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特許7604934回転電機の固定子および回転電機の固定子の製造方法
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  • 特許-回転電機の固定子および回転電機の固定子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】回転電機の固定子および回転電機の固定子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/12 20060101AFI20241217BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20241217BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H02K15/12 F
H02K3/46 B
H02K3/04 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021021766
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124161
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯野 祐輔
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-007836(JP,A)
【文献】特開昭62-031352(JP,A)
【文献】特開平11-178264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/12
H02K 1/18
H02K 3/46
H02K 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に配置され、内側に向かって突出した複数のティースと、
前記複数のティースをそれぞれ覆い、角筒部を有し、当該角筒部の外側の両側面において溝を有した複数の絶縁体と、
前記複数の絶縁体にそれぞれ集中して巻き回された複数の巻線と、
熱硬化性の樹脂で形成され、前記複数の絶縁体のそれぞれと前記複数の巻線のそれぞれとの間で前記複数の絶縁体の溝にそれぞれ配置された複数の第1樹脂体と、
熱硬化性の樹脂で形成され、前記複数の絶縁体の各々の上部であって前記複数の巻線の上方に、それぞれ配置された複数の第2樹脂体と、
熱硬化性の樹脂で形成され、前記複数の第2樹脂体のいずれかの上部に配置された結線体の上方に配置された第3樹脂体と、
を備えた回転電機の固定子。
【請求項2】
前記溝は、長手方向が前記複数の巻線の長手方向と直交するように形成された請求項1に記載の回転電機の固定子。
【請求項3】
環状に配置され、内側に向かって突出した複数のティースと、
前記複数のティースをそれぞれ覆い、角筒部を有し、当該角筒部の外側の両側面において溝を有した複数の絶縁体と、
前記複数の絶縁体にそれぞれ集中して巻き回された複数の巻線と、
熱硬化性の樹脂で形成され、前記複数の絶縁体のそれぞれと前記複数の巻線のそれぞれとの間で硬化した複数の第1樹脂体と、
熱硬化性の樹脂で形成され、前記複数の絶縁体の各々の上部であって前記複数の巻線の上部でそれぞれ硬化した複数の第2樹脂体と、
熱硬化性の樹脂で形成され、前記複数の第2樹脂体のいずれかの上部に配置された結線体の外周において硬化した第3樹脂体と、
を備えた回転電機の固定子。
【請求項4】
前記溝は、長手方向が前記複数の巻線の長手方向と直交するように形成された請求項に記載の回転電機の固定子。
【請求項5】
前記複数の第1樹脂体のそれぞれは、前記複数の巻線のそれぞれとの間で前記複数の絶縁体のそれぞれの下部まで流れた後に前記複数の第1樹脂体を硬化した請求項または請求項に記載の回転電機の固定子。
【請求項6】
複数のティースのそれぞれを覆う複数の絶縁体の角筒部の外側の両側面の溝のそれぞれに複数の第1樹脂体のそれぞれを配置させる第1樹脂体配置工程と、
前記第1樹脂体配置工程の後、前記複数の絶縁体に複数の巻線を巻き回す巻線配置工程と、
前記巻線配置工程の後、前記複数の第1樹脂体を加熱して溶かした後に硬化させる第1樹脂体硬化工程と、
前記巻線配置工程の後、前記複数の絶縁体の各々の上部であって、前記複数の巻線の上方に、複数の第2樹脂体をそれぞれ配置させる第2樹脂体配置工程と、
前記第2樹脂体配置工程の後、前記複数の第2樹脂体を加熱して溶かした後に硬化させる第2樹脂体硬化工程と、
前記複数の第2樹脂体のいずれかの上部に配置された結線体の上方に第3樹脂体を配置させる第3樹脂体配置工程と、
前記第3樹脂体配置工程の後、前記第3樹脂体を加熱して溶かした後に硬化させる第3樹脂体硬化工程と、
を備えた回転電機の固定子の製造方法。
【請求項7】
前記第1樹脂体配置工程は、前記複数の第1樹脂体のそれぞれが前記複数の絶縁体の外周面の溝のそれぞれから外側に突出しないように配置させる工程を含む請求項に記載の回転電機の固定子の製造方法。
【請求項8】
前記第1樹脂体硬化工程は、前記複数の第1樹脂体を加熱して溶かして前記複数の絶縁体のそれぞれと前記複数の巻線のそれぞれとの間で前記複数の絶縁体のそれぞれの下部まで流れた後に前記複数の第1樹脂体を硬化させる工程を含む請求項または請求項に記載の回転電機の固定子の製造方法。
【請求項9】
前記第1樹脂体硬化工程と前記第2樹脂体硬化工程と前記第3樹脂体硬化工程とは、同時に行われる請求項に記載の回転電機の固定子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この本開示は、回転電機の固定子および回転電機の固定子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、回転電機の固定子を開示する。当該固定子は、ワニスを含浸させることで固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5714122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の固定子において、複数の巻線は、絶縁体に集中して巻き回される。このため、ワニスは、複数の巻線の内側に浸透しにくい。その結果、複数の巻線の固着力が不安定となり得る。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。この発明の目的は、絶縁体に対する複数の巻線の固着力を安定させることができる回転電機の固定子および回転電機の固定子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る回転電機の固定子は、環状に配置され、内側に向かって突出した複数のティースと、前記複数のティースをそれぞれ覆い、角筒部を有し、当該角筒部の外側の両側面において溝を有した複数の絶縁体と、前記複数の絶縁体にそれぞれ集中して巻き回された複数の巻線と、熱硬化性の樹脂で形成され、前記複数の絶縁体のそれぞれと前記複数の巻線のそれぞれとの間で前記複数の絶縁体の溝にそれぞれ配置された複数の第1樹脂体と、熱硬化性の樹脂で形成され、前記複数の絶縁体の各々の上部であって前記複数の巻線の上方に、それぞれ配置された複数の第2樹脂体と、熱硬化性の樹脂で形成され、前記複数の第2樹脂体のいずれかの上部に配置された結線体の上方に配置された第3樹脂体と、を備えた。
【0007】
本開示に係る回転電機の固定子は、環状に配置され、内側に向かって突出した複数のティースと、前記複数のティースをそれぞれ覆い、角筒部を有し、当該角筒部の外側の両側面において溝を有した複数の絶縁体と、前記複数の絶縁体にそれぞれ集中して巻き回された複数の巻線と、熱硬化性の樹脂で形成され、前記複数の絶縁体のそれぞれと前記複数の巻線のそれぞれとの間で硬化した複数の第1樹脂体と、熱硬化性の樹脂で形成され、前記複数の絶縁体の各々の上部であって前記複数の巻線の上部でそれぞれ硬化した複数の第2樹脂体と、熱硬化性の樹脂で形成され、前記複数の第2樹脂体のいずれかの上部に配置された結線体の外周において硬化した第3樹脂体と、を備えた。
【0008】
本開示に係る回転電機の固定子の製造方法は、複数のティースのそれぞれを複数の絶縁体でそれぞれ覆う複数の絶縁体の角筒部の外側の両側面の溝のそれぞれに複数の第1樹脂体のそれぞれを配置させる第1樹脂体配置工程と、前記第1樹脂体配置工程の後、前記複数の絶縁体に複数の巻線を巻き回す巻線配置工程と、前記巻線配置工程の後、前記複数の第1樹脂体を加熱して溶かした後に硬化させる第1樹脂体硬化工程と、前記巻線配置工程の後、前記複数の絶縁体の各々の上部であって、前記複数の巻線の上方に、複数の第2樹脂体をそれぞれ配置させる第2樹脂体配置工程と、前記第2樹脂体配置工程の後、前記複数の第2樹脂体を加熱して溶かした後に硬化させる第2樹脂体硬化工程と、前記複数の第2樹脂体のいずれかの上部に配置された結線体の上方に第3樹脂体を配置させる第3樹脂体配置工程と、前記第3樹脂体配置工程の後、前記第3樹脂体を加熱して溶かした後に硬化させる第3樹脂体硬化工程と、を備えた。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、第1樹脂体は、複数の絶縁体の各々に対し、当該絶縁体と複数の巻線との間に配置される。このため、絶縁体に対する複数の巻線の固着力を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1における回転電機の固定子の正面図である。
図2】実施の形態1における回転電機の固定子の要部の分解斜視図である。
図3】実施の形態1における回転電機の固定子の絶縁体の斜視図である。
図4】実施の形態1における回転電機の固定子の要部の縦断面図である。
図5】実施の形態1における回転電機の固定子の要部の斜視図である。
図6】実施の形態1における回転電機の固定子の要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0012】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における回転電機の固定子の正面図である。
【0013】
図1において、回転電機1は、電動機または発電機として用いられる。回転電機1は、回転子2と固定子3とを備える。
【0014】
回転子2は、回転電機1の軸を中心として回転自在に設けられる。固定子3は、環状に形成される。
【0015】
次に、図2を用いて、固定子3の要部を説明する。
図2は実施の形態1における回転電機の固定子の要部の分解斜視図である。
【0016】
図2に示されるように、固定子3は、複数のティース4と複数の絶縁体5と複数の巻線6と複数の結線体7を備える。
【0017】
図2において詳細は示されないが、複数のティース4は、環状に配置される。複数のティース4は、回転電機1の内側に向かって突出する。複数のティース4の各々は、複数のコア材4aを積層することで形成される。
【0018】
複数の絶縁体5は、熱可塑性の樹脂で形成される。複数の絶縁体5は、複数のティース4をそれぞれ覆う。
【0019】
図2において詳細は図示されないが、複数の巻線6は、複数の絶縁体5にそれぞれ集中して巻き回される。
【0020】
複数の結線体7は、複数の巻線6の端部のそれぞれと外部からの配線の端部のそれぞれとを接続する。
【0021】
次に、図3を用いて、絶縁体5を説明する。
図3は実施の形態1における回転電機の固定子の絶縁体の斜視図である。
【0022】
図3に示されるように、絶縁体5は、熱可塑性の樹脂で形成される。絶縁体5の要部は、角筒状に形成される。絶縁体5は、複数の溝5aを備える。複数の溝5aは、絶縁体5の両外側面において鉛直方向に並ぶ。図3において詳細は図示されないが、複数の溝5aの長手方向は、複数の巻線6の長手方向と直交する。
【0023】
次に、図4図5とを用いて、複数の巻線6と結線体7との固定方法を説明する。
図4は実施の形態1における回転電機の固定子の要部の縦断面図である。図5は実施の形態1における回転電機の固定子の要部の斜視図である。なお、図4図5とにおいて、上下方向は、回転電機1の軸に沿った方向とする。また、図5において、複数の巻線6と結線体7とは示されない。
【0024】
図4において、第1樹脂体配置工程において、作業員は、複数の絶縁体5の外側面の溝5aのそれぞれに複数の第1樹脂体8のそれぞれを配置させる。この際、作業員は、複数の第1樹脂体8のそれぞれが複数の絶縁体5の外周面の溝5aのそれぞれから外側に突出しないように配置させる。その後、巻線配置工程において、作業員は、複数の絶縁体5に複数の巻線6を巻き回す。
【0025】
その後、第2樹脂体配置工程において、作業員は、複数の絶縁体5の各々に対し、複数の巻線6の上方において複数の第2樹脂体9を配置させる。その後、結線体7配置工程において、作業員は、複数の第2樹脂体9のいずれかの上方に結線体7を配置させる。その後、第3樹脂体配置工程において、作業員は、結線体7の上方に第3樹脂体10を配置させる。
【0026】
その後、樹脂体硬化工程において、作業員は、複数の第1樹脂体8と複数の第2樹脂体9と第3樹脂体10とを同時に加熱して溶かした後に硬化させる。
【0027】
次に、図6を用いて、固定子3の加熱処理後の状態を説明する。
図6は実施の形態1における回転電機の固定子の要部の縦断面図である。なお、図6において、上下方向は、回転電機1の軸に沿った方向とする。
【0028】
図6に示されるように、数の第1樹脂体8のそれぞれは、複数の絶縁体5のそれぞれと複数の巻線6のそれぞれとの間で前記複数の絶縁体5のそれぞれの側部から下部まで流れた後に硬化する。複数の第2樹脂体9のそれぞれは、複数の絶縁体5の各々に対し、複数の巻線6の上部で硬化する。第3樹脂体10は、結線体7を囲むように硬化する。
【0029】
以上で説明した実施の形態1によれば、第1樹脂体8は、複数の絶縁体5の各々に対し、当該絶縁体5と複数の巻線6との間に配置される。このため、加熱処理後、第1樹脂体8は、前記複数の絶縁体5のそれぞれと前記複数の巻線6のそれぞれとの間で前記複数の絶縁体5のそれぞれの側部および下部で硬化する。その結果、ワニスを固定子3に含浸させることなく、絶縁体5に対する複数の巻線6の固着力を安定させることができる。
【0030】
また、複数の溝5aの長手方向は、複数の巻線6の長手方向と直交する。このため、加熱処理時において、第1樹脂体8は、絶縁体5の外側面を全体的に流れた後に絶縁体5の下部まで流れる。このため、絶縁体5に対する複数の巻線6の固着力をより安定させることができる。
【0031】
また、第2樹脂体9は、複数の絶縁体5の各々に対し、複数の巻線6の上部において硬化する。このため、ワニスを固定子3に含浸させることなく、絶縁体5の上部において複数の巻線6の固着力を安定させることができる。
【0032】
また、第3樹脂体10は、結線体7の外周において硬化する。このため、ワニスを固定子3に含浸させることなく、結線体7の固着力を安定させることができる。
【0033】
なお、第1樹脂体8と第2樹脂体9と第3樹脂体10とは、加熱により溶けた後に硬化する熱硬化性の樹脂であればよい。例えば、第1樹脂体8と第2樹脂体9と第3樹脂体10とは、シートに含まれたワニスでもよい。この場合、第1樹脂体8を溝5aに合わせた形状とすることで、第1樹脂体8を容易に溝5aに嵌め込むことができる。第2樹脂体9の面積を絶縁体5の上面の面積と同等にすることで、絶縁体5の上部において複数の巻線6の固着力をより安定させることができる。第3樹脂体10で結線体7を包み込むことで、結線体7の固着力をより安定させることができる。
【0034】
また、樹脂体硬化工程を第1樹脂体硬化工程と第2樹脂体硬化工程と第3樹脂体硬化工程とに分割してもよい。この場合、巻線配置工程の直後、第1樹脂体硬化工程において、第1樹脂体8を加熱して溶かした後に硬化させればよい。第2樹脂体配置工程の直後、第2樹脂体硬化工程において、第2樹脂体9を加熱して溶かした後に硬化させればよい。第3樹脂体配置工程の直後、第3樹脂体硬化工程において、第3樹脂体10を加熱して溶かした後に硬化させればよい。
【符号の説明】
【0035】
1 回転電機、 2 回転子、 3 固定子、 4 ティース、 4a コア材、 5 絶縁体、 5a 溝、 6 巻線、 7 結線体、 8 第1樹脂体、 9 第2樹脂体、 10 第3樹脂体
図1
図2
図3
図4
図5
図6