特許 7604993 熱転写受像シート、印画物の製造方法及び印画物

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-12-16

(45)【発行日】2024-12-24

(54)【発明の名称】熱転写受像シート、印画物の製造方法及び印画物

(51)【国際特許分類】

   B41M 5/50 20060101AFI20241217BHJP

【ＦＩ】

B41M5/50 410

B41M5/50 420

【請求項の数】 10

(21)【出願番号】P 2021056048

(22)【出願日】2021-03-29

(65)【公開番号】P2022153029

(43)【公開日】2022-10-12

【審査請求日】2024-01-29

(73)【特許権者】

【識別番号】000002897

【氏名又は名称】大日本印刷株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100091487

【弁理士】

【氏名又は名称】中村 行孝

(74)【代理人】

【識別番号】100120031

【弁理士】

【氏名又は名称】宮嶋 学

(74)【代理人】

【識別番号】100120617

【弁理士】

【氏名又は名称】浅野 真理

(72)【発明者】

【氏名】伊藤 英雄

【審査官】中澤 俊彦

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１９－１７７６７０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開昭６２－１５６９９２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１５－０９１６４５（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１２－１０１３７０（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００３－３２０７５８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００６－２４３５５６（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ４１Ｍ ５／５０

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

裏面層と、基材と、受容層とをこの順に備える熱転写受像シートであって、
前記基材が、和紙基材を備え、
前記裏面層が、水溶性多糖類を含有し、
前記熱転写受像シートと、ＩＳＯビジュアル濃度が１．８１の黒色基準板とを重ね合わせ、前記熱転写受像シート側から当該熱転写受像シートを通して前記黒色基準板のＩＳＯビジュアル濃度を測定したときの値が、０．２０以上０．７０以下である、
熱転写受像シート。

【請求項2】

前記水溶性多糖類が、水溶性セルロース誘導体である、請求項１に記載の熱転写受像シート。

【請求項3】

前記水溶性セルロース誘導体が、カルボキシメチルセルロース及びその塩、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、並びにヒドロキシプロピルセルロースから選択される少なくとも１種である、請求項２に記載の熱転写受像シート。

【請求項4】

前記裏面層の厚さが、０．２μｍ以上２．５μｍ以下である、請求項１～３のいずれか１項に記載の熱転写受像シート。

【請求項5】

前記基材が、前記和紙基材と、透明樹脂層とを備える積層基材である、請求項１～４のいずれか１項に記載の熱転写受像シート。

【請求項6】

前記裏面層と前記和紙基材とが直接接している、請求項１～５のいずれか１項に記載の熱転写受像シート。

【請求項7】

（１）請求項１～６のいずれか１項に記載の熱転写受像シートを準備する工程と、
（２）前記熱転写受像シートが備える前記受容層に、画像を形成する工程と
を含む、印画物の製造方法。

【請求項8】

（３）前記画像が形成された受容層上に、保護層を形成する工程
をさらに含む、請求項７に記載の印画物の製造方法。

【請求項9】

請求項１～６のいずれか１項に記載の熱転写受像シートと、
前記熱転写受像シートが備える前記受容層に形成された画像と
を備える印画物。

【請求項10】

前記画像が形成された受容層上に、保護層をさらに備える、請求項９に記載の印画物。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、熱転写受像シート、印画物の製造方法及び印画物に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、種々の画像形成方法が知られている。その中でも昇華型熱転写方式は、濃度階調を自由に調整でき、中間色及び階調の再現性に優れ、銀塩写真に匹敵する高品質の画像形成が可能である。

【0003】

この昇華型熱転写方式では、昇華性染料を含有する昇華転写型色材層を備える熱転写シートと、受容層を備える熱転写受像シートとを重ね合わせ、次いで、プリンタが備えるサーマルヘッド等の発熱部材により熱転写シートを加熱することで、昇華転写型色材層中の昇華性染料を受容層に移行させて画像を形成することにより、印画物が得られる。

【0004】

従来、熱転写受像シートとして、外観及び手触り感など、和紙の風合いを有する熱転写受像紙が知られている（例えば、特許文献１及び２参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【文献】特開平０５－０３２０７７号公報

【文献】特開平０６－２６２８６８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

本開示者らは、基材として和紙を備える熱転写受像シートを用いた場合、該基材から和紙を構成する繊維が脱落し、熱転写プリンタが備えるグリップローラー等を汚染するという問題を見出した。

【0007】

本開示の解決しようとする課題は、基材として和紙を備える熱転写受像シートであって、和紙の外観及び手触り感を維持しながら、熱転写プリンタの作動時（該シートの搬送時）における和紙を構成する繊維の脱落が抑制された熱転写受像シートを提供することにあり、また、該熱転写受像シートを用いた印画物の製造方法、及び印画物を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0008】

本開示の熱転写受像シートは、裏面層と、基材と、受容層とをこの順に備え、基材が、和紙基材を備え、裏面層が、水溶性多糖類を含有する。ここで、上記熱転写受像シートと、ＩＳＯビジュアル濃度が１．８１の黒色基準板とを重ね合わせ、熱転写受像シート側から当該熱転写受像シートを通して黒色基準板のＩＳＯビジュアル濃度を測定したときの値が、０．２０以上０．７０以下である。

【0009】

本開示の印画物の製造方法は、（１）上記熱転写受像シートを準備する工程と、（２）上記熱転写受像シートが備える受容層に、画像を形成する工程とを含む。

【0010】

本開示の印画物は、上記熱転写受像シートと、上記熱転写受像シートが備える受容層に形成された画像とを備える。

【発明の効果】

【0011】

本開示によれば、基材として和紙を備える熱転写受像シートであって、和紙の外観及び手触り感を維持しながら、熱転写プリンタの作動時（該シートの搬送時）における和紙を構成する繊維の脱落が抑制された熱転写受像シートを提供でき、また、該熱転写受像シートを用いた印画物の製造方法、及び印画物を提供できる。

【図面の簡単な説明】

【0012】

【図1】図１は、本開示の熱転写受像シートの一実施形態を表す断面概略図である。

【図2】図２は、本開示の熱転写受像シートの一実施形態を表す断面概略図である。

【図3】図３は、本開示の印画物の一実施形態を表す断面概略図である。

【発明を実施するための形態】

【0013】

以下、本開示の実施形態を、図面等を参照しながら説明する。なお、本開示は多くの異なる形態で実施でき、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。

【0014】

図面は、説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、角度、形状等について模式的に表される場合がある。しかしながら、図面は、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。説明の便宜上、上又は下等という語句を用いて説明するが、上下方向が逆転してもよい。左右方向についても同様である。

【0015】

［熱転写受像シート］
本開示の熱転写受像シートは、裏面層と、基材と、受容層とを厚さ方向にこの順に備える。本開示において、基材における受容層とは反対側を「裏面側」ともいう。

【0016】

図１に示す一実施形態の熱転写受像シート１０は、裏面層１２と、和紙基材１４－１である基材１４と、受容層１６とを厚さ方向にこの順に備える。図２に示す他の実施形態の熱転写受像シート１０は、裏面層１２と、基材１４と、受容層１６とを厚さ方向にこの順に備え、基材１４が、和紙基材１４－１と接着層１４－２と透明樹脂層１４－３とを厚さ方向にこの順に備える。熱転写受像シート１０は、透明樹脂層１４－３と受容層１６との間に、図示せぬプライマー層を備えていてもよい。

【0017】

本開示の熱転写受像シートは、熱転写受像シートと、ＩＳＯビジュアル濃度が１．８１の黒色基準板とを重ね合わせ、熱転写受像シート側から当該熱転写受像シートを通して黒色基準板のＩＳＯビジュアル濃度を測定したときの値が、０．２０以上０．７０以下であり、好ましくは０．２５以上０．６５以下、より好ましくは０．３０以上０．６０以下である。このような熱転写受像シートにおいては、受容層側から和紙基材が透視可能である。したがって、本開示の熱転写受像シートは、和紙の外観を有する。
上記測定では、黒色基準板と、熱転写受像シートの裏面側（具体的には裏面層）とが接するように重ね合わせ、熱転写受像シートの受容層側から、黒色基準板のＩＳＯビジュアル濃度を測定する。上記測定では、一実施形態において、反射濃度計（ＲＤ－９１８ Ｘ－Ｒｉｔｅ社）を用いる。

【0018】

以下、本開示の熱転写受像シートが備える各層について詳細に説明する。本開示の熱転写受像シートにおいて、和紙基材以外の層は、和紙の外観を維持するため、可視光に対して透明性を有することが好ましい。

【0019】

＜基材＞
基材は、少なくとも和紙基材を備える。

【0020】

本開示において、和紙基材とは、楮（コウゾ）、三椏（ミツマタ）及び雁皮（ガンピ）等の靭皮長繊維を原料とし、これにネリを加えて手漉きして得られた和紙（狭義の和紙）のほか、靭皮長繊維、麻、ケナフ、レーヨン、パルプ及び合成繊維等の各種の長繊維を原料として機械的に漉いて得られる和紙（狭義の和紙に対して、和紙の風合いを持たせた和紙風又は和紙様の紙と呼ばれることもある）を包含する。和紙基材は、上記長繊維を１種又は２種以上用いて得ることができる。上記長繊維の長さは、一実施形態において５ｍｍ以上である。合成繊維を構成する合成ポリマーとしては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル及びポリビニルアルコールが挙げられる。本開示において、日本国内で製造された和紙のほか、日本以外の場所で製造された和紙も、和紙基材に包含される。

【0021】

和紙基材としては、具体的には、雲竜紙、楮紙、三椏紙、揉紙、友禅紙、板締紙、典具帖紙、強制紙、更紗紙、大礼紙及び奉書紙が挙げられる。

【0022】

和紙基材の坪量は、好ましくは５ｇ／ｍ²以上５０ｇ／ｍ²以下、より好ましくは６ｇ／ｍ²以上４０ｇ／ｍ²以下、さらに好ましくは８ｇ／ｍ²以上３５ｇ／ｍ²以下である。このような構成により、例えば、本開示の熱転写受像シートに和紙の風合いを付与できる。

【0023】

基材は、１つの和紙基材のみからなる単層構造を有してもよく、２つ以上の和紙基材からなる多層構造や、和紙基材と他の層とからなる多層構造を有してもよい。基材が多層構造を有する場合、多層構造の層数は、好ましくは２層以上５層以下、より好ましくは２層以上４層以下である。

【0024】

基材は、和紙基材に加えて、透明樹脂層を備えることが好ましい。すなわち、基材は、和紙基材と透明樹脂層との積層基材であることが好ましい。この場合、基材は、和紙基材の受容層側の面上に透明樹脂層を備えることが好ましい。和紙基材の表面は通常は凹凸を有することから、受容層の表面にも該凹凸を起因とする凹凸が形成されやすいが、このような構成により、例えば、受容層の表面平滑性を向上でき、したがって受容層への印画性を向上できる。また、このような構成においても、熱転写受像シートにおいて受容層側から和紙基材を透視可能である。積層基材は、例えば、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法及びエクストリュージョン法を利用することにより作製できる。

【0025】

透明樹脂層を構成する樹脂材料としては、透明性を有する樹脂材料であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル－酢酸ビニル共重合体及びエチレン－酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、ポリ（メタ）アクリル酸エステル等の（メタ）アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、並びにアイオノマー樹脂が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。透明樹脂層は、樹脂材料を１種又は２種以上含有できる。

【0026】

本開示において、「（メタ）アクリル」は「アクリル」と「メタクリル」との両方を包含する。また、「（メタ）アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」との両方を包含する。

【0027】

透明樹脂層は、添加剤を含有できる。添加剤としては、例えば、可塑剤、着色抑制剤、界面活性剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、帯電抑制剤、摩擦低減剤、スリップ剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、充填剤、並びに顔料及び染料等の着色剤が挙げられる。透明樹脂層は、添加剤を１種又は２種以上含有できる。

【0028】

透明樹脂層は、例えば、上記材料を水又は適当な有機溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、該塗工液を、公知の塗工手段により、透明樹脂層が積層される層等に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥させることにより形成できる。塗工手段としては、例えば、ロールコート法、リバースロールコート法、グラビアコート法、リバースグラビアコート法、バーコート法及びロッドコート法が挙げられる。

【0029】

有機溶媒としては、例えば、エチルアルコール及びイソプロピルアルコール等のアルコール溶媒；アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒；酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル溶媒；ｎ－ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の炭化水素溶媒；塩化メチレン及びクロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒；テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒；エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール溶媒；アセトニトリル及びＮ，Ｎ－ジメチルホルムアミド等の含窒素溶媒；並びにジメチルスルホキシド等の含硫黄溶媒が挙げられる。有機溶媒は、１種又は２種以上用いることができる。

【0030】

透明樹脂層は、上記樹脂材料により構成されるフィルム（以下「透明樹脂フィルム」ともいう）であることが好ましい。透明樹脂層が透明樹脂フィルムであることにより、受容層の表面平滑性をより向上できる。

【0031】

透明樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。機械的強度という観点から、透明樹脂フィルムとして、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムを使用することが好ましい。

【0032】

透明樹脂層の厚さは、機械的強度という観点から、好ましくは１０μｍ以上３００μｍ以下、より好ましくは３０μｍ以上２００μｍ以下、さらに好ましくは５０μｍ以上１００μｍ以下である。

【0033】

基材が和紙基材と透明樹脂層との積層基材である場合は、基材は、和紙基材と透明樹脂層との間に、接着層を備えることが好ましい。これにより、和紙基材と透明樹脂層との密着性を向上できる。

【0034】

接着層は、一実施形態において、樹脂材料を含有する。樹脂材料としては、透明性を有する樹脂材料であれば特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル－酢酸ビニル共重合体、エチレン－酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン等のビニル樹脂、ポリビニルアセトアセタール及びポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、（メタ）アクリル樹脂、ポリオール樹脂、並びにウレタン樹脂が挙げられる。接着層は、樹脂材料を１種又は２種以上含有できる。
接着層は、上記添加剤を１種又は２種以上含有できる。

【0035】

接着層の厚さは、例えば、０．５μｍ以上８μｍ以下である。

【0036】

接着層は、例えば、上記材料を水又は適当な有機溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、該塗工液を、上述した公知の塗工手段により、任意の層に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥させることにより形成できる。一実施形態において、接着層は、上記材料を含有する樹脂組成物を溶融押出することにより形成できる。

【0037】

接着層は、また、従来公知の接着剤を用いて形成できる。接着剤は、１液硬化型若しくは２液硬化型、又は非硬化型のいずれの接着剤であってもよい。接着剤は、無溶剤型の接着剤であってもよく、溶剤型の接着剤であってもよい。接着層は、例えば、ノンソルベントラミネート法により形成してもよく、ドライラミネート法により形成してもよい。

【0038】

接着剤としては、例えば、２液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステル系ポリウレタン接着剤、ポリエーテル系ポリウレタン接着剤、（メタ）アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、酸変性ポリオレフィン系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤及びポリ塩化ビニル系接着剤が挙げられる。

【0039】

＜裏面層＞
本開示の熱転写受像シートは、基材における受容層とは反対側の面上に、水溶性多糖類を含有する裏面層を備える。このような構成により、例えば、熱転写受像シートの裏面側における和紙の手触り感を維持しながら、和紙基材を構成する繊維の脱落を抑制でき、したがって熱転写プリンタを構成するグリップローラー等の汚染（例えば繊維の付着）を抑制でき、さらには熱転写受像シートの搬送性を向上できる。裏面層は、一実施形態において、熱転写受像シートの裏面側の表層を構成している。

【0040】

水溶性多糖類とは、２５℃の純水に１質量％以上溶解する多糖類を指す。
水溶性多糖類は、合成物であってもよく、天然物であってもよい。

【0041】

水溶性多糖類としては、例えば、水溶性セルロース誘導体、キサンタンガム、グアーガム、プルラン及びカラギーナンが挙げられ、水溶性セルロース誘導体が好ましい。水溶性セルロース誘導体としては、水溶性セルロースエーテルが好ましい。水溶性セルロースエーテルとは、セルロースに含まれるヒドロキシ基の少なくとも一部がエーテル置換された物質であって、水溶性を有するものをいう。水溶性セルロースエーテルにおける置換度（エーテル化度）は、水溶性を有する範囲であれば特に限定されない。

【0042】

水溶性セルロースエーテルとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース等のカルボキシ－Ｃ₁～Ｃ₃－アルキルセルロース又はその塩；カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等のカルボキシ－Ｃ₁～Ｃ₃－アルキルヒドロキシ－Ｃ₁～Ｃ₃－アルキルセルロース又はその塩；メチルセルロース等のＣ₁～Ｃ₃－アルキルセルロース；ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシ－Ｃ₁～Ｃ₃－アルキルセルロース；ヒドロキシエチルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシ－Ｃ₁～Ｃ₃－アルキル－Ｃ₁～Ｃ₃－アルキルセルロースが挙げられる。上記塩としては、例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、並びにアンモニウム塩が挙げられる。

【0043】

これらの中でも、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。

【0044】

水溶性多糖類の重量平均分子量は、好ましくは１０，０００以上２，０００，０００以下、より好ましくは１５，０００以上１，０００，０００以下、さらに好ましくは５０，０００以上５００，０００以下である。水溶性多糖類の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー－光散乱法（ＧＰＣ－ＬＳ）を用いたポリスチレン換算による測定値である。
裏面層は、水溶性多糖類を１種又は２種以上含有できる。

【0045】

裏面層における水溶性多糖類の含有割合は、好ましくは５０質量％以上、より好ましくは６０質量％以上、さらに好ましくは７０質量％以上、よりさらに好ましくは８０質量％以上である。このような構成により、上述した効果がより明瞭に得られる。
裏面層は、上記添加剤を１種又は２種以上含有できる。

【0046】

本開示の熱転写受像シートにおいて、上記裏面層は、基材における和紙基材に直接接していることが好ましい。このような構成により、熱転写受像シートの裏面側における和紙の手触り感を維持しながら、和紙基材を構成する繊維の脱落をより抑制できる。これは、裏面層に含まれる水溶性多糖類が、和紙基材を構成する繊維のバインダーとしても一部機能するためであると推測される。

【0047】

裏面層の厚さは、好ましくは０．２μｍ以上２．５μｍ以下、より好ましくは０．３μｍ以上２．０μｍ以下、さらに好ましくは０．５μｍ以上１．５μｍ以下である。厚さが下限値以上であれば、和紙基材を構成する繊維の脱落をより抑制できる。厚さが上限値以下であれば、熱転写受像シートの裏面側について和紙の手触り感を維持できる。裏面層の厚さは、熱転写受像シートの断面の走査型電子顕微鏡写真における任意の１０か所の厚さの平均値である。他の層の厚さについても同様である。

【0048】

裏面層は、例えば、上記材料を水に溶解して塗工液を調製し、該塗工液を、上述した公知の塗工手段により、基材（特に和紙基材）に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥させることにより形成できる。

【0049】

＜受容層＞
本開示の熱転写受像シートは、受容層を備える。受容層は、例えば、熱転写シートが備える昇華転写型色材層（染料層）から移行してくる昇華性染料を受容し、形成された画像を維持する層である。受容層は、熱転写受像シートにおいて受容層側から和紙基材を透視可能であることが好ましいことから、透明性を有する受容層であることが好ましい。

【0050】

受容層は、一実施形態において、樹脂材料を含有する。樹脂材料としては、染料が染着し易く、かつ透明性を有する樹脂材料であれば限定されないが、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル－酢酸ビニル共重合体及びエチレン－酢酸ビニル共重合体等のビニル樹脂、ポリ（メタ）アクリル酸エステル等の（メタ）アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、アイオノマー樹脂、並びにセルロース樹脂が挙げられる。受容層は、樹脂材料を１種又は２種以上含有できる。

【0051】

受容層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは７０質量％以上９９質量％以下、より好ましくは８０質量％以上９８質量％以下、さらに好ましくは９０質量％以上９７質量％以下である。

【0052】

受容層は、一実施形態において、離型剤を含有する。これにより、例えば、熱転写受像シートと熱転写シートとの離型性を向上できる。離型剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、テフロン（登録商標）パウダー等の固形ワックス類；フッ素系又はリン酸エステル系界面活性剤；シリコーンオイル、及びシリコーン樹脂が挙げられる。

【0053】

シリコーンオイルとしては、反応性シリコーンオイル及び硬化型シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルが好ましい。変性シリコーンオイルとしては、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン、エポキシ－アラルキル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン及びウレタン変性シリコーンが好ましく、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アラルキル変性シリコーン及びエポキシ－アラルキル変性シリコーンが挙げられる。
受容層は、離型剤を１種又は２種以上含有できる。

【0054】

受容層における離型剤の含有割合は、好ましくは０．５質量％以上２０質量％以下、より好ましくは０．５質量％以上１０質量％以下である。これにより、例えば、受容層の透明性を維持しつつ、熱転写受像シートと熱転写シートとの離型性を向上できる。

【0055】

受容層は、上記添加剤を１種又は２種以上含有できる。

【0056】

受容層の厚さは、好ましくは０．５μｍ以上２０μｍ以下、より好ましくは１μｍ以上１０μｍ以下である。これにより、例えば、受容層に形成される画像の濃度をより向上できる。

【0057】

受容層は、例えば、上記材料を水又は適当な有機溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、該塗工液を、上述した公知の塗工手段により、受容層が積層される層に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥させることにより形成できる。

【0058】

＜プライマー層＞
本開示の熱転写受像シートは、一実施形態において、透明樹脂層と受容層との間に、プライマー層を備える。これにより、これらの層間の密着性を向上できる。プライマー層は、熱転写受像シートにおいて受容層側から和紙を透視可能であることが好ましいことから、透明性を有するプライマー層であることが好ましい。

【0059】

プライマー層は、一実施形態において、樹脂材料を含有する。樹脂材料としては、透明性を有する樹脂材料であれば特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ウレタン樹脂、（メタ）アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂及びセルロース樹脂が挙げられる。プライマー層は、樹脂材料を１種又は２種以上含有できる。
プライマー層は、上記添加剤を１種又は２種以上含有できる。

【0060】

プライマー層の厚さは、例えば、０．１μｍ以上３μｍ以下である。

【0061】

プライマー層は、例えば、上記材料を水又は適当な有機溶媒へ分散又は溶解して塗工液を調製し、該塗工液を、上述した公知の塗工手段により、透明樹脂層等に塗布して塗膜を形成し、これを乾燥させることにより形成することができる。

【0062】

［印画物］
本開示の印画物は、上記熱転写受像シートを用いて作製されたものであり、上記熱転写受像シートと、上記熱転写受像シートが備える受容層に形成された画像とを備える。各層の詳細は上述したとおりである。

【0063】

受容層に形成された画像は、文字、模様、記号及びこれらの組合せ等、特に限定されない。画像は、例えば、従来公知の昇華型熱転写記録方式や溶融型熱転写記録方式の熱転写シートを用いることにより、受容層に形成できる。

【0064】

＜保護層＞
本開示の印画物は、一実施形態において、画像が形成された受容層上に、保護層を備える。図３に示す一実施形態の印画物２０は、裏面層１２と、基材１４と、図示せぬ画像が形成された受容層１６と、保護層２２とを厚さ方向にこの順に備える。

【0065】

保護層は、一実施形態において、樹脂材料を含有する。樹脂材料としては、透明性を有する樹脂材料であれば特に限定されないが、例えば、（メタ）アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース樹脂、熱硬化性樹脂の硬化物及び活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物が挙げられる。保護層は、樹脂材料を１種又は２種以上含有できる。

【0066】

熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、熱硬化性ウレタン樹脂、熱硬化性（メタ）アクリル樹脂及びアミノアルキッド樹脂が挙げられる。

【0067】

活性エネルギー線硬化性樹脂は、活性エネルギー線の照射を受けて硬化する樹脂である。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線（ＵＶ）、Ｘ線及びγ線等の電磁波；電子線（ＥＢ）、α線及びイオン線等の荷電粒子線が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、多官能（メタ）アクリレートモノマー及び多官能（メタ）アクリレートオリゴマーが挙げられる。

【0068】

保護層における樹脂材料の含有割合は、好ましくは５０質量％以上、より好ましくは５０質量％以上９５質量％以下である。これにより、例えば、受容層に形成された画像の耐擦過性及び保存安定性を向上できる。
保護層は、上記添加剤を１種又は２種以上含有できる。

【0069】

保護層の厚さは、好ましくは０．１μｍ以上１０μｍ以下、より好ましくは０．５μｍ以上５μｍ以下である。これにより、例えば、受容層に形成された画像の耐擦過性及び保存安定性を向上できる。

【0070】

［印画物の製造方法］
本開示の印画物の製造方法は、（１）本開示の熱転写受像シートを準備する工程と、（２）上記熱転写受像シートが備える受容層に、画像を形成する工程（画像形成工程）とを含む。本開示の印画物の製造方法は、一実施形態において、（３）画像が形成された受容層上に、保護層を形成する工程（保護層形成工程）を含む。
熱転写受像シートの構成については上述したため、ここでは記載を省略する。

【0071】

画像の形成方法としては、例えば、従来公知の昇華型熱転写記録方式や溶融型熱転写記録方式の熱転写シートを用いる方法が挙げられる。昇華型熱転写記録方式では、昇華性染料を含有する昇華転写型色材層を備える熱転写シートを用いて、昇華性染料を受容層に転写することにより、画像が形成される。溶融型熱転写記録方式では、溶融転写型色材層を備える熱転写シートを用いて、溶融転写型色材層を受容層上に転写することにより、画像が形成される。また、これらを組み合わせて画像を形成してもよい。

【0072】

保護層は、従来公知の方法により形成でき、例えば、保護層を備える保護層転写シートから保護層を画像が形成された受容層上に転写することにより形成できる。保護層は、保護層形成用のフィルムを受容層上に接着層等を介して積層して形成してもよい。保護層の詳細は、上述したとおりである。保護層転写シートは、上記色材層と面順次に保護層を備える熱転写シートであってもよい。

【0073】

上記画像は、具体的には、上記熱転写シートと本開示の熱転写受像シートとを重ね合わせ、サーマルヘッド等の発熱部材により上記熱転写シートの背面側から熱を印加して、昇華転写型色材層に含まれる昇華性染料を受容層に転写することにより、又は溶融転写型色材層を受容層上に転写することにより、形成される。

【0074】

上記保護層は、具体的には、受容層に画像が形成された熱転写受像シートと、上記保護層転写シートとを重ね合わせ、サーマルヘッド等の発熱部材により上記保護層転写シートの背面側から熱を印加して、受容層上に保護層を転写することにより、形成される。

【0075】

本開示は、例えば以下の［１］～［１０］に関する。
［１］裏面層と、基材と、受容層とをこの順に備える熱転写受像シートであって、基材が、和紙基材を備え、裏面層が、水溶性多糖類を含有し、熱転写受像シートと、ＩＳＯビジュアル濃度が１．８１の黒色基準板とを重ね合わせ、熱転写受像シート側から当該熱転写受像シートを通して黒色基準板のＩＳＯビジュアル濃度を測定したときの値が、０．２０以上０．７０以下である、熱転写受像シート。
［２］水溶性多糖類が、水溶性セルロース誘導体である、上記［１］に記載の熱転写受像シート。
［３］水溶性セルロース誘導体が、カルボキシメチルセルロース及びその塩、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、並びにヒドロキシプロピルセルロースから選択される少なくとも１種である、上記［２］に記載の熱転写受像シート。
［４］裏面層の厚さが、０．２μｍ以上２．５μｍ以下である、上記［１］～［３］のいずれかに記載の熱転写受像シート。
［５］基材が、和紙基材と、透明樹脂層とを備える積層基材である、上記［１］～［４］のいずれかに記載の熱転写受像シート。
［６］裏面層と和紙基材とが直接接している、上記［１］～［５］のいずれかに記載の熱転写受像シート。
［７］（１）上記［１］～［６］のいずれかに記載の熱転写受像シートを準備する工程と、（２）熱転写受像シートが備える受容層に、画像を形成する工程とを含む、印画物の製造方法。
［８］（３）画像が形成された受容層上に、保護層を形成する工程をさらに含む、上記［７］に記載の印画物の製造方法。
［９］上記［１］～［６］のいずれかに記載の熱転写受像シートと、熱転写受像シートが備える受容層に形成された画像とを備える印画物。
［１０］画像が形成された受容層上に、保護層をさらに備える、上記［９］に記載の印画物。

【実施例】

【0076】

以下、実施例に基づき、本開示の熱転写受像シート等をさらに詳細に説明するが、本開示の熱転写受像シート等は、これら実施例に限定されるものではない。以下の記載において、「部」は「質量部」を意味する。

【0077】

［実施例１］
和紙（三和製紙（株）、品番：Ｃ４０１、品名：レーヨン雲竜（パルプ入り）、坪量：９ｇ／ｍ²）の一方の面に、下記組成の裏面層用塗工液Ａを塗布及び乾燥し、厚さ１μｍの裏面層を形成した。透明ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）フィルム（三菱ケミカル（株）、ダイアホイル（登録商標）Ｓ１００－７５、厚さ７５μｍ）の一方の面に、下記組成のプライマー層用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ１μｍの透明プライマー層（透明Ｐｒ層）を形成した。透明Ｐｒ層上に、下記組成の受容層用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ４μｍの受容層を形成した。このようにして、透明ＰＥＴフィルム／透明Ｐｒ層／受容層からなる積層体を得た。透明ＰＥＴフィルムの他方の面に、下記組成の接着層用塗工液を塗布及び乾燥し、厚さ２．５μｍの接着層を形成した。上記積層体上の接着層に、裏面層が形成された上記和紙を貼り合わせることで、熱転写受像シートを得た。

【0078】

＜裏面層用塗工液Ａ＞
・カルボキシメチルセルロースナトリウム ５部
（ＣＭＣダイセル（登録商標）、ダイセルミライズ（株））
・水 ９５部

【0079】

＜プライマー層用塗工液＞
・ポリエステル（固形分：２５質量％） ４０部
（バイロナール（登録商標）ＭＤ－１４８０、東洋紡（株））
・充填剤 ９部
（ラポナイトＪＳ、ウイルパー・エリス（株））
・界面活性剤 ０．０８部
（ダイノール６０４、日信化学工業（株））
・イソプロピルアルコール ６０部
・水 １２０部

【0080】

＜受容層用塗工液＞
・塩化ビニル－酢酸ビニル共重合体 １２部
（ソルバイン（登録商標）Ｃ、日信化学工業（株））
・エポキシ変性シリコーン ０．８部
（Ｘ－２２－３０００Ｔ、信越化学工業（株））
・アミノ変性シリコーン ０．２４部
（Ｘ－２２－１６６０Ｂ－３、信越化学工業（株））
・トルエン ３０部
・メチルエチルケトン ３０部

【0081】

＜接着層用塗工液＞
・多官能ポリオール ３０部
（タケラック（登録商標）Ａ－９６９Ｖ、三井化学（株））
・イソシアネート系硬化剤 １０部
（タケネート（登録商標）Ａ－５、三井化学（株））
・酢酸エチル ６０部

【0082】

［実施例２～５、比較例１～７］
熱転写受像シートの各層の構成を表１に記載したとおりに変更したこと以外は実施例１と同様にして、熱転写受像シートを得た。以下、用いた裏面層用塗工液及び製品の詳細を記載する。表１において、裏面層用塗工液Ａを用いて形成された裏面層を「裏面層Ａ」と記載する。裏面層用塗工液Ｂ～Ｅについても同様である。

【0083】

＜裏面層用塗工液Ｂ＞
・メチルセルロース ５部
（メトローズ（登録商標）ＳＭ－１５、信越化学工業（株））
・水 ９５部

【0084】

＜裏面層用塗工液Ｃ＞
・ヒドロキシエチルセルロース ５部
（ＨＥＣダイセル（登録商標）ＳＰ２００、ダイセルミライズ（株））
・水 ９５部

【0085】

＜裏面層用塗工液Ｄ＞
・ヒドロキシプロピルセルロース ５部
（ＨＰＣ－ＳＬ、日本曹達（株））
・水 ９５部

【0086】

＜裏面層用塗工液Ｅ＞
・酢酸セルロース ５部
（Ｌ－２０、（株）ダイセル）
・メチルエチルケトン ９５部

【0087】

・和紙１：三和製紙（株）、品番：Ｃ４０１、品名：レーヨン雲竜（パルプ入り）、
坪量：９ｇ／ｍ²
・和紙２：三和製紙（株）、品番：Ａ４０３、品名：レーヨン雲竜、
坪量：３０ｇ／ｍ²
・ユトリロコート：ユトリロ（登録商標）コート（Ａ２）、一般紙、
坪量８４．９ｇ／ｍ²、大王製紙（株）
・透明ＰＥＴ：透明ポリエチレンテレフタレートフィルム、三菱ケミカル（株）、
ダイアホイル（登録商標）Ｓ１００－７５、厚さ７５μｍ
・白ＰＥＴ：白色ポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡（株）、
ＦＫ２０２、厚さ７５μｍ、

【0088】

［評価］
＜透明性＞
実施例及び比較例で得られた熱転写受像シートを、その受容層側から目視し、以下の評価基準に基づいて透明性を評価した。
・Ａ：透け感があり、意匠性が高い。
・ＮＧ：透け感が殆どなく、意匠性に乏しい。

【0089】

＜外観評価＞
実施例及び比較例で得られた熱転写受像シートを、その受容層側から目視し、以下の評価基準に基づいて外観を評価した。
・Ａ：外観が和紙様である。
・ＮＧ：外観が和紙様ではない。

【0090】

＜ＩＳＯビジュアル濃度＞
実施例及び比較例で得られた熱転写受像シートと、反射濃度計（ＲＤ－９１８ Ｘ－Ｒｉｔｅ社）の黒色校正板（黒色基準板）とを、当該黒色校正板と熱転写受像シートの裏面側とが接するように重ね合わせ、反射濃度計（ＲＤ－９１８ Ｘ－Ｒｉｔｅ社）を用いて、熱転写受像シートの受容層側から、黒色校正板の反射濃度（ＩＳＯビジュアル濃度）を測定した。なお、熱転写受像シートと重ね合わせる前の、黒色校正板の反射濃度（黒色校正板単体の反射濃度）は、１．８１であった。

【0091】

＜手触り感評価＞
実施例及び比較例で得られた熱転写受像シートの裏面側（受容層とは反対側）を触った際の感触を、以下の評価基準に基づいて評価した。
・Ａ：和紙の手触り感がある。
・ＮＧ：和紙の手触り感がない。

【0092】

＜プリンタ搬送性評価＞
実施例及び比較例で得られた熱転写受像シートを、昇華型熱転写プリンタＤＳ６２０（大日本印刷（株））及び当該プリンタの純正熱転写シートと組み合わせて、５０枚の印画を行い、印画物にレジズレが発生しているかを目視で確認し、以下の評価基準に基づいて搬送性評価を行った。レジズレとは、搬送性不足による印画位置ズレであり、ＹパネルやＭパネル印画後の受像シートが正規位置まで搬送されず、画像にズレが生じており、印画品質が著しく劣化している状態を意味する。また、レジズレの発生がないことは、搬送性が良好であることを意味する。
・Ａ：印画物にレジズレの発生はなかった。
・ＮＧ：印画物にレジズレが発生した。

【0093】

＜グリップローラー汚染＞
実施例及び比較例で得られた熱転写受像シートを、昇華型熱転写プリンタＤＳ６２０（大日本印刷（株））及び当該プリンタの純正熱転写シートと組み合わせて、５０枚の印画を行った。この際、グリップローラーの汚染を、以下の評価基準に基づいて評価した。
・Ａ：グリップローラーに和紙の繊維起因のゴミ付着がみられない。
・ＮＧ：グリップローラーに和紙の繊維起因のゴミ付着がたくさんみられる。

【0094】

＜繊維の脱落＞
実施例及び比較例で得られた熱転写受像シートを、昇華型熱転写プリンタＤＳ６２０（大日本印刷（株））及び当該プリンタの純正熱転写シートと組み合わせて、５０枚の印画を行った。この際、繊維の脱落を、以下の評価基準に基づいて評価した。
・Ａ：繊維の脱落がみられない。
・ＮＧ：繊維の脱落がみられる。

【0095】

【表1】

【符号の説明】

【0096】

１０：熱転写受像シート
１２：裏面層
１４：基材
１４－１：和紙基材
１４－２：接着層
１４－３：透明樹脂層
１６：受容層
２０：印画物
２２：保護層

【図1】

【図2】

【図3】