(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】回転電機、および駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/20 20060101AFI20241217BHJP
H02K 11/225 20160101ALI20241217BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K11/225
H02K9/19 Z
(21)【出願番号】P 2021036632
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】中田 恵介
(72)【発明者】
【氏名】石川 勇樹
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-107853(JP,A)
【文献】実開昭48-083304(JP,U)
【文献】特開2017-060401(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0033980(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/20
H02K 11/225
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転可能な中空のシャフトを有するロータと、
前記ロータと隙間を介して対向するステータと、
前記ロータおよび前記ステータを内部に収容するハウジングと、
前記ロータを回転可能に支持するベアリングと、
前記ハウジングに固定され、前記シャフトと前記ハウジングとに電気的に接触する除電装置と、
前記シャフトの内部に流体を供給するノズル部材と、
を備え、
前記シャフトは、軸方向一方側に開口する開口端部を有し、
前記ハウジングは、
前記開口端部の軸方向一方側に位置する底壁部と、
前記底壁部から軸方向他方側に突出し、前記開口端部を囲む周壁部と、
を有し、
前記ノズル部材は、
少なくとも一部が前記開口端部から前記シャフトの内部に挿入された供給筒部と、
前記供給筒部から径方向外側に突出するフランジ部と、
を有し、
前記除電装置は、前記周壁部の径方向内側に位置し、
前記フランジ部は、前記除電装置と前記底壁部との軸方向の間に位置する、回転電機。
【請求項2】
前記周壁部の内周面は、軸方向他方側を向く第1段差面を有する第1段差部を有し、
前記除電装置は、前記第1段差面に接触している、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記除電装置は、前記ベアリングと前記フランジ部との軸方向の間に位置する、請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記ロータの回転を検出可能なレゾルバをさらに備え、
前記レゾルバは、
前記シャフトに固定されたレゾルバロータと、
前記レゾルバロータの径方向外側に位置するレゾルバステータと、
を有し、
前記ベアリングは、前記レゾルバロータと前記除電装置との軸方向の間に位置する、請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記周壁部の内周面は、軸方向他方側を向く第2段差面を有する第2段差部を有し、
前記ベアリングは、前記第2段差面に接触している、請求項3または4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記フランジ部は、前記ベアリングに前記流体を供給する少なくとも1つの供給孔を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項7】
前記フランジ部と前記底壁部との軸方向の間には隙間が設けられ、
前記供給孔は、前記隙間に開口している、請求項6に記載の回転電機。
【請求項8】
前記フランジ部の軸方向一方側の面は、径方向外側に向かうに従って軸方向他方側に位置する傾斜面を有し、
前記供給孔は、前記傾斜面に開口している、請求項6または7に記載の回転電機。
【請求項9】
前記フランジ部は、前記周壁部の内部に嵌め合わされている、請求項1から8のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項10】
前記フランジ部は、
前記供給筒部から径方向外側に突出する環状部と、
前記環状部の径方向外縁部から軸方向に突出する筒状部と、
を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項11】
前記筒状部は、前記環状部の径方向外縁部から軸方向他方側に突出し、前記除電装置と軸方向に対向して配置され、
前記開口端部は、前記除電装置よりも軸方向一方側かつ前記筒状部の径方向内側に位置する、請求項10に記載の回転電機。
【請求項12】
前記供給筒部は、
大径部と、
前記大径部の軸方向他方側に繋がり、前記大径部よりも内径が小さい小径部と、
を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項13】
前記供給筒部は、径方向に広がり前記大径部の軸方向他方側の端部と前記小径部の軸方向一方側の端部とを繋ぐ接続部を有し、
前記接続部は、軸方向一方側を向き前記大径部の内周面と前記小径部の内周面とを繋ぐ接続面を有し、
前記接続面は、前記大径部の内周面から前記小径部の内周面に向かうに従って軸方向他方側に位置する、請求項12に記載の回転電機。
【請求項14】
前記供給筒部の外周面は、前記シャフトの内周面から径方向内側に離れて配置されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項15】
前記供給筒部の軸方向一方側の端部における内径は、軸方向一方側に向かうに従って大きくなっている、請求項1から14のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項16】
前記フランジ部の軸方向の寸法は、前記底壁部と前記除電装置との間の軸方向の距離よりも小さい、請求項1から15のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項17】
前記フランジ部は、前記底壁部と前記除電装置との両方に軸方向に接触している、請求項1から15のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項18】
前記周壁部の内部に前記流体を供給する第1流路部をさらに備える、請求項1から17のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項19】
前記ステータに前記流体を供給する第2流路部と、
前記第1流路部および前記第2流路部が繋がる第3流路部と、
をさらに備え、
前記第1流路部と前記第2流路部とは、前記第3流路部から分岐している、請求項18に記載の回転電機。
【請求項20】
車両に搭載される駆動装置であって、
請求項1から19のいずれか一項に記載の回転電機と、
前記回転電機に接続され、前記回転電機の回転を前記車両の車軸に伝達する伝達装置と、
を備える、駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機、および駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の軸から電荷を放散する電荷放散装置が知られている。例えば、特許文献1には、軸に接触する導電セグメントを有する電流分流リングが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電荷放散装置を備える回転電機には、例えば冷却などを目的として、中空とされた軸内に流体を供給するノズル部材が設けられる場合がある。このような回転電機においては、電荷放散装置とノズル部材とをそれぞれ固定するための固定部材が必要となり、回転電機の部品点数が増加する問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、部品点数を低減できる構造を有する回転電機および駆動装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回転電機の一つの態様は、中心軸を中心として回転可能な中空のシャフトを有するロータと、前記ロータと隙間を介して対向するステータと、前記ロータおよび前記ステータを内部に収容するハウジングと、前記ロータを回転可能に支持するベアリングと、前記ハウジングに固定され、前記シャフトと前記ハウジングとに電気的に接触する除電装置と、前記シャフトの内部に流体を供給するノズル部材と、を備える。前記シャフトは、軸方向一方側に開口する開口端部を有する。前記ハウジングは、前記開口端部の軸方向一方側に位置する底壁部と、前記底壁部から軸方向他方側に突出し、前記開口端部を囲む周壁部と、を有する。前記ノズル部材は、少なくとも一部が前記開口端部から前記シャフトの内部に挿入された供給筒部と、前記供給筒部から径方向外側に突出するフランジ部と、を有する。前記除電装置は、前記周壁部の径方向内側に位置する。前記フランジ部は、前記除電装置と前記底壁部との軸方向の間に位置する。
【0007】
本発明の駆動装置の一つの態様は、車両に搭載される駆動装置であって、上記の回転電機と、前記回転電機に接続され、前記回転電機の回転を前記車両の車軸に伝達する伝達装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、回転電機の部品点数および駆動装置の部品点数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の駆動装置を模式的に示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の回転電機の一部を示す断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の除電装置およびノズル部材を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態のノズル部材を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の回転電機の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、実施形態の駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。つまり、以下の実施形態において説明する鉛直方向に関する相対位置関係は、駆動装置が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合に少なくとも満たしていればよい。
【0011】
図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向である。Z軸の矢印が向く側(+Z側)は、鉛直方向上側であり、Z軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)は、鉛直方向下側である。以下の説明では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって駆動装置が搭載される車両の前後方向である。以下の実施形態において、X軸の矢印が向く側(+X側)は、車両における前側であり、X軸の矢印が向く側と逆側(-X側)は、車両における後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。以下の実施形態において、Y軸の矢印が向く側(+Y側)は、車両における左側であり、Y軸の矢印が向く側と逆側(-Y側)は、車両における右側である。前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。
【0012】
なお、前後方向の位置関係は、以下の実施形態の位置関係に限られず、X軸の矢印が向く側(+X側)が車両の後側であり、X軸の矢印が向く側と逆側(-X側)が車両の前側であってもよい。この場合には、Y軸の矢印が向く側(+Y側)は、車両の右側であり、Y軸の矢印が向く側と逆側(-Y側)は、車両の左側である。また、本明細書において、「平行な方向」は略平行な方向も含み、「直交する方向」は略直交する方向も含む。
【0013】
適宜図に示す中心軸Jは、鉛直方向と交差する方向に延びる仮想軸である。より詳細には、中心軸Jは、鉛直方向と直交するY軸方向、つまり車両の左右方向に延びている。以下の説明においては、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、つまり中心軸Jの軸回りを単に「周方向」と呼ぶ。以下の実施形態においては、右側(-Y側)を「軸方向一方側」と呼び、左側(+Y側)を「軸方向他方側」と呼ぶ。
【0014】
<第1実施形態>
図1に示す本実施形態の駆動装置100は、車両に搭載され、車軸64を回転させる駆動装置である。駆動装置100が搭載される車両は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)などのモータを動力源とする車両である。
図1に示すように、駆動装置100は、回転電機10と、伝達装置60と、を備える。伝達装置60は、回転電機10に接続され、回転電機10の回転、つまり後述するロータ30の回転を車両の車軸64に伝達する。本実施形態の伝達装置60は、ギヤハウジング61と、回転電機10に接続される減速装置62と、減速装置62に接続される差動装置63と、を有する。
【0015】
ギヤハウジング61は、減速装置62と差動装置63とオイルOとを内部に収容している。オイルOは、ギヤハウジング61内の下部領域に貯留されている。オイルOは、後述する冷媒流路90内を循環する。オイルOは、回転電機10を冷却する冷媒として使用される。また、オイルOは、減速装置62および差動装置63に対して潤滑油として使用される。オイルOとしては、例えば、冷媒および潤滑油の機能を奏するために、比較的粘度の低いオートマチックトランスミッション用潤滑油(ATF:Automatic Transmission Fluid)と同等のオイルを用いることが好ましい。
【0016】
差動装置63は、リングギヤ63aを有する。リングギヤ63aには、回転電機10から出力されるトルクが減速装置62を介して伝えられる。リングギヤ63aの下側の端部は、ギヤハウジング61内に貯留されたオイルOに浸漬している。リングギヤ63aが回転することで、オイルOがかき上げられる。かき上げられたオイルOは、例えば、減速装置62および差動装置63に潤滑油として供給される。
【0017】
回転電機10は、駆動装置100を駆動する部分である。回転電機10は、例えば、伝達装置60の軸方向一方側(-Y側)に位置する。本実施形態において回転電機10は、モータである。回転電機10は、モータハウジング20と、シャフト31を有するロータ30と、ロータ30を回転可能に支持するベアリング34,35と、ステータ40と、レゾルバ50と、ノズル部材70と、除電装置80と、を備える。ベアリング34,35は、例えば、ボールベアリングである。
【0018】
モータハウジング20は、ロータ30およびステータ40を内部に収容するハウジングである。モータハウジング20は、ギヤハウジング61の軸方向一方側(-Y側)に繋がっている。モータハウジング20は、本体部21と、隔壁部22と、蓋部23と、を有する。本体部21と隔壁部22とは、例えば、同一の単一部材の一部である。蓋部23は、例えば、本体部21および隔壁部22とは別体である。
【0019】
本体部21は、中心軸Jを囲み、軸方向一方側(-Y側)に開口する筒状である。隔壁部22は、本体部21の軸方向他方側(+Y側)の端部に繋がっている。隔壁部22は、モータハウジング20の内部とギヤハウジング61の内部とを軸方向に隔てている。隔壁部22は、モータハウジング20の内部とギヤハウジング61の内部とを繋ぐ隔壁開口22aを有する。隔壁部22には、ベアリング34が保持されている。蓋部23は、本体部21の軸方向一方側の端部に固定されている。蓋部23は、本体部21の軸方向一方側の開口を塞いでいる。蓋部23には、ベアリング35が保持されている。
【0020】
図2に示すように、蓋部23は、蓋部23の軸方向他方側(+Y側)の面から軸方向一方側(-Y側)に窪む穴部23fを有する。穴部23fは、軸方向一方側に底部を有し、軸方向他方側に開口する穴である。本実施形態において穴部23fは、中心軸Jを中心とする円形状の穴である。穴部23fが設けられることで、蓋部23には、底壁部23aと、周壁部23bと、が設けられている。つまり、モータハウジング20は、底壁部23aと、周壁部23bと、を有する。
【0021】
底壁部23aは、穴部23fの底部である。底壁部23aは、シャフト31の開口端部31dの軸方向一方側(-Y側)に位置する。周壁部23bは、底壁部23aの径方向外周縁部から軸方向他方側(+Y側)に突出している。周壁部23bは、シャフト31の開口端部31dを囲んでいる。周壁部23bの内周面は、穴部23fの内周面である。本実施形態において周壁部23bの内周面は、中心軸Jを中心とする円筒状である。
【0022】
周壁部23bは、第1壁部23cと、第2壁部23dと、第3壁部23eと、を有する。第1壁部23cは、底壁部23aの径方向外周縁部に繋がる部分である。第2壁部23dは、第1壁部23cの軸方向他方側(+Y側)に繋がっている。第2壁部23dの内径は、第1壁部23cの内径よりも大きい。第2壁部23dの軸方向の寸法は、第1壁部23cの軸方向の寸法よりも大きい。第3壁部23eは、第2壁部23dの軸方向他方側に繋がっている。第3壁部23eの内径は、第2壁部23dの内径よりも大きい。第3壁部23eの軸方向の寸法は、第2壁部23dの軸方向の寸法よりも大きい。第3壁部23eの径方向内側には、ベアリング35が保持されている。ベアリング35の外輪は、第3壁部23eの径方向内側に嵌め合わされている。
【0023】
本実施形態において周壁部23bの内周面は、第1段差部24aと、第2段差部24bと、を有する。第1段差部24aは、第1壁部23cの内周面と第2壁部23dの内周面との軸方向の間に設けられた段差である。第1段差部24aは、軸方向他方側(+Y側)を向く第1段差面24cを有する。第1段差面24cは、中心軸Jを中心とする円環状である。第1段差面24cは、軸方向と直交する平坦面である。第2段差部24bは、第2壁部23dの内周面と第3壁部23eの内周面との軸方向の間に設けられた段差である。第2段差部24bは、軸方向他方側を向く第2段差面24dを有する。第2段差面24dは、中心軸Jを中心とする円環状である。第2段差面24dは、軸方向と直交する平坦面である。第3壁部23e内に保持されたベアリング35は、第2段差面24dに接触している。そのため、モータハウジング20に対してベアリング35を軸方向に好適に位置決めできる。より詳細には、ベアリング35の外輪が、第2段差面24dに軸方向他方側から接触している。
【0024】
蓋部23の軸方向他方側(+Y側)の面には、レゾルバ保持部25が設けられている。本実施形態においてレゾルバ保持部25は、軸方向他方側に突出する複数の突出壁部25aによって構成されている。複数の突出壁部25aは、蓋部23の軸方向他方側の面のうち穴部23fの周縁部に設けられている。複数の突出壁部25aは、シャフト31を囲んで配置されている。
【0025】
図1に示すように、ロータ30は、シャフト31と、ロータ本体32と、を有する。図示は省略するが、ロータ本体32は、ロータコアと、ロータコアに固定されたロータマグネットと、を有する。ロータ30のトルクは、伝達装置60に伝達される。
【0026】
シャフト31は、中心軸Jを中心として回転可能である。シャフト31は、ベアリング34,35によって回転可能に支持されている。シャフト31は、中空のシャフトである。シャフト31は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。シャフト31には、シャフト31の内部とシャフト31の外部とを繋ぐ孔部33が設けられている。シャフト31は、モータハウジング20の内部とギヤハウジング61の内部とに跨って延びている。シャフト31の軸方向他方側(+Y側)の端部は、ギヤハウジング61の内部に突出している。シャフト31の軸方向他方側の端部には、減速装置62が接続されている。
【0027】
シャフト31は、軸方向両側に開口している。
図2に示すように、シャフト31は、軸方向一方側(-Y側)に開口する開口端部31dを有する。シャフト31は、第1シャフト部31aと、第2シャフト部31bと、第3シャフト部31cと、を有する。第2シャフト部31bは、第1シャフト部31aの軸方向一方側に繋がっている。第2シャフト部31bの外径は、第1シャフト部31aの外径よりも小さい。第3シャフト部31cは、第2シャフト部31bの軸方向一方側に繋がっている。第3シャフト部31cの外径は、第2シャフト部31bの外径よりも小さい。第3シャフト部31cの軸方向の寸法は、第2シャフト部31bの軸方向の寸法よりも小さい。第3シャフト部31cの軸方向一方側の端部は、シャフト31の軸方向一方側の端部であり、開口端部31dである。
【0028】
第1シャフト部31aの内径と第2シャフト部31bの内径と第3シャフト部31cの内径とは、互いに同じである。第1シャフト部31aの外周面と第2シャフト部31bの外周面との間には、軸方向一方側(-Y側)を向く段差面を有する段差部が設けられている。第2シャフト部31bの外周面と第3シャフト部31cの外周面との間には、軸方向一方側を向く段差面を有する段差部が設けられている。
【0029】
第2シャフト部31bのうち軸方向一方側(-Y側)の部分および第3シャフト部31cは、周壁部23bの径方向内側に位置する。より詳細には、第2シャフト部31bのうち軸方向一方側の部分は、第3壁部23eの径方向内側に位置する。第3シャフト部31cは、第2壁部23dおよび第1壁部23cの径方向内側に位置する。本実施形態において開口端部31dは、第1壁部23cの径方向内側に位置する。第2シャフト部31bの外周面および第3シャフト部31cの外周面は、周壁部23bの内周面から径方向内側に離れて配置されている。開口端部31dは、底壁部23aから軸方向他方側(+Y側)に離れて配置されている。
【0030】
図1に示すように、ステータ40は、ロータ30と径方向に隙間を介して対向している。より詳細には、ステータ40は、ロータ30の径方向外側に位置する。ステータ40は、モータハウジング20の内部に固定されている。ステータ40は、ステータコア41と、コイルアセンブリ42と、を有する。
【0031】
ステータコア41は、回転電機10の中心軸Jを囲む環状である。ステータコア41は、ロータ30の径方向外側に位置する。ステータコア41は、ロータ30を囲んでいる。ステータコア41は、例えば、電磁鋼板などの板部材が軸方向に複数積層されて構成されている。図示は省略するが、ステータコア41は、軸方向に延びる円筒状のコアバックと、コアバックから径方向内側に延びる複数のティースと、を有する。
【0032】
コイルアセンブリ42は、周方向に沿ってステータコア41に取り付けられる複数のコイル42cを有する。複数のコイル42cは、図示しないインシュレータを介してステータコア41の各ティースにそれぞれ装着されている。コイルアセンブリ42は、ステータコア41から軸方向に突出するコイルエンド42a,42bを有する。
【0033】
レゾルバ50は、ロータ30の回転を検出可能である。レゾルバ50は、モータハウジング20の内部に収容されている。レゾルバ50は、レゾルバロータ51と、レゾルバステータ52と、を有する。レゾルバロータ51は、シャフト31に固定されている。レゾルバロータ51は、シャフト31を囲む環状である。本実施形態においてレゾルバロータ51は、中心軸Jを中心とする円環状である。
図2に示すように、本実施形態においてレゾルバロータ51は、第2シャフト部31bの軸方向他方側(+Y側)の端部を囲んでいる。レゾルバロータ51は、板面が軸方向を向く板状である。レゾルバロータ51の軸方向他方側の面は、第1シャフト部31aと第2シャフト部31bとの軸方向の間に設けられた段差部の段差面に接触している。レゾルバロータ51は、第1シャフト部31aの外周面よりも径方向外側に突出している。レゾルバロータ51は、ベアリング35の軸方向他方側に間隔を空けて配置されている。
【0034】
レゾルバステータ52は、レゾルバロータ51の径方向外側に位置する。レゾルバステータ52は、レゾルバロータ51を囲む環状である。レゾルバステータ52は、レゾルバ保持部25に保持されている。図示は省略するが、レゾルバステータ52は、コイルを有する。シャフト31とともにレゾルバロータ51が回転することによって、レゾルバステータ52のコイルに、レゾルバロータ51の周方向位置に応じた誘起電圧が生じる。レゾルバ50は、レゾルバステータ52のコイルに生じた誘起電圧の変化に基づいて、レゾルバロータ51およびシャフト31の回転を検出できる。これにより、レゾルバ50は、ロータ30の回転を検出可能である。
【0035】
除電装置80は、周壁部23bの径方向内側に位置する。除電装置80は、シャフト31を囲む環状である。本実施形態において除電装置80は、中心軸Jを中心とする円環状である。除電装置80は、第3シャフト部31cを囲んでいる。本実施形態において除電装置80は、第2壁部23dの径方向内側に嵌め合わされている。除電装置80は、開口端部31dよりも軸方向他方側(+Y側)に位置する。つまり、開口端部31dは、除電装置80よりも軸方向一方側(-Y側)に位置する。
【0036】
除電装置80は、ベアリング35の軸方向一方側(-Y側)に位置する。これにより、ベアリング35は、レゾルバロータ51と除電装置80との軸方向の間に位置する。本実施形態において除電装置80は、ベアリング35と隙間を介して対向している。除電装置80とベアリング35との間の軸方向の距離は、ベアリング35とレゾルバロータ51との間の軸方向の距離よりも小さい。
図3に示すように、除電装置80は、中心軸Jを中心とする円環状の基部81と、基部81の径方向内縁部に全周に亘って設けられたブラシ部82と、を有する。
【0037】
図2に示すように、基部81は、第2壁部23dの径方向内側に嵌め合わされている。基部81は、例えば、接着剤などによって第2壁部23dに固定されている。これにより、除電装置80は、モータハウジング20に固定されている。なお、除電装置80をモータハウジング20に固定する方法は特に限定されない。除電装置80は、例えば、圧入によってモータハウジング20に固定されてもよい。
【0038】
基部81の径方向外縁部における軸方向一方側(-Y側)の面は、第1段差面24cに接触している。これにより、除電装置80は、第1段差面24cに接触している。したがって、モータハウジング20に対して除電装置80を軸方向に好適に位置決めできる。基部81は、周壁部23bと電気的に接触している。これにより、除電装置80は、モータハウジング20に電気的に接触している。なお、本明細書において「或る対象が他の対象に電気的に接触している」とは、或る対象と他の対象との間で電流が流れることが可能となっていればよい。
【0039】
ブラシ部82は、シャフト31を囲む環状である。より詳細には、ブラシ部82は、中心軸Jを中心とし、第3シャフト部31cを囲む円環状である。本実施形態においてブラシ部82は、基部81の径方向内縁部から径方向内側に突出する複数の導電性の繊維によって構成されている。ブラシ部82を構成する繊維は、例えば、マイクロファイバなどである。ブラシ部82は、基部81と電気的に接続されている。ブラシ部82の径方向内縁部は、第3シャフト部31cの外周面に電気的に接触している。これにより、除電装置80は、シャフト31に電気的に接触している。本実施形態においてシャフト31は、第3シャフト部31cの外周面がブラシ部82の径方向内縁部に擦られながら回転する。
【0040】
このように、除電装置80を介して、シャフト31とモータハウジング20とが電気的に繋がっている。そのため、シャフト31に生じた電流を、ブラシ部82および基部81をこの順に介して、周壁部23bからモータハウジング20に流すことができる。これにより、シャフト31を回転可能に支持するベアリング34,35に、シャフト31から電流が流れることを抑制できる。したがって、ベアリング34,35に電食が生じることを抑制できる。
【0041】
本実施形態において除電装置80は、耐油性に優れている。つまり、除電装置80には、オイルOと接触することに起因する変化が生じにくい。なお、耐油性については、オイルO中への浸漬試験によって評価することが考えられる。この場合は、所定時間の浸漬後の重量変化および強度変化によって耐油性の評価を行う。重量変化の評価は、例えば、腐食および膨潤の観点を含む。
【0042】
ノズル部材70は、シャフト31の内部に流体としてのオイルOを供給するための部材である。ノズル部材70は、例えば、金属製の板部材にプレス加工などの機械加工が施されることで作られている。ノズル部材70は、周壁部23b内に配置されている。ノズル部材70は、供給筒部71と、フランジ部72と、を有する。
【0043】
供給筒部71は、軸方向に延びている。本実施形態において供給筒部71は、中心軸Jを中心とする円筒状である。供給筒部71は、軸方向両側に開口している。供給筒部71の少なくとも一部は、開口端部31dからシャフト31の内部に挿入されている。本実施形態においては、供給筒部71のうち軸方向一方側(-Y側)の端部を除いた全体が、シャフト31の内部に挿入されている。供給筒部71の軸方向一方側の端部は、シャフト31よりも軸方向一方側に位置する。本実施形態において供給筒部71の外周面は、シャフト31の内周面から径方向内側に離れて配置されている。そのため、供給筒部71がシャフト31に擦れることを抑制できる。これにより、供給筒部71が摩耗することを抑制できる。供給筒部71は、大径部71aと、小径部71bと、接続部71cと、を有する。
図2から
図4に示すように、本実施形態において供給筒部71は、大径部71aと小径部71bと接続部71cとによって漏斗状に構成されている。
【0044】
図2に示すように、大径部71aは、供給筒部71の軸方向一方側(-Y側)の部分である。大径部71aの軸方向一方側の端部は、供給筒部71の軸方向一方側の端部である。大径部71aは、シャフト31内に挿入された被挿入部71dと、被挿入部71dの軸方向一方側に繋がる拡径部71eと、を有する。本実施形態において被挿入部71dは、第3シャフト部31cの径方向内側に位置する。被挿入部71dの外周面は、第3シャフト部31cの内周面から径方向内側に離れて配置されている。被挿入部71dの内径および外径は、軸方向の全体に亘って同じである。拡径部71eの内径および外径は、被挿入部71dから軸方向一方側に離れるに従って大きくなっている。これにより、本実施形態において供給筒部71の軸方向一方側の端部における内径は、軸方向一方側に向かうに従って大きくなっている。
【0045】
拡径部71eの内周面は、軸方向他方側(+Y側)に向かうに従って内径が線形に小さくなるテーパ面である。拡径部71eの外周面は、軸方向他方側に向かうに従って外径が線形に小さくなるテーパ面である。本実施形態において拡径部71eの軸方向一方側(-Y側)の端部は、開口端部31dの内周面よりも径方向外側に位置し、開口端部31dの外周面よりも径方向内側に位置する。拡径部71eの軸方向一方側の端部は、開口端部31dから軸方向一方側に離れて配置されている。拡径部71eの軸方向の寸法は、被挿入部71dの軸方向の寸法よりも小さい。
【0046】
小径部71bは、供給筒部71の軸方向他方側(+Y側)の部分である。小径部71bは、大径部71aの軸方向他方側に繋がっている。本実施形態において小径部71bは、接続部71cを介して大径部71aに繋がっている。小径部71bの軸方向他方側の端部は、供給筒部71の軸方向他方側の端部である。小径部71bの内径は、大径部71aの内径よりも小さい。小径部71bの内径は、例えば、大径部71aの内径の半分以下である。小径部71bの外径は、大径部71aの外径よりも小さい。小径部71bの外径は、例えば、大径部71aの外径の半分以下である。小径部71bの軸方向の寸法は、大径部71aの軸方向の寸法よりも大きい。
【0047】
小径部71bの全体は、シャフト31の内部に挿入されている。本実施形態において小径部71bは、第2シャフト部31bの径方向内側に位置する。小径部71bの外周面は、第2シャフト部31bの内周面から径方向内側に離れて配置されている。小径部71bの外周面とシャフト31の内周面との間の径方向の距離は、大径部71aの外周面とシャフト31の内周面との間の径方向の距離よりも大きい。本実施形態において小径部71bの軸方向他方側(+Y側)の端部は、レゾルバロータ51の径方向内側に位置する。
【0048】
接続部71cは、径方向に広がり大径部71aの軸方向他方側(+Y側)の端部と小径部71bの軸方向一方側(-Y側)の端部とを繋いでいる。本実施形態において接続部71cは、径方向外側から径方向内側に向かうに従って軸方向他方側に位置する。接続部71cは、軸方向一方側を向く接続面71fを有する。接続面71fは、中心軸Jを中心とする円環状の面である。接続面71fは、大径部71aの内周面と小径部71bの内周面とを繋いでいる。より詳細には、接続面71fは、被挿入部71dの内周面のうち軸方向他方側の端部と小径部71bの内周面のうち軸方向一方側の端部とを繋いでいる。接続面71fは、大径部71aの内周面から小径部71bの内周面に向かうに従って軸方向他方側に位置する。接続面71fは、軸方向他方側に向かうに従って内径が線形に小さくなるテーパ面である。接続面71fの軸方向に対する傾きは、拡径部71eの内周面の軸方向に対する傾きよりも大きい。
【0049】
フランジ部72は、供給筒部71から径方向外側に突出している。本実施形態においてフランジ部72は、供給筒部71の軸方向一方側(-Y側)から径方向外側に突出している。フランジ部72は、中心軸Jを囲む環状である。本実施形態においてフランジ部72は、中心軸Jを中心とする円環状である。
【0050】
フランジ部72は、除電装置80と底壁部23aとの軸方向の間に位置する。これにより、除電装置80は、ベアリング35とフランジ部72との軸方向の間に位置する。フランジ部72は、底壁部23aの軸方向他方側(+Y側)に対向して配置されている。フランジ部72は、除電装置80の軸方向一方側に対向して配置されている。フランジ部72は、環状部72aと、筒状部72bと、を有する。
【0051】
環状部72aは、供給筒部71から径方向外側に突出する部分である。本実施形態において環状部72aは、拡径部71eの軸方向一方側(-Y側)の端部から径方向外側に突出している。環状部72aは、中心軸Jを中心とする円環状である。環状部72aは、板面が軸方向を向く板状である。環状部72aは、内側環状部72cと、外側環状部72dと、を有する。
【0052】
内側環状部72cは、環状部72aの径方向内側部分である。内側環状部72cの径方向内縁部は、拡径部71eの軸方向一方側(-Y側)の端部に繋がっている。内側環状部72cの径方向外縁部は、第2シャフト部31bの外周面よりも径方向外側に位置する。内側環状部72cの軸方向一方側の面は、フランジ部72の軸方向一方側の面の一部を構成する平坦面72eである。平坦面72eは、軸方向と直交している。
図3に示すように、平坦面72eは、中心軸Jを中心とする円環状である。
【0053】
外側環状部72dは、環状部72aの径方向外側部分である。外側環状部72dは、内側環状部72cの径方向外側に繋がっている。外側環状部72dは、内側環状部72cの径方向外縁部から径方向外側に向かうに従って軸方向他方側(+Y側)に位置する。外側環状部72dの軸方向一方側(-Y側)の面は、フランジ部72の軸方向一方側の面の一部を構成する傾斜面72fである。つまり、フランジ部72の軸方向一方側の面は、傾斜面72fを有する。本実施形態においてフランジ部72の軸方向一方側の面は、平坦面72eと傾斜面72fとによって構成されている。傾斜面72fは、径方向外側に向かうに従って軸方向他方側に位置する。傾斜面72fは、中心軸Jを中心とする円環状である。傾斜面72fは、軸方向一方側に向かうに従って外径が線形に小さくなるテーパ面である。
【0054】
図2に示すように、筒状部72bは、環状部72aの径方向外縁部から軸方向他方側(+Y側)に突出している。筒状部72bは、中心軸Jを中心とする円筒状である。筒状部72bは、第1壁部23cの径方向内側に隙間嵌めされている。これにより、本実施形態においてフランジ部72は、周壁部23bの内部に嵌め合わされている。そのため、モータハウジング20に対してノズル部材70を径方向に位置決めできる。本実施形態においては環状部72aの径方向外縁部から軸方向に突出する筒状部72bが設けられているため、筒状部72bを周壁部23bの内部に嵌め合わせることでノズル部材70をより好適にモータハウジング20に対して径方向に位置決めできる。
【0055】
筒状部72bの軸方向他方側の端部は、開口端部31dよりも軸方向他方側に位置する。筒状部72bの軸方向他方側の端部は、開口端部31dを囲んでいる。つまり、本実施形態において開口端部31dは、筒状部72bの径方向内側に位置する。筒状部72bは、除電装置80と軸方向に対向して配置されている。
図2の例では、筒状部72bの軸方向他方側の端部は、基部81の軸方向一方側(-Y側)の面に接触している。
【0056】
フランジ部72の軸方向の寸法L1は、底壁部23aと除電装置80との間の軸方向の距離L2よりも小さい。そのため、フランジ部72は、底壁部23aと除電装置80との少なくとも一方から軸方向に離れて配置されている。
図2の例では、フランジ部72は、底壁部23aから軸方向他方側(+Y側)に離れて配置され、除電装置80に接触している。本実施形態においてノズル部材70は、フランジ部72が底壁部23aと除電装置80との軸方向の間で移動可能な範囲内で軸方向に移動可能である。フランジ部72の軸方向の寸法L1は、平坦面72eと筒状部72bの軸方向他方側の端部との間の軸方向の距離である。底壁部23aと除電装置80との間の軸方向の距離L2は、底壁部23aの軸方向他方側の面と基部81の軸方向一方側(-Y側)の面との間の軸方向の距離である。本実施形態において底壁部23aと除電装置80との間の軸方向の距離L2は、第1壁部23cの軸方向の寸法と同じである。
【0057】
本実施形態においてフランジ部72と底壁部23aとの軸方向の間には隙間Gが設けられている。隙間Gは、平坦面72eと底壁部23aの軸方向他方側(+Y側)の面との隙間G1と、傾斜面72fと底壁部23aの軸方向他方側の面との隙間G2と、を含む。隙間G2は、隙間G1よりも大きい。なお、ノズル部材70が
図2に示す位置よりも軸方向一方側(-Y側)に動いて平坦面72eが底壁部23aの軸方向他方側の面に接触した場合には、フランジ部72と底壁部23aとの軸方向の間には隙間G2のみが設けられる。このように、傾斜面72fが設けられていることで、フランジ部72が底壁部23aに接触する場合であっても、フランジ部72と底壁部23aとの軸方向の間に隙間G2を設けることができる。
【0058】
本実施形態においてフランジ部72は、ベアリング35に流体としてのオイルOを供給する少なくとも1つの供給孔73を有する。そのため、供給孔73を介して、ベアリング35に潤滑剤としてのオイルOを供給できる。本実施形態において供給孔73は、フランジ部72を軸方向に貫通する孔である。本実施形態において供給孔73は、外側環状部72dに設けられている。供給孔73は、傾斜面72fに開口している。供給孔73は、フランジ部72と底壁部23aとの隙間Gに開口している。より詳細には、供給孔73は、傾斜面72fと底壁部23aの軸方向他方側(+Y側)の面との隙間G2に開口している。供給孔73は、除電装置80とフランジ部72との間に開口している。
図3および
図4に示すように、本実施形態において供給孔73は、円形状の孔である。供給孔73は、周方向に間隔を空けて複数設けられている。複数の供給孔73は、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。供給孔73は、例えば、4つ設けられている。
【0059】
図1に示すように、本実施形態において駆動装置100には、冷媒としてのオイルOが循環する冷媒流路90が設けられている。冷媒流路90は、モータハウジング20の内部とギヤハウジング61の内部とに跨って設けられている。冷媒流路90は、ギヤハウジング61内に貯留されたオイルOが回転電機10に供給されて再びギヤハウジング61内に戻る経路である。冷媒流路90には、ポンプ96と、クーラ97と、冷媒供給部95と、が設けられている。以下の説明においては、冷媒流路90内のオイルOの流れ方向における上流側を単に「上流側」と呼び、冷媒流路90内のオイルOの流れ方向における下流側を単に「下流側」と呼ぶ。冷媒流路90は、ギヤ側流路部91と、接続流路部92と、回転電機側流路部93と、を有する。
【0060】
ギヤ側流路部91は、第1部分91aと、第2部分91bと、を有する。第1部分91aおよび第2部分91bは、例えば、ギヤハウジング61の壁部に設けられている。第1部分91aは、ギヤハウジング61の内部のうちオイルOが貯留されている部分とポンプ96とを繋いでいる。第2部分91bは、ポンプ96とクーラ97とを繋いでいる。
【0061】
接続流路部92は、ギヤハウジング61の壁部とモータハウジング20の壁部とに跨って設けられている。接続流路部92は、ギヤ側流路部91と回転電機側流路部93とを繋いでいる。より詳細には、接続流路部92は、クーラ97と後述する第3流路部93cとを繋いでいる。
【0062】
回転電機側流路部93は、回転電機10に設けられている。回転電機側流路部93は、第1流路部93aと、第2流路部93bと、第3流路部93cと、を有する。つまり、回転電機10は、第1流路部93aと、第2流路部93bと、第3流路部93cと、を備える。第1流路部93aおよび第3流路部93cは、モータハウジング20の壁部に設けられている。第2流路部93bは、モータハウジング20の壁部に設けられたハウジング流路部93dと、冷媒供給部95と、を有する。本実施形態において、第1流路部93a、第3流路部93c、およびハウジング流路部93dは、蓋部23に設けられている。第3流路部93cには、第1流路部93aおよび第2流路部93bが繋がっている。本実施形態において第1流路部93aと第2流路部93bとは、第3流路部93cから分岐している。
【0063】
第1流路部93aは、周壁部23bの内部に流体としてのオイルOを供給する流路部である。第1流路部93aの上流側の端部は、第3流路部93cの下流側の端部に繋がっている。第1流路部93aの下流側の端部は、周壁部23bの内部に開口している。図示は省略するが、第1流路部93aの下流側の端部は、例えば、周壁部23bの内周面のうち軸方向一方側(-Y側)の端部に開口している。
【0064】
第2流路部93bは、ステータ40に流体としてのオイルOを供給する流路部である。第2流路部93bのうちハウジング流路部93dの上流側の端部は、第3流路部93cの下流側の端部に繋がっている。ハウジング流路部93dの下流側の端部は、冷媒供給部95の上流側の端部に繋がっている。
【0065】
本実施形態において冷媒供給部95は、軸方向に延びる管状である。言い換えれば、本実施形態において冷媒供給部95は、軸方向に延びるパイプである。冷媒供給部95の軸方向両端部は、モータハウジング20に支持されている。冷媒供給部95の軸方向他方側(+Y側)の端部は、例えば、隔壁部22に支持されている。冷媒供給部95の軸方向一方側(-Y側)の端部は、例えば、蓋部23に支持されている。
【0066】
冷媒供給部95は、ステータ40の径方向外側に位置する。本実施形態において冷媒供給部95は、ステータ40の上側に位置する。本実施形態において冷媒供給部95内におけるオイルOの流れる向きは、軸方向一方側から軸方向他方側に流れる向きである。つまり、冷媒供給部95内のオイルOの流れ方向において、軸方向一方側は上流側であり、軸方向他方側は下流側である。冷媒供給部95は、ステータ40に冷媒としてのオイルOを供給する供給口95aを有する。本実施形態において供給口95aは、冷媒供給部95内に流入したオイルOの一部を冷媒供給部95の外部に噴射させる噴射口である。供給口95aは、複数設けられている。
【0067】
ポンプ96が駆動されると、ギヤハウジング61内に貯留されたオイルOが第1部分91aを通って吸い上げられ、第2部分91bを通ってクーラ97内に流入する。クーラ97内に流入したオイルOは、クーラ97内で冷却された後、接続流路部92を通って、第3流路部93cから回転電機側流路部93に流入する。第3流路部93cに流入したオイルOは、第1流路部93aと第2流路部93bとに分岐する。第1流路部93aに流入したオイルOは、周壁部23bの内部に流入する。本実施形態において第1流路部93aからのオイルOは、フランジ部72と底壁部23aとの軸方向の隙間Gに流入する。より詳細には、第1流路部93aからのオイルOは、傾斜面72fと底壁部23aとの軸方向の隙間G2に流入する。
【0068】
図2に示すように、周壁部23bの内部に流入したオイルOの一部は、ノズル部材70の供給筒部71内を通って、シャフト31の内部に流入する。このように、本実施形態では、第1流路部93aが設けられることで、周壁部23b内からシャフト31内へとオイルOを供給できる。本実施形態においては、隙間G2に流入したオイルOが、隙間G1を通って供給筒部71の軸方向一方側(-Y側)の端部から供給筒部71内に流入する。ここで、本実施形態では、フランジ部72の軸方向の寸法L1が底壁部23aと除電装置80との間の軸方向の距離L2よりも小さいため、隙間G1を好適に生じさせることができる。これにより、本実施形態のように第1流路部93aから隙間G2にオイルOが供給される場合であっても、隙間G1を介して供給筒部71内にオイルOを供給しやすくできる。また、本実施形態では、供給筒部71の軸方向一方側の端部における内径は、軸方向一方側に向かうに従って大きくなっている。そのため、供給筒部71の軸方向一方側の端部から供給筒部71内にオイルOを流入させやすくできる。これにより、供給筒部71内にオイルOをより供給しやすくできる。
【0069】
図1に示すように、ノズル部材70からシャフト31内に流入したオイルOは、孔部33からロータ本体32の内部を通過して、ステータ40に飛散する。
図2に示すように、周壁部23bの内部に流入したオイルOの他の一部は、供給孔73を軸方向一方側(-Y側)から軸方向他方側(+Y側)に通って、ベアリング35に供給される。
【0070】
ここで、本実施形態において供給孔73は、フランジ部72と底壁部23aとの隙間Gに開口している。そのため、隙間Gに流入したオイルOを供給孔73に通しやすい。これにより、供給孔73を介して、ベアリング35にオイルOを供給しやすくできる。また、本実施形態では、供給孔73は、傾斜面72fに開口している。そのため、フランジ部72が底壁部23aに接触する場合であっても、傾斜面72fと底壁部23aとの軸方向の隙間G2から供給孔73にオイルOを流入させやすくできる。したがって、供給孔73を介して、ベアリング35にオイルOをより供給しやすくできる。
【0071】
ベアリング35に供給されるオイルOは、例えば、供給孔73を通った後に、除電装置80とシャフト31との径方向の隙間を通ってベアリング35に到達する。なお、周壁部23b内に流入したオイルOの一部は、供給孔73を軸方向一方側から軸方向他方側に通った後に、シャフト31と供給筒部71との径方向の隙間からシャフト31内に流入してもよい。
【0072】
図1に示すように、第2流路部93bに流入したオイルOは、ハウジング流路部93dを通って、冷媒供給部95の内部へと流れる。冷媒供給部95内に流入したオイルOは、供給口95aから噴射されて、ステータ40に供給される。このように、第3流路部93cから分岐する第1流路部93aと第2流路部93bとが設けられることで、ギヤハウジング61内から送られてきたオイルOを、好適かつ容易に、周壁部23b内を介してシャフト31内に供給できるとともに冷媒供給部95からステータ40に供給できる。
【0073】
本実施形態では、リングギヤ63aによってかき上げられたオイルOの一部がギヤハウジング61内に設けられたリザーバ98内に入る。リザーバ98内に入ったオイルOは、シャフト31内に軸方向他方側(+Y側)の端部から流入する。リザーバ98からシャフト31内に流入したオイルOは、孔部33からロータ本体32の内部を通過して、ステータ40に飛散する。
【0074】
供給口95aからステータ40に供給されたオイルOおよびシャフト31内からステータ40に供給されたオイルOは、ステータ40から熱を奪う。ステータ40を冷却したオイルOは、下側に落下して、モータハウジング20内の下部領域に溜まる。モータハウジング20内の下部領域に溜ったオイルOは、隔壁部22に設けられた隔壁開口22aを介してギヤハウジング61内に戻る。以上のようにして、冷媒流路90は、ギヤハウジング61内に貯留されたオイルOをロータ30およびステータ40に供給する。
【0075】
本実施形態によれば、フランジ部72は、モータハウジング20に固定された除電装置80と底壁部23aとの軸方向の間に位置する。そのため、フランジ部72を底壁部23aによって軸方向一方側から押さえることができ、かつ、フランジ部72を除電装置80によって軸方向他方側から押さえることができる。つまり、ノズル部材70がモータハウジング20に対して軸方向に移動することを除電装置80によって抑制できる。したがって、除電装置80をモータハウジング20に対して固定することで、ノズル部材70をモータハウジング20に取り付けることができる。そのため、ノズル部材70をモータハウジング20に固定するための固定部材を除電装置80の他に設ける必要がなく、回転電機10の部品点数を低減できる。これにより、駆動装置100の部品点数も削減できる。回転電機10の部品点数および駆動装置100の部品点数を低減できることで、回転電機10および駆動装置100の組み立てに要する工数および時間を低減できる。
【0076】
また、本実施形態によれば、除電装置80は、ベアリング35とフランジ部72との軸方向の間に位置する。そのため、仮に除電装置80がモータハウジング20から外れた場合であっても、除電装置80が軸方向他方側に移動することをベアリング35によって抑制できる。これにより、除電装置80がモータハウジング20から外れても、除電装置80によってフランジ部72が軸方向他方側に移動することを抑制できる。
【0077】
また、本実施形態によれば、ベアリング35は、レゾルバロータ51と除電装置80との軸方向の間に位置する。そのため、レゾルバロータ51がベアリング35と除電装置80との軸方向の間に設けられる場合に比べて、ベアリング35を除電装置80に近い位置に配置できる。これにより、本実施形態のようにノズル部材70の供給孔73からオイルOがベアリング35に供給される構成の場合に、供給孔73からベアリング35までオイルOを到達させやすい。
【0078】
また、本実施形態によれば、開口端部31dは、除電装置80よりも軸方向一方側(-Y側)かつ筒状部72bの径方向内側に位置する。そのため、シャフト31を除電装置80よりも軸方向一方側に延ばしてシャフト31に対して除電装置80を接触させやすくしつつ、シャフト31のうち除電装置80よりも軸方向一方側に延ばした部分を筒状部72b内に配置することで回転電機10全体が軸方向に大型化することを抑制できる。
【0079】
また、本実施形態によれば、供給筒部71は、大径部71aと、大径部71aの軸方向他方側(+Y側)に繋がり、大径部71aよりも内径が小さい小径部71bと、を有する。このように、供給筒部71に小径部71bを設けて供給筒部71の一部を細くすることで、供給筒部71からシャフト31内にオイルOが流入しすぎることを抑制できる。これにより、周壁部23b内に流入したオイルOの一部を供給孔73からベアリング35に供給しやすくできる。また、第1流路部93aから周壁部23b内に流入するオイルOの総量が多くなり過ぎることを抑制できる。そのため、第3流路部93cから第1流路部93aに分岐するオイルOが多くなり過ぎることを抑制でき、第3流路部93cから第2流路部93bに分岐するオイルOが少なくなることを抑制できる。これにより、第2流路部93bからステータ40に好適にオイルOを供給できる。また、大径部71a内にオイルOを溜めることができ、大径部71a内に溜められたオイルOを小径部71bから順次安定してシャフト31内に供給できる。
【0080】
また、本実施形態によれば、大径部71aの軸方向他方側(+Y側)の端部と小径部71bの軸方向一方側(-Y側)の端部とを繋ぐ接続部71cは、大径部71aの内周面から小径部71bの内周面に向かうに従って軸方向他方側に位置する接続面71fを有する。そのため、大径部71a内に流入したオイルOを接続面71fに沿って小径部71b内に流しやすくできる。これにより、小径部71bからシャフト31内へとオイルOを供給しやすくできる。
【0081】
<第2実施形態>
図5に示すように、本実施形態の駆動装置200の回転電機210において、底壁部223aの径方向の中央部には、第1流路部293aが開口している。周壁部223bには、第1実施形態と異なり、第1壁部23cが設けられていない。本実施形態では、第2壁部23dが底壁部223aに繋がっている。
【0082】
ノズル部材270の供給筒部271において、大径部271aの内径および外径は、軸方向の全体に亘って同じである。フランジ部272は、大径部271aの軸方向一方側(-Y側)の端部から径方向外側に突出している。本実施形態においてフランジ部272は、軸方向に対して直交する平坦な板面を有する板状である。フランジ部272は、第1実施形態のフランジ部72と異なり、筒状部72bを有しない。フランジ部272の軸方向一方側の面は、底壁部223aの軸方向他方側(+Y側)の面に接触している。
【0083】
除電装置280の基部281における軸方向一方側(-Y側)の面は、フランジ部272の軸方向他方側(+Y側)の面に接触している。これにより、フランジ部272は、底壁部223aと除電装置280との両方に軸方向に接触している。そのため、ノズル部材270が軸方向他方側に移動することを、除電装置280によって、より好適に抑制できる。このように、本実施形態では、除電装置280によって、ノズル部材270をモータハウジング220に対して、より安定して取り付けることができる。また、ノズル部材270が軸方向にガタつくことを抑制できる。そのため、回転電機210から騒音が生じることを抑制できる。
【0084】
本実施形態において除電装置280は、フランジ部272の軸方向他方側の面に接触することで、モータハウジング220に対して軸方向に位置決めされている。フランジ部272と底壁部223aとの軸方向の間には、第1実施形態と異なり、隙間が設けられていない。フランジ部272は、第1実施形態のフランジ部72と異なり、供給孔73を有しない。フランジ部272の径方向外縁部は、周壁部223bの内周面から径方向内側に離れている。
【0085】
本実施形態においてシャフト231の第3シャフト部231cにおける開口端部231dは、除電装置280の軸方向一方側(-Y側)の端部よりも軸方向他方側(+Y側)に位置する。開口端部231dは、フランジ部272の軸方向他方側に隙間を介して対向して配置されている。回転電機210のその他の構成は、第1実施形態の回転電機10のその他の構成と同様にできる。駆動装置200のその他の構成は、第1実施形態の駆動装置100のその他の構成と同様にできる。
【0086】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。除電装置は、シャフトと回転電機のハウジングとに電気的に接触してシャフトに流れる電流をハウジングに逃がせるならば、どのような種類の除電装置であってもよい。
【0087】
ノズル部材は、供給筒部とフランジ部とを有するならば、どのような形状であってもよい。ノズル部材の筒状部は、環状部の径方向外縁部から軸方向一方側に突出していてもよい。供給筒部の内径は、軸方向の全体に亘って同じであってもよい。供給筒部の外周面は、シャフトの内周面に接触していてもよい。ノズル部材からシャフトの内部に供給される流体は、どのような種類の流体であってもよい。当該流体は、絶縁液であってもよいし、水であってもよい。流体が水である場合、ステータの表面に絶縁処理が施されてもよい。周壁部内に流体が供給される構造および方法は、特に限定されない。レゾルバの配置およびベアリングの配置は、特に限定されない。
【0088】
本発明が適用される回転電機は、モータに限られず、発電機であってもよい。回転電機の用途は、特に限定されない。回転電機は、例えば、車軸を回転させる用途以外の用途で車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。回転電機が用いられる際の姿勢は、特に限定されない。回転電機の中心軸は、鉛直方向に延びてもよい。以上、本明細書において説明した構成および方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0089】
10,210…回転電機、20,220…モータハウジング(ハウジング)、23a,223a…底壁部、23b,223b…周壁部、24a…第1段差部、24b…第2段差部、24c…第1段差面、24d…第2段差面、30…ロータ、31,231…シャフト、31d,231d…開口端部、35…ベアリング、40…ステータ、50…レゾルバ、51…レゾルバロータ、52…レゾルバステータ、60…伝達装置、64…車軸、70,270…ノズル部材、71,271…供給筒部、71a,271a…大径部、71b…小径部、71c…接続部、71f…接続面、72,272…フランジ部、72a…環状部、72b…筒状部、72f…傾斜面、73…供給孔、80,280…除電装置、93a,293a…第1流路部、93b…第2流路部、93c…第3流路部、100,200…駆動装置、G,G1,G2…隙間、J…中心軸、O…オイル(流体)