(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】情報管理方法および情報管理システム
(51)【国際特許分類】
H04L 41/40 20220101AFI20241217BHJP
H04L 43/00 20220101ALI20241217BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20241217BHJP
【FI】
H04L41/40
H04L43/00
G06Q10/04
(21)【出願番号】P 2021061335
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 成憲
(72)【発明者】
【氏名】李 天兵
(72)【発明者】
【氏名】村山 信次
【審査官】漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-13557(JP,A)
【文献】特開2019-154201(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111476386(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 43/00
H04L 41/40
G06Q 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数のコンピュータが実行する情報管理方法であって、
1または複数のデバイスを含む実構成に対応する第1のインスタンスモデルを
管理するステップと、
前記1または複数のデバイスから情報を収集するステップと、
前記収集した情報に基づいて、前記第1のインスタンスモデルを更新するステップと、
前記更新した第1のインスタンスモデルに基づいてタイプモデルの情報を生成するステップと、
生成したタイプモデルの情報に基づいて、管理されているタイプモデルを更新するステップとを備える、情報管理方法。
【請求項2】
前記タイプモデルをインスタンス化して第2のインスタンスモデルを生成するステップと、
前記生成した第2のインスタンスモデルを対応する新たな実構成に反映するステップとをさらに備える、請求項1に記載の情報管理方法。
【請求項3】
前記第2のインスタンスモデルを生成するステップは、前記第1のインスタンスモデルをコピーするステップを含む、請求項2に記載の情報管理方法。
【請求項4】
前記生成した新たなインスタンスモデルを用いてシミュレーションを実行するステップをさらに備える、請求項2または3に記載の情報管理方法。
【請求項5】
前記タイプモデルの情報を生成するステップは、前記更新したインスタンスモデルから当該インスタンスモデルに固有の情報を除くステップを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の情報管理方法。
【請求項6】
前記インスタンスモデルは、制限された第1の仮想空間
で管理され、
前記タイプモデルは、複数の第1の仮想空間からアクセス可能な第2の仮想空間で管理される、請求項1~5のいずれか1項に記載の情報管理方法。
【請求項7】
前記タイプモデルおよび前記インスタンスモデルには、同一のタイプを特定するための識別情報が付与されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の情報管理方法。
【請求項8】
前記第1のインスタンスモデルを更新するステップは、前記収集した情報と前記第1のインスタンスモデルとの誤差を算出し、算出した誤差に基づいて前記第1のインスタンスモデルの値を変更するステップを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の情報管理方法。
【請求項9】
第1のコンピュータと第2のコンピュータとを備える情報管理システムであって、
前記第1のコンピュータは、
1または複数のデバイスを含む実構成に対応する第1のインスタンスモデルを
管理する手段と、
前記1または複数のデバイスから情報を取得する手段と、
前記取得した情報に基づいて、前記第1のインスタンスモデルを更新する手段と、
前記更新した第1のインスタンスモデルに基づいてタイプモデルの情報を生成する手段とを備え、
前記第2のコンピュータは、
生成したタイプモデルの情報に基づいて、管理されているタイプモデルを更新する手段を備える、情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、情報管理方法および情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な情報系ネットワークに採用されている標準的なネットワーク(例えば、イーサネット(登録商標))を産業分野のネットワークでも利用できるように拡張する取り組みが進行しつつある。より具体的には、イーサネット(登録商標)をベースにして、ネットワークが確定的な挙動をするように改良されたIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers) 802.1 TSN(Time Sensitive Networking)(以下、単に「TSN」とも称す。)が知られている。TSNによれば、例えば、イーサネット(登録商標)などの汎用的なハードウェアを用いて、リアルタイム通信をより容易に実現できる。
【0003】
また、デバイス間でデータ通信を行うための通信スタックとして、IEC62541として国際標準化されているOPC UA(OPC Unified Architecture)が注目されている。TSNとOPC UAとの組み合わせは、「OPC UA over TSN」などとも称される。
【0004】
このように、インダストリーオートメーション(Industry Automation)の分野において、急速な技術進歩が進んでいる。
【0005】
一方、複数の装置から構成されるシステムを構築するにあたっては、事前に性能などをシミュレーションしたいというニーズがある。
【0006】
例えば、国際公開第2019/220605号(特許文献1)は、プログラマブルロジックコントローラのシミュレーションを実行するシミュレーション装置を開示する。また、特開2008-030690号公報(特許文献2)は、制御システムを構成する各機器に発生する異常を予測することのできるシミュレーション方法を開示する。
【0007】
また、特開2020-048172号公報(特許文献3)は、オープン化ネットワーク設備の効率的な機能検証を実施する検証装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2019/220605号
【文献】特開2008-030690号公報
【文献】特開2020-048172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したような先行技術文献は、予め用意されたモデルを組み合わせることでシミュレーションを実現するが、このようなモデルの精度を維持することは容易ではない。
【0010】
本技術は、シミュレーションや事前検証などに用いるモデルの精度をより容易に高めることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本技術のある実施の形態に従えば、1または複数のコンピュータが実行する情報管理方法が提供される。情報管理方法は、1または複数のデバイスを含む実構成に対応する第1のインスタンスモデルを生成するステップと、1または複数のデバイスから情報を収集するステップと、収集した情報に基づいて、第1のインスタンスモデルを更新するステップと、更新した第1のインスタンスモデルに基づいてタイプモデルの情報を生成するステップと、生成したタイプモデルの情報に基づいて、管理されているタイプモデルを更新するステップとを含む。
【0012】
この構成によれば、実構成に含まれる1または複数のデバイスの情報に基づいて、インスタンスモデルを更新するとともに、更新したインスタンスモデルに基づいて、タイプモデルを更新できる。このような一連の情報チェーンによって、1または複数の実構成から収集される情報を反映したタイプモデルを構成できる。これによって、タイプモデルの精度を高めることができるとともに、再利用性も高めることができる。
【0013】
情報管理方法は、タイプモデルをインスタンス化して第2のインスタンスモデルを生成するステップと、生成した第2のインスタンスモデルを対応する新たな実構成に反映するステップとをさらに含んでいてもよい。この構成によれば、新たな実構成を実現する前に、対応する第2のインスタンスモデルを生成し、当該生成した第2のインスタンスモデルを用いて、当該新たな実構成についての事前検討などを行うことができる。
【0014】
第2のインスタンスモデルを生成するステップは、第1のインスタンスモデルをコピーするステップを含んでいてもよい。この構成によれば、既存の実構成を変更するような事前検討を容易に行うことができる。
【0015】
情報管理方法は、生成した新たなインスタンスモデルを用いてシミュレーションを実行するステップをさらに含んでいてもよい。この構成によれば、新たな実構成で要求される性能などが発揮されるかを、事前のシミュレーションによって評価できる。
【0016】
タイプモデルの情報を生成するステップは、更新したインスタンスモデルから当該インスタンスモデルに固有の情報を除くステップを含んでいてもよい。この構成によれば、インスタンスモデルに含まれる実構成に固有の情報などを取り除くことで、汎化されたタイプモデルの情報を生成できる。
【0017】
インスタンスモデルは、制限された第1の仮想空間上に生成されてもよい。タイプモデルは、複数の第1の仮想空間からアクセス可能な第2の仮想空間で管理されてもよい。この構成によれば、第2の仮想空間において管理されるタイプモデルを複数の第1の仮想空間で生成されるインスタンスモデルに利用できる。
【0018】
タイプモデルおよびインスタンスモデルには、同一のタイプを特定するための識別情報が付与されていてもよい。この構成によれば、インスタンスモデルを生成するにあたって、各デバイスに対応するモデルの要素を容易に特定できる。
【0019】
第1のインスタンスモデルを更新するステップは、収集した情報と第1のインスタンスモデルとの誤差を算出し、算出した誤差に基づいて第1のインスタンスモデルの値を変更するステップを含んでいてもよい。この構成によれば、実構成の挙動や動作をより正確に反映した第1のインスタンスモデルを生成できる。
【0020】
本技術の別の実施の形態に従えば、第1のコンピュータと第2のコンピュータとを備える情報管理システムが提供される。第1のコンピュータは、1または複数のデバイスを含む実構成に対応する第1のインスタンスモデルを生成する手段と、1または複数のデバイスから情報を取得する手段と、取得した情報に基づいて、第1のインスタンスモデルを更新する手段と、更新した第1のインスタンスモデルに基づいてタイプモデルの情報を生成する手段とを含む。第2のコンピュータは、生成したタイプモデルの情報に基づいて、管理されているタイプモデルを更新する手段を含む。
【発明の効果】
【0021】
本技術によれば、シミュレーションや事前検証などに用いるモデルの精度をより容易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施の形態に従う情報管理システムの全体構成の一例を示す模式図である。
【
図2】本実施の形態に従う情報管理システムにおける実構成の情報の収集に係る処理を説明するための図である。
【
図3】本実施の形態に従う情報管理システムにおいて収集される情報の一例を示す図である。
【
図4】本実施の形態に従う情報管理システムにおけるプライベート仮想空間への情報送信に係る処理を説明するための図である。
【
図5】本実施の形態に従う情報管理システムにおけるプライベート仮想空間のインスタンスモデルの更新に係る処理を説明するための図である。
【
図6】本実施の形態に従う情報管理システムにおけるパブリック仮想空間への情報送信に係る処理を説明するための図である。
【
図7】本実施の形態に従う情報管理システムにおけるパブリック仮想空間のタイプモデルの情報の更新に係る処理を説明するための図である。
【
図8】本実施の形態に従う情報管理システムにおけるプライベート仮想空間の構成に係る処理を説明するための図である。
【
図9】本実施の形態に従う情報管理システムにおける実構成への反映に係る処理を説明するための図である。
【
図10】本実施の形態に従う情報管理システムにおけるプライベート仮想空間の構成に係る別の処理を説明するための図である。
【
図11】本実施の形態に従う情報管理システムにおける実構成への反映に係る処理を別の説明するための図である。
【
図12】本実施の形態に係る情報管理システムのパブリック仮想空間を実現する情報処理装置150のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図13】本実施の形態に係る情報管理システムのスイッチのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図14】本実施の形態に従う情報管理システムにおける処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本技術の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
<A.適用例>
まず、本発明が適用される場面の一例について説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態に従う情報管理システム1の全体構成の一例を示す模式図である。
図1を参照して、情報管理システム1は、パブリック仮想空間10と、1または複数のプライベート仮想空間20A,20B,・・・(以下、「プライベート仮想空間20」と総称することもある。)とを含む。
【0026】
図1に示す構成例において、プライベート仮想空間20Aは、実構成30Aに対応して構成され、プライベート仮想空間20Bは、実構成30Bに対応して構成されている。なお、実構成30A,30B,・・・を「実構成30」と総称することもある。
【0027】
通常、プライベート仮想空間20は、対応する実構成30の所有者あるいは管理者のみがアクセスできる制限された仮想空間である。これに対して、パブリック仮想空間10は、特定の実構成30の所有者あるいは管理者だけではなく、第三者もアクセス可能な仮想空間である。言い換えれば、パブリック仮想空間10は、複数のプライベート仮想空間20からアクセス可能な仮想空間に相当する。
【0028】
実構成30は、現実空間に存在する1または複数のデバイスからなる実体を意味する。典型的には、実構成30は、現実の製造ラインや製造設備を構成するネットワーク接続された1または複数のデバイスなどに相当する。
【0029】
本実施の形態に従う情報管理システム1は、実構成30あるいは実構成30に含まれるデバイスを可能な限り正確にモデル化して情報を管理する。また、情報管理システム1は、モデル化した情報に基づいて、新たな実構成30の実現に先だって、より正確な事前のシミュレーションなどを提供する。
【0030】
パブリック仮想空間10は、実構成30に含まれるデバイスのモデルを定義する情報を含む。典型的には、パブリック仮想空間10は、特定の実構成30を所有する主体(法人や組織)だけではなく、所定の要件を満たした第三者もアクセスあるいは利用可能になっている。パブリック仮想空間10が管理する情報は、基本的には、「タイプモデル」の情報である。「タイプモデル」は、同一のタイプあるいは形式に属するデバイスが共通に有している特徴や特質を定義するモデルである。すなわち、「タイプモデル」は、個別のデバイスに依存せず、共通な特性や特質などの情報を意味する。
【0031】
プライベート仮想空間20は、対応する実構成30に対応して構成される情報を含む。プライベート仮想空間20が含む情報の集合を「アセット」と称することもある。
【0032】
典型的には、プライベート仮想空間20は、対応する実構成30固有の情報を含む。プライベート仮想空間20は、パブリック仮想空間10が管理する「タイプモデル」に対して、固有の情報を反映した「インスタンスモデル」を有している。「インスタンスモデル」は、「タイプモデル」に対して、実構成30に固有の情報を追加して、インスタンス化することで生成される。また、プライベート仮想空間20に構成される「インスタンスモデル」は、プライベート仮想空間20の「アセット」の少なくとも一部である。
【0033】
後述するように、プライベート仮想空間20が管理する「インスタンスモデル」の情報の一部がパブリック仮想空間10へ提供(フィードバック)される。このとき、「インスタンスモデル」に含まれる情報のうち対応する実構成30に固有の情報は、パブリック仮想空間10へ提供される内容から除外される。このように、プライベート仮想空間20を管理する情報処理装置は、更新したインスタンスモデルから当該インスタンスモデルに固有の情報を除くことで、タイプモデルの情報を生成する。
【0034】
以下、
図1に示す情報管理システム1を用いた情報管理処理の一例について説明する。以下の説明においては、既存の実構成30Aで収集された情報を反映して、新たな実構成30Bを構成する場合を例示する。なお、実構成30Aと実構成30Bとは同一の構成とは限らない。なお、以下の情報管理方法は、1または複数のコンピュータが実行する。コンピュータのハードウェア構成例については後述する。
【0035】
まず、(1)実構成30Aの情報が収集される。実構成30Aから収集された情報は、(2)プライベート仮想空間20Aへ送信される。プライベート仮想空間20Aにおいては、実構成30Aから送信された情報に基づいて、(3)アセット(インスタンスモデル)が更新される。
【0036】
さらに、(4)プライベート仮想空間20Aにおいて更新されたアセットの情報がパブリック仮想空間10へ送信される。パブリック仮想空間10においては、プライベート仮想空間20Aから送信された情報に基づいて、(5)タイプモデルの情報が更新される。
【0037】
その後、(6)目的の実構成30Bに対応するプライベート仮想空間20Bが構成される。そして、構成されたプライベート仮想空間20Bにおいて、(7)必要なシミュレーションなどが実行される。シミュレーション結果に応じて、プライベート仮想空間20Bの構成が変更あるいは更新されることもある。
【0038】
最終的に、(8)プライベート仮想空間20Bの内容が実構成30Bに反映される。このようなデータチェーンを構成することで、モデルおよびモデルを用いたシミュレーションの精度を高めることができ、実構成へ反映した場合の誤差などを低減できる。
【0039】
なお、上述の説明においては、新たな実構成30Bを構成する場合を例示したが、既存の実構成30Aを実構成30Bに改修するような用途にも用いることができる。この場合、プライベート仮想空間20Aと実質的に同一のプライベート仮想空間20Bを構成した上で、プライベート仮想空間20Bに基づくシミュレーションを行いながら、プライベート仮想空間20Bの構成を適宜変更する。最終的に、変更後のプライベート仮想空間20Bの内容が実構成30Bに反映される。
【0040】
以下、各処理の詳細について説明する。
<B.処理の詳細>
[(1)実構成の情報の収集]
図2は、本実施の形態に従う情報管理システム1における実構成30Aの情報の収集に係る処理を説明するための図である。
図2を参照して、実構成30Aの一例として、ネットワーク接続されたPLC(Programmable Logic Controller)を含む生産システムを示す。
【0041】
図2に示す実構成30Aにおいて、2つのPLC300がスイッチ310を介してネットワーク接続されている。2つのPLCおよびスイッチ310は、例えば、TSN(Time-Sensitive Networking)に従うネットワークプロトコルを利用して、データをやり取りする。データのやり取りは、ネットワークコントローラ320によって管理される。
【0042】
さらに、実構成30Aにおいては、監視装置330がスイッチ312を介してネットワークに接続されている。
【0043】
ネットワークコントローラ320および監視装置330は、実構成30Aに含まれるデバイスの情報を収集する。ネットワークコントローラ320および監視装置330は、実構成30Aに含まれるデバイスの情報を定期的あるいはイベント毎に収集するようにしてもよい。また、実構成30Aの立ち上げ段階に加えて、実構成30Aの運用段階においても、実構成30Aに含まれるデバイスの情報が収集される。
【0044】
ネットワークコントローラ320は、主として、ネットワークの通信に係る情報(通信情報322)を収集する。例えば、ネットワークコントローラ320は、OPC UA情報モデルに従うOPC UAプロトコルや、YANG(Yet Another Next Generation)モデルに従うNETCONFプロトコルなどを用いて、各デバイス(PLC300およびスイッチ310など)から通信情報322を収集する。
【0045】
監視装置330は、主として、稼働中の生産システムによる生産情報332を収集する。例えば、監視装置330は、OPC UA情報モデルに従うOPC UAクライエント・サーバ通信などを用いて、各デバイス(PLC300など)から生産情報332を収集する。
【0046】
図3は、本実施の形態に従う情報管理システム1において収集される情報の一例を示す図である。
【0047】
図3(A)には、OPC UAのコンパニオン仕様に従って収集されるデバイス毎の情報の一例が示されている。デバイス毎の情報の項目としては、例えば、監視しているデータのトレースに相当する入出力データ、操作ログ、イベントなどが挙げられる。
【0048】
図3(B)には、TSNを中心としたネットワークの管理および制御に関する情報の一例が示されている。ネットワークの管理および制御に関する情報の項目としては、例えば、ネットワーク構成やサイクリック通信設定などのユーザ設定、デバイス能力、通信診断情報などが挙げられる。
【0049】
なお、ネットワークコントローラ320および/または監視装置330により収集される通信情報322および/または生産情報332のうち少なくとも一部は、実構成30に固有の情報である。
【0050】
[(2)プライベート仮想空間への情報送信]
図4は、本実施の形態に従う情報管理システム1におけるプライベート仮想空間20Aへの情報送信に係る処理を説明するための図である。
図4を参照して、ネットワークコントローラ320および/または監視装置330により収集される情報がプライベート仮想空間20Aへ送信される。実構成30Aからプライベート仮想空間20Aへの情報の送信は、定期的あるいはイベント毎に実行されてもよい。
【0051】
プライベート仮想空間20Aは、共有データ格納部250を有しており、実構成30Aからの情報が順次格納される。なお、実構成30Aからプライベート仮想空間20Aへの情報の送信は、OPC UA PubSub通信とMQTT(Message Queuing Telemetry Transport)プロトコルとを組み合わせた、OPC UA PubSub over MQTTを用いてもよい。情報は、暗号化されて送信されることが好ましい。
【0052】
[(3)アセット(インスタンスモデル)の更新]
図5は、本実施の形態に従う情報管理システム1におけるプライベート仮想空間20Aのインスタンスモデルの更新に係る処理を説明するための図である。
【0053】
図5を参照して、プライベート仮想空間20Aは、実構成30に対応して構成される。より具体的には、プライベート仮想空間20Aにおいて、2つの仮想PLC200が仮想スイッチ210を介してネットワーク接続されている。また、プライベート仮想空間20Aにおいては、仮想ネットワークコントローラ220が仮想スイッチ210に接続されるとともに、仮想監視装置230が仮想スイッチ212を介して仮想ネットワークに接続されている。
【0054】
プライベート仮想空間20Aに含まれる仮想ネットワークコントローラ220および/または仮想監視装置230は、共有データ格納部250に格納される通信情報322および/または生産情報332を参照して、プライベート仮想空間20Aのアセット(インスタンスモデル)を更新する。すなわち、仮想ネットワークコントローラ220および/または仮想監視装置230は、実構成30Aの対応するデバイスの情報と一致するように、プライベート仮想空間20Aのインスタンスモデルの情報を更新する。
【0055】
このような更新処理を周期的あるいはイベント毎に実行することで、プライベート仮想空間20Aのアセット(インスタンスモデル)を実構成30Aに反映した状態に維持できる。
【0056】
[(4)パブリック仮想空間への情報送信]
図6は、本実施の形態に従う情報管理システム1におけるパブリック仮想空間10への情報送信に係る処理を説明するための図である。
図6を参照して、プライベート仮想空間20Aからパブリック仮想空間10へ送信される情報は、インスタンスモデルの情報(インスタンス情報)をタイプモデルの情報(タイプ情報)に変換したものである。
【0057】
ここで、タイプモデルの情報(タイプ情報)は、プライベート仮想空間20Aのアセットのうち、実構成30Aに固有な情報を除いて、いわば汎化した情報を包含する。例えば、タイプ情報としては、以下のようなものが挙げられる。
【0058】
(a)応答性能、遅延時間、処理時間、使用メモリ量などの特性を定義する計算式あるいは関数
(b)エラー許容回数、稼働許容年数、状態遷移条件などの状態を判定するためのしきい値
(c)同一のタイプのデバイスが持つ潜在的な性能の特異点や頻度といったタイプ固有の情報
なお、上述したようなタイプ情報に加えて、インスタンス情報のうち環境情報をパブリック仮想空間10へ送信するようにしてもよい。例えば、デバイスの製品寿命は、環境に依存するため、タイプ情報とともに環境情報をパブリック仮想空間10へ送信し、環境情報を反映して、パブリック仮想空間10が管理するタイプモデルを更新するようにしてもよい。
【0059】
環境情報としては、例えば、温度や湿度などの自動または手動で測定された情報や、処理負荷の情報などが挙げられる。但し、環境情報は、これらの情報に限定されることなく、環境依存性の傾向や特性を判断できる情報であれば、どのような情報であってもよい。
【0060】
[(5)タイプモデルの更新]
図7は、本実施の形態に従う情報管理システム1におけるパブリック仮想空間10のタイプモデルの情報の更新に係る処理を説明するための図である。
図7を参照して、パブリック仮想空間10で管理されるタイプモデル100,110の情報(タイプ情報)には、タイプを特定するための識別情報101,111が付与されている。一方、プライベート仮想空間20Aで管理されるインスタンスモデルの情報(インスタンス情報)にも、タイプを特定するための識別情報201,211が付与されている。同一のタイプに対応するモデルについては、同一の識別値が付与されており、互いに対応付けられている。
【0061】
このように、タイプモデルおよびインスタンスモデルには、同一のタイプを特定するための識別情報が付与されている。なお、モデルに付与される識別情報としては、DID(Decentralized Identifiers:分散型ID)などを用いることができる。分散型IDを用いることで、ブロックチェーンなどの分散型のデータベースによるモデルの管理を容易化できる。
【0062】
なお、モデルの対象は、上述のPLCに限らず、ネットワーク、スイッチ、ネットワークに接続される任意のデバイスを含む。
【0063】
パブリック仮想空間10は、プライベート仮想空間20Aから送信されるタイプ情報に基づいて、タイプモデルの情報を更新する。
【0064】
なお、パブリック仮想空間10で管理されるタイプモデルの情報に対して、所有者(オーナ)を設定することもできる。この場合、パブリック仮想空間10で管理されるタイプモデルの所有者が情報を更新するか否かを判断するようにしてもよい。
【0065】
この場合には、例えば、プライベート仮想空間20Aが管理するいずれかのインスタンスモデルが更新されると、当該インスタンスモデルに対応するパブリック仮想空間10が管理するタイプモデルの所有者に対して、更新された内容が提供される。
【0066】
所有者は、提供された内容のうち、パブリック仮想空間10が管理するタイプモデルに反映すべき情報を選択する。これによって、所有者によって選択された情報のみがタイプモデルに反映される。
【0067】
このような所有者が反映すべき情報を選択することで、特異的な情報がタイプモデルに反映されることを防止でき、タイプモデルのモデル精度を向上できる。なお、所有者は、人間のユーザであってもよいし、AI(Artificial Intelligence)エンジンが代替してもよい。
【0068】
また、AIエンジンを利用して、反映すべきタイプモデルの情報を抽出するようにしてもよい。例えば、プライベート仮想空間20Aから送信される同一のタイプの多数のインスタンスモデルの情報を統計解析することで、当該タイプに固有の情報を抽出するようにしてもよい。さらに、プライベート仮想空間20Aから送信される提供される環境情報を反映して、タイプ情報の更新内容を決定してもよい。例えば、プライベート仮想空間20Aから送信される提供される多数の情報から、環境温度の依存性などを推定することができる。
【0069】
以上のような一連の処理によって、実構成30Aで管理および収集される情報に基づいて、パブリック仮想空間10が管理するタイプモデルの精度を高めることができる。
【0070】
[(6a)プライベート仮想空間20Bの構成、および、(7a)シミュレーションの実行]
図8は、本実施の形態に従う情報管理システム1におけるプライベート仮想空間20Bの構成に係る処理を説明するための図である。
図8を参照して、例えば、新たに実現した実構成30Bに対応して、プライベート仮想空間20Bにアセット(インスタンスモデル)が構成される。
【0071】
より具体的には、パブリック仮想空間10が管理するタイプモデル100,110の情報のうち、実構成30Bにおいて使用されるデバイスのタイプを特定するための識別情報201,211と同一の識別値を示す識別情報101,111に対応するタイプモデルが選択される。そして、選択されたタイプモデルがインスタンス化されて、プライベート仮想空間20Bにアセット(インスタンスモデル)が構成される。
【0072】
より具体的な手順としては、ユーザが、目的のデバイスを任意の方法で選択するとともに、デバイス同士の接続形態や接続方式を指定する。すると、指定されたデバイスに対応するタイプモデルがパブリック仮想空間10から選択されるとともに、選択されたパブリックにインスタンスモデルの情報(インスタンス情報)が反映される。なお、インスタンス情報については、プライベート仮想空間20Aから収集された情報が用いられてもよいし、予め用意された平均的な値からなる情報が用いられてもよい。
【0073】
上述したように、タイプ情報として、(a)特性を定義する計算式あるいは関数が用いられる場合には、対象となる実構成30Bあるいは対応するインスタンスモデルに応じて、計算式あるいは関数からインスタンス情報を算出するようにしてもよい。また、タイプ情報として、(b)状態を判定するためのしきい値、および/または、(c)タイプ固有の情報などが用いられる場合には、当該タイプ情報をそのままインスタンス情報として用いてもよい。
【0074】
さらに、環境に依存する情報については、対象となる実構成30Bあるいは対応するインスタンスモデルに応じて、環境要因を算出し、インスタンス情報を生成してもよい。
【0075】
さらに、必要に応じて、プライベート仮想空間20Bに生成されたインスタンスモデルを用いて、目的の動作や処理を実行できるか否かについて、シミュレーションで検証が行われる。シミュレーションの結果に応じて、プライベート仮想空間20Bに生成されたインスタンス情報が適宜更新される。
【0076】
以上のような処理手順によって、実構成30Bを現実に構成する前に、実構成30Bの挙動などを予測あるいは予め把握できる。
【0077】
[(8a)実構成30Bへの反映]
図9は、本実施の形態に従う情報管理システム1における実構成30Bへの反映に係る処理を説明するための図である。
図9を参照して、プライベート仮想空間20Bに生成されたインスタンスモデルを用いたシミュレーションの結果、適切であると考えられるインスタンス情報が決定されると、当該決定されたインスタンス情報に基づいて、実構成30Bに必要な情報を設定する。
【0078】
例えば、プライベート仮想空間20Bの仮想ネットワークコントローラ220から実構成30Bの監視装置330に対して、必要な情報が送信される。プライベート仮想空間20Bの仮想監視装置230から実構成30Bの監視装置330に対して、必要な情報が送信される。
【0079】
さらに、ネットワークコントローラ320は、プライベート仮想空間20Bからの情報に従って、実構成30Bに含まれるデバイス(PLC300およびスイッチ310など)に対して、必要なデバイス設定を行う。
【0080】
以上のように、プライベート仮想空間20Bに生成されたインスタンスモデルを用いたシミュレーションの結果をそのまま実構成30Bに反映することができるとともに、高精度なシミュレーションを実現できることで、実構成30Bに反映したときの再現性を高めることができる。
【0081】
[(6b)プライベート仮想空間20Bの構成、および、(7b)シミュレーションの実行]
図10は、本実施の形態に従う情報管理システム1におけるプライベート仮想空間20Bの構成に係る別の処理を説明するための図である。
図10を参照して、例えば、既存の実構成30Aを実構成30Bに変更する場合を想定する。この場合においても、変更後の実構成30Bに対応するアセット(インスタンスモデル)がプライベート仮想空間20Bに構成される。
【0082】
より具体的には、まず、実構成30Aに対応するアセット(インスタンスモデル)(プライベート仮想空間20A)からプライベート仮想空間20Bにコピーされる。その上で、実構成30Bにおいて追加されるデバイスのタイプを特定するための識別情報201と同一の識別値を示す識別情報101に対応するタイプモデルがパブリック仮想空間10から選択される。そして、選択されたタイプモデルはインスタンス化されて、プライベート仮想空間20Bに追加される。
【0083】
より具体的な手順としては、ユーザが、追加すべきデバイスを任意の方法で選択するとともに、デバイス同士の接続形態や接続方式を指定する。すると、指定されたデバイスに対応するタイプモデルがパブリック仮想空間10から選択されるとともに、選択されたパブリックにインスタンスモデルの情報(インスタンス情報)が反映される。インスタンス化に係る処理については、上述の
図8と同様である。
【0084】
さらに、必要に応じて、プライベート仮想空間20Bに生成されたインスタンスモデルを用いて、目的の動作や処理を実行できるか否かについて、シミュレーションで検証が行われる。シミュレーションの結果に応じて、プライベート仮想空間20Bに生成されたインスタンス情報が適宜更新される。
【0085】
以上のような処理手順によって、実構成30Bを現実に構成する前に、実構成30Bの挙動などを予測あるいは予め把握できる。
【0086】
[(8b)実構成30Bへの反映]
図11は、本実施の形態に従う情報管理システム1における実構成30Bへの反映に係る処理を別の説明するための図である。
図11を参照して、プライベート仮想空間20Bに生成されたインスタンスモデルを用いたシミュレーションの結果、適切であると考えられるインスタンス情報が決定されると、当該決定されたインスタンス情報に基づいて、実構成30Bに必要な情報を設定する。
【0087】
例えば、プライベート仮想空間20Bの仮想ネットワークコントローラ220から実構成30Bの監視装置330に対して、必要な情報が送信される。プライベート仮想空間20Bの仮想監視装置230から実構成30Bの監視装置330に対して、必要な情報が送信される。
【0088】
さらに、ネットワークコントローラ320は、プライベート仮想空間20Bからの情報に従って、実構成30Bに含まれる既存のデバイス(PLC300およびスイッチ310など)に対して必要な設定変更を行うとともに、追加されたデバイス(PLC300など)に対して必要なデバイス設定を行う。
【0089】
以上のように、プライベート仮想空間20Bに生成されたインスタンスモデルを用いたシミュレーションの結果をそのまま実構成30Bに反映することができるとともに、高精度なシミュレーションを実現できることで、実構成30Bに反映したときの再現性を高めることができる。
【0090】
<C.ハードウェア構成例>
(c1:パブリック仮想空間10を実現するためのハードウェア構成例)
図12は、本実施の形態に係る情報管理システム1のパブリック仮想空間10を実現する情報処理装置150のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図12を参照して、情報処理装置150は、コンピュータの一例であり、1または複数のプロセッサ152と、1または複数の主メモリ154と、表示部156と、入力部158と、1または複数の通信インターフェイス160と、ストレージ170とを含む。各コンポーネントは、バス162を介して電気的に接続されている。
【0091】
プロセッサ152は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)などで構成され、ストレージ170に格納された各種プログラムを読み出して、主メモリ154に展開して実行することで、後述するような各種処理を実現する。
【0092】
表示部156は、液晶ディスプレイなどで構成され、プロセッサ152による処理結果を表示する。入力部158は、キーボードやマウスなどで構成され、ユーザからの操作を受け付ける。通信インターフェイス160は、任意のデバイスとの間でデータをやり取りする。
【0093】
ストレージ170は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などで構成され、例えば、OS172と、情報管理プログラム174と、タイプモデルの情報(タイプデータ)などを含むデータセット176とが格納される。
【0094】
図12には、プロセッサ152がプログラムを実行することで必要な機能が提供される構成例を示したが、これらの提供される機能の一部または全部を、専用のハードワイヤード回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)など)を用いて実装してもよい。すなわち、情報処理装置150で実行される処理および提供する機能は、プロセッサ、ASIC、FPGAなどを含む処理回路(processing circuitry)で実現してもよい。
【0095】
さらに、複数の情報処理装置150が分散してパブリック仮想空間10を実現するようにしてもよいし、情報管理システム1を実現するハードウェアリソースについては、どのようなものを採用してもよい。
【0096】
(c2:プライベート仮想空間20を実現するためのハードウェア構成例)
本実施の形態に係る情報管理システム1のプライベート仮想空間20についても、
図12に示す情報処理装置150と同様のコンピュータを用いて実現することができる。
【0097】
(c3:実構成30の情報を管理および収集するためのハードウェア構成例)
図13は、本実施の形態に係る情報管理システム1のスイッチ310のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図13を参照して、スイッチ310は、コンピュータの一例であり、プロセッサ3102と、主メモリ3104と、上位通信インターフェイス3106と、フィールド通信インターフェイス3108と、ストレージ3120とを含む。各コンポーネントは、バス3110を介して電気的に接続されている。
【0098】
プロセッサ3102は、CPU、MPU、GPUなどで構成され、ストレージ3120に格納された各種プログラムを読み出して、主メモリ3104に展開して実行することで、スイッチ310としての処理を実現する。
【0099】
上位通信インターフェイス3106は、プライベート仮想空間20を実現する情報処理装置とのデータ通信を担当する。
【0100】
フィールド通信インターフェイス3108は、PLC300から送受信されるフレームの転送を担当する。フィールド通信インターフェイス3108は、イーサネット(登録商標)などの通信規格に準拠する通信回路を含む。
【0101】
ストレージ3120には、典型的には、基本的な処理を実現するためのOS3122と、上述したような情報の管理および収集を実現するためのシステムプログラム3124とが格納される。
【0102】
図13には、プロセッサ3102がプログラムを実行することで必要な機能が提供される構成例を示したが、これらの提供される機能の一部または全部を、専用のハードワイヤード回路(例えば、ASICやFPGAを用いて実装してもよい。
【0103】
また、ネットワークコントローラ320についても、
図13と同様のハードウェア構成例によって実現される。
【0104】
<D.処理手順>
次に、本実施の形態に従う情報管理システム1における処理手順について説明する。
【0105】
図14は、本実施の形態に従う情報管理システム1における処理手順を示すフローチャートである。
図14には、パブリック仮想空間10と、プライベート仮想空間20A,20Bと、実構成30A,30Bとを含む場合の例を示す。
【0106】
図14を参照して、実構成30Aが構成される(ステップS2)。構成される実構成30Aは、ネットワークコントローラ320や監視装置330といった、実構成30Aに含まれるデバイスからの情報を収集できる収集主体を含む。
【0107】
また、情報処理装置は、ユーザからの指示に従って、プライベート仮想空間20Aに、構成した実構成30Aに対応するアセット(インスタンスモデル)を生成する(ステップS4)。このように、プライベート仮想空間20Aを管理する情報処理装置は、1または複数のデバイスを含む実構成30Aに対応するインスタンスモデル(第1のインスタンスモデル)を生成する処理を実行する。なお、インスタンスモデルは、パブリック仮想空間10が管理するタイプモデルを利用して生成されることになる。
【0108】
実構成30Aの収集主体(ネットワークコントローラ320や監視装置330)が実構成30Aに含まれるデバイスから情報を収集し(ステップS6)、プライベート仮想空間20Aへ送信する(ステップS8)。このように、情報処理装置は、実構成30Aに含まれる1または複数のデバイスから情報を取得する。
【0109】
プライベート仮想空間20Aを提供する情報処理装置は、実構成30Aからの情報とプライベート仮想空間20Aに生成されているインスタンスモデルとの誤差(ズレや差分)を算出し(ステップS10)、算出した誤差に基づいて、プライベート仮想空間20Aに生成されているインスタンスモデルを更新する(ステップS12)。
【0110】
このように、情報処理装置は、収集した情報に基づいて、実構成30Aに対応するインスタンスモデル(第1のインスタンスモデル)を更新する。より具体的には、情報処理装置は、収集した情報とインスタンスモデルとの誤差を算出し、算出した誤差に基づいてインスタンスモデルの値を変更することで、インスタンスモデルを更新する。
【0111】
ステップS6~S12の処理は、実構成30Aの動作や処理の実行に応じて、繰り返される。
【0112】
プライベート仮想空間20Aを提供する情報処理装置は、更新されたインスタンスモデルからタイプモデルの情報(タイプ情報)を生成し(ステップS14)、パブリック仮想空間10へ送信する(ステップS16)。このように、情報処理装置は、更新した実構成30Aに対応するインスタンスモデル(第1のインスタンスモデル)に基づいてタイプモデルの情報を生成する。
【0113】
パブリック仮想空間10を提供する情報処理装置は、プライベート仮想空間20Aからのタイプモデルの情報とパブリック仮想空間10が管理するタイプモデルとの誤差(ズレや差分)を算出し(ステップS18)、算出した誤差に基づいて、パブリック仮想空間10が管理するタイプモデルを更新する(ステップS20)。このように、情報処理装置は、生成したタイプモデルの情報に基づいて、管理されているタイプモデルを更新する。
【0114】
ステップS14~S20の処理は、適宜繰り返される。
次に、情報処理装置は、ユーザからの指示に従って、プライベート仮想空間20Bに、目的の実構成30Bに対応するアセット(インスタンスモデル)を生成する(ステップS22)。このように、プライベート仮想空間20Bを管理する情報処理装置は、タイプモデルをインスタンス化して実構成30Bに対応するインスタンスモデル(第2のインスタンスモデル)を生成する。なお、インスタンスモデルは、パブリック仮想空間10が管理するタイプモデルを利用して生成されることになる。
【0115】
あるいは、上述の
図10に示すような処理例においては、プライベート仮想空間20Bを管理する情報処理装置は、プライベート仮想空間20Aのインスタンスモデルをコピーして、プライベート仮想空間20Bにインスタンスモデルを生成する。
【0116】
そして、ユーザは、プライベート仮想空間20Bに生成されたインスタンスモデルを用いて、目的のシミュレーションなどを実行する(ステップS24)。ユーザは、シミュレーションの結果に応じて、インスタンスモデルのパラメータなどを変更あるいは更新する。このように、プライベート仮想空間20Bを管理する情報処理装置は、生成した新たなインスタンスモデルを用いてシミュレーションを実行する。
【0117】
シミュレーションの結果、目的の性能が発揮される見込みが得られると、ユーザは、プライベート仮想空間20Bに生成されたインスタンスモデルを対応する実構成30Bに反映する(ステップS26)。このように、情報処理装置は、生成したインスタンスモデルを対応する新たな実構成30Bに反映する。より具体的には、インスタンスモデルを反映する処理は、インスタンスモデルに設定されているパラメータを実構成の対応するデバイスに設定(コピー)する処理を含む。この結果、実構成30Bは、プライベート仮想空間20Bに生成されたインスタンスモデルに対応する設定等に従って動作するようになる。
【0118】
なお、ステップS2~S20の処理と、ステップS22~S26の処理とは、並列的に実行してもよいし、実行順序は問わない。
【0119】
<E.応用例>
本実施の形態に従う情報管理システム1は、典型的には以下のような分野に適用可能である。
【0120】
(1)ファクトリーオートメーション(FA)
情報管理システム1は、装置やラインを制御するためのPLCなどのコントローラと各デバイスとの通信などのシミュレーションに応用できる。このようなシミュレーションにより通信を効率化することで、制御応答性を高めて、タクトタイムの低減を実現できる。また、製造ラインをフレキシブルに変更するようなニーズに対して、モジュールの組み替えの事前検証を行うこともできる。
【0121】
(2)ビルディングオートメーション(BA)
情報管理システム1は、エレベータ、エアコンディショナ、照明などを制御するコントローラと各デバイスとの通信などのシミュレーションに応用できる。このようなシミュレーションにより通信を効率化することで、制御応答性を高めることができる。また、外的環境や人の動きに応じた使用効率をリアルタイムに制御できるかといった事前検証を行うこともできる。
【0122】
(3)プロセスオートメーション(PA)
情報管理システム1は、装置や工程を制御するためのコントローラと各デバイスとの通信などのシミュレーションに応用できる。このようなシミュレーションにより通信を効率化することで、制御応答性を高めることができる。また、材料や電力の消費を削減できるかといった事前検証を行うこともできる。さらに、製造ラインをフレキシブルに変更するようなニーズに対して、モジュールの組み替えの事前検証を行うこともできる。
【0123】
(4)スマートグリッド
情報管理システム1は、風力や太陽光パネルなどを制御するコントローラと各デバイスとの通信などのシミュレーションに応用できる。このようなシミュレーションにより通信を効率化することで、制御応答性を高めることができる。また、外的環境要因に応じて発電効率および使用効率をリアルタイムに制御できるかといった事前検証を行うこともできる。
【0124】
<F.まとめ>
本実施の形態に従う情報管理システムは、シミュレーションなどに用いるタイプモデルを管理するとともに、実構成から提供される情報に基づいて、タイプモデルを更新等することができる。
【0125】
一般的に、シミュレーションなどに用いるモデルは、製造段階で、コントローラの制御性能やネットワークデバイスの通信性能を測定および評価し、当該評価結果に基づいて構成される。しかしながら、測定および評価の方法や条件などによっては、実構成に配置した状態を適切に反映したモデルを構成できない場合もある。そのため、事前のシミュレーションで評価したとしても、実構成で試行錯誤的に調整せざるを得ない場合も多い。
【0126】
本実施の形態に従う情報管理システムは、実構成の状態をプライベート仮想空間に正しく反映することで、モデルと実構成との誤差(ズレや差分)を算出できる。このようなモデルと実構成との誤差をパブリック仮想空間へフィードバックすることで、パブリック仮想空間が管理するタイプモデルのモデル精度を高めることができる。
【0127】
さらに、パブリック仮想空間が管理するモデルを次のシミュレーションにも利用できるので、シミュレーションのモデルの精度を順次高めていくことができる。
【0128】
<G.付記>
上述したような本実施の形態は、以下のような技術思想を含む。
【0129】
[構成1]
1または複数のコンピュータ(150)が実行する情報管理方法であって、
1または複数のデバイス(300,310)を含む実構成に対応する第1のインスタンスモデルを生成するステップ(S4)と、
前記1または複数のデバイスから情報を収集するステップ(S6)と、
前記収集した情報に基づいて、前記第1のインスタンスモデルを更新するステップ(S12)と、
前記更新した第1のインスタンスモデルに基づいてタイプモデルの情報を生成するステップ(S14)と、
生成したタイプモデルの情報に基づいて、管理されているタイプモデルを更新するステップ(S20)とを備える、情報管理方法。
【0130】
[構成2]
前記タイプモデルをインスタンス化して第2のインスタンスモデルを生成するステップ(S22)と、
前記生成した第2のインスタンスモデルを対応する新たな実構成に反映するステップ(S26)とをさらに備える、構成1に記載の情報管理方法。
【0131】
[構成3]
前記第2のインスタンスモデルを生成するステップは、前記第1のインスタンスモデルをコピーするステップを含む、構成2に記載の情報管理方法。
【0132】
[構成4]
前記生成した新たなインスタンスモデルを用いてシミュレーションを実行するステップ(S24)をさらに備える、構成2または3に記載の情報管理方法。
【0133】
[構成5]
前記タイプモデルの情報を生成するステップは、前記更新したインスタンスモデルから当該インスタンスモデルに固有の情報を除くステップを含む、構成1~4のいずれか1項に記載の情報管理方法。
【0134】
[構成6]
前記インスタンスモデルは、制限された第1の仮想空間(20)上に生成され、
前記タイプモデルは、複数の第1の仮想空間からアクセス可能な第2の仮想空間(10)で管理される、構成1~5のいずれか1項に記載の情報管理方法。
【0135】
[構成7]
前記タイプモデルおよび前記インスタンスモデルには、同一のタイプを特定するための識別情報(101,111,201,211)が付与されている、構成1~6のいずれか1項に記載の情報管理方法。
【0136】
[構成8]
前記第1のインスタンスモデルを更新するステップは、前記収集した情報と前記第1のインスタンスモデルとの誤差を算出し、算出した誤差に基づいて前記第1のインスタンスモデルの値を変更するステップを含む、構成1~7のいずれか1項に記載の情報管理方法。
【0137】
[構成9]
第1のコンピュータ(150)と第2のコンピュータ(150)とを備える情報管理システム(1)であって、
前記第1のコンピュータは、
1または複数のデバイスを含む実構成に対応する第1のインスタンスモデルを生成する手段(S4)と、
前記1または複数のデバイスから情報を取得する手段(S8)と、
前記取得した情報に基づいて、前記第1のインスタンスモデルを更新する手段(S12)と、
前記更新した第1のインスタンスモデルに基づいてタイプモデルの情報を生成する手段(S14)とを備え、
前記第2のコンピュータは、
生成したタイプモデルの情報に基づいて、管理されているタイプモデルを更新する手段(S20)を備える、情報管理システム。
【0138】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0139】
1 情報管理システム、10 パブリック仮想空間、20,20A,20B プライベート仮想空間、30,30A,30B 実構成、100,110 タイプモデル、101,111,201,211 識別情報、150 情報処理装置、152,3102 プロセッサ、154,3104 主メモリ、156 表示部、158 入力部、160 通信インターフェイス、162,3110 バス、170,3120 ストレージ、172,3122 OS、174 情報管理プログラム、176 データセット、200 仮想PLC、210,212 仮想スイッチ、220 仮想ネットワークコントローラ、230 仮想監視装置、250 共有データ格納部、300 PLC、310,312 スイッチ、320 ネットワークコントローラ、322 通信情報、330 監視装置、332 生産情報、3106 上位通信インターフェイス、3108 フィールド通信インターフェイス、3124 システムプログラム。