化石油ガスである請求項
5記載のエアゾール剤。
【請求項7】
(D)成分が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種以上である、請求項
5又は
6記載のエアゾール剤。
【請求項8】
水の含有割合が、皮膚外用組成物中50~90質量%である請求項
5~
7のいずれか1項記載のエアゾール剤。
【請求項9】
噴射剤の含有割合が、皮膚外用組成物に対して1~12質量%である請求項
5~
8のいずれか1項記載のエアゾール剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパリン類似物質及びビタミンB6を含有する皮膚外用組成物に関するものである。
本発明は、ヘパリン類似物、及び有機酸又はこれら塩を含有する皮膚外用組成物と、噴射剤とを含有するエアゾール剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
健康な肌は皮膚表面の角質層に水分が十分に保持されている。しかしながら、皮膚表面を覆う皮脂の分泌量が低下したり、皮膚中の角層細胞間脂質が減少したりすると、角質層の水分量が低下し、乾燥肌となる。特に、空気の乾燥、加齢、ストレス等の原因により皮膚が乾燥すると、皮膚のバリア機能が低下し、外部からの刺激による赤みやかゆみ等が発生し、乾燥性皮膚疾患等を引き起こす原因ともなる。
【0003】
従来、乾燥肌の処置には、保湿成分を含むスキンケア製品が利用されている。保湿成分の中でも、ヘパリン類似物質は、コンドロイチンが多硫酸化されたムコ多糖であり、血流促進作用、抗炎症作用、保湿作用、皮膚構造の改善効果等が知られており、しかも副作用が少ないことから、皮膚外用薬の有効成分として、乾燥性皮膚疾患の治療薬等に用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。ヘパリン類似物質の上位概念である多糖類は、酸性条件下で加水分解によって分解することが知られているものの、糖の性質によって分解する条件は大きく異なる。ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用組成物は安定性が良好であり、安定性を阻害する要因についてはよく知られていなかった(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
一方、ビタミンB6は、皮脂分泌作用の抑制・正常化作用が知られ、発毛促進剤、口角炎、脂漏性皮膚炎の治療薬に用いられている。ビタミンB6は、熱又は光によって不安定化することが知られ、酸性条件下で安定であり、中性~アルカリ性条件下で不安定であることが知られている。
【0005】
ビタミンB6は、糖アルコール類の添加(例えば、特許文献2参照)により光安定性が向上することが知られているが、その効果は十分でなく、しかも糖アルコール類の添加により用途が限定されるという難点があった。
【0006】
皮膚の乾燥状態が続いた場合、潤いを補うために過剰分泌された皮脂が毛穴に詰まることで、皮膚表面に皮脂膜が形成されず、さらに乾燥が進行する。このような皮膚乾燥に対して、皮膚の乾燥改善効果を有するヘパリン類似物質と、皮脂分泌抑制・正常化作用を有するピリドキシン塩酸塩等のビタミンB6とを配合することで、上記のような皮膚乾燥の改善効果が期待されるが、これらを同時に配合した例はなく、併用することによって生じる課題や効果については類推すらされていなかった。
【0007】
また、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用組成物は、低温で長期保存すると沈殿物が生じるため、組成物の低温保存安定性が望まれていた。また、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用組成物と噴射剤を含有するエアゾール剤は、ヘパリン類似物質の安定性に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭60-112708号公報
【文献】特開平07-206664号公報
【非特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、ヘパリン類似物質とビタミンB6とを同時に配合した場合、いずれかの成分の安定性が著しく低下し、両者を併用した場合に同時に安定化することが極めて困難であるという課題を見出した。すなわち、本発明は、両成分が安定に配合された皮膚外用組成物を提供することを目的とする。
また、ヘパリン類似物質を安定配合し、低温保存安定性に優れた、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ヘパリン類似物質とビタミンB6とを併用すると共に、両者を含む皮膚外用組成物のpHを4以上とすることで、両者の安定性が向上することを知見し、本発明をなすに至ったものである。つまり、本発明の皮膚外用組成物によれば、ヘパリン類似物質及びビタミンB6の安定性が向上し、両成分の経時的な含有量の低下を抑制できるので、長期間保存しても両成分の作用を維持して有効に発揮させることができる。
また、(A)ヘパリン類似物質、及び(C)有機酸及びその塩から選ばれる1種以上を含有する皮膚外用組成物と、噴射剤とを含有するエアゾール剤にすることで、ヘパリン類似物質の安定性が向上すると共に、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用組成物の低温保存安定性が向上することを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0012】
従って、本発明は下記皮膚外用組成物を提供する。
1.(A)ヘパリン類似物質と、(B)ビタミンB6とを含有し、pHが4以上である皮膚外用組成物。
2.(B)成分が、ピリドキシン又はその薬学上許容される塩である1記載の皮膚外用組成物。
3.さらに、乳酸、リン酸、リンゴ酸、ホウ酸、クエン酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上を含有する1又は2記載の皮膚外用組成物。
4.クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、エアゾール剤、スプレー剤、乳液剤又はパック剤である1~3のいずれかに記載の皮膚外用組成物。
5.(A)ヘパリン類似物質、及び(C)有機酸及びその塩から選ばれる1種以上を含有する皮膚外用組成物と、噴射剤とを含有するエアゾール剤。
6.さらに、(D)ノニオン性界面活性剤を含有し、泡沫状で噴出する5記載のエアゾール剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヘパリン類似物質とビタミンB6とをそれぞれ安定に配合できる、皮膚外用組成物を提供することができる。
本発明によれば、ヘパリン類似物質を安定に含有できる共に、低温保存安定性に優れた、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用組成物と、噴射剤とを含有するエアゾール剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
(I)第1発明は、(A)ヘパリン類似物質と、(B)ビタミンB6とを含有し、pHが4以上である皮膚外用組成物である。
(II)第2発明は、(A)ヘパリン類似物質、及び(C)有機酸及びその塩から選ばれる1種以上を含有する皮膚外用組成物と、噴射剤とを含有するエアゾール剤である。
以下、第1発明の皮膚外用組成物を、単に第1組成物(エアゾール剤の場合は原液を意味する)、以下、第2発明の皮膚外用組成物(原液)を、単に第2組成物、第1組成物及び第2組成物の両者の場合は、組成物と記載する場合がある。
[(A)成分]
(A)成分はヘパリン類似物質であり、保湿作用、抗炎症作用、血行促進作用皮膚構造の改善効果等を有する成分である。ヘパリン類似物質(Heparinoid)は、コンドロイチン多硫酸等のムコ多糖類の多硫酸エステルである。本発明で使用されるヘパリン類似物質の由来については、特に制限されないが、例えば、ムコ多糖類を多硫酸化することにより得られたもの、食用獣の組織(例えば、ウシやブタ等の気管軟骨を含む肺臓)から抽出したもの等が挙げられる。中でも、日本薬局方外医薬品規格(規格番号:108548)に定義されているヘパリン類似物質が好適に使用される。
【0015】
(A)成分の含有割合は特に限定されないが、保湿効果の観点から、組成物中0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。上限は特に限定されないが1質量%以下とすることが好ましい。0.01質量%以上とすることで、保湿効果が期待でき、0.3質量%以上とすることで、保湿だけでなく、乾皮症の改善効果が期待できる。
【0016】
[(B)成分]
(B)成分は通称ビタミンB6であり、皮脂分泌の正常化、肌細胞の活性化効果を有する。ビタミンB6としては、ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン又はこれらの薬学上許容される塩が挙げられ、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等が挙げられる。ビタミンB6は1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、ピリドキシン塩酸塩が好ましい。
【0017】
(B)成分の含有割合は特に限定されず、安全性や肌の乾燥の改善効果を加味し、任意に設定することができるが、第1組成物中0.01~2質量%が好ましく、0.05~2質量%がより好ましい。0.01質量%以上とすることで、皮脂分泌の正常化、肌の乾燥改善や細胞の活性化効果が期待でき、1~2質量%とすることで、脂漏性皮膚炎の改善効果が期待できる。
【0018】
(A)成分と(B)成分との含有質量比は特に限定されず、安全性や肌の乾燥の改善効果を加味し、任意に設定することができるが、(B)/(A)で表される含有質量比は、0.01~20が好ましく、0.1~10がより好ましい。この比を0.01以上とすることで、皮脂分泌の正常化と肌の乾燥改善とを兼ね備えた効果をより得ることができる。一方、20以下とすることで、安全性に優れながらも、保湿効果と皮脂分泌の抑制効果を得ることができる。
【0019】
本発明の第1組成物のpHは4以上である。上記(A)成分及び(B)成分を含有する第1組成物のpHを4以上とすることで、(A)ヘパリン類似物質と(B)ビタミンB6とを、第1組成物中に安定に含有することができる。この点から、第1組成物のpHの下限は4.5以上が好ましく、5以上がより好ましい。第1組成物のpHの上限は8以下が好ましく、7以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。なお、pHの測定は、第十七改正日本薬局方・一般試験法(測定温度:20℃)による。
【0020】
本発明の第1組成物のpHが上記範囲内であれば、pH調節剤は必ずしも含有する必要はなく、任意で含有が可能である。pH調節剤を含有する場合、pH調節剤としては、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、リン酸、ホウ酸、塩酸、硫酸及びこれらの塩や、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。具体的にリン酸塩としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム等、ホウ酸塩としては、ホウ砂等が挙げられ、クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。pH調節剤は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、(A)ヘパリン類似物質及び(B)ビタミンB6の安定性の点から、乳酸、リン酸、リンゴ酸、ホウ酸、クエン酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上が好ましく、ホウ酸、クエン酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上がより好ましい。pH調節剤を配合する場合の含有割合は、第1組成物が目的のpHとなるよう適宜選定されるが、第1組成物中0.01~5質量%が好ましく、0.05~1質量%がより好ましい。含有割合を0.01質量%以上とすることで、(A)ヘパリン類似物質と(B)ビタミンB6とをより安定に含有することができる。含有割合を5質量%以下とすることで、経時によるpH調節剤の析出が生じ難くなる。
【0021】
[任意成分]
本発明の組成物には、医薬品、医薬部外品及び化粧品等に用いられる任意成分を本発明の効果を損なわない範囲で、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて、適量配合することができる。任意成分としては、下記のものが例示される。
【0022】
(A)ヘパリン類似物質、(B)ビタミンB6以外の、医薬品、医薬部外品及び化粧品等に使用される様々な有効成分としては、例えば、ヘパリン類似物質以外の抗炎症剤、抗ヒスタミン剤、鎮痒剤、創傷治癒剤、局所麻酔剤、ビタミンB6以外のビタミン剤、清涼化剤、保湿剤、殺菌剤、血管収縮剤及びアミノ酸類等が挙げられる。上記には生薬成分も含まれる。
【0023】
抗炎症剤としては、例えば、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸又はその薬学上許容される塩、カンゾウ抽出物、ステロイド化合物(ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、クロベタゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、コルチゾン、フルメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾン又はそれらの誘導体)、インドメタシン、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ブフェキサマク、ウフェナマート、ピロキシカム、ケトプロフェン、サリチル酸又はその誘導体、ジメチルイソプロピルアズレン、トウキエキス、シコンエキス等が挙げられる。
【0024】
抗ヒスタミン剤としては、例えば、ジフェンヒドラミン又はその薬学上許容される塩、クロルフェニラミン又はその薬学上許容される塩、メキタジン、アゼラスチン、エメダスチン、ケトチフェン又はそれらの誘導体等が挙げられる。中でも、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩等が好ましい。
【0025】
鎮痒剤としては、例えば、クロタミトン、ノニル酸ワニリルアミド、カプサイシン、ニコチン酸ベンジル、トウガラシチンキ等が挙げられる。
創傷治癒剤としては、例えば、アラントイン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0026】
局所麻酔剤としては、例えば、リドカイン又はその薬学上許容される塩、ジブカイン又はその薬学上許容される塩が挙げられる。
【0027】
ビタミン剤としては、例えば、ビタミンA類[ビタミンA油、レチノール及びその誘導体(例えば、レチナール、レチノイン酸、パルミチン酸レチノール等)]、ビタミンB1類[チアミン及びその誘導体、(例えば、塩酸チアミン、硝酸チアミン等)]、ビタミンB2類[リボフラビン及びその誘導体(例えば、リン酸リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン及びフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム等)]、ビタミンB3類[ニコチン酸及びその誘導体(ニコチン酸アミド、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル等)]、ビタミンB5類[パントテン酸及びその誘導体(例えば、パントテン酸カルシウム、パンテノール、パントテニルエチルアルコール等)]、ビタミンB12類[コバラミン及びその誘導体(例えば、シアノコバラミン、メコバラミン、及び塩酸ヒドロキソコバラミン等)]、ビオチン、葉酸又はその薬学上許容される塩、ビタミンC類[アスコルビン酸及びその誘導体(例えば、エリソルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸2-グルコシド、パルミチン酸アスコルビン酸等)]、ビタミンD類[カルシフェロール及びその誘導体(例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール等)]、ビタミンE類[トコフェロール、ユビキノン及びその誘導体(例えば、トコフェロール酢酸エステル、コハク酸トコフェロールカルシウム等)]、その他のビタミン類(例えば、ヘスペリジン、カルニチン、フェルラ酸、γ-オリザノール、オロチン酸、ルチン、エリオシトリン、イノシトール及びそれらの薬学上許容される塩)等が挙げられる。
【0028】
清涼化剤としては、例えば、l-メントール、カンフル、ボルネオール又はそれらの類縁物質、ウイキョウ油、ユーカリ油、ハッカ油等が挙げられる。
【0029】
保湿剤としては、例えば、天然保湿因子(尿素等)、セラミド、植物抽出エキス(カミツレエキス、アロエエキス等)等が挙げられる。
【0030】
殺菌剤としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、セトリミド等が挙げられる。
【0031】
血管収縮剤としては、例えば、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、メチルエフェドリン又はその塩類等が挙げられる。
【0032】
アミノ酸類としては、例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、セリン、アミノエチルスルホン酸(タウリン)及びそれらの薬学上許容される塩(例えば、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェノリン等)等が挙げられる。
【0033】
これらの有効成分を配合する場合の含有割合は、その有効量の範囲であるが、組成物中0.1~20質量%が好ましい。
【0034】
その他任意成分としては、例えば、油剤、界面活性剤、多価アルコール、高分子化合物、有機溶剤、安定化剤、防腐剤、香料、水等が挙げられる。
【0035】
油剤としては、例えば、ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、スクワラン、セレシン、ゲル化炭化水素及びマイクロクリスタリンワックス等の炭化水素;ステアリン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸等及びベヘン酸等の高級脂肪酸;セタノール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール及びベヘニルアルコール等の高級脂肪アルコール;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロプル及びアジピン酸ジイソプロピル等の脂肪酸エステル;トリイソオクタン酸グリセリン及びトリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等の多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。油剤を配合する場合の含有割合は、組成物中1~30質量%が好ましい。
【0036】
界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ポリグリセリル(10)、モノステアリン酸ポリグリセリル(10)、オレイン酸ポリグリセリル(10)、ペンタオレイン酸ポリグリセリル(10)等のポリグリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸ポリオキエチレングリセリル(15)等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20)(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット(6)、テトラステアリン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(60)ソルビット等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン(60)ヒマシ油等のポリオキシエチレンヒマシ油;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(10)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;モノラウリン酸ポリエチレングリコール(例えば、10EO)、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール(4EO)等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル(ラウロマクロゴール)、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル等が挙げられる。
イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
界面活性剤を配合する場合の含有割合は、組成物中0.1~10質量%が好ましい。
【0037】
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール及びポリエチレングリコール(マクロゴール)等が挙げられる。
多価アルコールを配合する場合の含有割合は、組成物中0.5~20質量%が好ましい。
【0038】
高分子化合物としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリル化デンプン300及びポリビニルピロリドン、アラビアガム、カラヤガム、キサンタンガム、キャロブガム、グアーガム、グアヤク脂、クインスシード、ダンマルガム、トラガント、ベンゾインガム、ローカストビーンガム、カゼイン、寒天、アルギン酸、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ゼラチン、コラーゲン、ペクチン、デンプン、ポリガラクツロン酸、キチン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、エラスチン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等が挙げられる。
高分子化合物を配合する場合の含有割合は、組成物中0.01~5質量%が好ましい。
【0039】
有機溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン及び酢酸エチル等の有機溶剤が挙げられる。
有機溶剤を配合する場合の含有割合は、組成物中1~30質量%が好ましい。
【0040】
安定化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びエデト酸ナトリウム等が挙げられる。
安定化剤を配合する場合の含有割合は、組成物中0.01~5質量%が好ましい。
【0041】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)、パラオキシ安息香酸プロピル(プロピルパラベン)、ジブチルヒドロキシトルエン、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
防腐剤を配合する場合の含有割合は、組成物中0.01~1質量%が好ましい。
【0042】
香料としては、例えば、シトラス香、フローラル香、ローズ香等の調合香料や、ユーカリ油、ベルガモット油、ウイキョウ油、ローズ油、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、ローズマリー油、ラベンダー油、レモン油等の精油が挙げられる。これら香料中に含有する代表的な成分としては、テルペノイド化合物が挙げられる。テルペノイド化合物は、テルペン炭化水素、テルペンアルコール、テルペンアルデヒド、テルペンケトンが挙げられる。また、炭素数により、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペンがあるが、最も代表的な成分はモノテルペンである。好ましいテルペノイド化合物としては、l-メントール、dl-メントール、d-カンフル、dl-カンフル、d-ボルネオール、dl-ボルネオール、シトラール、シトロネラール、リモネン、シトロネロール、シネオール、ゲラニオール、シネオール、リナロール、ノナナール、オイゲノール、イソオイゲノール、インドール、ベンスアルデヒド、バニリン、リモネン、ガラクソライド、γ-ノナラクトン、γ-メチルイオノン、イソ・イー・スーパー、Z-3-ヘキセニルサリシレート、γ-ウンデカラクトン、5-シクロヘキサデセン-1-オン、2-メチル-4-フェニル-2-ブタノール、メチルジヒドロジャスモネート、メチル-β-ナフチルケトン、シンナミルアセテート、ベンジルアセテート、α-ターピネオール、ヘキシルシンナミクアルデヒド、γ-ウンデカラクトン等が挙げられる。香料を配合する場合の含有割合は、組成物中0.001~1質量%が好ましく、0.01~0.1質量%がより好ましい。
【0043】
水を配合する場合の含有割合は、剤型に応じて50~90質量%の範囲から適宜選定される。
【0044】
[製造方法]
本発明の組成物は、例えば、(A)ヘパリン類似物質と、(B)ビタミンB6とを常法に従って、必要に応じて任意成分と共に配合することにより調製することができる。
【0045】
[皮膚外用組成物]
本発明の組成物の性状は、経皮適用できれば特に制限されず、液状、固形状、半固形状(ゲル状、軟膏状、ペースト状、泡状)等のいずれであってもよい。また、製剤形態は、皮膚外用医薬品、皮膚外用医薬部外品、化粧料、皮膚洗浄料等のいずれの製剤形態であってもよい。
【0046】
本発明の組成物の製剤形態としては特に限定されないが、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、乳液剤、液剤、貼付剤、ミスト状、泡沫状に噴出するスプレー剤、霧状、粉末状、泡沫状又はペースト状に噴出するエアゾール剤、軟膏剤、パック剤、ボディーシャンプー、ヘアシャンプー、リンス等が挙げられる。中でも、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、エアゾール剤、スプレー剤、乳液剤、パック剤が好ましく、クリーム剤、ローション剤、乳液剤、泡沫状に噴出するエアゾール剤、泡沫状に噴出するポンプスプレー剤がより好ましい。クリームや乳液剤等の乳化状態については特に限定されず、W/O、O/W、W/O/W、O/W/Oのいずれであってもよい。
【0047】
噴射剤を含まないスプレー剤は、例えば、気密容器、ポンプ本体、アクチュエーター、キャップ、第1組成物から構成される。エアゾール剤としては、基本的に、内圧に耐える耐圧性容器、バルブ、アクチュエーター、第1組成物(原液)及び噴射剤から構成される。エアゾール剤における噴射剤の含有割合は、第1組成物に対して1~12質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。噴射剤としては、液化ガス、圧縮ガスが挙げられ、液化ガスとしては、炭素数3~5の炭化水素(プロパン、n-ブタン、i-ブタン等)を主成分とする液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、フッ化炭化水素が挙げられ、圧縮ガスとしては、炭酸ガス、窒素、亜酸化窒素が挙げられる。中でも、液化石油ガスが好ましい。スプレー剤やエアゾール剤は、泡沫状で噴出させる容器に充填することにより、皮膚に広げやすくなる。また、エアゾール剤とすることで、原液に配合された界面活性剤の低温での析出を抑えることができる。
【0048】
内圧に耐える耐圧性容器としては、例えば、アルミ缶、ブリキ缶等を用いることができ、内面に樹脂等でコーティングすることも可能である。
【0049】
本発明の組成物の使用方法は特に限定されないが、1日1~数回、適量を患部にすりこむか、又はガーゼ等にのばして貼って使用することができる。なお、スプレー剤、エアゾール剤は、正立~45度程度の角度で噴射することが望ましい。
【0050】
本発明の組成物の効果効能としては、乾皮症、小児の乾燥性皮膚、手指の荒れ、手足のひび・あかぎれ、ひじ・ひざ・かかと・くるぶしの角化症、しもやけ(ただれを除く)、きず・やけどのあとの皮膚のしこり・つっぱり(顔面を除く)、打身・ねんざ後のはれ・筋肉痛・関節痛の他、肌バリア機能の改善、新陳代謝促進、肌細胞活性化、乾燥による肌トラブル(の改善)、(顔等の)乾燥を治す等が挙げられる。
【0051】
(II)第2発明は、(A)ヘパリン類似物質、及び(C)有機酸及びその塩から選ばれる1種以上を含有する皮膚外用組成物と、噴射剤とを含有するエアゾール剤である。
【0052】
[(A)成分]
(A)成分は上記第1発明と同じであり、好ましい成分及び範囲も第1発明と同じである。
【0053】
[(C)成分]
(C)有機酸及びその塩から選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。(C)成分を配合することで、ヘパリン類似物質を含有する皮膚外用組成物と、噴射剤とを含有するエアゾール剤において、ヘパリン類似物質を安定に含有させることができる。(C)成分としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸等が挙げられ、中でも、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸が好ましい。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられ、具体的には、クエン酸ナトリウム挙げられる。(C)成分は、ヒドロキシクエン酸等の有機酸の誘導体であってもよい。
【0054】
(C)成分の含有割合は特に限定されないが、第2組成物中0.01~5質量%が好ましく、0.05~1質量%がより好ましい。0.01質量%以上とすることで、(A)ヘパリン類似物質を安定に含有することができ、5質量%以下とすることで、低温保存安定性が向上する。
【0055】
[(D)成分]
第2組成物には、低温保存安定性向上の点から、上記第1発明で記載された(D)非イオン性界面活性剤を配合するとよい。中でも、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20)(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20)(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20)(ポリソルベート80)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット(6)等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(15)オレイン酸グリセリル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルがより好ましく、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20)(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20)(ポリソルベート80)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット(6)等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルがさらに好ましい。
【0056】
(D)成分の含有割合は特に限定されないが、第2組成物中0.1~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。0.1質量%以上とすることで、低温保存安定性がより向上する。10質量%以下とすることで、べたつきが少なくなり、使用性が向上する。
【0057】
第2組成物のpHは4以上が好ましい。第2組成物のpHの下限は4.5以上がより好ましく、5以上がさらに好ましい。第2組成物のpHの上限は8以下が好ましく、7以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。上記pHの範囲内とすることで、(A)ヘパリン類似物質をより安定に含有することができる。なお、pHの測定は、日本薬局方・一般試験法(測定温度:20℃)による。
【0058】
本発明の第2組成物のpHが上記範囲内であれば、pH調節剤は必ずしも含有する必要はなく任意で含有が可能である。pH調節剤を含有する場合、pH調節剤としては、例えば、リン酸、ホウ酸、塩酸、硫酸及びこれらの塩や、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。具体的にリン酸塩としては、リン酸二水素ナトリウム等、ホウ酸塩としては、ホウ砂等が挙げられる。pH調節剤は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、(A)ヘパリン類似物質を安定に含有できる点から、リン酸、ホウ酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上が好ましく、ホウ酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上がより好ましい。pH調節剤を配合する場合の含有割合は、組成物が目的のpHとなるよう適宜選定されるが、組成物中0.01~5質量%が好ましく、0.05~1質量%がより好ましい。含有割合を5質量%以内とすることで、経時によるpH調節剤の析出が生じ難くなる。
【0059】
第2組成物のその他の任意成分としては、上記第1発明の任意成分から、(C)及び(D)成分ならびにpH調節剤を除いたものが挙げられる。
【0060】
[噴射剤]
噴射剤としては、液化ガス、圧縮ガスが挙げられ、液化ガスとしては、炭素数3~5の炭化水素(プロパン、n-ブタン、i-ブタン等)を主成分とする液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル、フッ化炭化水素が挙げられ、圧縮ガスとしては、炭酸ガス、窒素、亜酸化窒素が挙げられる。中でも、液化石油ガスが好ましい。
【0061】
[製造方法]
第2組成物は、例えば、(A)ヘパリン類似物質と、(C)有機酸及びその塩から選ばれる1種以上とを常法に従って、必要に応じて任意成分と共に配合することにより調製することができる。
【0062】
[エアゾール剤]
第2組成物の製剤形態はエアゾール剤である。第2組成物(原液)の乳化状態については特に限定されず、W/O、O/W、W/O/W、O/W/Oのいずれであってもよい。噴射剤を含むエアゾール剤としては、基本的に、内圧に耐える耐圧性容器、バルブ、アクチュエーター、第2組成物(原液)及び噴射剤から構成される。噴射剤の含有割合は、第2組成物に対して1~12質量%が好ましい。泡沫状で噴出に適した容器に充填することにより、泡となって吐出するため、皮膚に広げやすくなる。また、エアゾール剤とすることで、ヘパリン類似物質を安定に含有することができ、また、第2組成物(原液)に配合された界面活性剤の低温での析出を抑えることができる。
【0063】
内圧に耐える耐圧性容器としては、例えば、アルミ缶、ブリキ缶等を用いることができ、内面に樹脂等でコーティングすることも可能である。
【0064】
本発明の第2組成物の使用方法及び効果効能は、第1組成物と同じである。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示し、表中の各成分の量は純分換算した量である。
【0066】
[実施例及び比較例]
[実施例1-1~1-19及び比較例1-1~1-2]
表1~3に示す成分を精製水に溶かし、皮膚外用組成物(液剤)を調製した。得られた皮膚外用組成物50gをガラス製バイアル容器(容量50mL)に充填し、フタをして密閉した後、50℃・2ヶ月間保存した。保存前後の組成物のpHを日本薬局方・一般試験法に基づいて測定し(測定温度:20℃)、保存前後のpHの差をpH変動とて算出した。ヘパリン類似物質及びピリドキシン塩酸塩の組成物中の含有量を下記方法で測定し、ヘパリン類似物質及びピリドキシン塩酸塩の残存率(%)を下記式に基づき算出した。
残存率(%)=保存後の成分含量/初期の成分含量×100
【0067】
ヘパリン類似物質の残存率は、皮膚外用組成物から試料を精秤し、酢酸カリウムのエタノール溶液を加えて(イソオクタンをさらに加える場合もある)振とうし、遠心分離して得た残留物を堅固した後、日本薬局方外医薬品成分規格2002ヘパリン類似物質の定量法(3)記載の有機硫酸基測定法により、紫外可視吸光度測定法により含量を算出した。ピリドキシン塩酸塩の残存率は、HPLC法(絶対検量線法)により含量を算出した。
なお、初期の成分含量とは、皮膚外用組成物を調製した直後(5℃保存、7日以内)に測定した成分含量である。
【0068】
ヘパリン類似物質の残存率、ピリドキシン塩酸塩の残存率に基づき、下記評価基準で示す。
〈ヘパリン類似物質の残存率:ヘパリン類似物質の安定性〉
85%未満:1点
85%以上90%未満:2点
90%以上95%未満:3点
95%以上:4点
2点以上を合格とする
【0069】
〈ピリドキシン塩酸塩の残存率:ピリドキシン塩酸塩の安定性〉
80%未満:1点
80%以上85%未満:2点
85%以上90%未満:3点
90%以上:4点
2点以上を合格とする
【0070】
〈pH変動:pH安定性〉
1以上:1点
0.5以上1未満:2点
0.2以上0.5未満:3点
0.2未満:4点
2点以上を合格とする
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
[実施例1-20]
表4に示す成分を常法に従って精製水に溶かし、ローション剤を調製した。得られたローション剤50gをガラス製バイアル容器(50mL)に充填し、フタをして密閉した後、50℃・2ヶ月間保存した。
保存前後のローション剤のpH、pH変動、ヘパリン類似物質及びピリドキシン塩酸塩の残存率について、上記と同じ方法で評価した。結果を表中に併記する。
【0075】
【0076】
[実施例1-21~1-26]
表5に示す成分を常法に従って精製水に溶かし、皮膚外用組成物(原液)を調製した。内圧に耐える耐圧性の缶(内層にポリアミドイミド樹脂層;外層にポリエステル樹脂層/印刷塗料層/ポリエステルアミノ樹脂層がコーティングされているアルミニウム缶、30mL)に、得られた皮膚外用組成物(原液)27.0~28.5gを充填し、減圧下でバルブ(S13バルブ、ステム孔0.5、ハウジング孔1.5、(株)三谷バルブ製)を取り付けた後、スルーバルブ方式にて噴射剤1.5~3.0gを充填し、アクチュエーター(FD150、(株)三谷バルブ製)、キャップを取り付け、泡沫状で噴出するエアゾール剤を得た。その後、エアゾール剤を45℃・3ヶ月間保存した。保存前後、缶をよく振とうし、アクチュエーターよりエアゾール剤の内容物を密栓容器に取り出し、放置して噴射剤を放出させた後、皮膚外用組成物のpH、pH変動、ヘパリン類似物質及びピリドキシン塩酸塩の残存率について、上記と同じ方法で評価した。結果を表中に併記する。
【0077】
【0078】
[実施例1-27]
表6に示す成分を常法により乳化させ、水性クリームを得た。得られた水性クリーム剤をアルミ製チューブ(大成化工株式会社製)に24g充填して密閉した後、50℃・2ヶ月間保存した。
保存前後の水性クリームのpH、pH変動、ヘパリン類似物質及びピリドキシン塩酸塩の残存率について、上記と同じ方法で評価した。結果を表中に併記する。
【0079】
【0080】
[実施例1-28]
表7に示す成分を常法により乳化させ、油性乳液(W/O乳液)剤を得た。得られた油性乳液30gをポリプロピレン製バイアル容器(30mL)に充填し、フタをして密閉した後、50℃・2ヶ月間保存した。
保存前後の油性乳液のpH、pH変動、ヘパリン類似物質及びピリドキシン塩酸塩の残存率について、上記と同じ方法で評価した。結果を表中に併記する。
【0081】
【0082】
[実施例2-1~2-3、比較例2-1、2-2]
表7に示す成分を常法に従って精製水に溶かし、皮膚外用組成物(原液)を調製した。内圧に耐える耐圧性の缶(内層にポリアミドイミド樹脂層;外層にポリエステル樹脂層/印刷塗料層/ポリエステルアミノ樹脂層がコーティングされているアルミニウム缶、30mL)に、得られた皮膚外用組成物(原液)28.2gを充填し、減圧下でバルブ(S13バルブ、ステム孔0.5、ハウジング孔1.5、(株)三谷バルブ製)を取り付けた後、スルーバルブ方式にて噴射剤1.8gを充填し、アクチュエーター、キャップを取り付け、泡沫状で噴出するエアゾール剤を得た。なお、バルブ及びアクチュエーターは、実施例1-21と同じものを使用し、比較例2-1は、実施例2-3に準じて皮膚外用組成物(原液)を調製し、得られた皮膚外用組成物50gをガラス製バイアル容器(50mL)に充填し、フタをして密閉した。その後、エアゾール剤(比較例2-1は原液)を45℃・3ヶ月間保存した。保存前後、缶をよく振とうし、アクチュエーターよりエアゾール剤の内容物を容器に取り出し、放置して噴射剤を放出させた後(比較例2-1の皮膚外用組成物(原液)は、そのまま容器に取り出し)、皮膚外用組成物のpH、pH変動、ヘパリン類似物質の残存率について、上記と同じ方法で評価した。結果を表中に併記する。
【0083】
低温安定性の評価は耐圧性の缶の代わりに耐圧ガラス瓶に上記と同様に充填し、-5℃・2ヶ月間保存した。ガラス瓶の外側から外観を観察し、2ヶ月後に析出等の沈殿物がみられた場合を×、2ヶ月後も析出等の沈殿物を生じなかった場合を○として評価した。結果を表中に併記する。
【0084】
【0085】
実施例で使用した原料を下記に示す。
・ヘパリン類似物質:局外規、(株)東理製
・ピリドキシン塩酸塩:日局、DSM(株)製
・パンテノール:局外規、DSM(株)製
・ジフェンヒドラミン:日局、金剛化学(株)製
・ビタミンA油:日局、DSM(株)製
・トコフェロール酢酸エステル:日局、DSM(株)製
・イソプロピルメチルフェノール:外原規、大阪化成(株)
・塩酸:日局、関東化学(株)製
・水酸化ナトリウム:日局、水酸化ナトリウム「製造専用」、富士フイルム和光純薬(株)製
・クエン酸ナトリウム:日局、クエン酸ナトリウム水和物 扶桑化学工業(株)製
・クエン酸:日局、クエン酸水和物、(株)スリーF製
・乳酸:日局、90%乳酸、昭和化工(株)製
・リンゴ酸:食添、リンゴ酸フソウL 扶桑化学工業(株)製
・リン酸二水素ナトリウム:薬添規、リン酸二水素ナトリウム水和物 富士フイルム和光純薬(株)製
・ホウ砂:日局 小堺製薬(株)
・ジイソプロパノールアミン:薬添規、三井化学ファイン(株)
・グリセリン:日局、阪本薬品工業(株)
・プロピレングリコール:日局、(株)ADEKA
・1,3-BG:薬添規、1,3-ブチレングリコール ダイセル化学工業(株)
・エタノール:日局、エタノール「製造専用」 富士フイルム和光純薬(株)
・マクロゴール20000:日局、三洋化成工業(株)
・ステアリルアルコール:薬添規、カルコール8098 花王(株)
・オクチルドデカノール:薬添規、エヌジェコール200A 新日本理化(株)
・スクワラン:粧原基、日本サーファクタント工業(株)
・ミリスチン酸イソプロピル:薬添規、NIKKOL IPM-100 日本サーファクタント工業(株)
・キサンタンガム:薬添規 エコーガムT、DSP五協フード&ファインケミカル(株)
・カルボキシビニルポリマー:薬添規、CRBOPOL980 Noveon Co.
・パラオキシ安息香酸メチル:日局、上野製薬(株)
・パラオキシ安息香酸プロピル:日局、上野製薬(株)
・ジブチルヒドロキシトルエン:薬添規 富士フイルム和光純薬(株)
・エデト酸ナトリウム水和物:日局、エデト酸ナトリウム 中部キレスト(株)
・LPG:薬添規 LPG20℃=0.43MPa、大洋液化ガス(株)
・ラウロマクロゴール:日局、NIKKOL BL-21 日本サーファクタント工業(株)
・モノラウリン酸ポリエチレングリコール:薬添規、NIKKOL MYL-10 日本サーファクタント工業(株)
・ポリソルベート20:薬添規、NIKKOL TL-10 日本サーファクタント工業(株)
・ポリソルベート60:薬添規、NIKKOL TS-10MV 日本サーファクタント工業(株)
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10:薬添規 NIKKOL HCO-10 日本サーファクタント工業(株)
・グリセリン脂肪酸エステル:食添 NIKKOL Decaglyn 5-OV 日本サーファクタント工業(株)