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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】空燃比センサ制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20241217BHJP
   F02D 41/20 20060101ALI20241217BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G01N27/409 100
F02D41/20
F02D45/00 395
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021038333
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138448
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-08-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】藤本 悠
(72)【発明者】
【氏名】根塚 智裕
(72)【発明者】
【氏名】日比 康博
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185222(JP,A)
【文献】特開2017-194365(JP,A)
【文献】特開2017-009565(JP,A)
【文献】特開2016-095268(JP,A)
【文献】特開2000-329730(JP,A)
【文献】特表2009-544008(JP,A)
【文献】米国特許第05180968(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0256894(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/12,
G01N 27/406,27/416,
F02D 41/00,45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空燃比センサ(2)を制御する空燃比センサ制御装置(5)であって、
前記空燃比センサに対して第1電圧値および前記第1電圧値とは異なる第2電圧値の印加電圧を所定の掃引期間毎に交互に切り替えて印加する電圧印加部(10)と、
前記空燃比センサに流れる電流に対応した検出電圧を出力する電流電圧変換部(15)と、
前記検出電圧を入力し、前記検出電圧を正転した電圧および前記検出電圧を反転した電圧を所定のチョッピング期間毎に交互に切り替えて出力するチョッピングスイッチ(29)と、
前記チョッピングスイッチの動作を制御するとともに前記チョッピングスイッチの出力電圧を増幅およびA/D変換することにより得られる検出信号に基づいて前記空燃比センサにより検出される空燃比を算出する制御部(8)と、
を備え、
前記チョッピング期間は、前記掃引期間の2以上の整数倍に設定されており、
前記制御部は、
前記検出信号を復調した信号を出力する復調部(24)と、
前記復調部の出力信号を平均化することにより前記空燃比を算出する演算部(26)と、
を備える空燃比センサ制御装置。
【請求項2】
前記チョッピング期間は、前記掃引期間の2倍に設定されている請求項1に記載の空燃比センサ制御装置。
【請求項3】
前記チョッピング期間は、前記掃引期間の奇数倍に設定されている請求項1に記載の空燃比センサ制御装置。
【請求項4】
前記チョッピング期間は、前記掃引期間の3倍に設定されている請求項3に記載の空燃比センサ制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記チョッピングスイッチの動作を有効化または無効化することができる構成となっている請求項1から4のいずれか一項に記載の空燃比センサ制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記チョッピング期間を可変設定することができる構成となっている請求項1から5のいずれか一項に記載の空燃比センサ制御装置。
【請求項7】
半導体集積回路として構成されている請求項1から6のいずれか一項に記載の空燃比センサ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空燃比センサを制御する空燃比センサ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、空燃比センサを制御する空燃比センサ制御装置は、空燃比センサに対して所定の掃引期間毎にハイレベルおよびロウレベルが切り替わる印加電圧、つまり方形波の電圧を印加し、その際に空燃比センサから出力される電流を検出する。そして、空燃比センサ制御装置は、このように検出される電流の直流成分であるDC電流に基づいて空燃比を検出するとともに、上記電流の交流成分であるAC電流に基づいて空燃比センサのインピーダンスを検出するようになっている。なお、本明細書では、空燃比のことをA/Fと称することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-7887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような構成の空燃比センサ制御装置では、空燃比センサから出力される電流を検出するための構成におけるオフセット、具体的には、アナログフロントエンドおよびA/D変換器におけるオフセットが、A/Fの検出誤差となる。そのため、空燃比センサ制御装置では、このようなオフセットを極力低減することが望ましい。なお、本明細書では、アナログフロントエンドのことをAFEと省略することがあるとともに、A/D変換器のことをADCと省略することがある。
【0005】
一般的なオフセットキャンセルの技術としては、例えば、AFEにチョッパーアンプを用いる第1技術、AFEにオートゼロアンプを用いる第2技術、システムでゼロ補正する第3技術などが挙げられる。第1技術によれば、低オフセットおよび低ノイズを実現することができる。ただし、第1技術では、回路規模が若干増大する点、掃引信号通過のために早いチョップが必要になる点、チョップ信号によりノイズが生じる点などの課題がある。
【0006】
第2技術によれば、低オフセットおよび低ノイズを実現することができる。ただし、第2技術では、回路規模が増大する点、制御信号によるノイズおよび折り返しによるノイズが増大する点などの課題がある。第3技術によれば、追加回路を不要にすることができる。ただし、第3技術では、動的な補償が困難となる点、オフセットドリフトに対して脆弱である点などの課題がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路規模の増大を抑えつつ、オフセットに起因した検出誤差を低減することができる空燃比センサ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の空燃比センサ制御装置(5)は、空燃比センサ(2)を制御するものであり、電圧印加部(10)、電流電圧変換部(15)、チョッピングスイッチ(29)および制御部(8)を備えている。電圧印加部は、空燃比センサに対して第1電圧値および第1電圧値とは異なる第2電圧値の印加電圧を所定の掃引期間毎に交互に切り替えて印加する。電流電圧変換部は、空燃比センサに流れる電流に対応した検出電圧を出力する。チョッピングスイッチは、検出電圧を入力し、検出電圧を正転した電圧および検出電圧を反転した電圧を所定のチョッピング期間毎に交互に切り替えて出力する。制御部は、チョッピングスイッチの動作を制御するとともにチョッピングスイッチの出力電圧を増幅およびA/D変換することにより得られる検出信号に基づいて空燃比センサにより検出される空燃比を算出する。制御部は、検出信号を復調した信号を出力する復調部(24)と、復調部の出力信号を平均化することにより空燃比を算出する演算部(26)と、を備える
【0009】
このように、請求項1に記載の空燃比センサ制御装置は、従来技術において説明した空燃比センサ制御装置に対し、チョッピングスイッチが追加された構成となっている。上記構成において、チョッピング期間は、掃引期間の2以上の整数倍に設定されている。このようにすれば、チョッピングスイッチから出力される電圧が切り替わる動作、つまりチョッピングスイッチによるチョッピング動作が掃引期間に同期したものとなる。そのため、チョッピングスイッチから出力される電圧において、空燃比センサに流れる電流を検出するための構成におけるオフセットが相殺される。したがって、上記構成によれば、大幅な回路構成の追加を必要とすることなく、オフセットを補償することができる。つまり、上記構成によれば、回路規模の増大を抑制しつつ、オフセットに起因した検出誤差を低減することができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係るA/Fセンサシステムの構成を模式的に示す図
図2】第1実施形態に係るA/Fセンサ制御装置の具体的な構成の一例を示す図
図3】第1実施形態に係るA/Fセンサシステムの動作の一例を説明するためのタイミングチャート
図4】第2実施形態に係るA/Fセンサシステムの動作の一例を説明するためのタイミングチャート
図5】第1実施形態に係るA/FセンサシステムのDC電流が負の値である場合の動作の一例を説明するためのタイミングチャート
図6】第1実施形態に係るA/FセンサシステムのDC電流が正の値である場合の動作の一例を説明するためのタイミングチャート
図7】第2実施形態に係るA/FセンサシステムのDC電流が負の値である場合の動作の一例を説明するためのタイミングチャート
図8】第2実施形態に係るA/FセンサシステムのDC電流が正の値である場合の動作の一例を説明するためのタイミングチャート
図9】第3実施形態に係る制御部により実行される制御の具体的な適用例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1図3を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のA/Fセンサシステム1は、例えば自動車などの車両に搭載される電子制御装置であるECUに設けられる。A/Fセンサシステム1は、車両用の内燃機関が排出する排気ガスを被検出ガスとし、その排気中のA/FをA/Fセンサ2により検出するための各種制御処理を実行する。この場合、A/Fセンサ2の近傍には、ヒータ3が設けられている。A/Fセンサ2は、ヒータ3により、例えば800℃程度まで昇温されるようになっている。
【0013】
A/Fセンサシステム1は、MCU4および例えばASICなどの半導体集積回路として構成されたA/Fセンサ制御装置5を備えている。なお、MCUはMicro Controller Unitの略称であり、ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略称である。MCU4は、CPU、ROM、RAMなどを備え、CPUがROMに格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより後述する各種の制御および処理を実行する。A/Fセンサ制御装置5は、A/Fセンサ2を制御するものであり、内部電源6、通信部7、制御部8、ヒータ制御部9、端子駆動部10、センサ電流検出部11などの機能ブロックを備えている。
【0014】
内部電源6は、A/Fセンサ制御装置5の外部から供給される外部電源を用いて安定した直流電源を生成する。内部電源6は、生成した直流電源を、A/Fセンサ制御装置5の内部の各機能ブロックに供給する。通信部7は、MCU4との間で通信を行う。通信部7は、MCU4から各種指令を受信すると、それら各種指令を制御部8に伝達する。また、通信部7は、制御部8から各種情報が与えられると、それら各種情報をMCU4に送信する。
【0015】
ヒータ制御部9には、MCU4により生成されるヒータ3の駆動に関する指令信号Saが与えられている。ヒータ制御部9は、指令信号Saに基づいて、ヒータ3の駆動をデューティ制御するためのヒータ駆動信号Sbを生成する。ヒータ駆動信号Sbは、2値の信号であり、ハイレベルであるときにヒータ3の通電オンを指令するとともに、ロウレベルであるときにヒータ3の通電オフを指令する信号となっている。
【0016】
ヒータ駆動信号Sbは、A/Fセンサ制御装置5の外部に設けられたヒータ駆動部12に与えられる。ヒータ駆動部12は、例えばMOSトランジスタにより構成されている。ヒータ駆動部12のMOSトランジスタは、ヒータ駆動信号Sbに基づいてオンオフ制御される。これにより、ヒータ3の通電がオンオフ制御される。ヒータ制御部9によりヒータ3の通電がオンオフ制御されることにより、A/Fセンサ2の温度が昇温される。A/Fセンサ2には、排気ガスのA/Fと、その端子間電圧に応じた電流が流れる。
【0017】
端子駆動部10は、出力端子P1、P2を介してA/Fセンサ2の各端子間に電圧を印加するバッファアンプ13、14を備えている。A/Fセンサ2の各端子間には、バッファアンプ13、14の各出力電圧の差に対応した電圧が印加されることになる。この場合、端子駆動部10は、A/Fセンサ2に対して第1電圧値VHおよび第1電圧値VHとは異なる第2電圧値VLの印加電圧を所定の掃引期間Ta毎に交互に切り替えて印加するものであり、電圧印加部として機能する。
【0018】
A/Fセンサ2に印加される電圧であるセンサ印加電圧は、矩形波の電圧となる。端子駆動部10の動作は、制御部8により制御される。制御部8は、後述するようにして検出するA/Fセンサ2のインピーダンスの検出値に基づいて、センサ印加電圧が適切な値となるように端子駆動部10の動作を制御する。バッファアンプ14の出力端子と出力端子P2との間には、シャント抵抗15が接続されている。シャント抵抗15は、A/Fセンサ2に流れる電流を電圧に変換する、つまりI/V変換する。なお、以下の説明では、A/Fセンサ2に流れる電流のことをセンサ出力電流と称することがある。
【0019】
シャント抵抗15の各端子間電圧である検出電圧Vr1は、センサ電流検出部11に与えられている。この場合、シャント抵抗15は、センサ出力電流に対応した検出電圧Vr1を出力するものであり、電流電圧変換部として機能する。センサ電流検出部11は、シャント抵抗15の各端子間電圧、つまり検出電圧Vr1に基づいてセンサ出力電流を検出する。センサ電流検出部11は、センサ出力電流の検出結果を表す検出信号Cadを出力する。
【0020】
センサ電流検出部11から出力される検出信号Cadは、制御部8に与えられる。制御部8は、検出信号Cadに基づいて、A/Fセンサ2により検出されるA/FおよびA/Fセンサ2のインピーダンスを算出する。制御部8は、レジスタ16を備えており、そのレジスタ16には、制御部8により実行される各種の処理および制御において用いられる各種の値などが格納される。
【0021】
上記したような機能を実現するためのA/Fセンサ制御装置5の具体的な構成としては、例えば図2に示すような構成を採用することができる。図2に示すように、制御部8は、電圧制御部21、22、タイミング制御部23、復調部24、ローパスフィルタ25、演算部26などの機能ブロックを備えている。端子駆動部10は、前述したバッファアンプ13、14に加え、D/A変換器27、28を備えている。なお、本明細書では、ローパスフィルタのことをLPFと省略することがあるとともに、D/A変換器のことをDACと省略することがある。センサ電流検出部11は、チョッピングスイッチ29、全差動型のアンプ30、フィルタ回路31およびADC32を備えている。
【0022】
電圧制御部21は、DAC27に対し、制御電圧Vo1に対応したデジタル信号を与える。制御電圧Vo1は、例えば図3に示すように、一定の電圧値Vpを有する直流電圧である。これにより、直流電圧である制御電圧Vo1が、バッファアンプ13および出力端子P1を介してA/Fセンサ2の一方の端子に与えられる。電圧制御部22は、DAC28に対し、制御電圧Vo2に対応したデジタル信号を与える。
【0023】
制御電圧Vo2は、例えば図3に示すように、第1電圧値VHと第2電圧値VLとが掃引期間Ta毎に交互に切り替えられるパルス電圧である。これにより、パルス電圧である制御電圧Vo2が、バッファアンプ14および出力端子P2を介してA/Fセンサ2の他方の端子に与えられる。電圧制御部21、22の動作は、タイミング制御部23により制御される。
【0024】
シャント抵抗15の各端子間電圧、つまり検出電圧Vr1は、チョッピングスイッチ29に与えられている。検出電圧Vr1は、例えば図3に示すような波形となる。なお、図3では、センサ出力電流がA/Fセンサ制御装置5に流れ込む方向を正として検出電圧Vr1が表されている。チョッピングスイッチ29は、アナログ回路により構成されたものであり、検出電圧Vr1を入力し、検出電圧Vr1を正転した電圧および検出電圧Vr1を反転した電圧を所定のチョッピング期間Tb毎に交互に切り替えて出力する。
【0025】
チョッピングスイッチ29の動作は、制御部8のタイミング制御部23から出力されるチョッピング信号Vcにより制御される。チョッピング信号Vcは、例えば図3に示すような2値の信号である。チョッピングスイッチ29は、チョッピング信号Vcがハイレベルである期間、検出電圧Vr1を正転した電圧を出力するとともに、チョッピング信号Vcがロウレベルである期間、検出電圧Vr1を反転した電圧を出力する。タイミング制御部23は、チョッピング期間Tbが掃引期間Taの2以上の整数倍となるように、電圧制御部21、22およびチョッピングスイッチ29の動作を制御する。
【0026】
図3に示すように、本実施形態では、チョッピング期間Tbは、掃引期間Taの2倍、つまり「Tb=2×Ta」に設定されている。この場合、チョッピング信号Vcのエッジは、制御電圧Vo2の立ち下がりエッジに同期しており、これにより、チョッピングスイッチ29によるチョッピング動作が電圧制御部21、22による掃引動作に同期されている。なお、チョッピング信号Vcのエッジが、制御電圧Vo2の立ち上がりエッジに同期していてもよい。
【0027】
チョッピングスイッチ29から出力される電圧である検出電圧Vr2は、例えば図3に示すような波形となる。すなわち、検出電圧Vr2は、チョッピング信号Vcがハイレベルである期間には検出電圧Vr1とほぼ同じ電圧となっており、チョッピング信号Vcがロウレベルである期間には検出電圧Vr1を反転した電圧とほぼ同じ電圧となっている。なお、検出電圧Vr1と検出電圧Vr2との波形の形状が完全に一致していない理由は、次の通りである。すなわち、検出電圧Vr1から検出電圧Vr2への変換がアナログ回路によるものであり、チョッピングスイッチ29の切り替えタイミングにおけるセトリングが完全には間に合わず、その結果、検出電圧Vr1および検出電圧Vr2の各波形の形状に若干の差異が生じている。
【0028】
チョッピングスイッチ29から出力される検出電圧Vr2は、アンプ30に入力されている。アンプ30は、検出電圧Vr2を所定の増幅率で増幅して出力する。アンプ30の出力電圧は、フィルタ回路31を介してADC32に入力される。フィルタ回路31は、2つの抵抗R1、R2および1つのキャパシタC1から構成された1次のCRフィルタとなっている。フィルタ回路31から出力される電圧は、ADC32の入力電圧Vinとなる。入力電圧Vinは、例えば図3に示すように、検出電圧Vr2を所定の増幅率で増幅した電圧となっている。ADC32は、入力電圧Vinをデジタル信号に変換して出力する。センサ電流検出部11は、ADC32から出力されるデジタル信号を、検出信号Cadとして出力する。
【0029】
復調部24は、検出信号Cadを入力し、検出信号Cadを復調した検出信号Cdmを出力する。ここで言う「復調」とは、検出信号Cadについて、チョッピングスイッチ29の動作によって本来の値から反転されていた値を元に戻す動作のことである。復調部24の動作は、タイミング制御部23から出力されるチョッピング信号Vcにより制御される。具体的には、復調部24は、チョッピング信号Vcがハイレベルである期間、検出信号Cadを正転した信号を出力するとともに、チョッピング信号Vcがロウレベルである期間、検出信号Cadを反転した信号を出力する。
【0030】
復調部24から出力される信号である検出信号Cdmは、例えば図3に示すような波形となる。すなわち、検出信号Cdmは、チョッピング信号Vcがハイレベルである期間には入力電圧Vin、つまり検出信号Cadと同じ波形となっており、チョッピング信号Vcがロウレベルである期間には入力電圧Vin、つまり検出信号Cadを反転したものと同じ波形となっている。復調部24から出力される検出信号Cdmは、LPF25に入力される。
【0031】
LPF25は、デジタルフィルタであり、入力された検出信号Cdmの高周波成分を除去した信号を出力する。演算部26は、LPF25の出力信号に基づいて、A/Fセンサ2により検出されるA/FおよびA/Fセンサ2のインピーダンスを算出する。演算部26は、算出したA/Fおよびインピーダンスを表すデータを、通信部7を介してMCU4へ送信する。このように、上記構成では、制御部8は、チョッピングスイッチ29の動作を制御するとともに、チョッピングスイッチ29の出力電圧に基づいてA/Fセンサ2により検出されるA/Fを算出するようになっている。
【0032】
次に、演算部26によるA/Fおよびインピーダンスの具体的な算出手法について、図3のタイミングチャートを参照して説明する。まず、演算部26は、LPF25の出力信号をサンプルホールドすることにより、次のような各種の値を取得する。すなわち、演算部26は、チョッピング信号Vcがハイレベルである期間、電圧制御部22が制御電圧Vo2を第2電圧値VLから第1電圧値VHへと変更制御する直前のタイミング、つまり制御電圧Vo2の立ち上がりエッジの直前のタイミングにおいて検出信号Cdmが表す値を入力電圧に換算したものをAD変換結果ADLpとして取得する。
【0033】
演算部26は、チョッピング信号Vcがハイレベルである期間、電圧制御部22が制御電圧Vo2を第1電圧値VHから第2電圧値VLへと変更制御する直前のタイミング、つまり制御電圧Vo2の立ち下がりエッジの直前のタイミングにおいて検出信号Cdmが表す値を入力電圧に換算したものをAD変換結果ADHpとして取得する。演算部26は、チョッピング信号Vcがロウレベルである期間、制御電圧Vo2の立ち上がりエッジの直前のタイミングにおいて検出信号Cdmが表す値を入力電圧に換算したものをAD変換結果ADLmとして取得する。演算部26は、チョッピング信号Vcがロウレベルである期間、制御電圧Vo2の立ち下がりエッジの直前のタイミングにおいて検出信号Cdmが表す値を入力電圧に換算したものをAD変換結果ADHmとして取得する。
【0034】
演算部26は、連続した4つのAD変換結果を平均化するなどしてA/Fの値を算出する。つまり、この場合、A/F演算における移動平均のタップ数は「4」となる。具体的には、演算部26は、連続した4つのAD変換結果ADHp、ADLp、ADHm、ADLmなどを用いて、下記(1)式に基づいてセンサ出力電流のDC成分であるDC電流の電流値Is、つまりA/Fの値を算出する。ただし、Gはアンプ30の増幅率であり、Rsはシャント抵抗15の抵抗値である。
【0035】
【数1】
【0036】
演算部26は、連続した5つのAD変換結果ADHp、ADLm、ADHm、ADLp、ADHp’を用いて、下記(2)式に基づいてΔVadを算出する。なお、AD変換結果ADHp’は、AD変換結果ADHpが取得された後に最初に取得される別のAD変換結果ADHpである。そして、演算部26は、このようにして算出したΔVadなどを用いて、下記(3)式に基づいて、A/Fセンサ2のインピーダンスの値Zacを算出する。ただし、ΔVはセンサ印加電圧の振幅、つまり第1電圧値VHと第2電圧値VLとの差電圧である。
【0037】
【数2】
【0038】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態のA/Fセンサ制御装置5が備えるセンサ電流検出部11には、シャント抵抗15の各端子間電圧である検出電圧Vr1を入力し、その検出電圧Vr1を正転した電圧および検出電圧Vr1を反転した電圧を所定のチョッピング期間Tb毎に交互に切り替えて出力するチョッピングスイッチ29が設けられている。そして、制御部8は、チョッピングスイッチ29の動作を制御するとともにチョッピングスイッチ29の出力電圧である検出電圧Vr2を増幅およびA/D変換などすることにより得られる検出信号Cadに基づいてA/Fセンサ2により検出されるA/Fを算出するようになっている。
【0039】
このように、本実施形態のA/Fセンサ制御装置5は、従来技術において説明した空燃比センサ制御装置に対し、チョッピングスイッチ29が追加された構成となっている。上記構成において、チョッピング期間Tbは、センサ印加電圧の掃引期間Taの2以上の整数倍に設定されている。このようにすれば、チョッピングスイッチ29から出力される検出電圧Vr2が切り替わる動作、つまりチョッピングスイッチ29によるチョッピング動作が掃引期間Taに同期したものとなる。
【0040】
そのため、チョッピングスイッチ29から出力される検出電圧Vr2、ひいては検出信号Cadにおいて、A/Fセンサ2に流れる電流を検出するための構成であるセンサ電流検出部11、具体的にはアンプ30およびADC32といった検出系におけるオフセットが相殺される。したがって、上記構成によれば、回路構成としてチョッピングスイッチ29を追加するだけで、言い換えると、大幅な回路構成の追加を必要とすることなく、動的にオフセットを補償することができる。つまり、本実施形態によれば、回路規模の増大を抑制しつつ、オフセットに起因した検出誤差を低減することができるという優れた効果が得られる。なお、図3では、DC電流の電流値Isが0Aとなる、つまり「Is=0A」となるストイキの場合における各部の動作波形を例示している。A/Fセンサ制御装置では、ストイキにおいて、A/Fの検出について一層高い精度が要求されるが、本実施形態によれば、このような要求に対応することが可能となる。
【0041】
本実施形態では、チョッピング期間Tbは、掃引期間Taの2倍に設定されているため、次のような効果も得られる。すなわち、この場合、チョッピングスイッチ29によるチョッピング動作の速度が従来技術において説明した第1技術において用いられるチョッパーアンプに比べて低い速度となることから、制御クロックとなるチョッピング信号Vcによるノイズ、フィードスルーによる残存オフセットの影響を小さく抑えることができ、その結果、検出誤差の低減効果が高まる。
【0042】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について図4図8を参照して説明する。
第1実施形態では、図3に示したように、復調後の検出信号Cdmの波形に現れるひげ状のパルスであるグリッジが立ち上がり時と立ち下がり時とにおいて非対称となっている。具体的には、検出信号Cdmの立ち上がり時にはグリッジが現れるものの、検出信号Cdmの立ち下がり時にはグリッジが現れない。
【0043】
そのため、第1実施形態では、LPF25のセトリング誤差がサンプルホールドのタイミングまで残存する場合などには、検出信号Cdmの立ち上がり時の後にサンプルホールドして得られる値であるAD変換結果ADLp、ADLmがグリッジの影響を受けた値となるものの、検出信号Cdmの立ち下がり時の後にサンプルホールドして得られる値であるAD変換結果ADHp、ADHmはグリッジの影響を受けていない本来の値となる。そうすると、これらAD変換結果ADLp、ADLm、ADHp、ADHmを平均化するなどして算出されるA/Fの値に誤差が生じる可能性がある。
【0044】
本実施形態では、このような点を改善するため、制御部8のタイミング制御部23により実施される各種のタイミング制御の内容および演算部26により実施される各種の演算の内容が第1実施形態と異なっている。なお、A/Fセンサシステム1の構成は、第1実施形態と共通するため、図1および図2も参照しながら説明する。本実施形態のタイミング制御部23は、チョッピング期間Tbが掃引期間Taの奇数倍となるように、電圧制御部21、22およびチョッピングスイッチ29の動作を制御する。
【0045】
図4に示すように、本実施形態では、チョッピング期間Tbは、掃引期間Taの3倍、つまり「Tb=3×Ta」に設定されている。この場合、チョッピング信号Vcの立ち上がりエッジが制御電圧Vo2の立ち下がりエッジに同期するとともに、チョッピング信号Vcの立ち下がりエッジが制御電圧Vo2の立ち上がりエッジに同期しており、これにより、チョッピングスイッチ29によるチョッピング動作が電圧制御部21、22による掃引動作に同期されている。なお、チョッピング信号Vcの立ち上がりエッジが制御電圧Vo2の立ち上がりエッジに同期するとともに、チョッピング信号Vcの立ち下がりエッジが制御電圧Vo2の立ち下がりエッジに同期するようにしてもよい。
【0046】
次に、本実施形態の演算部26によるA/Fおよびインピーダンスの具体的な算出手法について、図4のタイミングチャートを参照して説明する。まず、演算部26は、LPF25の出力信号をサンプルホールドすることにより、次のような各種の値を取得する。すなわち、演算部26は、チョッピング信号Vcがハイレベルである期間、制御電圧Vo2の立ち上がりエッジの直前のタイミングにおいて検出信号Cdmが表す値を入力電圧に換算したものをAD変換結果ADLp1、ADLp2として取得する。
【0047】
演算部26は、チョッピング信号Vcがハイレベルである期間、制御電圧Vo2の立ち下がりエッジの直前のタイミングにおいて検出信号Cdmが表す値を入力電圧に換算したものをAD変換結果ADHpとして取得する。演算部26は、チョッピング信号Vcがロウレベルである期間、制御電圧Vo2の立ち下がりエッジの直前のタイミングにおいて検出信号Cdmが表す値を入力電圧に換算したものをAD変換結果ADHm1、ADHm2として取得する。演算部26は、チョッピング信号Vcがロウレベルである期間、制御電圧Vo2の立ち上がりエッジの直前のタイミングにおいて検出信号Cdmが表す値を入力電圧に換算したものをAD変換結果ADLmとして取得する。
【0048】
演算部26は、連続した6つのAD変換結果を平均化するなどしてA/Fの値を算出する。つまり、この場合、A/F演算における移動平均のタップ数は「6」となる。具体的には、演算部26は、連続した6つのAD変換結果ADLp1、ADHp、ADLp2、ADHm1、ADLm、ADHm2などを用いて、下記(4)式に基づいてセンサ出力電流のDC成分であるDC電流の電流値Is、つまりA/Fの値を算出する。
【0049】
【数3】
【0050】
演算部26は、連続した7つのAD変換結果ADLp1、ADHp、ADLp2、ADHm1、ADLm、ADHm2、ADLp1’を用いて、下記(5)式に基づいてΔVadを算出する。なお、AD変換結果ADLp1’は、AD変換結果ADLp1が取得された後に最初に取得される別のAD変換結果ADLp1である。そして、演算部26は、このようにして算出したΔVadなどを用いて、第1実施形態において説明した(3)式に基づいて、A/Fセンサ2のインピーダンスの値Zacを算出する。
【0051】
【数4】
【0052】
以上説明した本実施形態によっても、第1実施形態と同様、チョッピング動作が掃引期間Taに同期したものとなるため、チョッピングスイッチ29から出力される検出電圧Vr2、ひいては検出信号Cadにおいて、アンプ30およびADC32といった検出系におけるオフセットが相殺される。したがって、本実施形態によっても、回路規模の増大を抑制しつつ、オフセットに起因した検出誤差を低減することができるという効果が得られる。
【0053】
本実施形態では、チョッピング期間Tbは、掃引期間Taの奇数倍、具体的には掃引期間Taの3倍に設定されているため、次のような効果も得られる。すなわち、本実施形態では、図4に示すように、復調後の検出信号Cdmには、立ち上がり時および立ち下がり時の両方にグリッジが現れている。つまり、本実施形態では、検出信号Cdmの波形に現れるグリッジは、検出信号Cdmの立ち上がり時と立ち下がり時とにおいて対称となっている。
【0054】
そのため、本実施形態では、LPF25のセトリングタイムが長引くなどするセトリング誤差が、A/Fの値などの演算に影響を及ぼすことが抑制され、その結果、A/Fの値の検出誤差を一層低減することができる。また、本実施形態では、このようにLPF25のセトリング誤差がA/Fの値などの演算に及ぼす影響を小さく抑えられることから、LPF25として、より強力なフィルタリング特性を有するフィルタを採用することが可能となり、その結果、ノイズ耐性を向上することができるという効果も得られる。
【0055】
第1実施形態において、上述したようなグリッジの影響は、電流値Isが0Aではない、つまり「Is≒0A」となる場合において一層顕著なものとなるが、本実施形態では、この点についても改善が図られている。以下、このような改善の内容について、図5図8のタイミングチャートを参照して説明する。なお、図5は、第1実施形態において電流値Isが負の値である場合、つまり「Is<0A」の場合における各部の動作波形を示しており、図6は、第1実施形態において電流値Isが正の値である場合、つまり「Is>0A」の場合における各部の動作波形を示している。また、図7は、本実施形態において「Is<0A」の場合における各部の動作波形を示しており、図8は、本実施形態において「Is>0A」の場合における各部の動作波形を示している。
【0056】
図5および図6に示すように、第1実施形態では、電流値Isが負の値であるとき、電流値Isが正の値であるときに比べ、グリッジが大きなものとなり、グリッジの影響が大きくなる。そのため、第1実施形態では、電流値Isの正負でグリッジの影響が平均化されることがなく、検出誤差の最大値が大きなものとなる。なお、第1実施形態において、チョッピング動作によるグリッジの影響は、電流値Isの符号と、掃引期間Taおよびチョッピング期間Tbの同期状態に依存する。これに対し、図7および図8に示すように、本実施形態では、電流値Isの絶対値が等しい場合には電流値Isが負の値であるときと電流値Isが正の値であるときとにおいてグリッジの影響が等しいものとなる。そのため、本実施形態では、電流値Isの正負でグリッジの影響が平均化され、検出誤差の最大値が低く抑えられる。
【0057】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について図9を参照して説明する。
上記各実施形態の構成において、チョッピングスイッチ29によるチョッピング動作を行わない場合には従来技術の構成と同等のものとなる。以下、このような構成のことを従来構成と称することとする。従来構成によれば、チョッピング動作が行われる上記各実施形態に比べ、A/Fの値などの検出のリアルタイム性、つまり応答性を高めることができるものの、検出誤差が生じ易くなる。また、第1実施形態によれば、第2実施形態に比べ、チョッピング期間Tbが短いとともにA/F演算における移動平均のタップ数が小さいため、A/Fの値などの検出の応答性を高めることができるものの、検出誤差低減の効果が小さくなる。
【0058】
すなわち、検出の応答性は、「第2実施形態」<「第1実施形態」<「従来構成」という順に高くなり、検出精度は、「従来構成」<「第1実施形態」<「第2実施形態」という順に高くなる。検出の応答性の低下の許容範囲はシステムに依存する。一般的に、センサ印加電圧の周波数である掃引周波数が数kHz程度であるのに対し、システムの応答性は数百Hz以下である。そのため、第2実施形態における検出の応答性であれば、一般的なシステムであれば許容することができる。
【0059】
このような点を踏まえると、上記した各構成を組み合わせれば検出の応答性および検出精度の両立を図ることが可能になると考えられる。そこで、第3実施形態では、制御部8は、チョッピングスイッチ29の動作を有効化または無効化することができる構成となっている。また、制御部8は、チョッピング期間Tbを可変設定することができる構成となっている。この場合、チョッピング期間Tbは、レジスタ16に格納されるようになっており、その値はレジスタ16の設定により可変となっている。
【0060】
具体的には、制御部8は、チョッピング期間Tbを、第1実施形態におけるチョッピング期間「Tb=2×Ta」である第1期間Tb1と、第2実施形態におけるチョッピング期間「Tb=3×Ta」である第2期間Tb2と、のいずれかに切り替えることができる構成となっている。また、制御部8は、このようなチョッピング期間の切り替えに応じて、演算における移動平均のタップ数、つまり演算タップ数も切り替えるようになっている。つまり、本実施形態では、制御部8は、動的に、チョッピング期間Tbおよび演算タップ数を切り替えるようになっている。
【0061】
次に、このような本実施形態の具体的な適用例について図9のフローチャートに沿って説明する。制御部8は、図9に示すような内容の処理を所定の周期毎に実行するようになっている。まず、ステップS100では、アクセルの踏み込み量が取得される。この場合、制御部8は、アクセルの踏み込み量について、例えば「大」、「中」、「小」の3段階で判定することができるようになっている。ステップS200では、アクセルの踏み込み量が「大」であるか否かが判断される。
【0062】
アクセルの踏み込み量が「大」であると判定されていた場合、ステップS200で「YES」となり、ステップS300に進む。ステップS300では、チョッピングスイッチ29の動作が無効化される、つまり「チョッピング動作=無し」に設定される。ステップS300の実行後、本処理が終了となる。一方、アクセルの踏み込み量が「中」または「小」であると判定されていた場合、ステップS200で「NO」となり、ステップS400に進む。ステップS400では、チョッピングスイッチ29の動作が有効化される、つまり「チョッピング動作=有り」に設定される。
【0063】
ステップS400の実行後はステップS500に進み、アクセルの踏み込み量が「中」であるか否かが判断される。アクセルの踏み込み量が「中」であると判定されていた場合、ステップS500で「YES」となり、ステップS600に進む。ステップS600では、チョッピング期間が第1期間Tb1に設定される。一方、アクセルの踏み込み量が「小」であると判定されていた場合、ステップS500で「NO」となり、ステップS700に進む。ステップS700では、チョッピング期間が第2期間Tb2に設定される。ステップS600またはS700の実行後、本処理が終了となる。
【0064】
アクセルが大きく踏み込まれたときなどにはA/Fの値が急激に変化するため、A/Fの値の演算には一層リアルタイム性が求められる一方で、検出精度についてはそれほど高いものが要求されることはない。これに対し、アクセルがあまり踏み込まれないときなどにはストイキ近傍となってA/Fの値があまり変化しないため、A/Fの値の演算には非常に高い精度が要求される一方で、演算のリアルタイム性はあまり求められない。そこで、上記した適用例では、アクセルの踏み込み量に応じて、チョッピング動作の有無が切り替えられるとともに、チョッピング期間が切り替えられるようになっている。
【0065】
具体的には、上記した適用例によれば、アクセルの踏み込み量が「大」であるときには、チョッピング動作が無しとされることにより、検出精度は低下するものの、検出の応答性を最大限に高めることができる。また、上記した適用例によれば、アクセルの踏み込み量が「小」であるときには、チョッピング動作が有りとされるとともにチョッピング期間が第2期間Tb2とされることにより、検出の応答性は低下するものの、検出精度を最大限に高めることができる。また、上記した適用例によれば、アクセルの踏み込み量が「中」であるときには、チョッピング動作が有りとされるとともにチョッピング期間が第1期間Tb1とされることにより、検出の応答性および検出精度の双方を要求される水準に達する程度に高めることができる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態では、制御部8がチョッピング動作を有効化または無効化することができるとともに、チョッピング期間を可変設置することができる構成となっている。つまり、本実施形態の制御部8は、動的に、チョッピング動作の有無を切り替えるとともに、チョッピング期間および演算タップ数を切り替えるようになっている。このようにすれば、検出精度を良好に維持しつつも必要な期間だけ応答性を高めるという具合に、検出の応答性および検出精度の両立を図ることができる。
【0067】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0068】
チョッピング期間は、掃引期間の2以上の整数倍に設定されていればよい。例えば、チョッピング期間は、掃引期間の4倍、6倍など、掃引期間の4以上の偶数倍に設定することができる。この場合、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、例えば、チョッピング期間は、掃引期間の5倍、7倍など、掃引期間の5以上の奇数倍に設定することができる。この場合、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0069】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0070】
1…A/Fセンサシステム、2…A/Fセンサ、5…A/Fセンサ制御装置、8…制御部、10…端子駆動部、15…シャント抵抗、29…チョッピングスイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9