(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】自動運転システム、自動運転制御方法、及び自動運転制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/035 20120101AFI20241217BHJP
B60W 50/04 20060101ALI20241217BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20241217BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241217BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20241217BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20241217BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20241217BHJP
G05D 1/227 20240101ALI20241217BHJP
【FI】
B60W50/035
B60W50/04
B60W30/10
B60W60/00
G01C21/34
G01C21/26 C
G08G1/09 V
G05D1/227
(21)【出願番号】P 2021080496
(22)【出願日】2021-05-11
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 貴之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 国仁
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健文
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-033612(JP,A)
【文献】特開2021-043788(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0073377(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
G01C 21/26 ~ 21/36
G08G 1/00 ~ 1/16
G05D 1/00 ~ 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔支援の対象である自動運転車両を制御する自動運転システムであって、
1又は複数のプロセッサと、
前記遠隔支援が必要とされる可能性のある特定位置を示す特定位置情報を格納する1又は複数の記憶装置と
を備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
目的地までの目標ルートとして第1目標ルートを設定し、
前記自動運転車両に前記遠隔支援を提供する遠隔支援系の異常の有無を判定し、
前記遠隔支援が必要とされる前に前記遠隔支援系の前記異常が検出された場合、前記特定位置情報に基づいて、前記自動運転車両が経由する前記特定位置の数が前記第1目標ルートよりも少ない代替ルートを探索し、
前記代替ルートが見つかった場合、前記目標ルートを前記第1目標ルートから前記代替ルートに変更する
自動運転システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自動運転システムであって、
前記1又は複数のプロセッサは、前記特定位置情報に基づいて、前記特定位置を経由することなく前記目的地に到達する前記代替ルートを探索する
自動運転システム。
【請求項3】
請求項1に記載の自動運転システムであって、
前記遠隔支援系の前記異常が機能失陥である場合、前記1又は複数のプロセッサは、前記特定位置情報に基づいて、前記特定位置を経由することなく前記目的地に到達する前記代替ルートを探索する
自動運転システム。
【請求項4】
請求項1に記載の自動運転システムであって、
前記遠隔支援系の前記異常が性能低下である場合、前記1又は複数のプロセッサは、前記特定位置情報に基づいて、前記自動運転車両が経由する前記特定位置の数が前記第1目標ルートよりも少ない前記代替ルートを探索する
自動運転システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の自動運転システムであって、
前記代替ルートが見つからない場合、前記1又は複数のプロセッサは、前記第1目標ルート上の目標退避位置を設定し、前記目標退避位置に停止するように前記自動運転車両を制御する
自動運転システム。
【請求項6】
遠隔支援の対象である自動運転車両を制御する自動運転制御方法であって、
特定位置情報は、前記遠隔支援が必要とされる可能性のある特定位置を示し、
前記自動運転制御方法は、
目的地までの目標ルートとして第1目標ルートを設定する処理と、
前記自動運転車両に前記遠隔支援を提供する遠隔支援系の異常の有無を判定する処理と、
前記遠隔支援が必要とされる前に前記遠隔支援系の前記異常が検出された場合、前記特定位置情報に基づいて、前記自動運転車両が経由する前記特定位置の数が前記第1目標ルートよりも少ない代替ルートを探索する処理と、
前記代替ルートが見つかった場合、前記目標ルートを前記第1目標ルートから前記代替ルートに変更する処理と
を含む
自動運転制御方法。
【請求項7】
コンピュータによって実行され、遠隔支援の対象である自動運転車両を制御する自動運転制御プログラムであって、
特定位置情報は、前記遠隔支援が必要とされる可能性のある特定位置を示し、
前記自動運転制御プログラムは、
目的地までの目標ルートとして第1目標ルートを設定する処理と、
前記自動運転車両に前記遠隔支援を提供する遠隔支援系の異常の有無を判定する処理と、
前記遠隔支援が必要とされる前に前記遠隔支援系の前記異常が検出された場合、前記特定位置情報に基づいて、前記自動運転車両が経由する前記特定位置の数が前記第1目標ルートよりも少ない代替ルートを探索する処理と、
前記代替ルートが見つかった場合、前記目標ルートを前記第1目標ルートから前記代替ルートに変更する処理と
を前記コンピュータに実行させる
自動運転制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔支援の対象である自動運転車両を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両の遠隔運転を行う遠隔運転制御装置を開示している。遠隔運転制御装置は、車両と通信を行うことにより車両の遠隔運転を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転車両の走行を遠隔で支援する遠隔支援技術について考える。遠隔支援は、遠隔支援装置と自動運転車両との間の通信を必要とする。「遠隔支援系」は、自動運転車両に遠隔支援を提供するための構成や機能を含む。例えば、遠隔支援系は、遠隔支援装置、通信ネットワーク、自動運転車両に搭載された通信装置、等を含む。遠隔支援系の少なくとも一部において異常が発生した場合、自動運転車両に対する遠隔支援の提供が不可能となる、あるいは、遠隔支援の精度が低下する。
【0005】
本開示の1つの目的は、自動運転車両に遠隔支援を提供する遠隔支援系の異常が発生した際に、自動運転車両を適切に制御することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の観点は、遠隔支援の対象である自動運転車両を制御する自動運転システムに関連する。
自動運転システムは、
1又は複数のプロセッサと、
遠隔支援が必要とされる可能性のある特定位置を示す特定位置情報を格納する1又は複数の記憶装置と
を備える。
1又は複数のプロセッサは、
目的地までの目標ルートとして第1目標ルートを設定し、
自動運転車両に遠隔支援を提供する遠隔支援系の異常の有無を判定し、
遠隔支援系の異常が検出された場合、特定位置情報に基づいて、自動運転車両が経由する特定位置の数が第1目標ルートよりも少ない代替ルートを探索し、
代替ルートが見つかった場合、目標ルートを第1目標ルートから代替ルートに変更する。
【0007】
第2の観点は、遠隔支援の対象である自動運転車両を制御する自動運転制御方法に関連する。
特定位置情報は、遠隔支援が必要とされる可能性のある特定位置を示す。
自動運転制御方法は、
目的地までの目標ルートとして第1目標ルートを設定する処理と、
自動運転車両に遠隔支援を提供する遠隔支援系の異常の有無を判定する処理と、
遠隔支援系の異常が検出された場合、特定位置情報に基づいて、自動運転車両が経由する特定位置の数が第1目標ルートよりも少ない代替ルートを探索する処理と、
代替ルートが見つかった場合、目標ルートを第1目標ルートから代替ルートに変更する処理と
を含む。
【0008】
第3の観点は、コンピュータによって実行され、遠隔支援の対象である自動運転車両を制御する自動運転制御プログラムに関連する。
特定位置情報は、遠隔支援が必要とされる可能性のある特定位置を示す。
自動運転制御プログラムは、
目的地までの目標ルートとして第1目標ルートを設定する処理と、
自動運転車両に遠隔支援を提供する遠隔支援系の異常の有無を判定する処理と、
遠隔支援系の異常が検出された場合、特定位置情報に基づいて、自動運転車両が経由する特定位置の数が第1目標ルートよりも少ない代替ルートを探索する処理と、
代替ルートが見つかった場合、目標ルートを第1目標ルートから代替ルートに変更する処理と
をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、遠隔支援系の異常が検出された場合、自動運転車両が経由する特定位置の数が第1目標ルートよりも少なくなるような代替ルートが探索される。そのような代替ルートが見つかった場合、目的地までの目標ルートは、第1目標ルートから代替ルートに変更される。自動運転車両が通過する特定位置の数が減少するため、遠隔支援が必要となる確率は全体として低下する。よって、自動運転車両が目的地に到達することができる確率が増加する。遠隔支援系の異常が検出された場合であっても、現在位置の近傍で自動運転を終了する必要はない。ルート変更処理を行うことにより、自動運転を可能な限り継続することが可能となる。このことは、自動運転の継続性の観点から好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態に係る遠隔支援システムを示す概念図である。
【
図2】本開示の実施の形態に係る遠隔支援の概要を説明するための概念図である。
【
図3】本開示の実施の形態に係る特定位置の一例を説明するための概念図である。
【
図4】本開示の実施の形態に係る遠隔支援系の異常発生時の処理を説明するための概念図である。
【
図5】本開示の実施の形態に係る遠隔支援系の異常発生時の処理の一例を説明するための概念図である。
【
図6】本開示の実施の形態に係る遠隔支援系の異常発生時の処理の他の例を説明するための概念図である。
【
図7】本開示の実施の形態に係る退避処理の一例を説明するための概念図である。
【
図8】本開示の実施の形態に係る停車候補エリアの一例を説明するための概念図である。
【
図9】本開示の実施の形態に係る高優先度エリアと低優先度エリアの一例を説明するための概念図である。
【
図10】本開示の実施の形態に係る自動運転システムの構成例を示すブロック図である。
【
図11】本開示の実施の形態に係る運転環境情報の一例を示すブロック図である。
【
図12】本開示の実施の形態に係る自動運転システムによる処理例を示すフローチャートである。
【
図13】本開示の実施の形態に係るステップS300の第1の例を示すフローチャートである。
【
図14】本開示の実施の形態に係るステップS300の第2の例を示すフローチャートである。
【
図15】本開示の実施の形態に係るステップS300の第3の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0012】
1.遠隔支援の概要
図1は、本実施の形態に係る遠隔支援システムを示す概念図である。遠隔支援システムは、自動運転車両1、遠隔支援装置2、及び通信ネットワーク3を含んでいる。
【0013】
自動運転車両1は、自動運転可能な車両である。ここでの自動運転としては、ドライバが必ずしも100%運転に集中しなくてもよいことを前提としたもの(いわゆるレベル3以上の自動運転)を想定している。自動運転車両1は、ドライバを必要としないレベル4以上の自動運転車両であってもよい。自動運転車両1が、本実施の形態における遠隔支援の対象である。
【0014】
遠隔支援装置2は、自動運転車両1の遠隔支援を行うための装置であり、遠隔オペレータによって操作される。自動運転車両1と遠隔支援装置2は、通信ネットワーク3を介して互いに通信可能に接続されている。遠隔支援装置2は、通信ネットワーク3を介して自動運転車両1と通信を行い、自動運転車両1の走行を遠隔で支援する。より詳細には、遠隔オペレータが、遠隔支援装置2を操作して、自動運転車両1の走行を遠隔で支援する。遠隔支援装置2は、遠隔オペレータによる自動運転車両1の遠隔支援を補助する装置であるとも言える。
【0015】
通信ネットワーク3は、無線基地局、無線通信ネットワーク、有線通信ネットワーク、等を含んでいる。無線通信ネットワークとしては、例えば、5Gネットワークが例示される。
【0016】
図2は、本実施の形態に係る遠隔支援の概要を説明するための概念図である。自動運転システム10は、自動運転車両1を制御する。自動運転中、自動運転システム10は、各種の車両処理を実行する。自動運転中の代表的な車両処理としては、次のようなものが挙げられる。
【0017】
(1)認識処理:自動運転システム10は、認識センサを用いて、自動運転車両1の周辺の状況を認識する。例えば、自動運転システム10は、カメラを用いて、信号機の信号表示(例:青信号、黄信号、赤信号、右折信号、等)を認識する。
(2)行動判断処理:自動運転システム10は、認識処理の結果に基づいて、行動を実行するか否かを判断する。行動としては、発進、停止、右折、左折、車線変更、等が例示される。
(3)タイミング判断処理:自動運転システム10は、上記行動を実行する実行タイミングを判断する。
【0018】
典型的には、遠隔オペレータによる遠隔支援が必要な状況は、自動運転が困難な状況である。例えば、
図3に示されるような交差点において、遠隔支援が必要となる可能性がある。
【0019】
例えば、交差点に設置された信号機に日光が当たっているとき、信号表示の認識精度が低下する可能性がある。認識処理によって信号表示を正確に判別することができない場合、自動運転システム10は、信号認識について遠隔支援を必要とする。また、信号表示を判別することができない場合、どのような行動をどのタイミングで実行すべきか判断することも困難である。よって、自動運転システム10は、行動判断処理及びタイミング判断処理についても遠隔支援を必要とする。
【0020】
信号表示が判別されたとしても、実際に行動を実行してもよいか否か判断することが難しい状況も考えられる。例えば、自動運転システム10から見た信号表示が「右折可能」となった後にもかかわらず、対向車両が交差点に進入してきたり、対向車両や先行車両が交差点内に滞留していたりする場合がある。そのような場合、自動運転システム10は、停止したまま、行動判断処理やタイミング判断処理について遠隔支援を要求してもよい。
【0021】
更に他の例として、自動運転車両1の前方に工事区間が存在する場合、車線変更を行うか否かの判断が難しい状況も考えられる。この場合、自動運転システム10は、行動判断処理について遠隔支援を要求してもよい。
【0022】
自動運転システム10は、自動運転車両1の遠隔運転(遠隔操作)を遠隔オペレータに要求してもよい。本実施の形態における「遠隔支援」とは、認識処理、行動判断処理、及びタイミング判断処理の少なくとも一つの支援だけでなく、遠隔運転(遠隔操作)も含む概念である。
【0023】
遠隔支援が必要であると判断した場合、自動運転システム10は、通信ネットワーク3を介して遠隔支援装置2に遠隔支援要求REQを送信する。遠隔支援要求REQは、遠隔オペレータに対して自動運転車両1の遠隔支援を要求する情報である。遠隔支援装置2は、受け取った遠隔支援要求REQを遠隔オペレータに通知する。遠隔支援要求REQに応答して、遠隔オペレータは、自動運転車両1の遠隔支援を開始する。
【0024】
遠隔支援の最中、自動運転システム10は、通信ネットワーク3を介して遠隔支援装置2に車両情報VCLを送信する。車両情報VCLは、自動運転車両1の状態、周辺の状況、自動運転システム10による車両処理の結果、等を示す。遠隔支援装置2は、自動運転システム10から受け取った車両情報VCLを遠隔オペレータに提示する。例えば、
図2に示されるように、遠隔支援装置2は、自動運転車両1に搭載されたカメラによって撮像された画像情報IMGを表示装置に表示する。
【0025】
遠隔オペレータは、車両情報VCLを参考にしながら、自動運転車両1の遠隔支援を行う。オペレータ指示INSは、遠隔オペレータによって入力される自動運転車両1に対する指示である。遠隔支援装置2は、遠隔オペレータからオペレータ指示INSの入力を受け付ける。そして、遠隔支援装置2は、通信ネットワーク3を介して自動運転車両1にオペレータ指示INSを送信する。自動運転システム10は、遠隔支援装置2からオペレータ指示INSを受け取り、受け取ったオペレータ指示INSに従って自動運転車両1を制御する。
【0026】
2.遠隔支援系の異常発生時の処理
2-1.遠隔支援系の異常
本実施の形態において、「遠隔支援系4」とは、自動運転車両1に遠隔支援を提供するための構成や機能を意味する。例えば、遠隔支援系4は、遠隔支援装置2、通信ネットワーク3、自動運転車両1に搭載された通信装置、等を含む(
図1参照)。自動運転車両1に搭載された通信装置としては、通信ECU(Electronic Control Unit)、通信モジュール、送受信回路、等が例示される。
【0027】
以下、自動運転車両1に遠隔支援を提供する遠隔支援系4の少なくとも一部において「異常(abnormality)」が発生した場合について考える。
【0028】
例えば、遠隔支援系4の異常は、遠隔支援系4の機能が失われる「機能失陥(functional failure)」を含む。遠隔支援系4の機能失陥の一例は、通信途絶である。例えば、通信ネットワーク3においてトラブルが発生した場合、通信途絶が発生する可能性がある。遠隔支援系4の機能失陥の他の例は、遠隔支援装置2の故障(ダウン)である。遠隔支援系4の機能失陥の更に他の例は、自動運転車両1に搭載された通信装置の故障である。遠隔支援系4の機能失陥が発生した場合、自動運転車両1に遠隔支援を提供することができなくなる。
【0029】
遠隔支援系4の異常は、遠隔支援系4の機能が低下する「性能低下(performance degradation)」を含んでいてもよい。遠隔支援系4の性能低下の一例は、通信速度やスループットの著しい低下である。遠隔支援系4の性能低下の他の例は、通信遅延の著しい増大である。遠隔支援系4の性能低下の更に他の例は、自動運転車両1に搭載された通信ECUにおける内部通信速度や計算速度の低下である。遠隔支援系4の性能低下が発生した場合、遠隔支援の精度が低下するおそれがある。
【0030】
2-2.ルート変更処理
遠隔支援系4の異常が発生した場合、自動運転車両1に対する遠隔支援の提供が不可能となる、あるいは、遠隔支援の精度が低下する。但し、遠隔支援系4の異常を検出した直後に自動運転車両1を緊急停止させる必要は必ずしもない。何故なら、遠隔支援が必要ない状況では、自動運転システム10は自動運転を通常通り継続することができるからである。つまり、遠隔支援系4の異常が検出されたからといって、焦って自動運転を終了させる必要はない。本実施の形態によれば、自動運転システム10は、遠隔支援が必要とされる可能性を考慮して、自動運転を可能な限り継続する。
【0031】
自動運転車両1に対する遠隔支援が必要とされる可能性のある位置を、以下、「特定位置PS」と呼ぶ。例えば、特定位置PSは、
図3で示されるような交差点である。他の例として、特定位置PSは、自動運転が可能な領域であるODD(Operational Design Domain)以外の位置であってもよい。更に他の例として、特定位置PSは、工事区間、渋滞区間、事故発生位置、等を含んでいてもよい。典型的には、特定位置PSは、地図情報にあらかじめ登録される。あるいは、渋滞区間や事故発生位置といった特定位置PSの情報は、リアルタイムに取得されてもよい。
【0032】
図4は、遠隔支援系4の異常が検出されたタイミングにおける自動運転の状況の一例を示している。自動運転車両1の現在位置及び目的地は、それぞれ、符号「P1」及び「DST」で示されている。自動運転車両1の現在位置P1から目的地DSTまでの目標ルートRTは、自動運転システム10により設定される。便宜上、現在の目標ルートRTを、「第1目標ルートRT1」と呼ぶ。自動運転システム10は、第1目標ルートRT1に沿って目的地DSTに向かうよう自動運転車両1を制御している。
【0033】
遠隔支援系4の異常が検出された時点で、目的地DSTまでの第1目標ルートRT1上に特定位置PSが存在している。
図4に示される例では、第1目標ルートRT1上に複数の特定位置PS1、PS2、PS3が存在している。この場合、自動運転システム10は、目的地DSTまでの目標ルートRTとして、第1目標ルートRT1とは異なる「代替ルートRT2」を探索する。特に、自動運転システム10は、自動運転車両1が経由する特定位置PSの数が第1目標ルートRT1よりも少なくなる代替ルートRT2を探索する。そのような代替ルートRT2が見つかった場合、自動運転システム10は、目的地DSTまでの目標ルートRTを第1目標ルートRT1から代替ルートRT2に変更する「ルート変更処理」を行う。
【0034】
図5は、代替ルートRT2の一例を示す概念図である。
図5に示される例では、代替ルートRT2は、現在位置P1から特定位置PSを経由することなく目的地DSTに到達する。代替ルートRT2が特定位置PSを経由しないため、自動運転システム10は、遠隔支援を必要とすることなく、目的地DSTまで通常通り自動運転を継続することができる。すなわち、自動運転車両1は、遠隔支援系4の異常による影響を受けることなく、目的地DSTに到達することができる。
【0035】
図6は、代替ルートRT2の他の例を示す概念図である。
図6に示される例では、代替ルートRT2は、現在位置P1から1つの特定位置PS1だけを経由して目的地DSTに到達する。すなわち、代替ルートRT2の場合、自動運転車両1が経由する特定位置PSの数は、第1目標ルートRT1の場合よりも少なくなる。自動運転車両1が通過する特定位置PSの数が減少するため、遠隔支援が必要となる確率は全体として低下する。よって、自動運転車両1が目的地DSTに到達することができる確率が増加する。
【0036】
尚、
図6に示される例において、特定位置PS1は遠隔支援が必要とされる可能性のある位置であり、特定位置PS1において必ず遠隔支援が必要となるわけではない。特定位置PS1において遠隔支援が必要とされなければ、自動運転車両1は、通常の自動運転により特定位置PS1を通過することができる。仮に特定位置PS1において遠隔支援が必要となったとしても、遠隔支援系4の異常が「性能低下」であれば、遅いながらも遠隔支援は可能である。
【0037】
2-3.退避処理
代替ルートRT2が見つからない場合、自動運転システム10は、自動運転車両1を安全に退避させる「退避処理」を実行してもよい。
【0038】
図7は、退避処理の一例を説明するための概念図である。「目標退避位置PE」は、退避処理によって自動運転車両1を停止させる際の目標停止位置である。好ましくは、目標退避位置PEは、道路上の安全な位置に設定される。
図7に示される例では、目標退避位置PEは、路肩に設定されている。
【0039】
自動運転システム10は、第1目標ルートRT1の中から目標退避位置PEを設定する。そして、自動運転システム10は、目標退避位置PEに向かって走行して目標退避位置PEに停止するように自動運転車両1を制御する。例えば、自動運転システム10は、自動運転車両1が現在位置から目標退避位置PEに向かって走行して目標退避位置PEに停止するような目標トラジェクトリTRを生成する。そして、自動運転システム10は、目標トラジェクトリTRに自動運転車両1が追従するように自動運転車両1の走行を制御する。
【0040】
退避処理において目標退避位置PEとして利用可能なエリアは、予め定められていてもよい。退避処理において目標退避位置PEとして利用可能なエリアを、以下、「停車候補エリアAC」と呼ぶ。
【0041】
図8は、停車候補エリアACの一例を説明するための概念図である。停車候補エリアACを説明するために、まず、「停車禁止エリアAX」について説明する。停車禁止エリアAXは、車両の駐停車が禁止されているエリアであり、道路交通法等によってあらかじめ定められている。
図8に示される例では、停車禁止エリアAXは、横断歩道及びその周辺の所定幅のエリアを含んでいる。停車禁止エリアAXは、交差点及びその周辺の所定幅のエリアを含んでいてもよい。その他、消防設備の前のエリア等も停車禁止エリアAXに含まれる。
【0042】
停車候補エリアACは、道路上の停車禁止エリアAX以外のエリアの中から選ばれる。典型的には、停車候補エリアACは、停車禁止エリアAX以外のエリアの一部である。例えば、停車候補エリアACは、停車した自動運転車両1の安全確保の観点から選ばれる。
図8に例示されるように、停車候補エリアACは、道路端に比較的近いエリアであってもよい。好適には、停車候補エリアACは、路肩や路側帯を含むように設定される。
【0043】
図9に示されるように、停車候補エリアACには優先度が設定されてもよい。高優先度エリアACHは、優先度が比較的高い停車候補エリアACであり、低優先度エリアACLは、優先度が比較的低い停車候補エリアACである。
図9に示される例では、直線区間は高優先度エリアACHに設定され、カーブ区間は低優先度エリアACLに設定されている。
【0044】
停車候補エリアAC及び停車禁止エリアAXは、例えば、地図情報にあらかじめ登録される。退避処理では、自動運転システム10は、停車候補エリアACに含まれるように目標退避位置PEを設定することが好ましい。停車候補エリアACに優先度が設定されている場合、自動運転システム10は、なるべく優先度の高い停車候補エリアACに含まれるように目標退避位置PEを設定する。
【0045】
2-4.効果
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、遠隔支援系4の異常が検出された場合、自動運転車両1が経由する特定位置PSの数が第1目標ルートRT1よりも少なくなるような代替ルートRT2が探索される。そのような代替ルートRT2が見つかった場合、目的地DSTまでの目標ルートRTは、第1目標ルートRT1から代替ルートRT2に変更される。自動運転車両1が通過する特定位置PSの数が減少するため、遠隔支援が必要となる確率は全体として低下する。よって、自動運転車両1が目的地DSTに到達することができる確率が増加する。遠隔支援系4の異常が検出された場合であっても、現在位置P1の近傍で自動運転を終了する必要はない。ルート変更処理を行うことにより、自動運転を可能な限り継続することが可能となる。このことは、自動運転の継続性の観点から好ましい。
【0046】
特定位置PSを経由することなく目的地DSTに到達するような代替ルートRT2が探索されてもよい。この場合、遠隔支援が必要とされる機会が無くなるため、目的地DSTまで通常通り自動運転を継続することができる。すなわち、自動運転車両1は、遠隔支援系4の異常による影響を受けることなく、目的地DSTに到達することができる。
【0047】
以下、本実施の形態に係る自動運転システム10について更に詳しく説明する。
【0048】
3.自動運転システムの例
3-1.構成例
自動運転システム10は、自動運転車両1を制御する。典型的には、自動運転システム10は、自動運転車両1に搭載されている。あるいは、自動運転システム10の少なくとも一部は、自動運転車両1の外部の外部装置に配置され、リモートで自動運転車両1を制御してもよい。つまり、自動運転システム10は、自動運転車両1と外部装置とに分散的に配置されてもよい。
【0049】
図10は、本実施の形態に係る自動運転システム10の構成例を示すブロック図である。自動運転システム10は、センサ群20、走行装置30、通信装置40、及び制御装置100を含んでいる。
【0050】
センサ群20は、自動運転車両1に搭載されている。センサ群20は、車両状態センサ、認識センサ、位置センサ、等を含んでいる。車両状態センサは、自動運転車両1の状態を検出する。車両状態センサとしては、車速センサ、ヨーレートセンサ、横加速度センサ、操舵角センサ、等が例示される。認識センサは、自動運転車両1の周囲の状況を検出する。認識センサとしては、カメラ、ライダー(LIDAR: Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、等が例示される。位置センサは、自動運転車両1の位置及び方位を検出する。位置センサとしては、GPS(Global Positioning System)センサが例示される。
【0051】
走行装置30は、自動運転車両1に搭載されている。走行装置30は、操舵装置、駆動装置、及び制動装置を含んでいる。操舵装置は、車輪を転舵する。例えば、操舵装置は、パワーステアリング(EPS: Electric Power Steering)装置を含んでいる。駆動装置は、駆動力を発生させる動力源である。駆動装置としては、エンジン、電動機、インホイールモータ、等が例示される。制動装置は、制動力を発生させる。
【0052】
通信装置40は、自動運転車両1の外部と通信を行う。例えば、通信装置40は、通信ネットワーク3を介して遠隔支援装置2と通信を行う(
図1、
図2参照)。通信装置40は、管理サーバと通信を行ってもよい。通信装置40は、周囲のインフラとの間でV2I通信(路車間通信)を行ってもよい。通信装置40は、周辺車両との間でV2V通信(車車間通信)を行ってもよい。通信装置40は、通信ECU(Electronic Control Unit)、通信モジュール、送受信回路、等を含む。
【0053】
制御装置100は、自動運転車両1を制御する。制御装置100は、1又は複数のプロセッサ110(以下、単にプロセッサ110と呼ぶ)と1又は複数の記憶装置120(以下、単に記憶装置120と呼ぶ)を含んでいる。プロセッサ110は、各種処理を実行する。例えば、プロセッサ110は、CPU(Central Processing Unit)を含んでいる。記憶装置120は、各種情報を格納する。記憶装置120としては、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、等が例示される。制御装置100は、1又は複数のECUを含んでいてもよい。制御装置100の一部は、自動運転車両1の外部の情報処理装置であってもよい。
【0054】
自動運転制御プログラムPROGは、自動運転車両1を制御するためのコンピュータプログラムである。プロセッサ110が自動運転制御プログラムPROGを実行することにより、制御装置100による各種処理が実現される。自動運転制御プログラムPROGは、記憶装置120に格納される。あるいは、自動運転制御プログラムPROGは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。
【0055】
3-2.運転環境情報
運転環境情報200は、自動運転車両1の運転環境を示す。運転環境情報200は、記憶装置120に格納される。
【0056】
図11は、運転環境情報200の一例を示すブロック図である。運転環境情報200は、地図情報210、特定位置情報220、退避エリア情報230、車両状態情報240、周辺状況情報250、車両位置情報260、及び配信情報270を含んでいる。
【0057】
地図情報210は、一般的なナビゲーション地図を含む。地図情報210は、レーン配置、道路形状、等を示していてもよい。地図情報210は、信号、標識、等の位置情報を含んでいてもよい。プロセッサ110は、地図データベースから、必要なエリアの地図情報を取得する。地図データベースは、自動運転車両1に搭載されている所定の記憶装置に格納されていてもよいし、外部の管理サーバに格納されていてもよい。後者の場合、プロセッサ110は、管理サーバと通信を行い、必要な地図情報を取得する。
【0058】
特定位置情報220は、自動運転車両1に対する遠隔支援が必要とされる可能性のある特定位置PSを示す。例えば、特定位置情報220は、あらかじめ作成される。特定位置情報220は、地図情報210に含まれていてもよい。後述されるように、特定位置情報220は、リアルタイムに追加されてもよい。
【0059】
退避エリア情報230は、停車候補エリアAC及び停車禁止エリアAXの位置を示す(
図8参照)。退避エリア情報230は、停車候補エリアACの優先度を示していてもよい(
図9参照)。退避エリア情報230は、あらかじめ作成される。退避エリア情報230は、地図情報210に含まれていてもよい。
【0060】
車両状態情報240は、自動運転車両1の状態を示す情報である。プロセッサ110は、車両状態センサから車両状態情報240を取得する。
【0061】
周辺状況情報250は、自動運転車両1の周囲の状況を示す情報である。プロセッサ110は、認識センサを用いて周辺状況情報250を取得する。例えば、周辺状況情報250は、カメラによって撮像される画像情報IMGを含む。周辺状況情報250は、更に、自動運転車両1の周囲の物体に関する物体情報を含んでいる。物体としては、歩行者、自転車、他車両(先行車両、駐車車両、等)、道路構成(白線、縁石、ガードレール、壁、中央分離帯、路側構造物、等)、標識、障害物、等が例示される。物体情報は、自動運転車両1に対する物体の相対位置及び相対速度を示す。
【0062】
車両位置情報260は、自動運転車両1の位置を示す情報である。プロセッサ110は、位置センサによる検出結果から車両位置情報260を取得する。また、プロセッサ110は、物体情報と地図情報210を利用した周知の自己位置推定処理(Localization)により、高精度な車両位置情報260を取得してもよい。
【0063】
配信情報270は、道路交通情報、工事区間情報、交通規制情報、等を含む。プロセッサ110は、通信装置40を介して情報提供サーバあるいは路側インフラから配信情報270を受け取る。
【0064】
プロセッサ110は、配信情報270に基づいて、工事区間、渋滞区間、事故発生位置、等を把握することができる。この場合、プロセッサ110は、工事区間、渋滞区間、事故発生位置、等を特定位置情報220に追加してもよい。
【0065】
3-3.車両走行制御、自動運転制御
プロセッサ110は、自動運転車両1の走行を制御する「車両走行制御」を実行する。車両走行制御は、操舵制御、加速制御、及び減速制御を含む。プロセッサ110は、走行装置30(操舵装置、駆動装置、制動装置)を制御することによって車両走行制御を実行する。具体的には、プロセッサ110は、操舵装置を制御することによって操舵制御を実行する。また、プロセッサ110は、駆動装置を制御することによって加速制御を実行する。また、プロセッサ110は、制動装置を制御することによって減速制御を実行する。
【0066】
また、プロセッサ110は、運転環境情報200に基づいて、自動運転制御を行う。より詳細には、プロセッサ110は、地図情報210等に基づいて、目的地DSTまでの目標ルートRTを設定する。そして、プロセッサ110は、運転環境情報200に基づいて、自動運転車両1が目標ルートRTに沿って目的地DSTに向かうように車両走行制御を行う。
【0067】
より詳細には、プロセッサ110は、運転環境情報200に基づいて、自動運転車両1の走行プランを生成する。走行プランは、現在の走行車線を維持する、車線変更を行う、障害物を回避する、等を含む。更に、プロセッサ110は、走行プランに従って自動運転車両1が走行するために必要な目標トラジェクトリTRを生成する。目標トラジェクトリTRは、目標位置及び目標速度を含んでいる。そして、プロセッサ110は、自動運転車両1が目標ルートRT及び目標トラジェクトリTRに追従するように車両走行制御を実行する。
【0068】
3-4.遠隔支援に関連する処理
自動運転の最中、プロセッサ110は、遠隔オペレータによる遠隔支援が必要か否かを判断する。典型的には、遠隔オペレータによる遠隔支援が必要な状況は、自動運転が困難な状況である。例えば、上述の認識処理、行動判断処理、及びタイミング判断処理の少なくとも一つが困難である場合、プロセッサ110は、遠隔オペレータによる遠隔支援が必要であると判断する。
【0069】
遠隔支援が必要であると判断した場合、プロセッサ110は、通信装置40を介して、遠隔支援要求REQを遠隔支援装置2に送信する。遠隔支援要求REQは、遠隔オペレータに対して自動運転車両1の遠隔支援を要求する。
【0070】
また、プロセッサ110は、通信装置40を介して、車両情報VCLを遠隔支援装置2に送信する。車両情報VCLは、運転環境情報200の少なくとも一部を含む。例えば、車両情報VCLは、カメラによって撮像される画像情報IMGを含む。車両情報VCLは、物体情報を含んでいてもよい。車両情報VCLは、車両状態情報240や車両位置情報260を含んでいてもよい。車両情報VCLは、認識処理、行動判断処理、及びタイミング判断処理の結果を含んでいてもよい。
【0071】
更に、プロセッサ110は、通信装置40を介して、オペレータ指示INSを遠隔支援装置2から受け取る。オペレータ指示INSは、遠隔オペレータによって入力される自動運転車両1に対する指示である。オペレータ指示INSを受け取った場合、プロセッサ110は、受け取ったオペレータ指示INSに従って車両走行制御を行う。
【0072】
4.遠隔支援系の異常発生時の処理フロー
図12は、本実施の形態に係る自動運転システム10による処理例を示すフローチャートである。特に、
図12は、遠隔支援系4の異常発生時に関連する処理フローを示している。
【0073】
4-1.ステップS100
ステップS100において、プロセッサ110は、自動運転車両1に遠隔支援を提供する遠隔支援系4の異常の有無を判定する。例えば、遠隔支援系4は、遠隔支援装置2、通信ネットワーク3、及び自動運転システム10の通信装置40を含む。
【0074】
遠隔支援系4の異常は、遠隔支援系4の機能が失われる「機能失陥」を含む。例えば、プロセッサ110は、遠隔支援装置2との通信状況(例:スループット、通信速度)を監視する。遠隔支援装置2との通信が途絶した場合、プロセッサ110は、遠隔支援装置2あるいは通信ネットワーク3において機能失陥が発生したと判断する。他の例として、自動運転システム10の通信装置40(例:通信ECU)は自己診断機能を有している。その自己診断機能により、プロセッサ110は、通信装置40の機能失陥を検出することができる。
【0075】
遠隔支援系4の異常は、遠隔支援系4の機能が低下する性能低下を含んでいてもよい。例えば、プロセッサ110は、遠隔支援装置2との通信状況(例:スループット、通信速度、通信遅延)を監視する。スループットあるいは通信速度が閾値を下回った場合、プロセッサ110は、遠隔支援系4の性能低下が発生したと判断する。他の例として、通信遅延が閾値を超えた場合、プロセッサ110は、遠隔支援系4の性能低下が発生したと判断する。
【0076】
遠隔支援系4の異常が検出されない場合(ステップS100;No)、今回のサイクルにおける処理は終了する。一方、遠隔支援系4の異常が検出された場合(ステップS100;Yes)、処理は、ステップS200に進む。
【0077】
4-2.ステップS200
ステップS200において、プロセッサ110は、現在位置P1から目的地DSTまでの第1目標ルートRT1上に特定位置PSが存在するか否かを判定する。第1目標ルートRT1は、プロセッサ110によって設定され、把握されている。特定位置PSは、特定位置情報220から得られる。よって、プロセッサ110は、特定位置情報220に基づいて、第1目標ルートRT1上に特定位置PSが存在するか否かを判定することができる。
【0078】
第1目標ルートRT1上に特定位置PSが存在する場合(ステップS200;Yes)、処理は、ステップS300に進む。一方、第1目標ルートRT1上に特定位置PSが存在しない場合(ステップS200;No)、今回のサイクルにおける処理は終了する。
【0079】
4-3.ステップS300
ステップS300において、プロセッサ110は、目的地DSTまでの目標ルートRTとして、第1目標ルートRT1とは異なる代替ルートRT2を探索する。特に、プロセッサ110は、自動運転車両1が経由する特定位置PSの数が第1目標ルートRT1よりも少なくなる代替ルートRT2を探索する。プロセッサ110は、地図情報210と特定位置情報220に基づいて、そのような代替ルートRT2を探索することができる。
【0080】
代替ルートRT2が見つかった場合(ステップS300;Yes)、処理は、ステップS400に進む。一方、代替ルートRT2が見つからない場合(ステップS300;No)、処理は、ステップS600に進む。以下、ステップS300のいくつかの例を説明する。
【0081】
4-3-1.第1の例
図13は、ステップS300の第1の例を示すフローチャートである。
【0082】
ステップS320において、プロセッサ110は、現在位置P1から特定位置PSを経由することなく目的地DSTに到達する代替ルートRT2を探索する。そのような代替ルートRT2が見つかった場合(ステップS320;Yes)、処理は、ステップS400に進む。一方、そのような代替ルートRT2が見つからない場合(ステップS320;No)、処理は、ステップS600に進む。
【0083】
第1の例によれば、遠隔支援系4の異常による影響を受けることのない代替ルートRT2を探索することが可能となる。
【0084】
4-3-2.第2の例
図14は、ステップS300の第2の例を示すフローチャートである。ステップS320は、第1の例の場合と同様である。特定位置PSを経由しない代替ルートRT2が見つからない場合(ステップS320;No)、処理は、ステップS330に進む。
【0085】
ステップS330において、プロセッサ110は、自動運転車両1が経由する特定位置PSの数が第1目標ルートRT1よりも少ない代替ルートRT2を探索する。そのような代替ルートRT2が見つかった場合(ステップS330;Yes)、処理は、ステップS400に進む。一方、そのような代替ルートRT2が見つからない場合(ステップS330;No)、処理は、ステップS600に進む。
【0086】
第2の例によれば、代替ルートRT2の選択範囲を拡げることが可能となる。つまり、代替ルートRT2に課される条件を緩和することが可能となる。
【0087】
4-3-3.第3の例
図15は、ステップS300の第3の例を示すフローチャートである。
【0088】
ステップS310において、プロセッサ110は、遠隔支援系4の異常が機能失陥か性能低下かを判定する。
【0089】
遠隔支援系4の異常が機能失陥である場合(ステップS310;Yes)、処理は、ステップS320に進む。ステップS320以降は、上述の第1の例の場合と同様である。
【0090】
一方、遠隔支援系4の異常が性能低下である場合(ステップS320;No)、処理は、ステップS330に進む。ステップS330以降は、第2の例の場合と同様である。尚、ここでの代替ルートRT2は、特定位置PSを経由しない代替ルートRT2も含む。
【0091】
第3の例によれば、遠隔支援系4の異常が性能低下である場合、代替ルートRT2の選択範囲を拡げることが可能となる。つまり、遠隔支援系4の異常が性能低下である場合、代替ルートRT2に課される条件を緩和することが可能となる。
【0092】
4-4.ステップS400
ステップS400において、プロセッサ110は、ルート変更処理を行う。具体的には、プロセッサ110は、目的地DSTまでの目標ルートRTを第1目標ルートRT1から代替ルートRT2に変更する。その後、処理は、ステップS500に進む。
【0093】
4-5.ステップS500
ステップS500において、プロセッサ110は、運転環境情報200に基づいて、自動運転車両1が代替ルートRT2に沿って目的地DSTに向かうように車両走行制御を行う。
【0094】
4-6.ステップS600
ステップS600において、プロセッサ110は、自動運転車両1を安全に退避させる退避処理を実行する。
【0095】
具体的には、プロセッサ110は、第1目標ルートRT1上の目標退避位置PEを設定する。このとき、プロセッサ110は、自動運転車両1の現在位置P1、車速、運動性能、等に基づいて、自動運転車両1が現実的に停止できるように目標退避位置PEを設定する。プロセッサ110は、更に退避エリア情報230を参考にしてもよい。退避エリア情報230は、停車候補エリアAC及び停車禁止エリアAXの位置を示している。プロセッサ110は、停車禁止エリアAXを避けて、退避余裕区間XEに含まれる停車候補エリアACの中で目標退避位置PEを設定する。退避エリア情報230は、停車候補エリアACの優先度を示していてもよい。その場合、プロセッサ110は、なるべく優先度の高い停車候補エリアACに含まれるように目標退避位置PEを設定する。
【0096】
そして、プロセッサ110は、自動運転車両1が目標退避位置PEに向かって走行して目標退避位置PEに停止するように車両走行制御を行う。例えば、プロセッサ110は、自動運転車両1が現在位置P1から目標退避位置PEに向かって走行して目標退避位置PEに停止するような目標トラジェクトリTRを生成する。そして、自動運転システム10は、目標トラジェクトリTRに自動運転車両1が追従するように車両走行制御を行う(
図7参照)。
【符号の説明】
【0097】
1 自動運転車両
2 遠隔支援装置
3 通信ネットワーク
4 遠隔支援系
10 自動運転システム
20 センサ群
30 走行装置
40 通信装置
100 制御装置
110 プロセッサ
120 記憶装置
200 運転環境情報
210 地図情報
220 特定位置情報
230 退避エリア情報
240 車両状態情報
250 周辺状況情報
260 車両位置情報
270 配信情報
DST 目的地
P1 現在位置
PE 目標退避位置
PS 特定位置
RT 目標ルート
RT1 第1目標ルート
RT2 代替ルート
PROG 自動運転制御プログラム