(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-16
(45)【発行日】2024-12-24
(54)【発明の名称】トナー収容容器およびこれを備える画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/12 20060101AFI20241217BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20241217BHJP
【FI】
G03G21/12
G03G15/08 342
(21)【出願番号】P 2021088911
(22)【出願日】2021-05-27
【審査請求日】2024-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 優一
(72)【発明者】
【氏名】村本 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】野々山 直己
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-095407(JP,A)
【文献】特開2016-090617(JP,A)
【文献】特開平07-325521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/12
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置において画像形成に供されなくなったトナーまたはこれから供されるべきトナーを容器本体に収容するトナー収容容器であって、
前記画像形成装置に既設のトナー排出口と前記容器本体との間に介在され、前記トナー排出口から排出された前記トナーを受け入れ口から受け入れる受け入れ部と、
前記受け入れ口を通って受け入れ部底面上に落下したトナーを掻き取って前記容器本体に送る掻き取り部材と、
前記掻き取り部材の掻き取り方向と交差する方向に前記掻き取り部材から立設された軸部に軸支されている回転部材と、
を備えることを特徴とするトナー収容容器。
【請求項2】
前記回転部材は、周面に歯形を付けた歯車形状からなることを特徴とする請求項1に記載のトナー収容容器。
【請求項3】
前記回転部材は、外周が円形状であることを特徴とする請求項1に記載のトナー収容容器。
【請求項4】
前記回転部材は、前記掻き取り部材の掻き取り動作時に、前記受け入れ部底面上に落下したトナーに接したときの当該トナーとの摩擦力で回転することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のトナー収容容器。
【請求項5】
前記掻き取り部材は、前記受け入れ部底面と対向する縁に凸部が突設されてなり、前記凸部の先端で前記受け入れ部底面上に落下したトナーを掻き取ることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のトナー収容容器。
【請求項6】
前記凸部は、前記掻き取り部材の正面視において、先端の形状が前記受け入れ部底面に向かって凸の湾曲形状に形成されてなることを特徴とする請求項5に記載のトナー収容容器。
【請求項7】
前記軸部は、前記凸部に設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載のトナー収容容器。
【請求項8】
前記凸部と前記回転部材とは、前記受け入れ部底面に向かう方向において、前記回転部材が前記凸部よりも前記受け入れ部底面側に出ている、または、前記回転部材と前記凸部との前記受け入れ部底面からの距離が同じという関係を有することを特徴とする請求項7に記載のトナー収容容器。
【請求項9】
前記容器本体の底面上のトナーを、回転動作により攪拌搬送する攪拌搬送部材と、
前記攪拌搬送部材の回転動作を前記掻き取り部材の掻き取り方向の移動に変換する運動変換部と、
を備えることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のトナー収容容器。
【請求項10】
前記運動変換部は、前記攪拌搬送部材の回転軸を中心に所定の回転半径の円上を前記攪拌搬送部材と一体で回転するクランク軸であり、
前記掻き取り部材は、前記クランク軸の回転に伴う往復運動により掻き取り動作を行うことを特徴とする請求項9に記載のトナー収容容器。
【請求項11】
前記受け入れ部は、前記容器本体の側壁の上部から横方向に飛び出すように設けられていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のトナー収容容器。
【請求項12】
さらに、前記回転部材を回転駆動する駆動部を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のトナー収容容器。
【請求項13】
前記駆動部は、前記受け入れ部底面上のトナーに前記回転部材が当たったときに、前記トナーに前記掻き取り方向と同方向の力が作用するような方向に前記回転部材を回転駆動することを特徴とする請求項12に記載のトナー収容容器。
【請求項14】
前記画像形成に供されなくなったトナーは、前記画像形成装置の前記トナー排出口から排出された廃トナーであり、前記廃トナーを前記受け入れ口から受け入れることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のトナー収容容器。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載のトナー収容容器を装着可能な画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置において画像形成に供されなくなったトナーまたはこれから供されるべきトナーを収容するトナー収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
感光体ドラムや中間転写ベルトなどの像担持体に形成されたトナー像を記録シートなどの被転写体に転写するプリンター等の画像形成装置では、その転写後に、像担持体に残った残留トナーをクリーナーなどで除去して、除去した残留トナーを廃トナーとして、トナー収容容器に収容する構成が一般的である。
【0003】
特許文献1には、廃トナーの受け入れ口を有するトナー収容容器において、受け入れ口から入って、容器本体の底面上に溜まった廃トナーを、クランク軸を中心に往復運動する掻き取り部材の掻き取り面で掻き取り、容器本体の奥側に送る構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像形成装置の小型化の要請から、画像形成装置の内部においてトナー収容容器の設置スペースの制約を受けることが多くなっている。
【0006】
図13(a)は、設置スペースの制約を受けたトナー収容容器900を例示する概略断面図である。トナー収容容器900は、廃トナーの受け入れ部902がこれよりも内部空間(トナー収容空間)が大きい容器本体901の側壁908の上部から右方向に飛び出した形状をしている。側壁908の右横の破線910で示すスペースが、装置小型化の制約により、トナー収容容器900の大きさを小さくせざるを得なかったスペースになる。
【0007】
このような形状のトナー収容容器900では、受け入れ部902の上面に設けられた受け入れ口903から受け入れ部902の底面904上に落下した廃トナーTが底面904上で溜まっていくのを防止するため、底面904上の廃トナーTを掻き取って容器本体901に送る必要が生じる。この廃トナーTの掻き取り部材として、特許文献1の掻き取り部材と同様の構成、つまりクランク軸を中心に往復運動する掻き取り部材905を用いることが可能であるが、受け入れ部902の内部空間906がある程度狭くなるので、その中で掻き取り部材905を動かす必要がある。
【0008】
図13(b)は、掻き取り部材905の掻き取り面951の下端の移動軌跡を破線952で示す模式図である。受け入れ部902の内部空間906が狭くなるほど、底面904上において移動軌跡から外れた底面部分953(塗り潰した部分)の面積が大きくなることが生じ易い。掻き取り面951では、底面部分953上の廃トナーTを掻き取ることができず、底面部分953上に廃トナーTが残ったままになる。
【0009】
図13(c)は、
図13(a)のP-P線における矢視概略平面図である。
図13(c)に示すように、幅方向に間隔を有する側壁911、912間に掻き取り部材905が位置しており、受け入れ口903から落下した一部の廃トナーTが掻き取り部材905と側壁912の間の領域957、958上に溜まっている様子を示す。特に、底面部分953の横の領域957には多くの廃トナーTが溜まっている。
【0010】
領域958上では、廃トナーTが少し溜まって山状になっても、廃トナーTの山が崩れて幅方向に流れて掻き取り面951の移動軌跡内に入れば掻き取り面951で掻き取られる。一方、領域957上では、その横の底面部分953に溜まっている廃トナーTに当たって掻き取り面951の移動軌跡内に入ることができず、徐々に上に積み重なっていく。
【0011】
長期間に亘って溜まった廃トナーTaの量が増えて廃トナーTaの山ができると、廃トナーTaが凝集したように固まった状態になり易い。矢印Q方向に動く掻き取り部材905の側面955と、固まった廃トナーTaの山との間の摺動抵抗が大きくなると、掻き取り部材905のスムーズな移動を邪魔して掻き取り性を低下させるおそれがある。
【0012】
また、廃トナーTaの山の高さが受け入れ部902の天井面907(
図13(a))に至ると、廃トナーTaの山が底面904と天井面907間を橋渡ししたようになる。廃トナーTaの山に、受け入れ口903から新たに入ったトナーTがさらに積み重なって、廃トナーTaの山が成長し、やがて受け入れ口903に届くようになると、受け入れ口903の一部が塞がるようになって、廃トナーTの受け入れを邪魔するおそれもある。
【0013】
近年、省エネルギーの観点から低温定着用として溶融温度の低いトナーが使用されることが多くなってきている。このような低温定着用トナーは、従来の通常トナーよりも低い温度で塊状になり易いので、溜まった廃トナーTaが固化し易い。
【0014】
従来では、受け入れ部902の底面904上に溜まった廃トナーを崩す手段を備えているものがなく、廃トナーのより効果的な搬送が要望されている。
【0015】
上記では、画像形成装置における画像形成で供されなくなった廃トナーを収容するトナー収容容器の例を説明したが、これに限られない。例えば、トナー補給ボトル内の新品のトナーを、これから画像形成に供されるべきトナーとして、トナーホッパーを通じて現像部に供給する画像形成装置において、トナーホッパーが上記同様の受け入れ部や容器本体を有する構成においても同様の問題が生じ得る。
【0016】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、受け入れ口から入ったトナーをより効果的に搬送できるトナー収容容器および画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本開示に係るトナー収容容器は、画像形成装置において画像形成に供されなくなったトナーまたはこれから供されるべきトナーを容器本体に収容するトナー収容容器であって、前記画像形成装置に既設のトナー排出口と前記容器本体との間に介在され、前記トナー排出口から排出された前記トナーを受け入れ口から受け入れる受け入れ部と、前記受け入れ口を通って受け入れ部底面上に落下したトナーを掻き取って前記容器本体に送る掻き取り部材と、前記掻き取り部材の掻き取り方向と交差する方向に前記掻き取り部材から立設された軸部に軸支されている回転部材と、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、前記回転部材は、周面に歯形を付けた歯車形状からなるとしても良い。
【0019】
さらに、前記回転部材は、外周が円形状であるとしても良い。
【0020】
また、前記回転部材は、前記掻き取り部材の掻き取り動作時に、前記受け入れ部底面上に落下したトナーに接したときの当該トナーとの摩擦力で回転するとしても良い。
【0021】
さらに、前記掻き取り部材は、前記受け入れ部底面と対向する縁に凸部が突設されてなり、前記凸部の先端で前記受け入れ部底面上に落下したトナーを掻き取るとしても良い。
【0022】
ここで、前記凸部は、前記掻き取り部材の正面視において、先端の形状が前記受け入れ部底面に向かって凸の湾曲形状に形成されてなるとしても良い。
【0023】
また、前記軸部は、前記凸部に設けられているとしても良い。
【0024】
さらに、前記凸部と前記回転部材とは、前記受け入れ部底面に向かう方向において、前記回転部材が前記凸部よりも前記受け入れ部底面側に出ている、または、前記回転部材と前記凸部との前記受け入れ部底面からの距離が同じという関係を有するとしても良い。
【0025】
また、前記容器本体の底面上のトナーを、回転動作により攪拌搬送する攪拌搬送部材と、前記攪拌搬送部材の回転動作を前記掻き取り部材の掻き取り方向の移動に変換する運動変換部と、を備えるとしても良い。
【0026】
ここで、前記運動変換部は、前記攪拌搬送部材の回転軸を中心に所定の回転半径の円上を前記攪拌搬送部材と一体で回転するクランク軸であり、前記掻き取り部材は、前記クランク軸の回転に伴う往復運動により掻き取り動作を行うとしても良い。
【0027】
また、前記受け入れ部は、前記容器本体の側壁の上部から横方向に飛び出すように設けられているとしても良い。
【0028】
さらに、前記回転部材を回転駆動する駆動部を有するとしても良い。
【0029】
ここで、前記駆動部は、前記受け入れ部底面上のトナーに前記回転部材が当たったときに、前記トナーに前記掻き取り方向と同方向の力が作用するような方向に前記回転部材を回転駆動するとしても良い。
【0030】
また、前記画像形成に供されなくなったトナーは、前記画像形成装置の前記トナー排出口から排出された廃トナーであり、前記廃トナーを前記受け入れ口から受け入れるとしても良い。
【0031】
本開示に係る画像形成装置は、上記トナー収容容器を装着可能であることを特徴する。
【発明の効果】
【0032】
上記の構成をとれば、受け入れ口から入ったトナーのうち、掻き取り部材では掻き取れずに受け入れ部底面に溜まったトナーに、掻き取り部材に立設された軸部に軸支されている回転部材が当たったときにその回転部材の回転方向の力で崩すことができ、トナーが受け入れ部底面に溜まって受け入れ口に届くような高さにまで至ることが防止される。そして、受け入れ部底面に溜まったトナーへの回転部材の回転方向の力の作用により、例えば回転しない固定部材を設けた場合に、その固定部材がトナーを上から容器本体の底面に押し付けて固めてしまうといったことが生じ難い。これにより、受け入れ部から容器本体へのトナーの搬送をより効果的に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施の形態に係るプリンターの構成を示す図である。
【
図2】プリンターの装置本体から取り外したトナー収容容器を
図1に示す矢印B方向から見たときの全体斜視図である。
【
図5】第2レバーが往復運動により揺動している様子を示す模式図である。
【
図6】
図4に示すD-D線における矢視平面図である。
【
図7】(a)は、
図6に示す矢印H方向から掻き取り部と回転部材を見たときの概略分解斜視図であり、(b)は、(a)に示す矢印Xa方向から掻き取り部と回転部材を見たときの概略側面図である。
【
図8】掻き取り部が掻き取り動作で往復移動したときの凸部の先端の移動軌跡を破線で示す模式図である。
【
図9】(a)と(b)は、受け入れ部の底面上に溜まった廃トナーの山が回転部材により崩される様子を示す模式図である。
【
図10】変形例に係る回転部材の構成例を示す図である。
【
図11】変形例に係る回転部材の駆動機構の例を示す模式図である。
【
図12】変形例に係るトナーホッパーの構成例を示す図である。
【
図13】(a)~(c)は、トナー収容容器に従来の掻き取り部材を適用した場合の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本開示に係るトナー収容容器および画像形成装置の実施の形態を、カラープリンター(以下、単に「プリンター」という。)に適用した場合を例にして説明する。
【0035】
(1)プリンターの構成
図1は、プリンター10の構成を説明するための概略正面図である。同図では、X軸方向がプリンター10を正面側から見たときの左右方向に相当し、Y軸方向が上下方向に相当する。X軸とY軸の双方に直交する方向をZ軸方向(奥行方向)という。
【0036】
同図に示すようにプリンター10は、画像形成部11と、給紙部12と、定着部13と、トナー収容容器50などを備えた電子写真方式の画像形成装置であり、ネットワーク(例えばLAN)を介して外部の端末装置(不図示)から送られて来る画像データに基づいて記録シートにカラー画像をプリントするプリントジョブを実行可能である。
【0037】
カラープリントは、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックからなるトナー像を記録シートに多重転写、定着することにより行われる。以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表す。
【0038】
画像形成部11は、Y~K色のそれぞれに対応する作像部20Y、20M、20C、20K、中間転写ベルト21などを備えている。
【0039】
作像部20Kは、感光体ドラム1と、その周囲に配設された帯電部2、露光部3、現像部4、一次転写ローラー5、感光体ドラム1を清掃するためのクリーナー6などを備えており、矢印A方向に回転駆動される感光体ドラム1上にK色のトナー像を作像する。感光体ドラム1の回転軸は、Z軸方向に平行である。
【0040】
他の作像部20Y、20M、20Cについても作像部20Kと同様の構成になっており、感光体ドラム1上に対応する色(Y、MまたはC色)のトナー像を作像する。なお、作像部20Y~20Cについては符号の表記を省略している。
【0041】
中間転写ベルト21は、無端状のベルトであり、駆動ローラー22と従動ローラー23に張架されて同図の矢印で示す方向に周回走行される。
【0042】
給紙部12は、シートSを収容する給紙カセット31と、繰り出しローラー32と、搬送ローラー対33と、タイミングローラー対34と、二次転写ローラー35などを備えている。
【0043】
定着部13は、相互に圧接される定着ローラーと加圧ローラーと、定着ローラーを加熱するためのヒーターなどを備えている。
【0044】
このような構成において、プリンター10は、プリントジョブの実行指示を受け付けると、外部端末からの画像データを取得する。取得した画像データに基づいて作像部20Y~20Kごとに、露光部3のレーザダイオードなどの光源を駆動させる。これにより各露光部3の光源から光ビームLが出射されて、感光体ドラム1が露光走査される。
【0045】
この露光走査の前に、作像部20Y~20Kごとに、感光体ドラム1は、帯電部2により一様に帯電されており、光ビームLの露光走査によって感光体ドラム1上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、対応する現像部4に収容されているトナーを含む現像剤により現像(顕像化)されて、感光体ドラム1上にトナー像が形成される。
【0046】
作像部20Y~20Kごとに、感光体ドラム1上のトナー像は、感光体ドラム1と一次転写ローラー5との間に作用する静電力により中間転写ベルト21上に一次転写される。この際、各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト21上の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにタイミングをずらして実行される。なお、感光体ドラム1上において中間転写ベルト21上に一次転写されずに残った残留トナーは、クリーナー6のブレード6aにより感光体ドラム1から除去される。除去された残留トナーは、画像形成に供されなくなったトナー(廃トナー)として、トナー収容容器50に収容される。
【0047】
中間転写ベルト21上に多重転写された各色トナー像は、中間転写ベルト21の周回走行により、二次転写ローラー35と中間転写ベルト21との接触位置である二次転写位置351に移動する。
【0048】
上記作像動作のタイミングに合わせて、給紙部12からは、給紙カセット31から繰り出しローラー32により繰り出された1枚の記録シートSが搬送路37に沿って搬送ローラー対33、タイミングローラー対34を介して搬送されて来ている。この記録シートSは、周回走行される中間転写ベルト21と二次転写ローラー35の間を通過する際、二次転写ローラー35の静電力の作用により、中間転写ベルト21上の各色トナー像が二次転写位置351で一括して記録シートS上に二次転写される。
【0049】
二次転写位置351を通過した記録シートSは、定着部13に搬送され、定着部13を通過する際に、記録シートS上のトナー像が加熱、加圧されて定着された後、排出ローラー対36を介して排出され、収容トレイ38に収容される。
【0050】
中間転写ベルト21上において二次転写位置351で記録シートSに二次転写されずに残った残留トナーは、中間転写ベルト21の周囲に配置されたクリーナー24のブレード241により中間転写ベルト21から除去される。除去された残留トナーは、廃トナーとしてトナー収容容器50に収容される。
【0051】
トナー収容容器50は、作像部20Y~20K、中間転写ベルト21、クリーナー24よりも装置正面側に位置し、装置筐体(本体)28に着脱可能に装着されている。装置本体28に装着されたトナー収容容器50よりもさらに装置正面側には、開閉可能な正面カバー(不図示)が配置されており、ユーザーが正面カバーを開けると、トナー収容容器50がユーザーから見えるようになっている。
【0052】
ユーザーは、正面カバーを開けて、現在、装着されているトナー収容容器50を装置本体28から取り外し、新たな空のトナー収容容器50を装置本体28に装着することで、トナー収容容器50の交換作業を行うことができる。
【0053】
(2)トナー収容容器の全体構成
図2は、装置本体28から取り外したトナー収容容器50を
図1に示す矢印B方向から見たときの全体斜視図であり、
図3は、
図2に示すU-U線における断面図である。
【0054】
図2と
図3に示すようにトナー収容容器50は、正面板51と、背面板52と、これらの左右端部に接続する側面板53、54と、これらの上下端部に接続する天面板55と底面板56とを有し、これらの各板面に囲まれた空間59が容器本体58の内部空間になっている。正面板51~底面板56のうち、天面板55を天井壁、底面板56を底壁、これらを除く各板を側壁と捉えることができる。
【0055】
正面板51~底面板56の各板がトナー収容容器50の外装を構成し、これらの各板が接続されてなる筐体が容器本体58になる。容器本体58は、樹脂製、例えばABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの共重合合成樹脂)やPS(ポリスチレン)などであるが、他の素材が用いられても良い。
【0056】
天面板55の上面には、X軸方向に沿って間隔を開けて並ぶ5個の廃トナー受け入れ部61~65が設けられている。廃トナー受け入れ部61は、クリーナー24のトナー排出口242(
図1)から排出された廃トナーを受け入れる受け入れ口611を有する。受け入れ口611は、廃トナー受け入れ部61の内部空間610(
図3)を通じて容器本体58の内部空間59に連通している。廃トナー受け入れ部61は、画像形成装置に既設のトナー排出口242と容器本体58との間に介在するものといえる。
【0057】
廃トナー受け入れ部62は、Y色の作像部20Yのクリーナー6のトナー排出口(不図示)から排出された廃トナーを受け入れる受け入れ口621を有する。受け入れ口621は、廃トナー受け入れ部62の内部空間620を通じて容器本体58の内部空間59に連通している。
【0058】
同様に、廃トナー受け入れ部63、64、65は、M、C、K色の作像部20M、20C、20Kのクリーナー6のトナー排出口(不図示)から排出された廃トナーを受け入れる受け入れ口631、641、651を有する。受け入れ口631、641、651は、廃トナー受け入れ部63、64、65の内部空間630、640、650を通じて容器本体58の内部空間59に連通している。これにより、受け入れ口611~651から入った廃トナーが容器本体58に収容可能になる。
【0059】
図3に示すように容器本体58内には、容器本体58の底面560上に溜まった廃トナーを攪拌搬送するための攪拌搬送部材70と、受け入れ部61の底面612(
図4)上に付着した廃トナーを掻き取る掻き取り部80と、廃トナーの満タン検出に用いられる廃トナー積載部90が設けられている。
【0060】
攪拌搬送部材70は、底面560よりも上に配置され、X軸方向に長尺の軸体71と、軸体71に設けられたスクリュー部材72と攪拌部材73、74、75、76を含む。スクリュー部材72は、軸体71の回転軸に沿って軸体71の周囲に設けられている。攪拌部材73~76のそれぞれは、軸体71から軸体71の回転軸に直交する方向に飛び出るようにして固設されている。
【0061】
軸体71の一方端711は、側面板53に設けられた軸受712を介して容器本体58の外側へ突出し、その突出部分にギア713が装着されている。軸体71の他方端716は、側面板54に設けられた軸受714に支持されている。
【0062】
軸体71においてX軸方向に攪拌部材76と他方端716との間には、クランク軸715が設けられている。クランク軸715は、軸体71の回転軸を中心に所定の回転半径の円上を攪拌搬送部材70と一体で回転する軸である。
【0063】
このような構成において、
図3に示すギア713に、装置本体28に設けられた駆動モーター19(
図1)の駆動力が伝達されて、一定方向に回転すると、ギア713の回転により、攪拌搬送部材70が回転、すなわち軸体71と一体でスクリュー部材72と攪拌部材73~76とクランク軸715がギア713と同方向に回転する。駆動モーター19は、例えばプリントジョブ実行中などに回転駆動される。
【0064】
スクリュー部材72の回転により、容器本体58の底面560上に溜まった廃トナーTのうち、廃トナー積載部90よりもギア713に近い側に存する廃トナーTが廃トナー積載部90に近づく方向に搬送される。また、攪拌部材73~76の回転により、容器本体58の底面560上に溜まった廃トナーTが攪拌されて塊状になったり固形化したりすることが防止される。
【0065】
廃トナー積載部90は、容器本体58内における廃トナーTの収容量が所定量に至ったときにその廃トナーTの液面の一部を筒状の収容部91の上端の開口92から受け入れて収容部91に収容するものである。収容部91内の廃トナーTの嵩が一定以上になると、装置本体28側に設けられた公知の光学式の検出センサー(不図示)で検出することにより、トナー収容容器50が廃トナーTで一杯であることの検出が行われる。
【0066】
(3)掻き取り部の構成
掻き取り部80は、クランク軸715に連結されている長尺の平板からなる第1レバー81と、第1レバー81に連結されており、受け入れ部61におけるX軸方向に間隔を開けて配された側壁615、616間の内部空間610に入り込んでいる長尺の平板からなる第2レバー82(掻き取り部材)を有し、これらが往復スライダークランク機構を構成している。第1レバー81と第2レバー82は、樹脂製、例えばPC(ポリカーボネート)やPSなどであるが、他の素材が用いられても良い。
【0067】
図4は、
図3に示すW-W線における断面図であり、掻き取り部80の構成を示している。ここで、
図4では、X軸方向(紙面垂直方向)が板状の第1レバー81と第2レバー82の厚み方向になり、側面板54の内面(略平面)と第1レバー81の主面810と第2レバー82の主面820とが略平行になっている。また、側面板54の内面には、X軸方向、つまり容器本体58の内部空間59に向けて突設されたピン541、542が配置されている。
【0068】
図4に示すようにトナー収容容器50の受け入れ部61は、これよりも廃トナー収容空間(内部空間)が大きい容器本体58の側壁52の上部から横方向(ここでは矢印Z方向)に飛び出した形状をしている。
【0069】
受け入れ部61の受け入れ口611は、受け入れ部61の上面619に設けられており、受け入れ口611の直下には、受け入れ部61の底面(受け入れ部底面)612が設けられ、受け入れ部底面612は、容器本体58の底面560に向かって傾斜する傾斜面になっている。以下、受け入れ部底面612を底面612と略する。
【0070】
受け入れ口611を通って受け入れ部61の内部空間610に入った廃トナーTは、底面612上に自重で落下する。底面612は、容器本体58の底面560に向かう傾斜面になっているので、その傾斜している底面612上を、受け入れ口611を通ってその底面612に落下した廃トナーTの全てが自重で転がって容器本体58の底面560上に落ちれば、廃トナーTが底面612上に溜まることはないが、実際には、底面612に付着したまま徐々に溜まって来ることが生じる。
【0071】
そこで、底面612上に付着した廃トナーTを強制的に掻き取って、容器本体58の底面560に送るための掻き取り部80が設けられている。
【0072】
掻き取り部80の第1レバー81の長手方向一方の端部(下端部)811は、クランク軸715に回転自在に連結されている。第1レバー81の長手方向他方の端部(上端部)812には、厚み方向に貫通する円形の孔813が設けられており、この孔813には、第2レバー82の長手方向一方の端部(基端部)821にX軸方向に突設されたピン829が矢印N方向に回転自在に嵌まり込んでいる。
【0073】
第1レバー81の長手方向略中央部には、厚み方向に貫通する長孔815が穿設されており、長孔815には、側面板54に立設されたピン541が嵌まり込んでいる。同様に、第2レバー82の長手方向略中央部にも、厚み方向に貫通する長孔825が穿設されており、長孔825には、側面板54に立設されたピン542が嵌まり込んでいる。
【0074】
第2レバー82の長手方向他方の端部(先端部)822は、受け入れ口611とこれの直下に位置する底面612との間の空間610に入り込んでいる。第2レバー82の先端部822には、3個の凸部101、102、103が設けられ、凸部101、102、103には、対応する回転部材151、152、153が設けられている。凸部101~103と回転部材151~153の構成については、後述する。
【0075】
攪拌搬送部材70と一体でクランク軸715が回転すると、クランク軸715に連結されている第1レバー81がピン541に対して長孔815の長さ方向に移動可能な範囲で上下方向に揺動しつつ、第1レバー81に回転自在に連結されている第2レバー82もピン542に対して長孔825の長さ方向に移動可能な範囲で左右方向に揺動する。
【0076】
図5は、第2レバー82が往復運動により揺動している様子を示す模式図である。
【0077】
同図に示すように第2レバー82は、クランク軸715が1回転する間に、第2レバー82が一点鎖線で示す第1位置から破線で示す中間位置を経て実線で示す第2位置まで底面612に向かって矢印831の方向に下降しつつ、底面612上を矢印832の方向(掻き取り方向)に動き、その後、矢印833の方向に上昇して、一点鎖線で示す第1位置に戻るという一往復の動作を行う。
【0078】
この一往復の間、第2レバー82が底面612上を矢印832の方向である掻き取り方向に動くときに、底面612上に落下した廃トナーTを凸部101~103と回転部材151~153とで掻き取って、底面612の傾斜に沿って落下させ、容器本体58の底面560に送る。
【0079】
クランク軸715の回転に伴って第2レバー82が上記の往復運動を行うように、掻き取り部80における第1レバー81、第2レバー82、長孔815、825などの各部材の寸法が予め決められている。この意味で、クランク軸715は、攪拌搬送部材70の回転動作を掻き取り時における掻き取り部材(第2レバー82)の往復スライダー移動に変換する運動変換部を構成している。なお、運動変換部は、掻き取り部材の往復運動が可能であればクランク軸を用いる構成に限られず、他の構成を用いるとしても良い。
【0080】
図6は、
図4に示すD-D線における矢視平面図であり、
図7(a)は、
図6に示す矢印H方向から凸部101~103と回転部材151~153を見たときの概略分解斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)に示す矢印Xa方向から凸部101と回転部材151を見たときの概略側面図である。
【0081】
図6と、
図7(a)、(b)に示すように第2レバー82は、底面612と対向する縁100から下方(底面612に向かう方向)に突設された3個の凸部101、102、103がZ軸方向に相互に間隔を開けて配置されてなる。
【0082】
凸部101~103は、その下端(先端)121、122、123の形状が矢印Xa方向から見たときの正面視において、下方に凸の湾曲形状、ここでは円弧状に形成されている。なお、凸部101~103の先端121~123の形状は、湾曲形状に限られず、例えばその先端の輪郭の形状がU字状、V字状、矩形状などとすることもできる。
【0083】
凸部101、102、103の側面131、132、133には、X軸方向に沿って軸部111、112、113が立設されている。ここで、側面131~133は、側壁616に対向する面ということができる。
【0084】
側面131~133上における軸部111~113の立設位置は、凸部101~103における円弧形状の先端121~123の円弧の中心に相当する位置に等しい。凸部101~103と軸部111~113は、樹脂や金属の一体成型によるものでも良いし、凸部に軸部を接着や溶着などで取り付けるとしても良い。また、軸部111~113は、ある程度の力が軸方向に直交する方向に掛かると撓む弾性を有するとしても良い。凸部101~103の側面131~133は、Y-Z平面(鉛直面)に平行であり、軸部111~113は、掻き取り方向(
図5に示す矢印832の方向)に対して交差する方向、
図7(a)の例では側面131~133に直交する方向(90°)に立設されている。
【0085】
なお、軸部111~113は、凸部101~103に設けることに限られず、例えば縁100よりも上の領域に立設することも可能である。また、掻き取り方向に対する軸部111~113の軸方向の角度は、90°に限られず、後述の回転部材151~153が廃トナーTの山を効果的に崩すことが可能な角度であれば、90°よりも小さい角度、例えば60°~90°の範囲の角度とすることも可能である。
【0086】
回転部材(回転体)151~153は、周面に歯形を付けた歯車形状からなり、回転部材151~153の中心に穿設されたX軸方向の貫通孔161、162、163に軸部111、112、113が嵌まり込む。貫通孔161、162、163の径の方が軸部111、112、113の径よりも少し大きくなっており、これにより回転部材151~153が軸部111~113に回転自在に軸支される。回転部材151~153は、同じ大きさ、同じ形状、同じ素材、例えばABSまたは鉄などで形成されているが、形状、大きさ、素材が相互に異なるとしても良い。ここでは、回転部材151~153と、凸部101~103における円弧形状の先端121~123の円弧とが同心円になる。
【0087】
回転部材151の外径、つまり軸部111を中心とし且つ回転部材151の各歯155の歯先156を通る歯先円157(
図7(b))の径は、凸部101の先端121の円弧の径よりも少し大きくなっている。この径の差は、例えば0.5~1mm程度である。これにより、
図5に示すように回転部材151が底面612に接したときに凸部101の先端121は、底面612から少し浮いたようになる。つまり、凸部101と回転部材151とは、底面612に向かう方向において回転部材151が凸部101よりも底面612側に少し出ている(回転部材151の方が凸部101よりも底面612に近い)という関係を有する。
【0088】
なお、外径の大小関係は、上記に限られない。例えば、凸部101の先端121の円弧の径と回転部材151の外径とを同じ大きさにしたり、回転部材151の外径の方が凸部101の先端121の円弧の径よりも小さくしたりするとしても良い。つまり、回転部材151と凸部101とが底面612からの距離が同じ、または凸部101が回転部材151よりも底面612側に出ているという関係とすることもできる。
【0089】
凸部101が廃トナーTを掻き取ることと、回転部材151が廃トナーTの山を崩すことの双方を効率良く行える大小関係であれば良い。例えば、回転部材151が主に廃トナーTの山を崩すものであり、凸部101が掻き取った(または崩した)廃トナーTを主に搬送するものとすれば、廃トナーTの山が生じ易い構成では、回転部材151を大きくし、廃トナーTの山が大きくなるのに時間がかかるような構成では、凸部101を大きくして、廃トナーTの搬送性を上げることが考えられる。このことは、凸部102、103と回転部材152、153とについても同様である。
【0090】
図8は、凸部101~103が掻き取り動作で往復移動したときの凸部101~103の先端121~123と端部822のそれぞれの移動軌跡を破線で示す模式図であり、回転部材151~153については図示を省略している。
【0091】
掻き取り動作時に凸部101~103の先端121~123が移動軌跡上を矢印G方向(
図5に示す矢印832に相当)で示す掻き取り方向に移動することにより、底面612上に落下した廃トナーTのうち、凸部101~103の移動軌跡の範囲内に入った廃トナーTを掻き取って容器本体58に送る。
【0092】
一方で、上記の「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように受け入れ部61の底面612において移動軌跡から外れた領域253(
図13(b)の底面部分953に相当)には、廃トナーTが付着したままになることがある。なお、領域253上に廃トナーTが積もっても、その頂部が凸部の移動軌跡内に入ると、その凸部で掻き取られるので、それ以上、領域253上に廃トナーTが山のように積載することは生じない。
【0093】
底面612上の廃トナーTは、凸部101~103の掻き取りにより少しずつ底面612上を矢印G方向(掻き取り方向)上流側から下流側に搬送されていく。このため、領域259で掻き取られた廃トナーTが矢印G方向下流側に隣接する領域253に入ると、その時点で領域253上に溜まっていた廃トナーTは、領域259から領域253に入ってきた廃トナーTに押されて領域253から下流側に移動するものやX軸方向(
図13(c)の幅方向に相当)に移動するものに分かれる。
【0094】
領域253上でX軸方向に少しずつ廃トナーTが移動して行くと、やがて
図6に示す底面612上において第2レバー82と側壁616との間の領域255に至る。また、凸部102、103の下端122、122に当たった廃トナーTの一部がX軸方向に逃げて領域255に至ることもある。さらに、受け入れ口611から入った廃トナーTが領域255上に溜まったり、第2レバー82と側壁616との間において領域255に隣り合う領域258、258に溜まったりすることもある。このように領域255、258に溜まった廃トナーTは、大きな山状になるまで積もったり固まったりする前に、第2レバー82と側壁616の間の空間に位置する回転部材151~153により崩されて攪拌される。
【0095】
(4)回転部材による廃トナーの攪拌について
図9(a)、(b)は、底面612の領域255上に溜まった廃トナーTの山が回転部材152により崩される様子を示す模式図である。
【0096】
図9(a)に示すように回転部材152が矢印I方向に底面612の領域255に向かって下降して、回転部材152の歯155が廃トナーTの山に当たると、
図9(b)に示すように回転部材152が矢印G方向(掻き取り方向)にスライド移動している間に廃トナーTとの摩擦力により軸部112を中心に矢印J方向に回転する。
【0097】
回転部材152の歯155の歯先156が廃トナーTの山に食い込んで、廃トナーTの山を崩しつつ、回転部材152の矢印J方向への回転により回転部材152が廃トナーTの山を上から押さえようとする力が回転方向に分散されながらその回転力Pfが廃トナーTに作用することで、一部の廃トナーTを、回転部材152よりも掻き取り方向上流側(同図の右側)に飛び散らせて(攪拌して)、その廃トナーTの山を崩すことができる。
【0098】
飛び散った廃トナーTが凸部101~103の移動軌跡内に入ると、凸部101~103により掻き取られる。他の回転部材151、153も回転部材152と同様の回転動作により、底面612上の廃トナーTを攪拌する。
【0099】
これにより、受け入れ部61の底面612上において、凸部101~103で掻き取れない領域上に廃トナーTが溜まろうとしても、回転部材151~153により攪拌されるので、従来のような廃トナーTの山が徐々に大きくなったり固着したりすることで、廃トナーの搬送に支障が生じるといったことを防止できる。
【0100】
<変形例>
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
【0101】
(1)上記実施の形態では、廃トナーTの山を崩す回転体としての回転部材151~153を歯車形状のものとしたが、これに限られない。例えば、
図10に示すように凸部101に立設された軸部111に回転自在な円筒形状または円柱形状の回転体159、つまり外周が円形状である回転体を用いることもできる。円筒や円柱の構成では、外周に歯155が存在しないので、歯先156を廃トナーTの山に食い込ませて崩し易くすることはできないが、回転体であることに変わりはない。この円筒や円柱形状の回転体の周面158が底面612上の廃トナーTに当たったときに、
図9(b)に示すように矢印J方向に回転することで、その回転方向の力Pfを廃トナーTに作用させることができ、廃トナーTの山を崩すことができる。
【0102】
(2)上記実施の形態では、受け入れ部61の底面612上の廃トナーTを掻き取るための凸部101~103を3個とし、各凸部に対応する回転部材151~153を廃トナーTの攪拌部材として合計3個、設ける構成例を説明したが、この個数に限られない。装置構成によって、凸部と回転部材のそれぞれを1個ずつとしたり、2以上の複数個としたりすることができる。
【0103】
(3)上記実施の形態では、凸部101~103に立設された軸部111~113に回転自在に軸支されている回転部材151~153が凸部101~103と一体で掻き取り方向に動き、底面612上の廃トナーTに当たったときに、その廃トナーTとの摩擦力で回転する構成としたが、これに限られない。例えば、3個の回転部材151~153のうち、少なくとも一つの回転部材に回転駆動力を付与する駆動部を別途、設けて、その駆動力で回転部材を強制的に回転駆動させる構成をとることも可能である。
【0104】
図11は、回転部材の駆動部の構成例を示す模式図である。
【0105】
同図に示すように回転部材の駆動部450は、超小型のモーター451を第2レバー82の側面105に取り付け、モーター451の回転軸452にウォーム軸453を連結しつつ、一つの回転部材553をウォーム軸453に歯合するウォームホイール形状にした構成になっている。この回転部材553は、上記の回転部材153に相当する。
【0106】
モーター451の回転軸452が回転すると、回転軸452と一体でウォーム軸453も同方向に回転し、ウォーム軸453の回転力がウォームホイールである回転部材553に伝わることで、回転部材553が矢印J方向に回転駆動される。なお、モーター451への電力供給は、不図示のリード線を掻き取り動作に影響を与えないようにリード線の長さに余裕をもたせて容器本体58内で側壁上を這わせつつ、リード線の先端を容器本体58に設けられた不図示の貫通孔から外に出して、装置本体28に設けられた電源部(不図示)に接続することにより行われる。電源部からモーター451への電力供給は、例えばプリントジョブ実行時に行われ、ジョブ終了に伴って終了する。
【0107】
上記では、一つの回転部材553を回転駆動させるとしたが、他の2個の回転部材151、152の一方または両方についても回転駆動する構成としても良い。
図11に示すウォーム軸453をZ軸方向にさらに延長することで実現できる。
【0108】
また、上記では、回転部材553が矢印J方向に回転駆動するとしたが、これに代えて、例えば矢印J方向とは逆方向の矢印Ja方向(破線)に回転するようにモーター451の回転方向を設定するとしても良い。矢印Ja方向は、底面612上では凸部103の掻き取り方向と同方向、つまり容器本体58に近づく方向に相当する。従って、回転部材553の歯555が底面612上の廃トナーTに当たったときに、その廃トナーTに掻き取り方向と同方向の力が作用して、その力が付与された廃トナーTが凸部103と同方向に動いて、容器本体58に収容され易くなる。
【0109】
なお、上記のようなウォーム軸やウォームホイールを有する構成に限られず、回転部材を回転駆動可能な駆動部であれば、他の構成を用いるとしても良い。
【0110】
(4)上記実施の形態では、容器本体58の側壁52の上部から横方向に飛び出すように受け入れ部61が設けられる構成例を説明したが、これに限られない。例えば、容器本体58の側壁52の中腹部から受け入れ部61が横方向に飛び出すような構成にも上記の掻き取り部80を適用することができる。
【0111】
(5)上記実施の形態では、画像形成で供されなくなった廃トナーを収容するトナー収容容器50の例を説明したが、これに限られない。例えば、補充用のトナーを現像部4に供給するトナーホッパーにも本開示の技術を適用できる。補充用のトナーは、現像部4で画像形成のために消費されるので、これから画像形成に供されるべきトナーといえる。
【0112】
図12は、トナーホッパー40の構成例を示す図である。同図に示すようにトナーホッパー40は、現像部4の上に配置され、容器本体401と、容器本体401の上部から右方向に延出されている受け入れ部402を有する。
【0113】
受け入れ部402の上面には、受け入れ口403が設けられており、受け入れ口403は、補充用のトナーTbが収容されているトナー補給ボトル41のトナー排出口411と連通している。このトナー排出口411も画像形成装置に既設の排出口になる。
【0114】
容器本体401の下部には、現像部4に補充用のトナーTbを供給するための供給スクリュー404が設けられている。
【0115】
トナーホッパー40は、トナー補給ボトル41からのトナーTbの補給により容器本体401内にある程度のトナーTbを溜めつつ、現像部4内のトナーの量が減って来ると、容器本体401内のトナーTbを現像部4に供給する公知のトナー補給制御を行う。
【0116】
すなわち、現像部4内のトナーの量が規定値よりも少なくなったことがセンサーなどで検出されると、供給スクリュー404が駆動されることで、トナーホッパー40からトナーTbが現像部4に供給される。現像部4内のトナーの量が規定値に至ると、供給スクリュー404の駆動が停止されることで、トナー補給が停止される。
【0117】
トナーホッパー40から現像部4へのトナーTbの補給により、容器本体401内のトナーTbの量が所定量よりも少なくなったことが上記とは別のセンサーなどで検出されると、トナー補給ボトル41内の供給スクリュー(不図示)によりトナー補給ボトル41内のトナーTbがその少なくなった分だけ排出口411、受け入れ部402の受け入れ口403を通じて容器本体401に補給される。
【0118】
このような構成のトナーホッパー40に上記の掻き取り部80と同様の掻き取り部480を適用して、供給スクリュー404の回転駆動力を上記のクランク軸715と同様のクランク軸を通じて第2レバー82の往復運動に変換する機構を備えることで、受け入れ部402の底面421上のトナーTbを掻き取ることができる。これにより、底面421上にトナーTbが溜まり、溜まったトナーTbの山が受け入れ口403まで高くなって、トナー補給ボトル41から受け入れ口403を通じたトナーTbの受け入れに支障を来すようなことを防止できる。
【0119】
(6)上記実施の形態では、画像形成に供されなくなった廃トナーとして、クリーナー6、24でクリーニングされた廃トナーを収容するトナー収容容器の例を説明したが、これに限られない。例えば、トリクル現像方式、具体的には現像部において現像剤を収容しているハウジングの補給口から、トナーを含む補給用の現像剤を少量ずつ補給しつつ、その補給により過剰となったトナーを含む現像剤の一部をハウジングの排出口からハウジングの外に排出させる現像方式において、現像部から排出される現像剤を廃トナーと捉えて、この廃トナーを収容するトナー収容容器の構成とすることもできる。
【0120】
(7)上記実施の形態では、攪拌搬送部材70の回転駆動力を装置本体28側の駆動モーター19からギア713を介して伝達される構成例を説明したが、これに限られず、例えばトナー収容容器50に駆動モーターなどの駆動部を設ける構成をとることもできる。
【0121】
(8)上記実施の形態では、画像形成装置としてカラープリンターの構成例を説明したが、これに限られない。例えば、モノクロのみの画像形成可能なプリンターにも適用できる。また、プリンターに限られずに、例えば複写機、ファクシミリ装置、MFP(Multiple Function Peripheral)等の画像形成装置一般に適用できる。
【0122】
なお、トナー収容容器50、掻き取り部80、凸部101~103、回転部材151~153などの各部材の形状、大きさ、材料などが上記のものに限られず、装置構成に応じて適した形状などが決められる。
【0123】
また、上記実施の形態及び上記変形例の内容をそれぞれ可能な限り組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本開示は、トナーを収容するトナー収容容器に適用することができる。
【符号の説明】
【0125】
6、24 クリーナー
10 プリンター
20Y、20M、20C、20K 作像部
28 装置本体
40 トナーホッパー
50 トナー収容容器
58、401 容器本体
61、402 受け入れ部
70 攪拌搬送部材
80、480 掻き取り部
82 第2レバー(掻き取り部材)
100 掻き取り部材の、受け入れ部底面と対向する縁
101、102、103 凸部
111、112、113 軸部
121、122、123 凸部の先端
151、152、153、159、553 回転部材
155、555 歯
242、411 トナー排出口
403、611 受け入れ口
450 駆動部
612 受け入れ部底面
715 クランク軸
T 廃トナー