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  • 特許-SOC調整装置、及びSOC調整方法 図1
  • 特許-SOC調整装置、及びSOC調整方法 図2
  • 特許-SOC調整装置、及びSOC調整方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】SOC調整装置、及びSOC調整方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20241217BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241217BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20241217BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20241217BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241217BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20241217BHJP
   B60L 53/68 20190101ALI20241217BHJP
   B60L 53/63 20190101ALI20241217BHJP
   B60L 53/64 20190101ALI20241217BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20241217BHJP
   G16Y 40/35 20200101ALI20241217BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/46
H02J13/00 311T
H02J7/00 P
B60L58/12
B60L53/68
B60L53/63
B60L53/64
G16Y10/40
G16Y40/35
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021047782
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146686
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福岡 圭輔
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-211482(JP,A)
【文献】特開2020-150717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0229900(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 13/00
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
G16Y 10/40
G16Y 40/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
VPPに参加するPHVの行動予測に基づき前記PHVが電力系統に接続された時点での予測SOCを予測し、上位システムからの電力需給調整の要求と前記予測SOCとに基づいて前記PHVに対する充放電量を決定するシステムにおいて、前記PHVが前記電力系統に接続されるよりも前に前記PHVの実SOCを調整するSOC調整装置であって、
前記PHVとの移動通信により前記PHVから前記実SOCを取得し、
前記予測SOCに対して前記実SOCが不足な場合、前記移動通信により前記PHVにエンジンの稼働を指示し、
前記予測SOCに対して前記実SOCが過剰な場合、前記移動通信により前記PHVに前記エンジンの停止を指示する
ことを特徴とするSOC調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載のSOC調整装置において、
前記PHVが前記電力系統に接続されると予測される時点が現時点から所定期間内であることを条件に、前記実SOCの調整を実行する
ことを特徴とするSOC調整装置。
【請求項3】
VPPに参加するPHVの行動予測に基づき前記PHVが電力系統に接続された時点での予測SOCを予測し、上位システムからの電力需給調整の要求と前記予測SOCとに基づいて前記PHVに対する充放電量を決定するシステムにおいて、前記PHVが前記電力系統に接続されるよりも前に前記PHVの実SOCを調整するSOC調整方法であって、
前記PHVとの移動通信により前記PHVから前記実SOCを取得するステップと、
前記予測SOCに対して前記実SOCが不足な場合、前記移動通信により前記PHVにエンジンの稼働を指示するステップと、
前記予測SOCに対して前記実SOCが過剰な場合、前記移動通信により前記PHVに前記エンジンの停止を指示するステップと、を含む
ことを特徴とするSOC調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VPPに参加するPHVのSOCを、PHVが電力系統に接続されるよりも前に調整するSOC調整装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自宅やオフィス等の施設に接続された電動車を蓄電池として活用する技術が開示されている。ここに開示された従来技術では、施設に接続された電動車の充電率が目標範囲の下限値以下ならバッテリからの放電を抑制し、充電率が目標範囲の上限値以上ならバッテリへの充電を抑制することが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-150767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、今日、電動車をエネルギリソースとして用いるVPP(Virtual Power Plant)についての研究が進んでいる。電動車を用いるVPPでは、電力会社等の上位システムからの電力需給調整の要求と、電動車が電力系統に接続された時点での予測SOCとに基づいて電動車に対する充放電量が決定される。しかし、電動車が電力系統に接続された時点での実SOCが予測SOCと乖離している場合、電動車に対する充放電を予定通りに行うことができず、上位システムからの電力需給調整の要求を満たせなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、PHVをエネルギリソースとして用いるVPPにおいて電力需給調整の要求に可能な限り応えることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するためのSOC調整装置を提供する。本SOC調整装置は、VPPに参加するPHVの行動予測に基づきPHVが電力系統に接続された時点での予測SOCを予測し、上位システムからの電力需給調整の要求と予測SOCとに基づいてPHVに対する充放電量を決定するシステムに適用される。本SOC調整装置は、PHVが電力系統に接続されるよりも前にPHVの実SOCを調整するSOC調整装置であって、PHVとの移動通信によりPHVから実SOCを取得する。本SOC調整装置は、予測SOCに対して実SOCが不足な場合、移動通信によりPHVにエンジンの稼働を指示し、予測SOCに対して実SOCが過剰な場合、移動通信によりPHVにエンジンの停止を指示する。
【0007】
本SOC調整装置において、PHVが電力系統に接続されると予測される時点が現時点から所定期間内であることを条件に、実SOCの調整を実行してもよい。
【0008】
また、本発明は、上記目的を達成するためのSOC調整方法を提供する。本SOC調整方法は、VPPに参加するPHVの行動予測に基づきPHVが電力系統に接続された時点での予測SOCを予測し、上位システムからの電力需給調整の要求と予測SOCとに基づいてPHVに対する充放電量を決定するシステムに適用される。本SOC調整方法は、PHVが電力系統に接続されるよりも前にPHVの実SOCを調整する方法であって、PHVとの移動通信によりPHVから実SOCを取得するステップを含む。さらに、本SOC調整方法は、予測SOCに対して実SOCが不足な場合、移動通信によりPHVにエンジンの稼働を指示するステップと、予測SOCに対して実SOCが過剰な場合、移動通信によりPHVにエンジンの停止を指示するステップとを含む。
【発明の効果】
【0009】
予測SOCに対して実SOCが不足な場合、PHVのエンジンの稼働により発電機を動かすことで、発電機による発電によってSOCは上昇し、PHVが電力系統に接続されるよりも前に予測SOCに対する実SOCの不足は解消されていく。一方、予測SOCに対して実SOCが過剰な場合、PHVのエンジンの停止により発電を停止することで、電気モータによる電力消費によってSOCは低下し、PHVが電力系統に接続されるよりも前に予測SOCに対する実SOCの過剰は解消されていく。本発明に係るSOC調整装置及び方法によれば、PHVが電力系統に接続された時点でのSOCと、行動予測によって求められた予測SOCとが同程度になるよう、PHVにエンジンの稼働・停止が指示されるので、電力需給調整の要求に対する充足度は向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態のSOC調整装置が適用されたVPPの全体構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態のSOC調整装置として機能するアグリゲーションサーバの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態のSOC調整方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本発明に係る思想が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、本発明に係る思想に必ずしも必須のものではない。
【0012】
1.VPPの全体構成
図1は、本開示の実施形態のVPP(Virtual Power Plant)2の全体構成を示す図である。本実施形態のVPP2は、少なくともPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)12を含む複数の電動車をエネルギリソースとして用いるVPPである。VPP2で用いられる電動車には、PHVの他にはEV(Electric Vehicle)が用いられてもよい。ただし、本実施形態では、説明を分かりやすくするため、VPP2に参加する電動車は全てPHV12であるとする。PHV12は、電気モータとエンジン(内燃機関)とを有し、電気モータのエネルギ源であるバッテリ14に外部から直接充電することできる電動車である。PHV12は、例えば、エンジンの力で発電機を動かして発電し、その電力で電気モータを動かして走行するシリーズ方式でもよいし、エンジンの力で車輪を駆動するとともに、発電機も動かして発電するシリーズ・パラレル方式でもよい。
【0013】
本実施形態のVPP2は、アグリゲーションサーバ10を備える。アグリゲーションサーバ10を運営するアグリゲータは、電力会社の間で電力の需給調整の契約を結んでいる。アグリゲータが契約通りの電力の需給調整を達成することができた場合、電力会社からアグリゲータに報酬が支払われる。しかし、アグリゲータが契約通りの電力の需給調整を達成することができなかった場合、アグリゲータは電力会社に対して違約金を支払わなければならない。ゆえに、アグリゲーションサーバ10には、可能な限り電力需給調整の要求を満たすことが求められている。
【0014】
アグリゲーションサーバ10は、上位システムである電力会社サーバ4と通信ネットワークを介して接続されている。アグリゲーションサーバ10は、電力会社サーバ4から電力需給調整の要求を受信し、その要求を満たすようにVPP2に参加する各PHV12の充放電計画を作成する。PHV12が電力系統6に接続されたとき、この充放電計画に従ってPHV12と電力系統6との間での充放電が行われる。PHV12の充放電計画は、電力会社サーバ4から要求されている需給調整量と、PHV12が電力系統6に接続される時点での予測SOCとに基づいて作成される。どれだけの電力量をバッテリ14に充電できるか、或いはどれだけの電力量をバッテリ14から放電できるか見積もるためにも、また、過剰な充放電によるバッテリ14の劣化を抑える観点からも、予測SOCは充放電計画を作成する上での重要な情報である。
【0015】
アグリゲーションサーバ10は、移動通信ネットワークによってPHV12と接続されている。PHV12からアグリゲーションサーバ10には、その位置情報とバッテリ14のSOC情報とが移動通信によって継続的に送信されている。アグリゲーションサーバ10は、PHV12の位置情報に基づいてPHV12の行動予測を行い、行動予測に基づきPHV12がいつ電力系統6に接続されるか予測する。そして、予測されたPHV12の電力系統6への接続時点と、現時点でのバッテリ14のSOC情報とに基づき、接続時点での予測SOCを計算する。予測SOCの計算は、充放電計画の作成タイミング及び更新タイミングにて実施される。
【0016】
VPP2では、電力系統6に接続された複数の充放電器8が用意されている。VPP2のエネルギリソースとなるPHV12は、充放電器8を介して電力系統6に接続される。電力系統6からPHV12のバッテリ14への充電、及びPHV12のバッテリ14から電力系統6への放電は充放電器8を用いて行われる。充放電器8は、アグリゲーションサーバ10からの充放電指示に従って動作する。
【0017】
まず、PHV12が充放電器8に接続されると、PHV12から充放電器8にPHV12の車両情報が送信される。充放電器8は、有線又は無線の通信ネットワークを介してアグリゲーションサーバ10に接続されている。充放電器8は、車両情報で特定されるPHV12に対する充放電指示をアグリゲーションサーバ10に要求する。アグリゲーションサーバ10は、車両情報で特定されたPHV12の充放電計画に従い、充放電器8に対して充放電指示を送信する。充放電器8は、アグリゲーションサーバ10からの充放電指示を受けてPHV12に対する充放電動作を実行する。そして、充放電動作の終了後、充放電器8は、アグリゲーションサーバ10に対して充放電動作により得られた充電量或いは放電量の実績、すなわち、充放電実績を送信する。アグリゲーションサーバ10は、各充放電器8から報告された充放電実績を集計して電力需給調整実績を作成し、電力需給調整実績を電力会社サーバ4に報告する。
【0018】
ところで、充放電計画の作成に用いられた予測SOCと、実際にPHV12が充放電器8に接続された時点でのSOCとの間にずれがあると、予定通りの充電或いは放電を行うことができないおそれがある。例えば、予測SOCよりも実際のSOCが低い場合においてバッテリ14への放電動作を実行すると、SOCが適正範囲の下限に達してしまい、アグリゲーションサーバ10からの放電指示どおりの放電量を得られないおそれがある。また、予測SOCよりも実際のSOCが高い場合においてバッテリ14への充電動作を実行すると、SOCが適正範囲の上限に達してしまい、アグリゲーションサーバ10からの充電指示どおりの充電量を得られないおそれがある。
【0019】
電力会社サーバ4から要求される電力需給調整を達成するためには、個々のPHV12から充放電計画どおりの充電量或いは放電量を得る必要がある。そのためには、PHV12が充放電器8を介して電力系統6に接続された時点でのSOCが、行動予測によって求められた予測SOC、すなわち充放電計画の作成に用いられた予測SOCと同程度になっていることが求められる。このため、本実施形態では、PHV12が電力系統6に接続されるよりも前にPHV12の実SOCを調整するSOC調整装置としての機能がアグリゲーションサーバ10に備えられている。
【0020】
2.SOC調整装置の構成と機能
次に、SOC調整装置としてのアグリゲーションサーバ10の構成と機能について説明する。図2は、SOC調整装置として機能するアグリゲーションサーバ10の構成を示すブロック図である。
【0021】
アグリゲーションサーバ10は、プロセッサ110とプロセッサ110に結合されたメモリ120とを備える。メモリ120には、プロセッサ110で実行可能なプログラムとそれに関連する種々の情報とが記憶されている。プロセッサ110がプログラムを実行することにより、プロセッサ110による各種処理が実現される。メモリ120に記憶されたプログラムには、充放電指示プログラム121とSOC調整プログラム122とが含まれる。さらに、アグリゲーションサーバ10は、ストレージ130を備える。ストレージ130には、車両情報データベース131が記憶されている。車両情報データベース131は、PHV12との通信によって取得されたPHV12ごとの位置情報及びSOC情報を管理するデータベースである。
【0022】
プロセッサ110において充放電指示プログラム121が実行されることにより、アグリゲーションサーバ10は、PHV12ごとの充放電計画を作成し、PHV12が接続された充放電器8に対して充放電指示を送信する。アグリゲーションサーバ10は、行動予測に基づいてPHV12が電力系統6に接続された時点での予測SOCを予測し、電力会社サーバ4からの電力需給調整要求と予測SOCとに基づいて充放電計画を作成する。つまり、アグリゲーションサーバ10は、PHV12の行動予測に基づきPHV12が電力系統6に接続された時点での予測SOCを予測し、上位システムからの電力需給調整の要求と予測SOCとに基づいてPHV12に対する充放電量を決定するシステムとして機能する。また、プロセッサ110においてSOC調整プログラム122が実行されることにより、プロセッサ110は、アグリゲーションサーバ10をSOC調整装置として機能させる。
【0023】
図3は、SOC調整装置としてのアグリゲーションサーバ10によるSOC調整方法を示すフローチャートである。アグリゲーションサーバ10は、このフローチャートによるSOC調整をVPP2に参加する全てのPHV12に対してPHV12ごとに実行する。
【0024】
まず、ステップS10では、アグリゲーションサーバ10は、PHV12に対する現状の充放電状況のもとで、電力会社サーバ4から要求された電力需給調整を達成できるかできないか予測する。電力需給調整を達成できると予測された場合、SOC調整の必要はないので本フローチャートによる処理は終了する。
【0025】
電力需給調整を達成できないと予測された場合、アグリゲーションサーバ10はステップS20を実行する。ステップS20では、アグリゲーションサーバ10は、PHV12が電力系統6に接続されているかどうか判定する。PHV12が既に電力系統6に接続されているのであれば、もはやSOC調整を行う必要はないので本フローチャートによる処理は終了する。
【0026】
PHV12が電力系統6に接続されていない場合、アグリゲーションサーバ10はステップS30を実行する。ステップS30では、アグリゲーションサーバ10は、PHV12の位置情報に基づきPHV12がいつ電力系統6に接続されるか予測し、予測されたPHV12の電力系統6への接続時点が現時点から所定期間内であるかどうか判定する。つまり、アグリゲーションサーバ10は、PHV12の電力系統6への接続が近い時期に行われるかどうか判定する。
【0027】
PHV12が電力系統6に接続されるまでに時間がかかるのであれば、PHV12の運転状態に応じてバッテリ14のSOCは現在の状態から大きく変化する可能性がある。よって、現時点から所定期間内にPHV12の電力系統6への接続が行われないようであれば、アグリゲーションサーバ10はSOC調整を保留し、ステップS20及びS30の判定を繰り返す。
【0028】
PHV12の電力系統6への接続が近い時期に行われると予測された場合、アグリゲーションサーバ10はステップS40を実行する。ステップS40では、アグリゲーションサーバ10は、充放電計画の作成に用いられた予測SOCと、移動通信によってPHV12から取得された現時点での実SOCとを比較する。
【0029】
ステップS40の比較の結果、予測SOCよりも実SOCの方が低いのであれば、アグリゲーションサーバ10はステップS50を実行する。ステップS50では、アグリゲーションサーバ10は、SOCを回復させるためにPHV12のエンジンを稼働させた場合に必要となる燃料代と、このまま電力需給調整を達成できなかった場合に支払うことになる違約金とを比較する。燃料代には変動があり、違約金も契約内容によって必ずしも一定でない。このため、ステップS50の判定結果がどちらかに固定されることはない。違約金の方が燃料代よりも安ければ、PHV12のエンジンを稼働させてSOC調整を行う必要はないので本フローチャートによる処理は終了する。
【0030】
燃料代の方が違約金よりも安ければ、PHV12のエンジンを稼働させてSOC調整を行うメリットがある。この場合、アグリゲーションサーバ10はステップS60を実行する。ステップS60では、アグリゲーションサーバ10は、移動通信によってPHV12に対しエンジン稼働指令を送信する。PHV12がエンジンを稼働させることで、エンジンによって発電機が動かされ、発電機による発電が行われる。この発電によってバッテリ14のSOCは上昇し、PHV12が電力系統6に接続されるよりも前に予測SOCに対する実SOCの不足は解消されていく。
【0031】
ステップS40の比較の結果、予測SOCよりも実SOCの方が低くないのであれば、アグリゲーションサーバ10はステップS70を実行する。ステップS70では、アグリゲーションサーバ10は、予測SOCよりも実SOCの方が高いかどうか判定する。予測SOCよりも実SOCの方が高くない場合、すなわち、予測SOCと実SOCとが同等であるならば、SOC調整を行う必要はないので本フローチャートによる処理は終了する。
【0032】
予測SOCよりも実SOCの方が高いのであれば、アグリゲーションサーバ10はステップS80を実行する。ステップS80では、アグリゲーションサーバ10は、移動通信によってPHV12に対しエンジン停止指令を送信する。PHV12がエンジンを停止させることで、エンジンによる発電機の駆動も停止し、発電機による発電が停止する。この発電の停止によってバッテリ14のSOCは低下し、PHV12が電力系統6に接続されるよりも前に予測SOCに対する実SOCの過剰は解消されていく。
【0033】
以上述べたように、本実施形態のSOC調整方法によれば、PHV12が電力系統6に接続された時点でのバッテリ14のSOCと、行動予測によって求められた予測SOCとが同程度になるよう、PHV12にエンジンの稼働・停止が指示される。これにより、電力需給調整の要求に対する充足度は向上し、電力会社との契約通りの電力需給調整を安定的に行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0034】
2 VPP
4 電力会社サーバ
6 電力系統
8 充放電器
10 アグリゲーションサーバ
12 PHV
14 バッテリ
110 プロセッサ
120 メモリ
121 充放電指示プログラム
122 SOC調整プログラム
130 ストレージ
131 車両情報データベース
図1
図2
図3