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特許7604992推定支援装置、コンピュータプログラム、推定支援方法及び学習済みニューラルネットワークシステムの生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】推定支援装置、コンピュータプログラム、推定支援方法及び学習済みニューラルネットワークシステムの生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20241217BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20241217BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241217BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/367
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Y
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021055828
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152891
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】尾地 克弥
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特許第6579287(JP,B1)
【文献】国際公開第2019/181729(WO,A1)
【文献】特開2006-220617(JP,A)
【文献】特開2006-220616(JP,A)
【文献】特開平9-243716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子の寿命を推定する推定指標の第1時点での推定指標データを取得する推定指標データ取得部と、
前記蓄電素子の前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを取得する負荷データ取得部と、
前記第1時点での推定指標データ及び前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを入力し、前記第2時点での推定指標データを出力する学習済みニューラルネットワークシステムと
を備え
前記学習済みニューラルネットワークシステムは、
前記第1時点での推定指標データを入力し、前記蓄電素子の前記第1時点での特徴量を出力する第1ニューラルネットワークレイヤと、
前記第1ニューラルネットワークレイヤが出力する第1時点での特徴量及び前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを入力し、前記蓄電素子の前記第2時点での特徴量を出力する第2ニューラルネットワークレイヤと、
前記第2ニューラルネットワークレイヤが出力する前記第2時点での特徴量を入力し、前記第2時点での推定指標データを出力する第3ニューラルネットワークレイヤと
を備える、
推定支援装置。
【請求項2】
前記推定指標は、
前記蓄電素子のSOC又は放電容量の変化に対する電圧の推移を示す放電曲線を含む、
請求項1に記載の推定支援装置。
【請求項3】
前記推定指標は、
さらに、前記蓄電素子のSOC又は放電容量の変化に対する容量を含む、
請求項1又は請求項に記載の推定支援装置。
【請求項4】
前記推定指標は、
さらに、前記蓄電素子のSOC又は放電容量の変化に対する直流抵抗を含む、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の推定支援装置。
【請求項5】
前記時系列負荷データは、
前記蓄電素子の時系列電圧データ及び時系列温度データを含む、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の推定支援装置。
【請求項6】
コンピュータに、
蓄電素子の寿命を推定する推定指標の第1時点での推定指標データを取得し、
前記蓄電素子の前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを取得し、
前記第1時点での推定指標データ及び前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを
前記第1時点での推定指標データを入力し、前記蓄電素子の前記第1時点での特徴量を出力する第1ニューラルネットワークレイヤと、
前記第1ニューラルネットワークレイヤが出力する第1時点での特徴量及び前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを入力し、前記蓄電素子の前記第2時点での特徴量を出力する第2ニューラルネットワークレイヤと、
前記第2ニューラルネットワークレイヤが出力する前記第2時点での特徴量を入力し、前記第2時点での推定指標データを出力する第3ニューラルネットワークレイヤと
を備える学習済みニューラルネットワークシステムに入力し、前記第2時点での推定指標データを出力する、
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項7】
蓄電素子の寿命を推定する推定指標の第1時点での推定指標データを取得し、
前記蓄電素子の前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを取得し、
前記第1時点での推定指標データ及び前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを
前記第1時点での推定指標データを入力し、前記蓄電素子の前記第1時点での特徴量を出力する第1ニューラルネットワークレイヤと、
前記第1ニューラルネットワークレイヤが出力する第1時点での特徴量及び前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを入力し、前記蓄電素子の前記第2時点での特徴量を出力する第2ニューラルネットワークレイヤと、
前記第2ニューラルネットワークレイヤが出力する前記第2時点での特徴量を入力し、前記第2時点での推定指標データを出力する第3ニューラルネットワークレイヤと
を備える学習済みニューラルネットワークシステムに入力し、前記第2時点での推定指標データを出力する、
推定支援方法。
【請求項8】
蓄電素子の寿命を推定する推定指標の第1時点での推定指標データを取得し、
前記蓄電素子の前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを取得し、
前記蓄電素子の前記第2時点での推定指標データを取得し、
前記第1時点での推定指標データ及び前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを
前記第1時点での推定指標データを入力し、前記蓄電素子の前記第1時点での特徴量を出力する第1ニューラルネットワークレイヤと、
前記第1ニューラルネットワークレイヤが出力する第1時点での特徴量及び前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを入力し、前記蓄電素子の前記第2時点での特徴量を出力する第2ニューラルネットワークレイヤと、
前記第2ニューラルネットワークレイヤが出力する前記第2時点での特徴量を入力し、前記第2時点での推定指標データを出力する第3ニューラルネットワークレイヤと
を備えるニューラルネットワークシステムに入力し、前記ニューラルネットワークシステムが出力する推定指標データが、前記第2時点での推定指標データに近づくように前記ニューラルネットワークシステムを学習させる、
学習済みニューラルネットワークシステムの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定支援装置、コンピュータプログラム、推定支援方法及び学習済みニューラルネットワークシステムの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電素子(Energy Storage Device)は、無停電電源装置、安定化電源に含まれる直流又は交流電源装置等に広く使用されている。また、再生可能エネルギー又は既存の発電システムにて発電された電力を蓄電しておく蓄電システムにも蓄電素子の利用が拡大している。蓄電素子は、充放電を繰り返すことで劣化が進行することが知られている。
【0003】
特許文献1には、蓄電デバイスの複数の運転条件での実測データに基づいて任意の運転条件での寿命予測式を導出することにより、任意の運転条件において蓄電デバイスの寿命を予測する寿命予測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2014/103705号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の寿命予測式においては、蓄電素子の使用初期段階に見られる容量の一時的な増加や直流抵抗の一時的な減少を適切な近似関数でフィッティングすることができないため、精度よく寿命を予測できない場合がある。また、蓄電素子が既に劣化した状態からの寿命予測方法は確立されていない。
【0006】
本発明は、蓄電素子の寿命の推定を支援する推定支援装置、コンピュータプログラム、推定支援方法及び学習済みニューラルネットワークシステムの生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る推定支援装置は、蓄電素子の寿命を推定する推定指標の第1時点での推定指標データを取得する推定指標データ取得部と、前記蓄電素子の前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを取得する負荷データ取得部と、前記第1時点での推定指標データ及び前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを入力し、前記第2時点での推定指標データを出力する学習済みニューラルネットワークシステムとを備える。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、蓄電素子の寿命の推定を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】推定支援装置の構成を示すブロック図である。
図2】学習済みニューラルネットワークシステムの入出力データの一例を示す模式図である。
図3】推定指標の一例を示す模式図である。
図4】時系列負荷データの一例を示す模式図である。
図5】学習済みニューラルネットワークシステムの構成の一例を示す模式図である。
図6】学習済みニューラルネットワークシステムの生成方法の一例を示す模式図である。
図7】推定支援システムの構成を示す模式図である。
図8】蓄電素子の寿命の推定支援処理の手順を示すフローチャートである。
図9】学習済みニューラルネットワークシステムの生成処理の手順を示すフローチャートである。
図10】初期状態の蓄電素子の劣化後の推定指標の第1評価を示す説明図である。
図11】初期状態の蓄電素子の劣化後の推定指標の第2評価を示す説明図である。
図12】劣化状態の蓄電素子の劣化後の推定指標の第1評価を示す説明図である。
図13】劣化状態の蓄電素子の劣化後の推定指標の第2評価を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
推定支援装置は、蓄電素子の寿命を推定する推定指標の第1時点での推定指標データを取得する推定指標データ取得部と、前記蓄電素子の前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを取得する負荷データ取得部と、前記第1時点での推定指標データ及び前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを入力し、前記第2時点での推定指標データを出力する学習済みニューラルネットワークシステムとを備える。
【0011】
コンピュータプログラムは、コンピュータに、蓄電素子の寿命を推定する推定指標の第1時点での推定指標データを取得し、前記蓄電素子の前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを取得し、前記第1時点での推定指標データ及び前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを学習済みニューラルネットワークシステムに入力し、前記第2時点での推定指標データを出力する、処理を実行させる。
【0012】
推定支援方法は、蓄電素子の寿命を推定する推定指標の第1時点での推定指標データを取得し、前記蓄電素子の前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを取得し、前記第1時点での推定指標データ及び前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを学習済みニューラルネットワークシステムに入力し、前記第2時点での推定指標データを出力する。
【0013】
学習済みニューラルネットワークシステムの生成方法は、蓄電素子の寿命を推定する推定指標の第1時点での推定指標データを取得し、前記蓄電素子の前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを取得し、前記蓄電素子の前記第2時点での推定指標データを取得し、前記第1時点での推定指標データ及び前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データをニューラルネットワークシステムに入力し、前記ニューラルネットワークシステムが出力する推定指標データが、前記第2時点での推定指標データに近づくように前記ニューラルネットワークシステムを学習させる。
【0014】
推定指標データ取得部は、蓄電素子の寿命を推定する推定指標の第1時点での推定指標データを取得する。推定指標は、蓄電素子の寿命を推定することができる指標であればよく、蓄電素子の状態を表す特性を含む。例えば、ある時点における推定指標により、当該時点における蓄電素子の寿命を推定することが可能となる。推定指標データは、推定指標の実際の数値を表す。第1時点は、任意の時点とすることができ、例えば、蓄電素子の使用開始時(新品時)でもよく、ある程度の期間に亘って使用した後の時点(劣化後の時点)でもよい。
【0015】
負荷データ取得部は、当該蓄電素子の第1時点から第2時点までの時系列負荷データを取得する。時系列負荷データは、蓄電素子の使用中において蓄電素子に対して負荷となる時系列データであり、蓄電素子の劣化の要因となる時系列データであればよい。第2時点は、蓄電素子の寿命を推定する時点(寿命推定時点)とすることができる。例えば、第1時点を現時点とし、蓄電素子の6か月後の寿命を推定したい場合、第2時点は、第1時点の6か月後の時点とすることができる。第2時点と第1時点との間の時間差(期間)は、寿命を推定したい時点に応じて適宜決定すればよく、例えば、3か月後、6か月後、1年後、2年後などとすることができる。
【0016】
学習済みニューラルネットワークシステムは、第1時点での推定指標データ及び第1時点から第2時点までの時系列負荷データを入力すると、第2時点での推定指標データを出力することができる。すなわち、学習済みニューラルネットワークシステムは、第1時点での推定指標データ及び第1時点から第2時点までの時系列負荷データをニューラルネットワークシステムに入力し、当該ニューラルネットワークシステムが出力する推定指標データが、第2時点での推定指標データに近づくように学習することにより、生成されている。
【0017】
上述の構成により、例えば、現時点(第1時点)の推定指標データと、現時点から所要の寿命推定時点(第2時点)までの時系列負荷データとを学習済みニューラルネットワークシステムに入力することにより、所要の寿命推定時点における推定指標データを得ることができる。これにより、精度よく寿命を推定(予測)することができ、また、蓄電素子が既に劣化した状態からの寿命の推定も行うことができ、蓄電素子の寿命の推定を支援することができる。
【0018】
推定支援装置において、前記学習済みニューラルネットワークシステムは、前記第1時点での推定指標データを入力し、前記蓄電素子の前記第1時点での特徴量を出力する第1ニューラルネットワークレイヤと、前記第1ニューラルネットワークレイヤが出力する第1時点での特徴量及び前記第1時点から第2時点までの時系列負荷データを入力し、前記蓄電素子の前記第2時点での特徴量を出力する第2ニューラルネットワークレイヤと、前記第2ニューラルネットワークレイヤが出力する前記第2時点での特徴量を入力し、前記第2時点での推定指標データを出力する第3ニューラルネットワークレイヤとを備える。
【0019】
学習済みニューラルネットワークシステムは、第1ニューラルネットワークレイヤ、第2ニューラルネットワークレイヤ、及び第3ニューラルネットワークレイヤを備えてもよい。第1ニューラルネットワークレイヤは、第1時点での推定指標データを入力すると、蓄電素子の第1時点での特徴量を出力する。第2ニューラルネットワークレイヤは、第1ニューラルネットワークレイヤが出力する第1時点での特徴量及び第1時点から第2時点までの時系列負荷データを入力すると、蓄電素子の第2時点での特徴量を出力する。第3ニューラルネットワークレイヤは、第2ニューラルネットワークレイヤが出力する第2時点での特徴量を入力すると、第2時点での推定指標データを出力する。
【0020】
第1ニューラルネットワークレイヤは、例えば、畳み込み層、あるいは畳み込み層を含むエンコーダで構成することができ、推定指標データを表す2次元データ(「画像」とみなすことができる)に基づいて、推定指標データが包含する2次元空間的に意味のある特徴量を抽出することができる。
【0021】
第2ニューラルネットワークレイヤは、リカレントニューラルネットワーク(RNN)で構成することができ、より具体的には、LSTM(Long Short Term Memory)ネットワークで構成することができる。LSTMネットワークの初期状態を第1ニューラルネットワークレイヤが出力する、第1時点での特徴量とする。LSTMネットワークの各LSTMには、第1時点から第2時点までの時系列負荷データが入力される。
【0022】
第3ニューラルネットワークレイヤは、例えば、逆畳み込み層、あるいは逆畳み込み層を含むデコーダで構成することができ、第2ニューラルネットワークレイヤが出力する第2時点での特徴量に基づいて、第2時点での推定指標データを表す2次元データを出力する。
【0023】
上述の構成により、第1時点における推定指標データを2次元データ(画像)とみなし、推定指標データが包含する2次元空間的に意味のある特徴量を抽出し、抽出した特徴量を時系列負荷データによって更新して第2時点での特徴量を求め、第2時点での特徴量から推定指標データを求めることにより、蓄電素子の寿命を推定する推定指標の第1時点から第2時点までの間の変化を求めることができる。
【0024】
推定支援装置において、前記推定指標は、前記蓄電素子の放電関連量の変化に対する電圧の推移を示す放電曲線を含む。
【0025】
推定指標は、蓄電素子の放電関連量の変化に対する電圧の推移を示す放電曲線を含めてもよい。放電関連量は、SOCでもよく、放電容量でもよい。放電曲線は、蓄電素子の寿命の推定に用いることができる指標であり、例えば、横軸をSOC(又は放電容量)とし、縦軸を電圧とする2次元空間上で放電時のSOC(又は放電容量)の減少に伴う電圧の推移を曲線で表す。これにより、寿命推定時(第2時点)での放電曲線を求めることができる。
【0026】
推定支援装置において、前記推定指標は、さらに、前記蓄電素子の放電関連量の変化に対する容量を含む。
【0027】
推定指標は、さらに、蓄電素子の放電関連量の変化に対する容量を含めてもよい。容量は、蓄電素子の寿命の推定に用いることができる指標であり、例えば、横軸をSOC(又は放電容量)とし、縦軸を容量とする2次元空間上で放電時のSOC(又は放電容量)の減少に伴う容量の推移を曲線で表す。なお、1回の放電時のSOC(又は放電容量)の減少に伴って容量は変化しないので、容量の推移は一定の直線で表される。これにより、寿命推定時(第2時点)での容量を求めることができる。
【0028】
推定支援装置において、前記推定指標は、さらに、前記蓄電素子の放電関連量の変化に対する直流抵抗を含む。
【0029】
推定指標は、さらに、蓄電素子の放電関連量の変化に対する直流抵抗を含めてもよい。直流抵抗は、蓄電素子の寿命の推定に用いることができる指標であり、例えば、横軸をSOC(又は放電容量)とし、縦軸を抵抗とする2次元空間上で放電時のSOC(又は放電容量)の減少に伴う抵抗の推移を曲線で表す。なお、1回の放電時のSOC(又は放電容量)の減少に伴って抵抗は変化しないので、直流抵抗の推移は一定の直線で表される。これにより、寿命推定時(第2時点)での直流抵抗を求めることができる。
【0030】
推定支援装置において、前記時系列負荷データは、前記蓄電素子の時系列電圧データ及び時系列温度データを含む。
【0031】
時系列負荷データは、蓄電素子の時系列電圧データ及び時系列温度データを含めてもよい。これにより、蓄電素子の使用中の充放電時の電圧の推移、温度の推移に応じた、蓄電素子の劣化の進行状況を反映して寿命推定時(第2時点)での推定指標を求めることができる。
【0032】
以下、図面を参照しながら、推定支援装置、コンピュータプログラム、推定支援方法及び学習済みニューラルネットワークシステムの生成方法の実施形態を説明する。
【0033】
図1は推定支援装置50の構成を示すブロック図である。推定支援装置50は、装置全体を制御する制御部51、通信部52、記憶部53、操作部54、表示パネル55、推定部56、及び学習処理部57を備える。推定部56は、学習済みニューラルネットワークシステム561を備える。学習処理部57は、学習が完了していないニューラルネットワークシステム571を備える。
【0034】
制御部51は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される。記憶部53は、ハードディスク又は半導体メモリ等で構成され、所要のデータを記憶する。
【0035】
通信部52は、有線通信機能又は無線通信機能を備え、外部の端末装置との間でデータの送受信を行うことができる。具体的には、通信部52は、推定指標データ取得部としての機能を有し、蓄電素子の寿命を推定する推定指標の第1時点での推定指標データを取得する。蓄電素子は、例えば、蓄電セル、蓄電モジュールを意味する。推定指標は、蓄電素子の寿命を推定することができる指標であればよく、蓄電素子の状態を表す特性を含む。例えば、ある時点における推定指標により、当該時点における蓄電素子の寿命を推定することが可能となる。推定指標データは、推定指標の実際の数値を表す。第1時点は、任意の時点とすることができ、例えば、蓄電素子の使用開始時(新品時)でもよく、ある程度の期間に亘って使用した後の時点(劣化後の時点)でもよい。
【0036】
また、通信部52は、負荷データ取得部としての機能を有し、推定指標データが取得された当該蓄電素子の第1時点から第2時点までの時系列負荷データを取得する。時系列負荷データは、蓄電素子の使用中において蓄電素子に対して負荷となる時系列データであり、蓄電素子の劣化の要因となる時系列データであればよい。第2時点は、蓄電素子の寿命を推定する時点(寿命推定時点)とすることができる。例えば、第1時点を現時点とし、蓄電素子の6か月後の寿命を推定したい場合、第2時点は、第1時点の6か月後の時点とすることができる。第2時点と第1時点との間の時間差(期間)は、寿命を推定したい時点に応じて適宜決定すればよく、例えば、3か月後、6か月後、1年後、2年後などとすることができる。
【0037】
通信部52を介して取得した推定指標データ及び推定指標データは、蓄電素子を識別する識別子と対応付けて記憶部53に記憶される。
【0038】
表示パネル55は、液晶パネル、有機EL(Electro Luminescence)パネル等で構成される。
【0039】
操作部54は、キーボード又はポインティングデバイス等で構成される。操作部54は、表示パネル55のタッチパネルでもよい。
【0040】
推定部56(学習済みニューラルネットワークシステム561)は、第1時点での推定指標データ及び第1時点から第2時点までの時系列負荷データを入力すると、第2時点での推定指標データを出力する。
【0041】
上述の構成により、例えば、現時点(第1時点)の推定指標データと、現時点から所要の寿命推定時点(第2時点)までの時系列負荷データとを学習済みニューラルネットワークシステムに入力することにより、所要の寿命推定時点における推定指標データを得ることができる。これにより、精度よく寿命を推定(予測)することができ、また、蓄電素子が既に劣化した状態からの寿命の推定も行うことができ、蓄電素子の寿命の推定を支援することができる。
【0042】
推定部56及び学習処理部57は、例えば、CPU(例えば、複数のプロセッサコアを実装したマルチ・プロセッサなど)、GPU(Graphics Processing Units)、DSP(Digital Signal Processors)、FPGA(Field-Programmable Gate Arrays)などのハードウェアを組み合わせることによって構成することができる。学習済みニューラルネットワークシステム561に代えて、他の機械学習モデルでもよい。
【0043】
以下、学習済みニューラルネットワークシステム561の詳細について説明する。なお、学習処理部57の詳細は後述する。
【0044】
図2は学習済みニューラルネットワークシステム561の入出力データの一例を示す模式図である。図2に示すように、学習済みニューラルネットワークシステム561には、入力データとして、第1時点(例えば、現時点)での推定指標データ、第1時点から第2時点までの時系列負荷データが入力される。推定指標データには、蓄電素子の放電曲線、容量、直流抵抗、dQ/dV曲線の各データを含めることができる。dQ/dV曲線は、放電時の残存容量Qを電圧Vで微分して得られる値をプロットしたものである。また、時系列負荷データには、電圧データ、温度データを含めることができる。学習済みニューラルネットワークシステム561は、出力データとして、第2時点での推定指標データを出力する。第2時点での推定指標データには、蓄電素子の放電曲線、容量、直流抵抗の各データを含めることができる。なお、推定指標データにdQ/dV曲線を含めなくてもよい。
【0045】
図3は推定指標の一例を示す模式図である。図3において、横軸はSOC(充電状態、残存容量:State of Charge)を示し、縦軸は電圧、容量、抵抗、dQ/dVを示す。放電曲線は、蓄電素子の放電時のSOCの変化に対する電圧の推移を表す曲線である。放電曲線は、蓄電素子の寿命の推定に用いることができる指標であり、横軸をSOCとし、縦軸を電圧とする2次元空間上で放電時のSOCの減少に伴う電圧の推移を表す。これにより、寿命推定時(第2時点)での放電曲線を求めることができる。
【0046】
容量は、蓄電素子の寿命の推定に用いることができる指標であり、例えば、横軸をSOCとし、縦軸を容量とする2次元空間上で放電時のSOCの減少に伴う容量の推移を曲線で表す。なお、1回の放電時のSOCの減少に伴って容量は変化しないので、図3に示すように、容量の推移は一定の直線で表される。これにより、寿命推定時(第2時点)での容量を求めることができる。
【0047】
直流抵抗は、蓄電素子の寿命の推定に用いることができる指標であり、例えば、横軸をSOCとし、縦軸を抵抗とする2次元空間上で放電時のSOCの減少に伴う抵抗の推移を曲線で表す。なお、1回の放電時のSOCの減少に伴って抵抗は変化しないので、図3に示すように、直流抵抗の推移は一定の直線で表される。これにより、寿命推定時(第2時点)での直流抵抗を求めることができる。
【0048】
dQ/dV曲線は、放電時の残存容量Qを電圧Vで微分して得られる値をプロットしたものである。dQ/dV曲線は、SOC10%付近のショルダーピーク領域、SOC20%以下の低SOC領域、SOC20~40%のピーク領域、SOC60~80%の平坦部とピーク領域との移行領域、SOC60~100%の高SOC領域の特徴を2次元空間上で表すことができる。
【0049】
図3の例では、横軸を放電関連量としてのSOCとしたが、SOCに代えて、放電時の放電量(電流×時間)である放電容量としてもよい。なお、図3に示す放電曲線、容量、直流抵抗は一例であり、蓄電素子の劣化状態や種類などに応じて推移や値が異なる曲線、直線で表される。
【0050】
図4は時系列負荷データの一例を示す模式図である。図4において、横軸は時間を示し、縦軸は電圧又は温度を示す。図4では、第1時点(t0)から第2時点(tn)までの電圧の時系列データ(電圧データ)及び温度の時系列データ(温度データ)が図示されている。なお、電圧データ及び温度データの推移は一例であって、図4の例に限定されるものではない。第1時点から第2時点までをn等分し、時点t1、t2、…、t(k-1)、tk、…、tnとする。電圧データは、{V(t1)、V(t2)、…、V(tk)、…、V(tn)}で表すことができ、温度データは{T(t1)、T(t2)、…、T(tk)、…、T(tn)}で表すことができる。
【0051】
上述のように、時系列負荷データは、蓄電素子の時系列電圧データ及び時系列温度データを含めてもよい。これにより、蓄電素子の使用中の充放電時の電圧の推移、温度の推移に応じた、蓄電素子の劣化の進行状況を反映して寿命推定時(第2時点)での推定指標を求めることができる。
【0052】
ここで、V(tk)は、時点t(k-1)と時点tkとの間の所定時点における電圧のサンプリング値でもよく、あるいは、時点t(k-1)と時点tkとの間の電圧の平均値でもよい。時点tkと時点t(k-1)との間隔は、10分、30分、1時間、6時間、12時間、24時間など適宜決定すればよい。
【0053】
同様に、T(tk)は、時点t(k-1)と時点tkとの間の所定時点における温度のサンプリング値でもよく、あるいは、時点t(k-1)と時点tkとの間の温度の平均値でもよい。温度データは、電圧データよりも緩やかな変化を示す場合が多いので、時点tkと時点t(k-1)との間隔は、1時間、6時間、24時間など適宜決定すればよい。
【0054】
図5は学習済みニューラルネットワークシステム561の構成の一例を示す模式図である。図5に示すように、学習済みニューラルネットワークシステム561は、例えば、第1ニューラルネットワークレイヤ5611、第2ニューラルネットワークレイヤ5612、及び第3ニューラルネットワークレイヤ5613を備えてもよい。
【0055】
第1ニューラルネットワークレイヤ5611は、第1時点での推定指標データを入力すると、蓄電素子の第1時点での特徴量C0を出力する。第2ニューラルネットワークレイヤ5612は、第1ニューラルネットワークレイヤ5611が出力する第1時点での特徴量C0及び第1時点から第2時点までの時系列負荷データを入力すると、蓄電素子の第2時点での特徴量Cnを出力する。ここで、第1時点から第2時点までの時系列負荷データは、図4で例示したように、電圧データV(t1)、V(t2)、…、V(tn)と温度データT(t1)、T(t2)、…、T(tn)とを含む。第3ニューラルネットワークレイヤ5613は、第2ニューラルネットワークレイヤ5612が出力する第2時点での特徴量Cnを入力すると、第2時点での推定指標データを出力する。
【0056】
第1ニューラルネットワークレイヤ5611は、例えば、畳み込み層、あるいは畳み込み層を含むエンコーダで構成することができ、推定指標データを表す2次元データ(「画像」とみなすことができる)に基づいて、推定指標データが包含する2次元空間的に意味のある特徴量C0を抽出することができる。第1ニューラルネットワークレイヤ5611の入力層は、例えば、100×4の2次元配列の推定指標データを受け付けることができる。なお、図3に示すように、推定指標データを表す2次元データは、放電曲線、容量、直流抵抗及びdQ/dV曲線それぞれの2次元空間上の推移を含むだけではなく、放電曲線、容量、直流抵抗及びdQ/dV曲線の相互の(相対的な)2次元空間上の位置関係も含む。
【0057】
第2ニューラルネットワークレイヤ5612は、リカレントニューラルネットワーク(RNN)で構成することができ、より具体的には、LSTM(Long Short Term Memory)ネットワークで構成することができる。図5では、LSTMネットワークを、n個のLSTMで表している。第2ニューラルネットワークレイヤ5612の入力層は、例えば、n×2の2次元配列の時系列負荷データを受け付けることができる。LSTMネットワークの初期状態を第1ニューラルネットワークレイヤ5611が出力する、第1時点での特徴量C0とする。LSTMネットワークのn個のLSTMには、それぞれ電圧データV(t1)及び温度データT(t1)、電圧データV(t2)及び温度データT(t2)、…、電圧データV(tn)及び温度データT(tn)が入力される。第1番目のLSTMは、特徴量C0を特徴量C1に更新する。第2番目のLSTMは、特徴量C1を特徴量C2に更新する。以降、同様にして、第n番目のLSTMは、特徴量Cnを出力する。なお、LSTMの数nは、時系列負荷データの時間長に応じて適宜設定することができ、可変長の時系列負荷データを扱うことができる。LSTMの数nは、例えば、95を用いてもよい。
【0058】
第3ニューラルネットワークレイヤ5613は、例えば、逆畳み込み層、あるいは逆畳み込み層を含むデコーダで構成することができ、第2ニューラルネットワークレイヤ5612が出力する第2時点での特徴量Cnに基づいて、第2時点での推定指標データを表す2次元データを出力する。
【0059】
上述の構成により、第1時点における推定指標データを2次元データ(画像)とみなし、推定指標データが包含する2次元空間的に意味のある特徴量C0を抽出し、抽出した特徴量を時系列負荷データによって更新して第2時点での特徴量Cnを求め、第2時点での特徴量から推定指標データを求めることにより、蓄電素子の寿命を推定する推定指標の第1時点から第2時点までの間の変化を求めることができる。
【0060】
学習済みニューラルネットワークシステム561が出力した第2時点での推定指標と、当該第2時点から第3時点までの時系列負荷データとを学習済みニューラルネットワークシステム561に再度入力することにより、第3時点での推定指標を得ることができる。このように、学習済みニューラルネットワークシステム561が出力した推定指標を再度、学習済みニューラルネットワークシステム561に入力するとともに、対応する時系列負荷データを入力する処理を繰り返すことにより、蓄電素子の長期に亘る寿命の推定を行うことができる。
【0061】
次に、学習処理部57について説明する。学習処理部57は、ニューラルネットワークシステム571を学習させて、学習済みニューラルネットワークシステム561を生成する。なお、推定支援装置50が学習済みニューラルネットワークシステム561を生成する必要がない場合、学習処理部57は省略してもよい。
【0062】
図6は学習済みニューラルネットワークシステム561の生成方法の一例を示す模式図である。図6に示すように、蓄電素子の第1時点での推定指標データ(放電曲線、容量、直流抵抗、dQ/dV曲線の各データ)、当該蓄電素子の第1時点から第2時点までの時系列負荷データ(電圧データ、温度データ)を学習用入力データとして収集する。また、当該蓄電素子の第2時点での推定指標データを教師データとして収集する。学習済みニューラルネットワークシステム561の生成は、収集した第1時点での推定指標データ及び第1時点から第2時点までの時系列負荷データをニューラルネットワークシステム571に入力し、ニューラルネットワークシステム571が出力する推定指標データが、第2時点での推定指標データ(教師データ)に近づくようにニューラルネットワークシステム571を学習させる。具体的には、ニューラルネットワークシステム571の出力データと教師データとの間の損失関数の値が最小になるようにニューラルネットワークシステム571のパラメータを調整する。損失関数の値が許容範囲内になれば学習を終了させることができ、学習済みニューラルネットワークシステム561を生成することができる。
【0063】
上述の例では、推定指標として、放電曲線、容量、直流抵抗及びdQ/dV曲線を全て含む構成について説明したが、推定指標は、放電曲線、容量、直流抵抗及びdQ/dV曲線のいずれか1つ、あるいはいずれか2つでもよい。
【0064】
図7は推定支援システムの構成を示す模式図である。図7に示すように、推定支援装置50は、通信ネットワーク1を介して外部の端末装置10、20、30と接続されている。端末装置10、20、30は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末又はスマートフォン等で構成することができる。端末装置10は、蓄電システム運用事業者が使用する端末装置であり、端末装置20は、リユース事業者が使用する端末装置であり、端末装置30は、リファービッシュ事業者が使用する端末装置である。なお、事業者の例は図7の例に限定されない。
【0065】
蓄電システム運用事業者は、端末装置10を用いて、現時点(第1時点)の蓄電素子(例えば、新品、あるいは劣化状態)の推定指標と、現時点から寿命推定時点(第2時点)までの蓄電素子の時系列負荷データ(負荷状態の予測データ)を推定支援装置50へ送信する。ここで、負荷状態の予測データは、蓄電素子の運用計画や過去の運用実績などから予測できる。推定支援装置50は、現時点での推定指標及び現時点から寿命推定時点までの時系列負荷データに基づいて、寿命推定時点での推定指標を求め、求めた寿命推定時点での推定指標を端末装置10へ送信する。これにより、蓄電システム運用事業者は、所要の時点での蓄電素子の寿命を推定することができ、蓄電素子の運用計画の立案や見直しを行うことができる。
【0066】
リユース事業者は、端末装置20を用いて、現時点の蓄電素子(劣化状態)の推定指標と、現時点から寿命推定時点までの蓄電素子の時系列負荷データを推定支援装置50へ送信する。ここで、時系列負荷データは、中古蓄電素子の一般的な使われ方等から予測してもよい。推定支援装置50は、現時点での推定指標及び現時点から寿命推定時点までの時系列負荷データに基づいて、寿命推定時点での推定指標を求め、求めた寿命推定時点での推定指標を端末装置10へ送信する。これにより、リユース事業者は、中古蓄電素子の残存寿命を推定することができ、中古市場での販売価格や蓄電素子の再利用先などを適宜決定できる。
【0067】
リファービッシュ事業者は、端末装置30を用いて、現時点の蓄電素子(劣化状態)の推定指標と、現時点から寿命推定時点までの蓄電素子の時系列負荷データを推定支援装置50へ送信する。ここで、時系列負荷データは、中古蓄電素子の一般的な使われ方等から予測してもよい。推定支援装置50は、現時点での推定指標及び現時点から寿命推定時点までの時系列負荷データに基づいて、寿命推定時点での推定指標を求め、求めた寿命推定時点での推定指標を端末装置10へ送信する。これにより、リファービッシュ事業者は、再利用可能な蓄電素子を層別して、中古蓄電素子を組み立てることができる。
【0068】
図8は蓄電素子の寿命の推定支援処理の手順を示すフローチャートである。以下では便宜上、処理の主体を制御部51として説明する。制御部51は、蓄電素子の第1時点の推定指標データを取得し(S11)、当該蓄電素子の第1時点から第2時点までの時系列負荷データを取得する(S12)。
【0069】
制御部51は、取得した推定指標データ及び時系列負荷データを学習済みニューラルネットワークシステム561に入力し(S13)、学習済みニューラルネットワークシステム561から第2時点の推定指標データを出力する(S14)。
【0070】
制御部51は、さらに長期の推定を行うか否かを判定し(S15)、推定を行う場合(S15でYES)、出力した第2時点の推定指標データを第1時点の推定指標データとし(S16)、ステップS12以降の処理を続ける。長期の推定を行わない場合(S15でNO)、制御部51は、処理を終了する。
【0071】
図9は学習済みニューラルネットワークシステム561の生成処理の手順を示すフローチャートである。学習処理部57は、学習処理部57からニューラルネットワークシステム571を読み出し(S21)、ニューラルネットワークシステム571のパラメータを初期値に設定する(S22)。ニューラルネットワークのパラメータは、例えば、重み、バイアス、畳み込みに使用するフィルタのパラメータ、LSTMのブロック数などを含む。
【0072】
学習処理部57は、学習用入力データとしての第1時点の推定指標データ、教師データとしての第2時点の推定指標データを取得し(S23)、学習用入力データとしての第1時点から第2時点までの時系列負荷データを取得する(S24)。なお、取得する各データは、予め学習用に収集されたデータから訓練用データとして区分されたものである。
【0073】
学習処理部57は、取得した第1時点の推定指標データ及び第1時点から第2時点までの時系列負荷データをニューラルネットワークシステム571に入力し(S25)、ニューラルネットワークシステム571が出力する推定指標データと第2時点の推定指標データとに基づく損失関数の値が最小となるようにパラメータを調整する(S26)。
【0074】
学習処理部57は、損失関数の値が許容範囲内であるか否かを判定し(S27)、許容範囲内でない場合(S27でNO)、ステップS23以降の処理を繰り返す。損失関数の値が許容範囲内である場合(S27でYES)、学習処理部57は、他の第1時点及び第2時点のデータの有無を判定する(S28)。
【0075】
他の第1時点及び第2時点のデータがある場合(S28でYES)、学習処理部57は、ステップS23以降の処理を繰り返す。他の第1時点及び第2時点のデータがない場合(S28でNO)、学習処理部57は、生成した学習済みニューラルネットワークシステム561を推定部56に記憶し(S29)、処理を終了する。図9の例では、学習データ1点ごとに損失関数を評価しているが(オンライン学習)、代替的に、複数の学習データをまとめて学習させてから、損失関数の値を評価する(ミニバッチ学習、バッチ学習)構成でもよい。(ミニ)バッチ学習を行うことにより、外れ値データに過剰にフィットした学習を防ぐことができる。
【0076】
推定支援装置50は、CPU(プロセッサ)、GPU、RAM(メモリ)などを備えた汎用コンピュータを用いて実現することもできる。すなわち、図8及び図9に示すような、各処理の手順を定めたコンピュータプログラムをコンピュータに備えられたRAM(メモリ)にロードし、コンピュータプログラムをCPU(プロセッサ)で実行することにより、コンピュータ上で推定支援装置50を実現することができる。コンピュータプログラムは記録媒体に記録され流通されてもよい。
【0077】
次に、推定支援装置50の推定精度について説明する。
【0078】
図10は初期状態の蓄電素子の劣化後の推定指標の第1評価を示す説明図である。図10Aは、初期状態の蓄電素子の劣化後の容量推移を示す。図10Aにおいて、横軸は充放電のサイクル数を示し、縦軸は容量を示す。0サイクル目は、蓄電素子が未使用の初期状態であることを示す。充放電サイクルは、SOC25%と100%との間で行い、温度は35℃とした。充放電のサイクル数が増加するにつれて蓄電素子の劣化は進行する。図10Aに示すように、推定支援装置50の容量推移の推定結果は、実測値の推移に沿って変化しており、精度良い推定結果が得られた。
【0079】
図10Bは、初期状態の蓄電素子の劣化後の直流抵抗推移を示す。図10Bにおいて、横軸は充放電のサイクル数を示し、縦軸は抵抗値を示す。0サイクル目は、蓄電素子が未使用の初期状態であることを示す。充放電サイクルは、SOC25%と100%との間で行い、温度は35℃とした。充放電のサイクル数が増加するにつれて蓄電素子の劣化は進行する。図10Bに示すように、推定支援装置50の直流抵抗推移の推定結果は、実測値の推移に沿って変化しており、精度良い推定結果が得られた。
【0080】
図11は初期状態の蓄電素子の劣化後の推定指標の第2評価を示す説明図である。図11Aは、初期状態の蓄電素子を1200サイクルの充放電を行って劣化させた場合の放電曲線を示し、図11Bは、初期状態の蓄電素子を2750サイクルの充放電を行って劣化させた場合の放電曲線を示す。図11において、横軸は放電容量を示し、縦軸は電圧を示す。なお、放電容量は、放電に使用された容量を示し、放電開始時の容量から放電容量を差し引いたものがSOCに相当する。図11A図11Bに示すように、推定支援装置50の放電曲線の推定結果は、実測値との差が小さく、精度良い推定結果が得られた。
【0081】
図12は劣化状態の蓄電素子の劣化後の推定指標の第1評価を示す説明図である。図12Aは、劣化状態の蓄電素子の劣化後の容量推移を示す。図12Aにおいて、横軸は充放電のサイクル数を示し、縦軸は容量を示す。図12では、1500サイクル目を初期入力値として用いている。蓄電素子が既に劣化状態であることを示す。充放電サイクルは、SOC25%と100%との間で行い、温度は35℃とした。充放電のサイクル数が増加するにつれて蓄電素子の劣化は進行する。図12Aに示すように、推定支援装置50の容量推移の推定結果は、実測値の推移に沿って変化しており、精度良い推定結果が得られた。
【0082】
図12Bは、劣化状態の蓄電素子の劣化後の直流抵抗推移を示す。図12Bにおいて、横軸は充放電のサイクル数を示し、縦軸は抵抗値を示す。1500サイクル目は、蓄電素子が劣化状態であることを示す。充放電サイクルは、SOC25%と100%との間で行い、温度は35℃とした。充放電のサイクル数が増加するにつれて蓄電素子の劣化は進行する。図12Bに示すように、推定支援装置50の直流抵抗推移の推定結果は、実測値の推移に沿って変化しており、精度良い推定結果が得られた。
【0083】
図13は劣化状態の蓄電素子の劣化後の推定指標の第2評価を示す説明図である。図13Aは、蓄電素子を2250サイクル(1500サイクル目を劣化状態の初期値とした場合、750サイクルに相当)の充放電を行って劣化させた場合の放電曲線を示し、図13Bは、蓄電素子を2750サイクル(1500サイクル目を劣化状態の初期値とした場合、1250サイクルに相当)の充放電を行って劣化させた場合の放電曲線を示す。図13において、横軸は放電容量を示し、縦軸は電圧を示す。なお、放電容量は、放電に使用された容量を示し、放電開始時の容量から放電容量を差し引いたものがSOCに相当する。図13A図13Bに示すように、推定支援装置50の放電曲線の推定結果は、実測値との差が小さく、精度良い推定結果が得られた。
【0084】
実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1 通信ネットワーク
10、20、30 端末装置
50 推定支援装置
51 制御部
52 通信部
53 記憶部
54 操作部
55 表示パネル
56 推定部
561 学習済みニューラルネットワークシステム
5611 第1ニューラルネットワークレイヤ
5612 第2ニューラルネットワークレイヤ
5613 第3ニューラルネットワークレイヤ
57 学習処理部
571 ニューラルネットワークシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13