(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】ハニカムコア
(51)【国際特許分類】
B32B 3/12 20060101AFI20241217BHJP
E04C 2/36 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
B32B3/12 B
E04C2/36 A
(21)【出願番号】P 2021039264
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】大久保 洋志
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-095940(JP,A)
【文献】特開平10-329250(JP,A)
【文献】特開平09-290470(JP,A)
【文献】特開平06-218855(JP,A)
【文献】特開2015-199316(JP,A)
【文献】特開2015-199320(JP,A)
【文献】特開平11-078874(JP,A)
【文献】特開平10-273042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B21D47/00-55/00
B64B1/00-1/70
B64C1/00-99/00
B64D1/00-47/08
B64F1/00-5/60
B64G1/00-99/00
E04B1/38-1/99
E04C2/00-2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル壁と、前記セル壁によって区画された複数のセルとからなるハニカムコアであって、当該ハニカムコアの少なくとも一部では、
前記ハニカムコアの厚さ方向に直交する断面において前記セル壁が画定する前記複数のセルの各々の輪郭形状は、凹X角形であり、
前記セル壁は、リボン方向に対して斜め方向に延在して隣接する2つのセルを区画する複数の斜方壁部を有し、
前記複数の斜方壁部の各々の端部は、前記複数のセルのうち互いに隣接する少なくとも3つのセルが共有する第1稜線であり、
前記複数の斜方壁部の各々は、前記ハニカムコアの厚さ方向に延びる直線状の2n本の第2稜線に沿って折り曲げられ、
前記複数のセルの各々の前記凹X角形において、リボン方向における当該凹X角形の端部に位置する端部頂点から起算して2番目からn+1番目までの各頂点における内角は凹角であり、n+2番目から2n+2番目までの各頂点における内角は凸角である、ハニカムコア。
ただし、X:8n+2k(nは
2以上の自然数、kは2または3)
【請求項2】
前記複数のセルの各々の前記凹X角形において、前記端部頂点と、当該端部頂点から起算してn+1番目の頂点と、の間に存在する辺の長さは、前記端部頂点から起算してn+1番目の頂点とn+2番目の頂点との間の辺の長さよりも短い、請求項
1に記載のハニカムコア。
【請求項3】
前記複数のセルの各々の前記凹X角形において、全ての辺の長さが同じである、請求項
1に記載のハニカムコア。
【請求項4】
前記複数のセルの各々の前記凹X角形において、前記端部頂点と、当該端部頂点から起算してn+1番目の頂点と、の間に存在する辺の長さは、前記端部頂点から起算してn+1番目の頂点とn+2番目の頂点との間の辺の長さよりも長い、請求項
1に記載のハニカムコア。
【請求項5】
セル壁と、前記セル壁によって区画された複数のセルとからなるハニカムコアであって、当該ハニカムコアの少なくとも一部では、
前記ハニカムコアの厚さ方向に直交する断面において前記セル壁が画定する前記複数のセルの各々の輪郭形状は、凹X角形であり、
前記セル壁は、リボン方向に対して斜め方向に延在して隣接する2つのセルを区画する複数の斜方壁部を有し、
前記複数の斜方壁部の各々の端部は、前記複数のセルのうち互いに隣接する少なくとも3つのセルが共有する第1稜線であり、
前記複数の斜方壁部の各々は、前記ハニカムコアの厚さ方向に延びる直線状の2n本の第2稜線に沿って折り曲げられ、
前記複数のセルの各々の前記凹X角形において、リボン方向における当該凹X角形の端部に位置する端部頂点から起算して2番目からn+1番目までの各頂点における内角は凹角であり、n+2番目から2n+2番目までの各頂点における内角は凸角であり、
前記複数のセルの各々の前記凹X角形において、全ての辺の長さが同じである、ハニカムコア。
ただし、X:8n+2k(nは自然数、kは2または3)
【請求項6】
セル壁と、前記セル壁によって区画された複数のセルとからなるハニカムコアであって、当該ハニカムコアの少なくとも一部では、
前記ハニカムコアの厚さ方向に直交する断面において前記セル壁が画定する前記複数のセルの各々の輪郭形状は、凹X角形であり、
前記セル壁は、リボン方向に対して斜め方向に延在して隣接する2つのセルを区画する複数の斜方壁部を有し、
前記複数の斜方壁部の各々の端部は、前記複数のセルのうち互いに隣接する少なくとも3つのセルが共有する第1稜線であり、
前記複数の斜方壁部の各々は、前記ハニカムコアの厚さ方向に延びる直線状の2n本の第2稜線に沿って折り曲げられ、
前記複数のセルの各々の前記凹X角形において、リボン方向における当該凹X角形の端部に位置する端部頂点から起算して2番目からn+1番目までの各頂点における内角は凹角であり、n+2番目から2n+2番目までの各頂点における内角は凸角であり、
前記複数のセルの各々の前記凹X角形において、前記端部頂点と、当該端部頂点から起算してn+1番目の頂点と、の間に存在する辺の長さは、前記端部頂点から起算してn+1番目の頂点とn+2番目の頂点との間の辺の長さよりも長い、ハニカムコア。
ただし、X:8n+2k(nは自然数、kは2または3)
【請求項7】
前記複数のセルの各々の前記凹X角形は、凹14角形である、請求項5又は6に記載のハニカムコア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカムコアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、金属繊維に樹脂を組み合わせた複合材製の帯状の箔材を、コルゲートローラー間に通し該金属繊維の塑性変形を利用して、三角形の波形の凹凸が連続的に折曲形成された波板にコルゲート成形し、次に、該波板の頂部又は谷部について1条おきに接着剤を塗布すると共に、該波板を所定長さ毎に切断し、それから、該接着剤が塗布された位置が上下の該波板相互間で順次交互にずれる位置関係で、複数枚の該波板を重積した後、加熱加圧により該波板間を接着し、しかる後、このように接着された該波板を、重積方向に引張り力を加えて展張することにより、各セル壁が途中で折曲され各セルが丸味を帯びた略凸字状をなす、中空柱状の該セルの平面的集合体よりなるフレキシブルハニカムコアを得る、フレキシブルハニカムコアの製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記フレキシブルコアでは、各セルが丸みを帯びた略凸字状をなすようにセル壁が折り曲げられている。このような曲面で折り曲げられたセル壁からなるハニカムコアは、ハニカムコアの厚さ方向に対して垂直な方向に荷重が入力されることにより、変形するおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、ハニカムコアを被設置部の曲面状の表面に沿わせて配置した際の、ハニカムコアの厚さ方向に対して垂直な方向に荷重が入力されることによる、ハニカムコアの変形を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかるハニカムコアは、少なくともその一部で、厚さ方向に直交する断面においてセル壁が画定する複数のセルの各々の輪郭形状が、凹X角形である。セル壁が備える複数の斜方壁部の各々は、ハニカムコアの厚さ方向に延びる直線状の2n本の第2稜線に沿って折り曲げられる。複数のセルの各々の凹X角形において、リボン方向における当該凹X角形の端部に位置する端部頂点から起算して2番目からn+1番目までの各頂点における内角は凹角であり、n+2番目から2n+2番目までの各頂点における内角は凸角である。ただし、X:8n+2k(nは自然数、kは2または3)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハニカムコアを被設置部の曲面状の表面に沿わせて配置した際の、ハニカムコアの厚さ方向に対して垂直な方向に荷重が入力されることによる、ハニカムコアの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るハニカムコアの少なくとも一部を示す平面図であって、当該ハニカムコアを平面状の表面に配置した状態を示す図である。
【
図2】
図1に係るハニカムコアの一部を構成するセル壁及びセルを示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係るハニカムコアを被設置部の曲面状の表面に沿わせて配置した状態を示す平面図である。
【
図4】実施形態に係るハニカムコアの作用を説明するための図であって、
図3に係るハニカムコアの一部の状態を示す斜視図である。
【
図5】実施形態に係るハニカムコアの作用を説明するための図であって、当該ハニカムコアを被設置部の曲面状の表面に沿わせて配置した状態における、セル壁の一部を示す模式的部分斜視図である。
【
図6】実施形態の変形例に係るハニカムコアの少なくとも一部を示す平面図であって、当該ハニカムコアを平面状の表面に配置した状態を示す図である。
【
図7】
図6に係るハニカムコアの一部を構成するセル壁及びセルを示す斜視図である。
【
図8】実施形態の変形例に係るハニカムコアの作用を説明するための図であって、当該ハニカムコアを被設置部の曲面状の表面に沿わせて配置した状態における、当該ハニカムコアの一部の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るハニカムコアについて説明する。なお、各図中のWはハニカムコアの幅方向を示し、Lはハニカムコアのリボン方向を示し、Tはハニカムコアの厚さ方向を示す。また、ハニカムコアの斜め方向とは、ハニカムコアの厚さ方向に対して垂直かつ、ハニカムコアの幅方向とリボン方向の双方と交差する方向をいう。また、ハニカムコア下面とは、ハニカムコアの厚さ方向一側の側面であって、被設置部側の面のことをいう。また、ハニカムコア上面とは、ハニカムコアの厚さ方向他側の側面であって、被設置部側とは反対側の面のことをいう。なお、以下の説明では、ハニカムコアの幅方向、ハニカムコアのリボン方向、ハニカムコアの厚さ方向、ハニカムコアの斜め方向を、それぞれ単に「幅方向」、「リボン方向」、「厚さ方向」、「斜め方向」と称する。また、同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1及び
図2、又は
図6及び
図7に示すように、実施形態又はその変形例に係るハニカムコア1,1Aは、セル壁10と、セル壁10によって区画された複数のセル20とから構成される。
【0011】
ハニカムコア1,1Aは、その厚さ方向における一側と他側に表皮板(図示せず)を接着剤等の接合手段を用いて接合することにより、サンドイッチパネルを構成することができる。なお、表皮板は、ハニカムコア1,1Aを接合するための平面状または曲面状の表面を備える板状の部材であり、例えばアルミニウム等の金属や、繊維強化樹脂(FRP)から構成されている。繊維強化樹脂としては、炭素繊維強化樹脂(CFRP)、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)、アラミド繊維強化樹脂(AFRP)等を用いることができる。また、実施形態にかかるハニカムコア1,1Aを用いたサンドイッチパネルは、例えば図示しない自動車のルーフ、フロア、フード、又はホイルハウス等を構成するパネルとして用いることができる。なお、ハニカムコア1,1Aのリボン方向、幅方向、又は厚さ方向の寸法は、当該ハニカムコア1,1Aの用途により適宜決定することができる。
【0012】
セル壁10は、リボン方向及び幅方向に延在する、ハニカムコア1,1Aの厚さ方向に所定の高さをもった部材である。セル壁10は、ハニカムコア1,1Aの厚さ方向に延びる直線状の折り目(稜線)に沿って複数個所で折り曲げられ、当該厚さ方向に開口するとともに、当該厚さ方向に直交する断面が凹X角形形状の柱状の空間である、複数のセル20を画定する。換言すれば、セル壁10は、ハニカムコア1,1Aの厚さ方向に対して直交する閉断面を形成することによって、複数のセル20を区画する。なお、
図1及び
図6に示した例では、セル壁10により合計13個のセル20が画定されているが、これに限定されず、13個未満または14個以上のセル20が画定されていてもよい。
【0013】
セル壁10は、第1稜線30同士の間において、リボン方向に対して斜め方向に延在し、隣接する2つのセル20を区画する複数の斜方壁部15を備える。また、複数の斜方壁部15の各々の端部は、複数のセル20のうち互いに隣接する少なくとも3つのセル20が共有する第1稜線30である。図示した例では、第1稜線30は、セル壁10の稜線であって、複数のセル20のうち互いに隣接する3つのセル20が共有する稜線である。
【0014】
セル壁10が備える複数の斜方壁部15の各々は、ハニカムコア1,1Aの厚さ方向に延びる直線状の2n本の第2稜線40に沿って折り曲げられている(ただし、nは自然数である)。また、複数のセル20の各々の、ハニカムコア1,1Aの厚さ方向に直交する断面における輪郭形状(以下、単に「輪郭形状」という)は、X:8n+2k(kは2または3)で表される凹X角形となる。
【0015】
また、複数のセル20の各々の輪郭形状である凹X角形は、リボン方向における当該凹X角形の端部に位置する端部頂点45を備える。そして、当該端部頂点45を1番目として数えて(当該端部頂点45から起算して)、2番目からn+1番目までの各頂点における内角は凹角であり、n+2番目から2n+2番目までの各頂点における内角は凸角である。なお、「起算して」とは、数を数える際に、始点を1番目として全体の数に含める数え方をいう。
【0016】
また、複数のセル20の各々の輪郭形状である凹X角形において、端部頂点45と、当該端部頂点45から起算してn+1番目の頂点と、の間に存在する辺の長さは、当該端部頂点45から起算してn+1番目の頂点とn+2番目の頂点との間の辺の長さよりも短い。
【0017】
図1及び
図2に示す例では、複数のセル20の各々の輪郭形状は凹14角形である(n=1,k=3)。セル壁10が備える複数の斜方壁部15の各々は、ハニカムコア1の厚さ方向に延びる直線状の2本の第2稜線40に沿って折り曲げられる。
【0018】
複数の斜方壁部15の各々には、第1稜線30と、第2稜線40のうち第1稜線30から起算して2番目の稜線(折返し部40a)と、の間に延在する端部壁部15aが形成される。また、折返し部40aを挟んで端部壁部15aと隣接する中間壁部15bが形成される。よって、折返し部40aは端部壁部15aと中間壁部15bとの境界となる稜線である。また、同じ第1稜線30を共有し幅方向に対向する2つの端部壁部15aによって突出部18が構成される。さらに、セル壁10は、リボン方向に延在し、隣接する2つのセル20を幅方向において区画する複数の接合壁部12を備える。複数の接合壁部12の各々のリボン方向における端部は第1稜線である。
【0019】
図示された凹14角形は、当該凹14角形のリボン方向における端部に位置する、端部頂点45を有する。ハニカムコア1の厚さ方向と平行な軸方向視(厚さ方向視)において、端部頂点45は、突出部18を構成する第1稜線30に対応する頂点である。また、端部頂点45から起算して2番目の頂点、および3番目の頂点は折返し部40aに対応する頂点である。また、端部頂点45から起算して4番目の頂点は、斜方壁部15の端部である第1稜線30のうち、端部頂点45に対応する第1稜線30とは異なる第1稜線30に対応する頂点である。
【0020】
さらに、複数のセル20の各々の輪郭形状である凹14角形において、端部頂点45から起算して2番目の頂点における内角は凹角であり、3番目及び4番目の各頂点における内角は凸角である。また、当該凹14角形において、端部頂点45における内角は凸角である。
【0021】
図示された凹14角形では、端部頂点45と、当該端部頂点45から起算して2番目の頂点と、の間に存在する辺の長さは、端部頂点45から起算して2番目の頂点と3番目の頂点との間の辺の長さよりも短い。換言すれば、セル壁10が備える中間壁部15bの、ハニカムコア1の厚さ方向における端部(底辺)は、端部壁部15aの底辺よりも長く構成されている。
【0022】
次に、nが2以上である場合の一例として、
図6及び
図7を参照し、実施形態の変形例に係るハニカムコア1Aについて説明する。ハニカムコア1Aでは、複数のセル20の各々の輪郭形状は凹22角形である(n=2,k=3)。セル壁10は、複数の斜方壁部15の各々が、ハニカムコア1Aの厚さ方向に延びる直線状の4本の第2稜線40に沿って折り曲げられている。
【0023】
複数の斜方壁部15の各々には、第1稜線30と、第2稜線40のうち第1稜線30から起算して3番目の稜線(折返し部40a)と、の間に延在する端部壁部15aが形成される。また、端部壁部15aは、第2稜線40のうち第1稜線30から起算して2番目の稜線(中間折返し部40b)を備える。よって、端部壁部15aは、中間折返し部40bを境界として、ハニカムコア1Aの厚さ方向を長尺方向とする2つの矩形の領域により構成されることとなる。また、折返し部40aを挟んで端部壁部15aと隣接する中間壁部15bが形成される。
【0024】
図示された凹22角形では、端部頂点45から起算して3番目の頂点、および4番目の頂点は折返し部40aに対応する頂点である。また、端部頂点45から起算して2番目の頂点、および5番目の頂点は中間折返し部40bに対応する頂点である。そして、端部頂点45から起算して6番目の頂点は、斜方壁部15の端部である第1稜線30のうち、端部頂点45に対応する第1稜線30とは異なる第1稜線30に対応する頂点である。
【0025】
さらに、複数のセル20の各々の輪郭形状である凹22角形において、端部頂点45から起算して2番目から3番目までの各頂点における内角は凹角であり、4番目から6番目までの各頂点における内角は凸角である。また、当該凹22角形において、端部頂点45における内角は凸角である。
【0026】
また、図示された凹22角形では、端部頂点45と、当該端部頂点45から起算して3番目の頂点と、の間に存在する辺の長さは、端部頂点45から起算して3番目の頂点と4番目の頂点との間の辺の長さよりも短い。換言すれば、セル壁10が備える中間壁部15bの、ハニカムコア1Aの厚さ方向における端部(底辺)は、端部壁部15aの底辺よりも長く構成されている。
【0027】
なお、ここではn=2,k=3として、複数のセル20の各々の輪郭形状が凹22角形のハニカムコア1Aを例示したが、nは2より大きくてもよい。例えばn=3,k=3の場合には、複数のセル20の各々の輪郭形状は凹30角形となる。その場合には、複数の斜方壁部15の各々は、折返し部40aとして、第2稜線40のうち第1稜線30から起算して4番目の稜線を備えることとなる。そして、端部壁部15aは、中間折返し部40bとして、第2稜線40のうち第1稜線30から起算して2番目の稜線と3番目の稜線を備えることとなる。このように、nが2以上である場合には、端部壁部15aに、少なくとも1本の中間折返し部40bが形成される。
【0028】
なお、
図1及び
図2、または
図6及び
図7に示した例ではセル壁10は接合壁部12を備えるが、接合壁部12は形成されていなくてもよい。そのような実施形態では、第1稜線30は、互いに隣接する4つのセル20により共有される。換言すれば、第1稜線は、複数のセル20のうち互いに隣接する少なくとも3つのセルが共有する稜線である。そして、セル壁10が画定する複数のセル20の各々の輪郭形状は凹12角形(n=1,k=2)または、凹20角形(n=2,k=2)となる。
【0029】
(製造方法)
ハニカムコア1,1Aは、コルゲート法、展張法等、周知の方法により製造することができる。
【0030】
例えば、コルゲート法においては、ハニカムコア1,1Aの材料となるシート材(母材)をコルゲートローラ間に通し、第1稜線30又は第2稜線40に相当する稜線を形成したコルゲートシートを、ハニカムコア1,1Aの幅方向に相当する方向に向けて積層する。そして、コルゲートシートにおける、例えばセル壁10の接合壁部12に相当する壁面のような所定の接合部同士を、接着剤等の接合手段により接合することにより、ハニカムコア1,1Aを得ることができる。なお、第1稜線30に相当する稜線と、第2稜線40に相当する稜線とは、別々のコルゲートローラを用いて形成してもよい。このようにして得られたハニカムコア1,1Aは所望の厚さに応じて切断されてもよい。
【0031】
シート材としては、例えば、アルミニウム等の金属箔、繊維強化プラスチック(FRP)シート、紙材等を使用することができる。シート材の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.01~0.5mm程度である。
【0032】
FRPシートの材料としては、例えば、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等が挙げられる。これらのマトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することができる。
【0033】
紙材は、クラフト紙、混抄紙等を使用することができる。混抄紙の例としては、合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維等とパルプ繊維とからなる混抄紙が挙げられる。紙材には、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂を塗布、含侵、ラミネート等することで、耐水性を付与してもよい。
【0034】
なお、ハニカムコア1,1Aの厚さは、特に限定されず、例えば、3mm~20mm程度とすることができる。複数のセル20の各々のリボン方向、幅方向、又は厚さ方向の寸法は、ハニカムコア1,1Aの用途により適宜決定することができる。例えば、ハニカムコア1,1Aの幅方向における複数のセル20の各々の寸法は、3mm~30mmとしてもよい。
【0035】
この他の製造方法として、ハニカムコア1,1Aは、ハニカムコア1,1Aの厚さ方向に直交する方向において、複数のセル20の各々の輪郭形状に相当する形状の閉断面を形成し、当該厚さ方向に延伸する中空の凹X角形柱状に形成したセル壁10を、リボン方向及び幅方向に向けて複数隙間なく並列配置することにより構成されてもよい。その場合には、凹X角形柱状に形成したセル壁10同士について、隣接する斜方壁部15、又は隣接する接合壁部12の少なくともいずれか一方同士を接着剤等の接合手段により接合することができる。
【0036】
次に、
図3乃至
図5、及び
図8を参照しながら、ハニカムコア1,1Aを被設置部100の曲面状の表面に沿わせて配置したときの、実施形態に係るハニカムコア1,1Aの作用効果を説明する。
【0037】
図3に示すように、
図1及び
図2に例示したハニカムコア1を被設置部100の曲面状の表面に沿わせて配置したとき、ハニカムコア下面側ではセル20を縮小させようとする力が働き、ハニカムコア上面側ではセル20を拡大しようとする力が働く。そのため、ハニカムコア上面側におけるセル20の断面と、ハニカムコア下面側におけるセル20の断面との間には、面積差が生じることとなる。これにより、突出部18を構成する端部壁部15a同士の間隔を変化させようとする力が働く。
【0038】
図4に示す例では、同図における左方の突出部18には、当該突出部18を構成する端部壁部15a同士の間隔について、ハニカムコア下面側では縮小しようとする力が働き、ハニカムコア上面側では拡大しようとする力が働く。そのため、ハニカムコア下面側では折返し部40a同士の間隔が縮小し、ハニカムコア上面側では折返し部40a同士の間隔が拡大する。その結果、折返し部40aは他の稜線に対して相対的に傾くこととなる。そして、稜線は各々剛性を備えるため、斜方壁部15を構成する端部壁部15a及び中間壁部15bの少なくとも1つに対して、その端部の各々の稜線からねじりモーメントが入力される。そのようなねじりモーメントが入力された壁面は、その対角線に沿った折り目を生じさせながら折れ、ねじりモーメントを吸収することとなる。例えば、
図5に模式的に示す中間壁部15bのように、折返し部40aから入力されたねじりモーメントを、対角線50に沿った折り目(稜線)を形成しながら折れることで吸収する。なお、
図5では、稜線が同図左下から右上へと向かう対角線50に沿って形成された場合を例示したが、これに限定されない。同図右下から左上へと向かう対角線に沿って稜線が形成されてもよく、いずれの対角線に沿って稜線が生じるかは、ハニカムコア1を被設置部100の曲面状の表面に沿わせて配置する際の曲げ方や、セル壁10に含まれる壁面各々の相対的位置関係によって、適宜定まる。
【0039】
また、例えば、
図6及び
図7に示すハニカムコア1Aを被設置部100の曲面状の表面に沿わせて配置した場合について、
図8を参照し説明する。
図8における左方及び右方の突出部18にはいずれも、当該突出部18を構成する端部壁部15a同士の間隔について、ハニカムコア下面側では縮小しようとする力が働き、ハニカムコア上面側では拡大しようとする力が働いている。そのため、突出部18と、これに隣接する中間壁部15bとの境界をなす折返し部40aは、他の稜線に対して相対的に傾くこととなる。その結果、中間壁部15bは、折返し部40aから入力されたねじりモーメントを、対角線50に沿った稜線を生じさせながら折れることで吸収する。
【0040】
このように、実施形態に係るハニカムコア1,1Aでは、被設置部100の曲面状の表面に沿わせて配置されたときであっても、セル壁10が稜線で折り曲げられ、複数のセル20の各々を画定することとなる。従って、セル壁10が曲面で折り曲げられ、複数のセル20の各々を画定する場合に比べ、ハニカムコア1,1Aの、その厚さ方向に対して垂直な方向に入力される荷重に対する剛性(せん断剛性)を高めることができる。
【0041】
なお、ハニカムコア1,1Aを被設置部100の曲面に沿わせて配置したことにより斜方壁部15に生じるねじりモーメントは、端部壁部15aがその対角線50に沿った稜線を生じさせながら折れることにより吸収されてもよい。
【0042】
(1)実施形態に係るハニカムコア1,1Aは、セル壁10と、セル壁10によって区画された複数のセル20とからなるハニカムコア1,1Aであって、当該ハニカムコア1,1Aの少なくとも一部では、ハニカムコア1,1Aの厚さ方向に直交する断面においてセル壁10が画定する複数のセル20の各々の輪郭形状は、凹X角形であり、セル壁10は、リボン方向に対して斜め方向に延在して隣接する2つのセル20を区画する複数の斜方壁部15を有し、複数の斜方壁部15の各々の端部は、複数のセル20のうち互いに隣接する少なくとも3つのセル20が共有する第1稜線30であり、複数の斜方壁部15の各々は、ハニカムコア1,1Aの厚さ方向に延びる直線状の2n本の第2稜線40に沿って折り曲げられ、複数のセル20の各々の凹X角形において、リボン方向における当該凹X角形の端部に位置する端部頂点45から起算して2番目からn+1番目までの各頂点における内角は凹角であり、n+2番目から2n+2番目までの各頂点における内角は凸角である。ただし、X:8n+2k(nは自然数、kは2または3)である。
【0043】
これにより、斜方壁部15を構成する壁面のうち少なくとも1つの壁面は、ハニカムコア1,1Aを被設置部100の曲面状の表面に沿わせて配置したときに生じる、ハニカムコア上面側のセル20の断面と、ハニカムコア下面側のセル20の断面との面積差を、当該壁面の対角線50に沿った稜線を生じさせながら折れることにより吸収する。よって、当該壁面はハニカムコア1,1Aを曲面に沿わせて配置することにより生じる歪みを吸収する面(歪み吸収面)として機能する。実施形態に係るハニカムコア1,1Aはこのような歪み吸収面を備えるため、曲面状の表面を有する被設置部100に対して設置することができる。
【0044】
さらに、ハニカムコア1,1Aを被設置部100の曲面状の表面に沿わせて配置したとき、歪み吸収面はその対角線方向に延在する折り目(稜線)を形成するようにして折れる。そのため、ハニカムコア1,1Aは、その厚さ方向に対して垂直な方向に入力される荷重に対する剛性(せん断剛性)を備え、ハニカムコア1,1Aのせん断剛性の低下を抑制することができる。従って、ハニカムコア1,1Aを被設置部100の曲面状の表面に沿わせて配置した際の、ハニカムコア1,1Aの厚さ方向に対して垂直な方向に荷重が入力されることによるハニカムコア1,1Aの変形を抑制することができる。
【0045】
(2)実施形態に係るハニカムコア1において、複数のセル20の各々の凹X角形は、凹14角形である。
【0046】
これにより、斜方壁部15を2本の第2稜線40に沿って折り曲げ、歪み吸収面を形成することができる。従って、簡易にハニカムコア1を構成することができる。
【0047】
(3)実施形態の変形例に係るハニカムコア1Aにおいて、複数のセル20の各々の凹X角形は、nが2以上の凹X角形である。
【0048】
これにより、端部壁部15aに、少なくとも1本の中間折返し部40bが形成される。そして、ハニカムコア1Aを被設置部100の曲面状の表面に沿わせて配置することにより、突出部18を構成するセル壁10同士の間隔を縮小、又は拡大しようとする力が働いたとき、ハニカムコア1Aの幅方向に対向する折返し部40a同士の間隔、および中間折返し部40b同士の間隔を変化させることができる。換言すれば、ハニカムコア1Aを被設置部100の曲面状の表面に沿わせて配置することにより生じる、突出部18を構成するセル壁10同士の間隔を変化させようとする力を、折返し部40a、及び少なくとも1本の中間折返し部40bで分担して受けることとなる。このため、
図8に例示すように、突出部18を構成するセル壁10同士の間隔を段階的に変化させることができる。これにより、斜方壁部15を被設置部100の曲面状の表面に対してより柔軟に沿わせることができる。その結果、曲面状の表面を有する被設置部100に対してより確実に設置することが可能なハニカムコア1Aを構成することができる。
【0049】
なお、nが2である場合には、斜方壁部15を4本の第2稜線40に沿って折り曲げ、歪み吸収面を形成することができる。そのため、曲面状の表面を有する被設置部100に対してより確実に設置することが可能なハニカムコア1Aを、より簡便に構成することができる。
【0050】
(4)実施形態に係るハニカムコア1,1Aは、複数のセル20の各々の凹X角形において、端部頂点45と、当該端部頂点45から起算してn+1番目の頂点と、の間に存在する辺の長さは、端部頂点45から起算してn+1番目の頂点とn+2番目の頂点との間の辺の長さよりも短い。
【0051】
このため、中間壁部15bの底辺は端部壁部15aの底辺よりも長く構成される。そのため、ハニカムコア1,1Aを被設置部100の曲面状の表面に沿わせて配置したとき、中間壁部15bは対角線50に沿った稜線に沿ってより折れやすい。よって、中間壁部15bを、歪み吸収面としてより確実に機能させることができる。これにより、曲面状の表面を有する被設置部100に対してより確実に設置することが可能なハニカムコア1,1Aを構成することができる。
【0052】
さらに、他の実施形態に係るハニカムコア1,1Aについて説明する。なお、以下の各実施形態の説明では、先行する実施形態及び変形例(以下、先行実施形態等)と異なる構成についてのみ説明することとし、先行実施形態等において既に説明した要素と同じ機能を有する要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0053】
ある実施形態に係るハニカムコア1,1Aでは、複数のセル20の各々の輪郭形状である凹X角形において、全ての辺の長さが同じとなるように構成される。換言すれば、ハニカムコア1,1Aのセル壁10が備える中間壁部15bの底辺と、端部壁部15aの底辺とは同じ長さである。また、ある実施形態に係るハニカムコア1,1Aでは、端部頂点45と、当該端部頂点45から起算してn+1番目の頂点と、の間に存在する辺の長さは、当該端部頂点45から起算してn+1番目の頂点とn+2番目の頂点との間の辺の長さよりも長くなるように構成される。換言すれば、ハニカムコア1,1Aのセル壁10が備える中間壁部15bの底辺は、端部壁部15aの底辺よりも短く構成されている。
【0054】
このような他の実施形態に係るハニカムコア1,1Aによれば、少なくとも上記(1)乃至(3)に記載した効果が得られるとともに、以下の効果が得られる。
【0055】
(5)ある実施形態に係るハニカムコア1,1Aでは、複数のセル20の各々の凹X角形において、全ての辺の長さが同じである。そのため、ハニカムコアのセル壁10が備える中間壁部15bの底辺と、端部壁部15aの底辺とは同じ長さとなる。これにより、母材を等間隔に折り曲げてセル壁10を形成することができる。従って、簡易にハニカムコア1,1Aを構成することができる。
【0056】
(6)ある実施形態に係るハニカムコア1,1Aでは、複数のセル20の各々の凹X角形において、端部頂点45と、当該端部頂点45から起算してn+1番目の頂点と、の間に存在する辺の長さは、端部頂点45から起算してn+1番目の頂点とn+2番目の頂点との間の辺の長さよりも長い。そのため、ハニカムコア1,1Aのセル壁10が備える端部壁部15aの底辺は、中間壁部15bの底辺よりも長く構成される。これにより、ハニカムコア1,1Aを被設置部100の曲面状の表面に沿わせて配置したとき、端部壁部15aは対角線50に沿った稜線に沿ってより折れやすい。よって、端部壁部15aを、被設置部100の曲面状の表面に対してより柔軟に沿わせることができる。従って、曲面状の表面を有する被設置部100に対してより確実に設置することが可能なハニカムコア1,1Aを構成することができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、ハニカムコア1,1Aを被設置部100の曲面状の表面に沿わせて配置する場合を例にとって説明したが、平面状の表面の被設置部に対して設置することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1,1A ハニカムコア
10 セル壁
15 斜方壁部
20 セル
30 第1稜線
40 第2稜線
45 端部頂点