(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 33/00 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
B65D33/00 C
(21)【出願番号】P 2021026056
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢島 俊輔
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-238047(JP,A)
【文献】特開2018-012514(JP,A)
【文献】特開2019-147579(JP,A)
【文献】特許第6814869(JP,B1)
【文献】特開2018-144891(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0074333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状のフィルムを重ね合せ、少なくとも第1の端縁、前記第1の端縁に対向する第2の端縁、前記第1の端縁及び前記第2の端縁に隣接する第3の端縁をシールして収容部を形成した矩形の包装袋であって、
前記収容部上の、重ね合わされた前記フィルムの一方の強度を線状に弱化させた第1の弱化線、および、重ね合わされた前記フィルムの他方の強度を線状に弱化させた第2の弱化線と、
前記第1の端縁に形成されたノッチとを有し、
前記第1の弱化線は、
前記ノッチから、前記第1の端縁の延伸方向に直交する方向に延びる基準線と平行に延びる第1の直線部と、
前記第1の直線部の前記第1の端縁側の端部から、前記第1の端縁側に伸び、前記基準線と交差する第1の曲線部と、
前記第1の直線部の前記第2の端縁側の端部から、前記第2の端縁及び前記基準線に向かって延びる第1の斜線部とを含み、
前記第2の弱化線は、
前記基準線と平行に延びる第2の直線部と、
前記第2の直線部の前記第1の端縁側の端部から、前記第1の端縁側に伸び、前記基準線および前記第1の曲線
部と交差する第2の曲線部と、
前記第
2の直線部の前記第2の端縁側の端部から、前記第2の端縁及び前記基準線に向かって延びる第2の斜線部とを含み、
前記第1の斜線部および前記第2の斜線部は、前記基準線と交差せず、
前記第1の斜線部の延長線と前記第2の斜線部の延長線とは、前記基準線上で交差し、
前記第1の斜線部の前記第2の端縁側の端部と、前記第2の斜線部の前記第2の端縁側の端部との第1の距離が、1mm以上8mm以下であり、
前記第1の斜線部の延長線と前記第2の斜線部の延長線との交点と前記第2の端縁に形成されたシール部との第2の距離が、1mm以上10mm以下である、包装袋。
【請求項2】
前記第1の距離が2mm以上6mm以下であり、前記第2の距離が4mm以上7mm以下である、請求項1の包装袋。
【請求項3】
前記第1の弱化線は、前記第1の斜線部と平行であり、前記基準線と交わらない、前記第1の直線部から延びる第1の補助線を、前記第1の斜線部よりも前記第1の端縁側に備え、
前記第2の弱化線は、前記第2の斜線部と平行であり、前記基準線と交わらない、前記第2の直線部から延びる第2の補助線を、前記第1の斜線部よりも前記第1の端縁側に備え、
前記第1の補助線の延長線と前記第2の補助線の延長線とは、前記基準線上で交差する、請求項1または2の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1枚の矩形状の積層フィルムを2つ折りにして、合わせた端縁をシールして収容部を形成した三方シール袋や、1組の矩形状の積層フィルムを互いに重ね合せた後、端縁をシールして収容部を形成した四方シール袋等の包装袋が知られている。
【0003】
特許文献1は、前面部と背面部とを互いに対向させ、上端部、両側端部及び下端部をシールした包装袋を開示している。前面部及び背面部にはそれぞれ、ハーフカット線から成る前面切断部及び背面切断部が形成される。前面切断部と背面切断部とは、包装袋の平面視においてそれぞれの両端部分が重なり、中央部分は上下方向に異なる位置に形成される。これにより、表側のフィルムと裏側のフィルムとの間で切断位置に差ができるため、両フィルムを離間させやすくなり、開閉性を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前面切断部と背面切断部の両端部分が、製造時のバラつきにより重ならない場合がある。特に、破断の終点側の前面切断部と背面切断部とが、包装袋の平面視において上下にズレて交差してしまった場合は、破断部が捻じれて開封の引っ掛かりとなってしまい、開封しにくくなる問題があった。また、引用文献1の包装袋のように、前面切断部と背面切断部が包装袋のシール部分に及んでいると、輸送時や取扱時にアルミ層にクラックが発生する可能性があり、バリア性を損なう恐れがあった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、開封性とバリア性を両立可能な包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、矩形状のフィルムを重ね合せ、少なくとも第1の端縁、第1の端縁に対向する第2の端縁、第1の端縁及び第2の端縁に隣接する第3の端縁をシールして収容部を形成した矩形の包装袋であって、収容部上の、重ね合わされたフィルムの一方の強度を線状に弱化させた第1の弱化線、および、重ね合わされたフィルムの他方の強度を線状に弱化させた第2の弱化線と、第1の端縁に形成されたノッチとを有し、第1の弱化線は、ノッチから、第1の端縁の延伸方向に直交する方向に延びる基準線と平行に延びる第1の直線部と、第1の直線部の第1の端縁側の端部から、第1の端縁側に伸び、基準線と交差する第1の曲線部と、第1の直線部の第2の端縁側の端部から、第2の端縁及び基準線に向かって延びる第1の斜線部とを含み、第2の弱化線は、基準線と平行に延びる第2の直線部と、第2の直線部の第1の端縁側の端部から、第1の端縁側に伸び、基準線および前記第1の曲線部と交差する第2の曲線部と、第2の直線部の第2の端縁側の端部から、第2の端縁及び基準線に向かって延びる第2の斜線部とを含み、第1の斜線部および第2の斜線部は、基準線と交差せず、第1の斜線部の延長線と第2の斜線部の延長線とは、基準線上で交差し、第1の斜線部の第2の端縁側の端部と、第2の斜線部の第2の端縁側の端部との第1の距離が、1mm以上8mm以下であり、第1の斜線部の延長線と第2
の斜線部の延長線との交点と第2の端縁に形成されたシール部との第2の距離が、1mm以上10mm以下である、包装袋である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、開封性とバリア性を両立可能な包装袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る包装袋の平面図および側面図
【
図4】本発明の一実施形態に係る包装袋の使用方法を説明する平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る包装袋について、図を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る包装袋100の平面図及び側面図であり、
図2は、
図1において点線で囲んだA部の拡大図であり、
図3は、
図1において点線で囲んだB部の拡大図であり、
図4は、包装袋100の使用方法を説明する平面図である。
【0012】
包装袋100は、2枚の矩形状のフィルム10を重ね合せ、4つの端縁71~74を所定幅にわたってシールして形成したシール部20である端縁71~74により囲まれた収容部30を備える四方シール包装袋である。包装袋100は、収容部30上において、重ね合わされた2枚のフィルム10の強度を線状に弱化させた第1の弱化線41および第2の弱化線42と、端縁71に形成された、収容部30を開封する際にフィルム10を破断させるきっかけとなるノッチ51とを備える。ノッチ51をきっかけにしてフィルム10を少なくとも部分的に破断して包装袋100に開口を形成することで、収容部30に収容された内容物を取り出すことができる。
【0013】
なお、以下では、ノッチ51が形成された端縁を第1の端縁71、第1の端縁71に対向する端縁を第2の端縁72、第1の端縁71に隣接する端縁のうちノッチ51に近い側の端縁を第3の端縁73、第3の端縁73に対向する端縁を第4の端縁74と呼ぶ。また、便宜上、
図1に矢印で示すように、第1の端縁71の延伸方向に直交して第2の端縁72へ向かう方向を第1の方向と定義し、第1の方向に直交し、第3の端縁73から第4の端縁74へ向かう方向を第2の方向と定義する。
【0014】
(フィルム)
フィルム10は、矩形状に形成され、端縁をシールすることにより収容部30を有する包装袋100とするためのフィルム材である。フィルム10には、端縁71~74をヒートシール等によりシールするために、最内層にシーラント層を備える2層以上の多層フィルムを好適に用いることができる。フィルム10を構成する層の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アルミニウム(AL)、セロファン、ポリエチレン(PE)、透明蒸着PET、低吸着シーラント(ヒートシール性を有するPET(HS-PET)、環状ポリオレフィン、EVOHシーラント等)等を用いることができ、多層フィルムの場合は、これらを適宜組み合せて用いることができる。フィルム10の、第1の方向における幅は、人間の手により後述する段差を好適に形成するためには45mm以上であることが好ましい。
【0015】
フィルム10の層構成は、一例として、包装袋100を形成した際の最外層から最内層の順に、PET(12μm)/AL(7~20μm)/HS-PET(20~50μm)、PET(12μm)/AL(7~20μm)/PE(10~30μm)/PCO(10~30μm)、セロファン/AL(7~20μm)/HS-PET(20~50μm)、セロファン/AL(7~20μm)/PE(10~30μm)/PCO(10~30μm)、PET(12μm)/AL(7~20μm)/PE(20~50μm)、PET(12μm)/PE(10~30μm)/AL(7~20μm)/PE(10~40μm)、セロファン/PE(10~30μm)/AL(7μm)/PE(10~40μm)、などを採用することができる。以上の例の場合、第1の弱化線41および第2の弱化線42は、最外層に形成することができる。
【0016】
(ノッチ)
ノッチ51は、包装袋100の第1の端縁71に形成される切り込みである。包装袋100の使用者は、収容部30の開封に際して、ノッチ51をきっかけにしてフィルム10の破断を開始することができる。ノッチ51は、対向する第2の端縁72に向かって、第1の端縁71を所定長さにわたって直線状に切り込んで形成される。ノッチ51の形状は、フィルム10の破断のきっかけとなるものであれば直線状に限定されず、三角形、五角形等の切り欠き形状を採用することができる。
【0017】
(弱化線)
第1の弱化線41および第2の弱化線42は、重ね合わされた2枚のフィルム10のそれぞれに所定の位置関係で、強度を線状に弱化させて形成される。詳細は後述するが、ノッチ51をきっかけにして発生させた破断を、第1の弱化線41および第2の弱化線42上を進行させることによって、包装袋100を開封することができる。第1の弱化線41は、第1の曲線部41aと第1の直線部41bと第1の斜線部41cとを含む。また、第2の弱化線42は、第2の曲線部42aと第2の直線部42bと第2の斜線部42cとを含む。第1の弱化線41は、
図1の平面図の紙面手前側のフィルム10に形成されており、第2の弱化線42は、
図1の平面図の紙面奥側のフィルム10に形成されている。
【0018】
第1の曲線部41aは、第1の方向において、第1の端縁71から所定の距離a離れた位置にある一端41a’と、第1の方向において一端41a’から所定の距離b離れるとともに、第2の方向において一端41a’から所定の距離だけ離れた位置にある他端41a’’とをつなぎ、第1の端縁71側に突出する弧状の曲線である。また、第1の直線部41bは、第1の曲線部41aの他端41a’’から、第1の方向に所定の長さ延伸し、基準線80と平行に延びる直線である。基準線80は、ノッチ51から第1の端縁71の延伸方向に直交する方向(第3の端縁73および第4の端縁74と平行な方向)に延びる仮想的な直線である。また、第1の斜線部41cは、第1の直線部41bの第2の端縁72側の端部から、第2の端縁72及び基準線80に向かって延びる線である。
【0019】
第2の曲線部42aは、第1の方向において、第1の端縁71から所定の距離a離れた位置にある一端42a’と、第1の方向において一端42a’から所定の距離b離れるとともに、第2の方向とは反対の方向において一端42a’から所定の距離だけ離れた位置にある他端42a’’とをつなぎ、第1の端縁71側に突出する弧状の曲線である。また、第2の直線部42bは、第2の曲線部42aの他端42a’’から、第1の方向に所定の長さ延伸し、基準線80と平行に延びる直線である。また、第2の斜線部42cは、第2の直線部42bの第2の端縁72側の端部から、第2の端縁72及び基準線80に向かって延びる線である。
【0020】
第1の曲線部41aおよび第2の曲線部42aは、重ね合わされたフィルム10の平面視において、互いに交差するとともに、それぞれ基準線80と交差するように形成される。また、第1の直線部41bと第2の直線部42bとは、第2の方向において所定の距離c離れるように形成される。
【0021】
一例として、所定の距離aは1mmより大きく15mmより小さく、所定の距離bは1mmより大きく20mmより小さく、所定の距離cは1mmより大きく15mmより小さくなるようにすることができる。
【0022】
詳細は後述するが、第1の曲線部41aと第2の曲線部42aとは、第1の曲線部41aと第2の曲線部42aとの交点が、第1のノッチ51から第1の方向へ向かって延伸する基準線80上に位置することが好ましい。また、第1の曲線部41aおよび第2の曲線部42aはいずれも、曲率が連続的に変化し、他端41a’’、42a’’における接線の方向が第1の方向であることが好ましい。
【0023】
第1の斜線部41cおよび第2の斜線部42cは、重ね合わされたフィルム10の平面視において基準線80と交差しない。また、第1の斜線部41cの延長線41dと第2の斜線部42cの延長線42dとは、互いに交差するとともに、基準線80上で交差するように形成される。延長線41d、42dは、第1の斜線部41cおよび第2の斜線部42cを仮想的に延長した線である。延長線41dと延長線42dとの交点を交点xとする。第1の斜線部41cおよび第2の斜線部42cの形状は、
図3に示すように、直線であってもよいし、曲線であってもよい。緩やかな曲線であった場合は、フィルム10の原反を長尺巻きにするときに斜線部が骨になりにくい。
【0024】
第1の斜線部41cの第2の端縁72側の端部41c’と、第2の斜線部42cの第2の端縁72側の端部42c’との、第2の方向における第1の距離dは、1mm以上8mm以下であり、第1の距離dが2mm以上6mm以下であることがより好ましい。また、交点xと第2の端縁72に形成されたシール部20との、第1の方向における第2の距離eは、1mm以上10mm以下であり、第2の距離eが4mm以上7mm以下であることがより好ましい。
【0025】
第1の弱化線41および第2の弱化線42は、一例としてフィルム10に断続的な線状の切れ目(ハーフカット)を形成することにより得られる。破断を容易にするために、フィルム10が積層フィルムである場合には、切れ目がアルミニウム層を除くカット性を有しない延伸基材層に設けられていることが好ましい。第1の弱化線41および第2の弱化線42は、トムソン刃やレザー刃等の刃型、炭酸ガスレーザーなどの周知の方法で形成することができる。
【0026】
(弱化線の機能)
第1の弱化線41および第2の弱化線42を備えた包装袋100では、ノッチ51に力を加えることで、ノッチ51をきっかけにして破断を第1の端縁71に発生させることができる。破断は、フィルム10を基準線80に沿ってせん断する力を包装袋100に加えることで、第1の端縁71から第1の方向に向かって進む。そして、破断が第1の端縁71から所定の距離進むことで少なくとも第1の曲線部41aおよび第2の曲線部42aのいずれかに到達することができる。
【0027】
さらに包装袋100に力を加え続けることにより、破断は、
図4に黒色の矢印で示すように、第1の曲線部41aに沿って他端41a’’まで進み、その後、第1の直線部41bに沿って第1の直線部41bの第2の端縁72側の端部まで進む。その後、破断は、第1の斜線部41cに沿って第1の斜線部41cの端部41c’まで進む。同様に、第2の曲線部42aに到達した破断は、第2の曲線部42aに沿って他端42a’’まで進んだ後、第2の直線部42bに沿って第2の直線部42bの第2の端縁72側の端部まで進む。その後、破断は、第2の斜線部42cに沿って第2の斜線部42cの端部42c’まで進む。
【0028】
端部41c’および端部42c’まで進行した破断は、延長線41d、42dにおおよそ沿って進行し、基準線80上の交点xあるいは交点xの近傍で交差する。その後、破断は、第2の端縁72まで進む。
【0029】
この結果、
図4に示すように、第1の弱化線41および第2の弱化線42の切断面により囲まれた開口が、包装袋100に形成される。上述のように、第1の直線部41bと第2の直線部42bとは所定の距離c離れて形成されているため、平面視において、それぞれの切断面の間には第2の方向に所定の幅Wの段差(間隔)が形成される。この段差により、2枚のフィルム10を互いに引き離して形成された開口を大きく開くことができる、内容物を容易に取り出すことができる。
【0030】
とくに、所定の距離aが1mmより大きいため、第1の弱化線41および第2の弱化線42により、第1の端縁71の強度が低下することを防止できるとともに、ヒートシールを用いてシール部20を形成する際に、収容部30のシール部20側端部に発生する引張応力により弱化線が部分的に破断して微小なクラックが発生することを防止できる。また、所定の距離aが15mmより小さいため、第1のノッチ51をきっかけにして発生した破断を速やかに第1の曲線部41aおよび第2の曲線部42aに到達させることができる。
【0031】
また、所定の距離bが1mmより大きいため、第1の曲線部41aおよび第2の曲線部42aが第1の方向に対して急激に変化することで、破断が第1の弱化線41および第2の弱化線42からそれることを防止できる。さらに、所定の距離bが20mmより小さいため、第1の方向にわたって段差の幅Wが大きい領域を広く確保することができる。
【0032】
また、所定の距離cが1mmより大きいため、開封により形成される段差の幅Wを人間の手により2枚のフィルム10を互いに引き離すことが容易な大きさとすることができる。さらに、所定の距離cが15mmより小さいため、段差の幅Wが大きくなり過ぎて破断の進行に大きな力が必要となることを防止できる。
【0033】
また、第1の曲線部41aおよび第2の曲線部42aが、フィルム10の平面視において互いに交差するとともに、それぞれ基準線80と交差するように形成されているため、ノッチ51をきっかけとして発生した破断が、速やかに第1の曲線部41aおよび第2の曲線部42aの少なくともいずれかに到達することができる。
【0034】
また、第1の曲線部41aおよび第2の曲線部42aがいずれも、第1の端縁71側に突出する弧状の曲線であるため、破断は第1の曲線部41aおよび第2の曲線部42aのそれぞれから、第1の直線部41bおよび第2の直線部42bへスムーズに進むことができ、第1の弱化線41および第2の弱化線42からそれてしまうことを抑制できる。
【0035】
また、第1の曲線部41aと第2の曲線部42aとの交点が基準線80上に位置するように形成されることにより、破断が、第1の曲線部41aと第2の曲線部42aとに同時に到達できるため、スムーズに破断を進行させることができる。
【0036】
また、第1の曲線部41aおよび第2の曲線部42aはいずれも、曲率が連続的に変化し、それぞれの他端41a’’、42a’’における接線の方向が第1の方向であることが好ましい。これにより、第1の曲線部41aおよび第2の曲線部42aに沿って進んだ破断はそれぞれ、スムーズに第1の直線部41bおよび第2の直線部42bに進むことができる。
【0037】
また、第1の斜線部41cの端部41c’と、第2の斜線部42cの端部42c’との第1の距離dが1mm以上であるため、製造時のバラつきにより交点xが基準線80からズレてしまうことを抑制できる。例えば、製袋バラつきにより第1の弱化線41と第2の弱化線42とが、上下方向に相対的に最大で±1mm程度ズレる場合がある。第1の弱化線41および第2の弱化線42が互いに近づく方向にズレることにより、交点xが基準線80からズレたり、第1の端縁71に近づく方向にズレたりする。第1の距離dが1mm未満であった場合、1mm程度のズレが生じた際に、開封時に表裏のフィルム10の破断が捻じれて引っ掛かりが生じ、開封しにくくなる可能性がある。そのため、第1の距離dを1mm以上とすることで、包装袋100は製袋バラつきの影響を受けにくくなり、開封性が担保される。さらに、第1の距離dが8mm以下であるため、表裏のフィルム10の破断が交点xから大きくズレて交差してしまい、開封時に表裏のフィルム10の破断が捻じれて引っ掛かりが生じてしまうのを抑制できる。なお、第1の距離dが2mm以上6mm以下であることがより好ましい。
【0038】
また、交点xと第2の端縁72に形成されたシール部20との、第1の方向における第2の距離eが1mm以上であるため、第2の端縁72から弱化線までの距離を十分にとることができ、輸送時の衝撃等によってフィルム10にアルミクラックが発生してしまうことを抑制できる。さらに、10mm以下であるため、開封時に表裏のフィルム10の第1の斜線部41cの端部41c’および第2の斜線部42cの端部42c’以降の破断が捻じれることなく、最後まできれいにカットすることができる。なお、第2の距離eが4mm以上7mm以下であることがより好ましい。
【0039】
なお、第1の弱化線41および第2の弱化線42は、
図5に示すように、1以上の第1の補助線41eおよび第2の補助線42eを含んでもよい。第1の補助線41eは、基準線80と交わらず、第1の斜線部41cと平行であり、第1の斜線部41cよりも第1の端縁71側に設けられる。第2の補助線42eは、基準線80と交わらず、第2の斜線部42cと平行であり、第1の斜線部41cよりも第1の端縁71側に設けられる。また、第1の補助線41eの延長線と第2の補助線42eの延長線との交点x’は、基準線80上に位置する。交点x’が延長線41d、42dの交点xの第1の端縁71側近傍に1以上設けられることで、製造時のバラつきによって交点xが基準線80からズレた場合であっても、交点x’が基準線80上にあればスムーズに開封できる。すなわち、1以上の第1の補助線41eおよび第2の補助線42eを設けることで、包装袋100は、製造時のバラつきの影響を受けにくく、より確実に開封性が担保される。
【0040】
以上説明したように、包装袋100は、包装袋100の開封時において、表裏のフィルム10の破断が交差して捻じれてしまうことが抑制されるため開封性が良好であり、また、アルミクラックの発生が抑制されるためバリア性にも優れる。
【実施例】
【0041】
実施例及び比較例に係る包装袋として
図1に示した第1の実施形態に係る包装袋を製造し、開封性についての評価を行った。製造した包装袋の第1の方向における幅は190mmであり、第1の弱化線および第2の弱化線は出力30Wの炭酸ガスレーザーを用いて形成した。
【0042】
製造した包装袋を、30人のモニターに第1のノッチをきっかけとして引き切り開封してもらい、開封性について評価した。表1に、実施例1~16および比較例1~7に係る各包装袋の第1の距離d、第2の距離e、基準線80上の交点xの有無、および評価結果(開封性、不具合・懸念事項、総合評価)を示した。
【0043】
「開封性」の項目は、モニター30人のうち、開封性が良好であると判定した人が28人以上であった場合を「◎」、25人以上27人以下であった場合を「○」、24人以下であった場合を「×」で示した。
【0044】
「不具合・懸念事項」の項目は、実施例1~16および比較例1~7の包装袋を開封した際に発生した不具合や懸念事項を示した。
【0045】
「総合評価」の項目は、「開封性」の評価が「-」または「不具合・懸念事項」に不具合や懸念事項がある場合を、全体として好適でない包装袋と評価して「-」で示し、「開封性」の評価が「+」であり「不具合・懸念事項」に不具合や懸念事項が無い場合を、好適な包装袋と評価して「+」で示し、「開封性」の評価が「++」であり「不具合・懸念事項」に不具合や懸念事項が無い場合を、より好適な包装袋と評価して「++」で示した。
【0046】
【0047】
実施例1~16に係る包装袋は、第1の距離dが1mm以上8mm以下、かつ、第2の距離が1mm以上10mm以下であったため、開封性は良好であり、不具合や懸念事項も発生しなかった。特に、実施例3~7、11、12に係る包装袋は、第1の距離dが2mm以上6mm以下、かつ、第2の距離が4mm以上7mm以下であったため、開封性の評価は「++」であり、他の実施例よりも優れていた。
【0048】
比較例1に係る包装袋は、第1の距離dが9mmと大きかったため、表裏のフィルムの破断が交点xからズレて交差してしまい、第2の端縁のシール部で引っ掛かってしまう不具合が生じた。
【0049】
比較例2に係る包装袋は、第1の距離dは好適な範囲であったが、第2の距離eが0mmと小さかったため、アルミクラックの発生が懸念され、また、開封しにくいものがあった。
【0050】
比較例3に係る包装袋は、第1の距離dが0mmと小さかったため、生産時のバラつきにより表裏のフィルムの破断が捻じれて引っ掛かりが生じ、開封しにくいものがあった。また、第2の距離eも0mmと小さかったため、アルミクラックの発生が懸念された。
【0051】
比較例4に係る包装袋は、第1の距離dが0mmと小さかったため、生産時のバラつきにより表裏のフィルムの破断が捻じれて引っ掛かりが生じ、開封しにくいものがあった。
【0052】
比較例5に係る包装袋は、第1の距離dが-1mmであったため、表裏のフィルムの破断が捻じれて引っ掛かりが生じ、開封が困難であった。
【0053】
比較例6に係る包装袋は、第2の距離eが11mmと大きく、表裏のフィルムの破断が捻じれてしまい、最後まできれいに破断させることができず、開封が困難であった。
【0054】
比較例7に係る包装袋は、第1の距離dおよび第2の距離eは5mmといずれも好適な範囲であったが、交点が基準線上に存在しなかったため、生産時のバラつきの影響で開封が困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、薬物を経皮投与するテープ材や貼付剤のようなシート状の内容物の包装に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
100 包装袋
10 フィルム
20 シール部
30 収容部
41 第1の弱化線
41a 第1の曲線部
41b 第1の直線部
41c 第1の斜線部
41d 延長線
42 第2の弱化線
42a 第2の曲線部
42b 第2の直線部
42c 第2の斜線部
42d 延長線
51 ノッチ
71 第1の端縁
72 第2の端縁
73 第3の端縁
74 第4の端縁
80 基準線