(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ロボットハンド治具およびロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/04 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
B25J15/04 Z
B25J15/04 C
(21)【出願番号】P 2021021663
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】川島 健太
(72)【発明者】
【氏名】高野 悠人
(72)【発明者】
【氏名】岸 優輔
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-091121(JP,A)
【文献】特開平05-069363(JP,A)
【文献】特開平07-227788(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031582(WO,A1)
【文献】特開昭61-056882(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0070361(US,A1)
【文献】特開2013-094930(JP,A)
【文献】実開平04-035889(JP,U)
【文献】特開昭60-255385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00 - 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークやツールを把持するロボットハンド治具であって、
ロボットハンドと係合する形状を有して位置を固定する位置決め部およびワークを把持する把持部を有した1対の対向した可動プレートと、
圧縮バネおよびスライダ機構
を介して、前記可動プレートが、前記把持部が開閉する方向にスライド可能に接続されたベース部
と、
を備え、
前記位置決め部が有している前記ロボットハンドと係合する形状は、前記可動プレートにおいて前記把持部が開く方向の前方に位置する面に設けられていることを特徴とするロボットハンド治具。
【請求項2】
ワークやツールを把持するロボットハンド治具であって、
ロボットハンドと係合する形状を有して位置を固定する位置決め部およびワークを把持する把持部を有した1対の対向した可動プレートと、
圧縮バネおよびスライダ機構を介して前記可動プレートがスライド可能に接続されたベース部と、
が具備され、
前記位置決め部は、前記ロボットハンドに把持されたときに前記圧縮バネが縮んで前記ロボットハンドに反力を与えることができることを
特徴とするロボットハンド治具。
【請求項3】
前記ベース部に、ロボットハンド治具がその非使用時に載置されるスタンドに係止されるキャッチ部が具備されていることを特徴とする請求項1または2に記載のロボットハンド治具。
【請求項4】
上記ロボットハンド治具において、前記可動プレートが複数の把持部を有していることを特徴とする
請求項1または2に記載のロボットハンド治具。
【請求項5】
請求項1または2に記載のロボットハンド治具を把持するロボットハンドであって、前記位置決め部と係合する形状の位置決め係合部を有することを特徴とするロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド治具、およびロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、少量多品種生産に対応するために、ロボットが生産設備に使用されることが増えてきた。品種替えの際、これまでの生産設備を用いた場合に比べて容易に段取り替えが可能になる。
【0003】
ここ数年では、1台のロボットで複数個のワークをハンドリングしたり、同時にツールを把持して加工したりと、ロボットの多能工化が進んでいる。
【0004】
ロボットでワークやツールをハンドリングする際、ロボット先端に設置したロボットハンドを用いてワークやツールを把持することが多い。種々のワークやツールをロボットハンドで把持する必要がある場合、同一のハンドではワークやツールの形状が異なるために、把持することが困難であることが多い。そのため、把持するワークやツールの形状に合わせた把持部を有するロボットハンドが複数個必要になる場合がある。
【0005】
そのような場合に対応する方法として、例えば、ロボット自身でロボットハンドにロボットハンド治具を装着することで、把持したいワークやツールの形状に合わせて把持部の形状を適宜変更する方法が知られている。
【0006】
特許文献1には、ロボットハンド先端のフィンガを脱着する方法が開示されており、フィンガ交換装置を用いてロボットハンド先端のフィンガ部を脱着可能にしており、フィンガ形状を選択できる。
【0007】
特許文献2には、ロボットハンドを脱着する方法が開示されており、ロボット先端に設けられたエアシリンダ機構を用いてハンドに設けられたシャンクをチャッキングすることができ、シャンクが設けられたハンドを準備しておくことで、ハンドを選択できる。
【0008】
特許文献3には、ハンド部に取り付けられた把持バッグ部の内圧を制御することで不定形な表面を有するワークを把持できるロボットハンドが公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-94930号公報
【文献】特開昭61-214987号公報
【文献】特開2013-220508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の技術では、フィンガ交換専用装置およびその動力源が必要であり、大型かつ高コストである。
【0011】
特許文献2の技術では、ハンドをチャッキングするために空気圧を使用しているため空気圧の供給が必要であり、かつ構造が複雑である。
【0012】
特許文献3の技術では、不定形のワークを把持可能であるが、精密な動作をさせるため
には位置精度に乏しい。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑み、装置の構造を極力単純にし、ロボットハンドの動力のみを用いることで、小型で低コスト、さらには位置精度の良いロボットハンド治具およびロボットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面は、ワークやツールを把持するロボットハンド治具であって、ロボットハンドと係合する形状を有してロボットハンドに対する位置を固定する位置決め部およびワークを把持する把持部を有した1対の対向した可動プレートと、圧縮バネおよびスライダ機構を介して、可動プレートが、把持部が開閉する方向にスライド可能に接続されたベース部と、が具備され、位置決め部が有しているロボットハンドと係合する形状は、可動プレートにおいて把持部が開く方向の前方に位置する面に設けられていることを特徴とするロボットハンド治具である。
【0015】
本発明に係る他のロボットハンド治具は、ワークやツールを把持するロボットハンド治具であって、ロボットハンドと係合する形状を有して位置を固定する位置決め部およびワークを把持する把持部を有した1対の対向した可動プレートと、圧縮バネおよびスライダ機構を介して前記可動プレートがスライド可能に接続されたベース部と、が具備されており、前記位置決め部は、ロボットハンドに把持されたときに前記圧縮バネが縮んでロボットハンドに反力を与えることができることを特徴とする。
【0016】
上記ロボットハンド治具において、前記ベース部に、ロボットハンド治具がその非使用時に載置されるスタンドに係止されるキャッチ部が具備されていて良い。
【0017】
上記ロボットハンド治具において、前記可動プレートが複数の把持部を有していて良い。
【0018】
本発明の別側面は、上記のいずれかのロボットハンド治具を把持するロボットハンドであって、前記位置決め部と係合する形状の位置決め係合部を有するロボットハンドである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のロボットハンド治具によれば、1つのロボットハンドでロボットハンド治具を容易に精度よく交換でき、様々な形状のワークやツールを位置精度よく把持することができ、小型で、さらには低コストのロボットハンドを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明のロボットハンド治具の概略の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明のロボットハンドの概略の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明のロボットハンド治具とロボットハンドの使用方法と、ワークの把持方法を示す模式図である。
【
図4】本発明のロボットハンド治具、およびロボットハンドをロボットに設置した状態を示す図である。
【
図5】本発明のロボットハンド治具によるツールの把持、またはロボットハンドによるツールを把持する方法を示した模式図である。
【
図6】本発明のロボットハンド治具スタンドの概略の一例を示す模式図である。
【
図7】本発明のロボットハンド治具とロボットハンド治具スタンドの使用方法を示した模式図である。
【
図8】本発明のロボットハンド治具の一例を示した構造図である。
【
図9】本発明のロボットハンド治具とロボットハンドを用いてワークを把持した一例を示した図である。
【
図10】本発明のロボットハンド治具とロボットハンドを用いてワークを把持した一例を示した図である。
【
図11】本発明のロボットハンドを用いてツールを把持した一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によるロボットハンド治具、およびロボットハンドの実施形態については、図を用いて説明する。下記に示す実施形態は、発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を示すものであって、構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記の実施形態に特定するものではない。
【0022】
図1は、本発明のロボットハンド治具の概略の一例を示す模式図である。また
図2は、本発明のロボットハンドの概略の一例を示す模式図である。
図1(a)の正面図および
図1(b)の側面図に示すように、ロボットハンド治具1は、ロボットハンドと係合する形状、この例では山形の形状を有して、ロボットハンド治具1のロボットハンドに対する位置を固定する位置決め部13およびロボットハンドで扱う対象物であるワークを把持する把持部14を有した1対の対向した可動プレート12が、それぞれ圧縮ばね15とスライダ機構16によってベース部11に対してスライド可能な態様で接続されている。また、ベース部11にはキャッチ部17が配置されている構成である。スライダ機構16は、リニアシャフト、ボールガイド、スプライン、リニアガイド、ボールねじなどの公知の直動機構を適宜採用して構成することができる。
【0023】
図2に示すようにロボットハンド2は、ロボットに接続するフランジ部23を有し、1対のハンド部21が閉方向201および開方向202に開閉することが可能である。ハンド部21にはその内側にロボットハンド治具1の位置決め部13と係合する形状、この例では谷型の形状の位置決め係合部22が設けられている。
【0024】
ロボットハンド2の位置決め係合部22とロボットハンド治具1の位置決め部13とは、互いに係合が可能な形状であればこの例に限定されず、任意の形状および構造を採用することができる。またこのような互いに係合する構造が複数設けられても良い。ロボットハンド治具とロボットハンドに互いに係合する形状を形成しておくことで、ロボットハンド治具を交換したときに容易に精度よくロボットハンド治具を固定することができる。
【0025】
図3(a)にロボットハンド2にロボットハンド治具1を装着する前の状態、
図3(b)に装着後の状態、
図3(c)に装着したロボットハンド治具1でワークAを把持している状態を模式的に示す。
【0026】
図3(a)に示すようにロボットハンド2にロボットハンド治具1を装着する前の状態において、圧縮バネ15は、若干圧縮して初期たわみを与えて設置することが望ましい。
【0027】
図3(b)に示すようにロボットハンド2でロボットハンド治具1の可動プレート12の部分を挟んで把持することで、ロボットハンド2の位置決め係合部22にはバネ反力101を受けたロボットハンド治具1の位置決め部13が嵌め込まれた態様となり、ロボットハンド2とロボットハンド治具1は位置決めされる。このときベース部11の部分はロボットハンド2には挟まれない。
【0028】
図3(b)で示した状態からさらにロボットハンドのハンド部21の開口量を小さくすることで、
図3(c)に示すようにロボットハンド治具1の可動プレート12の間隔も狭まり、把持部14でワークAを把持できる。この際、バネ反力101は
図3(b)の場合より大きくなる。
【0029】
図3(c)に示す状態において、ロボットハンド2はバネ反力101と把持反力102を受けるため、これら2つの力を許容できる必要性がある。そのため、圧縮バネ15は、ロボットハンド2とロボットハンド治具1が位置決めするために必要な力をもとにバネ定
数を、必要ストローク量から許容たわみを算出し、適宜選定される。
【0030】
圧縮バネ15の形状は限定しないが、一般的にはコイルバネや板バネが適している。
【0031】
図4に示すように、ロボットハンド治具1を用いてワークAを把持する際には、ロボットハンド2を介してロボットハンド治具1およびワークAはロボット3に接続された状態になる。そのため、ロボットハンド2、ロボットハンド治具1およびワークAの総重量がロボット3の可搬重量以下になるように、設計することが好ましい。
【0032】
図5(a)に示すように、ツールBを把持する際にはロボットハンドに装着したロボットハンド治具1でツールBを把持することができる。また、
図5(b)に示すように、ツールBに位置決め部B1が設けられていれば、ロボットハンド2で直接ツールBを把持することも可能である。
【0033】
図6に示すようにロボットハンド治具をその非使用時に保管・保持しておくスタンド4は、係止部41を具備している。この係止部41は、ロボットハンド治具1のキャッチ部17に対応して係止する部品であり、キャッチ部17と係合してロボットハンド治具1を固定的に保持することができる。
【0034】
図7(a)にロボットハンド治具1をロボットハンド2で把持する前の設置状態、
図7(b)に把持後の状態を示す。
【0035】
図7(a)に示すようにロボットハンド治具1は、ロボットハンド治具1のキャッチ部17がロボットハンド治具のスタンド4の係止部41に嵌った状態で、ロボットハンド治具1の自重で静置される。なお、ロボットハンド治具1のキャッチ部17はスタンド4の係止部41に対応して複数個所設けられていても良い。
【0036】
ロボットハンド治具1を使用する際は、
図7(b)に示すようにロボットハンド2でロボットハンド治具1を把持して持ち上げてから使用する。
【0037】
ロボットハンド治具1の設置方法は、ロボット3とロボットハンド治具1の位置関係が担保することができる構造であれば、上記に限定されるものではない。
【0038】
以下に、本発明のロボットハンド治具およびロボットハンドを用いてワークを把持する例をより具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0039】
図8は本発明のロボットハンド治具1の一例である。
図8(a)に正面図、
図8(b)に側面図および
図8(c)に下面図を示しており、これらを用いて説明する。
位置決め部13および把持部14を有した1対の対向した可動プレート12が、それぞれ圧縮ばね15とスライダ機構16によってベース部11にスライド可能に接続されている。また、ベース部11にはキャッチ部17が配置されている構成である。
また互いに形状が異なる把持部14aおよび14bをそれぞれ1対有している。
圧縮バネ15は初期たわみを与えて設置しており、例えば30N程度のバネ反力が発生している状態で設置される。
この例ではキャッチ部17は、ロボットハンド治具1の重心を囲うように3点配置した。これらの構造によって得たロボットハンド治具1の総重量は760g程度であった。
【0040】
図9はロボットハンド治具1をロボットハンド2の内側に装着し、把持部14aでワークAを把持している様子を示している。また、
図10は把持部14bでワークAを把持している様子を示す。
図9(a)、
図10(a)に正面図、
図9(b)、
図10(b)に側
面図を示す。
同一のワークAであっても、状況に応じて異なる2位置を把持できる様に、把持部14a、14bをそれぞれ設けたものである。把持の位置や方向などは、ワークAに対する仕事の内容や、ワークAの搬送時のロボットの制御性を考慮して定めることができる。
【0041】
ロボットハンド治具1およびロボットハンド2の重量はそれぞれ760g、1700gであり、合計2460gであった。例えばロボットとして可搬重量が3000gのUniversal Robot社製UR3eを使用すると、最大540gのワークの搬送が可能である。
図9および
図10に示すワークAの重量は、60g程度であり、問題なく搬送可能である。
【0042】
図11はロボットハンド2でツールBを把持した様子を示している。
図11(a)に正面図、
図11(b)に側面図を示す。
ツールBに直接位置決め部B1を設けることができない場合に、ツールBの形状に嵌合する外装B2をツールBに取り付け、外装B2に位置決め部B1を設けることで、ロボットハンド2でツールBを把持する様にしたものである。
【符号の説明】
【0043】
1 ・・・ロボットハンド治具
11 ・・・ベース部
12 ・・・可動プレート
13 ・・・位置決め部
14 ・・・把持部
14a・・・把持部
14b・・・把持部
15 ・・・圧縮バネ
16 ・・・スライダ機構
17 ・・・キャッチ部
101・・・バネ反力
102・・・把持反力
2 ・・・ロボットハンド
21 ・・・ハンド部
22 ・・・位置決め係合部
23 ・・・フランジ部
201・・・閉方向
202・・・開方向
3 ・・・ロボット
4 ・・・ロボットハンド治具のスタンド
41 ・・・係止部
A ・・・ワーク
B ・・・ツール
B1 ・・・位置決め部
B2 ・・・ツール外装