(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】定期乗車券管理装置、定期乗車券管理方法、および定期乗車券管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G07B 15/00 20110101AFI20241217BHJP
【FI】
G07B15/00 G
G07B15/00 J
(21)【出願番号】P 2021017890
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白岩 拓也
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-081807(JP,A)
【文献】特開2006-072699(JP,A)
【文献】特開2002-163690(JP,A)
【文献】特開2006-059289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07B 15/00
G06Q 50/40-50/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効期間、および有効区間が定められた定期乗車券の利用履歴
を参照して日種別に
利用日数を集計する集計部と、
前記定期乗車券の利用にかかる利用価値を日種別に設定した価値テーブルを記憶する記憶部と、
前記集計部によって集計された日種別の
利用日数と、前記価値テーブルに設定されている日種別の利用価値と、に基づいて、前記定期乗車券の総利用価値を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記定期乗車券の総利用価値に応じて、当該定期乗車券が有効であるか、無効であるかを判定する判定部と、を備えた定期乗車券管理装置。
【請求項2】
前記利用価値は、利用ポイント数である、請求項1に記載の定期乗車券管理装置。
【請求項3】
前記算出部は、日種別に、利用日数と利用価値との積を日種別利用価値として算出し、算出した日種別利用価値の総和を前記総利用価値として算出する、請求項1、または2に記載の定期乗車券管理装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記算出部によって算出された前記定期乗車券の総利用価値が、上限
価値に達していなければ、前記定期乗車券が有効であると判定する、請求項
1~3のいずれかに記載の定期乗車券管理装置。
【請求項5】
前記価値テーブルには、予め定められた日種、および時間帯における前記定期乗車券の利用にかかる追加利用価値が設定され、
前記算出部は、前記追加利用価値も含めて、前記定期乗車券の総利用価値を算出する、請求項1~
4のいずれかに記載の定期乗車券管理装置。
【請求項6】
前記利用価値が0である日種を設けている、請求項1~
5のいずれかに記載の定期乗車券管理装置。
【請求項7】
有効期間、および有効区間が定められた定期乗車券の利用にかかる利用価値を日種別に設定した価値テーブルを記憶部に記憶する定期乗車券管理装置のコンピュータが、
前記定期乗車券の
利用履歴を参照して、利用日数を日種別に集計する集計ステップと、
前記集計
ステップで集計された日種別の
利用日数と、前記
価値テーブルに設定されている日種別の利用価値と、に基づいて、前記定期乗車券の総利用価値を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出した前記定期乗車券の総利用価値に応じて、当該定期乗車券が有効であるか、無効であるかを判定する判定ステップと、
を実行する定期乗車券管理方法。
【請求項8】
有効期間、および有効区間が定められた定期乗車券の利用にかかる利用価値を日種別に設定した価値テーブルを記憶部に記憶する定期乗車券管理装置のコンピュータに、
前記定期乗車券の
利用履歴を参照して、利用日数を日種別に集計する集計ステップと、
前記集計
ステップで集計された日種別の
利用日数と、前記
価値テーブルに設定されている日種別の利用価値と、に基づいて、前記定期乗車券の総利用価値を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出した前記定期乗車券の総利用価値に応じて、当該定期乗車券が有効であるか、無効であるかを判定する判定ステップと、
を実行させる定期乗車券管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定期乗車券が利用できる期間を制限する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電鉄会社は、利用者に対するサービスとして、定期乗車券(以下、単に、定期券と言う。)を販売している。定期券は、周知のように、有効期間、および有効区間が定められた乗車券であり、有効期間内であれば、何度でも有効区間内における鉄道の利用に利用できる乗車券である。定期券は、有効期間、および有効区間に応じて定めた金額で販売されている。すなわち、利用者は、定期券の利用回数が多くなるほど、鉄道の利用にかかる費用(運賃)の抑制効果(定期券のメリット)を感じる。
【0003】
また、定期券が、有効期間内において、利用されなかった期間が長い場合に、その利用されなかった期間に応じて、定期券の有効期間を延長することによって、利用者に対するサービスの向上を図ったシステムもあった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、企業におけるテレワークの推奨等にともなって、1週間当たりの出勤日数が1日や2日になっている社員も少なくない。電鉄会社は、テレワークの活用で出勤日数が減少した利用者に対して、定期券を購入することによるメリットを感じさせることができなくなってきている。
【0006】
このようなことから、電鉄会社は、テレワークの活用で出勤日数が減少した利用者が、定期券のメリットを感じる新たなサービスを提供し、利用者に対するサービスの向上を図りたい、と考えている。
【0007】
この発明の目的は、鉄道の利用回数が少ない利用者に対しても、定期乗車券のメリットを感じさせ、利用者に対するサービスの向上が図れる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の定期乗車券管理装置は、上記目的を達成するため以下に示すように構成している。
【0009】
集計部が、有効期間、および有効区間が定められた定期乗車券の利用日数を日種別に集計する。ここで言う日種は、例えば、曜日であってもよいし、曜日および祝祭日であってもよいし、これら以外であってもよい。
【0010】
記憶部は、定期乗車券の利用にかかる利用価値を日種別に設定した価値テーブルを記憶する。価値テーブルは、例えば、利用価値であるポイント数を曜日別、または曜日、および祝祭日別に設定したテーブルである。
【0011】
算出部は、集計部によって集計された日種別の利用日数と、価値テーブルに設定されている日種別の利用価値と、に基づいて、定期乗車券の総利用価値を算出する。ここで言う定期乗車券の総利用価値は、例えば、定期券の利用日毎の利用価値を合計した値(総和)である。
【0012】
判定部は、算出部によって算出された定期乗車券の総利用価値に応じて、当該定期乗車券が有効であるか、無効であるかを判定する。例えば、判定部は、算出部によって算出された定期乗車券の総利用価値が、上限価値に達していなければ、定期乗車券が有効であると判定する。言い換えれば、判定部は、算出部によって算出された定期乗車券の総利用価値が、上限価値に達していると、定期乗車券が無効であると判定する。
【0013】
この構成によれば、定期乗車券の日種別に集計した利用日数に応じて、定期乗車券が有効であるか、無効であるかの判定が行われる。このため、週に1~2日程度しか利用しない利用者は、定期乗車券を略毎日利用する利用者に比べて、定期乗車券が有効であると判定される期間(定期乗車券が利用できる期間)が長くなる。これにより、例えば、テレワークの活用で出勤日数が減少した利用者にも、定期乗車券を購入することによるメリットを感じさせることができる。
【0014】
また、価値テーブルには、予め定められた日種、および時間帯における定期乗車券の利用にかかる追加利用価値が設定され、
算出部は、追加利用価値も含めて、定期乗車券の総利用価値を算出する、ように構成してもよい。
【0015】
例えば、追加利用価値を、平日のラッシュ時の時間帯(例えば、午前7時~午前10時)に設定すれば、ラッシュ時の利用をひかえる利用者を増加させることができる。これにより、ラッシュ時の混雑の緩和を図ることができる。
【0016】
また、利用価値が0である日種、例えば日曜日や祝祭日を設けてもよい。このようにすれば、利用者が、休日の外出に定期券を利用しやすくなり、利用者サービスの一層の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、鉄道の利用回数が少ない利用者に対しても、定期乗車券のメリットを感じさせ、利用者に対するサービスの向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】定期券管理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図4】ある定期券について、利用履歴記憶部に記憶されている利用履歴データを示す図である。
【
図5】自動改札機の主要部の構成を示すブロック図である。
【
図6】自動改札機の動作を示すフローチャートである。
【
図7】定期券管理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0020】
<1.適用例>
図1は、この例の改札システムを示す概略図である。この例の改札システムは、
図1に示すように、定期券管理装置1と、自動改札機2とを有している。
【0021】
定期券管理装置1は、センタに設置されている。定期券管理装置1は、定期乗車券(以下、単に定期券と言う。)毎に、日種別に、利用者が定期券を改札処理で利用した日数(利用日数)を集計する。この例で言う日種は、曜日、および祝祭日の8種類である。定期券は、有効期間、および有効区間が定められた乗車券である。この例では、定期券管理装置1は、定期券の有効期間内であっても、その定期券について日種別に集計した利用日数に応じて無効と判定することがある。定期券の有効、無効とは、その定期券が乗車券として利用できるかどうかである。
【0022】
なお、日種は、曜日のみの7種類であってもよいし、曜日、および祝祭日の8種類であってもよいし、平日(月曜~金曜)と、土曜、日曜、および祝祭日との2種類であってもよいし、上記以外の他の分類であってもよい。
【0023】
周知のように、自動改札機2は、駅の改札口に設置されている。自動改札機2には、駅構内に入場する利用者に対して改札処理を行う入場用の自動改札機2、および駅構内から出場する利用者に対して改札処理を行う出場用の自動改札機2がある。
【0024】
この例の改札システムは、
図1に示したX駅とY駅の2つの駅の改札口に設置された自動改札機2だけでなく、図示していない他の駅の改札口に設置された自動改札機2も有している。各駅に設置されている自動改札機2は、ネットワーク5を介して定期券管理装置1とデータ通信が行えるように構成されている。
【0025】
なお、自動改札機2と、定期券管理装置1とは、ネットワーク5を介して直接データ通信が行える構成であってもよいし、1つ以上の他の機器(各駅に設置されている駅サーバ等)を介してデータ通信が行える構成であってもよい。
【0026】
自動改札機2は、利用者が所持している乗車券媒体3を受け付け、その乗車券媒体3に記録されている乗車券情報を読み取る。自動改札機2は、読み取った乗車券情報に基づき、改札通路における利用者の通行可否を判定する。
【0027】
自動改札機2での改札処理で利用できる乗車券は、定期券、キップ、回数券、SF(Stored Fare)券等の種類がある。また、乗車券媒体3は、ICカードであってもよいし、スマートフォン等の携帯端末であってもよいし、磁気カードや光学的読取コード(例えば、QRコード(登録商標)等の二次元バーコード)が印刷された媒体であってもよい。
図1では、乗車券媒体3を所有している1人の利用者を図示しているだけであり、乗車券媒体3を所有している利用者が1人であるという意味ではない。
【0028】
なお、この例では、乗車券の種類が定期券である乗車券媒体3を所有している利用者に対する改札処理について説明する。定期券以外のキップ、回数券、SF券等の種類の乗車券を所有している利用者に対する改札処理については、ここでは説明を省略する。
【0029】
この例の改札システムでは、自動改札機2が、利用者が改札処理で定期券を利用すると、その定期券の識別番号を定期券管理装置1に通知する。
【0030】
定期券管理装置1は、日種別に定期券の利用ポイントを設定した価値テーブルを記憶している。例えば、価値テーブルは、
図2に示すように、日種別に、月曜2ポイント、火曜1ポイント、水曜1ポイント、木曜1ポイント、金曜2ポイント、土曜0.5ポイント、日曜0ポイント、祝祭日0ポイントを設定したテーブルである。この例では、価値テーブルは、全ての利用者が購入した定期券に対して一律に規定したものである。
【0031】
なお、価値テーブルは、各利用者が自身の日常生活の状況に応じて、日種別に利用ポイントを設定したものであってもよい。この場合、例えば、利用者が、利用ポイントを2ポイントにする日種(平日)を、2種類指定するようにすればよい。また、
図2に示す価値テーブルは、あくまでも一例であって、日種別の利用ポイントの配分等については、電鉄会社が自由に決めればよい。
【0032】
また、定期券管理装置1は、上記したように、定期券毎に、その定期券が利用された日数(利用日数)を日種別に集計する。この集計では、定期券が利用された日が祝祭日である場合、祝祭日の利用日数を1日とし、該当する曜日については利用日数を1日としない。
【0033】
なお、利用日数の日種別の集計では、定期券が同じ日に何度利用されても、該当する日種の利用日数を1日とする。すなわち、定期券の利用が1回であった日も、定期券の利用が2回以上であった日も、1日として集計される。
【0034】
定期券管理装置1は、日種別に、集計した利用日数と、利用ポイントとの積を日種別利用ポイントとして求める。定期券管理装置1は、日種別利用ポイントの総和を総利用ポイント(この発明で言う、総利用価値に相当する。)として算出する。定期券管理装置1は、総利用ポイントが予め定めた上限ポイントに達している定期券を無効と判定する。また、定期券は、有効期間外である場合も無効と判定される。
【0035】
このように、この例の改札システムでは、定期券の有効、無効の判定が、その定期券の利用に応じて算出された総利用ポイントによって行われる。このため、テレワークの推奨等にともなって、鉄道を利用して出勤する日数が週に1~2日程度である利用者は、略毎日利用する利用者に比べて、定期券が有効であると判定される期間(定期券が利用できる期間)が長くなる。これにより、例えば、テレワークの活用で出勤日数が減少した利用者にも、定期券を購入することによるメリットを感じさせることができる。したがって、鉄道の利用回数が少ない利用者に対しても、定期券のメリットを感じさせ、利用者に対するサービスの向上が図れる。
【0036】
なお、鉄道会社は、有効期間、有効区間だけでなく、上限ポイントに応じて定期券を販売する価格を決定すればよい。
【0037】
<2.構成例>
図3は、この例の定期券管理装置の主要部の構成を示すブロック図である。定期券管理装置1は、図
3に示すように、制御ユニット11、通信ユニット12、利用履歴記憶部13、および価値テーブル記憶部14を備えている。
【0038】
制御ユニット11は、定期券管理装置1本体各部の動作を制御する。また、制御ユニット11は、集計部11a、算出部11b、および判定部11cを有している。制御ユニット11が有する集計部11a、算出部11b、および判定部11cについては後述する。
【0039】
通信ユニット12は、ネットワーク5を介して自動改札機2等の他の機器とのデータ通信を制御する。通信ユニット12は、受信部12a、および送信部12bを有している。
【0040】
利用履歴記憶部13は、定期券毎に、その定期券の利用の有無を登録した利用履歴データを記憶する。
図4は、ある定期券について、利用履歴記憶部に記憶されている利用履歴データを示す図である。利用履歴データは、
図4に示すように、定期券の識別番号と、その定期券の上限ポイントのポイント数と、その定期券の有効期間内の日毎に、利用されたか、利用されなかったかを示す値と、を対応づけたデータである。
図4では、「1」が利用されたことを示し、「0」が利用されなかったことを示している。
【0041】
利用履歴データは、定期券が利用されたか、利用されなかったかについて判定できない日(未利用である今日、および明日以降)については、例えば、
図4に示すように「0」を登録しておけばよい。利用履歴記憶部13は、例えばHDD(Hard Disk Drive)であってもよいし、SSD(Solid State Drive)であってもよいし、他の記憶媒体であってもよい。
【0042】
価値テーブル記憶部14は、
図2に示した価値テーブルを記憶している。価値テーブル記憶部14は、制御ユニット11に設けたメモリの一部の記憶領域を利用してもよいし、利用履歴記憶部13の一部の記憶領域を利用してもよい。
【0043】
次に、制御ユニット11が有する集計部11a、算出部11b、および判定部11cについて説明する。
【0044】
集計部11aは、利用履歴データを参照し、日種別に定期券が利用された日数を集計する。
【0045】
算出部11bは、集計部11aが日種別に集計した集計結果と、価値テーブル記憶部14が記憶する価値テーブルと、を用いて、日種別利用ポイントを算出する。日種別利用ポイントは、その日種について集計した利用日数と、その日種の利用ポイントとの積である。また、算出部11bは、算出した日種別利用ポイントの総和を、総利用ポイントとして算出する。
【0046】
判定部11cは、定期券が有効であるか無効であるかを判定する。判定部11cは、算出部11bが算出した総利用ポイントが上限ポイントに達していない定期券であれば、有効と判定する。言い換えれば、判定部11cは、算出部11bが算出した総利用ポイントが上限ポイントに達している定期券であれば、無効と判定する。
【0047】
定期券管理装置の制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、この発明にかかる定期券管理プログラムを実行したときに、集計部11a、算出部11b、および判定部11cとして動作する。また、メモリは、この発明にかかる定期券管理プログラムを展開する領域や、この定期券管理プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。また、ハードウェアCPUが、この発明にかかる定期券管理方法を実行するコンピュータである。
【0048】
図5は、自動改札機の主要部の構成を示すブロック図である。自動改札機2は、制御ユニット21と、近接型無線通信部22と、コード読取部23と、利用者検知部24と、表示部25と、扉開閉部26と、上位通信部27とを備えている。
【0049】
制御ユニット21は、自動改札機2本体各部の動作を制御する。また、制御ユニット21は、改札処理部21aを有している。改札処理部21aは、乗車券情報等に基づいて、改札通路における利用者の通行可否を判定する。
【0050】
近接型無線通信部22は、通信エリア内に翳された乗車券媒体3との無線通信で乗車券情報を受信する。近接型無線通信部22の通信エリアは、利用者にとっての改札通路入口側に設けられている。また、自動改札機2は、改札通路における利用者の通行方向が双方向である場合、近接型無線通信部22の通信エリアを一方の方向に通行する利用者にとっての改札通路入口側だけでなく、他方の方向に通行する利用者にとっての改札通路入口側にも設けている。
【0051】
コード読取部23は、撮像エリアに翳された光学的読取コードを撮像する。コード読取部23は、光学的読取コードの撮像画像を処理して、この光学的読取コードが示す乗車券情報を取得する。撮像エリアは、利用者にとっての改札通路入口側に設けられている。また、自動改札機2は、改札通路における利用者の通行方向が双方向である場合には、撮像エリアを一方の方向に通行する利用者にとっての改札通路入口側だけでなく、他方の方向に通行する利用者にとっての改札通路入口側にも設けている。撮像エリアは、近接型無線通信部22の通信エリアの内側に設けられている。
【0052】
利用者検知部24は、改札通路における利用者の通行方向に並べた複数の光電センサを有する。利用者検知部24は、複数の光電センサで改札通路を通行している利用者の位置を検知する。
【0053】
表示部25は、改札通路に進入した利用者に対するメッセージを表示する。
【0054】
扉開閉部26は、改札通路における利用者の通行可否の判定結果に基づいて、この利用者の出口側に位置する扉を開閉する。
【0055】
上位通信部27は、定期券管理装置1、駅サーバ(不図示)等の上位装置とのデータ通信を行う。
【0056】
なお、この例の自動改札機2は、磁気券を処理するための構成を備えていないが、磁気券を処理するための構成を備えていてもよい。
【0057】
自動改札機2の制御ユニット21は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、改札処理プログラムを実行したときに、改札処理部21aとして動作する。また、メモリは、改札処理プログラムを展開する領域や、この改札処理プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット21は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。
【0058】
<3.動作例>
図6は、自動改札機の動作を示すフローチャートである。
図7は、定期券管理装置の動作を示すフローチャートである。
【0059】
自動改札機2は、近接型無線通信部22、またはコード読取部23が乗車券情報を取得するのを待つ(s1)。自動改札機2は、s1で取得した乗車券情報が定期券にかかるものであるか、それ以外(切符、SF券等)にかかるものであるかを判定する(s2)。
【0060】
自動改札機2は、定期券にかかるものではないと判定すると、今回取得した乗車券情報が適正であるかどうかを判定する(s10)。s10における処理は、公知の自動改札機と同じであるので、ここでは詳細な説明を省略する。自動改札機2は、s10で乗車券情報が適正であると判定すると、利用者にとっての改札通路の出口側に設けられた扉を開し(s8)、s1に戻る。また、自動改札機2は、s10で乗車券情報が適正でないと判定すると、利用者にとっての改札通路の出口側に設けられた扉を閉し(s9)、s1に戻る。自動改札機2は、周知のように、利用者にとっての改札通路の出口側に設けられた扉を開することによって、この利用者が改札通路を通行するのを許可する。また、自動改札機2は、周知のように、利用者にとっての改札通路の出口側に設けられた扉を閉することによって、この利用者が改札通路を通行するのを禁止する。
【0061】
自動改札機2は、s2において、今回取得した乗車券情報が定期券にかかる乗車券情報であると判定すると、定期券の有効期間内の利用であるかどうかを判定する(s3)。自動改札機2は、s3で有効期間内の利用でないと判定すると、s9で利用者にとっての改札通路の出口側に設けられた扉を閉し、s1に戻る。
【0062】
また、自動改札機2は、s3で有効期間内であると判定すると、有効区間内の利用であるかどうかを判定する(s4)。自動改札機2は、s4で有効区間内の利用でないと判定すると、s9で利用者にとっての改札通路の出口側に設けられた扉を閉し、s1に戻る。
【0063】
なお、s3と、s4とは、上記と逆の順番で行ってもよい。
【0064】
また、自動改札機2は、s4で有効区間内の利用であると判定すると、定期券管理装置1に対して判定要求を送信し(s5)、定期券管理装置1から判定結果を受信するのを待つ(s6)。s5で送信する判定要求には、今回乗車券情報を取得した定期券の識別番号が含まれている。
【0065】
定期券管理装置1は、自動改札機2からの判定要求を受信すると、利用履歴データを更新する(s21、s22)。s22では、今回受信した判定要求に含まれている定期券識別コードの利用履歴データに対して、対応する日(今日)の値を「1」にする。このとき、すでに対応する日の値がすでに「1」であれば、利用履歴データに対する更新は、実質的に行われない。
【0066】
定期券管理装置1は、集計部11aにおいて、日種別の利用日数を集計する(s23)。s23では、集計部11aが、今回受信した判定要求に含まれている定期券識別コードの利用履歴データを参照し、日種別に利用日数を集計する。すなわち、曜日、および祝祭日別に、値が「1」である日数を計数する。
【0067】
定期券管理装置1は、算出部11bにおいて、今回受信した判定要求に含まれている定期券識別コードの定期券について、総利用ポイントを算出する(s24)。s24では、算出部11bは、日種別利用ポイントを算出する。日種別利用ポイントは、その日種の利用日数と、その日種の利用ポイントとの積である。算出部11bは、算出した日種別利用ポイントの総和を、総利用ポイントとして算出する。
【0068】
定期券管理装置1は、判定部11cにおいて、s24で算出した総利用ポイントが上限ポイントに達しているかどうかを判定する(s24)。定期券管理装置1は、s24で上限ポイントに達していると判定すると、今回受信した判定要求の判定結果として、定期券の無効を返信する(s25)。また、定期券管理装置1は、s24で上限ポイントに達していないと判定すると、今回受信した判定要求の判定結果として、定期券の有効を返信する(s25)。
【0069】
自動改札機2は、定期券管理装置1から判定結果を受信すると、受信した判定結果が有効であれば、利用者にとっての改札通路の出口側に設けられた扉を開し(s7、s8)、s1に戻る。また、自動改札機2は、定期券管理装置1から受信した判定結果が無効であれば、利用者にとっての改札通路の出口側に設けられた扉を閉し(s7、s9)、s1に戻る。
【0070】
このように、この例の改札システムでは、定期券の有効、無効の判定が、その定期券の有効期間だけでなく、その定期券の利用に応じて算出された総利用ポイントによって行われる。これにより、鉄道の利用回数が少ない利用者に対しても、定期乗車券のメリットを感じさせ、利用者に対するサービスの向上が図れる。
【0071】
また、この例では、日曜、および祝祭日の利用ポイントを「0」にしているので、利用者は、定期券を休日に利用しても、利用ポイントが変化しない。すなわち、この例の改札システムは、休日の外出に定期券を利用するという利用者のメリットを損なうことがない。
【0072】
<4.変形例>
・変形例1
上記の例では、自動改札機2が、s3、およびs4において、利用された定期券の有効期間、および有効区間が適正であるかどうかを判定する構成であるとしたが、定期券管理装置1が、s3、およびs4にかかる判定を行う構成にしてもよい。
【0073】
なお、自動改札機2が、利用された定期券の有効期間、および有効区間が適正であるかどうかを判定する構成のほうが、定期券管理装置1と自動改札機2との間における通信頻度を抑えられる。
【0074】
また、上記の例のs3、またはs4にかかる判定の一方を、自動改札機2で行い、他方を定期券管理装置1で行う構成にしてもよい。
【0075】
・変形例2
上記の例では、定期券管理装置1は、利用者が定期券を利用する当日(今日)の利用ポイントも含めて定期券の有効、無効を判定する構成であるが、利用者が定期券を利用する当日の利用ポイントを含めないで定期券の有効、無効を判定する構成にしてもよい。具体的には、集計部11aは、昨日までの定期券の利用履歴をもとにして、日種別の利用日数を計数する。
【0076】
・変形例3
また、
図8に示すように、価値テーブルに、平日のラッシュ時(午前7:00~午前10:00)での定期券の利用に対する追加ポイントを設定してもよい。この場合、利用者は、平日のラッシュ時に定期券を利用すると、その日の利用ポイントに追加ポイントが加算される。例えば、月曜日のラッシュ時に使用すると、利用ポイントが3ポイントになる。また、火曜日のラッシュ時に使用すると、利用ポイントが2ポイントになる。これにより、ラッシュ時における鉄道の利用を利用者に控えさせることができ、混雑を緩和できる。
【0077】
この場合、定期券が追加ポイントを設定している平日のラッシュ時に利用された日については、
図4に示した利用履歴データに対応づけられている値を「2」にすればよい。これにより、定期券管理装置1は、定期券がラッシュ時に利用されたかどうかを管理できる。また、算出部11bは、総利用ポイントの算出において、ラッシュ時の利用にかかる追加ポイントを反映させることができる。
【0078】
・変形例4
自動改札機2は、定期券の利用者であって、改札通路の通行を許可した利用者に対して、総利用ポイントを表示部25に表示する構成であってもよい。このように、構成すれば、利用者は定期券を利用したときに、その定期券の総利用ポイントを確認することができる。したがって、利用者は、定期券があとどのぐらいの期間利用できるかを簡単に確認できる。
【0079】
・変形例5
改札システムは、利用者が、スマートフォン等の携帯端末を操作して、定期券管理装置1に対して、所有している定期券の総利用ポイントの確認要求を行える構成にしてもよい。
【0080】
この場合、定期券管理装置1は、利用者(携帯端末)からの総利用ポイントの確認要求を受信すると、上記したs23、およびs24にかかる処理を行って算出した総利用ポイントを、携帯端末に返信する。携帯端末は、定期券管理装置1から返信されてきた定期券の総利用ポイントを表示器に表示する。
【0081】
これにより、利用者は、携帯端末で、所有している定期券の総利用ポイントを確認できる。
【0082】
・変形例6
上記の例では、定期券管理装置1は、自動改札機2からの判定要求を受信すると、対応する定期券について総利用ポイントを算出し、有効、無効の判定を行うとしたが、無効と判定した定期券については、その判定結果を保持するようにしてもよい。このように構成すれば、定期券管理装置1は、一度無効であると判定した定期券について、総利用ポイントの算出を何度も繰り返し行わない。したがって、定期券管理装置1の処理負荷を抑制できる。
【0083】
・変形例7
また、価値テーブルに登録されている利用ポイントが「0」である日種については、総利用ポイントが上限ポイントに達しているかどうかにかかわらず、有効期間内であれば定期券を利用できる構成にしてもよい。すなわち、定期券管理装置1は、価値テーブルに登録されている利用ポイントが「0」である日種については、定期券が有効であると判定する構成にしてもよい。
【0084】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。特に、各装置における動作処理の手順については、上記した順番に限らず、必要に応じてその順番を入れ替えてもよい。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0085】
さらに、この発明に係る構成と上述した実施形態に係る構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記>
有効期間、および有効区間が定められた定期乗車券の利用日数を日種別に集計する集計部(11a)と、
前記定期乗車券の利用にかかる利用価値を日種別に設定した価値テーブルを記憶する記憶部(14)と、
前記集計部(11a)によって集計された日種別の利用日数と、前記価値テーブルに設定されている日種別の利用価値と、に基づいて、前記定期乗車券の総利用価値を算出する算出部(11b)と、
前記算出部(11b)によって算出された前記定期乗車券の総利用価値に応じて、当該定期乗車券が有効であるか、無効であるかを判定する判定部(11c)と、を備えた定期乗車券管理装置(1)。
【符号の説明】
【0086】
1…定期券管理装置
2…自動改札機
3…乗車券媒体
5…ネットワーク
11…制御ユニット
11a…集計部
11b…算出部
11c…判定部
12…通信ユニット
12a…受信部
12b…送信部
13…利用履歴記憶部
14…価値テーブル記憶部
21…制御ユニット
21a…改札処理部
22…近接型無線通信部
23…コード読取部
24…利用者検知部
25…表示部
26…扉開閉部
27…上位通信部