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特許7604921通信方法、プログラムおよび通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】通信方法、プログラムおよび通信システム
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20241217BHJP
   G10H 1/40 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G10H1/00 Z
G10H1/40
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021015060
(22)【出願日】2021-02-02
(65)【公開番号】P2022118492
(43)【公開日】2022-08-15
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】原 貴洋
【審査官】大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-255863(JP,A)
【文献】特開2005-128296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00
G10H 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔で繰り返し生成されるタイミング情報に基づいて報知装置で実行される報知処理を制御し、
報知データおよび順次取得される音データをパケットデータとして送信することであって、当該パケットデータに含まれる音データが取得された期間における前記タイミング情報の有無に基づく前記報知データを含む前記パケットデータを送信すること
を含む、通信方法。
【請求項2】
前記パケットデータを送信することは、当該パケットデータにおける前記音データの位置と前記報知データの位置とを異ならせてパケットデータを生成することを含む、請求項1に記載の通信方法。
【請求項3】
前記パケットデータを送信することは、前記報知データを、前記音データとは異なる周波数帯域の音波形に変換したデータとして当該音データに重畳することを含む、請求項1に記載の通信方法。
【請求項4】
前記報知データは、前記パケットデータに含まれる音データのうち、前記タイミング情報が取得されたときのデータ位置を特定する情報を含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の通信方法。
【請求項5】
前記報知データは、前記パケットデータに含まれる音データが取得された期間における前記タイミング情報が生成された回数を示す情報を含む、請求項4に記載の通信方法。
【請求項6】
前記タイミング情報は、拍情報が規定され、
前記報知データは、前記期間における前記タイミング情報に対応する拍情報を含む、請求項1から請求項5のいずれかに記載の通信方法。
【請求項7】
所定の間隔で繰り返し生成されるタイミング情報に基づいて報知装置で実行される報知処理を制御し、
報知データおよび順次取得される音データをパケットデータとして送信することであって、当該パケットデータに含まれる音データが取得された期間における前記タイミング情報の有無に基づく前記報知データを含む前記パケットデータを送信すること
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項8】
前記パケットデータを送信することは、当該パケットデータにおける前記音データの位置と前記報知データの位置とを異ならせてパケットデータを生成することを含む、請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記パケットデータを送信することは、前記報知データを、前記音データとは異なる周波数帯域の音波形に変換したデータとして当該音データに重畳することを含む、請求項7に記載のプログラム。
【請求項10】
前記報知データは、前記パケットデータに含まれる音データのうち、前記タイミング情報が取得されたときのデータ位置を特定する情報を含む、請求項7から請求項9のいずれかに記載のプログラム。
【請求項11】
前記報知データは、前記パケットデータに含まれる音データが取得された期間における前記タイミング情報が生成された回数を示す情報を含む、請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記タイミング情報は、拍情報が規定され、
前記報知データは、前記期間における前記タイミング情報に対応する拍情報を含む、請求項7から請求項11のいずれかに記載のプログラム。
【請求項13】
所定の間隔で繰り返し生成されるタイミング情報の有無に基づく報知データおよび音データを含むパケットデータを受信し、
前記パケットデータに含まれる音データを再生し、
前記音データが再生される期間に、当該音データとともに前記パケットデータに含まれる報知データに基づいて報知装置で実行される報知処理を制御すること
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項14】
前記報知処理は、所定の音を出力することを含む、請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
前記報知処理は、所定の光を発生することを含む、請求項13または請求項14に記載のプログラム。
【請求項16】
前記報知処理は、所定の映像を再生することを含む、請求項13から請求項15のいずれかに記載のプログラム。
【請求項17】
前記報知処理を制御することは、前記音データが再生される期間より前に、前記報知装置に対して前記報知処理の制御データを出力することを含む、請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
過去の前記報知処理の制御履歴に基づいて特定される期間において前記パケットデータが受信されなかった場合には、当該期間の経過後に所定の報知処理を実行するように前記報知装置を制御する、請求項13から請求項17のいずれかに記載のプログラム。
【請求項19】
第1通信装置と第2通信装置を備え、
前記第1通信装置は、
所定の間隔で繰り返し生成されるタイミング情報に基づいて第1報知装置で実行される報知処理を制御する第1報知制御部と、
報知データおよび順次取得される音データをパケットデータとして送信することであって、当該パケットデータに含まれる音データが取得された期間における前記タイミング情報の有無に基づく前記報知データを含む前記パケットデータを送信するデータ送信部と、
を有し、
前記第2通信装置は、
前記パケットデータを受信して、当該パケットデータに含まれる音データを再生するデータ受信部と、
前記音データが再生される期間に、当該音データとともに前記パケットデータに含まれる報知データに基づいて第2報知装置で実行される報知処理を制御する第2報知制御部と、
を有する、
通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔地における報知処理を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに遠隔地に存在する複数のユーザが楽器を演奏により合奏する場合に、演奏タイミングを合わせることが重要である。互いに遠隔地に存在する複数のメトロノームを同期する技術が、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-154672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の一つは、第1通信拠点において順次取得された音データを第2通信拠点において取得し、かつ、第1通信拠点においてその音データが取得されたタイミングも第2通信拠点において認識できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態によれば、所定の間隔で繰り返し生成されるタイミング情報に基づいて報知装置で実行される報知処理を制御し、報知データおよび順次取得される音データをパケットデータとして送信することを含む通信方法が提供される。前記パケットデータは、前記パケットデータに含まれる音データが取得された期間における前記タイミング情報の有無に基づく前記報知データを含む。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、所定の間隔で繰り返し生成されるタイミング情報の有無に基づく報知データおよび音データを含むパケットデータを受信し、前記パケットデータに含まれる音データを再生し、前記音データが再生される期間に、当該音データとともに前記パケットデータに含まれる報知データに基づいて報知装置で実行される報知処理を制御することを含む通信方法が提供される。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、上記の通信方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供されてもよいし、上記の通信方法を実行する通信装置が提供されてもよい。また、双方の通信方法を実行する通信システムが提供されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1通信拠点において順次取得された音データを第2通信拠点において取得し、かつ、第1通信拠点においてその音データが取得されたタイミングも第2通信拠点において認識できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態における通信システムの構成を説明する図である。
図2】一実施形態におけるデータ通信機能を説明する図である。
図3】一実施形態におけるパケットデータの構造を説明する図である。
図4】一実施形態におけるデータ送信方法を説明するフローチャートである。
図5】一実施形態におけるデータ受信方法を説明するフローチャートである。
図6】一実施形態における補間処理を説明するフローチャートである。
図7】変形例におけるパケットデータの構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態における通信システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。なお、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、B等を付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0011】
[1.通信システムの構成]
図1は、一実施形態における通信システムの構成を説明する図である。通信システムは、インターネットなどのネットワークNWに接続されたサーバ1を含む。サーバ1は、CPU等の制御部、記憶部および通信部を含み、制御部が所定のプログラムを実行することにより、通信拠点間における合奏を実現するためのサービスを提供する。サーバ1は、ネットワークNWに接続された複数の通信拠点間の通信を制御し、各通信拠点における通信端末20(通信装置)がP2P型通信を実現するために必要な処理を実行する。この処理は、公知の方法により実現されればよい。図1では、2つの通信拠点T1、T2が例示されているが、この数に限られず、さらに多くの通信拠点が存在してもよい。以下の説明において、通信拠点T1、T2を区別せずに説明する場合には、単に通信拠点という。
【0012】
この例では、通信拠点間における演奏に応じた音(以下、演奏音という)が、P2P型通信によって送受信されることで合奏をすることができる。以下に説明するデータ通信機能によれば、主となる通信拠点においてメトロノーム音を設定することで、他の通信拠点においても主となる通信拠点での演奏音とメトロノーム音との関係を維持したまま受信することできる。主となる1つの通信拠点とそれ以外の通信拠点とについては、通信拠点から送信される情報(ユーザの指示等)に基づいてサーバ1を介して設定される。以下の説明においては、通信拠点T1が主となる通信拠点として設定されているものとして説明する。
【0013】
各通信拠点には、通信端末20が配置されている。通信端末20には、電子楽器30、収音装置40、撮像装置50、放音装置60および表示装置70が接続されている。各通信拠点において通信端末20は必ず存在するが、電子楽器30、収音装置40、撮像装置50、放音装置60および表示装置70の少なくとも一つが通信端末20に接続されていなくてもよい。電子楽器30、収音装置40、撮像装置50、放音装置60および表示装置70の少なくとも1つと通信端末20とが一体の装置として構成されてもよい。
【0014】
電子楽器30は、演奏操作子、演奏操作子への操作に応じて音データを出力する音源を含む。電子楽器30は、この例では、演奏操作子として鍵を有する電子ピアノである。音データは通信端末20に出力される。音データは、音波形信号を示すデータであり、放音装置60に出力されてもよい。
【0015】
収音装置40は、例えばマイクロフォンまたは音波形信号の入力端子を有し、マイクロフォンに入力された音または入力端子に入力された音波形信号を音データとして通信端末20に出力する。
【0016】
撮像装置50は、例えばカメラを有し、カメラによって撮像された画像に応じた動画データを通信端末20に出力する。以下の説明において、画像とは静止画像および動画像の双方を含む。
【0017】
放音装置60は、例えばスピーカを有し、通信端末20から供給された音データが示す音をスピーカから出力する。放音装置60に供給される音データは、他の通信拠点から送信された音データであってもよいし、自身の通信拠点で生成された音データであってもよい。
【0018】
表示装置70は、例えば液晶ディスプレイを有し、通信端末20から供給された動画データが示す画像を液晶ディスプレイに表示する。表示装置70に供給される動画データは、他の通信拠点から送信された動画データであってもよいし、自身の通信拠点で生成された動画データであってもよい。表示装置70は、LED等の発光素子を含む発光部であってもよい。
【0019】
[2.通信端末の構成]
通信端末20は、制御部21、記憶部23、通信部25および操作部27を含む。制御部21は、CPU、RAMおよびROM等を含む。制御部21は、記憶部23に記憶されたプログラムをCPUにより実行することによって、プログラムに規定された命令にしたがった処理を行う。このプログラムには、データ通信機能を実現する処理を行うためのプログラムが含まれる。データ通信機能は、後述するデータ送信方法およびデータ受信方法を実現する機能を含む。
【0020】
記憶部23は、不揮発性メモリなどの記憶装置を含み、制御部21によって実行されるプログラムを記憶する。その他にも通信端末20において用いる様々なデータが記憶される。このプログラムは、コンピュータにより実行可能であればよく、磁気記録媒体、光記録媒体、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶された状態で通信端末20に提供されてもよい。この場合には、通信端末20は、記録媒体を読み取る装置を備えていればよい。また、このプログラムは、通信部25を介してダウンロードすることによって提供されてもよい。
【0021】
通信部25は、通信モジュールを含み、ネットワークNWに接続して、サーバ1および他の通信拠点の通信端末20などの外部装置と各種データの送受信を行う。各通信拠点における通信端末20間で送信されるデータは、ストリーミングデータとして送信される。
【0022】
操作部27は、マウス、キーボード等の操作装置を含み、操作装置に対するユーザの操作(以下、単にユーザ指示という場合がある)を受け付け、その操作に応じた信号を制御部21に出力する。
【0023】
[3.データ通信機能]
続いて、データ通信機能について説明する。
【0024】
図2は、一実施形態におけるデータ通信機能を説明する図である。データ通信機能100は、データ送信部200、データ受信部300および報知制御部500を含む。データ送信部200は、後述するデータ送信方法を実行する。データ受信部300は、後述するデータ受信方法を実行する。
【0025】
データ送信部200は、取得部210、タイミング生成部220、パケット生成部230および送信部250を含む。
【0026】
取得部210は、例えば、通信端末20に接続された装置から音データを順次取得する。この例では、取得部210は、電子楽器30を用いた演奏により生成する音(以下、演奏音という)に応じた音データを順次取得する。取得部210は、所定量の音データをバッファしてからパケット生成部230に供給する。
【0027】
タイミング生成部220は、ユーザ指示に基づいてタイミング情報を生成して、パケット生成部230および報知制御部500に供給する。タイミング情報は、所定の間隔で繰り返し生成される。この間隔および生成開始のタイミングはユーザ指示によって設定され、この例では、メトロノーム音を鳴らすためのテンポとメトロノーム音の開始タイミングに対応する。例えば、テンポが「120」に設定されると、タイミング生成部220は、開始タイミングから0.5秒毎にタイミング情報を生成する。
【0028】
タイミング生成部220における処理は、メトロノーム音の発信元である通信拠点T1(主となる通信拠点)の通信端末20では実行されるが、メトロノーム音の発信元にならない通信拠点T2の通信端末20では実行されない。
【0029】
パケット生成部230は、取得部210によって取得された音データをパケット化して、パケットデータを生成する。パケット生成部230は、音データをパケット化するときに、タイミング生成部220によって生成されたタイミング情報を用いた報知データをさらにパケット化して、パケットデータを生成する。このパケットデータは、この例では、通信プロトコルは、RTP(Real-time Transport Protocol)である。パケットデータの構造について説明する。
【0030】
図3は、一実施形態におけるパケットデータの構造を説明する図である。図3に示すようにRTPヘッダRHに続くペイロードPLは、第1データ位置に配置される音データD1、および第2データ位置に配置される報知データD2を含む。第1データ位置は、音データのサンプル数(例えば、64サンプル)に応じて予め決められている。
【0031】
報知データD2は、タイミング情報に応じたデータを含む。報知データD2は、この例では、第1データ位置に含まれる音データD1が取得部210によって取得された期間において、パケット生成部230によってタイミング情報が生成されたか否かを示す。言い換えると、報知データD2は、第1データ位置に含まれる音データD1が取得された期間におけるタイミング情報の有無を示すデータを含む。報知データD2は、この例では、タイミング情報が有りの場合(タイミング情報が生成された場合)には「1」となり、タイミング情報が無しの場合(タイミング情報が生成されていない場合)には「0」となる。そのため、メトロノーム音が鳴ったときの演奏音が含まれるパケットデータでは、報知データD2が「1」となる。
【0032】
上述したように取得部210において取得された音データは、パケット生成部230に供給される前にバッファされる。したがって、パケット生成部230は、タイミング情報が生成されたタイミングから音データのバッファ量に応じた時間だけ後に取得部210から供給された音データをパケット化するときに、報知データを「1」とする。バッファ量に応じた時間の調整は実行されなくてもよい。
【0033】
通信拠点T2における通信端末20は、上述したようにタイミング生成部220における処理が実行されない。そのため、タイミング情報が生成されず、その通信端末20から送信されるパケットデータに含まれる報知データは「0」である。通信拠点T2の通信端末20において生成されるパケットデータには報知データが含まれなくてもよい。
【0034】
図2に戻って説明を続ける。送信部250は、パケット生成部230において生成されたパケットデータを送信する。送信先は、他の通信拠点における通信端末20である。
【0035】
報知制御部500は、タイミング生成部220によってタイミング情報が生成されると、メトロノーム音を示す音データを生成し、放音装置60に供給する。これによって、メトロノーム音は、放音装置60から出力される。出力されたメトロノーム音は、電子楽器30から出力される音データには含まれない。このように、報知制御部500は、放音装置60(報知装置)で実行されるメトロノーム音の発生処理(報知処理)を制御する。
【0036】
したがって、電子楽器30に対する演奏操作により取得部210が音データを取得したときにメトロノーム音が鳴っていたときには、その音データを含むパケットデータには、タイミング情報が生成されていたことを示す制御データが含まれる。
【0037】
データ受信部300は、受信部310、復元部330および再生部350を含む。
【0038】
受信部310は、他の通信拠点の通信端末20から送信されたパケットデータを受信する。
【0039】
復元部330は、受信部310によって受信されたパケットデータから、音データと報知データとを復元する。復元部330は、復元した音データを再生部350に供給し、報知データに基づいてタイミング情報を生成して報知制御部500に供給する。復元部330は、報知データが「1」であるパケットデータに含まれる音データを再生部350にするときに、タイミング情報を報知制御部500に供給する。
【0040】
上述したように通信拠点T2における通信端末20は、タイミング生成部220の処理が実行されないから、報知データが「1」となるパケットデータを送信しない。したがって、通信拠点T1における通信端末20では、復元部330によって復元された報知データが「1」となることはない。すなわち、通信拠点T1における通信端末20では、報知制御部500へのタイミング情報は、タイミング生成部220から供給されるが、復元部330から供給されない。一方、通信拠点T2における通信端末20では、報知制御部500へのタイミング情報は、復元部330から供給されるが、タイミング生成部220から供給されない。
【0041】
再生部350は、復元部330によって復元された音データをバッファして再生する。再生された音データは、放音装置60に供給される。放音装置60は、供給された音データに応じた音(以下、復元音という)を出力する。上述したように放音装置60は、報知制御部500からメトロノーム音を示す音データも供給される。したがって、放音装置60は、復元音とメトロノーム音とを出力する。上述の方法によりパケットデータを送信することで、復元音とメトロノーム音との時間的な関係は、上述した演奏音とメトロノーム音との時間的な関係と同じになる。
【0042】
[4.データ送信方法]
続いて、データ通信機能100のうちデータ送信部200(制御部21)が実行するデータ送信方法について説明する。以下に説明するデータ送信方法の各処理は、例えば、操作部27に入力されたユーザの指示によって開始される。このとき、メトロノーム音の発信元として主となる通信拠点(通信拠点T1)とそれ以外の通信拠点(通信拠点T2)とが予め設定される。通信拠点T1においては、ユーザの指示により、タイミング情報に応じたメトロノーム音が生成される。
【0043】
図4は、一実施形態におけるデータ送信方法を説明するフローチャートである。制御部21は、タイミング情報を生成した場合(ステップS110;Yes)、タイミング情報に基づいて報知処理を制御し(ステップS112)、報知データを「1」に設定する(ステップS114)。この制御によって、タイミング情報に応じてメトロノーム音が生成され、メトロノーム音が放音装置60から出力される。制御部21は、タイミング情報を生成していない場合(ステップS110;No)、報知データを「0」に設定する(ステップS116)。
【0044】
制御部21は、タイミング情報を生成してメトロノーム音を発生したときに電子楽器30から出力された音データを取得する(ステップS130)。制御部21は、取得した音データと報知データとを対応付けてパケット化してパケットデータを生成し、他の通信拠点T2に送信する(ステップS150)。これにより、報知データは、音データを取得した期間におけるタイミング情報の生成の有無に基づく情報を有する。すなわち、パケット化する対象の音データを取得した期間にタイミング情報が生成された場合、音データに対応する報知データは「1」となり、その期間にタイミング情報が生成されない場合、音データに対応する報知データは「0」となる。
【0045】
制御部21は、処理を終了する指示がユーザから入力されたことを検出した場合(ステップS200;Yes)には、データ送信方法の処理を終了し、その指示を検出していない場合(ステップS200;No)には、ステップS110に戻って処理を続ける。以上が、データ送信方法の説明である。
【0046】
[5.データ受信方法]
続いて、データ通信機能100のうちデータ受信部300(制御部21)が実行するデータ送信方法について説明する。以下に説明するデータ送信方法の各処理は、例えば、操作部27に入力されたユーザの指示によって開始される。
【0047】
図5は、一実施形態におけるデータ受信方法を説明するフローチャートである。制御部21は、パケットデータを受信しない間(ステップS600;No)は、補間処理を実行しつつ(ステップS900)、パケットデータの受信を待つ。補間処理については後述する。制御部21は、パケットデータを受信すると(ステップS600;Yes)、そのパケットデータから音データと報知データとを復元し(ステップS630)、復元した音データをバッファする(ステップS650)。バッファされることによって再生された音データは、放音装置60に供給され、音として放音装置60から出力される。
【0048】
制御部21は、復元した報知データが「1」である場合(ステップS700;Yes)には、タイミング情報を生成して報知処理を制御する(ステップS750)。この制御によって、タイミング情報に応じてメトロノーム音が生成され、メトロノーム音が放音装置60から出力される。制御部21は、メトロノーム音が放音装置60から出力されるタイミングを、音データのバッファ時間に応じて遅延させるように制御する。これによって、「1」である報知データに対応する音データにより放音装置60から復元音が出力されるときにメトロノーム音が出力される。
【0049】
制御部21は、復元した報知データが「0」である場合(ステップS700;No)には、タイミング情報を生成しない。制御部21は、処理を終了する指示がユーザから入力されたことを検出した場合(ステップS800;Yes)には、データ送信方法の処理を終了し、その指示を検出していない場合(ステップS800;No)には、ステップS600に戻って処理を続ける。続いて、ステップS600でパケットデータを受信しなかった場合(ステップS600;No)において実行される補間処理(ステップS900)について説明する。
【0050】
図6は、一実施形態における補間処理を説明するフローチャートである。制御部21は、現在時刻が予測期間を過ぎていない場合(ステップS910;No)には、補間処理を終了して、ステップS600に戻って処理を続ける。予測期間は、タイミング情報が生成されると予測される期間であり、過去の報知処理の制御履歴に基づいて決定される。制御履歴は、例えば、過去の複数回においてタイミング情報を生成したタイミングである。制御部21は、例えば、4回のタイミング情報の生成タイミングに応じたそれぞれの間隔(3つの期間)の平均時間から、次にタイミング情報が生成されるタイミングを予測する。予測期間は、その予測タイミングを中心に所定時間幅を付加した期間として設定される。
【0051】
制御部21は、現在時刻が予測期間を過ぎている場合(ステップS910;Yes)には、タイミング情報を生成して(ステップS950)、補間処理を終了する。これによって、通信拠点T2の通信端末20は、パケットロスなどによって、報知データが「1」となるパケットデータを受信しなかったとしても、メトロノーム音を放音装置60から出力することができる。このメトロノーム音に対応する音データはパケットロスにより復元できなかったことになるが、その前後の音データが存在する場合には復元音はほとんど途切れない。このような場合に、メトロノーム音が抜けてしまわずに発生することで、ユーザに違和感を生じさせないようにすることもできる。以上が、データ送信方法の説明である。
【0052】
従来の技術によれば、ある拠点(例えば、第1通信拠点)において順次取得された演奏音は、ネットワークを介してストリーミング形式で音データとして他の通信拠点(例えば、第2通信拠点)に送信される。そのため、ネットワークの遅延の影響により、第1通信拠点での演奏音の発生タイミングよりも、その演奏音が送信されてから第2通信拠点で発音されるタイミングが遅れる。全拠点において同時にメトロノームが鳴る場合、第1通信拠点における演奏音とメトロノーム音との関係と、第2通信拠点におけるその演奏音とメトロノーム音との関係とにズレが生じることになる。このことは、第2拠点のユーザが第1通信拠点における演奏音に合わせて演奏をしようとするときに、そのユーザに対して違和感を与えることになる。したがって、異なる拠点において楽器を同時に演奏するような合奏においては、必ずしも全ての通信拠点において同時にメトロノームが鳴るようにすることが望ましいとは限らない。
【0053】
一方、第1通信拠点から送信される音データに、演奏音だけでなくメトロノーム音も含まれるようにすることが考えられる。この場合には、第1通信拠点において演奏音とメトロノーム音とがミキシングされて音データが生成されて第2通信拠点に送信される。そのため、この音データを受信した第2通信拠点では、演奏音と、その演奏の際に鳴っていたメトロノームの音との相対的な関係を維持した状態で、双方を発音することができる。しかしながら、この音データによれば、双方の音が分離できない状態のデータになってしまい、第2通信拠点では第1通信拠点における演奏音だけを記録することができないなどの不都合が生じる。
【0054】
このように、一実施形態におけるデータ通信機能によれば、通信拠点T1における演奏音とメトロノーム音との関係を維持したまま、この演奏音に対応する復元音とメトロノーム音とを他の通信拠点(通信拠点T2)において放音装置60から出力することができる。したがって、第1通信拠点T1において順次取得された音データを第2通信拠点T2において取得し、かつ、第1通信拠点においてその音データが取得されたタイミングも第2通信拠点において認識できる。
【0055】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の一実施形態は、以下のように様々な形態に変形することもできる。また、上述した実施形態および以下に説明する変形例は、それぞれ互いに組み合わせて適用することもできる。
【0056】
(1)上述した実施形態では、パケットデータは、音データD1と報知データD2とが異なるデータ位置となるように生成されていたが、別の方法で生成されてもよい。
【0057】
図7は、変形例におけるパケットデータの構造を説明する図である。例えば、報知データD2を非可聴周波数帯域の音波形に変換したデータとして演奏音(音データD1)に重畳することで、音データD1と報知データD2とを含むパケットデータが生成されてもよい。この場合、パケット生成部230は、可聴周波数帯域における演奏音の音データD1と非可聴周波数帯域における報知データD2とを重畳したデータをパケット化して、ペイロードPLにそのデータを配置すればよい。復元部330は、送信されたデータを可聴周波数帯域と非可聴周波数帯域とに分けることによって、音データD1と報知データD2とに分離すればよい。非可聴周波数帯域に情報を重畳する技術を実現するための具体的な処理方法については、公知の方法を用いることができ、例えば、特開2010-55077号公報に開示されている。
【0058】
(2)タイミング情報に基づいてユーザに報知される情報は、メトロノーム音のように聴覚により認識される情報である場合に限らず、視覚により認識される情報であってもよい。視覚により認識される情報は、表示装置70によりユーザに報知されればよく、例えば、LED等の発光素子により所定の光を発生させることであってもよいし、ディスプレイに所定の映像を再生することであってもよい。映像の再生は音の再生に比べて処理時間を要するため、報知制御部500は、再生部350により音データが再生される期間よりも前に、表示する映像を制御するための動画データ(制御データ)を表示装置70に出力することが好ましい。
【0059】
(3)タイミング情報は、拍情報を含んでいてもよい。拍情報は、鳴らすべきメトロノーム音が何拍目に対応するかを示す情報である。この場合には、ユーザ指示によってさらに拍子が設定される。この情報は全ての拍を示すものでなくてもよく、例えば、1拍目だけを特定する情報であってもよい。
【0060】
報知制御部500は、拍情報に基づいて、拍によってメトロノーム音を異なる音で生成してもよい。例えば、1拍目のみ他の拍とは異なる音でメトロノーム音が生成されればよい。音が異なることは、例えば、音の大きさが異なることであってもよいし、音色が異なることであってもよい。上述した変形例(2)のように視覚により認識される情報が用いられる場合には、拍によって色を異ならせてもよいし、明るさを異ならせてもよい。パケットデータに含まれる報知データD2は、タイミング情報の生成の有無を示す情報を、生成されたタイミング情報に含まれる拍情報により表してもよい。
【0061】
(4)報知データD2は、タイミング情報の生成の有無を別の情報によって表してもよい。タイミング情報が生成されたこと(タイミング情報が有る)は、例えば、パケットデータにおける音データD1のさらに詳細のデータ位置を特定する情報によって表されてもよい。音データD1のサンプル数が大きくなり、その音データD1に含まれる演奏音の時間が長くなると、メトロノーム音の間隔によっては、その演奏音の期間のうちメトロノーム音が鳴ったタイミングを特定する必要がある。このような場合において、そのタイミングを特定するために音データD1のさらに詳細のデータ位置を特定する情報を報知データD2に含めることが好ましい。データ位置は、音データD1の最初のサンプルから数えたサンプル数として記述されてもよい。
【0062】
演奏音の期間がさらに長くなり、複数回のメトロノーム音が鳴ってしまう場合には、報知データD2は、音データD1における演奏音の期間に鳴るメトロノーム音の回数(タイミング情報が生成された回数)を示す情報およびメトロノーム音毎のデータ位置を特定する情報を含むようにすればよい。例えば、音データD1における演奏音の期間に、2回のメトロノーム音が鳴った場合には、報知データD2は、メトロノーム音が2回であること、1回目のデータ位置および2回目のデータ位置についての情報を含む。
【0063】
(5)報知データD2は、パケットデータのペイロードPLに配置される場合に限らず、ヘッダに配置されてもよい。
【0064】
(6)図5および図6において説明したデータ受信方法において、補間処理が実行されなくてもよい。
【0065】
以上が変形例に関する説明である。
【0066】
以上のとおり、本発明の一実施形態によれば、所定の間隔で繰り返し生成されるタイミング情報に基づいて報知装置で実行される報知処理を制御し、報知データおよび順次取得される音データをパケットデータとして送信することであって、当該パケットデータに含まれる音データが取得された期間における前記タイミング情報の有無に基づく前記報知データを含む前記パケットデータを送信することを含む通信方法が提供される。さらに以下のように構成することもできる。
【0067】
前記パケットデータを送信することは、当該パケットデータにおける前記音データの位置と前記報知データの位置とを異ならせてパケットデータを生成することを含む。
【0068】
前記パケットデータを送信することは、前記報知データを、前記音データとは異なる周波数帯域の音波形に変換したデータとして当該音データに重畳することを含む。
【0069】
前記報知データは、前記パケットデータに含まれる音データのうち、前記タイミング情報が取得されたときのデータ位置を特定する情報を含む。
【0070】
前記報知データは、前記パケットデータに含まれる音データが取得された期間における前記タイミング情報が生成された回数を示す情報を含む。
【0071】
前記タイミング情報は、拍情報が規定され、前記報知データは、前記期間における前記タイミング情報に対応する拍情報を含む。
【0072】
また、本発明の一実施形態によれば、所定の間隔で繰り返し生成されるタイミング情報の有無に基づく報知データおよび音データを含むパケットデータを受信し、前記パケットデータに含まれる音データを再生し、前記音データが再生される期間に、当該音データとともに前記パケットデータに含まれる報知データに基づいて報知装置で実行される報知処理を制御することを含む通信方法が提供される。さらに以下のように構成することもできる。
【0073】
前記報知処理は、所定の音を出力することを含む。
【0074】
前記報知処理は、所定の光を発生することを含む。
【0075】
前記報知処理は、所定の映像を再生することを含む。
【0076】
前記報知処理を制御することは、前記音データが再生される期間より前に、前記報知装置に対して前記報知処理の制御データを出力することを含む。
【0077】
過去の前記報知処理の制御履歴に基づいて特定される期間において前記パケットデータが受信されなかった場合には、当該期間の経過後に所定の報知処理を実行するように前記報知装置を制御する。
【符号の説明】
【0078】
1…サーバ、20…通信端末、21…制御部、23…記憶部、25…通信部、27…操作部、30…電子楽器、40…収音装置、50…撮像装置、60…放音装置、70…表示装置、100…データ通信機能、200…データ送信部、210…取得部、220…タイミング生成部、230…パケット生成部、250…送信部、300…データ受信部、310…受信部、330…復元部、350…再生部、500…報知制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7