(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
B41J 19/18 20060101AFI20241217BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241217BHJP
H02P 29/028 20160101ALI20241217BHJP
H02P 29/20 20160101ALI20241217BHJP
【FI】
B41J19/18 F
B41J2/01 401
B41J2/01 451
H02P29/028
H02P29/20
(21)【出願番号】P 2021058135
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】法亢 昌広
(72)【発明者】
【氏名】市川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 英輔
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-168028(JP,A)
【文献】特開2009-143196(JP,A)
【文献】特開2021-041659(JP,A)
【文献】特開2021-045862(JP,A)
【文献】特開平01-101173(JP,A)
【文献】特開2010-036575(JP,A)
【文献】米国特許第06371593(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 19/18
B41J 2/01
H02P 29/028
H02P 29/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータにより駆動されて通路上を移動し、対象物を加工するように構成される移動体と、
エンコーダスケールと、前記移動体と連動して前記エンコーダスケールに対して相対移動し、前記エンコーダスケールの読取に基づくエンコーダ信号を出力するように構成されるセンサと、を備えるエンコーダと、
前記エンコーダ信号に基づき、前記通路での前記移動体の移動状態を表す状態量を計測する計測器と、
計測された前記状態量に基づき、前記モータを制御することにより、前記移動体の移動を制御するように構成されるコントローラと、
を備え、
前記移動体の移動開始地点から停止地点までの移動経路には、前記移動体が前記移動開始地点から定速状態に移行するまでの加速区間と、前記移動体が定速状態から前記停止地点で停止するまでの減速区間と、前記加速区間と前記減速区間との間の中間区間と、が含まれ、前記中間区間に前記移動体が前記対象物を加工する加工区間が含まれ、
前記コントローラは、
前記センサによる前記エンコーダスケールの正常な読取を阻害する阻害物が付着した前記エンコーダスケール内の部位を、前記センサが読み取る前記移動体の移動領域である阻害領域の前記中間区間内での有無を判定し、
判定した前記阻害領域の有無に応じて、第一の制御方式及び第二の制御方式を含む複数の制御方式のうちの一つを選択し、選択した制御方式で前記移動経路における前記移動体の移動を制御し、
前記第一の制御方式は、前記中間区間のうちの前記加工区間では、前記移動体を第一の速度で定速移動させ、前記中間区間のうちの前記加工区間以外の区間である非加工区間では、少なくとも部分的に、前記移動体を前記第一の速度より高い速度である第二の速度で定速移動させるように、前記移動体の移動を制御する方式であり、前記阻害領域がないと判定された場合に選択され、
前記第二の制御方式は、前記加工区間及び前記非加工区間において、前記移動体を前記第一の速度で定速移動させるように、前記移動体の移動を制御する方式であり、前記阻害領域があると判定された場合に選択される制御システム。
【請求項2】
前記阻害領域の有無を判定することは、前記中間区間内の特定区間であって、仮に前記第一の制御方式で前記移動体の移動を制御したときに前記第一の速度と前記第二の速度との間で前記移動体が非定速移動する特定区間での前記阻害領域の有無を判定することを含み、
前記コントローラは、前記特定区間に前記阻害領域があると判定した場合に、前記第二の制御方式を選択して、前記第二の制御方式で前記移動体の移動を制御し、前記特定区間に前記阻害領域がないと判定した場合には、前記中間区間における前記特定区間外の前記阻害領域の有無に依らず、前記第一の制御方式を選択して、前記第一の制御方式で前記移動体の移動を制御する請求項1記載の制御システム。
【請求項3】
前記阻害領域の有無を判定することは、前記中間区間が前記加工区間により分離された第一及び第二の非加工区間を前記非加工区間として備える場合に、前記特定区間として、仮に前記第一の制御方式で前記移動体の移動を制御したときに前記移動体が非定速移動する前記第一の非加工区間内の区間である第一の非定速区間、及び、前記移動体が非定速移動する前記第二の非加工区間内の区間である第二の非定速区間での、前記阻害領域の有無を判定することを含み、
前記コントローラは、前記第一の非定速区間及び前記第二の非定速区間の両者に前記阻害領域があると判定した場合には、前記第二の制御方式で前記移動体の移動を制御し、前記第二の非定速区間に前記阻害領域がなく前記第一の非定速区間に前記阻害領域があると判定した場合には、前記第二の制御方式に代えて、第三の制御方式で前記移動体の移動を制御し、前記第一の非定速区間に前記阻害領域がなく前記第二の非定速区間に前記阻害領域があると判定した場合には、第四の制御方式で前記移動体の移動を制御し、
前記第三の制御方式は、前記中間区間のうち、前記加工区間及び前記加工区間に隣接する前記第一の非加工区間では、前記移動体を前記第一の速度で定速移動させ、前記第二の非加工区間では、少なくとも部分的に、前記移動体を前記第二の速度で定速移動させるように、前記移動体の移動を制御する方式であり、
前記第四の制御方式は、前記中間区間のうち、前記加工区間及び前記加工区間に隣接する前記第二の非加工区間では、前記移動体を前記第一の速度で定速移動させ、前記第一の非加工区間では、少なくとも部分的に、前記移動体を前記第二の速度で定速移動させるように、前記移動体の移動を制御する方式である請求項2記載の制御システム。
【請求項4】
モータと、
前記モータにより駆動されて通路上を移動し、対象物を加工するように構成される移動体と、
エンコーダスケールと、前記移動体と連動して前記エンコーダスケールに対して相対移動し、前記エンコーダスケールの読取に基づくエンコーダ信号を出力するように構成されるセンサと、を備えるエンコーダと、
前記エンコーダ信号に基づき、前記通路での前記移動体の移動状態を表す状態量を計測する計測器と、
計測された前記状態量に基づき、前記モータを制御することにより、前記移動体の移動を制御するように構成されるコントローラと、
を備え、
前記移動体の移動開始地点から停止地点までの移動経路には、前記移動体が前記移動開始地点から定速状態に移行するまでの加速区間と、前記移動体が定速状態から前記停止地点で停止するまでの減速区間と、前記加速区間と前記減速区間との間の中間区間と、が含まれ、前記中間区間に前記移動体が前記対象物を加工する加工区間が含まれ、
前記コントローラは、
前記センサによる前記エンコーダスケールの正常な読取を阻害する阻害物が付着した前記エンコーダスケール内の部位を、前記センサが読み取る前記移動体の移動領域である阻害領域の前記中間区間内の前記加工区間以外の区間である非加工区間での有無を判定し、
判定した前記阻害領域の有無に応じて、第一の制御方式及び第二の制御方式を含む複数の制御方式のうちの一つを選択し、選択した制御方式で前記移動経路における前記移動体の移動を制御し、
前記第一の制御方式は、前記中間区間のうちの前記加工区間では、前記移動体を第一の速度で定速移動させ、前記中間区間のうちの前記非加工区間では、少なくとも部分的に、前記移動体を前記第一の速度より高い速度である第二の速度で定速移動させるように、前記移動体の移動を制御する方式であり、前記阻害領域がないと判定されたときに選択され、
前記第二の制御方式は、前記中間区間のうちの、前記加工区間及び前記加工区間に隣接する区間であって前記阻害領域を含む前記加工区間の端点と前記阻害領域の端点との間の区間である加工隣接区間では、前記移動体を前記第一の速度で定速移動させ、前記加工隣接区間を除く前記非加工区間では、少なくとも部分的に、前記移動体を前記第二の速度で定速移動させるように、前記移動体の移動を制御する方式であり、前記阻害領域があると判定されたときに選択される制御システム。
【請求項5】
前記阻害領域の有無を判定することは、前記非加工区間内の特定区間であって、仮に前記第一の制御方式で前記移動体の移動を制御したときに前記第一の速度と前記第二の速度との間で前記移動体が非定速移動する特定区間での、前記阻害領域の有無を判定することを含み、
前記第一の制御方式は、前記阻害領域が前記特定区間にないと判定されたときに選択され、前記第二の制御方式は、前記阻害領域が前記特定区間にあると判定されたときに選択される請求項4記載の制御システム。
【請求項6】
前記コントローラは、
判定した前記阻害領域の有無に応じて前記複数の制御方式のうちの一つを選択し、選択した制御方式で前記移動体の移動を制御する第一の動作モードと、
前記阻害領域の有無によらず、前記第一の制御方式で前記移動体の移動を制御する第二の動作モードと、
を有し、前記第一の動作モード及び前記第二の動作モードのうち、ユーザからの指定に応じた動作モードで前記移動体の移動を制御する請求項1~請求項5のいずれか一項記載の制御システム。
【請求項7】
前記コントローラは、
判定した前記阻害領域の有無に応じて前記複数の制御方式のうちの一つを選択し、選択した制御方式で前記移動体の移動を制御する第一の動作モードと、
前記阻害領域の有無によらず、前記第一の制御方式で前記移動体の移動を制御する第二の動作モードと、
を有し、前記第一の動作モード及び前記第二の動作モードのうち、前記対象物の材質又は加工方法に応じた動作モードで前記移動体の移動を制御する請求項1~請求項5のいずれか一項記載の制御システム。
【請求項8】
前記移動体は、インク液滴を吐出するように構成された吐出ヘッドを搭載し、前記吐出ヘッドからインク液滴を吐出することにより、前記対象物に対する加工動作として、前記対象物に画像を形成する動作を実行するように構成にされ、
前記コントローラは、前記指定として、前記ユーザから第一の画質が指定された場合には、前記第一の動作モードで前記移動体の移動を制御し、前記ユーザから前記第一の画質よりも低い第二の画質が指定された場合には、前記第二の動作モードで前記移動体の移動を制御し、前記加工区間では、前記吐出ヘッドによるインク液滴の吐出を制御することにより、指定された画質で前記対象物に前記画像が形成されるように、前記移動体の移動及び前記インク液滴の吐出を制御する請求項6記載の制御システム。
【請求項9】
前記計測器は、前記状態量として、前記移動体の速度を少なくとも計測し、
前記コントローラは、前記移動開始地点からの前記移動体の移動を制御するのに先駆けて、前記移動体の前記移動開始地点から目標停止地点までの前記移動体の目標速度を定義した速度プロファイルを設定し、前記移動を制御することの開始後には、前記計測器により計測された前記移動体の速度と前記速度プロファイルに従う前記目標速度との偏差に基づき、前記移動体の速度をフィードバック制御する請求項1~請求項8のいずれか一項記載の制御システム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記阻害領域外では、前記偏差に応じた操作量で前記モータを駆動することにより、前記移動体の速度をフィードバック制御するが、前記阻害領域内では、前記偏差に依らない前記阻害領域での前記目標速度に応じた所定の操作量で前記モータを駆動する請求項9記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいて、画像領域の間に挟まれた非画像領域では、インクジェットヘッドを搭載するキャリッジの移動速度を高くすることにより、処理の高速化を図る技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理ヘッドを搭載したキャリッジの移動により対象物を加工するシステムは、例えばエンコーダスケールを、キャリッジと共に移動するセンサで読み取ることにより、キャリッジの位置及び速度を計測する。計測された位置及び速度は、キャリッジの移動制御に使用される。
【0005】
このエンコーダスケールを用いた計測は、エンコーダスケールに読取を阻害する阻害物が付着している場合、少なくともその付着場所に対応する領域をキャリッジ及びセンサが通過するときに、正常に行うことができなくなる。例えば、処理ヘッドがインクジェットヘッドであるときには、エンコーダスケールにインク汚れがあるとき、その汚れがエンコーダスケールの正常な読取を阻害する。
【0006】
キャリッジが高い速度帯で加減速するときには、僅かな時間の阻害が、キャリッジの移動状態を正確に把握することを困難にする可能性があり、それにより、キャリッジの適切な移動制御を困難にする可能性がある。
【0007】
そこで、本開示の一側面によれば、対象物を加工する移動体の移動を制御するシステムにおいて、エンコーダスケールに付着する阻害物に起因した制御精度の低下の影響を抑えつつ、移動体を高速移動可能な技術を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面によれば、制御システムが提供される。制御システムは、モータと、移動体と、エンコーダと、計測器と、コントローラとを備える。移動体は、モータにより駆動されて通路上を移動し、対象物を加工するように構成される。
【0009】
エンコーダは、エンコーダスケールと、移動体と連動してエンコーダスケールに対して相対移動し、エンコーダスケールの読取に基づくエンコーダ信号を出力するように構成されるセンサとを備える。
【0010】
計測器は、エンコーダ信号に基づき、通路での移動体の移動状態を表す状態量を計測する。コントローラは、計測された状態量に基づき、モータを制御することにより、移動体の移動を制御するように構成される。
【0011】
移動体の移動開始地点から停止地点までの移動経路には、移動体が移動開始地点から定速状態に移行するまでの加速区間と、移動体が定速状態から停止地点で停止するまでの減速区間と、加速区間と減速区間との間の中間区間と、が含まれ、中間区間に移動体が対象物を加工する加工区間が含まれる。
【0012】
コントローラは、センサによるエンコーダスケールの正常な読取を阻害する阻害物が付着したエンコーダスケール内の部位を、センサが読み取る移動体の移動領域である阻害領域の中間区間内での有無を判定する。
【0013】
コントローラは、判定した阻害領域の有無に応じて、第一の制御方式及び第二の制御方式を含む複数の制御方式のうちの一つを選択し、選択した制御方式で移動経路における移動体の移動を制御する。
【0014】
第一の制御方式は、中間区間のうちの加工区間では、移動体を第一の速度で定速移動させ、中間区間のうちの加工区間以外の区間である非加工区間では、少なくとも部分的に、移動体を第一の速度より高い速度である第二の速度で定速移動させるように、移動体の移動を制御する方式である。第一の制御方式は、阻害領域がないと判定された場合に選択される。
【0015】
第二の制御方式は、加工区間及び非加工区間において、移動体を第一の速度で定速移動させるように、移動体の移動を制御する方式である。第二の制御方式は、阻害領域があると判定された場合に選択される。
【0016】
この制御システムによれば、中間区間内に阻害領域があるときに、中間区間内で移動体を高速移動させる制御を止めるように、移動体の移動制御が行われる。移動制御に関して、高速移動時には、計測阻害の影響が低速移動時と比較して大きい。
【0017】
従って、この制御システムによれば、阻害領域の存在に起因して計測器による正常な計測が阻害されることによる、キャリッジの移動制御に関する制御精度の低下の影響を抑えつつ、一律に移動体を高速移動させないシステムよりもキャリッジを高速移動させることができる。
【0018】
本開示の別側面に係る制御システムは、モータと、移動体と、エンコーダと、計測器と、コントローラとを備える。移動体は、モータにより駆動されて通路上を移動し、対象物を加工するように構成される。エンコーダ及び計測器の構成は、上述の制御システムと同様である。
【0019】
移動体の移動開始地点から停止地点までの移動経路には、移動体が移動開始地点から定速状態に移行するまでの加速区間と、移動体が定速状態から停止地点で停止するまでの減速区間と、加速区間と減速区間との間の中間区間と、が含まれる。中間区間に移動体が対象物を加工する加工区間が含まれる。
【0020】
コントローラは、センサによるエンコーダスケールの正常な読取を阻害する阻害物が付着したエンコーダスケール内の部位を、センサが読み取る移動体の移動領域である阻害領域の中間区間内の加工区間以外の区間である非加工区間での有無を判定する。
【0021】
コントローラは、判定した阻害領域の有無に応じて、第一の制御方式及び第二の制御方式を含む複数の制御方式のうちの一つを選択し、選択した制御方式で移動経路における移動体の移動を制御する。
【0022】
第一の制御方式は、中間区間のうちの加工区間では、移動体を第一の速度で定速移動させ、中間区間のうちの非加工区間では、少なくとも部分的に、移動体を第一の速度より高い速度である第二の速度で定速移動させるように、移動体の移動を制御する方式である。第一の制御方式は、阻害領域がないと判定されたときに選択される。
【0023】
第二の制御方式は、中間区間のうちの、加工区間及び加工区間に隣接する区間であって阻害領域を含む加工隣接区間では、移動体を第一の速度で定速移動させ、加工隣接区間を除く非加工区間では、少なくとも部分的に、移動体を第二の速度で定速移動させるように、移動体の移動を制御する方式である。加工隣接区間は、加工区間の端点と阻害領域の端点との間の区間に対応し得る。第二の制御方式は、阻害領域があると判定されたときに選択される。
【0024】
この制御システムによれば、中間区間内に阻害領域があるときに、阻害領域を含む区間では、移動体を高速移動させる制御が行われない。従って、この制御システムによれば、阻害領域の存在に起因して計測器による正常な計測が阻害されることによる、移動体の移動制御への影響を抑制しつつ、移動体を高速移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】画像形成システムの構成を表すブロック図である。
【
図2】印刷機構及びリニアエンコーダの構成を表す図である。
【
図3】リニアスケールに付着する汚れに関する説明図である。
【
図4】プロセッサが実行するメイン処理を表すフローチャートである。
【
図5】プロセッサが実行する印刷処理を表すフローチャートである。
【
図6】プロセッサが実行する速度プロファイル設定処理を表すフローチャート(その1)である。
【
図7】プロセッサが実行する速度プロファイル設定処理を表すフローチャート(その2)である。
【
図8】プロセッサが実行する標準速度プロファイル生成処理を表すフローチャートである。
【
図9】
図9Aは、第一の標準速度プロファイルを例示するグラフであり、
図9Bは、第二の標準速度プロファイルを例示するグラフである。
【
図10】
図10Aは、第三の標準速度プロファイルを例示するグラフであり、
図10Bは、第四の標準速度プロファイルを例示するグラフである。
【
図11】第一の標準速度プロファイルに対する修正後の速度プロファイルを説明するグラフである。
【
図12】
図12A及び
図12Bは、第二の標準速度プロファイルに対する修正後の速度プロファイルを説明するグラフである。
【
図13】CRモータ制御部が制御周期毎に実行するモータ制御処理を表すフローチャートである。
【
図14】リニアエンコーダ処理部が繰返し実行する補正処理を表すフローチャートである。
【
図15】変形例の速度プロファイル設定処理の一部を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1に示す本実施形態の画像形成システム1は、インクジェットプリンタとして構成される。この画像形成システム1は、記録ヘッド11と、キャリッジ12と、キャリッジ(CR)モータ13と、リニアエンコーダ14とを備える。記録ヘッド11、キャリッジ12、CRモータ13、及びリニアエンコーダ14は、
図2に詳細を示す印刷機構15の一部を構成する。
【0027】
印刷機構15は、CRモータ13からの動力を受けて、記録ヘッド11を搭載するキャリッジ12を主走査方向に移動させるように構成される。主走査方向は、用紙Pが搬送される副走査方向と直交する方向である。
【0028】
記録ヘッド11は、インク液滴を吐出するように構成される吐出ヘッドであり、所謂インクジェットヘッドである。記録ヘッド11は、キャリッジ12が主走査方向に沿って用紙Pを横断するように移動する際、インク液滴の吐出動作を実行して用紙Pに画像を形成する。CRモータ13は、直流モータであり、キャリッジ12を往復動させるための駆動源として機能する。
【0029】
リニアエンコーダ14は、インクリメンタル型の光学式リニアエンコーダであり、キャリッジ12の主走査方向における位置及び速度を計測するために用いられる。キャリッジ12の位置及び速度は、キャリッジ12の移動状態を表す状態量、換言すれば運動パラメータに対応する。
【0030】
画像形成システム1は、用紙Pの搬送を実現するために、ラインフィード(LF)モータ21と、ロータリエンコーダ22とを更に備える(
図1参照)。LFモータ21は、直流モータであり、用紙Pを副走査方向へ搬送する搬送ローラ(図示せず)を回転させるための駆動源として機能する。ロータリエンコーダ22は、インクリメンタル型の光学式ロータリエンコーダであり、搬送ローラの回転量及び回転速度を計測するために用いられる。
【0031】
画像形成システム1は、記録ヘッド11,CRモータ13、及びLFモータ21の駆動及び制御のために、ヘッドドライバ18と、CRモータドライバ19と、LFモータドライバ29と、ASIC2とを更に備える。ヘッドドライバ18は、ASIC2から入力される制御信号に従って、記録ヘッド11にインク液滴を吐出させるように、記録ヘッド11を駆動する。
【0032】
CRモータドライバ19は、ASIC2から入力される制御信号に従って、CRモータ13を回転駆動する。LFモータドライバ29は、ASIC2から入力される制御信号に従って、LFモータ21を回転駆動する。
【0033】
ASIC2は、各ドライバ18,19,29に対して制御信号を入力することにより、記録ヘッド11によるインク液滴の吐出動作、CRモータ13によるキャリッジ12の搬送動作、及びLFモータ21による用紙Pの搬送動作を制御するように構成される。ASIC2は、記録制御部31と、CRモータ制御部32と、LFモータ制御部33と、リニアエンコーダ処理部34と、ロータリエンコーダ処理部35とを備える。
【0034】
ここで、画像形成システム1が備える印刷機構15の具体的構成を、
図2を用いて説明する。印刷機構15は、キャリッジ12の通路を規定するガイド軸41を、主走査方向に備える。キャリッジ12は、このガイド軸41に挿通される。
【0035】
キャリッジ12は更に、ガイド軸41に沿って設けられた無端ベルト42に連結される。無端ベルト42は、ガイド軸41の一端に設置された駆動プーリ43と、ガイド軸41の他端に設置された従動プーリ44と、の間に巻回される。
【0036】
駆動プーリ43は、CRモータ13により回転駆動され、無端ベルト42を回転させる。キャリッジ12は、無端ベルト42の回転を通じて伝達されるCRモータ13の動力により、ガイド軸41に沿って主走査方向に移動する。
【0037】
ガイド軸41の近傍には、エンコーダスケールとしてのリニアスケール46が、ガイド軸41に沿って設置されている。キャリッジ12には、発光部50及び受光部60を備える光学センサ47が搭載されている。
【0038】
リニアエンコーダ14は、この光学センサ47及びリニアスケール46によって構成される。
図2右下における破線バルーン内に、光学センサ47の詳細構成を示す。図示されるように、リニアスケール46は、主走査方向に対応する長尺方向に、所定の間隔で配置されたスリット48を備える。スリット48は、孔であってもよいし、光を透過可能な透明部材で構成されてもよい。光学センサ47を構成する発光部50及び受光部60は、リニアスケール46を挟むように配置される。
【0039】
発光部50は、二つの発光素子51,52、具体的にはA相発光素子51及びB相発光素子52を備える。受光部60は、二つの発光素子51,52に対応する二つの受光素子61,62、具体的にはA相受光素子61及びB相受光素子62を備える。A相発光素子51から照射された光はA相受光素子61で受光され、B相発光素子52から照射された光はB相受光素子62で受光される。
【0040】
光学センサ47は、キャリッジ12に固定されており、キャリッジ12と連動してリニアスケール46に沿って主走査方向に移動する。この移動によって、光学センサ47は、リニアスケール46に対して主走査方向に相対移動する。
【0041】
光学センサ47とリニアスケール46との間の相対位置の変化によって、受光素子61,62の受光状態は、変化する。光学センサ47は、受光状態の変化に応じた2種類のパルス信号を、エンコーダ信号として出力する。
【0042】
すなわち、光学センサ47は、キャリッジ12の移動に応じて、所定の位相差(本実施形態では90度)を有する2種類のパルス信号を出力する。第一のパルス信号は、A相受光素子61での受光状態に対応したA相信号であり、第二のパルス信号は、B相受光素子62での受光状態に対応したB相信号である。
【0043】
リニアエンコーダ処理部34は、リニアエンコーダ14からエンコーダ信号として入力される上述のA相信号及びB相信号に基づき、キャリッジ12の移動方向を判定すると共に、キャリッジ12の位置及び速度を計測する。リニアエンコーダ処理部34は、リニアエンコーダ14と共に、キャリッジ12の位置及び速度に関する計測器として機能する。キャリッジ12の位置及び速度の計測値は、記録制御部31及びCRモータ制御部32に入力される。
【0044】
キャリッジ12の位置及び速度の計測は、A相信号及びB相信号の少なくとも一方に基づいて行われる。ここでは、説明を簡単にするため、キャリッジ12の位置及び速度の計測が、A相信号に基づいて行われる例を説明する。
【0045】
この例によれば、リニアエンコーダ処理部34は、リニアエンコーダ14から入力されるA相信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジを検出する。これらのエッジを検出する度に、図示しない位置カウンタのカウント値を更新する。このカウント値が、キャリッジ12の位置の計測値に対応する。
【0046】
リニアエンコーダ処理部34は、A相信号の各エッジの検出タイミングに同期して、前回エッジが検出されてから今回エッジが検出されるまでの時間、すなわちエッジ間隔に基づき、キャリッジ12の速度を計測する。速度は、エッジ間隔の逆数に比例する。
【0047】
記録制御部31は、リニアエンコーダ処理部34から入力される計測値に基づいて、記録ヘッド11に対する制御信号を生成し、生成した制御信号をヘッドドライバ18に入力する。ヘッドドライバ18は、記録制御部31から入力される制御信号に従って記録ヘッド11を駆動することにより、キャリッジ12の位置に応じたインク液滴を記録ヘッド11に吐出させる。
【0048】
CRモータ制御部32は、リニアエンコーダ処理部34から入力される計測値に基づいて、所定の制御周期毎に、CRモータ13に対する操作量Uを算出する。操作量Uは、CRモータ13への印加電力を指定する操作量であり得て、特には、CRモータ13への印加電圧を指定する電圧指令値であり得る。但し、操作量Uは、CRモータ13への印加電流を指定する電流指令値であってもよいし、PWM値であってもよい。
【0049】
CRモータ制御部32は、算出した操作量Uに対応した電力をCRモータ13に印加するためのPWM信号を、CRモータ13に対する制御信号としてCRモータドライバ19に入力する。
【0050】
CRモータドライバ19は、CRモータ制御部32から入力される制御信号に従って、CRモータ13を駆動する。CRモータ13により駆動されて、キャリッジ12及び記録ヘッド11は、主走査方向に移動する。
【0051】
ロータリエンコーダ22は、LFモータ21の回転に応じ、エンコーダ信号として所定の位相差(本実施形態では90度)を有する2種類のパルス信号を出力するように構成される。エンコーダ信号は、ASIC2のロータリエンコーダ処理部35に入力される。
【0052】
ロータリエンコーダ処理部35は、ロータリエンコーダ22から入力されるエンコーダ信号に基づき、用紙Pを搬送する搬送ローラの回転量及び回転速度を計測する。これらの計測値は、LFモータ制御部33に入力される。
【0053】
LFモータ制御部33は、搬送ローラの回転を制御するために、ロータリエンコーダ処理部35から入力される計測値に基づいて、所定の制御周期毎に、LFモータ21に対する操作量を算出する。そして、LFモータ21に対する制御信号として、算出した操作量に対応した電力をLFモータ21に印加するためのPWM信号を、LFモータドライバ29に入力する。
【0054】
LFモータドライバ29は、LFモータ制御部33から入力される制御信号に従って、LFモータ21を駆動する。このLFモータ21により駆動されて、搬送ローラは回転し、用紙Pは副走査方向に搬送される。
【0055】
画像形成システム1は更に、プロセッサ3と、ROM4と、RAM5と、EEPROM6と、通信インタフェース(I/F)7と、ユーザインタフェース(I/F)8と、を備え、これらは、ASIC2とバス9を介して接続される。
【0056】
プロセッサ3は、画像形成システム1の各部を統括的に制御するように構成される。ROM4は、プロセッサ3により実行されるコンピュータプログラムを記憶する。RAM5は、プロセッサ3によるコンピュータプログラム実行時に作業領域として使用される。EEPROM6は、電気的にデータ書換可能な不揮発性メモリであり、画像形成システム1の電源オフ後にも保持すべき情報を記憶する。
【0057】
通信インタフェース7は、パーソナルコンピュータ等の外部装置と通信可能な構成にされる。ユーザインタフェース8は、ユーザにより操作可能な操作部及びユーザに向けて各種情報を表示可能な表示部を備える。
【0058】
ところで、本実施形態の画像形成システム1では、リニアエンコーダ14のリニアスケール46に汚れ70が付着することによって、キャリッジ12の位置及び速度を正常に計測できなくなる場合がある。
【0059】
図3の上段に示される例によれば、リニアスケール46の一部領域に汚れ70が付着している。その領域に存在するスリット48は、汚れ70によって覆われている。汚れ70によって覆われたスリット48を通じては、発光素子51,52からの光が各受光素子61,62に届かない。
【0060】
このように汚れ70は、光学センサ47が発光及び受光によってリニアスケール46のスリット48を読み取る際、その読取の阻害物となり得る。汚れ70は、リニアスケール46にグリス、インク、及び紙粉等が付着することにより生じ得る。
【0061】
図3の下段には、
図3の上段に示される汚れたリニアスケール46を一定速度で光学センサ47が通過する際に、光学センサ47から出力されるエンコーダ信号の例が示される。示されるエンコーダ信号は、A相信号と理解されてもよいし、B相信号と理解されてもよい。この例によれば、正常であれば等しいはずのエンコーダ信号のエッジ間隔が、光学センサ47が汚れ70を通過する際には三倍に増加している。
【0062】
本実施形態では、上述した通り、エッジ間隔に基づいてキャリッジ12の速度を計測している。このため、汚れ70に起因したエッジ間隔の変動は、速度の計測値に不連続な誤差を生じさせる。この計測誤差は、キャリッジ12の速度をフィードバック制御するときに、制御精度の劣化を招く。制御精度の劣化は、用紙Pに形成される画像の品質を低下させる可能性がある。
【0063】
キャリッジ12を主走査方向に移動させながら、記録ヘッド11からのインク液滴の吐出により用紙Pに画像形成を行う場合には、インク液滴が、用紙Pへ着弾するまでの間、主走査方向に慣性運動する。従って、キャリッジ12の不安定な速度は、インク液滴の着弾点のずれをもたらし、用紙Pに形成される画像の品質を悪化させる。
【0064】
制御精度の劣化は、キャリッジ12の停止位置の目標停止地点からの誤差を生む可能性もある。この停止誤差は、キャリッジ12の往復動に際して折返し地点から次の折返し地点までキャリッジ12が移動する際の速度軌跡にも影響を与え、用紙Pに形成される画像の品質を悪化させる原因になり得る。更には、計測誤差から生じる不安定な制御が、モータ音の増大や衝撃を発生させる原因になり得る。
【0065】
そのため、本実施形態では、汚れ70が付着した領域の有無及び位置が推定され、汚れ70の付着の有無及び位置に応じて、キャリッジ12の制御方式が切り替えられる。汚れ70が付着した領域は、上述したように、スリット48の読取、及び、正常な計測が阻害される領域である。従って、汚れ70が付着した領域を光学センサ47が読み取るキャリッジ12の移動範囲のことを、以下では「阻害領域」という。
【0066】
阻害領域は、光学センサ47のリニアスケール46に対する相対的な移動範囲であって、正常な読取を阻害する阻害物としての汚れ70が付着したリニアスケール46の部分を読み取る光学センサ47の移動範囲に対応する。
【0067】
本実施形態では、光学センサ47が、リニアスケール46をリニアスケール46の面に対して垂直な位置から読み取る。このため、阻害領域は、リニアスケール46における汚れ70が付着した領域の正面に光学センサ47が位置するキャリッジ12の移動範囲に対応する。
【0068】
続いて、電源投入又はスリープモードの解除により画像形成システム1が起動すると、プロセッサ3が実行を開始する
図4に示すメイン処理を説明する。メイン処理を開始すると、プロセッサ3は、阻害領域の推定のためにプレスキャン処理を実行する(S110)。
【0069】
プレスキャン処理において、プロセッサ3は、キャリッジ12を移動可能範囲の端から端まで往復動させるように、ASIC2に対して指令する。この指令に基づき、CRモータ制御部32は、キャリッジ12を移動可能範囲の端から端まで往復動させるためのCRモータ13に対する駆動制御を実行する。
【0070】
プレスキャン処理では、必要な加減速を除き、キャリッジ12が定速移動するようにCRモータ13が制御される。この制御は、目標速度Vrと速度計測値Vとの偏差E=Vr-Vに基づき行われる。速度計測値Vは、リニアエンコーダ処理部34から得られるキャリッジ12の速度の計測値である。キャリッジ12が定速移動する区間において偏差Eが閾値を超えたことを条件に、キャリッジ12の速度異常が検知される。プレスキャン処理では、この速度異常に基づき、リニアスケール46の阻害領域が推定される。
【0071】
阻害領域の推定手法の例は、出願人により既に開示されている。例えば、阻害領域の位置は、キャリッジ12の速度異常が検知されたときのリニアエンコーダ処理部34によるキャリッジ12の位置計測値Xである位置カウンタのカウント値に基づいて推定される。
【0072】
例えば、キャリッジ12を移動可能範囲の第一の端点から第二の端点に向けて移動させたときの、移動開始から速度異常が検知されるまでの位置カウンタの第一のカウント値が検出される。
【0073】
更に、キャリッジ12を移動可能範囲の第二の端点から第一の端点に移動させたときの、移動開始から速度異常が検知されるまでの位置カウンタの第二のカウント値が検出される。阻害領域は、速度異常が検知されたときの第一のカウント値に対応するリニアスケール46上の地点と速度異常が検知されたときの第二のカウント値に対応するリニアスケール46上の地点との間の主走査方向領域に推定される。
【0074】
別例によれば、阻害領域は、位置カウンタのカウント単位ではなく、リニアスケール46の端から端までを複数区画に区画化したときの区画単位で推定されてもよい。この場合には、第一のカウント値と第二のカウント値との間の主走査方向領域を含む一つ以上の区画が、阻害領域として推定される。
【0075】
更なる別例によれば、速度異常が検知されてから速度異常が検知されなくなるまでの時間と、目標速度Vrと、から阻害領域の主走査方向における幅が推定されてもよい。阻害領域の始点及び終点は、速度異常が検知され始めた地点での位置カウンタのカウント値と、上記幅とに基づいて推定されてもよい。すなわち、阻害領域の終点は、始点から上記幅に対応する距離だけ主走査方向に離れた地点に推定されてもよい。
【0076】
付言すれば、キャリッジ12を端から端まで移動させたときの位置カウンタのカウント値が設計値と異なるか否かにより、速度異常が、汚れ70の付着に起因するものであるか否かが判別されてもよい。プレスキャン処理で推定された阻害領域の情報は、ASIC2の図示しないレジスタに記録され、CRモータ制御部32及びリニアエンコーダ処理部34で共有される。
【0077】
記録される阻害領域の情報には、往路方向にキャリッジ12が移動するときの、阻害領域の始点及び終点位置、復路方向にキャリッジ12が移動するときの阻害領域の始点及び終点位置の情報が含まれ得る。レジスタには、阻害領域の始点位置と、阻害領域の幅と、が阻害領域の情報として記録されてもよい。阻害領域の幅は、キャリッジ12が阻害領域に進入する地点からの位置カウンタの変化量に対応する。
【0078】
阻害領域の推定は、ASIC2内のリニアエンコーダ処理部34により行われてもよいし、ASIC2から得られる第一のカウント値及び第二のカウント値等に基づいて、プロセッサ3により行われてもよい。
【0079】
プレスキャン処理(S110)を終えると、プロセッサ3は、未処理の印刷ジョブが存在するかを判断する(S120)。印刷ジョブは、通信インタフェース7を通じて外部装置から受信される。未処理の印刷ジョブが存在しない場合(S120でNo)、プロセッサ3は、S140の処理を実行する。
【0080】
プロセッサ3は、未処理の印刷ジョブが存在すると判断すると(S120でYes)、印刷ジョブとして
図5に示す印刷処理を実行する(S130)。印刷処理の実行により、印刷ジョブに対応する画像が、用紙Pに形成される。印刷加工された用紙Pは、画像形成システム1の図示しない排紙トレイに出力される。
【0081】
プロセッサ3は、印刷処理を終了すると、S140の処理を実行する。S140において、プロセッサ3は、終了条件が満足されたかを判断する。例えば、プロセッサ3は、電源のシャットダウン操作がなされたとき、又はスリープモードへの移行時に、終了条件が満足されたと判断する。
【0082】
終了条件が満足されていないと判断すると(S140でNo)は、プロセッサ3は、処理をS120に戻し、未処理の印刷ジョブが発生するか、終了条件が満足されるまで待機する。終了条件が満足されたと判断すると(S140でYes)、
図4に示すメイン処理を終了する。
【0083】
プロセッサ3は、S130で印刷処理(
図5参照)を開始すると、給紙処理を開始する(S210)。給紙処理において、プロセッサ3は、用紙Pが給紙トレイ(図示せず)から一枚分離されて、記録ヘッド11によるインク液滴の吐出位置まで副走査方向に搬送されるように、LFモータ制御部33に、LFモータ21を制御させる。プロセッサ3は更に、CRモータ制御部32によるCRモータ13の制御を通じて、ホームポジションに位置するキャリッジ12を、初期位置に配置する(S220)。
【0084】
その後、プロセッサ3は、キャリッジ12の移動開始地点から目標停止地点までの目標速度Vrを定義する速度プロファイルをCRモータ制御部32に設定する(S230)。移動開始地点から目標停止地点までの目標速度Vrは、キャリッジ12が折返し地点から次の折返し地点に移動するまでの目標速度Vrに対応する。
【0085】
速度プロファイルは、移動開始地点から目標停止地点までのキャリッジ12の移動経路のうち、記録ヘッド11によるインク液滴の吐出動作が実行されるインク吐出区間を考慮して設定される。インク吐出区間は、インク液滴の吐出により用紙Pが印刷加工される加工区間に対応する。
【0086】
速度プロファイルの実体は、移動開始地点から目標停止地点までの目標速度Vrとして、移動開始から停止までの各時点における目標速度Vrを表すデータであり得る。別例によれば、速度プロファイルの実体は、移動開始地点から目標停止地点までの各地点における目標速度Vrを表すデータであり得る。
【0087】
S230では、速度プロファイルの設定のために、詳細を後述する
図6及び
図7に示す速度プロファイル設定処理が実行される。速度プロファイルの設定後、プロセッサ3は、主走査方向印刷を実行する(S240)。
【0088】
S240において、プロセッサ3は、S230で設定された速度プロファイルに従うCRモータ13の制御を実行するようにCRモータ制御部32に指令する。プロセッサ3は更に、用紙Pに形成されるべき画像を表す画像データを、記録制御部31に入力し、この画像データに基づいて、記録ヘッド11によるインク液滴の吐出動作を制御するように記録制御部31に指令する。
【0089】
この指令によりCRモータ制御部32は、キャリッジ12が移動開始地点から目標停止地点に対応する次の折返し地点まで上記設定された速度プロファイルに従う速度軌跡で移動するように、CRモータ13を制御する。記録制御部31は、上記画像データに対応する画像を形成するためのインク液滴の吐出動作が、キャリッジ12の移動に合わせて、記録ヘッド11により実行されるように、記録ヘッド11を制御する。
【0090】
S240における主走査方向印刷の実行により、用紙Pには、上記画像データに基づく1パス分の画像が形成される。ここでいう1パス分の画像は、キャリッジ12が折返し地点から折返し地点まで主走査方向に移動する過程での記録ヘッド11のインク液滴の吐出動作により用紙Pに形成される画像のことである。
【0091】
S240における主走査方向印刷が終了すると、プロセッサ3は、用紙Pの1ページ分の印刷処理が完了したかを判断する(S250)。完了していないと判断すると(S250でNo)、プロセッサ3は、用紙Pを1パス分の画像の副走査方向の幅に対応した所定距離だけ副走査方向に搬送するように、LFモータ制御部33にLFモータ21を制御させる(S260)。
【0092】
S260の処理実行後、プロセッサ3は、次の主走査方向印刷で用いる速度プロファイルを設定する(S230)。速度プロファイルの設定後、プロセッサ3は、当該速度プロファイルを用いた主走査方向印刷を実行することにより(S240)、直前のS260の処理によって所定距離副走査方向に送り出された用紙Pに対して、1パス分の画像を形成する。
【0093】
プロセッサ3は、用紙Pの1ページ分の印刷処理が完了したと判断するまで、S230~S260の処理を繰返し実行し、用紙Pの1ページ分の印刷が完了したと判断すると(S250でYes)、S270の処理を実行する。
【0094】
S270において、プロセッサ3は、印刷された用紙Pについての排紙処理を実行する。排紙処理では、ASIC2を通じたLFモータ21の制御により、印刷された用紙Pが図示しない排紙トレイに排出される。
【0095】
プロセッサ3は更に、処理中の印刷ジョブが次頁の画像データを有するかを判断し(S280)、次頁の画像データを有すると判断すると(S280でYes)、S210に処理を戻して、次ページに関する頁印刷処理(S210-S270)を実行する。このようにして、プロセッサ3は、各ページに関する頁印刷処理を実行し、全ページに関する頁印刷処理が完了すると(S280でNo)、印刷処理を終了する。
【0096】
続いて、プロセッサ3がS230で実行する速度プロファイル設定処理の詳細を説明する。
図6及び
図7に示す速度プロファイル設定処理を開始すると、プロセッサ3は、標準速度プロファイルを生成する(S310)。
【0097】
標準速度プロファイルは、次の主走査方向印刷において、阻害領域の有無を考慮せずにキャリッジ12を移動開始地点から目標停止地点に移動させるときのキャリッジ12の目標速度を定義する速度プロファイルである。この標準速度プロファイルは、後述するように、阻害領域の存在によって修正される。
【0098】
標準速度プロファイルは、移動開始地点から目標停止地点までのキャリッジ12の移動時間を短くするために、記録ヘッド11によるインク液滴の吐出動作が実行されるインク吐出区間では、キャリッジ12が第一速度Vr1で定速移動し、それ以外の非インク吐出区間では、可能な範囲でキャリッジ12が第一速度Vr1より高い第二速度Vr2で高速移動するように生成される。第一速度Vr1は、インク液滴の吐出動作を適切に実行可能な速度に設定される。標準速度プロファイルは、インク液滴の吐出動作が第一速度Vr1での定速移動中に実行されるように、インク吐出区間を考慮して設定される。
【0099】
プロセッサ3は、S310において
図8に示す標準プロファイル生成処理を実行することにより、標準速度プロファイルを生成する。標準速度プロファイル生成処理を開始すると、プロセッサ3は、まず、次の主走査方向印刷におけるキャリッジ12の移動開始地点から目標停止地点までの移動経路のうち、記録ヘッド11によるインク液滴の吐出動作が実行されるインク吐出区間を判別する(S311)。
【0100】
更に、プロセッサ3は、インク吐出区間の終点から目標停止地点までの距離が、高速移動に必要な所定距離以上あるかを判断する(S312)。S312で肯定判断すると(S312でYes)、プロセッサ3は、S313において、移動開始地点からインク吐出区間の始点までの距離が高速移動に必要な所定距離以上あるかを判断する。
【0101】
プロセッサ3は、S313で否定判断すると(S313でNo)、標準速度プロファイルとして、
図9Aに例示する目標加減速運動を実現するための第一の標準速度プロファイルを生成する(S314)。その後、
図8に示す標準速度プロファイル生成処理を終了する。第一の標準速度プロファイルは、具体的に次の特徴を有する、二段階加減速有りの速度プロファイルである。
【0102】
・キャリッジ12を移動開始地点から第一速度Vr1まで加速させる加速区間を含む。加速区間の終点は、インク吐出区間の始点より手前である。
・キャリッジ12の第一速度Vr1への加速終了時点からキャリッジ12がインク吐出区間の終点に到達するまでは、キャリッジ12を、第一速度Vr1で定速移動させる定速区間を含む。
・キャリッジ12がインク吐出区間の終点を通過した直後から、キャリッジ12を第二速度Vr2まで加速させる再加速区間を含む。
・キャリッジ12の第二速度への加速終了時点からキャリッジ12が目標停止地点より減速に必要な距離手前の減速開始地点に到達するまでは、キャリッジ12を、第二速度Vr2で定速移動させる高速区間を含む。
・キャリッジ12が減速開始地点に到達した直後から、キャリッジ12を目標停止地点に向けて減速及び停止させる減速区間を含む。
【0103】
第一の標準速度プロファイルの特徴から理解できるように、二段階加減速は、第一速度Vr1と第二速度Vr2との間の加減速を意味する。
【0104】
一方、プロセッサ3は、S313で移動開始地点からインク吐出区間の始点までの距離が高速移動に必要な所定距離以上あると判断すると(S313でYes)、標準速度プロファイルとして、
図9Bに例示する第二の標準速度プロファイルを生成する(S315)。その後、
図8に示す標準速度プロファイル生成処理を終了する。第二の標準速度プロファイルは、次の特徴を有する、二段階加減速有りの速度プロファイルである。
【0105】
・キャリッジ12を移動開始地点から第二速度Vr2まで加速させる加速区間を含む。
・キャリッジ12の第二速度への加速終了時点からインク吐出区間始点より手前の第一減速開始地点まで、キャリッジ12を第二速度Vr2で定速移動させる第一高速区間を含む。第一減速開始地点は、インク吐出区間始点では、キャリッジ12が第一速度Vr1で安定走行可能であるように予め定められた距離、インク吐出区間始点より手前の地点である。
・キャリッジ12を、第一減速開始地点から第一速度Vr1まで減速させる中間減速区間を含む。
・キャリッジ12を、第一速度Vr1への減速終了時点から、キャリッジ12がインク吐出区間の終点に終了するまでは、キャリッジ12を、第一速度Vr1で定速移動させる定速区間を含む。
・キャリッジ12がインク吐出区間の終点を通過した直後から、キャリッジ12を第二速度Vr2まで加速させる再加速区間を含む。
・キャリッジ12の第二速度Vr2への加速終了時点からキャリッジ12が目標停止地点より減速に必要な距離手前の減速開始地点に到達するまでは、キャリッジ12を、第二速度Vr2で定速移動させる第二高速区間を含む。
・キャリッジ12が減速開始地点に到達した直後から、キャリッジ12を目標停止地点に向けて減速及び停止させる減速区間を含む。
【0106】
この他、プロセッサ3は、インク吐出区間の終点から目標停止地点までの距離が高速移動に必要な所定距離未満であると判断すると(S312でNo)、S317の処理を実行する。S317において、プロセッサ3は、S313での処理と同様に、移動開始地点からインク吐出区間の始点までの距離が高速移動に必要な所定距離以上あるかを判断する。
【0107】
プロセッサ3は、S317で肯定判断すると(S317でYes)、標準速度プロファイルとして、
図10Aに例示する目標加減速運動を実現するための第三の標準速度プロファイルを生成する(S318)。その後、
図8に示す標準速度プロファイル生成処理を終了する。第三の標準速度プロファイルは、具体的に次の特徴を有する、二段階加減速有りの速度プロファイルである。
【0108】
・キャリッジ12を移動開始地点から第二速度Vr2まで加速させる加速区間を含む。
・キャリッジ12の第二速度への加速終了時点からインク吐出区間始点より手前の第一減速開始地点まで、キャリッジ12を第二速度Vr2で定速移動させる高速区間を含む。第一減速開始地点は、インク吐出区間始点では、キャリッジ12が第一速度Vr1で安定走行可能であるように予め定められた距離、インク吐出区間始点より手前の地点である。
・キャリッジ12を、第一減速開始地点から第一速度Vr1まで減速させる中間減速区間を含む。
・キャリッジ12を、第一速度Vr1への減速終了時点から、キャリッジ12が目標停止地点より減速に必要な距離手前の減速開始地点に到達するまでは、キャリッジ12を、第一速度Vr1で定速移動させる定速区間を含む。
・キャリッジ12が減速開始地点に到達した直後から、キャリッジ12を目標停止地点に向けて減速及び停止させる減速区間を含む。
【0109】
この他、プロセッサ3は、S317で否定判断すると(S317でNo)、標準速度プロファイルとして、
図10Bに例示する目標加減速運動を実現するための第四の標準速度プロファイルを生成する(S319)。その後、
図8に示す標準速度プロファイル生成処理を終了する。第四の標準速度プロファイルは、具体的に次の特徴を有する、二段階加減速なしの速度プロファイルである。
【0110】
・キャリッジ12を移動開始地点から第一速度Vr1まで加速させる加速区間を含む。加速区間の終点は、インク吐出区間の始点より手前である。
・キャリッジ12の第一速度Vr1への加速終了時点から、キャリッジ12が目標停止地点より減速に必要な距離手前の減速開始地点に到達するまでは、キャリッジ12を、第一速度Vr1で定速移動させる定速区間を含む。
・キャリッジ12が減速開始地点に到達した直後から、キャリッジ12を目標停止地点に向けて減速及び停止させる減速区間を含む。
【0111】
S310(
図6参照)において標準速度プロファイルを生成すると、プロセッサ3は、現在実行中の印刷ジョブの印刷モードとしてファインモードが指定されているかを判断する(S320)。ここでの判断は、ユーザからの加工方法の指定、特には画質指定に応じて速度プロファイルを変更するために行われる。印刷モードは、印刷に関する画像形成システム1の動作モードに対応する。
【0112】
本実施形態の画像形成システム1は、印刷画質の異なる複数の印刷モードを有し、印刷ジョブの登録時に登録元のユーザから指定された印刷モードで、印刷ジョブに対応する画像を用紙Pに形成する。各印刷モードでは、キャリッジ12がインク吐出区間において印刷画質に応じた第一速度Vr1で定速搬送される。
【0113】
すなわち、インク吐出区間では、印刷モードに応じた第一速度Vr1で、キャリッジ12が搬送されると共に、印刷モードに応じた吐出モードでインク液滴が吐出されることにより、用紙Pに、対応する品質の画像が形成される。標準速度プロファイルは、インク吐出区間において印刷モードに対応する第一速度Vr1でキャリッジ12が定速移動するように生成される。
【0114】
上述の複数の印刷モードは、用紙Pに通常画質で画像が形成されるノーマルモード及び用紙Pに高精細画像が形成されるファインモードを含む。プロセッサ3は、ファインモードが指定されていると判断すると(S320でYes)、S330の処理を実行する。
【0115】
プロセッサ3は、ファインモードが指定されていないと判断すると(S320でNo)、換言すれば、ファインモードより画質の低い印刷モードが指定されていると判断すると、阻害領域の有無によらず、S310で生成した標準速度プロファイルを、次の主走査方向印刷で使用する速度プロファイルに設定する(S390)。その後、速度プロファイル設定処理を終了する。
【0116】
印刷モードがファインモードではなくノーマルモードである場合、印刷ジョブの登録元のユーザにとっては処理速度が画質よりも重要である可能性が高い。従って、印刷モードがノーマルモードである場合には、処理速度よりも画質を優先する速度プロファイルの修正動作をせずに、標準速度プロファイルを、使用する速度プロファイルに設定する。
【0117】
S330において、プロセッサ3は、印刷ジョブで使用される用紙Pが特定種の用紙、具体的には普通紙であるかを判断する。ここでの判断は、用紙Pの種類、特には用紙Pの材質に応じて速度プロファイルを変更するために行われる。印刷ジョブの登録時には、印刷ジョブの登録元から用紙種の情報が入力される。プロセッサ3は、入力された用紙種の情報に基づいて、印刷ジョブで使用される用紙Pの種類を判別することができる。判別可能な用紙Pの種類の例には、普通紙、インクジェット紙、光沢紙、及び写真光沢紙が含まれる。
【0118】
S330において用紙Pが普通紙であると判断すると、プロセッサ3は、阻害領域の有無によらず、S310で生成した標準速度プロファイルを、次の主走査方向印刷で使用する速度プロファイルに設定する(S390)。このようにして、本実施形態では、用紙Pとして普通紙が使用されるときには、処理速度を優先する。その後、プロセッサ3は、速度プロファイル設定処理を終了する。
【0119】
プロセッサ3は、用紙Pが普通紙ではないと判断すると(S330でNo)、リニアスケール46における汚れ70の有無、すなわち阻害領域の有無を判断する(S340)。ここでは、S310で生成された標準速度プロファイルに含まれる移動開始地点から定速状態に移行するまでの加速区間、定速状態から目標停止地点に向けて減速する減速区間の間の中間区間において、阻害領域があるかを判断する。
【0120】
プロセッサ3は、阻害領域がないと判断すると(S340でNo)、S310で生成した標準速度プロファイルを、次の主走査方向印刷で使用する速度プロファイルに設定する(S390)。その後、速度プロファイル設定処理を終了する。
【0121】
この他、プロセッサ3は、阻害領域があると判断すると(S340でYes)、S310で生成された標準速度プロファイルが、高速区間分離型の速度プロファイルである第二の標準速度プロファイルであるかを判断する(S350)。
【0122】
プロセッサ3は、上記生成された標準速度プロファイルが第二の標準速度プロファイルであると判断すると(S350でYes)、S400(
図7参照)の処理を実行し、第二の標準速度プロファイルではないと判断すると(S350でNo)、S360の処理を実行する。
【0123】
S360において、プロセッサ3は、阻害領域が、第二速度に対する加減速区間に存在するかを判断する。第二速度に対する加減速区間は、上述の第一速度Vr1から第二速度Vr2へキャリッジ12が加速する再加速区間、及び、第二速度Vr2から第一速度Vr1へキャリッジ12が減速する中間減速区間に対応する。
【0124】
プロセッサ3は、仮にS310で生成された標準速度プロファイルに基づいて主走査方向印刷(S240)を実行した場合に、キャリッジ12が阻害領域内に位置している状態で、キャリッジ12が再加速区間又は中間減速区間に対応する目標速度で速度制御されることになる場合、S360で肯定判断する。
【0125】
例えば、S310で生成された標準速度プロファイルが
図9Aに示す第一の標準速度プロファイルであり、阻害領域が
図9Aに示す領域R11にある場合、プロセッサ3は、S360で肯定判断する。阻害領域が
図9Aに示す定速区間内の領域R12又は高速区間内の領域R13にある場合、プロセッサ3は、S360で否定判断する。
【0126】
例えば、S310で生成された標準速度プロファイルが
図10Aに示す第三の標準速度プロファイルであり、阻害領域が
図10Aに示す領域R31にある場合、プロセッサ3は、S360で肯定判断する。阻害領域が
図10Aに示す定速区間内の領域R32又は高速区間内の領域R33にある場合、プロセッサ3は、S360で否定判断する。
【0127】
阻害領域が第二速度に対する加減速区間に存在すると判断すると(S360でYes)、プロセッサ3は、上記生成した標準速度プロファイルから、高速区間を削除するように、標準速度プロファイルを修正する(S370)。すなわち、上記生成した標準速度プロファイルを、二段階加減速なしの第四の標準速度プロファイル(
図10B参照)と同形の速度プロファイルに修正する。換言すれば、非インク吐出区間においてもキャリッジ12を高速移動させないように、速度プロファイルを修正する。
【0128】
例えば、S310で生成された標準速度プロファイルが、
図9Aに示す第一の標準速度プロファイルである場合には、
図11に示すように、インク吐出区間を通過した後の再加速区間及び高速区間(
図11に示す一点鎖線部分)を取り除いて、インク吐出区間を通過後にも、目標停止地点より手前の減速開始地点を通過するまで第一速度Vr1でキャリッジ12が移動し、減速開始地点からキャリッジ12が目標停止地点に向けて減速するように、標準速度プロファイルを修正する。
【0129】
その後、プロセッサ3は、修正後の速度プロファイルを、次の主走査方向印刷で使用する速度プロファイルに設定する(S380)。これにより、プロセッサ3は、阻害領域が第二速度に対する加減速区間に存在すると判断すると、阻害領域での計測誤差によるキャリッジ12の制御誤差の影響を抑えるために、次の主走査方向印刷では、二段階加減速なしでキャリッジ12を移動させる制御方式を採用する。
【0130】
この他、プロセッサ3は、S360において阻害領域が第二速度に対する加減速区間に存在しないと判断すると(S360でNo)、その他の区間での阻害領域の有無によらずに、S310で生成した標準速度プロファイルを、次の主走査方向印刷で使用する速度プロファイルに設定する(S390)。その後、速度プロファイル設定処理を終了する。
【0131】
S400(
図7参照)において、プロセッサ3は、阻害領域が、第二速度Vr2から第一速度Vr1への中間減速区間に存在するかを判断する。阻害領域が、
図9Bに示す領域R21にあるとき、プロセッサ3は、S400で肯定判断する。
【0132】
阻害領域が中間減速区間に存在すると判断すると(S400でYes)、プロセッサ3は、上記生成した標準速度プロファイルから、第一高速区間を削除して、インク吐出区間に先行する非インク吐出区間を第一速度Vr1による定速区間に置換するように、標準速度プロファイルを修正する(S410)。
【0133】
図12Aには、修正前の標準速度プロファイルの例を一点鎖線で表し、S410での処理による修正後の速度プロファイルの例を、実線で示す。すなわち、プロセッサ3は、上記生成した標準速度プロファイルを、
図9Aに示す第一の標準速度プロファイルと同形の速度プロファイルに修正する。S410における標準速度プロファイルの修正後、プロセッサ3は、S420の処理を実行する。
【0134】
阻害領域が中間減速領域に存在しないと判断した場合(S400でNo)、プロセッサ3は、標準速度プロファイルの修正なしに、S420の処理を実行する。S420において、プロセッサ3は、阻害領域が、第一速度Vr1から第二速度Vr2への再加速区間に存在するかを判断する。阻害領域が、
図9Bに示す領域R22にあるとき、プロセッサ3は、S420で肯定判断する。
【0135】
阻害領域が、再加速区間に存在しないと判断すると(S420でNo)、プロセッサ3は、S440の処理を実行する。阻害領域が、再加速区間に存在すると判断すると(S420でYes)、プロセッサ3は、S430で速度プロファイルの修正を行った後、S440の処理を実行する。
【0136】
S430において、プロセッサ3は、S310で生成した標準速度プロファイル又はS410における修正後の速度プロファイルから第二高速区間を削除し、インク吐出区間に後続する非インク吐出区間を第一速度Vr1による定速区間に置換するように、標準速度プロファイルを修正する(S430)。
【0137】
図12Bには、修正前の標準速度プロファイルの例を一点鎖線で表し、S430での処理による修正後の速度プロファイルの例を、実線で示す。標準速度プロファイルは、S410における修正及びS430における修正の両方を受けたとき、
図10Bに示す二段階加減速なしの第四の標準速度プロファイルと同形の速度プロファイルに修正される。
【0138】
S440において、プロセッサ3は、S410の処理及びS430の処理の一方又は両方によって標準速度プロファイルが修正されている場合には、修正された速度プロファイルを、次の主走査方向印刷において使用する速度プロファイルに設定する。修正されていない場合には、S310で生成された標準速度プロファイルを、次の主走査方向印刷において使用する速度プロファイルに設定し、
図6及び
図7に示す速度プロファイル設定処理を終了する。
【0139】
上述した速度プロファイル設定処理により、移動開始地点から定速状態に移行するまでの加速区間と、定速状態から目標停止地点で停止するまでの減速区間との間の中間区間における阻害領域の有無及び位置に応じた速度プロファイルが設定され、続く主走査方向印刷において、この速度プロファイルに基づくキャリッジ12の移動制御が実行される。第二速度に対する加減速区間に阻害領域がかかる場合には、対応する二段階加減速が中止され、阻害領域の存在によるキャリッジ12の移動制御の劣化が抑制される。
【0140】
続いて、速度プロファイルに基づくキャリッジ12の速度制御のために、CRモータ制御部32が実行するモータ制御処理の詳細を、
図13を用いて説明する。CRモータ制御部32は、S240においてプロセッサ3からの指令を受けて、
図13に示すモータ制御処理を、設定された速度プロファイルに従って、キャリッジ12を折返し地点に移動させるまで、所定の制御周期毎に実行する。
【0141】
制御周期毎のモータ制御処理において、CRモータ制御部32は、リニアエンコーダ処理部34から入力されるキャリッジ12の位置計測値Xに基づき、キャリッジ12が阻害領域内に位置しているかを判断する(S510)。
【0142】
キャリッジ12が阻害領域内に位置していないと判断すると(S510でNo)、CRモータ制御部32は、リニアエンコーダ処理部34から入力されるキャリッジ12の速度計測値Vと、速度プロファイルに従う目標速度Vrとの偏差E=Vr-Vを算出し、その偏差Eに基づいて、フィードバック操作量Ufbを算出する(S520)。
【0143】
CRモータ制御部32は、偏差Eを所定の伝達関数に入力して、偏差Eを低減するためのフィードバック操作量Ufbを算出する。CRモータ制御部32は、PID制御方式により、偏差Eに対応するフィードバック操作量Ufbを算出してもよい。
【0144】
CRモータ制御部32は、上記算出したフィードバック操作量Ufbを、CRモータ13に対する操作量Uに決定する。その後、CRモータ制御部32は、操作量Uを実現するための制御信号をCRモータドライバ19に入力する(S530)。これにより、CRモータドライバ19は、上記決定した操作量Uに対応する駆動電力(具体的には駆動電圧又は駆動電流)でCRモータ13を駆動する。
【0145】
このようにCRモータ制御部32は、阻害領域外にキャリッジ12が位置しているときには、速度計測値Vと目標速度Vrとの偏差E=Vr-Vに基づくフィードバック制御により、キャリッジ12の速度を制御する。
【0146】
一方、CRモータ制御部32は、キャリッジ12が阻害領域内に位置すると判断すると(S510でYes)、S550の処理を実行する。S550において、CRモータ制御部32は、速度計測値Vを用いずに、目標速度Vrに対応するフィードフォワード操作量Uffを算出する。例えば、フィードフォワード操作量Uffは、キャリッジ12の運動方程式に基づいて予め定められた伝達関数に、速度プロファイルに従う目標速度Vrを入力して得られる。
【0147】
キャリッジ12が一定速度で移動しているときに、キャリッジ12及びCRモータ13に作用する反力は、基本的に、粘性摩擦に起因した反力である。粘性摩擦はキャリッジ12の速度に比例する。
【0148】
従って、キャリッジ12が一定速度で移動している区間内におけるフィードフォワード操作量Uffは、速度プロファイルに従う目標速度Vrに、粘性摩擦に対応した係数Kをかけた値K・Vrに定められ得る。
【0149】
CRモータ制御部32は、このように算出したフィードフォワード操作量Uffを、CRモータ13に対する操作量Uに決定する。その後、CRモータ制御部32は、上記決定した操作量Uを実現するための制御信号をCRモータドライバ19に入力する(S560)。これにより、CRモータドライバ19に、上記決定した操作量Uに対応する駆動電力でCRモータ13を駆動させる。
【0150】
すなわち、CRモータ制御部32は、阻害領域内にキャリッジ12が位置しているときには、速度プロファイルに基づくフィードフォワード制御を行い、それ以外の場合には、速度プロファイルに基づくフィードバック制御を行う。
【0151】
別例として、CRモータ制御部32は、阻害領域内でも、阻害領域外と同様に、偏差Eに基づくフィードバック制御を行ってもよい。この場合には、速度計測値Vの信頼性が低いことから、偏差Eの算出に用いる速度計測値Vを補正して、補正後の速度計測値V*に基づく偏差E=Vr-V*から、フィードバック操作量Ufbを算出することができる。補正後の速度計測値V*は、例えば、速度計測値Vの移動平均であり得る。
【0152】
移動開始地点からの加速区間又は目標停止地点に向けての減速区間に阻害領域がある場合と、加速区間と減速区間との間の中間区間に阻害領域がある場合とで、その阻害領域における制御を、フィードバック制御とフィードフォワード制御との間で使い分けてもよい。
【0153】
例えば、CRモータ制御部32は、中間区間外に阻害領域がある場合には、補正後の速度計測値V*に基づいたフィードバック制御を実行し、中間区間内に阻害領域がある場合には、フィードフォワード制御を実行してもよい。
【0154】
本実施形態によれば、中間区間に存在する阻害領域は、上述の速度プロファイルの修正により、基本的に、キャリッジ12が一定速度に制御される定速区間又は高速区間(第一及び第二高速区間を含む)に位置する。従って、阻害領域において補正後の速度計測値V*に基づいたフィードバック制御を実行しても、フィードフォワード制御を実行しても、阻害領域で加速制御又は減速制御を行う場合と比較して、安定した速度制御を実現可能である。
【0155】
この他、阻害領域の存在による計測誤差の影響を抑えるため、リニアエンコーダ処理部34は、エンコーダ信号に基づき、キャリッジ12の位置及び速度の計測値を算出する処理とは別に、
図14に示す補正処理を繰返し実行することができる。補正処理は、阻害領域の通過時に、位置カウンタのカウント値として計測されるキャリッジ12の位置計測値Xに含まれる誤差を取り除くために行われる。
【0156】
補正処理を開始すると、リニアエンコーダ処理部34は、キャリッジ12が阻害領域を通過するまで待機する(S610)。ここでいう通過は、阻害領域におけるキャリッジ12の進行方向側の端点である阻害領域の終点をキャリッジ12が通過することを意味する。
【0157】
阻害領域を通過したか否かは、キャリッジ12が阻害領域に進入するときのキャリッジ12の位置測定値Xと、阻害領域の幅と、阻害領域に進入してからのキャリッジ12の移動距離とに基づいて判断可能である。移動距離は、目標速度Vrの時間積分として、キャリッジ12の目標速度Vrと阻害領域に進入してからの経過時間とに基づき算出可能である。
【0158】
リニアエンコーダ処理部34は、キャリッジ12が阻害領域を通過したと判断すると(S610でYes)、阻害領域で発生した位置カウンタのカウント値の誤差を補正する(S620)。
【0159】
例えば、リニアエンコーダ処理部34は、阻害領域に進入した時点からの目標速度Vrの時間積分として算出されるキャリッジ12の移動距離D1(カウント値換算)と、阻害領域を通過したと判断した時点での位置カウンタのカウント値の進入時からの偏差D2との差分(D1-D2)を、汚れ70に起因するカウント値の誤差として算出することができる。リニアエンコーダ処理部34は、偏差D2が移動距離D1に一致するように、カウント値を差分(D1-D2)だけ加算するように補正することができる。
【0160】
別例によれば、リニアエンコーダ処理部34は、プレスキャン時に阻害領域で生じる位置カウンタのカウント値の誤差を判定し、判定した誤差だけ、カウント値を補正することにより、誤差を補正することができる。
【0161】
以上に説明した本実施形態の画像形成システム1によれば、阻害領域の有無及び位置に応じて異なる型の速度プロファイルが設定され、それにより、第一の制御方式としての、二段階加減速有の速度プロファイルに基づくキャリッジ12の速度制御、又は、第二の制御方式としての二段階加減速なしの速度プロファイルに基づくキャリッジ12の速度制御が実行される。
【0162】
第一の制御方式によれば、キャリッジ12が、インク吐出区間では、印刷モードに対応した第一速度Vr1で定速移動し、非インク吐出区間では、少なくとも部分的に第一速度Vr1より高い第二速度Vr2で定速移動するように制御される。第二の制御方式によれば、キャリッジ12が、インク吐出区間及び非吐出区間の両区間において第一速度Vr1で定速移動するように制御される。
【0163】
本実施形態によれば、阻害領域が特定区間である第二速度Vr2に対する加減速区間にあるとき、対応する二段階加減速を止めて、第一速度Vr1での定速制御中にキャリッジ12が阻害領域を通過するように、速度プロファイルが修正される。
【0164】
定速時のキャリッジ12の速度制御は、加減速時の制御より安定している。定速時には、キャリッジ12の速度を一時的に正常に計測することができなくても、例えば一定操作量に基づくCRモータ13の制御により、比較的安定的にキャリッジ12を定速移動させることができる。
【0165】
従って、本実施形態のように、阻害領域では第二速度Vr2に対する加減速を行わないように速度プロファイルを修正すれば、阻害領域での計測誤差が制御精度又は制御の安定性に好ましくない影響を与えるのを抑制することができ、キャリッジ12を適切に高速移動させることが可能である。
【0166】
このような阻害領域を考慮したキャリッジ12の搬送は、画質劣化の影響を抑えつつ、画像形成システム1における印刷処理のスループットを向上させることができる。特に、本実施形態によれば、阻害領域の位置によらず、阻害領域があることだけを理由に高速移動を止める場合と比較して、キャリッジ12を高速移動させることが可能である。例えば、本実施形態では、高速区間分離型の速度プロファイルを阻害領域の存在を理由に修正するときに、高速移動を部分的に止める手法を採用しているので、効率よくキャリッジ12を高速移動させることが可能である。従って、本実施形態によれば、利便性の高い画像形成システム1をユーザに提供可能である。
【0167】
[変形例]
続いて、変形例の画像形成システム1を説明する。但し、変形例の画像形成システム1は、プロセッサ3がS230で実行する速度プロファイル設定処理の一部が、上述の実施形態と異なるだけである。従って、以下では、プロセッサ3が実行する速度プロファイル設定処理の、上記実施形態とは異なる部位を選択的に説明し、その他の上記実施形態と同一構成の部位の説明を省略する。
【0168】
プロセッサ3は、
図6に示すS310~S350の処理を経て、第二速度に対する加減速区間に阻害領域が存在すると判断すると(S360でYes)、S370の処理に代えて、
図15に示すS375の処理を実行する。S375において、プロセッサ3は、S310で生成した標準速度プロファイルにおける定速区間を阻害領域の端点まで延長して、阻害領域を定速区間に設定するように、当該標準速度プロファイルを修正する。
【0169】
S310で生成した標準速度プロファイルが、
図9Aに示す第一の標準速度プロファイルである場合、プロセッサ3は、
図16Aに示すように、再加速区間の開始時点を、阻害領域である領域R50の通過直後の時点まで遅らせるように、定速区間を延長する。
【0170】
これにより、プロセッサ3は、インク吐出区間に隣接する非インク吐出区間においても阻害領域を通過するまでの隣接区間では、キャリッジ12が第一速度Vr1で定速移動するように、標準速度プロファイルを修正する。
図16Aに示される一点鎖線は、修正前の標準速度プロファイルを示し、実線は、定速区間の延長による修正後の速度プロファイルを示す。
【0171】
S310で生成した標準速度プロファイルが、
図10Aに示す第三の標準速度プロファイルである場合、プロセッサ3は、
図16Bに示すように、定速区間の始点を、阻害領域である領域R60の進入前の時点まで早めるように、定速区間を延長する。
【0172】
これにより、プロセッサ3は、インク吐出区間に先行するように隣接する非インク吐出区間の阻害領域を含む区間では、キャリッジ12が第一速度Vr1で定速移動するように、標準速度プロファイルを修正する。
図16Bに示される破線も、
図16Aに示される一点鎖線と同様に、定速区間の延長による修正前の標準速度プロファイルを示す。
【0173】
続くS380において、プロセッサ3は、S375の処理による修正後の速度プロファイルを、次の主走査方向印刷で使用する速度プロファイルに設定する。その後、速度プロファイル設定処理(S230)を終了する。
【0174】
プロセッサ3は、S310で生成された標準速度プロファイルが第二の標準速度プロファイルであると判断したときに、S410の処理に代えて、S415の処理(
図7参照)を実行することにより、
図17Aに示すように、定速区間の始点を、阻害領域である領域R70の進入前の時点まで早める。これによりプロセッサ3は、定速区間を少なくとも阻害領域の始点まで延長するように標準速度プロファイルを修正する(S415)。
【0175】
プロセッサ3は、同様に、S430の処理に代えて、S435の処理(
図7参照)を実行することにより、
図17Bに示すように、再加速区間の開始時点を、阻害領域である領域R80の通過直後の時点まで遅らせる。これによりプロセッサ3は、定速区間を少なくとも阻害領域の終点まで延長するように標準速度プロファイルを修正する(S435)。
【0176】
プロセッサ3は、S440(
図7参照)では、S415又はS435における修正後の速度プロファイルを、次の主走査方向印刷で使用する速度プロファイルに設定する。このようにして、変形例では、S310で生成した標準速度プロファイルにおいて、第二速度に対する加減速領域に、阻害領域が存在する場合に、二段階加減速を止めるのではなく、定速区間の始点及び/又は終点を、阻害領域を含むように延長する。
【0177】
従って、変形例では、阻害領域で二段階加減速が実行されることによる好ましくない影響を抑えつつ、キャリッジ12を高速移動させて、印刷処理のスループットを向上させることができる。
【0178】
以上に、本開示の例示的実施形態を説明したが、本開示が上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。例えば、プロセッサ3は、阻害領域が存在すれば、その位置によらずに、二段階加減速なしの速度プロファイルをCRモータ制御部32に対して設定するように動作してもよい。
【0179】
例えば、プロセッサ3は、S340の処理で否定判断した場合には、S310で生成した標準速度プロファイルを、次の主走査方向印刷で使用する速度プロファイルに設定し、S340の処理で肯定判断した場合には、S350,S360の処理を実行せずに、S370の処理を実行することにより、二段階加減速なしの速度プロファイルをCRモータ制御部32に対して設定するように動作してもよい。
【0180】
プロセッサ3は、S340において、標準速度プロファイルにおける目標速度Vrが第一速度Vrを超える速度に設定された区間に阻害領域が存在するとき、阻害領域があると肯定判断するように動作してもよい。
【0181】
例えば、プロセッサ3は、S340において、移動開始地点からの加速区間及び目標停止地点までの減速区間のうち、第一速度Vr1を超える目標速度Vrが設定された高速域の非定速区間を、上記中間区間と同等に扱って、非定速区間での阻害領域の有無を判断してもよい。
【0182】
この高速域の非定速区間において阻害領域が存在するときには、S360で肯定判断して、対応する高速区間を削除し、阻害領域を第一速度Vr1の定速区間に置換するように、速度プロファイルを修正してもよい(S370)。すなわち、第一速度Vr1を超える高速域の非定速区間を、上述の中間減速区間及び再加速区間と同様に取り扱って、標準速度プロファイルを修正してもよい。
【0183】
この他、本開示の技術は、用紙Pに画像を形成する画像形成システム1によらず、対象物に対して所定の加工を行う処理ヘッドの運動を、エンコーダを用いたモータ制御により実現する様々なシステムに適用することができる。
【0184】
例えば、本開示の技術は、インクジェットプリンタによらず、他のシリアルプリンタやガーメントプリンタに適用可能である。本開示の技術は、配線パターンを印刷する機械等の工作機械に適用することもできる。本開示の技術は、対象物を加工するシステムに限定されず、エンコーダを用いたモータ制御により移動体を搬送する様々なシステムに適用することができる。
【0185】
位置及び速度を計測するためのエンコーダとして、上述の透過型のリニアエンコーダ14以外のエンコーダが用いられてもよい。例えば、エンコーダスケールで反射した発光素子からの光を受光して、エンコーダスケールを読み取る反射型のリニアエンコーダが用いられてもよい。
【0186】
反射型のリニアエンコーダのように、光学センサがエンコーダスケールを斜めから読み取るエンコーダが用いられる場合、「阻害領域」は、エンコーダスケールにおける汚れが付着した領域の正面ではなく、正面から読取角度に応じた距離だけずれた領域上を光学センサが移動するときの、その移動範囲であり得る。
【0187】
本開示の技術は、ロータリエンコーダを用いた制御システムにも適用できる。エンコーダとしては、固定されたエンコーダスケールに対してセンサが移動することで、センサがエンコーダスケールに対して相対移動するエンコーダ、固定されたセンサに対してエンコーダスケールが移動することで、センサがエンコーダスケールに対して相対移動するエンコーダが知られている。これらのエンコーダのいずれを用いた制御システムに対しても本開示の技術は適用可能である。
【0188】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。例えば、コントローラは、プロセッサ3及びASIC2により構成されなくてもよく、ASICなしで一つ以上のプロセッサにより構成されてもよいし、プロセッサなしで一つ以上のASICによって構成されてもよいし、一つ以上のプロセッサと一つ以上のASICとの組合せによって構成されてもよい。プロセッサ及びASICの少なくともいずれかを含むコントローラの一つ以上の構成要素は、互いに協働して、本開示のコントローラに係る処理を実行することができる。
【0189】
この他、実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0190】
1…画像形成システム、2…ASIC、3…プロセッサ、4…ROM、5…RAM、6…EEPROM、7…通信インタフェース、8…ユーザインタフェース、9…バス、11…記録ヘッド、12…キャリッジ、13…CRモータ、14…リニアエンコーダ、15…印刷機構、18…ヘッドドライバ、19…CRモータドライバ、21…LFモータ、22…ロータリエンコーダ、29…LFモータドライバ、31…記録制御部、32…CRモータ制御部、33…LFモータ制御部、34…リニアエンコーダ処理部、35…ロータリエンコーダ処理部、41…ガイド軸、42…無端ベルト、43…駆動プーリ、44…従動プーリ、46…リニアスケール、47…光学センサ、48…スリット、50…発光部、51,52…発光素子、60…受光部、61,62…受光素子、P…用紙。