(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
B60L 58/31 20190101AFI20241217BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20241217BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20241217BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20241217BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20241217BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20241217BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20241217BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20241217BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20241217BHJP
H01M 8/00 20160101ALN20241217BHJP
【FI】
B60L58/31
B60L58/12
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/0432
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/249
H01M8/10 101
H01M8/00 A
(21)【出願番号】P 2021014553
(22)【出願日】2021-02-01
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 拓
(72)【発明者】
【氏名】赤松 一志
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-153563(JP,A)
【文献】特開2017-126441(JP,A)
【文献】特開2007-184111(JP,A)
【文献】特開2015-146258(JP,A)
【文献】特開2016-192282(JP,A)
【文献】特開2020-068063(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135180(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/121389(WO,A1)
【文献】特開2001-229950(JP,A)
【文献】特開2018-147784(JP,A)
【文献】特開2004-311112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 50/50-50/75
B60L 58/00-58/40
H01M 8/00- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、
前記バッテリに接続された複数の燃料電池ユニットと、
前記複数の燃料電池ユニットの動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記複数の燃料電池ユニットを始動させる始動処理を実行可能に構成されており、
前記始動処理は、
前記バッテリから供給される電力を利用して、前記複数の燃料電池ユニットの一部を始動する第1の処理と、
前記第1の処理の実行後に、前記複数の燃料電池ユニットの残部の少なくとも一つを始動する第2の処理と、を含み、
前記始動処理は、特定の条件下にて実行され、
前記特定の条件には、少なくとも、雰囲気温度が所定の温度よりも低いこと
と、前記バッテリのSOCが所定の値よりも低いこととが含まれる、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記第2の処理は、前記第1の処理によって始動された前記燃料電池ユニットが出力する電力を用いて、前記複数の燃料電池ユニットの前記少なくとも一つを始動することをさらに含む、請求項
1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記第1の処理では、前記複数の燃料電池ユニットの一つのみが始動される、請求項1
又は請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第2の処理では、前記複数の燃料電池ユニットの前記残部のうちの一つのみが始動される、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第2の処理では、前記複数の燃料電池ユニットの前記残部のうちの二以上が同時に始動される、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記始動処理は、前記第2の処理の実行後に、前記複数の燃料電池ユニットの前記残部の他の少なくとも一つを始動する第3の処理をさらに含む、請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記第2の処理で始動される前記燃料電池ユニットの数は、前記第1の処理で始動される前記燃料電池ユニットの数よりも多い、請求項
5又は請求項
6に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記第2の処理では、前記複数の燃料電池ユニットの前記残部の全てが同時に始動される、請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、燃料電池システムが開示されている。この燃料電池システムは、複数の燃料電池ユニットと、それらの動作を制御する制御装置とを備える。制御装置は、例えばユーザからの要求に応じて、複数の燃料電池ユニットを始動する始動処理を実行するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池ユニットを始動するためには、酸化ガス(例えば、酸素ガスを含む空気)や燃料ガス(例えば、水素ガス)を燃料電池ユニットに供給する必要がある。そのため、燃料電池ユニットを始動するときは、それらのガスを供給する機器を作動させるために、一定の電力が必要とされる(以下、この電力を「始動電力」と称することがある)。この始動電力を供給するために、燃料電池システムは、バッテリをさらに備えてもよい。この場合、複数の燃料電池ユニットを同時に始動するためには、それぞれの燃料電池ユニットに始動電力を供給する必要があり、バッテリから多くの電力を出力することが求められる。しかしながら、バッテリの状態によっては、複数の燃料電池ユニットに対して、十分な始動電力を供給できないことがある。例えば極寒地(例えば-20℃以下)において、バッテリが極低温の状態になっていると、バッテリが出力可能な電力は低下する。あるいは、バッテリのSOC(State of Charge)が低下していても、バッテリが出力可能な電力は低下する。このような特定の条件下では、複数の燃料電池ユニットへ十分な始動電力を供給することができず、複数の燃料電池ユニットを始動できないおそれが生じる。
【0005】
上記の実情を鑑み、本明細書は、複数の燃料電池ユニットを確実に始動するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、燃料電池システムに具現化される。この燃料電池システムは、バッテリと、前記バッテリに接続された複数の燃料電池ユニットと、前記複数の燃料電池ユニットの動作を制御する制御装置とを備える。前記制御装置は、前記複数の燃料電池ユニットを始動させる始動処理を実行可能に構成されている。前記始動処理は、前記バッテリから供給される電力を利用して、前記複数の燃料電池ユニットの一部を始動する第1の処理と、前記第1の処理の実行後に、前記複数の燃料電池ユニットの残部の少なくとも一つを始動する第2の処理とを含む。
【0007】
上記した燃料電池システムでは、複数の燃料電池ユニットを始動するときに、第1の処理と第2の処理とを含む始動処理を実行することができる。第1の処理では、バッテリから供給される電力を利用して、複数の燃料電池ユニットの一部のみを始動する。次いで、第2の処理では、複数の燃料電池ユニットの他の少なくとも一つを始動する。このように、複数の燃料電池ユニットの少なくとも一部を、互いに異なるタイミングで選択的に始動することで、バッテリが出力すべき始動電力を有意に低減することができる。これにより、複数の燃料電池ユニットを確実に始動することができる。なお、第2の処理が完了した段階で、複数の燃料電池ユニットのいくつかが未始動であってもよい。この場合、始動処理は、第2の処理の実行後に、複数の燃料電池ユニットの少なくとも一つを始動する第3の処理や第4の処理をさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例のFCシステム10の概略構成を示す図。
【
図2】特別な始動処理の一例を示すフローチャート。
【
図3】
図2で示す特別な始動処理における各FCユニットFCUの状態を説明する図。
【
図4】特別な始動処理の変形例を示すフローチャート。
【
図5】
図4で示す特別な始動処理における各FCユニットFCUの状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態において、始動処理は、特定の条件下にて実行されてもよい。この場合、特定の条件には、少なくとも、雰囲気温度が所定の温度よりも低いことが含まれてもよい。このような構成によると、バッテリの温度が比較的に低く、バッテリの出力可能な電力が低下している場合でも、複数の燃料電池ユニットを確実に始動することができる。但し、本技術の他の実施形態において、始動処理は、必ずしも特定の条件下のみに限られず、任意の条件下で実行されなくてもよい。
【0010】
上記に加え、又は代えて、前記した特定の条件には、少なくとも、バッテリのSOCが所定の値よりも低いことが含まれてもよい。このような構成によると、バッテリのSOCが比較的に低く、バッテリの出力可能な電力が低下している場合でも、複数の燃料電池ユニットを確実に始動することができる。
【0011】
本技術の一実施形態において、第2の処理は、第1の処理によって始動された燃料電池ユニットが出力する電力を用いて、複数の燃料電池ユニットの少なくとも一つを始動することをさらに含んでもよい。このような構成によると、バッテリの電力を消費することなく、あるいは、その消費量を抑制しながら、第2の処理で燃料電池ユニットを始動することができる。従って、複数の燃料電池ユニットを始動するときに、バッテリから供給すべき電力を低減できるため、例えばバッテリの出力可能な電力が低下している場合でも、複数の燃料電池ユニットを確実に始動することができる。
【0012】
本技術の一実施形態において、第1の処理では、複数の燃料電池ユニットの一つのみが始動されてもよい。このような構成によると、複数の燃料電池ユニットを始動するときに、バッテリから供給すべき電力をさらに低減することができる。
【0013】
本技術の一実施形態において、第2の処理では、複数の燃料電池ユニットの残部のうちの一つのみが始動されてもよい。このような構成によると、第2の処理において必要とされる始動電力を低減することができる。あるいは、本技術の他の実施形態において、第2の処理では、複数の燃料電池ユニットの残部のうちの二以上が同時に始動されてもよい。このような構成によると、複数の燃料電池ユニットを始動するのに要する時間を短縮することが可能である。なお、第2の処理が完了した段階で、複数の燃料電池ユニットの全てが始動されていなくてもよく、始動処理は、下記する第3の処理のように、第2の処理に続けて実行される他の処理をさらに含んでもよい。
【0014】
本技術の一実施例において、始動処理は、第2の処理の実行後に、複数の燃料電池ユニットの残部の他の少なくとも一つを始動する第3の処理をさらに含んでもよい。即ち、複数の燃料電池ユニットは、三以上の処理によって、順次始動されてもよい。このような構成によると、各処理で始動すべき燃料電池ユニットの数を少なくして、必要とされる始動電力を低減することができる。また、始動後の燃料電池ユニットを、ある一定の時間に亘って暖機運転する場合は、暖機運転に伴って発電された電力が、余剰電力となることがある。この点に関しても、同時に始動される燃料電池ユニットの数を少なくすることで、その後の暖機運転によって生じる発電電力を抑制することができ、余剰電力の発生を回避又は抑制することができる。
【0015】
上記したいくつかの実施形態において、第2の処理で始動される燃料電池ユニットの数は、第1の処理で始動される燃料電池ユニットの数よりも多くてもよい。このような構成によると、第1の処理で必要とされる始動電力、即ち、バッテリから供給すべき電力を低減することができるとともに、複数の燃料電池ユニットのより多くを短時間で始動することができる。
【0016】
本技術の一実施形態において、第2の処理では、複数の燃料電池ユニットの残部の全てが同時に始動されてもよい。このような構成によると、第1の処理及び第2の処理が実行されることで、複数の燃料電池ユニットの全てを始動することができる。即ち、複数の燃料電池ユニットを始動するのに要する時間を短縮することが可能である。
【実施例】
【0017】
図面を参照して、実施例の燃料電池システム(以下、FC(Fuel cell)システム)10について説明する。FCシステム10は、燃料電池車両(例えば、自動車、バス、トラック、電車)や定置用燃料電池装置等に搭載され、要求電力に応じて電力を出力する発電システムである。なお、FCシステム10は、車両以外の各種移動体(例えば、船舶や飛行機)に搭載されてもよい。
【0018】
図1に示すように、FCシステム10は、複数の燃料電池ユニット(以下、FCユニット)FCUを備える。ここでは、説明の便宜上、FCシステム10が備えるFCユニットFCUの数をNとする(Nは2以上の整数である)。即ち、複数のFCユニットFCUには、第1FCユニットFCU1から第NFCユニットFCUNまでが含まれる。なお、FCシステム10が備える複数のFCユニットFCUの数(即ち、N)は、特に限定されず、FCシステム10への要求電力に応じて、適宜変更することができる。
【0019】
図1に示すように、FCシステム10は、システム制御装置12と、バッテリ14とをさらに備える。システム制御装置12は、複数のFCユニットFCU及びバッテリ14の動作を制御する制御装置である。バッテリ14は、例えばリチウムイオンバッテリやニッケル水素バッテリであって、複数の二次電池を内蔵している。システム制御装置12は、各々のFCユニットFCUと通信可能に接続されており、上記したように、各々のFCユニットFCUの動作を制御する。同様に、システム制御装置12は、バッテリ14と通信可能に接続されており、上記したように、バッテリ14の動作を制御する。バッテリ14は、各々のFCユニットFCUと電気的に接続されており、各々のFCユニットFCUに電力を供給可能に構成されている。なお、この場合、必要に応じて、バッテリ14と各々のFCユニットFCUとの間に、電力を昇圧又は降圧するコンバータが設けられてもよい。
【0020】
図1に示すように、各々のFCユニットFCUは、燃料電池ユニット制御装置(以下、FCユニット制御装置)16と、燃料電池スタック(以下、FCスタック)18と、コンプレッサ20と、水素供給弁22とを備える。FCユニット制御装置16は、システム制御装置12と通信可能に接続されており、システム制御装置12からの指示に基づいて、FCスタック18と、コンプレッサ20と、水素供給弁22との動作を制御する。このように、各々のFCユニットFCUにおける動作は、対応するFCユニット制御装置16によって制御される。なお、各々のFCユニットFCUに、FCユニット制御装置16は必ずしも必要とされない。例えば、システム制御装置12は、FCユニット制御装置16を介することなく、各FCユニットFCUの構成要素の各々を直接的に制御してもよい。
【0021】
FCスタック18は、例えば、高分子電解質型燃料電池であり、複数の単セルが積層された構造を有する。上記したように、FCユニット制御装置16は、システム制御装置12からの指示に基づいて、FCスタック18の動作を制御する。例えば、FCユニット制御装置16は、FCスタック18による発電の開始、又は発電の休止を制御する。一例ではあるが、各FCユニットFCUにおいて、FCユニット制御装置16は、FCスタック18の動作を監視してもよい。
【0022】
コンプレッサ20は、外部から取り入れた空気を圧縮して、FCスタック18へ供給する。一方、水素供給弁22は、FCシステム10に接続された水素タンク24とFCスタック18との間に設けられている。上記したように、FCユニット制御装置16は、システム制御装置12からの指示に基づいて、コンプレッサ20及び水素供給弁22の動作を制御する。例えば、FCユニット制御装置16は、コンプレッサ20を制御して、酸素ガスを含む空気をFCスタック18に供給する。同様に、FCユニット制御装置16は、水素供給弁22を制御して、水素タンク24からFCスタック18に供給される水素ガス量を調整する。このようなコンプレッサ20及び水素供給弁22の動作に必要な電力は、バッテリ14から供給されてもよいし、自己又は他のFCユニットFCUから供給されてもよい。FCスタック18での発電を終えた空気及び水素ガスは、FCスタック18から外部に排出される。この場合、FCスタック18から外部に排出されるガスの中には、未反応の水素ガスが含まれることがある。そのため、各FCユニットFCUは、循環経路(不図示)をさらに備え、FCスタック18へ未反応の水素ガスを循環できるようにしてもよい。なお、コンプレッサ20は、各々のFCユニットFCUへ空気を供給する機器の一例である。また、水素ガスは燃料ガスの一例であり、空気は酸化ガスの一例である。特に限定されないが、FCシステム10は、各々のFCユニットFCUに冷却水を循環させて冷却する冷却系(不図示)をさらに備えてもよい。
【0023】
次に、本実施例のFCシステム10の始動に係る動作について説明する。FCシステム10の始動は、システム制御装置12と、各々のFCユニットFCUに設けられたFCユニット制御装置16によって実行される。通常、システム制御装置12は、各々のFCユニットFCUへ始動指令を同時に与えて、全てのFCユニットFCUを同時に始動させる。このとき、各々のFCユニットFCUを始動するために要する始動電力は、バッテリ14から供給される。しかしながら、バッテリ14の状態によっては、複数のFCユニットFCUに対して、十分な始動電力を供給できないことがある。例えば極寒地(例えば-20℃以下)において、バッテリ14が極低温の状態になっていると、バッテリ14が出力可能な電力は低下する。あるいは、バッテリ14のSOCが低下していても、バッテリ14出力可能な電力は低下する。このような特定の条件下では、複数のFCユニットFCUへ十分な始動電力を供給することができず、複数のFCユニットFCUを始動できないおそれが生じる。
【0024】
上記の点に関して、本実施例のFCシステム10では、特定の条件下で始動する必要があるときに、以下に説明する特別な始動処理を実行するように構成されている。ここでいう特定の条件には、例えばFCシステム10の雰囲気温度が所定の温度よりも低いことが含まれてもよい。加えて、又は代えて、特定の条件には、バッテリ14のSOCが所定の値よりも低いことが含まれてもよい。これらに限られず、特定の条件には、バッテリ14の出力可能な電力を低下させ得る各種の条件が設定されてもよい。但し、本技術の他の実施形態において、始動処理は、必ずしも特定の条件下のみに限られず、任意の条件下で実行されなくてもよい。以下、
図2、
図3を参照して、この特別な始動処理について説明する。
【0025】
図2に示すように、システム制御装置12は、始動操作を検知すると(ステップS10でYES)、ステップS12以降の処理へ移行する(
図3の時刻T0)。ここで、始動操作とは、例えば、ユーザがFCシステム10のメインスイッチをオンすることをいう。一方、始動操作が検知されない場合には(ステップS10でNO)、システム制御装置12は、ステップS10へ再び戻る。即ち、始動操作が検知されない場合には、システム制御装置12により、ステップS10の処理が繰り返される。
【0026】
先ず、ステップS12では、システム制御装置12が、パラメータnに「1」を設定する。このパラメータnは、始動対象のFCユニットFCUを示すものであり、後続のステップS14~S18の処理において、第nFCユニットFCUnが始動されることを意味する。本実施例では、パラメータnに対して最初に「1」が設定されるので、先ずは第1FCユニットFCU1のみが始動される。
【0027】
ステップS14では、システム制御装置12が、第1FCユニットFCU1のFCユニット制御装置16に、始動指令を与える(
図3の時刻T1)。始動指令を受けたFCユニット制御装置16は、第1FCユニットFCU1を始動させるための処理を開始する。コンプレッサ20は作動を開始し、外部から取り入れた空気を圧縮してFCスタック18に供給する。このとき、水素供給弁22も制御され、FCスタック18に供給する水素ガス量を調整する。これにより、第1FCユニットFCU1では、コンプレッサ20から供給された空気と、水素タンク24から供給された水素ガスとを用いて、発電が開始される。即ち、第1FCユニットFCU1が始動する。このステップS14の処理において、コンプレッサ20といった第1FCユニットFCU1の各構成要素には、バッテリ14から電力が供給される。即ち、第1FCユニットFCU1の始動電力は、バッテリ14から供給される。
【0028】
ステップS16では、始動された第1FCユニットFCU1において、急速暖機運転が実施される。急速暖機運転とは、始動直後の低温なFCスタック18を暖機するための暖機運転の一例である。一般に、FCスタック18の暖機運転では、通常の発電時よりも発電効率を低下させて発電を行い、発電損失に伴う発熱を用いてFCスタック18の温度を上昇させる。これに対して、急速暖機運転では、例えばFCスタック18への空気の供給量をさらに制限し、FCスタック18における発電損失を増大させることで、FCスタック18の温度をより短時間で上昇させる。
【0029】
ステップS18では、第1FCユニットFCU1の急速暖機運転が完了すると、FCユニット制御装置16からシステム制御装置12へ、完了信号が送信される。なお、急速暖機運転は、所定時間が経過することによって完了されてもよいし、FCスタック18の測定された温度に基づいて完了されてもよい。例えば、FCユニット制御装置16は、急速暖機運転中にFCスタック18の温度を監視し、その温度が閾値以上となったときに急速暖機運転が完了したと判断してもよい。
【0030】
ステップS20では、完了信号を受信したシステム制御装置12が、パラメータnの設定値が「N」であるのか否かを判定する。パラメータnの設定値が「N」でない場合、システム制御装置12はステップS22の処理に進んで、パラメータnに「n+1」を設定する。ここでは、パラメータnに「1」が設定されているので、パラメータnには新たに「2」が設定される。次いで、システム制御装置12はステップS14の処理に戻り、第2FCユニットFCU2に対して始動指令を与える(
図3の時刻T2)。これにより、第2FCユニットFCU2が始動されるとともに、始動後の第2FCユニットFCU2において急速暖機運転が実行される。このとき、第2FCユニットFCU2の始動電力は、
図3中の矢印で模式的に示すように、始動済みの第1FCユニットFCU1から供給される。なお、第2FCユニットFCU2の始動電力は、第1FCユニットFCU1に代えて、又は加えて、バッテリ14から供給されてもよい。以後、第NFCユニットFCUNの始動及び急速暖機運転が完了するまで、即ち、ステップS20の処理においてYESとなるまで、上述した処理が繰り返される(
図3のT3、・・・・、TN)。このとき、
図3中の矢印で模式的に示すように、第3FCユニットFCU3の始動電力は、始動済みの第2FCユニットFCU2から供給される。なお、第3FCユニットFCU3の始動電力は、第2FCユニットFCU2に代えて、又は加えて、バッテリ14と始動済みの第1FCユニットFCU1の少なくとも一方から供給されてもよい。即ち、第NFCユニットFCUNの始動電力は、バッテリ14から供給されてもよいし、その一部又は全部が、始動済みの他のFCユニットFCUから供給されてもよい。これにより、
図3の時刻TFにおいて、全てのFCユニットFCUについて始動が完了する。
【0031】
図3に示すように、上述した一連の始動処理によると、第1の処理として、先ずは第1FCユニットFCU1のみが始動される(時刻T1)。次いで、第2の処理として、第2FCユニットFCU2のみが始動される(時刻T2)。その後も同様の処理が繰り返されることによって(時刻T3、・・・、TN)、複数のFCユニットFCUが、一つずつ順番に始動されていく。このように、始動処理が少なくとも第1の処理と第2の処理とを含んでおり、複数のFCユニットFCUの少なくとも一部を、互いに異なるタイミングで選択的に始動することで、同時に始動するFCユニットFCUを制限することができるので、バッテリ14が出力すべき始動電力を有意に低減することができる。例えばバッテリ14が極低温の状態になっており、バッテリ14の出力可能な電力が低下している場合でも、複数のFCユニットFCUを確実に始動することができる。なお、複数のFCユニットFCUは、必ずしも一つずつ順番に始動される必要はなく、他の実施形態として、二以上のFCユニットFCUが同時に始動されてもよい。
【0032】
本実施例のFCシステムでは、各々のFCユニットFCUが始動するときに、その始動に係る動作の一部として、急速暖機運転が実施される。急速暖機運転(あるいは、暖機運転)では、FCスタック18において発電が実施されることから、多くのFCユニットFCUが同時に始動された場合、急速暖機運転によって比較的に大きな電力が無用に発電されるおそれがある。この点に関しても、複数のFCユニットFCUの少なくとも一部を、互いに異なるタイミングで選択的に始動し、同時に始動するFCユニットFCUを制限することで、急速暖機運転に伴う余剰な電力が発電されることを避けることができる。
【0033】
加えて、先に始動されたFCユニットFCUの急速暖機運転による発電電力を、その後に始動されるFCユニットFCUに始動電力として供給すれば、バッテリ14が出力すべき始動電力をさらに低減することができる。この場合、システム制御装置12は、一又は複数のFCユニットFCUが始動した後、その急速暖機運転が完了する前に(即ち、
図2のステップS18よりも前に)、次のFCユニットFCUに対して始動指令を与えてもよい。
【0034】
次に、
図4、
図5を用いて、特別な始動処理の変形例について説明する。この変形例では、始動処理は、第1の処理と第2の処理とを含んでおり、第1の処理では、第1FCユニットFCU1が始動され、第2の処理では、第2FCユニットFCU2から第NFCユニットFCUNまでが同時に始動される。従って、
図4に示すステップS24からステップS30までは、上記した第1の処理、即ち、
図2のステップS12においてnを「1」と設定したときのステップS10からステップS18までと同様である。
【0035】
図4に示すように、システム制御装置12は、始動操作を検知すると(ステップS24でYES)、ステップS26以降の処理へ移行する(
図5の時刻T0)。一方、始動操作が検知されない場合には、システム制御装置12は、ステップS24へ再び戻り、始動操作を検知するまで、ステップS24の処理を繰り返す。ステップS26では、システム制御装置12が、第1FCユニットFCU1のFCユニット制御装置16に、始動指令を与える(
図5の時刻T1)。始動指令を受けたFCユニット制御装置16は、第1FCユニットFCU1を始動させるための処理を開始する。このステップS26の処理において、第1FCユニットFCU1の始動電力は、バッテリ14から供給される。ステップS28では、始動された第1FCユニットFCU1において、急速暖機運転が実施される。ステップS30では、第1FCユニットFCU1の急速暖機運転が完了すると、FCユニット制御装置16からシステム制御装置12へ、完了信号が送信される。
【0036】
次いで、ステップS32では、システム制御装置12が、第2FCユニットFCU2から第NFCユニットFCUNまでの各FCユニット制御装置16に対して、同時に始動指令を与える(
図5の時刻T2)。始動指令を受けた各FCユニット制御装置16は、第2FCユニットFCU2から第NFCユニットFCUNまでを始動させるための処理を同時に開始する。このステップS32の処理において、始動される各々のFCユニットFCUの始動電力は、
図5中の矢印で模式的に示すように、始動済みの第1FCユニットFCU1から供給される。なお、各々のFCユニットFCUの始動電力の一部は、第1FCユニットFCU1に代えて、バッテリ14から供給されてもよい。
【0037】
ステップS34では、始動された第2FCユニットFCU2から第NFCユニットFCUNまでにおいて、急速暖機運転が実施される。ステップS36では、第2FCユニットFCU2から第NFCユニットFCUNまでの急速暖機運転が完了すると、各FCユニット制御装置16からシステム制御装置12へ、完了信号が送信される。これにより、
図5の時刻TFにおいて、全てのFCユニットFCUについて始動が完了する。
【0038】
図5に示すように、上述した一連の始動処理によると、第1の処理として、先ずは第1FCユニットFCU1のみが始動される(時刻T1)。次いで、第2の処理として、第2FCユニットFCU2から第NFCユニットFCUNまでが始動される(時刻T2)。即ち、第2の処理では、第1の処理で始動されなかったFCユニットFCUの残部が全て始動される。従って、このような構成を採用することで、FCシステム10に含まれる全てのFCユニットFCUを始動するのに要する時間を短縮することができる。また、このような構成では、第1の処理で始動済みの第1FCユニットFCU1から、第2の処理で始動する各FCユニットFCUへ、各FCユニットFCUの始動電力を供給することができる。そのため、例えば、バッテリ14について出力可能な電力が低下している場合でも、複数のFCユニットFCUを確実に始動することができる。
【0039】
なお、第1の処理で始動されるFCユニットFCUの数は、一つに限定されない。他の実施形態として、第1の処理は、二以上のFCユニットFCUを同時に始動するものであってもよい。また、第2の処理において、第2FCユニットFCU2から第NFCユニットFCUNまでの全てが、必ずしも同時に始動される必要はない。他の実施形態として、第2の処理は、少なくとも二つのFCユニットFCUを同時に始動するものであればよい。これらの場合でも、特に限定されないが、第2の処理で始動されるFCユニットFCUの数は、第1の処理で始動されるFCユニットFCUの数よりも多くてもよい。そして、システム制御装置12は、第2の処理に続けて、未始動のFCユニットFCUを始動するための一又は複数の処理をさらに実行してもよい。
【0040】
以上、いくつかの具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは組み合わせによって技術的有用性を発揮するものである。
【符号の説明】
【0041】
10 :FCシステム
12 :システム制御装置
14 :バッテリ
16 :FCユニット制御装置
18 :FCスタック
20 :コンプレッサ
22 :水素供給弁
24 :水素タンク
FCU :FCユニット
FCU1 :第1FCユニット
FCU2 :第2FCユニット
FCU3 :第3FCユニット
FCUN :第NFCユニット