(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】時計ケース及び電子時計
(51)【国際特許分類】
G04B 39/02 20060101AFI20241217BHJP
【FI】
G04B39/02 M
(21)【出願番号】P 2021029452
(22)【出願日】2021-02-26
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 千恵子
(72)【発明者】
【氏名】井口 元
(72)【発明者】
【氏名】小林 和真
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-107464(JP,A)
【文献】スイス国特許発明第00477041(CH,A)
【文献】特開平07-311284(JP,A)
【文献】特開2020-183952(JP,A)
【文献】実開平04-087498(JP,U)
【文献】実開昭52-060865(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 39/00-39/02
G04B 37/00-37/22
G04G 17/00-17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
側面のうち第1部分が前記筐体と対向する、
平面視で円形の風防ガラスと、
前記筐体と前記風防ガラスとの間に位置して前記筐体内を防水する防水部材と、
外装部材と、
を備え、
前記筐体は、前記第1部分と対向する部分に平面視において円形の範囲を規定する複数の突起部を有し、
前記突起部は、前記風防ガラスを前記円形の範囲に挿入することによって、前記筐体に対する前記風防ガラスの側面の位置範囲を規定し、
前記外装部材は、前記風防ガラスの側面における前記第1部分とは異なる第2部分と対向している
ことを特徴とする時計ケース。
【請求項2】
前記防水部材は接着剤であることを特徴とする請求項1記載の時計ケース。
【請求項3】
前記風防ガラスと前記突起部以外の前記筐体との間に前記接着剤が対応する隙間が形成されることを特徴とする請求項2記載の時計ケース。
【請求項4】
前記防水部材は、前記第1部分と前記筐体との間に位置することを特徴とする請求項1記載の時計ケース。
【請求項5】
前記風防ガラスの前記第2部分は、全体が前記外装部材と接していないことを特徴とする請求項
1記載の時計ケース。
【請求項6】
前記筐体は、前記第1部分と対向する部分に位置する突起部と、前記風防ガラスの内面の外縁に沿った第3部分を支持する支持部とを有することを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の時計ケース。
【請求項7】
前記防水部材は、前記第3部分と前記筐体との間に位置することを特徴とする請求項
6記載の時計ケース。
【請求項8】
前記第1部分の高さは、前記第3部分の幅以下であることを特徴とする請求項
6又は
7記載の時計ケース。
【請求項9】
前記支持部は、前記筐体の内縁に沿って環状に上向きの突起を有することを特徴とする請求項6記載の時計ケース。
【請求項10】
前記風防ガラスの前記第2部分は、前記第1部分に対して傾斜していることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の時計ケース。
【請求項11】
前記第2部分は、前記風防ガラスの面とり面であることを特徴とする請求項10記載の時計ケース。
【請求項12】
前記第1部分の高さは、前記第2部分の高さより小さいことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の時計ケース。
【請求項13】
前記風防ガラスの外面は、前記外装部材の上面と同一面内に位置することを特徴とする
請求項1~12のいずれか一項に記載の時計ケース。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の時計ケースと、
前記風防ガラスを介して視認可能に位置し、時刻に係る表示が可能な表示部と、
前記筐体の内部に位置し、前記表示部の動作を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする電子時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、時計ケース及び電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
電子時計、特に身体に装着する腕時計は、様々な環境で利用されることから、防水性が付与されているものもある。防水性の付与には、Oリング(パッキン)などが用いられるものと、接着剤により密閉構造を得るものとが知られている。
【0003】
一方で、電子時計では、ベゼルなどの外装部材を更に組み合わせてデザイン性や耐衝撃性を高めているものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、防水性を確保しながら外装部材を組み合わせる場合に、従来の技術では、電子時計のサイズ、特に厚みが大きくなり、コンパクトにしづらいという課題があった。
【0006】
この発明の目的は、防水性を確保しながらよりコンパクトに外装部材を組み合わせることのできる時計ケース及び電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
筐体と、
側面のうち第1部分が前記筐体と対向する、平面視で円形の風防ガラスと、
前記筐体と前記風防ガラスとの間に位置して前記筐体内を防水する防水部材と、
外装部材と、
を備え、
前記筐体は、前記第1部分と対向する部分に平面視において円形の範囲を規定する複数の突起部を有し、
前記突起部は、前記風防ガラスを前記円形の範囲に挿入することによって、前記筐体に対する前記風防ガラスの側面の位置範囲を規定し、
前記外装部材は、前記風防ガラスの側面における前記第1部分とは異なる第2部分と対向している
ことを特徴とする時計ケースである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、時計ケースの防水性を確保しながら、よりコンパクトに外装部材を組み合わせることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の電子時計の構造を説明する断面図である。
【
図3】筐体の中心軸を含む面での断面の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の電子時計1の構造を説明する断面図である。
電子時計1は、時計ケース100と、表示部200と、動作部300などを備える。
時計ケース100は、表示部200及び動作部300を内部に収容する。時計ケース100は、筐体10と、風防ガラス20と、外装部材30と、裏蓋40などを備える。
【0011】
筐体10は、両端が開放された筒状形状を有し、表示がなされる一端(上側とする)が風防ガラス20により封止され、当該一端とは反対の端(下側とする)が裏蓋40により封止される。筐体10の内側の空間の断面は、一様な形状でなくてもよい。特には限られないが、例えば、上側の開放端及び風防ガラス20は平面視円形であり、下側の開放端及び裏蓋40は、上方から見た平面視で方形の角を落とした形状などであってもよく、高さ方向について垂直な断面が途中で連続的に又は不連続に変化していてもよい。筐体10は、例えば、樹脂である。
【0012】
風防ガラス20は、ガラスなどの透明部材であり、後述のように、接着剤で筐体10に固定される。裏蓋40は、例えば、金属などの導電性部材又は樹脂などの絶縁部材であり、ねじ(ビス)などにより筐体10に固定される。
【0013】
外装部材30は、ベゼルなどであり、電子時計1の本体に対する衝撃を緩和したり、デザイン上の装飾部材として用いられたりする。外装部材30は、環状であるが、一様な構造でなくてもよい。下記において外装部材30の上面位置は、外装部材30において最も上側に位置する点の位置であってよい。外装部材30は、筐体10の側面などと接続している。接続は、例えば、ねじ(ビス)などによる固定であってもよいし、嵌合などによるものであってもよい。外装部材30は、樹脂部材であってもよいし、金属部材などであってもよい。
【0014】
表示部200は、時刻表示を少なくとも含む表示(時刻に係る表示が可能)を行う。表示部200は、特には限られないが、例えば、複数の指針210と標識220などを有していてもよい。標識220には、時刻を示すための目盛や時字が含まれ、周回動作する指針210が標識220に対して指し示す方向により時刻などが表される。表示部200による表示範囲の周囲は、筐体10の内縁に沿って位置する見切り板230により区切られている。これに加えて又は代えて、表示部200は、デジタル表示を行うための表示画面、例えば、液晶表示画面を有していてもよい。表示部200は、風防ガラス20を介して外面側(上側)から表示内容を視認可能に位置している。
【0015】
動作部300は、筐体10の内部に位置し、表示部200の動作を制御する制御部と、制御部の制御信号に応じて表示部200を動作させる駆動部と、動作部300の各部に電力を供給するための電力供給部などを有する。制御部は、CPU及びRAMなどを含む。時刻を計数する計時動作は、制御部により行われてもよいし、制御部とは別個に計時回路を有していてもよい。駆動部は、モーター及び当該モーターにより回転動作される歯車列などを含み、歯車列の回転に応じて指針が回転動作する。電力供給部は、制御部及び駆動部に予め定められている電圧で電力を供給する。また、動作部300には、電力供給部が供給する電力に係る電源として電池が含まれていてよい。電池は、例えば、二次電池であってもよい。あるいは、電池は、着脱交換可能なものであってもよい。
【0016】
図2は、筐体10の一部を見た斜視図である。
筐体10は、内壁面11に2段階に突出した支持部12、13と、支持部12よりも上側の第1部分21と対向する部分に突起部14とを有する。支持部12は、風防ガラス20を支持し、支持部13は、支持部12よりも下側に位置して見切り板230を支持する。
【0017】
ここでは、支持部12、13は、内壁面11の周方向に環状に突出している。支持部13には、突出の切れ目を有するが、これに限るものではない。突起部14は、例えば、内壁面11の上下方向に直線状に伸びている。突起部14は、例えば、少なくとも3か所に適宜な間隔で位置している。
【0018】
突起部14の先端の位置により規定される円形の範囲は、風防ガラス20を上方から見た平面視範囲と同一又はわずかに大きい。風防ガラス20が当該円形の範囲に挿入されることで、風防ガラス20の位置範囲が規定されて、位置ずれが低減される一方、風防ガラス20と突起部14以外の内壁面11との間に隙間が生じる。
【0019】
図3は、筐体10の中心軸を含む面であって、突起部14を含まない断面線に沿った断面(a)と、突起部14を含む断面線に沿った断面(b)とのそれぞれ一部を示す図である。
図3(a)に示すように、風防ガラス20は、内面(表示部200の側)の外縁に沿った第3部分23が支持部12上に位置して支持され、内壁面11の内側に収まっている。風防ガラス20の厚さは、支持部12の上側における内壁面11の高さよりも大きく、すなわち、風防ガラス20は、筐体10に対して上方に突出している。筐体10の内壁面11と対向する風防ガラス20の側面部分が第1部分21である。
【0020】
ここでは、第1部分21は、当該第1部分21と筐体10との間に位置する接着剤51(第1の接着剤)により内壁面11に接着され、第3部分23は、当該第3部分23と筐体10との間に位置する接着剤52(第2の接着剤)により支持部12(筐体10)に接着されている。接着剤51及び接着剤52が防水部材として機能し、これにより、筐体10の上側が密閉されて筐体10内を防水する(水の進入を防ぐ)ことで、防水性が得られる。なお、この
図3では、接着剤51の範囲と接着剤52の範囲とが分かれて示されているが、つながっていてもよい。
【0021】
第1部分21と内壁面11との間には、接着剤51の層ができる隙間を有する。接着している状態の接着剤51が大きな弾性を有する、すなわち弾性率があまり高くなく、適度に伸縮する部材であることで、電子時計1の落下などで大きな衝撃を受けた場合でも、接着剤51の筐体10からの剥離や風防ガラス20及び筐体10の破損を生じにくくすることができる。
【0022】
一方、支持部12は、内縁に沿って環状に上向きの突起部121を有する。この突起部121により、接着剤52が硬化前に支持部12の上面上から漏出するのが防がれる。接着剤52は、接着剤51と同一種類のものであってもよい。あるいは、接着剤52は、接着剤51よりも接着時の弾性率が大きい(硬い)ものであってもよい。これにより、接着された風防ガラス20の支持部12に対する相対的な動きが抑えられて、安定的に固定される。
【0023】
接着剤51及び接着剤52は、特には限られないが、熱硬化型の接着剤であってもよい。この場合に効果に必要な熱は、風防ガラス20及び筐体10などに影響がない範囲とされる。熱は、接着剤に対して直接照射される必要がないので、硬化処理を行いやすい。
【0024】
ここでは、第1部分21の高さは、第3部分23の幅とほぼ等しい。第3部分23の外縁と第1部分21の下端とは、いずれも風防ガラス20の側面下端であるので、すなわち、第1部分21の面積(接着面積)と第3部分23の面積(接着面積)とはほぼ等しくなる。これにより、安定して防水性と堅牢性が維持される。ここでいうほぼ等しいは、厳密なものではない。10~20%程度のずれがあってもよい。あるいは、第1部分21の高さは、第3部分23の幅よりも小さくてもよい。
【0025】
風防ガラス20は、上記のように筐体10に対して上方に突出している部分(第1部分21とは異なる部分)の側面(外縁)が面取りされて、上下方向(第1部分21)に対して傾斜した面、例えば、45度の傾斜面(C面取り)となっている。この傾斜面(面取り面)が第2部分22である。第2部分22は、外装部材30と対向している。
【0026】
風防ガラス20の外面(上面)と、外装部材30の上面とは、ほぼ同一面内にある。少なくとも、風防ガラス20の外面位置は、外装部材30の上面位置よりも上方に突出しない。ここでいうほぼ同一面内は、完全に同一面内に位置する場合に加えて、風防ガラス20の外面が外装部材30の上面位置よりも僅かに、例えば、SUSの厚さ(0.6~0.75mm程度)よりも小さい範囲で(0.1mmなど)下方に位置する場合を含む。風防ガラス20の外面が僅かに外装部材30の上面位置より低いことで、外装部材30の突出を低減しつつ、風防ガラス20が他の物体の表面と直接接触しづらくなっている。
【0027】
第1部分21は、最低限、筐体10に対する風防ガラス20の側面の位置が定まり、当該筐体10と確実に接着されるのに必要な高さがあればよく、第1部分21の高さは、第2部分22の高さよりも小さくてもよい。第1部分21が小さいほど第2部分22を高くすることができるので、外装部材30の上面を風防ガラス20の外面から突出させずとも、デザインのバリエーションを広げることが可能になる。第1部分21と筐体10との対向面の間の接着剤51により防水性を確保する場合には、第1部分21は、上記に加えて防水性を得るために必要な高さとされてよい。
【0028】
風防ガラス20の第2部分22と、外装部材30の風防ガラス20との対向面とが第1部分21に対して傾斜していることで、風防ガラス20と筐体10の間に位置する接着剤51は、外部から容易に視認されないようになっている。この第2部分22と外装部材30との対向部分は、接合されておらず、微小な隙間を有する(第2部分22の全体が外装部材30と接していない)が、互いに接していてもよい。また、第3部分23に接着される接着剤52が風防ガラス20を介して容易に視認されないように、風防ガラス20の第3部分23には、目隠しとして不透明の印刷がなされていてもよい。
【0029】
上述のように、筐体10は、内壁面11に突起部14を有する。
図3(b)に示すように、突起部14は、上下方向について高さ(内壁面11から内向きの大きさ)が一様であるが、これに限られるものではない。突起部14により規定される風防ガラス20の位置に対して、当該風防ガラス20の第1部分21と内壁面11との隙間は略一様となる。この隙間は、接着剤51が充填される空間となり、接着剤51がこの隙間からはみ出すのが抑制される。
【0030】
上記の時計ケース100を有する電子時計1は、以下の工程で製造される。まず、時計ケース100に対して見切り板230の位置を合わせて配置する。次に、時計ケース100と風防ガラス20の少なくとも一方に対し、これらの接着面に接着剤51、52を塗布して接合し、硬化させる。それから、外装部材30などの外装部品を組み立てた後、動作部300を時計ケース100の裏側から当該時計ケース100の内部に収容する。最後に、裏蓋40をねじなどで閉じて、電子時計1が得られる。
【0031】
以上のように、本実施形態の時計ケース100は、筐体10と、側面のうち第1部分21が筐体10と対向する風防ガラス20と、筐体10と風防ガラス20との間に位置して防水部材として筐体10内を防水する接着剤51と、外装部材30と、を備える。外装部材30は、風防ガラス20の側面における第1部分21とは異なる第2部分22と対向している。
このように、風防ガラス20の側面に筐体10だけではなく外装部材30も部分的に対向するように外装部材30の位置を調整することで、風防ガラス20の上(外側)に位置していた外装部材30による時計ケース100の高さを低減させ、よりコンパクトな構成とすることができる。
【0032】
また、接着剤51は、第1部分21と筐体10との間に位置する。これにより、水が風防ガラス20と筐体10の隙間の奥に入らないようにすることができる。
【0033】
また、風防ガラス20の第2部分22は、全体が外装部材30と接していない。すなわち、第2部分22と外装部材30との間に隙間があることで、落下やぶつけるといった衝撃のときに隙間分の緩衝が生じて風防ガラス20や筐体10を破損しにくくし、また、風防ガラス20からの接着剤51、52の剥離を抑制することができる。
【0034】
防水部材は接着剤51、52である。従来、防水性を得るために、例えば、樹脂の筐体10にガラス部材が接して位置する場所には、ガラス用の防水ガスケットなどの部材を配置してからガラス部材を加圧押し込み(はめ込み)していた。このはめ込みの作業を行うには、筐体10がインサート金具を有する必要があったが、接着剤51による防水構造とすることで、インサート金具を有する筐体10を用いる必要がなくなる。また、防水ガスケットで十分な防水性、例えば、10気圧以上の防水性を得るには、腕時計などのサイズと比較してその厚さが無視できなくなるので、接着剤51、52により、防水性の確保とサイズの増大の抑制とを両立させることができる。
【0035】
また、筐体10は、第1部分21と対向する部分に突起部14を有する。これにより、筐体10に対する風防ガラス20の位置決めが容易かつ正確に可能となるので、風防ガラス20を筐体10に落とし込むだけでガタつきのない外観仕上がりとすることができる。また、防水部材が接着剤51の場合には、突起部14以外の部分が接着剤51が占める隙間となるので、加圧接着時に接着剤51が接合面からはみ出して周囲に影響を及ぼしたり美観を損ねたりしにくくすることができる。
【0036】
また、突起部14は、筐体10に対する風防ガラス20の側面の位置範囲を規定する。これにより、上記隙間を設けながら風防ガラス20を適正な位置で筐体10に対して容易に固定することができ、電子時計1(時計ケース100)の組み立て製造に係る手間や製品間のばらつきを低減させることができる。
【0037】
また、筐体10は、第1部分21と対向する部分に位置する突起部14と、風防ガラス20の内面の外縁に沿った第3部分23を支持する支持部12とを有する。風防ガラス20を側面だけでなく内面側でも支持するので、より確実かつ容易に風防ガラス20の位置が定められる。また、外面側からの圧力に対してより安定して風防ガラス20を支持することができる。
【0038】
また、防水部材である接着剤52が第3部分23と筐体10との間に位置してもよい。この場合でも、時計ケース100の厚さを大きく増大させずに十分な防水性を得ることができる。この場合、第3部分23の幅は、接着剤の塗布作業が可能な幅が最小限あればよい。
【0039】
また、第1部分21の高さは、第3部分23の幅以下であってもよい。第3部分23に接着される接着剤52により防水性が得られる場合、第1部分21は、最小限、風防ガラス20の側面位置の規定に必要な高さがあればよい。また、第3部分23での防水がなされない場合でも、第1部分21は、防水性が得られる範囲で低くされてよい。したがって、第1部分21を第3部分23よりも小さくすることで、外装部材30のより多くの部分を風防ガラス20の側面に位置させることが可能になる。これにより、防水性を維持しつつ、時計ケース100の厚さを低減させることができる。
【0040】
また、風防ガラス20の第2部分22は、第1部分21に対して傾斜している。この結果、外装部材30の第2部分22との対向面も傾斜することになり、第2部分22と筐体10の隙間から第1部分21と筐体10の隙間が直視されないので、接着剤51により美観を損ねない。
【0041】
また、第2部分22は、風防ガラス20の面とり面である。これにより、外装部材30の上面が風防ガラス20の側部を覆って位置することになるので、時計ケース100をより薄型としつつ、風防ガラス20の耐衝撃性を増してこれを保護することができる。また、面取り面により縁取られた風防ガラス20の上面全体を容易に視認可能となるので、電子時計1のフェイス領域を広く確保してより表示を見やすくすることができる。一方で、外装部材30の上面も広く取ることができ、デザインパターンを多様化することができる。
【0042】
また、第1部分21の高さは、第2部分22の高さよりも小さくてもよい。第1部分21の高さを小さくすることで、外装部材30のデザインの幅を広げやすくなる。
【0043】
また、風防ガラス20の外面は、外装部材30の上面と同一面内に位置する。これにより、風防ガラス20の外面を保護可能な範囲で外装部材30の高さを抑制し、時計ケース100の厚さを低減させることができる。
【0044】
また、本実施形態の電子時計1は、上記の時計ケース100と、風防ガラス20を介して視認可能に位置し、時刻に係る表示が可能な表示部200と、筐体10の内部に位置し、表示部200の動作を制御する制御部と、を備える。
このような電子時計1では、防水性を確保しつつ電子時計1の厚みを低減させることができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、第1部分21、第2部分22と筐体10とがそれぞれ接着剤51、52により接着されているものとして説明したが、接着剤51、52のうちいずれかがなくてもよい。また、接着剤51の代わりに防水部材として防水ガスケットが第1部分21と筐体10との間などに位置していてもよい。
【0046】
また、上記実施の形態では、直線状で上下に伸びる突起部14を例に挙げて説明したが、これに限られない。突起部14は、直線状でなくてもよい。また、突起部14の幅は一様でなくてもよい。また、突起部14は、風防ガラス20の側面位置を規定するように3か所以上に位置するものとして説明したが、風防ガラス20の外周よりも広い範囲を規定してもよい。また、突起部14は、例えば、風防ガラス20と筐体10との間の隙間を得るためだけのものであって、3か所以上に位置していなくてもよい。あるいは、筐体10は、そもそも突起部14を有していなくてもよい。
【0047】
また、筐体10は、支持部12を有していなくてもよい。筐体10と風防ガラス20とが適切な位置関係で固定可能であればよい。また、支持部12を有する場合でも、支持部12が環状でなくてもよく、例えば、一部が途切れた形状などであってもよい。この場合、接着剤52があってもよいが、防水にはならないので、第1部分21と筐体10との間で防水性が確保される。
【0048】
また、第2部分22は、傾斜角度が45度の平面ではなくてもよい。他の傾斜角度であってもよいし、曲面であってもよい。あるいは、第2部分22は、途中に折れ曲がり箇所を有していてもよく、この場合には、風防ガラス20の側面が傾斜部分を有さなくてもよい。第2部分22の形状に応じて外装部材30の対向面も同じ形状となる。
【0049】
また、風防ガラス20の外面側が面取りされて第2部分22とされたが、これに限られない。第1部分21の方が第2部分22よりも風防ガラス20の径が小さく、第2部分22では側面が中心から外側に向けて広がるように傾斜していてもよい。この場合、風防ガラス20を介した容易な視認を防ぐ処理(上記不透明な印刷など)が、例えば第1部分21及び第2部分22などにもなされてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態では、風防ガラス20の外面が外装部材30の上面よりも上側に突出しないものとして説明したが、風防ガラス20の外面の方が外装部材30の上面よりも上側に位置していてもよい。また、外装部材30の上面が風防ガラス20の外面よりもはっきり突出していてもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、第1部分21の高さが第3部分23の幅以下であるものとして説明したが、第1部分21の高さが第3部分23の幅より大きくてもよい。第3部分23が非常に狭い場合などには、これに連動して第1部分21の高さも小さくされなくてもよい。また、上記のように防水性が得られる範囲で、第1部分21の高さと第3部分23の幅とは、独立して定められてもよい。
【0052】
また、上記実施の形態では、風防ガラス20の側面が第1部分21及び第2部分22の2つに分割されるものとして説明したが、これに限られない。どちらでもない領域が含まれていてもよく、このどちらでもない領域が第1部分21と第2部分22の間に位置していてもよい。
【0053】
また、上記実施の形態の電子時計1は、時計機能専用のものに限られない。種々の機能を有する多機能時計であってよく、また、時刻表示が一般的に行われる各種腕装着型の端末装置(スマートウォッチ)などであってもよい。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、位置関係、形状、構造及び材質などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0055】
[付記]
<請求項1>
筐体と、
側面のうち第1部分が前記筐体と対向する風防ガラスと、
前記筐体と前記風防ガラスとの間に位置して前記筐体内を防水する防水部材と、
外装部材と、
を備え、
前記外装部材は、前記風防ガラスの側面における前記第1部分とは異なる第2部分と対向している
ことを特徴とする時計ケース。
<請求項2>
前記防水部材は、前記第1部分と前記筐体との間に位置することを特徴とする請求項1記載の時計ケース。
<請求項3>
前記風防ガラスの前記第2部分は、全体が前記外装部材と接していないことを特徴とする請求項1又は2記載の時計ケース。
<請求項4>
前記防水部材は接着剤であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の時計ケース。
<請求項5>
前記筐体は、前記第1部分と対向する部分に突起部を有することを特徴とする請求項4記載の時計ケース。
<請求項6>
前記突起部は、前記筐体に対する前記風防ガラスの側面の位置範囲を規定することを特徴とする請求項5記載の時計ケース。
<請求項7>
前記筐体は、前記第1部分と対向する部分に位置する突起部と、前記風防ガラスの内面の外縁に沿った第3部分を支持する支持部とを有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の時計ケース。
<請求項8>
前記防水部材は、前記第3部分と前記筐体との間に位置することを特徴とする請求項7記載の時計ケース。
<請求項9>
前記第1部分の高さは、前記第3部分の幅以下であることを特徴とする請求項7又は8記載の時計ケース。
<請求項10>
前記風防ガラスの前記第2部分は、前記第1部分に対して傾斜していることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の時計ケース。
<請求項11>
前記第2部分は、前記風防ガラスの面とり面であることを特徴とする請求項10記載の時計ケース。
<請求項12>
前記第1部分の高さは、前記第2部分の高さより小さいことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の時計ケース。
<請求項13>
前記風防ガラスの外面は、前記外装部材の上面と同一面内に位置することを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の時計ケース。
<請求項14>
請求項1~13のいずれか一項に記載の時計ケースと、
前記風防ガラスを介して視認可能に位置し、時刻に係る表示が可能な表示部と、
前記筐体の内部に位置し、前記表示部の動作を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする電子時計。
【符号の説明】
【0056】
1 電子時計
10 筐体
11 内壁面
12、13 支持部
14 突起部
20 風防ガラス
21 第1部分
22 第2部分
23 第3部分
30 外装部材
40 裏蓋
51、52 接着剤
100 時計ケース
121 突起部
200 表示部
210 指針
220 標識
230 見切り板
300 動作部