(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】冷却システム
(51)【国際特許分類】
H02K 9/02 20060101AFI20241217BHJP
B60K 11/02 20060101ALN20241217BHJP
【FI】
H02K9/02 B
B60K11/02
(21)【出願番号】P 2021046355
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】床桜 大輔
(72)【発明者】
【氏名】富永 聡
(72)【発明者】
【氏名】片山 正章
(72)【発明者】
【氏名】岸本 直之
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-129632(JP,A)
【文献】特開2020-089170(JP,A)
【文献】特開2019-161898(JP,A)
【文献】国際公開第2019/197858(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/067280(WO,A1)
【文献】特開2020-133608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/02
H02K 9/19
B60L 9/18
B60L 15/20
B60K 11/02
B60K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機に電力を供給する電気機器を第1の冷却液で冷却する第1の冷却回路と、
前記回転電機及び前記電気機器を第2の冷却液で冷却する第2の冷却回路と、
前記第1の冷却液と前記第2の冷却液との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記第1の冷却回路に設けられ、前記熱交換器に流入する前記第1の冷却液の流量を調整する流量調整機構と、
前記流量調整機構を制御する制御装置と、
を備えた冷却システムであって、
前記第1の冷却回路は、リザーブタンクから前記熱交換器を介して前記電気機器へ前記第1の冷却液を供給するための第1の経路と、前記リザーブタンクから前記熱交換器を介さずに前記電気機器へ前記第1の冷却液を供給するための第2の経路とを有し、
前記流量調整機構は、前記第1の経路を流れる前記第1の冷却液の流量と、前記第2の経路を流れる前記第1の冷却液の流量とを、それぞれ調整可能な流量調整バルブであり、
前記制御装置は、前記回転電機の回転数が所定の回転数以上の場合に前記熱交換器に流入する前記第1の冷却液の流量が、前記回転電機の回転数が前記所定の回転数未満の場合に前記熱交換器に流入する前記第1の冷却液の流量よりも多くなるように、
前記回転電機の回転数が所定の回転数以上の場合には前記リザーブタンクから前記第1の経路のみを通して前記第1の冷却液を前記電気機器へ流入させ、前記回転電機の回転数が所定の回転数未満の場合には前記リザーブタンクから前記第1の経路を通った前記第1の冷却液と前記リザーブタンクから前記第2の経路を通った前記第1の冷却液とを前記電気機器へ流入させるように、前記流量調整
バルブを制御することを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記電気機器を冷却する際に前記第1の冷却液が流れる向きと、前記電気機器を冷却する際に前記第2の冷却液が流れる向きとが、反対向きであることを特徴とする請求項
1に記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転電機であるモータに電力を供給して制御する電気機器であるPCUを冷却水によって冷却する水冷却系と、モータ及びPCUをオイルによって冷却するオイル冷却系と、水冷却系の冷却水とオイル冷却系のオイルとの間で熱交換を行う熱交換器と、を備える冷却システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、モータの回転数が大きい場合には、モータ電流値が小さいためPCUの発熱が小さくて水冷却系の冷却水の温度は上昇し難くが、モータで鉄損が発生してオイル冷却系のオイルの温度は上昇しやすい。そのため、熱交換器での冷却水とオイルとの熱交換によってオイルの温度を最大限に低減させないと、PCUを冷却する際の冷却水とオイルとの温度差が大きくなり過ぎて、PCUに大きな冷却ムラが生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、回転電機に電力を供給する電気機器の冷却ムラを低減させることができる冷却システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る冷却システムは、回転電機に電力を供給する電気機器を第1の冷却液で冷却する第1の冷却回路と、前記回転電機及び前記電気機器を第2の冷却液で冷却する第2の冷却回路と、前記第1の冷却液と前記第2の冷却液との間で熱交換を行う熱交換器と、前記第1の冷却回路に設けられ、前記熱交換器に流入する前記第1の冷却液の流量を調整する流量調整機構と、前記流量調整機構を制御する制御装置と、を備えた冷却システムであって、前記制御装置は、前記回転電機の回転数が所定の回転数以上の場合に前記熱交換器に流入する前記第1の冷却液の流量が、前記回転電機の回転数が前記所定の回転数未満の場合に前記熱交換器に流入する前記第1の冷却液の流量よりも多くなるように、前記流量調整機構を制御することを特徴とするものである。
【0007】
これにより、熱交換器での第1の冷却液と第2の冷却液との熱交換によって第2の冷却液の温度を最大限に低減させて、電気機器を冷却する際の第1の冷却液と第2の冷却液との温度差を小さくすることができ、電気機器の冷却ムラを低減させることができる。
【0008】
また、上記において、前記流量調整機構は、前記熱交換器を介して前記電気機器へ前記第1の冷却液を供給するための第1の経路を流れる前記第1の冷却液の流量と、前記熱交換器を介さずに前記電気機器へ前記第1の冷却液を供給するための第2の経路を流れる前記第1の冷却液の流量とを、それぞれ調整可能な流量調整バルブであってもよい。
【0009】
これにより、流量調整バルブによって、例えば、熱交換器を介して電気機器へ第1の冷却液を供給するための第1の経路を流れる第1の冷却液の流量を多くして、熱交換器での第1の冷却液と第2の冷却液との熱交換によって第2の冷却液の温度を最大限に低減させることが可能となる。
【0010】
また、上記において、前記電気機器を冷却する際に前記第1の冷却液が流れる向きと、前記電気機器を冷却する際に前記第2の冷却液が流れる向きとが、反対向きであるようにしてもよい。
【0011】
これにより、電気機器に対する第1の冷却液及び第2の冷却液のそれぞれの流れ方向における温度偏差に起因した、電気機器の冷却ムラを低減させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る冷却システムは、回転電機に電力を供給する電気機器を冷却する際の第1の冷却液と第2の冷却液との温度差を小さくすることができ、電気機器の冷却ムラを低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両の冷却システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、PCUに設けられたパワーカードの冷却構造を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の冷却回路において、第1の切り替えバルブ及び第2の切り替えバルブの切り替えパターンがパターン2の状態を示した図である。
【
図4】
図4は、第1の冷却回路において、第1の切り替えバルブ及び第2の切り替えバルブの切り替えパターンがパターン3の状態を示した図である。
【
図5】
図5は、MG回転数とMGトルクとに対する第1の切り替えバルブ及び第2の切り替えバルブの切り替えパターンのマップを示した図である。
【
図6】
図6は、ECUが実施する第1の切り替えバルブ及び第2の切り替えバルブの切り替えパターンの選択制御の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る車両の冷却システムの実施形態について説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。実施形態に係る車両の冷却システムは、例えば、駆動輪を駆動させる動力源として内燃機関とモータとを備えるハイブリッド車両や、前記動力源としてモータを備える電気自動車などの電動車両に適用することができる。
【0015】
図1は、実施形態に係る車両の冷却システム100の構成を示す模式図である。
図1に示すように、実施形態に係る車両の冷却システム100は、PCU(Power Control Unit)4を冷却する第1の冷却液であるLLC(Long Life Coolant)が循環する第1の冷却回路1と、回転電機22及びPCU4を冷却する第2の冷却液である潤滑油が循環する第2の冷却回路2とを備えている。第2の冷却液である潤滑油は、第1の冷却液であるLLCよりも高い絶縁性を有しており、回転電機22などの潤滑にも用いられる。
【0016】
第1の冷却回路1には、第1の電動ポンプ11、リザーブタンク12、熱交換器であるオイルクーラー3、PCU4、ラジエータ13、第1の切り替えバルブ14、及び、第2の切り替えバルブ15が配置されており、それぞれが配管によって連結されている。なお、オイルクーラー3は、第2の冷却回路2と共用であり、オイルクーラー3にて第1の冷却回路を流れるLLCと第2の冷却回路を流れる潤滑油との間で熱交換が可能となっている。第1の冷却回路1では、第1の電動ポンプ11を作動させることによって第1の冷却回路1内でLLCが循環する。
【0017】
なお、
図1中の実線で示した矢印は、第1の冷却回路1でLLCが流れている流路を示しており、
図1中の破線は、第1の冷却回路1でLLCが流れていない流路を示している。第1の冷却回路1では、第1の電動ポンプ11からリザーブタンク12への流路R11、リザーブタンク12から第1の切り替えバルブ14への流路R12、第1の切り替えバルブ14からオイルクーラー3への流路R13、第1の切り替えバルブ14から第2の切り替えバルブ15への流路R14、オイルクーラー3から第2の切り替えバルブ15への流路R15、第2の切り替えバルブ15からPCU4への流路R16、PCU4からラジエータ13への流路R17、及び、ラジエータ13から第1の電動ポンプ11への流路R18が形成されている。
図1において、第1の冷却回路1では、第1の電動ポンプ11を作動させることによって、第1の電動ポンプ11を起点とした場合、第1の電動ポンプ11、リザーブタンク12、第1の切り替えバルブ14、オイルクーラー3、第2の切り替えバルブ15、PCU4、ラジエータ13の順にLLCが循環する。
【0018】
第1の切り替えバルブ14は、三方向に流体の出入口である第1のポート14aと第2のポート14bと第3のポート14cとを有する三方弁によって構成されている。第1の切り替えバルブ14は、第1のポート14aと第2のポート14bとを連通する状態、第1のポート14aと第3のポート14cとを連通する状態、及び、第1のポート14aと第2のポート14b及び第3のポート14cの両方とを連通する状態を、選択的に切り替えるように構成されている。第1のポート14aは、リザーブタンク12と流路R12を形成する配管によって連結されている。第2のポート14bは、オイルクーラー3と流路R13を形成する配管によって連結されている。第3のポート14cは、第2の切り替えバルブ15の第1のポート15aと流路R14を形成する配管によって連結されている。
【0019】
したがって、第1の切り替えバルブ14は、リザーブタンク12から流路R12を通って第1の切り替えバルブ14に流入したLLCが、流路R13を通ってオイルクーラー3に流入する状態と、流路R14を通って第2の切り替えバルブ15に流入する状態と、一部が流路R13を通ってオイルクーラー3に流入し、残りが流路R14を通って第2の切り替えバルブ15に流入する状態とを、選択的に切り替える。なお、第1の切り替えバルブ14の切り替え操作は、例えば、ECU5によって制御されたアクチュエータなどの駆動機構を用いて行う。
【0020】
第2の切り替えバルブ15は、三方向に流体の出入口である第1のポート15aと第2のポート15bと第3のポート15cとを有する三方弁によって構成されている。第2の切り替えバルブ15は、第1のポート15aと第3のポート15cとを連通する状態、第2のポート15bと第3のポート15cとを連通する状態、及び、第1のポート15a及び第2のポート15bの両方と第3のポート15cとを連通する状態を、選択的に切り替えるように構成されている。第1のポート15aは、上述したように第1の切り替えバルブ14の第3のポート14cと流路R14を形成する配管によって連結されている。第2のポート15bは、オイルクーラー3と流路R15を形成する配管によって連結されている。第3のポート15cは、後述する第1の冷却路41と連通するようにPCU4と流路R16を形成する配管によって連結されている。
【0021】
したがって、第2の切り替えバルブ15は、第1の切り替えバルブ14から流路R14を通って第2の切り替えバルブ15に流入したLLCが流路R16を通ってPCU4の第1の冷却路41に流入する状態、オイルクーラー3から流路R15を通って第2の切り替えバルブ15に流入したLLCが流路R16を通ってPCU4の第1の冷却路41に流入する状態、及び、第1の切り替えバルブ14から流路R14を通って第2の切り替えバルブ15に流入したLLCと、オイルクーラー3から流路R15を通って第2の切り替えバルブ15に流入したLLCとが合流し、合流したLLCが流路R16を通ってPCU4の第1の冷却路41に流入する状態、のいずれかの状態に選択的に切り替える。なお、第2の切り替えバルブ15の切り替え操作は、例えば、ECU5によって制御されたアクチュエータなどの駆動機構を用いて行う。
【0022】
実施形態に係る冷却システム100においては、第1の切り替えバルブ14及び第2の切り替えバルブ15が、リザーブタンク12からオイルクーラー3を介してPCU4の第1の冷却路41へLLCを供給するための第1の経路(流路R13,R15,R16)を流れるLLCの流量と、リザーブタンク12からオイルクーラー3を介さずにPCU4の第1の冷却路41へLLCを供給するための第2の経路(流路R14,R16)を流れるLLCの流量とを、それぞれ調整可能な流量調整バルブとして機能しており、流量調整機構を構成している。これにより、第1の切り替えバルブ14及び第2の切り替えバルブ15によって、例えば、前記第1の経路(流路R13,R15,R16)を流れるLLCの流量を多くして、オイルクーラー3でのLLCと潤滑油との熱交換によって潤滑油の温度を最大限に低減させることが可能となる。
【0023】
第2の冷却回路2には、第2の電動ポンプ21、オイルクーラー3、PCU4、回転電機22、及び、オイルパン23が配置されており、それぞれが配管によって連結されている。そして、第2の電動ポンプ21を作動させることによって第2の冷却回路2内で潤滑油が循環する。なお、
図1中の一点鎖線で示した矢印は、第2の冷却回路2で潤滑油が流れる経路を示している。第2の冷却回路2では、第2の電動ポンプ21からオイルクーラー3への流路R21、オイルクーラー3からPCU4への流路R22、PCU4から回転電機22への流路R23、回転電機22からオイルパン23への流路R24、及び、オイルパン23から第2の電動ポンプ21への流路R25が形成されている。
図1において、第2の冷却回路2では、第2の電動ポンプ21を作動させることによって、第2の電動ポンプ21を起点とした場合、第2の電動ポンプ21、オイルクーラー3、PCU4、回転電機22、オイルパン23の順に潤滑油が循環する。
【0024】
図2は、PCU4に設けられたパワーカード40の冷却構造を示す図である。なお、
図2においては、PCU4を上面側と側面側と下面側とからそれぞれ見た図を示している。
【0025】
PCU4は、回転電機22に電力を供給する電気機器であって、PCU4の外郭を形成するケース内にパワーカード40など配置されて構成されており、車両に搭載されたバッテリーの電力によって駆動され、回転電機22の動作を制御する。回転電機22は、PCU4からの制御信号に従って、前記バッテリーの電力を利用して車両の駆動輪を駆動するための動力を発生させる。なお、PCU4は、回転電機22の上側に配置されて、PCU4と回転電機22とが一体で構成された機電一体構造となっている。このようにPCU4と回転電機22とを機電一体構造とした場合には、回転電機22の熱がPCU4のケースに伝熱して、パワーカード40の下面が昇温し得る。実施形態に係る冷却システム100においては、PCU4のケース内でパワーカード40の上面側と下面側とを冷却液(LLC及び潤滑油)で冷却する冷却構造となっている。
【0026】
PCU4において、パワーカード40は、複数の半導体素子400a,400b,400cが間隔をあけて平面状に一列で配置されて構成されている。パワーカード40の上側には、複数の半導体素子400a,400b,400cのそれぞれの上面と熱的に接続され、複数の半導体素子400a,400b,400cから伝達された熱を放熱する第1の放熱部材401が設けられている。また、パワーカード40の下側には、複数の半導体素子400a,400b,400cのそれぞれの下面と熱的に接続され、複数の半導体素子400a,400b,400cから伝達された熱を放熱する第2の放熱部材402が設けられている。PCU4のケース内部には、パワーカード40の上面側において第1の放熱部材401を冷却するLLCが流れる第1の冷却路41と、パワーカード40の下面側において第2の放熱部材402を冷却する潤滑油が流れる第2の冷却路42とが、シール部材403によって仕切られて形成されている。
【0027】
なお、第1の冷却路41には第2の切り替えバルブ15の第3のポート15cから流路R16を通ってLLCが流入し、第1の放熱部材401を冷却した後のLLCが第1の冷却路41から流路17を通ってラジエータ13に送られるため、第1の冷却路41が第1の冷却回路の一部を構成していると言える。また、第2の冷却路42にはオイルクーラー3から流路R22を通って潤滑油が流入し、第2の放熱部材402を冷却した後の潤滑油が第2の冷却路42から流路R23を通って回転電機22に送られるため、第2の冷却路42が第2の冷却回路の一部を構成していると言える。
【0028】
実施形態に係る冷却システム100においては、パワーカード40における複数の半導体素子400a,400b,400cの配列方向に対して、第1の冷却路41を流れるLLCの流れの向きと、第2の冷却路42を流れる潤滑油の流れの向きとは反対向きになっている。すなわち、第1の冷却路41では、半導体素子400a、半導体素子400b、半導体素子400cの順で冷却されるようにLLCが流れる。一方、第2の冷却路42では、半導体素子400c、半導体素子400b、半導体素子400aの順で冷却されるように潤滑油が流れる。そのため、第1の冷却路41を流れるLLCの温度は、半導体素子400aから半導体素子400cに向かうにつれて高くなり、第2の冷却路42を流れる潤滑油の温度は、半導体素子400cから半導体素子400aに向かうにつれて高くなる。これにより、パワーカード40(複数の半導体素子400a,400b,400c)に対するLLC及び潤滑油のそれぞれの流れ方向における温度偏差に起因した、パワーカード40(複数の半導体素子400a,400b,400c)の冷却ムラを低減させることができる。
【0029】
ECU5には、様々なセンサのデータが入力される。例えば、回転電機22の回転数であるMG回転数や、回転電機22のトルクであるMGトルクなどのデータが入力される。なお、MGトルクは、回転電機22を回転駆動させる電流の値であるMG電流値と相関関係があり、MGトルクが大きいほどMG電流値も大きくなる。そのため、本実施形態においては、MGトルクに関するデータとしてMG電流値のデータがECU5に入力される。
【0030】
そして、実施形態に係る冷却システム100においては、回転電機22のMG回転数とMGトルク(MG電流値)とに基づいて、ECU5が、第1の切り替えバルブ14及び第2の切り替えバルブ15の切り替え操作を行う。実施形態に係る冷却システム100においては、第1の切り替えバルブ14及び第2の切り替えバルブ15の切り替えパターンとして、パターン1、パターン2、及び、パターン3の3つのパターンが設定されている。
【0031】
パターン1は、
図1に示したように、第1の切り替えバルブ14を、リザーブタンク12から流路R12を通って第1の切り替えバルブ14に流入したLLCが流路R13を通ってオイルクーラー3に流入する状態へ切り替え、且つ、第2の切り替えバルブ15を、オイルクーラー3から流路R15を通って第2の切り替えバルブ15に流入したLLCが流路R16を通ってPCU4の第1の冷却路41に流入する状態へ切り替える。
【0032】
パターン2は、
図3に示したように、第1の切り替えバルブ14を、リザーブタンク12から流路R12を通って第1の切り替えバルブ14に流入したLLCが流路R14を通って第2の切り替えバルブ15に流入する状態へ切り替え、且つ、第2の切り替えバルブ15を、第1の切り替えバルブ14から流路R14を通って第2の切り替えバルブ15に流入したLLCが流路R16を通ってPCU4の第1の冷却路41に流入する状態へ切り替える。
【0033】
パターン3は、
図4に示したように、第1の切り替えバルブ14を、リザーブタンク12から流路R12を通って第1の切り替えバルブ14に流入したLLCの一部が流路R13を通ってオイルクーラー3に流入し、リザーブタンク12からの残りのLLCが流路R14を通って第2の切り替えバルブ15に流入する状態へ切り替え、且つ、第2の切り替えバルブ15を、第1の切り替えバルブ14から流路R14を通って第2の切り替えバルブ15に流入したLLCと、オイルクーラー3から流路R15を通って第2の切り替えバルブ15に流入したLLCとを合流させて、合流したLLCが流路R16を通ってPCU4の第1の冷却路41に流入する状態へ切り替える。
【0034】
図5は、MG回転数とMGトルクとに対する第1の切り替えバルブ14及び第2の切り替えバルブ15の切り替えパターンのマップを示した図である。
【0035】
図5に示すように、MG回転数が所定の回転数N1以上であり、且つ、MGトルクが所定のトルクT1未満である回転電機22の動作状態、言い換えると、高MG回転数及び低MGトルクでの回転電機22の動作状態では、第1の切り替えバルブ14及び第2の切り替えバルブ15の切り替えパターンとして、パターン1を選択する。高MG回転数及び低MGトルクでの回転電機22の動作状態では、MG電流値が小さいためPCU4のパワーカード40(半導体素子400a,400b,400c)の発熱が小さくてLLCの温度は上昇し難く、また、回転電機22で鉄損が発生して潤滑油の温度は上昇しやすい。そのため、オイルクーラー3でLLCとの熱交換によって潤滑油の温度を最大限に低減する必要がある。よって、高MG回転数及び低MGトルクでの回転電機22の動作状態では、リザーブタンク12からのLLCの全てをオイルクーラー3に流入させることができるパターン1を選択する。これにより、PCU4で第1の放熱部材401及び第2の放熱部材402を冷却する際のLLCと潤滑油との温度差を小さくすることができ、パワーカード40(複数の半導体素子400a,400b,400c)の冷却ムラを低減させることができる。
【0036】
また、
図5に示すように、MG回転数が所定の回転数N1未満であり、且つ、MGトルクが所定のトルクT1未満である回転電機22の動作状態、言い換えると、低MG回転数及び低MGトルクでの回転電機22の動作状態では、第1の切り替えバルブ14及び第2の切り替えバルブ15の切り替えパターンとして、パターン2を選択する。低MG回転数及び低MGトルクでの回転電機22の動作状態では、LLC及び潤滑油ともに温度が上昇し難い。そのため、オイルクーラー3での潤滑油との熱交換を行わずに、リザーブタンク12からのLLCの全てを直接PCU4の第1の冷却路41に流入させることができるパターン2を選択する。これにより、PCU4で第1の放熱部材401及び第2の放熱部材402を冷却する際のLLCと潤滑油との温度差を小さくすることができ、パワーカード40(複数の半導体素子400a,400b,400c)の冷却ムラを低減させることができる。
【0037】
また、
図5に示すように、MG回転数が所定の回転数N1未満であり、且つ、MGトルクが所定のトルクT1以上である回転電機22の動作状態、言い換えると、低MG回転数及び高MGトルクでの回転電機22の動作状態では、第1の切り替えバルブ14及び第2の切り替えバルブ15の切り替えパターンとして、パターン3を選択する。低MG回転数及び高MGトルクでの回転電機22の動作状態では、MG電流値が大きいためPCU4のパワーカード40(複数の半導体素子400a,400b,400c)の発熱が大きくてLLCの温度が上昇し易く、また、回転電機22で鉄損が発生して潤滑油の温度も上昇し易い。そのため、リザーブタンク12からのLLCの一部とオイルクーラー3で熱交換を行って潤滑油の温度を下げつつ、リザーブタンク12からの残りのLLCを、オイルクーラー3を介さずに直接PCU4の第1の冷却路41に流入させることができるパターン3を選択する。これにより、PCU4で第1の放熱部材401及び第2の放熱部材402を冷却する際のLLCと潤滑油との温度差を小さくすることができ、パワーカード40(複数の半導体素子400a,400b,400c)の冷却ムラを低減させることができる。
【0038】
なお、
図5に示した第1の切り替えバルブ14及び第2の切り替えバルブ15の切り替えパターンのマップにおいては、MGトルクをMG電流値に置き換えてもよい。
【0039】
図6は、ECU5が実施する第1の切り替えバルブ14及び第2の切り替えバルブ15の切り替えパターンの選択制御の一例を示したフローチャートである。なお、
図6に示した切り替え制御では、MGトルクに替えてMG電流値を用いている。
【0040】
まず、ECU5は、ステップS1において、現在のMG電流値が所定の電流値以上であるか否かを判断する。ECU5は、現在のMG電流値が所定の電流値以上であると判断した場合(ステップS1にてYes)、ステップS2において、第1の切り替えバルブ14及び第2の切り替えバルブ15の切り替えパターンとしてパターン3を選択し、一連の制御を終了する。一方、ECU5は、現在のMG電流値が所定の電流値以上ではないと判断した場合(ステップS1にてNo)、ステップS3において、現在のMG回転数が所定の回転数以上であるか否かを判断する。ECU5は、現在のMG回転数が所定の回転数以上であると判断した場合、ステップS4において、第1の切り替えバルブ14及び第2の切り替えバルブ15の切り替えパターンとしてパターン1を選択し、一連の制御を終了する。一方、ECU5は、現在のMG回転数が所定の回転数以上ではないと判断した場合(ステップS3にてNo)、ステップS5において、第1の切り替えバルブ14及び第2の切り替えバルブ15の切り替えパターンとしてパターン2を選択し、一連の制御を終了する。
【0041】
実施形態に係る冷却システム100においては、回転電機22の動作状態、言い換えると、MG回転数とMGトルク(MG電流値)に応じて、第1の切り替えバルブ14及び第2の切り替えバルブ15の切り替えパターンを選択して、PCU4で第1の放熱部材401及び第2の放熱部材402を冷却する際のLLCと潤滑油との温度差を小さくすることができ、パワーカード40(複数の半導体素子400a,400b,400c)の冷却ムラを低減させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 第1の冷却回路
2 第2の冷却回路
3 オイルクーラー
4 PCU
5 ECU
11 第1の電動ポンプ
12 リザーブタンク
13 ラジエータ
14 第1の切り替えバルブ
14a 第1のポート
14b 第2のポート
14c 第3のポート
15 第2の切り替えバルブ
15a 第1のポート
15b 第2のポート
15c 第3のポート
21 第2の電動ポンプ
22 回転電機
23 オイルパン
40 パワーカード
400a 半導体素子
400b 半導体素子
400c 半導体素子
401 第1の放熱部材
402 第2の放熱部材
403 シール部材