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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】スマートキーシステムを有した車両
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/38 20090101AFI20241217BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20241217BHJP
   B60R 25/24 20130101ALI20241217BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20241217BHJP
   H04W 76/10 20180101ALI20241217BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20241217BHJP
   H04W 4/48 20180101ALI20241217BHJP
【FI】
H04W52/38
E05B49/00 K
B60R25/24
H04B1/04 E
H04W76/10
H04W84/10 110
H04W4/48
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021029866
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131110
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】須藤 淳一
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 敏雄
【審査官】田部井 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-226222(JP,A)
【文献】特開2019-217794(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064195(WO,A1)
【文献】特開2016-141167(JP,A)
【文献】特開2014-025279(JP,A)
【文献】特開2008-127913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0280788(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
DB名 3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
E05B 49/00
B60R 25/24
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載機と、前記車載機に無線通信可能な携帯機と、を備えたスマートキーシステムを有した車両であって、
前記車両は、前記車両の走行を制御する走行制御装置を備えており、
前記車載機は、前記携帯機を探索するための探索信号を所定の探索電波強度で発信する車載発信器を有した車載通信器と、前記車載通信器の通信を制御する通信制御装置と、を備えており、
前記車載機および前記携帯機のそれぞれには、前記走行制御装置のメイン電源を起動または停止させる操作スイッチを備えており、
前記通信制御装置は、前記操作スイッチで前記メイン電源が起動してから、前記メイン電源が停止するまでの間、前記車載発信器から発信される前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を実行するように、前記車載発信器を制御するものであり、
前記車載機は、前記車両のトランクおよびドアの開閉の状態を検知する検知装置を備えており、
前記通信制御装置は、前記操作スイッチで前記メイン電源が起動してから、前記メイン電源が停止するまでの間、前記検知装置が、前記トランクまたは前記ドアが開いた状態であると検知している間、前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を解除するように、前記車載発信器を制御し、
前記携帯機は、前記車載発信器からの前記探索信号を受信し、前記車載機に、前記携帯機の位置情報信号を送信する携帯通信器を有しており、
前記通信制御装置は、前記操作スイッチで前記メイン電源が起動してから、前記メイン電源が停止するまでの間、前記位置情報信号に基づいて、前記携帯機が車内および車外のいずれかにあるかを判定し、前記携帯機が車外にある場合には前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を解除するように、前記車載発信器を制御することを特徴とするスマートキーシステムを有した車両。
【請求項2】
前記車両の表面には、前記車両に帯電した静電気を除電する除電器が配置されていることを特徴とする請求項に記載のスマートキーシステムを有した車両。
【請求項3】
前記車両は、潤滑剤を介して摺動する摺動機構を有し、前記潤滑剤には、前記摺動機構に帯電した電気を除電する導電性粒子が添加されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスマートキーシステムを有した車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートキーシステムを有した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、たとえば、特許文献1には、車両に搭載される車載機と、車載機と無線通信可能な携帯機(スマートキー)と、を備えたスマートキーシステムが開示されている。スマートキーシステムの車載機は、携帯機を探索するための探索信号を発信する車載発信器を有しており、走行中には、探索信号の探索電波強度をゼロに制限している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-183988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に示す車両では、車載発信器が、走行中の探索信号の探索電波強度をゼロに制限することにより、車載発信器の電力消費を低減している。しかしながら、車両の走行制御装置のメイン電源を起動してから、少なくとも車両の走行が開始するまでの間で、通常の強い探索電波強度の探索信号が車載発信器から発信されていると、この探索信号の強い探索電波強度により、車両の静電気帯電の電位が上昇することが想定される。少なくとも車両の走行が開始するまでの間において、このような静電気の帯電により、車両の本来の走行性能が発揮できないことがあり得る。
【0005】
本発明の課題として、携帯機を探索する強い探索電波強度の探索信号により、車両の本来の走行性能が損なわれることを抑えるスマートキーシステムを有した車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を鑑みて、発明に係る車両は、車載機と、前記車載機に無線通信可能な携帯機と、を備えたスマートキーシステムを有した車両であって、前記車両は、前記車両の走行を制御する走行制御装置を備えており、前記車載機は、前記携帯機を探索するための探索信号を所定の探索電波強度で発信する車載発信器を有した車載通信器と、前記車載通信器の通信を制御する通信制御装置と、を備えており、前記車載機または前記携帯機の少なくとも一方は、前記走行制御装置のメイン電源を起動または停止させる操作スイッチを備えており、前記通信制御装置は、前記操作スイッチで前記メイン電源が起動してから、少なくとも前記車両の走行が開始するまでの間、前記車載発信器から発信される前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を実行するように、前記車載発信器を制御することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、車載発信器が、携帯機を探索するための探索信号を所定の探索電波強度で発信すると、この探索信号を受けて、携帯機は、携帯機の位置の特定が可能となる位置情報信号を、車載機に送信する。この結果、車載機は、車両に対する携帯機の位置を特定することができる。
【0008】
ここで、車載機または携帯機の少なくとも一方は、操作スイッチを備えており、操作スイッチの操作により、走行制御装置を起動または停止することができる。本発明によれば、操作スイッチの操作により、走行制御装置のメイン電源を起動してから、少なくとも車両の走行が開始するまでの間、車載発信器から発信される探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を実行する。これにより、車載発信器からの強い探索電波強度の探索信号に起因した車両の静電気帯電の電位が上昇することを抑えることができる。
【0009】
ここで、車載発信器から発信される探索信号の探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限により、車両の帯電が抑制されるのであれば、その制限の終了のタイミングは、特に限定されるものではない。より好ましい態様としては、前記通信制御装置は、前記メイン電源が起動してから、前記メイン電源が停止するまでの間、前記車載発信器から発信される前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を実行するように、前記車載発信器を制御する。
【0010】
この態様では、走行制御装置のメイン電源が起動してから少なくとも前記車両の走行が開始するまでの間、前記車両の走行中、および、前記車両の走行が停止した後、走行制御装置のメイン電源が停止するまでの間、車載発信器から発信される探索信号の前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を実行するので、車両の発進前から、走行、および停車後の状態においても、探索信号の前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限が実行される。したがて、車両の発進前(停車後からの再発進も含む)および走行中において、本実施形態では、前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限により、車両が帯電することを抑えることができる。
【0011】
さらに、別の好ましい態様としては、前記車両の表面には、前記車両に帯電した静電気を除電する除電器が配置されている。この態様として、たとえば、日本国特許第6168157に記載される空気イオン化自己放電式徐電器により、車両に帯電した静電気を大気中に放電することができる。
【0012】
さらに、より好ましい態様としては、前記車両は、潤滑剤を介して摺動する摺動機構を有し、前記潤滑剤には、前記摺動機構に帯電した電気を除電する導電性粒子が添加されていてもよい。これにより、潤滑剤の導電性粒子を介して、摺動機構の帯電した静電気をさらに除電することができる。
【0013】
ここで、より好ましい態様としては、前記車載機は、前記車両のトランクまたはドアの開閉の状態を検知する検知装置を備えており、前記通信制御装置は、前記検知装置が、前記トランクまたは前記ドアが開いた状態であると検知している間、前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を解除するように、前記車載発信器を制御する。
【0014】
ここで、たとえば、走行制御装置の起動後、車両が停車した状態で、車両の搭乗者が、携帯機を所持して、ドアまたはトランクを開けると、携帯機の位置を探索できないことが想定される。そこで、この態様では、ドアまたはトランクが開いた状態で、探索信号の前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限は解除され、探索信号の電波強度は復帰する。これにより、車外に携帯機が持ち出された場合であっても、車載機で携帯機を探索することができる。
【0015】
さらに好ましい別の態様としては、前記携帯機は、前記車載発信器からの前記探索信号を受信し、前記車載機に、前記携帯機の位置情報信号を送信する携帯通信器を有しており、前記通信制御装置は、前記位置情報信号に基づいて、前記携帯機が車内および車外のいずれかにあるかを判定し、前記携帯機が車外にある場合には前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を解除するように、前記車載発信器を制御する。
【0016】
ここで、たとえば、走行制御装置のメイン電源が起動中に、車内から携帯機が持ち出された場合、さらに、車外から携帯機の操作スイッチにより、走行制御装置のメイン電源の起動をリモートで行った場合、前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を実行すると、車外に存在する携帯機の位置を探索できないことが想定される。そこで、この態様では、携帯機が車外にある場合には、探索信号の前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を解除するので、車載機は、携帯機の携帯通信器に、探索信号を受信させ、携帯通信器から位置情報信号を受信することができる。これにより、車載機は、車外に存在する携帯機の位置を把握することができる。
【0017】
さらに好ましい態様としては、前記携帯機は、前記操作スイッチを有しており、前記携帯通信器は、前記携帯機の前記操作スイッチの操作により、前記メイン電源の起動および停止の要求信号を送信するものであり、前記携帯通信器は、前記車載発信器の前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限に応じて、前記携帯通信器から送信される前記位置情報信号の電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を実行する。
【0018】
この態様によれば、携帯通信器は、車載発信器からの探索信号の強い前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限に応じて、携帯通信器から送信される強い電波強度の位置情報信号(位置情報探索信号)の前記電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を実行するので、位置情報信号により、車両に帯電する静電気の電位の上昇を抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、少なくとも前記車両の走行が開始するまでの間、携帯機を探索する強い探索電波強度の探索信号により、車両の静電気帯電の電位が上昇し、車両の本来の走行性能が損なわれることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係るスマートキーシステムを有した車両の模式的概念図である。
図2図1に示す通信制御装置の制御ブロック図である。
図3図2に示す通信制御装置が行う制御フロー図である。
図4】第2実施形態に係る通信制御装置のブロック図である。
図5図4に示す通信制御装置が行う制御フロー図である。
図6】第3実施形態に係る通信制御装置のブロック図である。
図7図5に示す通信制御装置が行う制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しながら、本発明のいくつかの実施形態に係るスマートキーシステムを有した車両を説明する。
【0022】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両100の模式的概念図である。図1に示すように、本実施形態に係る車両100は、スマートキーシステム1を有している。車両100は、ガソリン車両、ハイブリット車両、電気自動車両、および燃料電池搭載車両のいずれの車両であってもよく、スマートキーシステム1を利用できるものであれば、特に限定されるものではない。
【0023】
車両100は、車両100の走行を制御する走行制御装置40と、走行制御装置40に電源を投入するメイン電源41と、をさらに備えている。走行制御装置40は、後述するように、エンジンまたは駆動モータなどの車両100の動力源(図示せず)に電力の供給を行うとともに、動力源である機器等を制御する。
【0024】
本実施形態では、スマートキーシステム1は、車両100に搭載される車載機20と、車載機20と無線通信可能な携帯機30と、備えている。スマートキーシステム1は、車外の携帯機30からの操作スイッチ等の操作により、車載機20のドア102のロックまたはロック解除、後述する走行制御装置40のメイン電源41の起動(始動)および停止を、車載機20を介して行うシステムである。車載機20は、携帯機30および車両100の外部の機器等に通信する車載通信器22と、車載通信器22の通信を制御する通信制御装置21と、を備えている。
【0025】
走行制御装置40は、後述する操作スイッチ23、33の少なくとも一方により、メイン電源41から電力が投入されて、起動する。なお、走行制御装置40のメイン電源41の起動および停止の詳細な動作に関しては、後述する。
【0026】
走行制御装置40のメイン電源41が起動すると、ドライバによるシフトレバー(図示せず)の操作、アクセルペダル(図示せず)の操作、ハンドル(図示せず)の操作、およびブレーキ(図示せず)の操作等に応じて、走行制御装置40は、車両100の走行を制御する。なお、車両100の走行制御等に関しては、上述した各種の車両において、一般的に知られた制御であるため、その詳細な説明を省略する。
【0027】
車載通信器22は、携帯機30を探索するための探索信号を所定の探索電波強度で発信する車載発信器22Aと、携帯機30から発信される位置情報信号を受信する車載受信器22Bとを備えている。
【0028】
本実施形態では、車載発信器22Aの探索信号の発信は、走行制御装置40のメイン電源41の起動または停止に連動せず、通信制御装置21により行われる。なお、本実施形態では、車載発信器22Aは、車両100は、探索信号の探索電波強度に対して、ノイズとなる電波を検出する検出装置を備えてもよい。この場合、通信制御装置21は、検出したノイズとなる電波の強度の大きさに応じて、探索信号の探索電波強度が大きくなるように、車載発信器22Aを制御してもよい。ただし、通信制御装置21は、ノイズとなる電波を検出する検出装置が検出したとしても、後述する探索信号の探索電波強度を制限する条件が成立した場合には、探索電波強度が大きくなる車載発信器22Aの制御を行わず、探索信号の探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を優先する。
【0029】
携帯機30は、いわゆるスマートキーであり、運転者等が携帯可能な機器である。携帯機30は、車載発信器22Aからの探索信号を受信し、車載機20に、携帯機30の位置情報信号を送信する携帯通信器32を有している。具体的には、携帯通信器32は、携帯送信器32Aと携帯受信器32Bとを備えている。
【0030】
携帯送信器32Aは、携帯機30の位置情報信号、および、後述する車両100の走行制御装置40のメイン電源41を起動または停止させる要求信号等を、送信する。この他にも、携帯機30が、たとえば、車両100のドア102のロックまたはロックの解除等、車両100に動作を要求する要求スイッチ(操作スイッチ)を有する場合には、携帯送信器32Aは、この要求スイッチに応じた要求信号を送信する。携帯受信器32Bは、車載発信器22Aからの探索信号等を受信する。
【0031】
ここで、携帯送信器32Aが送信する位置情報信号は、例えば、携帯機30を特定する特有の波長の電磁波であってもよく、この電磁波の強度および電磁波の方向を車載受信器22Bで検出することにより、携帯機30との相対位置を特定してもよい。また、携帯送信器32Aが送信する位置情報信号は、たとえば、携帯機30に搭載されたGPSシステム(図示せず)で得られた緯度および経度に関する信号であってもよい。携帯機30は、たとえば、タブレット、スマートフォン等のモバイル端末等であってもよい。このように、携帯機30の位置情報を特定することができる信号を送信することができるのであれば、携帯送信器32Aが送信する位置情報信号は特に限定されるものではない。
【0032】
このようにして、車載発信器22Aが、携帯機30を探索するための探索信号を所定の探索電波強度で発信すると、この探索信号を受けて、携帯送信器32Aは、携帯機30の位置の特定が可能となる位置情報信号を、車載機20に送信する。車載機20は、車載受信器22Bで受信した位置情報の信号により、後述する通信制御装置21で、車両100に対する携帯機30の位置を特定することができる。
【0033】
本実施形態では、車載機20および携帯機30のそれぞれに、走行制御装置40のメイン電源41を起動または停止させる操作スイッチ23、33をそれぞれ有している。操作スイッチ23、33は、操作者により操作されるスイッチである。
【0034】
車載機20の操作スイッチ23は、起動または停止の操作により、走行制御装置40のメイン電源41の起動または停止の要求信号(起動停止信号)を、走行制御装置40のメイン電源投入リレー(図示せず)等に送信する。携帯機30の操作スイッチ33は、起動または停止の操作により、走行制御装置40のメイン電源41の起動または停止の要求信号(起動停止信号)を、携帯送信器32Aおよび車載受信器22Bを介して、走行制御装置40のメイン電源投入リレー(図示せず)等に送信する。
【0035】
このような結果、操作スイッチ23、33の起動または停止の要求信号により、走行制御装置40のメイン電源41は、起動および停止し、メイン電源41による走行制御装置40への電力の投入および遮断を行うことができる。これにより、走行制御装置40の起動および停止を行うことができる。なお、本実施形態では、車載機20の操作スイッチ23と、携帯機30の操作スイッチ33とを設けたが、走行制御装置40の起動および停止を行うことができるのであれば、車載機20および携帯機30のいずれか一方にのみ、操作スイッチを設けてもよい。
【0036】
ここで、車両100が、たとえば、ガソリン車両の場合、走行制御装置40のメイン電源41の起動により、動力源となるエンジン(図示せず)が始動する。車両100が、たとえば、電気自動車両、ハイブリット車両、または燃料電池搭載車両の場合、走行制御装置40のメイン電源41の起動により、走行用の駆動モータ(図示せず)が駆動可能な状態となる。たとえば、車両100が、燃料電池搭載車両の場合には、走行制御装置40のメイン電源41の起動により、燃料電池(図示せず)の発電を開始し、走行用の駆動モータ(図示せず)が駆動可能な状態となってもよい。
【0037】
なお、本実施形態では、車載機20は、車両100のトランク101またはドア102の開閉の状態を検知する検知装置25を備えている。検知装置25で検知されたトランク101およびドア102の開閉状態を検出した信号は、通信制御装置21に送信される。さらに、本実施形態では、図1に示すように、車両100の表面には、車両100に帯電した静電気を除電する除電器50が配置されている。これにより、車両100に帯電した静電気を大気中に放電することができる。また、車両100は、潤滑剤を介して摺動するデファレンシャルなどの摺動機構105を有し、潤滑剤には、摺動機構105に帯電した電気を除電する導電性粒子が添加されている。潤滑剤の導電性粒子を介して、摺動機構105の帯電した静電気をさらに除電することができる。
【0038】
走行制御装置40のメイン電源41は、操作スイッチ23、33により起動および停止をするが、本実施形態では、通信制御装置21の電源は、走行制御装置40のメイン電源41の起動および停止に拘わらず、ON状態が維持されている。なお、本実施形態では、走行制御装置40と通信制御装置21は、別体の装置としたが、走行制御装置40と通信制御装置21を一体にした1つの制御装置としてもよい。
【0039】
通信制御装置21は、車載通信器22の制御等を実行するための演算装置と、これらの制御のプログラムを記憶する記憶装置と、を備えている。通信制御装置21は、ソフトウエアとして、車載発信器22Aの探索信号の探索電波強度の制御プログラム等を有している。
【0040】
図2は、車載発信器22Aが発信する探索信号の探索電波強度を制御するための制御ブロック図である。なお、走行制御に関する制御ブロック図等は、特に限定されるものではないので、その詳細な説明を省略する。
【0041】
通信制御装置21は、操作スイッチ23、33で走行制御装置40のメイン電源41が起動してから、少なくとも車両100の走行が開始するまでの間、車載発信器22Aから発信される探索信号の探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を実行するように、車載発信器22Aを制御する。本実施形態では、通信制御装置21は、走行制御装置40のメイン電源41が起動してから走行制御装置40のメイン電源41が停止するまでの間、車載発信器22Aから発信される探索信号の探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を実行する。
【0042】
具体的には、図2に示すように、通信制御装置21は、起動停止判定部21Aと、強度制限部21Bと、制限解除部21Cと、を備えている。
【0043】
起動停止判定部21Aは、走行制御装置40の起動停止信号、もしくは車載受信器22Bを介した携帯機30の操作スイッチ33あるいは車載機20の操作スイッチ23の起動停止信号のいずれかに基づき、メイン電源41の起動および停止を判定するものである。たとえば、起動停止判定部21Aは、走行制御装置40が起動および停止してから、この起動信号および停止信号を受けて、走行制御装置40が起動および停止したと判定しする。この場合、走行制御装置40の実質的な起動および停止により、走行制御装置40のメイン電源41が起動および停止したと判定するので、走行制御装置40のメイン電源41の起動および停止の誤判定を回避することができる。特に、走行制御装置40のメイン電源41の停止を誤判定すると、探索信号の探索電波強度の制限が解除されるため、車両100に静電気が発生するおそれがある。したがって、起動停止判定部21Aは、走行制御装置40からの停止信号を受けて、走行制御装置40メイン電源41の停止を判定することが好ましい。
【0044】
強度制限部21Bは、起動停止判定部21Aにより、走行制御装置40のメイン電源41の起動の判定結果を受けて、車載発信器22Aに探索信号の探索電波強度を制限する制御信号を送信する。なお、強度制限部21Bが制限を行う前には、車載発信器22Aは、車内の携帯機30の探索が可能な探索信号の探索電波強度(予め設定された強い探索電波強度)で、探索信号を発信している。
【0045】
強度制限部21Bは、探索信号の探索電波強度を、例えば、ゼロにするように制限する、または、予め設定された探索電波強度よりも低い電波強度となるように探索電波強度を低下させるように制限する。ここでいう低い電波強度とは、探索信号により、車内の携帯機30を探索できない電波強度であってもよい。本実施形態では、強度制限部21Bは、車載発信器22Aに搭載された探索電波強度を調整する調整部(図示せず)を制御することにより、車載発信器から発信される探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を実行することができる。
【0046】
制限解除部21Cは、強度制限部21Bによる探索信号の探索電波強度の制限を解除するものであり、言い換えると、強度制限部21Bにより制限された探索電波強度を元の強度に復帰する。この解除のタイミングは、本実施形態では、走行制御装置40の停止信号、もしくは車載受信器22Bを介した携帯機30の操作スイッチ33あるいは車載機20の操作スイッチ23の停止信号のいずれかに基づくタイミングである。好ましくは、起動停止判定部21Aにより、走行制御装置40が停止した判定結果を受けて、制限解除部21Cは、強度制限部21Bに、探索信号の探索電波強度の制限を解除させる。
【0047】
以下に、図3を参照し、本実施形態に係るスマートキーシステム1の制御フローについて、以下に説明する。まず、ステップS31より前には、車両100は、駐車した状態にある。この状態では、車載機20の車載発信器22Aから、特定の探索電波強度で探索信号が発信され、走行制御装置40のメイン電源41は、停止している。
【0048】
次に、ステップS32では、起動停止判定部21Aにより、走行制御装置40の起動を判定する。ステップS32では、走行制御装置40のメイン電源41が要求信号により起動する(または既に起動した)と判定した場合(YES)には、ステップS33に進み、強度制限部21Bにより、車載発信器22Aから発信される探索信号の強い探索電波強度を制限する。一方、走行制御装置40のメイン電源41が起動していない場合(NO)には、ステップS31に戻り、車載発信器22Aは、予め設定された強い探索電波強度で、探索信号の発信を継続する。
【0049】
次に、ステップS34では、起動停止判定部21Aにより、走行制御装置40のメイン電源41の停止を判定する。ステップS34で、走行制御装置40のメイン電源41が要求信号により停止する(または既に停止した)と判定した場合(YES)には、ステップS35に進み、制限解除部21Cにより、強度制限部21Bに、探索信号の探索電波強度の制限を解除させる。一方、ステップS34により、走行制御装置40のメイン電源41を停止しないと判定した場合(NO)には、ステップS33に戻り、強度制限部21Bにより、車載発信器22Aから発信される探索信号の探索電波強度の制限を継続する。
【0050】
本実施形態によれば、走行制御装置40のメイン電源41が起動してから(具体的には起動の判定から)、少なくとも車両100の走行が開始するまでの間、通信制御装置21は、車載発信器22Aから位置情報の探索信号の強い探索電波強度を制限する。これにより、車載発信器22Aからの強い探索電波強度の探索信号により車両の静電気帯電の電位が上昇することを抑えることができる。
【0051】
特に本実施形態では、走行制御装置40のメイン電源41が起動してから(具体的には起動の判定から)、走行制御装置40のメイン電源41が停止するまで(具体的には停止の判定まで)の間、車載発信器22Aから発信される位置情報の探索信号の強い探索電波強度を制限する。したがって、ステップS33からステップS34までの間、車両100の発進前、走行、および停車後の状態においても、探索信号の探索電波強度は制限される。したがって、車両100の発進前(停車からの再発進も含む)および走行中において、本実施形態では、位置情報探索信号の強い電波による車両が帯電し、車両の本来の走行性能が損なわれることを抑えることができる。
【0052】
〔第2実施形態〕
以下に、第2実施形態に係る車両100を説明する。第1実施形態と相違する点は、車両100のトランク101およびドア102の開閉状態により、探索信号の探索電波強度の制限を変更した点である。したがって、以下に、第1実施形態と相違する点のみを、図4および図5を参照しながら、説明する。
【0053】
本実施形態では、図4に示すように、通信制御装置21には、検知装置25(図1参照)の検知信号が入力される。検知装置25は、車両100のトランク101およびドア102の開閉の状態を検知する。本実施形態では、通信制御装置21は、検知装置25が、トランク101またはドア102が開いている状態であると検知している間、探索信号の前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を解除する。
【0054】
具体的には、本実施形態では、通信制御装置21は、第1実施形態の構成に加え、開閉判定部21Dを備えている。開閉判定部21Dは、検知装置25により、トランク101またはドア102が開いているかを判定する。開閉判定部21Dは、一定の周期(数ミリ秒)で、トランク101またはドア102の開閉の状態を判定し、この判定結果を、制限解除部21Cに送信する。
【0055】
強度制限部21Bにより探索信号の前記探索電波強度を低下させるまたはゼロにするように制限されている状態で、開閉判定部21Dにより、トランク101またはドア102が開いていると判定した場合には、制限解除部21Cは、強度制限部21Bによる前記探索電波強度の制限を解除する。一方、開閉判定部21Dによりトランク101またはドア102が閉じていると判定した場合には、制限解除部21Cは、強度制限部21Bによる電波強度の制限を続行する。
【0056】
以下に、図5を参照し、本実施形態に係るスマートキーシステム1の制御フローについて、以下に説明する。ステップS31~ステップS33は、第1実施形態と同様である。次に、ステップS51において、開閉判定部21Dにより、トランク101またはドア102が開いていることを判定する。
【0057】
ここで、トランク101またはドア102が開いていないと判定した場合(NO)には、トランク101およびドア102が全て閉じているので、ステップS52に進み、第1実施形態と同様に前記探索電波強度の制限を続行する。一方、トランク101またはドア102のいずれか1つが開いていると判定した場合(YES)には、ステップS35に進み、制限解除部21Cによる前記探索電波強度の制限を解除する。なお、ステップS34およびステップS35では、第1実施形態と同様の制御を行う。
【0058】
本実施形態によれば、たとえば、走行制御装置40メイン電源41の起動後、車両100が停車している状態で、車両100の搭乗者が携帯機30を所持した状態でトランク101またはドア102を開けることがある。このような場合には、ステップS35において、制限解除部21Cにより、探索信号の前記探索電波強度の制限を解除することにより、探索信号の探索電波強度は、元の電波強度に復帰される。
【0059】
これにより、車外に携帯機30が持ち出された場合であっても、携帯機30を探索することができる。なお、車両100のトランク101またはドア102が、すべて閉じられている状態では、ステップS52において、強度制限部21Bよる前記探索電波強度の制限が続行されているため、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0060】
〔第3実施形態〕
以下に、第3実施形態に係る車両100を説明する。第2実施形態と相違する点は、携帯機30が車外または車内にあるかにより、探索信号の探索電波強度の制限を変更する点である。したがって、以下に、第2実施形態と相違する点のみを、図6および図7を参照しながら説明する。なお、第1実施形態に、この相違点となる構成を適用してもよい。
【0061】
第1実施形態と同様に、本実施形態でも、上述した如く、携帯機30の携帯通信器32は、車載発信器22Aからの探索信号を受信し、車載機20に、携帯機30の位置情報信号を送信する。
【0062】
本実施形態では、図6に示すように、通信制御装置21は、位置算出部21Fと、位置判定部21Gとを、さらに備えている。具体的には、位置算出部21Fは、車載受信器22Bで受信した位置情報信号に基づいて、携帯機30の位置を算出する。位置判定部21Gは、算出した位置に基づいて、携帯機30が車内および車外のいずれかにあるかを判定する。
【0063】
上述した如く、算出される携帯機30の位置は、携帯機30が車内または車外のいずれにあるかを判定できれば、その算出方法は特に限定されるものではない。たとえば、算出される携帯機30の位置は、車両100に対する相対的な方位および位置であってもよく、経度および緯度を含む絶対位置であってもよい。
【0064】
強度制限部21Bにより探索信号の前記探索電波強度が制限されている状態で、位置判定部21Gにより、携帯機30が車外にあると判定した場合には、制限解除部21Cは、前記探索電波強度の制限を解除する。位置判定部21Gにより、携帯機30が車内にあると判定した場合には、強度制限部21Bによる探索電波強度の制限を続行する。
【0065】
以下に、図7を参照し、本実施形態に係るスマートキーシステム1の制御フローについて、以下に説明する。ステップS31~ステップS33までは、第1実施形態と同様である。次に、ステップS71において、位置算出部21Fにより携帯機30の位置を算出し、位置判定部21Gにより、携帯機30が車外にあるかを判定する。
【0066】
位置判定部21Gにより、携帯機30が車外にないと判定した場合(NO)、携帯機30は車内にある。したがって、この場合には、探索信号の前記探索電波強度を制限する要件の1つが満たされるので、ステップS51に進む。一方、携帯機30が車外にあると判定した場合(YES)、携帯機30は、車外にあるため、制限解除部21Cは、ステップS35による前記探索電波強度の制限を解除する。その他のステップは、第2実施形態と同様のことを行う。
【0067】
本実施形態によれば、携帯機30が車外にある場合には、探索信号の探索電波強度の制限を解除するので、車載機20は、携帯機30の携帯受信器32Bに探索信号を受信し、携帯送信器32Aから位置情報信号を受信することができる。これにより、車外に存在する携帯機30の位置情報を取得することができる。
【0068】
例えば、第1~第3実施形態において、車載発信器22Aの探索信号の前記探索電波強度の制限に応じて、携帯通信器32の携帯送信器32Aから送信される、上述した位置情報信号の電波強度を低下させるまたはゼロにする制限を実行するしてもよい。
【0069】
この場合にも、位置情報信号の前記電波強度の制限により、車両に帯電する静電気を抑えることができる。なお、位置情報信号の電波強度の制限によって携帯通信器32に対する操作スイッチ33の操作に特に問題は生じない。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0071】
1:スマートキーシステム、20:車載機、21:通信制御装置、22:車載通信器、22A:車載発信器、23:操作スイッチ、30:携帯機、32:携帯通信器、33:操作スイッチ、50:除電器、100:車両、101:トランク、102:ドア、105:摺動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7